説明

排ガス冷却制御方法及び排ガス冷却制御装置

【課題】 排ガス冷却装置に流入する排ガスの流量が急増した場合であっても、排ガス冷却装置から排出される排ガスの温度を目標排ガス温度に維持することができ、しかも排ガス流量計が損傷する虞のない排ガス冷却制御方法を提供する。
【解決手段】 流入口30aに流入した排ガスを冷却水で冷却して排出口30bから排出する排ガス冷却装置3における排出口30bの排ガス温度θ2を測定し、測定した排出口30bの排ガス温度θ2と目標排ガス温度Rθとの偏差RFに基づいて、排出口30bから排出される排ガス温度θ2と目標排ガスRθとを略一致させるように冷却水の噴射水量Fをフィードバック制御する排ガス冷却制御方法において、流入口30aの排ガス温度θ1と排出口30bから排出される排ガス流量Qとを測定し、測定した流入口の排ガス温度θ1と排ガス流量Qとに基づいて、噴射水量Fをフィードフォワード制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガスに冷却水を噴射することで排ガスを冷却する排ガス冷却装置の排ガス冷却制御方法及び該排ガス冷却制御方法を実施する排ガス冷却制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図4は、従来のガス化溶融炉システムの構成を示す模式図である。ガス化溶融炉システムは、破砕され、熱分解された廃棄物を、熱分解処理で発生した熱分解ガスによって1200℃以上に加熱して溶融するガス化溶融炉1、ガス化溶融炉1で発生した排ガスを冷却する冷却装置3を備えている。
冷却装置3は、ガス化溶融炉1で発生した排ガスが流入する流入口30aを有し、流入した排ガスに冷却水を噴射する噴射ノズル31が配設された減温塔30を備えている。減温塔30で冷却されて排出された排ガスは、樹脂製のバグフィルタを有する集塵装置5にて集塵処理され、集塵された排ガスはガス処理装置を経て、エネルギー回収され大気中に放散される。
【0003】
集塵装置5は、可燃性のバグフィルタ、該バグフィルタを支持するフレーム、及び該フレームを収容する容器から構成されている。バグフィルタは、所定上限温度、例えばフッ素樹脂性である場合、約250度で焼損する虞があるため、減温塔30から排出される排ガスの温度を250℃以下に制御する必要がある。また、ダイオキシンの再合成を防ぐためにも、ガス化溶融炉1から排出された排ガスを約200℃以下に保つ必要がある。更に、排ガス温度が所定下限温度以下になった場合、排ガス中の水分がバグフィルタに結露して目詰まりするため、バグフィルタを排ガスが通らなくなり、集塵装置5の運転が停止する虞がある。このため、減温塔30から排出される排ガス温度を、250℃以下で水分がバグフィルタに結露しない一定温度、例えば170℃に保つ排ガス冷却制御装置104が設けられている。
【0004】
従来の排ガス冷却制御装置104は、排ガスが排出される減温塔30の排出口30bに設けられた熱電対の出側排ガス温度計42、及び出側排ガス温度計42が測定した排ガス温度θ2と目標排ガス温度Rθとの偏差に基づいて、排ガス温度が目標排ガス温度Rθに一致するように、噴射ノズルに供給する冷却水の水量をフィードバック制御する第1及び第2PID調節計45a,45bを備えている(特許文献1)。
【0005】
また、より正確に排ガス温度を目標排ガス温度に一致させるために、減温塔から排出される排ガス温度に加えて、ガス化溶融炉内の温度を測定し、冷却水の水量を制御する排ガス冷却制御方法、及び排ガス冷却制御装置が提供されている(特許文献2)。
【0006】
更に、ガス化溶融炉から排出される排ガスの流量変化により効果的に対応するために、減温塔から排出される排ガス温度に加えて、ガス化溶融炉への吹き込み空気量を測定し、冷却水の水量を制御する排ガス冷却制御方法、及び排ガス冷却制御装置が提供されている(特許文献3)。
【0007】
更にまた、排ガスの流量変化に効果的に対応するために、排ガス減温装置から排出される排ガス温度に加えて、減温塔に流入する排ガスの流量を測定し、冷却水の水量を制御する排ガス冷却制御方法、及び排ガス冷却制御装置が提供されている(特許文献4、特許文献5)。
【特許文献1】特開平8−61653号公報
【特許文献2】特開2002−147727号公報
【特許文献3】特開2001−33028号公報
【特許文献4】特開2001−4288号公報
【特許文献5】特開2002−327914号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図5は、特許文献1に係る排ガス減温装置3に流入する排ガスの流量、噴射ノズル31に供給される冷却水量、即ち噴射水量及び排出口30bの排ガス温度の時間変化を示すグラフである。図5に示すように、排ガスの流量が5000(m3 /h)から10000(m3 /h)に急増した場合、減温塔30から排出される排ガスの温度が上昇してから冷却水の水量が増加するため、冷却水の水量増加、及び排ガスの冷却が間に合わず、減温塔30から排出される排ガスの温度は250℃以上に達する。排ガスの温度が250℃以上になった場合、集塵装置5のバグフィルタが焼損する虞があるため、ガス化溶融炉1の操業を緊急停止させ、集塵装置5を保護する必要が生じる。
【0009】
特許文献2に係る排ガス冷却制御方法及び排ガス冷却制御装置においては、排ガスの流量に基づいて冷却水の水量を制御しないため、特許文献1と同様にガス化溶融炉から排出される排ガスの急激な増加に対処することができない。
【0010】
特許文献3に係る排ガス冷却制御方法及び排ガス冷却制御装置においては、ガス化溶融炉への吹き込み空気量を用いて冷却水の水量を制御しているが、ガス化溶融炉から排出される排ガスの流量は、吹き込み空気量と廃棄物から発生したガスとの反応結果に応じて変化するため、排ガスの流量を吹き込み空気量の関数で表すことができず、またガス化溶融炉内の内容物が崩れたときに生ずる排ガスの急激な流量増加も、吹き込み空気量と無関係であるため、ガス化溶融炉から排出される排ガスの急激な増加に対処することができない。
【0011】
特許文献4、5に係る排ガス冷却制御方法及び排ガス冷却制御装置においては、減温塔に流入する排ガスの流量を測定するが、ガス化溶融炉から排出され、減温塔に流入する排ガスは、1100〜1200℃の高温であり、塵埃を含むため、減温塔の流入口に設けた排ガス流量計が溶損し、又は塵埃により閉塞して損傷する場合があり、減温塔への排ガス流入量が増加した場合の冷却制御を行えない虞があるという問題があった。
【0012】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、排ガス冷却装置から冷却されて排出された排ガスの流量、及び排ガス冷却装置に流入する排ガスの温度を測定し、測定した排ガスの流量及び温度に基づいて、冷却水の水量をフィードフォワード制御することにより、ガス化溶融炉から排出される排ガスの流量が急増した場合であっても、排ガス冷却装置から排出される排ガスの温度を目標排ガス温度に維持することができ、しかも排ガス流量計が損傷する虞のない排ガス冷却制御方法及び該排ガス冷却制御方法を実施する排ガス冷却制御装置を提供することを目的とする。
【0013】
また、排ガス冷却装置から排出された排ガスの流量の移動平均を算出し、算出した移動平均と、排ガスの瞬間流量との偏差が大きい程、冷却水の水量を増加させることにより、ガス化溶融炉から排出される排ガスの流量が急増した場合であっても、排ガスの流量増加率に応じて、急増した排ガスを冷却するために必要な冷却水を増加させ、排ガスを冷却することができる排ガス冷却制御方法及び該排ガス冷却制御方法を実施する排ガス冷却制御装置を提供することを他の目的とする。
【0014】
更に、排ガス冷却装置から排出され、集塵装置にて集塵された後の排ガスの流量を測定することで、排ガスの流量を測定する計器が塵埃により閉塞することを防ぐことができる排ガス冷却制御方法及び該排ガス冷却制御方法を実施する排ガス冷却制御装置を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る排ガス冷却制御方法は、流入口から流入した排ガスを冷却水で冷却して排出口から排出する排ガス冷却装置における前記排出口の排ガス温度を測定し、測定した排ガス温度と目標排ガス温度との偏差に基づいて、前記排出口の排ガス温度と目標排ガス温度とを略一致させるように冷却水の水量をフィードバック制御する排ガス冷却制御方法において、前記流入口の排ガス温度と前記排出口から排出された排ガスの流量とを測定し、測定した前記流入口の排ガス温度と前記排出口から排出された排ガスの流量とに基づいて、冷却水の水量をフィードフォワード制御することを特徴とする。
【0016】
本発明に係る排ガス冷却制御方法は、測定した排ガスの流量に基づいて、前記排出口から排出された排ガスの移動平均を算出し、算出した移動平均と測定した排ガスの流量との偏差が大きい程、噴射される冷却水の水量を増加させるようにフィードフォワード制御することを特徴とする。
【0017】
本発明に係る排ガス冷却制御方法は、前記排出口から排出され、排ガス中の塵埃を集塵する集塵装置を通過した排ガスの流量を測定することを特徴とする。
【0018】
本発明に係る排ガス冷却制御装置は、流入口から流入した排ガスを冷却水で冷却して排出口から排出する排ガス冷却装置における前記排出口の排ガス温度を測定し、測定した排ガス温度と目標排ガス温度との偏差に基づいて、前記排出口の排ガス温度と目標排ガス温度とを略一致させるように冷却水の水量をフィードバック制御するようにしてある排ガス冷却制御装置において、前記流入口の排ガス温度を測定する入側排ガス温度測定手段と、前記排出口から排出された排ガスの流量を測定する排ガス流量測定手段と、前記入側排ガス温度測定手段が測定した排ガス温度及び前記排ガス流量測定手段が測定した排ガスの流量に基づいて、冷却水の水量をフィードフォワード制御する手段とを備えることを特徴とする。
【0019】
本発明に係る排ガス冷却制御装置は、測定した排ガスの流量に基づいて、前記排出口から排出された排ガスの移動平均を算出する移動平均算出手段を備え、該移動平均算出手段が算出した移動平均と前記排ガス流量測定手段が測定した排ガスの流量との偏差が大きい程、冷却水の水量を増加させるようにフィードフォワード制御するようにしてあることを特徴とする。
【0020】
本発明に係る排ガス冷却制御装置は、前記排ガス流量測定手段は、前記排出口から排出され、排ガス中の塵埃を集塵する集塵装置を通過した排ガスの流量を測定することを特徴とする。
【0021】
本発明にあっては、排ガス冷却装置の排出口から排出される排ガスの流量を測定する。排ガス冷却装置に流入する排ガスの流量が急増した場合、排ガス冷却装置の排出口から排出される排ガスの流量も同様に急増する。従って、排ガス冷却装置における流入口の排ガス温度と、排出口から排出される排ガスの流量とに基づいて、急増した排ガスを目標排ガス温度まで冷却するために必要な冷却水の水量を、排出口の排ガス温度が上昇する前に特定することができ、特定した水量の冷却水を用いて排ガスの温度を目標排ガス温度まで下げることができる。
また、排ガス冷却装置で冷却されて排出される排ガスの温度は、排ガス冷却装置に流入する排ガスの温度に比べて低いため、排ガスの流量を測定する計器が、高温の排ガスによって溶損する虞は低い。
【0022】
本発明にあっては、排ガス冷却装置から排出された排ガスの流量の移動平均と、排出された排ガスの瞬間の流量との偏差の大小に応じて、冷却水の水量を増減させる。前記偏差が大きい程、前記排出口の排ガス温度による水量のフィードバック制御が遅れ、排ガスを目標排ガス温度まで冷却できない虞が高いが、排出される排ガスの温度上昇に先立って、前記偏差が大きい程、冷却水の水量を増加させるため、排ガスの冷却が間に合わなくなることを防ぐことができる。
【0023】
本発明にあっては、集塵装置を通過した排ガスの流量を測定するが、集塵装置を通過した排ガスは、集塵装置を通過する前の排ガスに比べて排ガス中の塵埃が少ないため、排ガスの流量を測定する計器が塵埃により閉塞し、また損傷する虞はない。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、排ガスの流量を測定する計器が損傷することを防ぎ、ガス化溶融炉から排出される排ガスの流量が急増した場合であっても、排ガス冷却装置から排出される排ガスの温度を目標排ガス温度に維持することができる。
【0025】
本発明によれば、ガス化溶融炉から排出される排ガスの流量が急増した場合であっても、流量増加率の大きさに応じて、急増した排ガスを冷却するために必要な冷却水を増加させ、排ガスを冷却することができる。
【0026】
本発明によれば、排ガスの流量を測定する計器が塵埃により閉塞することを防ぎ、またガス化溶融炉から排出される排ガスの流量が急増した場合であっても、排ガス冷却装置から排出される排ガスの温度を目標排ガス温度に維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
図1は、本発明の実施の形態に係る排ガス冷却制御装置を備えるガス化溶融炉システムを示す模式図である。図中1は、破砕された廃棄物を蒸し焼きにして溶融及びガス化するガス化溶融炉であり、ガス化溶融炉1で発生した排ガスは、ガス化溶融炉1及び減温塔30の流入口30aに接続されている排ガス管2を通じて、減温塔30に流入する。減温塔30に流入する排ガスの温度は、約1100℃〜1200℃である。
【0028】
減温塔30には、冷却水と窒素を混合することにより、冷却水を霧化して噴射する噴射ノズル31が、冷却水を減温塔30の中心部に向けて噴射する姿勢で設けられて、排ガス冷却装置3が構成されている。噴射ノズル31には、冷却水及び窒素を供給する水管31a及びガス管31bが接続されている。減温塔30に流入した排ガスは、噴射ノズル31から噴射された冷却水によって冷却され、冷却された排ガスは、減温塔30に形成された排出口30bから排出される。
【0029】
噴射ノズル31から噴射される冷却水の水量は、減温塔30から排出される排ガスの温度と目標排ガス温度Rθとが略一致するように制御する排ガス冷却制御装置4によって制御されている。
【0030】
以下、排ガス冷却制御装置4の構成を説明する。減温塔30の排出口30bには、冷却水の噴射水量Fをフィードバック制御するために、減温塔30の排出口30bにおける排ガス温度θ2を検出する熱電対の出側排ガス温度計42が設けられている。また、減温塔30の流入口30aには、冷却水の噴射水量Fをフィードフォワード制御するために、減温塔30の流入口30aにおける排ガス温度θ1を検出する入側排ガス温度計41が設けられている。
【0031】
水管31aには、冷却水の噴射水量Fを調節する噴射水量調節弁40aと、噴射水量F、つまり水管31aを流れる冷却水の水量を検出する噴射水量検出器40bとが設けられている。噴射水量調節弁40aの開度は、減温塔30の排出口30bにおける排ガス温度θ2を目標排ガス温度のRθに保つように、第1PID調節計45a及び第2PID調節計45bによって調節される。
【0032】
第1PID調節計45aには、第1減算器44aが接続されており、第1減算器44aは、入力された目標排ガス温度Rθから、出側排ガス温度計42が検出した排ガス温度θ2を減算し、減算して得られた偏差Eθ=Rθ−θ2を第1PID調節計45aに与える。第1PID調節計45aは、偏差Eθに基づいて、目標噴射水量RFを第2減算器44bに与える。
なお、目標排ガス温度Rθは、目標排ガス温度Rθに対応する電圧を出力する図示しない回路が第1減算器44aに与えている。
【0033】
第2減算器44bは、目標噴射水量RFから、噴射水量検出器40bが検出した噴射水量Fを減算し、更に減算して得た値に後述するフィードフォワード補正量Cを加算し、加算して得た偏差EF=RF−F+Cを第2PID調節計45bに与える。
【0034】
第2PID調節計45bは、偏差EFに基づいて、噴射水量調節弁40aの開度を操作する操作量YFを演算し、演算して得た操作量YFを噴射水量調節弁40aに与える。操作量YFを受けた噴射水量調節弁40aは、操作量YFに応じて、開度を調節する。
【0035】
また、ガス管31bには、噴射ノズル31に供給する窒素ガスの窒素流量Nを調節する窒素流量調節弁40cと、窒素流量Nを検出する窒素流量検出器40dとが設けられており、窒素流量調節弁40cの開度は、第3PID調節計45cによって調節される。
【0036】
第3PID調節計45cには、第3減算器44cが接続されており、第3減算器44cは、テーブル46から入力された目標窒素流量RNから、窒素流量検出器40dが検出した窒素流量Nを減算し、減算して得た偏差ENを第3PID調節計45cに与える。
【0037】
テーブル46は、噴射水量Fと目標窒素流量RNとを対応付けたデータを記憶しており、噴射水量検出器40bが検出した噴射水量F及び前記データに基づいて、目標窒素流量RNを特定し、特定した目標窒素流量RNを第3減算器44cに与える。
【0038】
第3PIDは、偏差ENに基づいて、窒素流量調節弁40cの開度を操作する操作量YNを演算し、演算して得た操作量YNを窒素流量調節弁40cに与える、操作量YFを受けた窒素流量調節弁40cは、操作量YNに応じて、開度を調節する。
【0039】
減温塔30の排出口30bから排出された排ガスは、排ガス中の塵埃を集塵する集塵装置5、排ガスを無害化するガス処理設備6、排ガスを誘引する誘引通風機7を流れ、大気放散設備8a及びガス利用設備8bに流入する。
【0040】
誘引通風機7と大気放散設備8a及びガス利用設備8bとの間には、冷却水の噴射水量をフィードフォワード制御するために、誘引通風機7から大気放散設備8a及びガス利用設備8bへ流れる排ガス流量Qを検出する排ガス流量計43が設けられており、排ガス流量計43の検出結果は、移動平均算出部47及び第4減算器44dに与えられる。
【0041】
移動平均算出部47は、例えば排ガス流量Qを3分毎に取得し、取得した排ガス流量Qに基づいて、排ガス流量Qの移動平均Qavを算出し、算出して得た移動平均Qavを第4減算器44dに与える。
【0042】
第4減算器44dは、入力された排ガス流量Qから排ガス流量Qの移動平均Qavを減算し、減算して得た排ガス流量Qの変化量ΔQを乗算器48に与える。
【0043】
乗算器48には、入側排ガス温度計41が検出した排ガス温度θ1及び所定のゲインKが入力するように構成してあり、乗算器48は、入力された排ガス温度θ1、ゲインK、及び排ガス流量Qの変化量ΔQを乗算し、乗算して得たフィードフォワード補正量C=ΔQ・K・θ1を第2減算器44bに与える。K・θ1は、単位量の排ガスを冷却するために必要な冷却水の水量である。
なお、ゲインKは、ゲインKに対応する電圧を出力する図示しない回路が乗算器48に与えている。
【0044】
排ガス冷却制御装置4は、上述したように噴射水量調節弁40a、噴射水量検出器40b、窒素流量調節弁40c、窒素流量検出器40d、入側排ガス温度計41、出側排ガス温度計42、排ガス流量計43、第1乃至第4減算器44a,44b,44c,44d、第1乃至第3PID調節計45a,45b,45c、テーブル46、移動平均算出部47、及び乗算器48から構成されており、特に本発明の特徴部分は、出側排ガス温度計42、排ガス流量計43、移動平均算出部47、減算器44d、及び乗算器48から構成されている。
【0045】
図2は、本発明の実施の形態に係る排ガス冷却制御方法の演算処理手順を示すフローチャートである。
移動平均算出部47は、排ガス流量計43が検出した排ガス流量Q、つまり排出口30bから排出され、集塵装置5を通過した排ガスの排ガス流量Qを取得する(ステップS1)。
【0046】
次いで、移動平均算出部47は、取得した排ガス流量Qに基づいて、排ガス流量Qの移動平均Qavを算出し、算出して得た移動平均Qavを第4減算器44dに与える(ステップS2)。
つまり、移動平均算出部47は、ステップS1からステップS6の一連の処理が繰り返される都度ステップS1で取得した排ガス流量Qを記憶し、記憶した複数の排ガス流量Qに基いて移動平均Qavを算出する。
【0047】
第4減算器44dは、排ガス流量Qから移動平均Qavを減算し、減算して得た排ガス流量Qの変化量ΔQを乗算器48に与える(ステップS3)。
【0048】
次いで、乗算器48は、ゲインK、排ガス流量Qの変化量ΔQ、及び入側排ガス温度計41が検出した排ガス温度θ1を取得し(ステップS4)、フィードフォワード補正量Cを算出する(ステップS5)。そして、乗算器48は、算出して得たフィードフォワード補正量Cを第2減算器44bに与える(ステップS6)
【0049】
第2減算器44bは、乗算器48から与えられたフィードフォワード補正量Cを目標噴射水量RFに加算して、噴射水量検出器40bが検出した噴射水量Fを減算し、減算して得た偏差EFを第2PID調節計45bに与える。第2PID調節計45bは、変化EFに基づいて、噴射水量をフィードフォワード制御及びフィードバック制御する。
移動平均算出部47、第4減算器44d、及び乗算器48は、以後ステップS1乃至ステップS6の演算処理を繰り返し実行する。
【0050】
このように構成される排ガス冷却制御装置4にあっては、減温塔30の排出口30bにおける排ガス温度θ2と、目標排ガス温度Rθとの偏差に基づいて、排ガス温度θ2が目標排出温度Rθに略一致するように、第1PID調節計45a及び第2PID調節計45bが、冷却水の噴射水量をフィードバック制御する。
【0051】
また、減温塔30から排出される排ガス流量Qの変化量ΔQ、及び減温塔30の流入口30aにおける排ガス温度θ1に基づいて、フィードフォワード補正量C、つまり急増した排ガス流量ΔQの排ガスを冷却するために必要な冷却水の噴射水量を第2減算器44bに与え、第2PID調節計45bは、フィードフォワード補正量Cに基づいて冷却水の噴射水量をフィードフォワード制御する。
【0052】
図3は、減温塔30に流入する排ガスの流量、噴射ノズル31に供給される冷却水の噴射水量F、及び排出口30bにおける排ガス温度θ2の時間変化を示すグラフである。図3に示すように、5000(m3 /h)から10000(m3 /h)に排ガス流量Qが急増した場合、排ガス流量Qの変化量ΔQ=5000に応じたフィードフォワード補正量Cが、第2加算器を通じて第2PID調節計45bに与えられ、第2PID調節計45bは、減温塔30の排出口30bにおける排ガス温度θ2の上昇に先立って、噴射水量Fを増加させる。
【0053】
従って、ガス化溶融炉1から排出される排ガスの流量が急増した場合であっても、減温塔30の排出口30bにおける排ガス温度θ2の上昇に先立って、冷却水の噴射水量Fを増加させ、排ガスを冷却することができ、図3に示すように、減温塔30から排出される排ガスの温度を200℃以下に抑えることができる。
【0054】
また、減温塔30に流入する排ガスの流量を、減温塔30から排出される約170℃〜200℃の排ガスによって測定するため、排ガス流量計43を減温塔30の流入口30aに設け、1100〜1200℃の高温の排ガスの流量を測定する場合に比べて、排ガス流量計43が溶損する虞は低く、より安定して排ガス温度θ2を目標排ガス温度Rθに保つことができる。
【0055】
更に、排ガス流量計43を、集塵装置5及びガス処理設備6の下流側に設けているため、排ガス流量計43が排ガスに含まれる塵埃によって閉塞し、また排ガス流の腐食成分により腐食することを防ぐことができ、より安定して排ガス温度θ2を目標排ガス温度に保つことができる。
【0056】
なお、実施の形態にあっては、単位量の排ガスを冷却するために必要な冷却水の水量K・θ1は、θ1に関して線形であるが、θ1に関して非線型のゲインK(θ)によってフィードフォワード補正量Cを算出し、冷却水の噴射水量Fをフィードフォワード制御するように構成しても良い。
θ1に関して非線型のゲインK(θ)を用いた場合、急増した排ガスを冷却するために必要な冷却水の噴射水量をより正確に算出することができる。
【0057】
また、本発明に係る排ガス冷却制御方法及び排ガス冷却制御装置は、ガス化溶融炉のみならず、排ガスの減温を要する他の燃焼炉、反応炉、溶解炉などに適用しても良い。
【0058】
更に、減温塔から排出され、集塵装置、ガス処理設備および誘引通風機を通過した排ガスの流量を測定しているが、ガス処理設備と誘引通風機との間、又は集塵装置とガス処理設備との間で排ガスの流量を検出するように構成しても良い。
【0059】
更にまた、排ガス中に塵埃が含まれず、排ガス流量計が塵埃によって閉塞する虞がない場合、減温塔と集塵装置との間で排ガスの流量を測定するように構成しても良い。減温塔と集塵装置との間で排ガスの流量を測定する場合、減温塔に流入する排ガスの流量変化をより正確に検出し、冷却水量をフィードフォワード制御することができる。
【0060】
更にまた、移動平均算出部、減算器、及び乗算器によって、排ガス温度をフィードフォワード制御しているが、排ガス流量の移動平均及びフィードフォワード補正量を算出する演算部を備えるマイクロコンピュータからなる制御部によって、フィードフォワード制御するように構成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施の形態に係る排ガス冷却制御装置を備えるガス化溶融炉システムを示す模式図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る排ガス冷却制御方法の演算処理手順を示すフローチャートである。
【図3】減温塔に流入する排ガスの流量、噴射ノズルに供給される冷却水の噴射水量、及び排出口の排ガス温度の時間変化を示すグラフである。
【図4】従来のガス化溶融炉システムの構成を示す模式図である。
【図5】特許文献1に係る排ガス減温装置に流入する排ガスの流量、噴射ノズルに供給される冷却水量、即ち噴射水量及び排出口の排ガス温度の時間変化を示すグラフである。
【符号の説明】
【0062】
1 ガス化溶融炉
2 排ガス管
3 排ガス冷却装置
4 排ガス冷却制御装置
5 集塵装置
6 ガス処理設備
7 誘引通風機
8a 大気放散設備
8b ガス利用設備
30 減温塔
30a 流入口
30b 排出口
31 噴射ノズル
31a 水管
31b ガス管
40a 噴射水量調節弁
40b 噴射水量検出器
40c 窒素流量調節弁
40d 窒素流量検出器
41 入側排ガス温度計
42 出側排ガス温度計
43 排ガス流量計
44a 第1減算器
44b 第2減算器
44c 第3減算器
44d 第4減算器
45a 第1PID調節計
45b 第2PID調節計
45c 第3PID調節計
46 テーブル
47 移動平均算出部
48 乗算器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入口から流入した排ガスを冷却水で冷却して排出口から排出する排ガス冷却装置における前記排出口の排ガス温度を測定し、測定した排ガス温度と目標排ガス温度との偏差に基づいて、前記排出口の排ガス温度と目標排ガス温度とを略一致させるように冷却水の水量をフィードバック制御する排ガス冷却制御方法において、
前記流入口の排ガス温度と前記排出口から排出された排ガスの流量とを測定し、
測定した前記流入口の排ガス温度と前記排出口から排出された排ガスの流量とに基づいて、冷却水の水量をフィードフォワード制御する
ことを特徴とする排ガス冷却制御方法。
【請求項2】
測定した排ガスの流量に基づいて、前記排出口から排出された排ガスの移動平均を算出し、
算出した移動平均と測定した排ガスの流量との偏差が大きい程、噴射される冷却水の水量を増加させるようにフィードフォワード制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の排ガス冷却制御方法。
【請求項3】
前記排出口から排出され、排ガス中の塵埃を集塵する集塵装置を通過した排ガスの流量を測定する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の排ガス冷却制御方法。
【請求項4】
流入口から流入した排ガスを冷却水で冷却して排出口から排出する排ガス冷却装置における前記排出口の排ガス温度を測定し、測定した排ガス温度と目標排ガス温度との偏差に基づいて、前記排出口の排ガス温度と目標排ガス温度とを略一致させるように冷却水の水量をフィードバック制御するようにしてある排ガス冷却制御装置において、
前記流入口の排ガス温度を測定する入側排ガス温度測定手段と、
前記排出口から排出された排ガスの流量を測定する排ガス流量測定手段と、
前記入側排ガス温度測定手段が測定した排ガス温度及び前記排ガス流量測定手段が測定した排ガスの流量に基づいて、冷却水の水量をフィードフォワード制御する手段と
を備えることを特徴とする排ガス冷却制御装置。
【請求項5】
測定した排ガスの流量に基づいて、前記排出口から排出された排ガスの移動平均を算出する移動平均算出手段を備え、
該移動平均算出手段が算出した移動平均と前記排ガス流量測定手段が測定した排ガスの流量との偏差が大きい程、冷却水の水量を増加させるようにフィードフォワード制御するようにしてある
ことを特徴とする請求項4に記載の排ガス冷却制御装置。
【請求項6】
前記排ガス流量測定手段は、
前記排出口から排出され、排ガス中の塵埃を集塵する集塵装置を通過した排ガスの流量を測定する
ことを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の排ガス冷却制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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