説明

排ワラ処理装置への動力伝達構造

【課題】 無端回動体を複数個配置する場合に、それらの無端回動体にテンション力を付与するテンション回転体を設ける場合に、構成の簡素化を図った状態で設けることができる排ワラ処理装置への動力伝達構造を提供する。
【解決手段】 脱穀後の排ワラを処理する排ワラ処理装置への動力を供給する第1チェーン伝動機構22と、第1チェーン伝動機構22から動力伝達を受けて排ワラ処理装置の各部へ動力を供給する第2チェーン伝動機構23とを設ける。第1チェーン伝動機構22と前記第2チェーン伝動機構23とに夫々、テンション力を付与する第1、第2テンションスプロケット40、41とを、排ワラ処理装置を収納する収納ケース15の側壁15Aに貫通支持した単一の支持軸35周りで揺動自在に支持させて設けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱穀後の排ワラを処理する排ワラ処理装置への動力伝達構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の排ワラ処理装置への動力伝達構造においては、排ワラ処理装置の紐供給部の出力軸(14:公報内番号)と結節部Cの入力軸15とに亘ってチェーン伝動機構(32:公報内番号)を巻回するとともに、このチェーン伝動機構(32:公報内番号)にテンション力を付与するテンション回転体を設けたものがある(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開昭63−146718号公報(公報第2頁右下欄の第11行〜第15行及び、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記構成においては、単一の無端回動体に対して単一のテンション回転体が設けられている。
【0005】
本発明の目的は、無端回動体を複数個配置する場合に、それらの無端回動体にテンション力を付与するテンション回転体を設ける場合に、構成の簡素化を図った状態で設けることができる排ワラ処理装置への動力伝達構造を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔構成〕
請求項1に係る発明の特徴構成は、脱穀後の排ワラを処理する排ワラ処理装置を設け、前記排ワラ処理装置への動力を受ける第1入力回転体を軸支するとともに、前記第1入力回転体を駆動して機体側からの動力を伝達する第1無端回動体と、前記第1入力回転体に投入された動力で駆動される第1出力回転体と前記排ワラ処理装置の各部へ動力を供給する第2入力回転体とに亘って掛け渡されている第2無端回動体とを設け、前記第1無端回動体にテンション力を付与する第1テンション回転体と前記第2無端回動体にテンション力を付与する第2テンション回転体とを、同一軸芯周りで揺動自在に支持してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0007】
〔作用〕
つまり、第1無端回動体と第2無端回動体とが設けられている場合には、通常の手段では、第1無端回動体にテンション力を付与する第1テンション回転体を揺動自在に支持するとともに、第2無端回動体にテンション力を付与する第2テンション回転体を、前記第1テンション回転体を支持する部位とは別個の部位で支持する構成を採る。
これに対して、本願発明においては、第1テンション回転体と第2テンション回転体とを同一軸芯位置で揺動自在に支持することにしたので、両テンション回転体の支持構造を単一化できる。
【0008】
〔効果〕
したがって、支持構造を単一化できることにより、構造の簡素化が図れる。
【0009】
請求項2に係る発明の特徴構成は、請求項1に係る発明において、前記第1無端回動体と前記第2無端回動体とを前記排ワラ処理装置を収納する収納ケースの側壁を挟んで内外に配置するとともに、前記第1テンション回転体と第2テンション回転体とを揺動自在に支持する単一の支持軸を、前記側壁を貫通させて設けてある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0010】
〔作用効果〕
つまり、第1無端回動体と第2無端回動体とが側壁を挟んで配置されているが、両無端回動体にテンション力を付与するテンション回転体を同一軸芯周りに揺動自在に支持する構成を採るために、側壁を貫通させた単一の支持軸を設けた。これによって、二つのテンション回転体を単一の支持軸で支持することができ、支持構造として簡素化が図れる。
【0011】
請求項3に係る発明の特徴構成は、請求項1に係る発明において、前記第1テンション回転体を回転自在に支持する第1テンションアームと前記第2テンション回転体を回転自在に支持する第2テンションアームとを、前記単一の支持軸に回転自在に装着し、前記第1テンションアームと前記第2テンションアームとを、テンション力付与方向に付勢する単一の付勢バネを作用させてある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0012】
〔作用効果〕
つまり、単一の支持軸に二つのテンションアームを支持させているので、テンション力を現出させる手段である付勢バネを単一のものに設定しても、両テンションアームに対してテンション力を付与することができ、付勢手段の簡素化を図るこができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
自脱型コンバインの排ワラ処理装置について説明する。図1及び図3に示すように、脱穀済み排ワラを後部に向けて搬送する排ワラ搬送装置3、排ワラ搬送装置3で搬送される排ワラを受け入れて円盤型排ワラカッタで細断処理する細断処理装置1、細断処理装置1の後方において排ワラを結束する排ワラ結束装置Bが、夫々、コンバイン本機Aの後端に配備されており、後支点aを中心に上下揺動可能に配備された経路切換具2を下げて細断処理装置1の上部入口を閉塞することで、脱穀装置から搬出され排ワラ搬送装置3によって搬送されてきた横倒れ姿勢の排ワラを排ワラ結束装置Bに供給し、また、経路切換具2を上げて細断処理装置1の上部入口を開放することで、搬送されてきた排ワラを細断して下方に放出することができるようになっている。
【0014】
図2及び図4に示すように、前記排ワラ結束装置Bは、横倒れ姿勢で供給されてきた排ワラを所定量づつ収集して結束し、形成されたワラ束を機体後方に放出するものであり、排ワラ穂先側に配備された上下に長い伝動ケース4の上下中間部位に集束空間Sが形成されている。なお、図2に示すように、排ワラ結束装置Bの株元側には、搬入されてくる排ワラの株端を左右揺動する叩き板5によって叩き揃える株揃え装置Dが配備される。図中13は、叩き板5を排ワラ搬送装置3で送られる排ワラの株元(又は穂先)位置を検出するセンサ(図示せず)の検出結果に基づいて、叩き板5を排ワラの稈身方向に移動させる電動モータであり、14は電動モータ13で駆動されるネジ軸である。
【0015】
前記集束空間Sの下側となる伝動ケース4の下部には、図3及び図4に示すように、搬送されてきた排ワラを集束空間Sに向けて送り込むクランク式の掻き込みパッカー6、結束紐供給用のニードル7、集束空間Sに集められた排ワラの集束圧を感知する感知ドア8、等が装備されるとともに、集束空間Sの上側となる伝動ケース上部には、搬送されてきた排ワラを掻き込みパッカー6の作用域に送り込むクランク式の補助パッカー9、集束空間Sに面する紐案内板12、ノッタ・ビル方式の周知の結節機構10、クランク式の放出機構11が装備されており、掻き込みパッカー6および補助パッカー9は常時駆動されるとともに、下部のニードル7と上部の結節機構10、および、放出機構11は集束圧感知に基づいて間欠的に同調駆動されるようになっている。
【0016】
上記排ワラ結束装置Bの基本的な結束作動を以下に説明する。つまり、搬送されてきた排ワラは、先ず補助パッカー9によって後方に掻き込まれ、引き続き掻き込みパッカー6の掻き込み作用を受けて集束空間Sに送込まれる。感知ドア8に作用する集束圧が設定値未満の間は、ケース内装の1回転クラッチ(図示)が切られており、ニードル7は集束空間Sの下方に退避した待機位置で停止している。また、このニードル7に同調連動されている結節機構10および放出機構11も待機状態で停止している。
【0017】
排ワラ処理装置への伝動構造について説明する。図4及び図5に示すように、排ワラ結束装置B、及び、株揃え装置Dとを収納する収納ケース15の左側壁15Aの上端近くに、排ワラ処理装置への動力を受ける第1入力スプロケット(第1入力回転体の一例)16を、前記左側壁15Aに回転する状態で支持している。つまり、図6に示すように、左側壁15Aに筒軸17を回転自在にベアリング支持するとともに、筒軸17内に6角状回転軸18を相対回転自在に挿入して筒軸17に支持させてある。6角状回転軸18を筒軸17より収納ケース15の外方側に突出させ、6角状回転軸18の円形断面突出端部分にベアリング19を介して第1入力スプロケット16を相対回転自在に外嵌してある。6角状回転軸18に対してクラッチスリーブ20をスプライン外嵌し、このクラッチスリーブ20と第1入力スプロケット16との相対向する側面に係脱自在な係合突起を設けて、クラッチ機構Cを構成してある。そして、クラッチスリーブ20が第1入力スプロケット16に係合する方向に付勢するバネ21が設けてあり、第1入力スプロケット16に過負荷が作用した場合には、バネ21が後退してクラッチスリーブ20が第1入力スプロケット16から離間して動力伝達を断つ、ジャンプクラッチ機構を構成している。
【0018】
図5に示すように、第1入力スプロケット16には、本機側から排ワラ処理装置に動力伝達する第1チェーン伝動機構(第1無端回動体の一例)22が架張してある。
【0019】
次に、収納ケース15の左側壁15A内側に配置される第2チェーン伝動機構(第2無端回動体の一例)23について説明する。図5及び図6に示すように、第1入力スプロケット16取付部位に位置する6角状回転軸18に第1出力スプロケット24を一体回転自在に取付固定する。第1出力スプロケット24の下方には、伝動ケース4側へ向かう動力出力部が形成されている。この動力出力部は、左側壁15Aに内外貫通する状態で回転自在に支持されている中継軸25と、中継軸25における収納ケース15の内側に突出している部分に装着されている第2入力スプロケット(第2入力回転体の一例)26と、中継軸25における収納ケース15の外側に突出している部分に装着されている出力ギヤ27と、中継軸25と平行に左側壁15Aに取り付けられる伝動軸28と、伝動軸28における収納ケース15の外側に突出している部分に装着され出力ギヤ27と咬合して動力伝達を受ける伝動ギヤ29と、伝動軸28を伝動ケース4側に向けて動力伝達可能に延出される伝動ケース30と、で構成してある。
【0020】
図4〜図6に示すように、6角状回転軸18に装着された第1出力スプロケット24と中継軸25に装着された第2入力スプロケット26とに渡って第2チェーン伝動機構23を掛け渡してある。一方、中継軸25と伝動軸28とは同一の軸受ケース31にベアリング支持されており、その軸受ケース31を介して左側壁15Aに取り付けられている。
図7に示すように、軸受ケース31は、周縁の5つのボルト孔を介して左側壁15Aに取り付けられているが、対応する左側壁15Aには、ボルト32を挿通する長孔15aが形成されている。この長孔15aは、伝動軸28の軸芯位置Xを中心にした円弧状を呈するものであり、軸受ケース31が軸芯位置Xを中心にして回転変位できる構成になっている。
【0021】
一方、図5〜図7に示すように、軸受ケース31の中継軸25取付部位上方側には、軸受ケース31が軸芯位置Xを中心にして回転変位するのを受止阻止する規制調節機構33を設けてある。規制調節機構33は、左側壁15Aに固設されたブラケット33Aとそのブラケット33Aに受止用ネジ軸33Bとからなり、受止用ネジ軸33Bはブラケット33Aに出退自在に装着してある。この受止ネジ軸33Bのブラケット33Aからの突出量を調節することによって、軸受ケース31の軸芯位置Xを中心とした回転変位量を調節できるようになっており、第2チェーン伝動機構23に対するテンション力を調節できるようになっている。
【0022】
第1チェーン伝動機構22、及び、第2チェーン伝動機構23に対するテンション機構に付いて説明する。図5及び図6に示すように、左側壁15Aに貫通ボス34を取り付けるとともに、貫通ボス34に二つのネジ軸37,37を、貫通ボス34の両端より挿通してその貫通ボス34にベアリング36、36とともに螺着してある。収納ケース15の外側に位置する外側ベアリング36に、第1チェーン伝動機構22にテンション力を付与する第1テンションアーム38を相対回転自在に取り付けるとともに、収納ケース15の内側に位置する内側ベアリング36に、第2チェーン伝動機構23にテンション力を付与する第2テンションアーム39を相対回転自在に取り付ける。
【0023】
図5及び図6に示すように、第1テンションアーム38の先端部には、横向きに支軸38Aが突設され、支軸38Aにベアリングを介して第1回動チェーン22Aに作用する第1テンションスプロケット(第1テンション回転体の一例)40が遊転自在に取り付けてある。第2テンションアーム39の先端部には、横向きに支軸39Aが突設され、支軸39Aにベアリングを介して第2回動チェーン23Aに作用する第2テンションスプロケット(第2テンション回転体の一例)41が遊転自在に取り付けてある。
【0024】
図5及び図6に示すように、第1テンションアーム38を付勢する手段は、そのアーム38と左側壁15Aとの間に設けたトーションスプリング42で構成してある。又は、第2テンションアーム39を付勢する手段は、そのアーム39と左側壁15Aとに亘って架設したコイルスプリング43で構成してある。
【0025】
〔別実施形態〕
(1) 第1チェーン伝動機構22と第2チェーン伝動機構23で必要とするテンション力がバランスするものであれば、両チェーン22A、23Aにテンション力を付与するバネを、前記したトーションバネ42の一方だけで行うべく、図8に示すように、トーションバネ42における左側壁15Aに係止したバネ基端部を共通にして、そのバネ基端部より内外にトーションバネを延出し先端部を夫々テンションアーム38,39に係止して、両テンションアーム38,39に亘って装着されるように構成してもよい。
(2) 図示していないが、第1チェーン伝動機構22と第2チェーン伝動機構23で必要とするテンション力がバランスするものであれば、第1テンションアーム38と第2テンションアーム39、及び、ネジ軸37,37を一体で構成すると、両チェーン22A、23Aにテンション力を付与するバネを、前記したトーションバネ42と引張コイルバネ43との一方だけで行うことができる。これによって、両テンションアーム38,39を単一の支持軸で支持構成でき、構造の簡素化を図ることができる。
(3) テンション力を付与するバネの形態としては、トーションバネ42と引張コイルバネ43とのどちらかの形態であればよく、更には、板バネ等を使用することができる。
(4) 無端回動体としては、チェーン以外の各種ベルトであってもよい。
(5) 排ワラ処理装置として、排ワラ結束装置B、株揃え装置D、立体放出装置等を前記実施例で示したが、これらのうちすべてのものを備えてなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】コンバイン後部の側面図
【図2】コンバイン後部の平面図
【図3】排ワラ結束装置の側面図
【図4】排ワラ結束装置の背面図
【図5】排ワラ処理装置への伝動構造を示す側面図
【図6】図5の縦断背面図
【図7】軸受ケースを示す側面図
【図8】第1、第2テンションアームに対する付勢手段として、単一のトーションスプリングに変更した状態を示す縦断背面図
【符号の説明】
【0027】
15 収納ケース
15A 側壁
16 第1入力回転体
22 第1無端回動体
23 第2無端回動体
24 第1出力回転体
26 第2入力回転体
37 支持軸
40 第1テンション回転体
41 第2テンション回転体
Y 軸芯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱穀後の排ワラを処理する排ワラ処理装置を設け、前記排ワラ処理装置への動力を受ける第1入力回転体を軸支するとともに、前記第1入力回転体を駆動して機体側からの動力を伝達する第1無端回動体と、前記第1入力回転体に投入された動力で駆動される第1出力回転体と前記排ワラ処理装置の各部へ動力を供給する第2入力回転体とに亘って掛け渡されている第2無端回動体とを設け、前記第1無端回動体にテンション力を付与する第1テンション回転体と前記第2無端回動体にテンション力を付与する第2テンション回転体とを、同一軸芯周りで揺動自在に支持してある排ワラ処理装置への動力伝達構造。
【請求項2】
前記第1無端回動体と前記第2無端回動体とを前記排ワラ処理装置を収納する収納ケースの側壁を挟んで内外に配置するとともに、前記第1テンション回転体と第2テンション回転体とを揺動自在に支持する単一の支持軸を、前記側壁を貫通させて設けてある請求項1記載の排ワラ処理装置への動力伝達構造。
【請求項3】
前記第1テンション回転体を回転自在に支持する第1テンションアームと前記第2テンション回転体を回転自在に支持する第2テンションアームとを、前記単一の支持軸に回転自在に装着し、前記第1テンションアームと前記第2テンションアームとを、テンション力付与方向に付勢する単一の付勢バネを作用させてある請求項2記載の排ワラ処理装置への動力伝達構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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