排ガス浄化フィルタ装置
【課題】PMの捕集効率の向上と、排気圧損の上昇の抑制を両立させるとともに、流入側端面へのPMの堆積を抑制する。
【解決手段】複数の排ガス流路と、排ガス流路に設置されたフィルタ3と、を有し、排ガス流路は、排ガスをフィルタ3へ導くフィルタ導入部 100と、フィルタ導入部 100に隣接する排ガス流路へ分岐してフィルタ導入部 100を迂回するフィルタ迂回部 200と、を有し、最上流のフィルタ迂回部 202は、最上流のフィルタ導入部 100より上流側に設けられ排ガス入口側端面に開口している。
排ガスは先ず最上流のフィルタ迂回部 202を通過するので、流入側端面へのPMの堆積を抑制することができ端面閉塞が起こり難い。
【解決手段】複数の排ガス流路と、排ガス流路に設置されたフィルタ3と、を有し、排ガス流路は、排ガスをフィルタ3へ導くフィルタ導入部 100と、フィルタ導入部 100に隣接する排ガス流路へ分岐してフィルタ導入部 100を迂回するフィルタ迂回部 200と、を有し、最上流のフィルタ迂回部 202は、最上流のフィルタ導入部 100より上流側に設けられ排ガス入口側端面に開口している。
排ガスは先ず最上流のフィルタ迂回部 202を通過するので、流入側端面へのPMの堆積を抑制することができ端面閉塞が起こり難い。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジンなどからの排ガス中の粒子状物質(以下、PMという)を捕集する排ガス浄化フィルタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンなどからの排ガス中には、カーボン微粒子、 SOF、サルフェート類などからなるPMが含まれているため、排出前にPMを除去して清浄な排ガスを排出する必要がある。このPMは、通常の酸化触媒、三元触媒などでは除去することが困難であるため、フィルタに捕集した後に酸化除去する方法が一般的である。
【0003】
このようなフィルタとしては、コーディエライトなどの耐熱性セラミックスからなり多数のセルをもつハニカム体に、下流側端部で目詰めされた流入側セルと、流入側セルに隣接し上流側端部で目詰めされた流出側セルを形成したウォールフロー型のものが広く用いられている。このフィルタでは、流入側セルに流入した排ガスがセル隔壁を通過して流出側セルから排出されるが、排ガスがセル隔壁を通過する際にPMがセル隔壁の細孔中に捕集される。そしてPMがある程度捕集されると、ヒータによる加熱などで捕集されたPMを燃焼させフィルタ機能を再生することが行われる。
【0004】
しかしこのようなフィルタでは、PM捕集量が多い場合には再生時の燃焼による発熱量が大きく、ヒートショックによって損傷する場合がある。また製造コストも高い。そこで近年では、金属製のフィルタ装置がいくつか提案されている。
【0005】
たとえば特開平09−262414号公報には、金属薄板からなる波板と金属不織布からなる平板とを交互に積層し、下流側端部で目詰めされた流入側セルと、流入側セルに隣接し上流側端部で目詰めされた流出側セルと、を形成したフィルタが記載されている。また特開2002−113798号公報には、金属不織布からなる平板と波板とを交互に積層し、下流側端部で目詰めされた流入側セルと、流入側セルに隣接し上流側端部で目詰めされた流出側セルと、を形成したフィルタが記載されている。
【0006】
これらのフィルタによれば、排ガス中のPMは金属不織布中に捕集される。そして加熱によってPMを燃焼させる再生処理を行っても、金属製であるためヒートショックが小さく損傷を抑制することができる。ところがこれらのフィルタは、いずれもウォールフロー型のフィルタであるので、PMの捕集に伴って排気圧損が上昇する。しかも流入側セルの目詰め部近傍にPMが集中して堆積するため排気圧損が一気に上昇するという不具合があり、エンジン効率や燃費などを重視する場合には再生処理を頻繁に行う必要がある。
【0007】
一方、独国実用新案 20,117,873 U1号には、金属フォイル製の波板とフィルタ層とを交互に積層し、波板に爪状穴高さを有する複数の爪状穴を形成し、複数の爪状穴は内向爪状穴と外向爪状穴とを有する流路を形成し、内向爪状穴と外向爪状穴とは互いに角をなして配置され、爪状穴高さは構造高さの 100〜60%の高さがあり少なくとも20%の流動自由度が保証されたフィルタが記載されている。
【0008】
このフィルタによれば、爪状穴から出る排ガスがフィルタ層を通過することでPMがフィルタ層に捕集される。しかしこのフィルタ装置では、フィルタ層と爪状穴の爪部分にPMの堆積が進行すると、排ガスの流路が塞がれて排気圧損が急激に上昇するため、捕集できるPMの量を多くすることができずPM捕集効率を低くせざるを得ないという欠点がある。
【特許文献1】特開平09−262414号
【特許文献2】特開2002−113798号
【特許文献3】独国実用新案 20,117,873 U1号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで本願発明者らは、特願2004−117189号において、複数の排ガス流路と、排ガス流路に設置されたフィルタと、を有する排ガス浄化フィルタ装置であって、排ガス流路は、排ガスをフィルタへ導くフィルタ導入部と、フィルタ導入部に隣接する排ガス流路へ分岐してフィルタ導入部を迂回するフィルタ迂回部と、を有する排ガス浄化フィルタ装置を提案している。
【0010】
ところが実用化のために種々の実験を行ったところ、上記排ガス浄化フィルタ装置においては、運転状況によって高濃度のPMを含む排ガスが長時間流入した場合に、フィルタ装置の流入側端面にPMが多く堆積する場合があることが明らかとなった。このように流入側端面にPMが多く堆積すると、排気圧損が増大するばかりか、高温条件下などで着火するとフィルタ全体としては許容限界量以下の堆積量であっても局部的に急激に昇温し、溶損などの障害が起きることが懸念される。
【0011】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、PMの捕集効率の向上と、排気圧損の上昇の抑制を両立させるとともに、流入側端面へのPMの堆積を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決する本発明の排ガス浄化フィルタ装置の特徴は、複数の排ガス流路と、排ガス流路に設置されたフィルタと、を有する排ガス浄化フィルタ装置であって、
排ガス流路は、排ガスをフィルタへ導くフィルタ導入部と、フィルタ導入部に隣接する排ガス流路へ分岐してフィルタ導入部を迂回するフィルタ迂回部と、を有し、
最上流のフィルタ迂回部は、最上流のフィルタ導入部より上流側に設けられ排ガス入口側端面に開口していることにある。
【0013】
この排ガス浄化フィルタ装置をさらに具体化する排ガス浄化フィルタ装置の特徴は、金属薄板よりなり山部と谷部とが排ガス流れ方向と交差する方向に交互に連続する波状板と、耐熱性繊維が集積されてなり前記フィルタを構成するガス透過性の平板と、が交互に積層されてなり、
山部は山高さが低くなることで形成された凹状の中間谷部を有し、中間谷部は隣接する谷部から排ガスが分岐して流入可能な分岐部とその下流側で山部に連通する開口とよりなるフィルタ迂回部を構成し、
谷部は谷深さが浅くなることで形成された凸状の中間山部を有し、中間山部と隣接する両側の山部と山部に接する平板とで流路が閉塞されたフィルタ導入部を構成し、
フィルタ導入部内の圧力が高まった場合に、谷部を流れる排ガスの少なくとも一部がフィルタ導入部からフィルタ導入部の上流側に存在するフィルタ迂回部を通過して隣接する山部に流入し、最上流では排ガスは先ず最上流のフィルタ迂回部に流入するように構成されたことにある。
【0014】
また、この排ガス浄化フィルタ装置の特徴を波状板の裏側から表現すれば、金属薄板よりなり山部と谷部とが排ガス流れ方向と交差する方向に交互に連続する波状板と、耐熱性繊維が集積されてなりフィルタを構成するガス透過性の平板と、が交互に積層されてなり、
谷部は谷深さが浅くなることで形成された凸状の中間山部を有し、中間山部は隣接する山部から排ガスが分岐して流入可能な分岐部とその下流側で谷部に連通する開口とよりなるフィルタ迂回部を構成し、
山部は山高さが低くなることで形成された凹状の中間谷部を有し、中間谷部と隣接する両側の谷部と谷部に接する平板とで流路が閉塞されたフィルタ導入部を構成し、
フィルタ導入部内の圧力が高まった場合に、山部を流れる排ガスの少なくとも一部がフィルタ導入部からフィルタ導入部の上流側に存在するフィルタ迂回部を通過して隣接する谷部に流入し、最上流では排ガスは先ず最上流のフィルタ迂回部に流入するように構成されたことにある。
【0015】
最上流のフィルタ迂回部は、上流側開口と下流側開口をもつ山部と、下流側開口に連続した谷部と、谷部の深さが徐々に浅くなり下流側の山部に連続する逆中間谷部と、からなるものとすることができる。
【0016】
また最上流のフィルタ迂回部は、谷部と、谷部に形成され上流側端部に開口するとともに下流側に向かって高さが徐々に低くなり下流側の谷部に連続する逆中間山部と、よりなるものとすることもできる。
【0017】
さらに最上流のフィルタ迂回部は、波状板の下側に積層された平板の山部に対向する位置に形成された排ガス中のPMが透過可能な貫通孔としてもよいし、波状板の下側に積層された平板の山部に対向する位置に形成された排ガス中のPMが透過可能な切欠き部としてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の排ガス浄化フィルタ装置によれば、フィルタ導入部にPMが堆積して排気圧損が上昇すると、排ガスはフィルタ迂回部から分岐して流れるようになり、フィルタ迂回部を通って順次フィルタを迂回しながら流出側端部まで流通するので、排気圧損の上昇が抑制される。
【0019】
そしてフィルタ導入部からフィルタ迂回部までのフィルタをPMの捕集に用いることができ、フィルタの大きな面積をPMの捕集に用いることができるので、効率的にPMを捕集することができる。また、そのことにより、捕集されたPMを酸化処理するにあたり、酸化剤や熱が効率的にPMに伝わるため、捕集されたPMを効率的に酸化処理することができる。
【0020】
さらに排ガスは先ず最上流のフィルタ迂回部を通過するので、流入側端面へのPMの堆積を抑制することができ端面閉塞が起こり難い。したがって流入側端面の流路開口を常に大きく確保することができ、排気圧損の上昇を抑制できるとともに、過度の昇温による溶損を回避することができる。また、微視的にはPMの捕集効率が低下するものの、全排ガス流路が常時有効に機能するので、全体としての捕集効率は高く維持することができ、むしろPM捕集効率が向上するようにもなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の排ガス浄化フィルタ装置は、複数の排ガス流路と、排ガス流路に設置されたフィルタと、を有し、排ガス流路は、排ガスをフィルタへ導くフィルタ導入部と、フィルタ導入部に隣接する排ガス流路へ分岐してフィルタ導入部を迂回するフィルタ迂回部と、を備えている。
【0022】
フィルタはPMを捕集可能でかつ通気性を有するものであり、セラミックス、金属繊維集積体などを用いることができる。このフィルタを排ガス流路に配置することでフィルタ導入部を形成することができ、その上流側の排ガス流路に、隣接する排ガス流路と連通する貫通孔などを形成しておくことでフィルタ迂回部を形成することができる。特に好ましい形態としては、通気性をもたない波状板と平板状のフィルタとを交互に積層してなるハニカム形状のフィルタ装置とすることが望ましい。
【0023】
このようなフィルタ装置としては、請求項2又は請求項3に記載のものが特に好ましい。請求項2に記載の排ガス浄化フィルタ装置では、谷部と上側の平板とで形成された流路に流入した排ガスは、中間山部に衝突してフィルタ導入部を仕切る上側の平板を通過し、PMが平板に捕集される。そしてフィルタ導入部を仕切る上側の平板のPM捕集量が多くなると、フィルタ導入部内の圧力が高まるため、排ガスはフィルタ導入部から上流側のフィルタ迂回部の分岐部を通過し、両側の山部の中間谷部から開口を通じて両側の山部に分岐流入する。
【0024】
そして請求項3に記載のように波状板の裏面側では、中間谷部の裏面側が凸となって山部と下側の平板との間にフィルタ導入部が形成され、その上流側の谷部の中間山部にフィルタ迂回部が形成されているので、山部と下側の平板とで形成された流路に流入した排ガスは、中間谷部に衝突しフィルタ導入部内で圧力が高まった場合にフィルタ導入部から上流側のフィルタ迂回部を通過し、両側の谷部の中間山部の開口を通じて両側の谷部に分岐流入する。
【0025】
この作用が排ガス流入側端面から流出側端面まで連続的に繰り返される。
【0026】
すなわち、本発明のフィルタ装置は基本的にウォールフロー構造であるので、PMの捕集効率が高い。そしてフィルタ導入部における平板のPM捕集量が多くなっても、排ガスは上流側のフィルタ迂回部から分岐して山部又は谷部に流入し、これが連続的に生じる。したがってPMの堆積による排気圧損の上昇が一気に生じることがなく、また平板の大部分をPMの捕集に利用することができるため、排気圧損の上昇を効果的に抑制することが可能となる。
【0027】
さらに、最上流のフィルタ迂回部は、最上流のフィルタ導入部より上流側に設けられ排ガス入口側端面に開口している。したがって最上流では、排ガスは先ず最上流のフィルタ迂回部に流入するので、流入側端面へのPMの堆積を抑制することができ端面閉塞が起こり難い。
【0028】
波状板は、金属薄板から形成されたものであり、コルゲート加工などにより製造することが望ましい。その材質は、排ガス温度及び再生時の熱に耐え得る以上の耐熱性を有すれば特に制限されないが、ステンレス鋼材が好ましい。また自動車用の場合には、厚さは20〜 110μmの範囲が好ましく、40〜80μmの範囲が特に好ましい。
【0029】
平板は耐熱性繊維が集積されてなるガス透過性の部材であり、金属繊維、セラミックス繊維、金属ウィスカ、セラミックスウィスカなどの不織布、織布などから形成することができる。自動車用排ガス浄化フィルタ装置としてPM捕集効率の向上と排気圧損の上昇抑制とを両立させるためには、繊維径は15〜60μm程度が好ましく、目付量が300〜1000g/m2 のものが好ましい。
【0030】
本発明のフィルタ装置とするには、波状板と平板とを交互に積層して所定の外筒に挿入してもよいし、所定長さの波状板と平板とを重ねてロール状に巻回したものを所定の外筒に挿入することもできる。なお波状板は、全ての層で同じ向き及び同じ位相となるように積層してもよいし、交互に 180度異なる向きとなるように、あるいは位相が異なるように積層することもできる。しかし、フィルタ導入部が谷部に形成されている場合は、平板を介した反対側には隣接する波状板の山部が存在していることが望ましく、フィルタ導入部が山部に形成されている場合には、平板を介した反対側には隣接する波状板の谷部が存在していることが望ましい。これにより平板を透過した排ガスの流れが妨げられることなく、PMの捕集効率がより向上するとともに排気圧損の上昇をより抑制することができる。
【0031】
中間谷部あるいは中間山部は、山部又は谷部を変形させることで形成され、それぞれ上流側端部が底部又は頂部に向かって滑らかに連続していることが望ましい。すなわち上流側に向かって徐々に高さが低くなる、あるいは高くなる斜面で閉塞されていることが好ましい。このようにすることで、フィルタ導入部内の排ガスにはフィルタ導入部を仕切る平板に向かうベクトルが生成するので、PM捕集効率がさらに向上する。
【0032】
フィルタ導入部における平面視での波状板の開口面積は、平面視における波状板の合計開口面積の30%以上であることが望ましい。フィルタ導入部における平面視での波状板の開口面積が合計開口面積の30%未満では、平板の利用面積が低下しPM捕集効率が低下する。またフィルタ導入部の合計容積は、山部及び谷部の合計容積の50%以上であることが望ましい。この比率が50%未満になると、PMの捕集効率が低下するようになる。
【0033】
またフィルタ導入部からその上流側の分岐部までの距離が長いほどPMの捕集効率が向上するが、反面、排気圧損が上昇しやすくなる。したがってその距離には最適値がある。
【0034】
最上流のフィルタ迂回部は、上流側開口と下流側開口をもつ山部と、下流側開口に連続した谷部と、谷部の深さが徐々に浅くなり下流側の山部に連続する逆中間谷部と、からなるものとすることができる。この場合、排ガスは上流側端面から先ず山部に流入し、山部から出た排ガスは谷部から逆中間谷部に流入する。逆中間谷部は下流側の山部に連続しているので、先端部が平板で塞がれている。しかしその部分にPMが堆積したとしても、逆中間谷部の途中までは平板との間に隙間があり、排ガスはその隙間から両側の谷部に分岐して流入するので、山部及び逆中間谷部はフィルタ迂回部として機能する。
【0035】
また最上流のフィルタ迂回部は、谷部と、谷部に形成され上流側端部に開口するとともに下流側に向かって高さが徐々に低くなり下流側の谷部に連続する逆中間山部と、よりなるものとしてもよい。この場合、排ガスは上流側端面から先ず谷部に流入し、次いで逆中間山部に流入する。逆中間山部は天井部が下流側の谷部に連続しているので、裏面側では先端部が平板で塞がれている。しかしその部分にPMが堆積したとしても、逆中間山部の途中までは平板との間に隙間があり、排ガスはその隙間から両側の山部に分岐して流入するので、谷部及び逆中間山部はフィルタ迂回部として機能する。
【0036】
さらに最上流のフィルタ迂回部は、波状板の下側に積層された平板の山部に対向する位置に形成された排ガス中のPMが透過可能な貫通孔としてもよいし、波状板の下側に積層された平板の山部に対向する位置に形成された切欠き部としてもよい。この場合、排ガスは先ず山部に流入し、下流側のフィルタ導入部にPMが堆積したとしても、貫通孔あるいは切欠きを通じて、平板を介して下側に積層された波状板の排ガス流路に流入するので、貫通孔及び切欠き部はフィルタ迂回部として機能する。
【実施例】
【0037】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明する。
【0038】
(比較例1)
図1に本比較例のフィルタ装置の斜視図と要部拡大図を、図2に波状板の要部斜視図を、図3〜5に要部拡大断面図を示す。このフィルタ装置は、ステンレス鋼よりなりコルゲート加工により形成された厚さ65μmの波状板1と、ステンレス繊維製ファイバーマットからなる目付量 450g/m2 、厚さ 300μmの平板3とが交互に積層されてなるフィルタエレメントと、フィルタエレメントが圧入保持された外筒4と、から構成されている。
【0039】
図2に示す波状板1は、山部10と谷部11が排ガス流れ方向と直交する方向に交互に連続している。山部10には、凹状の中間谷部12が排ガス流れ方向に平行に互いに間隔を隔てて複数個形成されている。中間谷部12は排ガス上流側から下流側に向かって徐々に高さが低くなり、その先端は切り欠かれて再び山部10に連通する開口13が形成されている。中間谷部12の底部の深さは、谷部11の底部の位置と同一である。
【0040】
また谷部11には、凸状の中間山部14が排ガス流れ方向に平行に互いに間隔を隔てて複数個形成されている。中間山部14は、排ガス流れ方向において二つの中間谷部12の間に配置され、その高さは山部10の高さと同一である。
【0041】
複数の波状板1は、図3にも示すように、中間谷部12及び中間山部14の位相が排ガス流れ方向及び排ガス流れ方向と直角方向でそれぞれ同一となるように平板3と交互に積層され、フィルタエレメントの排ガス流れ方向に直角に切断した断面において中間谷部12及び中間山部14はそれぞれ同一位置となるように配置されている。また山部10は上側の平板3に当接し、谷部11は下側の平板3に当接している。
【0042】
このフィルタ装置では、図4〜図7に示すように、波状板1の表面側では、中間山部14と隣接する両側の山部10と上側の平板3とで流路の大部分が閉塞されたフィルタ導入部 100が形成されている。また波状板1の裏面側では、中間谷部12と隣接する両側の谷部11と下側の平板3とで流路の大部分が閉塞されたフィルタ導入部 101が形成されている。そしてフィルタ導入部 100の上流側では、中間谷部12の位置で山部10の高さが低くなり、開口13が形成されているので、谷部11を流れる排ガスは両側の開口13から両側の山部10へ分岐流入可能であり、その部分にフィルタ迂回部 200が形成されている。また裏面側では、フィルタ導入部 101の上流側の中間山部14の位置で谷部11の深さが浅くなり、開口15が形成されているので、山部10を流れる排ガスは両側の開口15から両側の谷部11へ分岐流入可能であり、その部分にもフィルタ迂回部 201が形成されている。
【0043】
そして図4に示すように、谷部11と上側の平板3との間に形成された流路を流れる排ガスは、中間山部14に衝突し、上側の平板3のPM捕集量が少ない状態では、大部分の排ガスは上側の平板3を透過して平板3の反対側に存在する波状板1の谷部11に流入し、PMの大部分が平板3で捕集される。
【0044】
PM捕集量が増大してフィルタ導入部 100における排ガスの圧力が高くなると、図5に示すように排ガスはフィルタ導入部 100の平板3を通過しにくくなり、点線矢印に示すように上流側に存在するフィルタ迂回部 200において中間谷部12から開口13を通過して隣接する山部10に分岐流入する。したがって排気圧損の上昇が抑制される。
【0045】
同様に山部10と下側の平板3の間に形成された流路を流れる排ガスは、図6に示すようにフィルタ導入部 101において中間谷部12に衝突し、下側の平板3のPM捕集量が少ない状態では、大部分の排ガスは下側の平板3を透過して平板3の反対側に存在する波状板1の谷部11に流入し、これによりPMの大部分が平板3で捕集される。
【0046】
PM捕集量が増大してフィルタ導入部 101における排ガスの圧力が高くなると、図7に示すように排ガスはフィルタ導入部 100の平板3を通過しにくくなり、点線矢印に示すように排ガスは上流側に存在するフィルタ迂回部 201において中間山部14から開口15を通過して隣接する谷部11に分岐流入する。したがって排気圧損の上昇が抑制される。
【0047】
本比較例のフィルタ装置によれば、排ガス流入側端面から流出側端面に向かって上記サイクルが連続的に繰り返されることで、フィルタ導入部 100、 101において平板3にPMが捕集される。そして多数のフィルタ導入部 100、 101が形成されているので、PMは平板3の全体に均一に分散して捕集されることとなり、捕集効率が向上するとともに、PMが捕集されても排気圧損が上昇しにくい。すなわちPM捕集効率の向上と、排気圧損の上昇の抑制とが両立することになる。
【0048】
(実施例1)
本実施例のフィルタ装置は、排ガス流入側端部における波状板の構造が異なること以外は、比較例1と同様の構造である。本実施例のフィルタ装置では、図8及び図9に示すように、排ガス流入側端面には、下流側に切欠かれた開口をもつ山部10が形成され、その下流側開口に連続して谷部11が形成されている。この谷部11には、深さが徐々に浅くなる逆中間谷部16が形成され、逆中間谷部16は下流側の山部10に連続して、この部分に最上流のフィルタ迂回部 202が形成されている。
【0049】
すなわち本実施例のフィルタ装置では、図9に矢印で示すように、排ガスは上流側端面から先ず山部10に流入し、山部10から出た排ガスは谷部11から逆中間谷部16に流入する。逆中間谷部16は下流側の山部10に連続しているので、先端部上面が平板3で塞がれている。しかしその部分にPMが堆積したとしても、逆中間谷部16の途中までは平板3との間に隙間があり、排ガスはその隙間から両側の谷部11に分岐して流入する。
【0050】
したがって最上流にフィルタ迂回部 202が形成されているので、排ガス流入側端面へのPMの堆積が抑制され、端面閉塞が防止されるとともに、過度の昇温による溶損も回避できる。
【0051】
(実施例2)
本実施例のフィルタ装置は、排ガス流入側端部における波状板1の構造が異なること以外は、比較例1と同様の構造である。本実施例のフィルタ装置では、図10に示すように、排ガス流入側端面には谷部11と、谷部11に形成され上流側に開口するとともに下流側に向かって高さが徐々に低くなり下流側の谷部11に連続する逆中間山部17が形成され、この部分に最上流のフィルタ迂回部 202が形成されている。
【0052】
すなわち本実施例のフィルタ装置では、図10に矢印で示すように、排ガスは上流側端面から先ず谷部11に流入し、次いで逆中間山部17に流入する。逆中間山部17は徐々に高さが低くなって下流側の谷部11に連続しているので、裏面側では先端部下面が平板3で塞がれている。しかしその部分にPMが堆積したとしても、逆中間山部17の途中までは平板3との間に隙間があり、排ガスはその隙間から両側の山部10に分岐して流入する。
【0053】
したがって最上流にフィルタ迂回部 202が形成されているので、排ガス流入側端面へのPMの堆積が抑制され、端面閉塞が防止されるとともに、過度の昇温による溶損も回避できる。
【0054】
(実施例3)
図11に示す本実施例のフィルタ装置は、排ガス流入側端部における平板3の構造が異なること以外は、比較例1と同様の構造である。平板3は、排ガス流入側端部のみが金属板30から形成され、その金属板30には、孔径数mmの貫通孔31が複数個形成されている。
【0055】
すなわち本実施例のフィルタ装置では、フィルタ導入部 100の上流側に貫通孔31が形成されているので、山部10に流入した排ガスはPMとともに貫通孔31を通過して裏面側に積層された次の波状板1に流入する。したがって最上流にフィルタ迂回部 202が形成されているので、排ガス流入側端面へのPMの堆積が抑制され、端面閉塞が防止されるとともに、過度の昇温による溶損も回避できる。
【0056】
(実施例4)
図12に示す本実施例のフィルタ装置は、排ガス流入側端部における平板3の構造が異なること以外は、比較例1と同様の構造である。平板3は排ガス流れ方向の長さが波状板1より短くされ、波状板1の排ガス流入側端部では、山部10の下側には平板3が存在していない。
【0057】
すなわち本実施例のフィルタ装置では、フィルタ導入部 100の上流側で平板3が存在しないので、山部10に流入した排ガスはPMとともに裏面側に積層された次の波状板1に流入する。したがって最上流にフィルタ迂回部 202が形成されているので、排ガス流入側端面へのPMの堆積が抑制され、端面閉塞が防止されるとともに、過度の昇温による溶損も回避できる。
【0058】
(比較例2)
独国実用新案 20,117,873 U1号の実施例1に記載のフィルタ装置を比較例2とした。
【0059】
すなわち比較例2のフィルタ装置は、比較例1と同様の波状板1が用いられ、比較例1と同様の平板3と交互に積層されているが、比較例1における排ガス入口側が出口側に、出口側が入口側となるように、 180度反転されている。
【0060】
<試験・評価>
実施例1〜4及び比較例1〜2のフィルタ装置を用い、PM捕集率と排気圧損及び前端面閉塞率を測定した。フィルタエレメントは、それぞれ直径 130mm、長さ75mmの約1Lのものであり、断面の面積1平方インチあたりのセル数はそれぞれ 200セルである。
【0061】
実施例と比較例の各フィルタ装置をそれぞれディーゼルエンジンの排気管に装着し、その上流側に 1.3Lの酸化触媒を配置した。そして高濃度のPMが排出される条件である2Lエンジン、 UDC疑似モードにて、EGR 全開状態で10時間運転し、フィルタの前端面におけるセル開口がPMで閉塞されている割合を目視で測定した。また、定常走行時(2Lエンジン、2400rpm 、50Nm、PM排出量3g/hr)においてPM堆積量が1g/Lとなった時点でのPM捕集率と排気圧損を測定した。結果を表1に示す。なお、ここでいうPMは煤(スート)を意味している。
【0062】
【表1】
【0063】
表1より、実施例1〜4のフィルタ装置は比較例1のフィルタ装置に比べて前端面閉塞率が低いことがわかり、これは最上流にフィルタ迂回部 202を形成した効果であることが明らかである。また実施例1〜4のフィルタ装置は、比較例2のフィルタ装置に比べてPM捕集効率が高く、排気圧損の上昇も大きく抑制されていることがわかり、これらの差異は波状板1の構造の差異に起因していることも明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の排ガス浄化フィルタ装置は、そのまま用いてもよいし、波状板及び平板の少なくとも一部表面にPtなどの触媒金属を担持したフィルタ触媒とすることもできる。触媒金属は波状板及び平板の少なくとも一部に直接担持することもできるし、多孔質酸化物からなるコート層を形成し、そのコート層に担持してもよい。このようなフィルタ触媒とすることで、PMを捕集と同時に酸化燃焼を促進することができる。また触媒金属によって、排ガス中のHC、COなどの有害ガス成分を浄化することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】比較例1のフィルタ装置の斜視図と要部拡大斜視図である。
【図2】比較例1のフィルタ装置に用いた波状板の要部斜視図である。
【図3】比較例1のフィルタ装置の要部拡大断面図である。
【図4】比較例1のフィルタ装置の要部拡大断面図である。
【図5】比較例1のフィルタ装置の要部拡大断面図である。
【図6】比較例1のフィルタ装置の要部拡大断面図である。
【図7】比較例1のフィルタ装置の要部拡大断面図である。
【図8】実施例1のフィルタ装置の斜視図と要部拡大斜視図である。
【図9】実施例1のフィルタ装置に用いた波状板の要部斜視図である。
【図10】実施例2のフィルタ装置に用いた波状板の要部斜視図である。
【図11】実施例3のフィルタ装置の要部斜視図である。
【図12】実施例4のフィルタ装置の要部斜視図である。
【符号の説明】
【0066】
1:波状板 3:平板 4:外筒 10:山部
11:谷部 12:中間谷部 13:開口 14:中間山部
15:開口 16:逆中間谷部 17:逆中間山部
100、 101:フィルタ導入部 200、 201、 202:フィルタ迂回部
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジンなどからの排ガス中の粒子状物質(以下、PMという)を捕集する排ガス浄化フィルタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンなどからの排ガス中には、カーボン微粒子、 SOF、サルフェート類などからなるPMが含まれているため、排出前にPMを除去して清浄な排ガスを排出する必要がある。このPMは、通常の酸化触媒、三元触媒などでは除去することが困難であるため、フィルタに捕集した後に酸化除去する方法が一般的である。
【0003】
このようなフィルタとしては、コーディエライトなどの耐熱性セラミックスからなり多数のセルをもつハニカム体に、下流側端部で目詰めされた流入側セルと、流入側セルに隣接し上流側端部で目詰めされた流出側セルを形成したウォールフロー型のものが広く用いられている。このフィルタでは、流入側セルに流入した排ガスがセル隔壁を通過して流出側セルから排出されるが、排ガスがセル隔壁を通過する際にPMがセル隔壁の細孔中に捕集される。そしてPMがある程度捕集されると、ヒータによる加熱などで捕集されたPMを燃焼させフィルタ機能を再生することが行われる。
【0004】
しかしこのようなフィルタでは、PM捕集量が多い場合には再生時の燃焼による発熱量が大きく、ヒートショックによって損傷する場合がある。また製造コストも高い。そこで近年では、金属製のフィルタ装置がいくつか提案されている。
【0005】
たとえば特開平09−262414号公報には、金属薄板からなる波板と金属不織布からなる平板とを交互に積層し、下流側端部で目詰めされた流入側セルと、流入側セルに隣接し上流側端部で目詰めされた流出側セルと、を形成したフィルタが記載されている。また特開2002−113798号公報には、金属不織布からなる平板と波板とを交互に積層し、下流側端部で目詰めされた流入側セルと、流入側セルに隣接し上流側端部で目詰めされた流出側セルと、を形成したフィルタが記載されている。
【0006】
これらのフィルタによれば、排ガス中のPMは金属不織布中に捕集される。そして加熱によってPMを燃焼させる再生処理を行っても、金属製であるためヒートショックが小さく損傷を抑制することができる。ところがこれらのフィルタは、いずれもウォールフロー型のフィルタであるので、PMの捕集に伴って排気圧損が上昇する。しかも流入側セルの目詰め部近傍にPMが集中して堆積するため排気圧損が一気に上昇するという不具合があり、エンジン効率や燃費などを重視する場合には再生処理を頻繁に行う必要がある。
【0007】
一方、独国実用新案 20,117,873 U1号には、金属フォイル製の波板とフィルタ層とを交互に積層し、波板に爪状穴高さを有する複数の爪状穴を形成し、複数の爪状穴は内向爪状穴と外向爪状穴とを有する流路を形成し、内向爪状穴と外向爪状穴とは互いに角をなして配置され、爪状穴高さは構造高さの 100〜60%の高さがあり少なくとも20%の流動自由度が保証されたフィルタが記載されている。
【0008】
このフィルタによれば、爪状穴から出る排ガスがフィルタ層を通過することでPMがフィルタ層に捕集される。しかしこのフィルタ装置では、フィルタ層と爪状穴の爪部分にPMの堆積が進行すると、排ガスの流路が塞がれて排気圧損が急激に上昇するため、捕集できるPMの量を多くすることができずPM捕集効率を低くせざるを得ないという欠点がある。
【特許文献1】特開平09−262414号
【特許文献2】特開2002−113798号
【特許文献3】独国実用新案 20,117,873 U1号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで本願発明者らは、特願2004−117189号において、複数の排ガス流路と、排ガス流路に設置されたフィルタと、を有する排ガス浄化フィルタ装置であって、排ガス流路は、排ガスをフィルタへ導くフィルタ導入部と、フィルタ導入部に隣接する排ガス流路へ分岐してフィルタ導入部を迂回するフィルタ迂回部と、を有する排ガス浄化フィルタ装置を提案している。
【0010】
ところが実用化のために種々の実験を行ったところ、上記排ガス浄化フィルタ装置においては、運転状況によって高濃度のPMを含む排ガスが長時間流入した場合に、フィルタ装置の流入側端面にPMが多く堆積する場合があることが明らかとなった。このように流入側端面にPMが多く堆積すると、排気圧損が増大するばかりか、高温条件下などで着火するとフィルタ全体としては許容限界量以下の堆積量であっても局部的に急激に昇温し、溶損などの障害が起きることが懸念される。
【0011】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、PMの捕集効率の向上と、排気圧損の上昇の抑制を両立させるとともに、流入側端面へのPMの堆積を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決する本発明の排ガス浄化フィルタ装置の特徴は、複数の排ガス流路と、排ガス流路に設置されたフィルタと、を有する排ガス浄化フィルタ装置であって、
排ガス流路は、排ガスをフィルタへ導くフィルタ導入部と、フィルタ導入部に隣接する排ガス流路へ分岐してフィルタ導入部を迂回するフィルタ迂回部と、を有し、
最上流のフィルタ迂回部は、最上流のフィルタ導入部より上流側に設けられ排ガス入口側端面に開口していることにある。
【0013】
この排ガス浄化フィルタ装置をさらに具体化する排ガス浄化フィルタ装置の特徴は、金属薄板よりなり山部と谷部とが排ガス流れ方向と交差する方向に交互に連続する波状板と、耐熱性繊維が集積されてなり前記フィルタを構成するガス透過性の平板と、が交互に積層されてなり、
山部は山高さが低くなることで形成された凹状の中間谷部を有し、中間谷部は隣接する谷部から排ガスが分岐して流入可能な分岐部とその下流側で山部に連通する開口とよりなるフィルタ迂回部を構成し、
谷部は谷深さが浅くなることで形成された凸状の中間山部を有し、中間山部と隣接する両側の山部と山部に接する平板とで流路が閉塞されたフィルタ導入部を構成し、
フィルタ導入部内の圧力が高まった場合に、谷部を流れる排ガスの少なくとも一部がフィルタ導入部からフィルタ導入部の上流側に存在するフィルタ迂回部を通過して隣接する山部に流入し、最上流では排ガスは先ず最上流のフィルタ迂回部に流入するように構成されたことにある。
【0014】
また、この排ガス浄化フィルタ装置の特徴を波状板の裏側から表現すれば、金属薄板よりなり山部と谷部とが排ガス流れ方向と交差する方向に交互に連続する波状板と、耐熱性繊維が集積されてなりフィルタを構成するガス透過性の平板と、が交互に積層されてなり、
谷部は谷深さが浅くなることで形成された凸状の中間山部を有し、中間山部は隣接する山部から排ガスが分岐して流入可能な分岐部とその下流側で谷部に連通する開口とよりなるフィルタ迂回部を構成し、
山部は山高さが低くなることで形成された凹状の中間谷部を有し、中間谷部と隣接する両側の谷部と谷部に接する平板とで流路が閉塞されたフィルタ導入部を構成し、
フィルタ導入部内の圧力が高まった場合に、山部を流れる排ガスの少なくとも一部がフィルタ導入部からフィルタ導入部の上流側に存在するフィルタ迂回部を通過して隣接する谷部に流入し、最上流では排ガスは先ず最上流のフィルタ迂回部に流入するように構成されたことにある。
【0015】
最上流のフィルタ迂回部は、上流側開口と下流側開口をもつ山部と、下流側開口に連続した谷部と、谷部の深さが徐々に浅くなり下流側の山部に連続する逆中間谷部と、からなるものとすることができる。
【0016】
また最上流のフィルタ迂回部は、谷部と、谷部に形成され上流側端部に開口するとともに下流側に向かって高さが徐々に低くなり下流側の谷部に連続する逆中間山部と、よりなるものとすることもできる。
【0017】
さらに最上流のフィルタ迂回部は、波状板の下側に積層された平板の山部に対向する位置に形成された排ガス中のPMが透過可能な貫通孔としてもよいし、波状板の下側に積層された平板の山部に対向する位置に形成された排ガス中のPMが透過可能な切欠き部としてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の排ガス浄化フィルタ装置によれば、フィルタ導入部にPMが堆積して排気圧損が上昇すると、排ガスはフィルタ迂回部から分岐して流れるようになり、フィルタ迂回部を通って順次フィルタを迂回しながら流出側端部まで流通するので、排気圧損の上昇が抑制される。
【0019】
そしてフィルタ導入部からフィルタ迂回部までのフィルタをPMの捕集に用いることができ、フィルタの大きな面積をPMの捕集に用いることができるので、効率的にPMを捕集することができる。また、そのことにより、捕集されたPMを酸化処理するにあたり、酸化剤や熱が効率的にPMに伝わるため、捕集されたPMを効率的に酸化処理することができる。
【0020】
さらに排ガスは先ず最上流のフィルタ迂回部を通過するので、流入側端面へのPMの堆積を抑制することができ端面閉塞が起こり難い。したがって流入側端面の流路開口を常に大きく確保することができ、排気圧損の上昇を抑制できるとともに、過度の昇温による溶損を回避することができる。また、微視的にはPMの捕集効率が低下するものの、全排ガス流路が常時有効に機能するので、全体としての捕集効率は高く維持することができ、むしろPM捕集効率が向上するようにもなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の排ガス浄化フィルタ装置は、複数の排ガス流路と、排ガス流路に設置されたフィルタと、を有し、排ガス流路は、排ガスをフィルタへ導くフィルタ導入部と、フィルタ導入部に隣接する排ガス流路へ分岐してフィルタ導入部を迂回するフィルタ迂回部と、を備えている。
【0022】
フィルタはPMを捕集可能でかつ通気性を有するものであり、セラミックス、金属繊維集積体などを用いることができる。このフィルタを排ガス流路に配置することでフィルタ導入部を形成することができ、その上流側の排ガス流路に、隣接する排ガス流路と連通する貫通孔などを形成しておくことでフィルタ迂回部を形成することができる。特に好ましい形態としては、通気性をもたない波状板と平板状のフィルタとを交互に積層してなるハニカム形状のフィルタ装置とすることが望ましい。
【0023】
このようなフィルタ装置としては、請求項2又は請求項3に記載のものが特に好ましい。請求項2に記載の排ガス浄化フィルタ装置では、谷部と上側の平板とで形成された流路に流入した排ガスは、中間山部に衝突してフィルタ導入部を仕切る上側の平板を通過し、PMが平板に捕集される。そしてフィルタ導入部を仕切る上側の平板のPM捕集量が多くなると、フィルタ導入部内の圧力が高まるため、排ガスはフィルタ導入部から上流側のフィルタ迂回部の分岐部を通過し、両側の山部の中間谷部から開口を通じて両側の山部に分岐流入する。
【0024】
そして請求項3に記載のように波状板の裏面側では、中間谷部の裏面側が凸となって山部と下側の平板との間にフィルタ導入部が形成され、その上流側の谷部の中間山部にフィルタ迂回部が形成されているので、山部と下側の平板とで形成された流路に流入した排ガスは、中間谷部に衝突しフィルタ導入部内で圧力が高まった場合にフィルタ導入部から上流側のフィルタ迂回部を通過し、両側の谷部の中間山部の開口を通じて両側の谷部に分岐流入する。
【0025】
この作用が排ガス流入側端面から流出側端面まで連続的に繰り返される。
【0026】
すなわち、本発明のフィルタ装置は基本的にウォールフロー構造であるので、PMの捕集効率が高い。そしてフィルタ導入部における平板のPM捕集量が多くなっても、排ガスは上流側のフィルタ迂回部から分岐して山部又は谷部に流入し、これが連続的に生じる。したがってPMの堆積による排気圧損の上昇が一気に生じることがなく、また平板の大部分をPMの捕集に利用することができるため、排気圧損の上昇を効果的に抑制することが可能となる。
【0027】
さらに、最上流のフィルタ迂回部は、最上流のフィルタ導入部より上流側に設けられ排ガス入口側端面に開口している。したがって最上流では、排ガスは先ず最上流のフィルタ迂回部に流入するので、流入側端面へのPMの堆積を抑制することができ端面閉塞が起こり難い。
【0028】
波状板は、金属薄板から形成されたものであり、コルゲート加工などにより製造することが望ましい。その材質は、排ガス温度及び再生時の熱に耐え得る以上の耐熱性を有すれば特に制限されないが、ステンレス鋼材が好ましい。また自動車用の場合には、厚さは20〜 110μmの範囲が好ましく、40〜80μmの範囲が特に好ましい。
【0029】
平板は耐熱性繊維が集積されてなるガス透過性の部材であり、金属繊維、セラミックス繊維、金属ウィスカ、セラミックスウィスカなどの不織布、織布などから形成することができる。自動車用排ガス浄化フィルタ装置としてPM捕集効率の向上と排気圧損の上昇抑制とを両立させるためには、繊維径は15〜60μm程度が好ましく、目付量が300〜1000g/m2 のものが好ましい。
【0030】
本発明のフィルタ装置とするには、波状板と平板とを交互に積層して所定の外筒に挿入してもよいし、所定長さの波状板と平板とを重ねてロール状に巻回したものを所定の外筒に挿入することもできる。なお波状板は、全ての層で同じ向き及び同じ位相となるように積層してもよいし、交互に 180度異なる向きとなるように、あるいは位相が異なるように積層することもできる。しかし、フィルタ導入部が谷部に形成されている場合は、平板を介した反対側には隣接する波状板の山部が存在していることが望ましく、フィルタ導入部が山部に形成されている場合には、平板を介した反対側には隣接する波状板の谷部が存在していることが望ましい。これにより平板を透過した排ガスの流れが妨げられることなく、PMの捕集効率がより向上するとともに排気圧損の上昇をより抑制することができる。
【0031】
中間谷部あるいは中間山部は、山部又は谷部を変形させることで形成され、それぞれ上流側端部が底部又は頂部に向かって滑らかに連続していることが望ましい。すなわち上流側に向かって徐々に高さが低くなる、あるいは高くなる斜面で閉塞されていることが好ましい。このようにすることで、フィルタ導入部内の排ガスにはフィルタ導入部を仕切る平板に向かうベクトルが生成するので、PM捕集効率がさらに向上する。
【0032】
フィルタ導入部における平面視での波状板の開口面積は、平面視における波状板の合計開口面積の30%以上であることが望ましい。フィルタ導入部における平面視での波状板の開口面積が合計開口面積の30%未満では、平板の利用面積が低下しPM捕集効率が低下する。またフィルタ導入部の合計容積は、山部及び谷部の合計容積の50%以上であることが望ましい。この比率が50%未満になると、PMの捕集効率が低下するようになる。
【0033】
またフィルタ導入部からその上流側の分岐部までの距離が長いほどPMの捕集効率が向上するが、反面、排気圧損が上昇しやすくなる。したがってその距離には最適値がある。
【0034】
最上流のフィルタ迂回部は、上流側開口と下流側開口をもつ山部と、下流側開口に連続した谷部と、谷部の深さが徐々に浅くなり下流側の山部に連続する逆中間谷部と、からなるものとすることができる。この場合、排ガスは上流側端面から先ず山部に流入し、山部から出た排ガスは谷部から逆中間谷部に流入する。逆中間谷部は下流側の山部に連続しているので、先端部が平板で塞がれている。しかしその部分にPMが堆積したとしても、逆中間谷部の途中までは平板との間に隙間があり、排ガスはその隙間から両側の谷部に分岐して流入するので、山部及び逆中間谷部はフィルタ迂回部として機能する。
【0035】
また最上流のフィルタ迂回部は、谷部と、谷部に形成され上流側端部に開口するとともに下流側に向かって高さが徐々に低くなり下流側の谷部に連続する逆中間山部と、よりなるものとしてもよい。この場合、排ガスは上流側端面から先ず谷部に流入し、次いで逆中間山部に流入する。逆中間山部は天井部が下流側の谷部に連続しているので、裏面側では先端部が平板で塞がれている。しかしその部分にPMが堆積したとしても、逆中間山部の途中までは平板との間に隙間があり、排ガスはその隙間から両側の山部に分岐して流入するので、谷部及び逆中間山部はフィルタ迂回部として機能する。
【0036】
さらに最上流のフィルタ迂回部は、波状板の下側に積層された平板の山部に対向する位置に形成された排ガス中のPMが透過可能な貫通孔としてもよいし、波状板の下側に積層された平板の山部に対向する位置に形成された切欠き部としてもよい。この場合、排ガスは先ず山部に流入し、下流側のフィルタ導入部にPMが堆積したとしても、貫通孔あるいは切欠きを通じて、平板を介して下側に積層された波状板の排ガス流路に流入するので、貫通孔及び切欠き部はフィルタ迂回部として機能する。
【実施例】
【0037】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明する。
【0038】
(比較例1)
図1に本比較例のフィルタ装置の斜視図と要部拡大図を、図2に波状板の要部斜視図を、図3〜5に要部拡大断面図を示す。このフィルタ装置は、ステンレス鋼よりなりコルゲート加工により形成された厚さ65μmの波状板1と、ステンレス繊維製ファイバーマットからなる目付量 450g/m2 、厚さ 300μmの平板3とが交互に積層されてなるフィルタエレメントと、フィルタエレメントが圧入保持された外筒4と、から構成されている。
【0039】
図2に示す波状板1は、山部10と谷部11が排ガス流れ方向と直交する方向に交互に連続している。山部10には、凹状の中間谷部12が排ガス流れ方向に平行に互いに間隔を隔てて複数個形成されている。中間谷部12は排ガス上流側から下流側に向かって徐々に高さが低くなり、その先端は切り欠かれて再び山部10に連通する開口13が形成されている。中間谷部12の底部の深さは、谷部11の底部の位置と同一である。
【0040】
また谷部11には、凸状の中間山部14が排ガス流れ方向に平行に互いに間隔を隔てて複数個形成されている。中間山部14は、排ガス流れ方向において二つの中間谷部12の間に配置され、その高さは山部10の高さと同一である。
【0041】
複数の波状板1は、図3にも示すように、中間谷部12及び中間山部14の位相が排ガス流れ方向及び排ガス流れ方向と直角方向でそれぞれ同一となるように平板3と交互に積層され、フィルタエレメントの排ガス流れ方向に直角に切断した断面において中間谷部12及び中間山部14はそれぞれ同一位置となるように配置されている。また山部10は上側の平板3に当接し、谷部11は下側の平板3に当接している。
【0042】
このフィルタ装置では、図4〜図7に示すように、波状板1の表面側では、中間山部14と隣接する両側の山部10と上側の平板3とで流路の大部分が閉塞されたフィルタ導入部 100が形成されている。また波状板1の裏面側では、中間谷部12と隣接する両側の谷部11と下側の平板3とで流路の大部分が閉塞されたフィルタ導入部 101が形成されている。そしてフィルタ導入部 100の上流側では、中間谷部12の位置で山部10の高さが低くなり、開口13が形成されているので、谷部11を流れる排ガスは両側の開口13から両側の山部10へ分岐流入可能であり、その部分にフィルタ迂回部 200が形成されている。また裏面側では、フィルタ導入部 101の上流側の中間山部14の位置で谷部11の深さが浅くなり、開口15が形成されているので、山部10を流れる排ガスは両側の開口15から両側の谷部11へ分岐流入可能であり、その部分にもフィルタ迂回部 201が形成されている。
【0043】
そして図4に示すように、谷部11と上側の平板3との間に形成された流路を流れる排ガスは、中間山部14に衝突し、上側の平板3のPM捕集量が少ない状態では、大部分の排ガスは上側の平板3を透過して平板3の反対側に存在する波状板1の谷部11に流入し、PMの大部分が平板3で捕集される。
【0044】
PM捕集量が増大してフィルタ導入部 100における排ガスの圧力が高くなると、図5に示すように排ガスはフィルタ導入部 100の平板3を通過しにくくなり、点線矢印に示すように上流側に存在するフィルタ迂回部 200において中間谷部12から開口13を通過して隣接する山部10に分岐流入する。したがって排気圧損の上昇が抑制される。
【0045】
同様に山部10と下側の平板3の間に形成された流路を流れる排ガスは、図6に示すようにフィルタ導入部 101において中間谷部12に衝突し、下側の平板3のPM捕集量が少ない状態では、大部分の排ガスは下側の平板3を透過して平板3の反対側に存在する波状板1の谷部11に流入し、これによりPMの大部分が平板3で捕集される。
【0046】
PM捕集量が増大してフィルタ導入部 101における排ガスの圧力が高くなると、図7に示すように排ガスはフィルタ導入部 100の平板3を通過しにくくなり、点線矢印に示すように排ガスは上流側に存在するフィルタ迂回部 201において中間山部14から開口15を通過して隣接する谷部11に分岐流入する。したがって排気圧損の上昇が抑制される。
【0047】
本比較例のフィルタ装置によれば、排ガス流入側端面から流出側端面に向かって上記サイクルが連続的に繰り返されることで、フィルタ導入部 100、 101において平板3にPMが捕集される。そして多数のフィルタ導入部 100、 101が形成されているので、PMは平板3の全体に均一に分散して捕集されることとなり、捕集効率が向上するとともに、PMが捕集されても排気圧損が上昇しにくい。すなわちPM捕集効率の向上と、排気圧損の上昇の抑制とが両立することになる。
【0048】
(実施例1)
本実施例のフィルタ装置は、排ガス流入側端部における波状板の構造が異なること以外は、比較例1と同様の構造である。本実施例のフィルタ装置では、図8及び図9に示すように、排ガス流入側端面には、下流側に切欠かれた開口をもつ山部10が形成され、その下流側開口に連続して谷部11が形成されている。この谷部11には、深さが徐々に浅くなる逆中間谷部16が形成され、逆中間谷部16は下流側の山部10に連続して、この部分に最上流のフィルタ迂回部 202が形成されている。
【0049】
すなわち本実施例のフィルタ装置では、図9に矢印で示すように、排ガスは上流側端面から先ず山部10に流入し、山部10から出た排ガスは谷部11から逆中間谷部16に流入する。逆中間谷部16は下流側の山部10に連続しているので、先端部上面が平板3で塞がれている。しかしその部分にPMが堆積したとしても、逆中間谷部16の途中までは平板3との間に隙間があり、排ガスはその隙間から両側の谷部11に分岐して流入する。
【0050】
したがって最上流にフィルタ迂回部 202が形成されているので、排ガス流入側端面へのPMの堆積が抑制され、端面閉塞が防止されるとともに、過度の昇温による溶損も回避できる。
【0051】
(実施例2)
本実施例のフィルタ装置は、排ガス流入側端部における波状板1の構造が異なること以外は、比較例1と同様の構造である。本実施例のフィルタ装置では、図10に示すように、排ガス流入側端面には谷部11と、谷部11に形成され上流側に開口するとともに下流側に向かって高さが徐々に低くなり下流側の谷部11に連続する逆中間山部17が形成され、この部分に最上流のフィルタ迂回部 202が形成されている。
【0052】
すなわち本実施例のフィルタ装置では、図10に矢印で示すように、排ガスは上流側端面から先ず谷部11に流入し、次いで逆中間山部17に流入する。逆中間山部17は徐々に高さが低くなって下流側の谷部11に連続しているので、裏面側では先端部下面が平板3で塞がれている。しかしその部分にPMが堆積したとしても、逆中間山部17の途中までは平板3との間に隙間があり、排ガスはその隙間から両側の山部10に分岐して流入する。
【0053】
したがって最上流にフィルタ迂回部 202が形成されているので、排ガス流入側端面へのPMの堆積が抑制され、端面閉塞が防止されるとともに、過度の昇温による溶損も回避できる。
【0054】
(実施例3)
図11に示す本実施例のフィルタ装置は、排ガス流入側端部における平板3の構造が異なること以外は、比較例1と同様の構造である。平板3は、排ガス流入側端部のみが金属板30から形成され、その金属板30には、孔径数mmの貫通孔31が複数個形成されている。
【0055】
すなわち本実施例のフィルタ装置では、フィルタ導入部 100の上流側に貫通孔31が形成されているので、山部10に流入した排ガスはPMとともに貫通孔31を通過して裏面側に積層された次の波状板1に流入する。したがって最上流にフィルタ迂回部 202が形成されているので、排ガス流入側端面へのPMの堆積が抑制され、端面閉塞が防止されるとともに、過度の昇温による溶損も回避できる。
【0056】
(実施例4)
図12に示す本実施例のフィルタ装置は、排ガス流入側端部における平板3の構造が異なること以外は、比較例1と同様の構造である。平板3は排ガス流れ方向の長さが波状板1より短くされ、波状板1の排ガス流入側端部では、山部10の下側には平板3が存在していない。
【0057】
すなわち本実施例のフィルタ装置では、フィルタ導入部 100の上流側で平板3が存在しないので、山部10に流入した排ガスはPMとともに裏面側に積層された次の波状板1に流入する。したがって最上流にフィルタ迂回部 202が形成されているので、排ガス流入側端面へのPMの堆積が抑制され、端面閉塞が防止されるとともに、過度の昇温による溶損も回避できる。
【0058】
(比較例2)
独国実用新案 20,117,873 U1号の実施例1に記載のフィルタ装置を比較例2とした。
【0059】
すなわち比較例2のフィルタ装置は、比較例1と同様の波状板1が用いられ、比較例1と同様の平板3と交互に積層されているが、比較例1における排ガス入口側が出口側に、出口側が入口側となるように、 180度反転されている。
【0060】
<試験・評価>
実施例1〜4及び比較例1〜2のフィルタ装置を用い、PM捕集率と排気圧損及び前端面閉塞率を測定した。フィルタエレメントは、それぞれ直径 130mm、長さ75mmの約1Lのものであり、断面の面積1平方インチあたりのセル数はそれぞれ 200セルである。
【0061】
実施例と比較例の各フィルタ装置をそれぞれディーゼルエンジンの排気管に装着し、その上流側に 1.3Lの酸化触媒を配置した。そして高濃度のPMが排出される条件である2Lエンジン、 UDC疑似モードにて、EGR 全開状態で10時間運転し、フィルタの前端面におけるセル開口がPMで閉塞されている割合を目視で測定した。また、定常走行時(2Lエンジン、2400rpm 、50Nm、PM排出量3g/hr)においてPM堆積量が1g/Lとなった時点でのPM捕集率と排気圧損を測定した。結果を表1に示す。なお、ここでいうPMは煤(スート)を意味している。
【0062】
【表1】
【0063】
表1より、実施例1〜4のフィルタ装置は比較例1のフィルタ装置に比べて前端面閉塞率が低いことがわかり、これは最上流にフィルタ迂回部 202を形成した効果であることが明らかである。また実施例1〜4のフィルタ装置は、比較例2のフィルタ装置に比べてPM捕集効率が高く、排気圧損の上昇も大きく抑制されていることがわかり、これらの差異は波状板1の構造の差異に起因していることも明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の排ガス浄化フィルタ装置は、そのまま用いてもよいし、波状板及び平板の少なくとも一部表面にPtなどの触媒金属を担持したフィルタ触媒とすることもできる。触媒金属は波状板及び平板の少なくとも一部に直接担持することもできるし、多孔質酸化物からなるコート層を形成し、そのコート層に担持してもよい。このようなフィルタ触媒とすることで、PMを捕集と同時に酸化燃焼を促進することができる。また触媒金属によって、排ガス中のHC、COなどの有害ガス成分を浄化することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】比較例1のフィルタ装置の斜視図と要部拡大斜視図である。
【図2】比較例1のフィルタ装置に用いた波状板の要部斜視図である。
【図3】比較例1のフィルタ装置の要部拡大断面図である。
【図4】比較例1のフィルタ装置の要部拡大断面図である。
【図5】比較例1のフィルタ装置の要部拡大断面図である。
【図6】比較例1のフィルタ装置の要部拡大断面図である。
【図7】比較例1のフィルタ装置の要部拡大断面図である。
【図8】実施例1のフィルタ装置の斜視図と要部拡大斜視図である。
【図9】実施例1のフィルタ装置に用いた波状板の要部斜視図である。
【図10】実施例2のフィルタ装置に用いた波状板の要部斜視図である。
【図11】実施例3のフィルタ装置の要部斜視図である。
【図12】実施例4のフィルタ装置の要部斜視図である。
【符号の説明】
【0066】
1:波状板 3:平板 4:外筒 10:山部
11:谷部 12:中間谷部 13:開口 14:中間山部
15:開口 16:逆中間谷部 17:逆中間山部
100、 101:フィルタ導入部 200、 201、 202:フィルタ迂回部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の排ガス流路と、該排ガス流路に設置されたフィルタと、を有する排ガス浄化フィルタ装置であって、
該排ガス流路は、排ガスを該フィルタへ導くフィルタ導入部と、該フィルタ導入部に隣接する該排ガス流路へ分岐して該フィルタ導入部を迂回するフィルタ迂回部と、を有し、
最上流の該フィルタ迂回部は、最上流の該フィルタ導入部より上流側に設けられ排ガス入口側端面に開口していることを特徴とする排ガス浄化フィルタ装置。
【請求項2】
金属薄板よりなり山部と谷部とが排ガス流れ方向と交差する方向に交互に連続する波状板と、耐熱性繊維が集積されてなり前記フィルタを構成するガス透過性の平板と、が交互に積層されてなり、
該山部は山高さが低くなることで形成された凹状の中間谷部を有し、該中間谷部は隣接する該谷部から排ガスが分岐して流入可能な分岐部とその下流側で該山部に連通する開口とよりなる前記フィルタ迂回部を構成し、
該谷部は谷深さが浅くなることで形成された凸状の中間山部を有し、該中間山部と隣接する両側の該山部と該山部に接する該平板とで流路が閉塞された前記フィルタ導入部を構成し、
該フィルタ導入部内の圧力が高まった場合に、該谷部を流れる排ガスの少なくとも一部が該フィルタ導入部から該フィルタ導入部の上流側に存在する該フィルタ迂回部を通過して隣接する該山部に流入し、最上流では排ガスは先ず最上流の該フィルタ迂回部に流入するように構成された請求項1に記載の排ガス浄化フィルタ装置。
【請求項3】
金属薄板よりなり山部と谷部とが排ガス流れ方向と交差する方向に交互に連続する波状板と、耐熱性繊維が集積されてなりフィルタを構成するガス透過性の平板と、が交互に積層されてなり、
該谷部は谷深さが浅くなることで形成された凸状の中間山部を有し、該中間山部は隣接する該山部から排ガスが分岐して流入可能な分岐部とその下流側で該谷部に連通する開口とよりなるフィルタ迂回部を構成し、
該山部は山高さが低くなることで形成された凹状の中間谷部を有し、該中間谷部と隣接する両側の該谷部と該谷部に接する該平板とで流路が閉塞されたフィルタ導入部を構成し、
該フィルタ導入部内の圧力が高まった場合に、該山部を流れる排ガスの少なくとも一部が該フィルタ導入部から該フィルタ導入部の上流側に存在する該フィルタ迂回部を通過して隣接する該谷部に流入し、最上流では排ガスは先ず最上流の該フィルタ迂回部に流入するように構成された請求項1に記載の排ガス浄化フィルタ装置。
【請求項4】
最上流の前記フィルタ迂回部は、上流側開口と下流側開口をもつ前記山部と、該下流側開口に連続した前記谷部と、該谷部の深さが徐々に浅くなり下流側の前記山部に連続する逆中間谷部と、よりなる請求項2又は請求項3に記載の排ガス浄化フィルタ装置。
【請求項5】
最上流の前記フィルタ迂回部は、前記谷部と、該谷部に形成され上流側端部に開口するとともに下流側に向かって高さが徐々に低くなり下流側の前記谷部に連続する逆中間山部と、よりなる請求項2又は請求項3に記載の排ガス浄化フィルタ装置。
【請求項6】
最上流の前記フィルタ迂回部は、前記波状板の下側に積層された前記平板の前記山部に対向する位置に形成された排ガス中の粒子状物質が透過可能な貫通孔である請求項2又は請求項3に記載の排ガス浄化フィルタ装置。
【請求項7】
最上流の前記フィルタ迂回部は、前記波状板の下側に積層された前記平板の前記山部に対向する位置に形成された排ガス中の粒子状物質が透過可能な切欠き部である請求項2又は請求項3に記載の排ガス浄化フィルタ装置。
【請求項1】
複数の排ガス流路と、該排ガス流路に設置されたフィルタと、を有する排ガス浄化フィルタ装置であって、
該排ガス流路は、排ガスを該フィルタへ導くフィルタ導入部と、該フィルタ導入部に隣接する該排ガス流路へ分岐して該フィルタ導入部を迂回するフィルタ迂回部と、を有し、
最上流の該フィルタ迂回部は、最上流の該フィルタ導入部より上流側に設けられ排ガス入口側端面に開口していることを特徴とする排ガス浄化フィルタ装置。
【請求項2】
金属薄板よりなり山部と谷部とが排ガス流れ方向と交差する方向に交互に連続する波状板と、耐熱性繊維が集積されてなり前記フィルタを構成するガス透過性の平板と、が交互に積層されてなり、
該山部は山高さが低くなることで形成された凹状の中間谷部を有し、該中間谷部は隣接する該谷部から排ガスが分岐して流入可能な分岐部とその下流側で該山部に連通する開口とよりなる前記フィルタ迂回部を構成し、
該谷部は谷深さが浅くなることで形成された凸状の中間山部を有し、該中間山部と隣接する両側の該山部と該山部に接する該平板とで流路が閉塞された前記フィルタ導入部を構成し、
該フィルタ導入部内の圧力が高まった場合に、該谷部を流れる排ガスの少なくとも一部が該フィルタ導入部から該フィルタ導入部の上流側に存在する該フィルタ迂回部を通過して隣接する該山部に流入し、最上流では排ガスは先ず最上流の該フィルタ迂回部に流入するように構成された請求項1に記載の排ガス浄化フィルタ装置。
【請求項3】
金属薄板よりなり山部と谷部とが排ガス流れ方向と交差する方向に交互に連続する波状板と、耐熱性繊維が集積されてなりフィルタを構成するガス透過性の平板と、が交互に積層されてなり、
該谷部は谷深さが浅くなることで形成された凸状の中間山部を有し、該中間山部は隣接する該山部から排ガスが分岐して流入可能な分岐部とその下流側で該谷部に連通する開口とよりなるフィルタ迂回部を構成し、
該山部は山高さが低くなることで形成された凹状の中間谷部を有し、該中間谷部と隣接する両側の該谷部と該谷部に接する該平板とで流路が閉塞されたフィルタ導入部を構成し、
該フィルタ導入部内の圧力が高まった場合に、該山部を流れる排ガスの少なくとも一部が該フィルタ導入部から該フィルタ導入部の上流側に存在する該フィルタ迂回部を通過して隣接する該谷部に流入し、最上流では排ガスは先ず最上流の該フィルタ迂回部に流入するように構成された請求項1に記載の排ガス浄化フィルタ装置。
【請求項4】
最上流の前記フィルタ迂回部は、上流側開口と下流側開口をもつ前記山部と、該下流側開口に連続した前記谷部と、該谷部の深さが徐々に浅くなり下流側の前記山部に連続する逆中間谷部と、よりなる請求項2又は請求項3に記載の排ガス浄化フィルタ装置。
【請求項5】
最上流の前記フィルタ迂回部は、前記谷部と、該谷部に形成され上流側端部に開口するとともに下流側に向かって高さが徐々に低くなり下流側の前記谷部に連続する逆中間山部と、よりなる請求項2又は請求項3に記載の排ガス浄化フィルタ装置。
【請求項6】
最上流の前記フィルタ迂回部は、前記波状板の下側に積層された前記平板の前記山部に対向する位置に形成された排ガス中の粒子状物質が透過可能な貫通孔である請求項2又は請求項3に記載の排ガス浄化フィルタ装置。
【請求項7】
最上流の前記フィルタ迂回部は、前記波状板の下側に積層された前記平板の前記山部に対向する位置に形成された排ガス中の粒子状物質が透過可能な切欠き部である請求項2又は請求項3に記載の排ガス浄化フィルタ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−247532(P2006−247532A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−67849(P2005−67849)
【出願日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(594174493)エミテク・ゲゼルシャフト・フュール・エミシオーンテクノロギー・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (27)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(594174493)エミテク・ゲゼルシャフト・フュール・エミシオーンテクノロギー・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (27)
【Fターム(参考)】
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