説明

排出装置及び画像形成装置

【課題】排出位置に近づく方向に記録媒体を案内する案内部材にその記録媒体の後端が擦過することを抑制する。
【解決手段】案内部材55は、搬送部50により搬送される記録媒体に接触して、記録媒体が排出される排出位置に近づく方向に、前記記録媒体を案内する。排出ロール71U,71Lは、記録媒体をロール部材712U,712Lの接触領域Nで挟み込み、記録媒体を媒体受け部80へと排出する。ロール部材722R,722Lは、排出ロール71U,71Lの位置からみたとき、排出ロール71U,71Lの搬送方向(図中矢印C3)に対して下流側で、且つ記録媒体の幅方向で対向する位置に設けられる。また、ロール部材722R,722Lは、複数のロール部材712U,712Lの接触領域Nの各々における接線を含んだ接平面と交わる部位を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排出装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置においては、媒体受け部における記録媒体の収容性を向上させるために、搬送方向の成分をもつ筋を記録媒体に発生させ、記録媒体の剛性を高めた状態で機外の媒体受け部へと排出するものがある(例えば、特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平03−67852号公報
【特許文献2】特開2002−87675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、排出位置に近づく方向に記録媒体を案内する案内部材にその記録媒体の後端が擦過することを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1に係る排出装置は、記録媒体を搬送する搬送手段と、前記搬送手段により搬送される記録媒体に接触して、記録媒体が排出される排出位置に近づく方向に、前記記録媒体を案内する案内部材と、外周が互いに接触し合う2つのロールをそれぞれ有し、回転軸を中心に回転する複数のロール対であって、前記案内部材により案内された前記記録媒体を前記2つのロールの接触領域で挟み込み、当該記録媒体を前記排出位置へと排出する複数のロール対と、前記複数のロール対よりも前記記録媒体の搬送方向の下流側で、且つ、少なくとも1つの前記接触領域よりも前記回転軸の両端に近い側にそれぞれ設けられ、前記ロール対により排出される記録媒体に接触する2つの接触部材であって、前記回転軸に沿った方向から見たときに、前記複数のロール対の接触領域の各々における接線を含んだ接平面と交わる部位を有する接触部材とを備えることを特徴とする。
【0006】
本発明の請求項2に係る排出装置は、請求項1に記載の構成において、前記接触部材は、前記ロール対によって排出される記録媒体に接して回転する構成を有することを特徴とする。
【0007】
本発明の請求項3に係る排出装置は、請求項2に記載の構成において、前記接触部材は、そのロール径が前記複数のロール対に近づくほど小さくなる部位を有することを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項4に係る排出装置は、請求項1から3のいずれか1項に記載の構成において、画像データに応じた像を記録媒体に転写してから加熱及び加圧により定着させることで、記録媒体に画像を形成する画像形成手段と、前記画像形成手段によって画像が形成された記録媒体を搬送して排出位置に排出する構成を有することを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項5に係る画像形成装置は、請求項4に記載の構成において、前記画像形成手段によって画像が形成される記録媒体の属性を判断する判断手段と、前記判断手段による判断結果に応じた位置へと、前記排出装置の接触部材を移動させる移動手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項6に係る画像形成装置は、請求項5に記載の構成において、前記記録媒体の属性は、記録媒体の大きさであることを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項7に係る画像形成装置は、請求項5に記載の構成において、前記記録媒体の属性は、記録媒体の材質であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1,請求項4に記載の構成によれば、搬送方向の成分をもつ筋を記録媒体に発生させる接触部材が、記録媒体を排出位置へと排出するロールよりも上記搬送方向の上流側又は、上記搬送方向において同じ位置に設けられている場合に比べて、案内部材にその記録媒体の後端が擦過することを抑制することができる。
請求項2に記載の構成によれば、接触部材が回転しない場合に比べ、その接触部材から記録媒体に対する接触による抵抗を小さくすることができる。
請求項3に記載の構成によれば、接触部材が角を有する場合に比べ、記録媒体の表面に折れ目やしわが生じる可能性を小さくすることができる。
請求項5に記載の構成によれば、記録媒体の属性によらず、案内部材にその記録媒体の後端が擦過することを抑制することができる。
請求項6に記載の構成によれば、記録媒体の大きさによらず、案内部材にその記録媒体の後端が擦過することを抑制することができる。
請求項7に記載の構成によれば、記録媒体の材質によらず、案内部材にその記録媒体の後端が擦過することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の構成を示す図である。
【図2】同実施形態に係る定着部及び排出装置の周辺の構成を示す模式図である。
【図3】従来の排出装置の構成を示す図である。
【図4】同実施形態に係る排出装置の外観を示した斜視図である。
【図5】同実施形態に係る排出ロールの接触領域及び接触ロールの位置を説明する図である。
【図6】同実施形態に係る位置決めテーブルの一例を示した図である。
【図7】同実施形態に係る排出装置をZ軸正方向から見た図であり、記録媒体のサイズとロール部材の位置との関係を示す図である。
【図8】同実施形態に係る排出ロールの接触領域及び接触ロールの位置を説明する図である。
【図9】同実施形態に係る案内部材と記録媒体との間の接触力について、従来例との比較結果を示すグラフである。
【図10】本発明の変形例に係る排出ロールの接触領域及び接触ロールの位置を説明する図である。
【図11】本発明の変形例に係る位置決めテーブルの一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[実施形態]
図1は、本発明の実施形態に係る画像形成装置の構成を示す図である。画像形成装置1は、入力された画像データに応じた画像を記録媒体に形成する装置であり、制御部10と、通信部20と、表示操作部30と、供給部40と、搬送部50と、画像形成部60と、排出装置70、媒体受け部80とを備えている。なお、以降の図においては、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸で方向を示しており、画像形成装置1を正面から見たときの左右方向をX軸の方向、奥行き方向をY軸の方向、高さ方向をZ軸の方向としている。また、図中、「○」の中に「・」が記載されたものは図面の裏から表に向かう矢印を意味するものとする。また、図中、「○」の中に「×」が記載されたものは図面の表から裏に向かう矢印を意味するものとする。
【0015】
制御部10は、CPU(Central Processing Unit)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの演算装置と、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)などのメモリとを備えている。CPUは、メモリに記憶されたプログラムを実行することによって、画像形成装置1の各部の動作を制御する。通信部20は、図示せぬ端末装置にネットワーク等を介して接続されており、この端末装置との間で通信を行う。表示操作部30は、例えばタッチパネルであり、制御部10の制御に従って、操作を案内する画像を表示するとともに、利用者の操作に応じた操作信号を制御部10に供給する。
【0016】
供給部40は、記録媒体を収容しており、この記録媒体を供給する。ここにおいて、記録媒体とは、画像形成装置1により画像が形成されるシート状の媒体であり、例えば、用紙である。記録媒体のサイズや材質は、画像形成装置1に応じたものであれば、特に限定されない。搬送部50は、搬送ベルトや搬送ロールなどを備えており、供給部40から供給された記録媒体を、画像形成部60へと搬送し、その後、画像形成部60によって画像が形成された記録媒体を排出装置70へと搬送する。つまり、搬送部50は、搬送手段の一例である。なお、説明の便宜上、以下においては、記録媒体の搬送方向に直交する方向(図1の紙面に対して垂直な方向)のことを「記録媒体の幅方向」という。
【0017】
画像形成部60は、感光体ユニット61Y、61M、61C、61Kと、露光部62と、ベルトユニット63と、定着部64とを備える。感光体ユニット61Y、61M、61C、61Kは、それぞれ、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色に対応するものであり、各色のトナーによる像(以下、「トナー像」という。)の形成及び保持に用いられる。感光体ユニット61Y、61M、61C及び61Kは、回転するロール状の感光体ドラム、帯電器、現像器などをそれぞれ備える。各色の感光体ドラムは、それぞれが相異なる位置において中間転写ベルト631と接触する。なお、以下において、感光体ユニット61Y、61M、61C及び61Kのそれぞれを区別する必要がない場合には、これらを総称して「感光体ユニット61」という。露光部62は、感光体ユニット61のそれぞれに光を照射し、光導電層に電位差を生じさせて静電潜像を形成する。感光体ドラム上の静電潜像は現像器によって現像される。
【0018】
ベルトユニット63は、中間転写ベルト631と、複数の一次転写ロール632Y、632M、632C、632Kと、複数の支持ロール633、634、635、636、637と、二次転写ロール638とを備える。中間転写ベルト631は、感光体ユニット61により形成された各色のトナー像が転写される無端のベルト部材である。中間転写ベルト631は、支持ロール633〜637に支持された状態で、図中の矢印A1が示す方向に回転する。一次転写ロール632Y、632M、632C及び632Kは、感光体ユニット61Y、61M、61C及び61Kに対応し、対向する感光体ドラムに形成されたトナー像を中間転写ベルト631に転写する。支持ロール633〜637は、中間転写ベルト631を回転可能な状態で支持するロール状の部材である。支持ロール633〜637の少なくともいずれかは、図示せぬ駆動手段により駆動力を与えられて回転し、中間転写ベルト631を回転させる。二次転写ロール638は、中間転写ベルト631と対向して、トナーや記録媒体を挟み込む領域を形成し、中間転写ベルト631に転写されたトナー像をこの領域において記録媒体に転写する。以降の説明においては、トナーや記録媒体を挟み込む領域を接触領域という。定着部64は、対向する1対のロールによって記録媒体を加熱及び加圧し、記録媒体に転写されたトナー像を定着させる。つまり、画像形成部60は、画像形成手段の一例であり、画像データに応じた像を記録媒体に転写してから加熱及び加圧により定着させることで、記録媒体に画像を形成する。なお、トナー像は、画像データに応じた像の一例である。記録媒体は、搬送部50により排出装置70へと搬送される。
【0019】
次に、図2を参照して、定着部64及び排出装置70の周辺の構成について説明する。図2は、定着部64及び排出装置70の周辺の構成を示す模式図である。同図に示すように、定着部64による定着処理を経た記録媒体B2は、Z軸正方向の搬送方向A21に沿って搬送される。この搬送方向はX軸正方向へと或る角度(ここでは90度)だけ変化し、以降、記録媒体B2は、搬送方向A22(X軸正方向)に沿って搬送されるようになっている。そして、定着部64と排出装置70の間の搬送路50には、定着部64から搬送された記録媒体B2を排出装置70へと導くための案内部材55が設けられている。案内部材55の記録媒体B2との接触面は、搬送方向A21及び搬送方向A22に対して湾曲しており、その湾曲した面に沿って記録媒体B2が案内される。そして、記録媒体は、排出装置70により媒体受け部80へと排出され、媒体受け部80に重ねて収容される。つまり、案内部材55は、搬送部50により搬送される記録媒体に接触して、記録媒体が排出される排出位置に近づく方向に、前記記録媒体を案内する。媒体受け部80は、記録媒体が排出される排出位置の一例である。なお、湾曲した面に沿って記録媒体B2を案内する理由は、画像形成装置全体の小型化を目的として、装置内の各部の間隔は可能な限り隙間無く配置し、且つ各部を小型化する必要が生じたためである。
【0020】
ところで、一般的に、画像形成装置は、感光体から記録媒体に転写されたトナー像を定着部で加熱・加圧して定着させ、2つのローラが対向して設けられたローラ対の間に記録媒体を導き、両者の間に生じる摩擦力で記録媒体を挟みながらローラ対の回転方向に応じた方向に搬送する。このとき、記録媒体には、脱湿や押圧などに起因したカールが生じることがある。また、排出装置から機外に排出される際に、自重により記録媒体の先端が垂れ下がることでカールが生じることがある。ここで、カールとは、記録媒体が搬送方向に対して湾曲形状であることをいう。カールが生じた状態のまま排出された記録媒体は、媒体受け部においてもカールが生じた状態となるから、順次重なり合わなかったり、その端部が不揃いになったりするなど、媒体受け部の収容性を悪化させる原因となる。そこで、従来の排出装置では、搬送方向の成分をもつ筋を記録媒体に発生させることによって、記録媒体の剛性を高めた状態で媒体受け部へと排出する方法が用いられている。ここでいう剛性とは、外力に対する姿勢の変化の度合いをいい、特に本実施形態で、記録媒体の剛性が高い状態とは、記録媒体が搬送方向に沿った姿勢をできるだけ維持し、記録媒体の排出時にその先端が自重により垂れ下がる量が小さくなる状態のことをいう。この剛性の大きさは、記録媒体の厚み方向の断面における、断面二次モーメントに依存する。
【0021】
ここで、従来の排出装置が記録媒体B3を媒体受け部へと排出する方法について説明する。図3は、従来の排出装置90の構成を示す図である。排出装置90においては、搬送部を挟んで対向して設けられた排出ロール91とコルゲーションロール92とを備えている。排出ロール91は、回転軸911を中心に回転することで記録媒体B3を搬送する。排出ロール91は、回転軸911と、回転軸911の軸方向に予め決められた間隔で設けられた複数のロール部材912とを備えている。コルゲーションロール92は、搬送方向の成分をもつ筋Mを記録媒体B3に発生させるための部材であり、回転軸921と、回転軸921の軸方向に予め決められた間隔で設けられた複数のロール部材922とを備えている。排出ロール91とコルゲーションロール92は、記録媒体B3の幅方向に沿って設けられ、且つロール部材912とロール部材922とが互いに接触しないように設けられている。このように構成された排出装置90は、搬送されてきた記録媒体B3をロール部材912とロール部材922との間に挟みこむことで、搬送方向の成分をもつ複数の筋Mを記録媒体B3に発生させる。そして、排出装置90は、記録媒体B3をこの状態のまま媒体受け部に排出する。このように記録媒体B3の剛性を高めた状態で排出すると、その記録媒体B3に定着工程で発生したカールを矯正することができるとともに、記録媒体B3の先端が自重により垂れ下がる量も小さくすることができるから、各記録媒体B3をその搬送方向に沿ったまっすぐな姿勢のままで媒体受け部に重ねて収容することが可能となる。
【0022】
ところで、排出装置90は、コルゲーションロール92よりも下流側に位置する記録媒体B3の部分だけでなく、上流側に位置する記録媒体B3の部分に対しても、搬送方向の成分をもつ筋Mを発生させる。つまり、コルゲーションロール92よりも上流側に位置する記録媒体B3の部分の剛性が高くなり、搬送方向に対して平行に近いまっすぐな姿勢になる。このとき、前述したような湾曲形状の案内部材55が排出装置90の上流側に設けられていた場合、搬送方向に沿った方向に近い姿勢になっている記録媒体B3の特に後端に近い部分が案内部材55に擦過されることになる。この擦過により発生する摺動音が騒音となる恐れがある。
【0023】
本実施形態の排出装置70の説明に戻る。図4は、排出装置70の外観を示した斜視図である。排出装置70は、排出ロール71U,71Lと、接触ロール72R,72Lと、駆動機構73とを備えている。なお、排出ロール71U,71Lの構成は同じであるため、各部材について両者を区別する必要がない場合においては「U」及び「L」の記載を省略する。同様に、接触ロール72R,72Lの構成は同じであるため、各部材について両者を区別する必要がない場合においては「R」及び「L」の記載を省略する。また、排出ロール71U,71L及び接触ロール72R,72Lを構成する各部材についても、同様に「U」、「L」、「R」の記載を省略する。
【0024】
排出ロール71は、回転軸711と、複数(本実施形態では4つ)のロール部材712とを備えている。ロール部材712は、円柱状の部材であり、回転軸711の軸方向に予め決められた間隔で設けられている。排出ロール71U,71Lは、記録媒体の幅方向に向けて設けられ、且つロール部材712Uとロール部材712Lの外周が互いに接触して接触領域を形成するように設けられている。排出ロール71Lは、図示せぬモータにより駆動力を与えられて回転軸711Lを中心に矢印C1の方向に回転する。一方、排出ロール71Uは、排出ロール71Lの回転に従動して回転軸711Uを中心に矢印C2の方向に回転する。排出ロール71L及び排出ロール71Uは、記録媒体をロール部材712U及びロール部材712Lの接触領域で挟み込み、矢印C3の方向へと搬送して、媒体受け部80へと排出する。つまり、排出ロール71U及び排出ロール71Lは、外周が互いに接触し合うロール部材712U,712Lを有し、回転軸を中心に回転する複数のロール対であって、記録媒体をロール部材712U,712Lの接触領域で挟み込み、記録媒体を媒体受け部80へと排出する複数のロール対の一例である。
【0025】
接触ロール72は、回転軸721と、ロール部材722と、支持部材723とを備えている。支持部材723R,723Lは、排出ロール71の位置からみたとき、排出ロール71の搬送方向(図中矢印C3)に対して下流側で、且つ記録媒体の幅方向で対向する位置に設けられる。ロール部材722は、そのロール径がロール部材712に近づくほど小さくなる部位を有する形状、例えば、X軸正方向及びZ軸正方向から見て楕円の形状であり、回転軸721の一端に設けられている。回転軸721の他端は、支持部材723に対し回転可能に設けられている。接触ロール72は、図示せぬモータにより駆動力を与えられて回転軸721を中心に矢印C4の方向に回転する。
【0026】
図5は、排出ロール71の接触領域N及び接触ロール72の位置を説明する図である。図5は、図4の排出装置70をX軸正方向から見た図である。ロール部材722R及びロール部材722Lは後述するように、記録媒体の幅方向に移動可能であるが、図5(a)に示すように、これらのロール部材722の間には常に、X軸正方向からみて、1つ以上の接触領域Nがある。つまり、ロール部材722R及びロール部材722Lは、少なくとも1つの接触領域よりも排出ロール71の回転軸711の両端に近い側にそれぞれ設けられている。例えば、図5(a)においては、ロール部材722LのY軸正方向の端部P41の位置と、ロール部材722RのY軸負方向の端部P42の位置との間に、4つの接触領域Nがある。接平面D1は、排出ロール71の軸方向(Y軸方向)から見たときに、ロール部材712U及びロール部材712Lの接触領域Nの各々における接線を含んだ平面である。なお、図2には、Y軸正方向から見た接平面D1が示されている。また、図5(b)に示すように、ロール部材722Rは、その一部が接平面D1よりもZ軸正方向に突出するように設けられており、接平面と交わる部位を有している。また、ロール部材722Lについても、ロール部材722Rと同様に、その一部が接平面D1よりもZ軸正方向に突出するように設けられており、接平面と交わる部位を有している。具体的には、ロール部材722のZ軸正方向の端部P43の位置は、接触領域Nを含む接平面D1よりもZ軸正方向側である。そして、更に、ロール部材722のZ軸正方向の端部P43とZ軸負方向の端部P44とを結ぶ直線の中点P45の位置は、接触領域Nを含む接平面D1よりもZ軸負方向側にある。つまり、ロール部材722R及びロール部材722Lは、接触部材の一例であり、排出ロール71によって排出される記録媒体に接する。なお、図5(b)において、ロール部材712Uとロール部材712Lの間に空隙が設けられているが、実際には、空隙は設けられておらず、ロール部材712Uとロール部材712Lとが接触することで接触領域Nを形成している。
【0027】
ここで、接触領域Nにおいて、記録媒体がロール部材712Uとロール部材712Lに挟み込まれ、更に、記録媒体の幅方向の両端部がロール部材722L,722Rに接触している場合について説明する。この場合、接触領域N及び排出ロール71の搬送方向の上流側において、記録媒体は、案内部材55に沿って湾曲した形状となる。一方、排出ロール71の搬送方向の下流側において、記録媒体は、図5(a)の記録媒体B4のように、その幅方向の両端部がロール部材722L,722RによってZ軸正方向に押し上げられた形状となる。これにより、排出ロール71の搬送方向の下流側に位置する記録媒体B4の部分には、搬送方向の成分をもつ筋がその幅方向の両端部に発生する一方、上流側に位置する記録媒体B4の部分(後端)にこのような筋が発生しない。したがって、排出ロール71の搬送方向の下流側に位置する記録媒体B4の部分の剛性は高められた状態となり、排出ロール71の搬送方向の上流側に位置する記録媒体B4の部分の剛性は高められた状態とはならない。この場合、従来の排出装置90を備える画像形成装置と比較して、案内部材55と記録媒体B4との間の接触力が小さくなり、記録媒体B4への擦過が抑制されることになる。また、記録媒体B4は剛性が高められた状態で媒体受け部80に排出されるので、記録媒体B4をその搬送方向に沿ったまっすぐな姿勢のままで媒体受け部80に重ねて収容される。
【0028】
説明を図4に戻す。駆動機構73は、駆動部731と、アーム732L,732Rと、歯車733とを備えている。アーム732L及びアーム732Rには図示せぬ歯が設けられている。アーム732L及びアーム732Rは、その長手方向が記録媒体の幅方向に沿うように設けられ、且つ、その間に歯車733が設けられている。アーム732L及びアーム732Rの歯は歯車733の歯と噛み合わされている。駆動部731は、例えばアクチュエータであり、制御部10の制御に従ってアーム732Rを記録媒体の幅方向に移動させる。この構成により、駆動部731がアーム732Rを記録媒体の幅方向に移動させた場合には、この移動に伴って歯車733が回転し、歯車733の回転に伴ってアーム732Lがアーム732Rとは反対の方向に移動させられる。また、アーム732Lには接触ロール72Lの支持部材723Lが設けられており、アーム732Rには接触ロール72Rの支持部材723Rが設けられている。従って、制御部10は、駆動部731を制御することにより、支持部材723Lに設けられたロール部材722L、及び支持部材723Rに設けられたロール部材722Rの位置を移動させることになる。
【0029】
制御部10のメモリには、位置決めテーブル11が記憶されている。制御部10は、この位置決めテーブル11に記述された情報に基づいて駆動部731を制御する。図6は、位置決めテーブル11の一例を示した図である。位置決めテーブル11には、「記録媒体のサイズ」と、「ロール部材の位置」とがそれぞれ対応づけて記述されている。「記録媒体のサイズ」は、例えば、JIS(Japanese Industrial Standards)規格のA3,A4など、画像形成部60により画像が形成される記録媒体のサイズを表す情報である。「ロール部材の位置」は、排出装置70により排出される記録媒体のサイズに応じたロール部材722の位置を表す情報である。例えば、この位置決めテーブル11には、記録媒体のサイズ「A4」と、ロール部材722の位置「位置B」とが対応づけられている。これは、排出装置70により排出される記録媒体のサイズがA4の場合には、ロール部材722L,722Rを位置Bに移動させることを表している。また、この位置決めテーブル11には、記録媒体のサイズ「A3」と、ロール部材722の位置「位置A」とが対応付けられている。これは、排出装置70により排出される記録媒体のサイズがA3の場合には、ロール部材722L,722Rを、先の位置Aとは別の位置を示す位置Aに移動させることを表している。
【0030】
ここで、制御部10が、駆動機構73の駆動部731を制御する動作について説明する。まず、画像形成装置1の利用者が、表示操作部30を操作して、A4サイズの記録媒体に画像データに応じた画像を形成させるための指示を入力したものとする。制御部10は、表示操作部30から供給された操作信号に基づいて、画像形成部60によって画像が形成される記録媒体の属性を、例えばA4サイズであると判断する。そして、制御部10は、画像形成装置1の各部を制御してA4サイズの記録媒体に画像を形成させる。続いて、制御部10は、操作信号に含まれる記録媒体のサイズと、メモリに記憶されている位置決めテーブル11の内容に基づいて、ロール部材722の移動先の位置を決定する。この場合、制御部10は、図6に示した位置決めテーブル11において、サイズ「A4」に対応付けられた「ロール部材722の位置」を特定し、ロール部材722の移動先の位置を位置Bに決定する。そして、制御部10は、駆動部731を制御することにより、ロール部材722の位置を位置Bへと移動させる。つまり、駆動部731及び制御部10は、判断結果に応じた位置へと、接触部材を移動させる移動手段の一例である。同様に、画像形成装置1の利用者が、表示操作部30を操作して、A3サイズの記録媒体に画像データに応じた画像を形成させるための指示を入力した場合にも、制御部10は、位置決めテーブル11において、サイズ「A3」に対応付けられた「ロール部材722の位置」を特定し、ロール部材722の移動先の位置を位置Aに決定する。そして、制御部10は、駆動部731を制御することにより、ロール部材722の位置を位置Bへと移動させる。
【0031】
図7は、排出装置70をZ軸正方向から見た図であり、記録媒体のサイズとロール部材の位置との関係を示す図である。図7(a)は、A4サイズの記録媒体B61と、位置Bに移動したロール部材722L,722Rを示しており、図7(b)は、A3サイズの記録媒体B62と、位置Aに移動したロール部材722L,722Rを示している。同図に示すように、制御部10が、記録媒体のサイズに応じてロール部材722L,722Rの位置を移動させることによって、ロール部材722L,722Rは、記録媒体の幅方向の両端部に接触するように配置される。つまり、記録媒体は、サイズが異なる場合においても、その幅方向の両端部をロール部材722L,722Rによって搬送方向と垂直な方向に押し上げられた状態で、媒体受け部80に排出される。この場合においても、排出ロール71の搬送方向の下流側に位置する記録媒体の部分には、搬送方向の成分をもつ筋が発生する一方、上流側に位置する記録媒体の部分には、搬送方向の成分をもつ筋が発生しない。したがって、記録媒体は、排出ロール71の搬送方向の下流側に位置する部分の剛性が高められた状態となり、排出ロール71の搬送方向の上流側に位置する部分の剛性が高められた状態とならない。そして、剛性が高められた状態の記録媒体は、画像形成時におけるカールや搬送部を構成するローラによるカールを矯正された状態で媒体受け部80に排出されるので、媒体受け部80に順次重なり合うように排出されることになる。この構成によれば、排出装置70は、排出する記録媒体への擦過の程度を、記録媒体の属性や大きさに応じて変化させることになる。ここで、排出ロール71の接触領域N及び接触ロール72の位置関係について詳述する。
【0032】
図8は、排出ロール71の接触領域N及び接触ロール72のロール部材722の位置を説明する図である。図8(a)に示すように、X軸正方向からみて、ロール部材712Uとロール部材712Lの間の接触領域Nにおいて、接触領域NのY軸負方向の端部P93の位置と、ロール部材722LのY軸正方向の端部P94の位置との間におけるY軸方向の寸法ΔL2はできる限り短いことが望ましい。同様に、図8(b)に示すように、X軸正方向からみて、ロール部材712Uとロール部材712Lの間の接触領域Nにおいて、接触領域NのY軸正方向の端部P91の位置と、ロール部材722RのY軸負方向の端部P92の位置との間におけるY軸方向の寸法ΔL1はできる限り短いことが望ましい。このように、寸法ΔL1,ΔL2が短い場合には、寸法ΔL1,ΔL2が長い場合に比べて、記録媒体の剛性が高くなる。なお、寸法ΔL1,ΔL2の最小値は「0」である。また、Y軸正方向からみて、接触ロール72が設けられる位置と、排出ロール71が設けられる位置とのX軸方向の寸法は、出来る限り短いことが望ましい。このX軸方向の長さが短い場合には、長い場合に比べて、記録媒体の剛性が高くなる。なお、図8において、ロール部材712Uとロール部材712Lの間に空隙が設けられているが、実際には、空隙は設けられておらず、ロール部材712Uとロール部材712Lとが接触することで接触領域Nを形成している。
【0033】
[従来例との比較]
本実施形態における画像形成装置1と、従来の排出装置90を備えた画像形成装置とのそれぞれについて、案内部材と記録媒体との間の接触力をシミュレータによって計算した。この比較結果について、図9を用いて説明する。図9は、案内部材と記録媒体との間の接触力について、従来例との比較結果を示すグラフである。なお、本シミュレーションでは、ロール部材722の一部分が接平面D1よりもZ軸方向に突出する量(以下、突出量という)を5mmとし、記録媒体の物理的性質をヤング率1000MPa、厚み0.08mmとした。図において、E71は、本実施形態の構成における接触力を示し、E72は、従来の構成における接触力を示している。なお、この構成で、排出時における記録媒体の剛性は十分であり、その記録媒体がカールすることで収容性が悪化することがないことも、シミュレーションにより確認されている。
【0034】
同図に示すように、排出装置90を備えた画像形成装置においては、案内部材と記録媒体との間の接触力が、0.7N〜1.6N程度(平均して1.2N程度)の値を示している。本実施形態における画像形成装置1においては、案内部材と記録媒体との間の接触力が、ほぼ0.0Nの値を示している。したがって、本実施形態の画像形成装置1は、排出装置90を備える画像形成装置と比較して、案内部材と記録媒体との間の接触力が小さくなっており、記録媒体への擦過が抑制されている。
【0035】
<変形例>
上述した実施形態の内容を以下のように変形してもよい。以下に示す各変形例は、必要に応じて組み合わせて実施されてもよい。
[変形例1]
上記の実施形態において、ロール部材722の一部分が接平面D1よりもZ軸正方向に突出して設けられているものとしたが、反対に、ロール部材722の一部分が接平面D1よりもZ軸負方向に突出して設けられていてもよい。具体的には、図10(b)に示すように、ロール部材722RaのZ軸負方向の端部P81は、接触領域NよりもZ軸負方向に位置する。そして、更に、ロール部材722RaのZ軸負方向の端部P81の位置とZ軸正方向の端部P82の位置とを結ぶ直線の中点P83は、接触領域NよりもZ軸正方向に位置する。また、ロール部材722Laについても、ロール部材722Raと同様に、その一部が接触領域NよりもZ軸負方向に位置している。この構成によれば、接触領域N及び排出ロール71の搬送方向の上流側において、記録媒体は、案内部材55に沿って湾曲した形状となる。一方、排出ロール71の搬送方向の下流側において、記録媒体は、図10(a)の記録媒体B8のように、その幅方向の両端部がロール部材722La,722RaによってZ軸負方向に押し下げられた形状となる。これにより記録媒体は、Z軸正方向に押し上げられた場合と同様に、剛性が高められた状態となる。なお、図10(b)において、ロール部材712Uとロール部材712Lの間に空隙が設けられているが、実際には、空隙は設けられておらず、ロール部材712Uとロール部材712Lとが接触することで接触領域Nを形成している。
【0036】
[変形例2]
上記実施形態において、位置決めテーブル11には、「記録媒体のサイズ」と、「ロール部材722の位置」とがそれぞれ対応づけて記述されているものとしたが、ロール部材722の位置を特定するための情報はこれに限られない。図11は、位置決めテーブル11aの一例を示した図である。位置決めテーブル11aには、「記録媒体のサイズ」と、「ロール部材722の位置」のほか、「記録媒体の種類」が記述されている。「記録媒体の種類」は、記録媒体の材質の一例であり、記録部材のヤング率やその厚さなどを表す情報である。また、「ロール部材722の位置」は、排出装置70により排出される記録媒体のサイズ及び種類に応じて定められたロール部材722の位置を表す情報である。
【0037】
例えば、この位置決めテーブル11aには、記録媒体のサイズ「A3」と、記録媒体の種類「種類A1」と、ロール部材の位置「位置A1」とが対応づけられている。これは、排出装置70により排出される記録媒体のサイズがA3、及びその種類が種類A1の場合には、ロール部材722L,722Rを位置A1に移動させることを表している。また、この位置決めテーブル11aには、記録媒体のサイズ「A3」と、記録媒体の種類「種類A2」と、ロール部材の位置「位置A2」とが対応づけられている。これは、排出装置70により排出される記録媒体のサイズがA3、及びその種類が種類A1の場合には、ロール部材722L,722Rを位置A1に移動させることを表している。記録媒体に対して所望する剛性を得るために、記録媒体のサイズだけでなく、そのヤング率や厚さなどの材質も考慮してロール部材722L,722Rの位置を決めてもよい。この構成によれば、排出装置70は、排出する記録媒体への擦過の程度を記録媒体の材質に応じて変化させることになる。
【0038】
[変形例3]
上記の実施形態において、駆動機構73は、ロール部材722を移動させる手段として、駆動部731と、アーム732L,732Rと、歯車733とを用いているが、これに限定されず、ロール部材722R,222Lを記録媒体の幅方向に移動させる手段であればいかなる形態のものであってもよい。
【0039】
[変形例4]
上記の実施形態において、ロール部材722は、X軸正方向及びZ軸正方向から見て楕円の形状の部材であるとしたが、この形状に限定されず、例えば円柱や、円錐であってもよい。この場合、ロール部材722は、Y軸方向からみて円の形状となるように接触ロール72の回転軸721に設けられればよい。ただし、ロール部材722がX軸正方向から見て楕円状の部材である場合には、その角が他の形状の部材と比べて丸みを帯びることになるから、ロール部材722が記録媒体に対して、折れ目やしわを発生させにくくなる。また、ロール部材722として、螺旋状に針金を巻いた、いわゆるバネを用いてもよい。この場合、バネは弾性体でなくてもよい。
【0040】
[変形例5]
上記の実施形態において、接触ロール72のロール部材722は、回転軸721を中心に回転するものとしたが、これに限定されず、例えば回転軸721を中心に回転しない構成であってもよい。ただし、ロール部材722が回転軸721を中心に回転しない構成である場合には、接触部材が回転する場合に比べ、記録媒体に対する接触による抵抗が大きくなる。
【符号の説明】
【0041】
1…画像形成装置、10…制御部、11,11a…テーブル、20…通信部、30…表示操作部、40…供給部、50…搬送部、55…案内部材、60…画像形成部、61…感光体ユニット、62…露光部、63…ベルトユニット、631…中間転写ベルト、632…一次転写ロール、633〜637…支持ロール、638…二次転写ロール、64…定着部、70…排出装置、71,71L,71R…排出ロール、711,711L,711U…回転軸、712,712L,712U…ロール部材、72,72L,72R…接触ロール、721,721L,721R…回転軸、722,722L,722R…ロール部材、723,723L,723R…支持部材、73…駆動機構、731…駆動部、732,732L,732R…アーム、733…歯車、D1…接平面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を搬送する搬送手段と、
前記搬送手段により搬送される記録媒体に接触して、記録媒体が排出される排出位置に近づく方向に、前記記録媒体を案内する案内部材と、
外周が互いに接触し合う2つのロールをそれぞれ有し、回転軸を中心に回転する複数のロール対であって、前記案内部材により案内された前記記録媒体を前記2つのロールの接触領域で挟み込み、当該記録媒体を前記排出位置へと排出する複数のロール対と、
前記複数のロール対よりも前記記録媒体の搬送方向の下流側で、且つ、少なくとも1つの前記接触領域よりも前記回転軸の両端に近い側にそれぞれ設けられ、前記ロール対により排出される記録媒体に接触する2つの接触部材であって、前記回転軸に沿った方向から見たときに、前記複数のロール対の接触領域の各々における接線を含んだ接平面と交わる部位を有する接触部材と
を備えることを特徴とする排出装置。
【請求項2】
前記接触部材は、前記ロール対によって排出される記録媒体に接して回転する
ことを特徴とする請求項1に記載の排出装置。
【請求項3】
前記接触部材は、そのロール径が前記複数のロール対に近づくほど小さくなる部位を有する
ことを特徴とする請求項2に記載の排出装置。
【請求項4】
画像データに応じた像を記録媒体に転写してから加熱及び加圧により定着させることで、記録媒体に画像を形成する画像形成手段と、
前記画像形成手段によって画像が形成された記録媒体を搬送して排出位置に排出する請求項1から3のいずれか1項に記載の排出装置と
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
前記画像形成手段によって画像が形成される記録媒体の属性を判断する判断手段と、
前記判断手段による判断結果に応じた位置へと、前記排出装置の接触部材を移動させる移動手段と
を備えることを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記記録媒体の属性は、記録媒体の大きさであること
を特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記記録媒体の属性は、記録媒体の材質であること
を特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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