説明

排気処理システム

【課題】騒音を低減させるとともに、メンテナンスを簡素化もしくは不要とし、メンテナンスにかかる手間を低減させた排気処理システムを提供することを目的とする。
【解決手段】屋内2に設置され浮遊する油粒を含んだ空気を捕集するための捕集フード1と、捕集フード1に接続され屋内2から屋外7にかけて設置された空気を搬送するためのダクト5と、ダクト5に接続され屋外7に設置された送風手段9を有する送風ユニット8とを備え、浮遊する油粒を含んだ空気から油を分離するための油分離機構3が、少なくとも捕集フード1の1箇所と送風ユニット8の1箇所とを含む複数箇所に設けられ、各油分離機構3にはそれぞれ油溜り部10a、b、c、送油管12a、b、c、13a、b、cおよび送油装置11が接続され、送油管13には油処理手段14が接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば家庭の台所や業務用厨房などの空間に浮遊する油粒を浄化し排気する排気処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、家庭の台所や業務用厨房などの換気システムには、屋内空気を清浄化する機能のみならず、屋外環境保全の観点から、汚染空気を浄化して排気するという機能が求められている。これを解決するために、排気経路にフィルターなどを設けた排気処理システムが開発されてきた。
【0003】
従来、この種の排気処理システムは、屋内に設置されたフード内にフィルターとファンを設けているものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
以下、その排気処理システムについて、図5を参照しながら説明する。図5において、101は、屋内102の調理台103上方に設置されたフードで、ダクト104を介して屋外105に開口した排気口106に接続されている。107は、フード101内部に設けられたファンで、吸入側107aにはフィルター108が取り付けられ、吐出側107bはダクト104に接続されている。
【0005】
調理台103で発生し空気中に浮遊する油粒を含んだ空気は、ファン107によってフード101から吸引される際に、フィルター108によって油粒を捕集したのち、清浄空気となってダクト104から排気口106を通り屋外105に排気されるものである。
【0006】
また、従来の別の排気処理システムは、フードとダクトとファンとフィルターとから構成されたものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
以下、そのシステムについて、図6を参照しながら説明する。図6において、111は、屋内112の調理台113上方に設置されたフードで、ダクト114を介して屋外115に設置されたファン117の吸入側117aに接続されている。118は、ファン117の吐出側117bに設けられたフィルターで、フィルター118の下流は屋外115に開口した排気口116に接続されている。
【0008】
調理台113で発生し空気中に浮遊する油粒を含んだ空気は、フード111で捕集され、ファン117によってダクト114から排気口116を通って屋外115に排気される。この時、ファン117と排気口116との間にはフィルター118があり、油粒を含んだ空気がこのフィルター118を通過する際に、油分をフィルター118に吸着させて浄化された空気を屋外115に排気するものである。
【特許文献1】特開平9−318120号公報(第4頁、図1)
【特許文献2】特開2001−218823号公報(第9頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に示すような従来の排気処理システムでは、ファン107が屋内102に設置されたフード101の内部に設けられているために、調理時にファン107による騒音が大きいという課題があった。
【0010】
また、この課題を解決する手段の一つとしての特許文献2に示すような従来の排気処理システムでは、フィルター118が屋外115に設けられているため、フィルター118のメンテナンスのために手間がかかるという課題があった。
【0011】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、ファンによる騒音を低減させるとともに、フィルターなどのメンテナンスを簡素化もしくは不要とし、メンテナンスにかかる手間を低減させた排気処理システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の排気処理システムは、上記目的を達成するために、屋内に設置され浮遊する油粒を含んだ空気を捕集するための捕集フードと、捕集フードに接続され屋内から屋外にかけて設置された空気を搬送するためのダクトと、ダクトに接続され屋外に設置された送風手段を有する送風ユニットとを備え、浮遊する油粒を含んだ空気から油を分離するための油分離機構が、少なくとも捕集フードの1箇所と送風ユニットの1箇所とを含む複数箇所に設けられ、各油分離機構にはそれぞれ油溜り部、送油管および送油装置が接続され、送油管には油処理手段が接続されたものである。
【0013】
この手段により、送風手段を屋外に設置することにより騒音を低減させるとともに、油処理手段によりメンテナンスを簡素化もしくは不要とし、メンテナンスにかかる手間を低減させることができる。
【0014】
また、他の手段は、油分離機構として、捕集フードからダクト、送風ユニットに至る通風経路内の通風抵抗となるような小孔を有するグリスフィルターを設けたものである。
【0015】
これにより、油分離機構のコストを安価にすることができる。
【0016】
また、他の手段は、送風ユニットに設けられた油分離機構として、羽根車に付着した油を遠心力でケーシング内面に付着させケーシング内面の最下端に位置する油溜り部に油を集めることにより油分離機能を有する送風手段としての排気ファンと、排気ファンの吸込側通風経路に設けられた通風抵抗となるような小孔を有するグリスフィルターとを設けたものである。
【0017】
これにより、捕集された空気中の油粒を分離させる機能を高め、屋外に排気する空気の清浄度をよりいっそう高めることができる。
【0018】
また、他の手段は、排気ファンとして羽根車が後向き翼のターボファンを用いたものである。
【0019】
これにより、羽根車への油付着を防止し、排気ファンのメンテナンスの手間を低減させることができる。
【0020】
また、他の手段は、複数の各送油装置がポンプであり、ポンプの吸引側に取り付けられた送油管の一端を油溜り部内部に臨ませるとともに、ポンプの吐出側に取り付けられた各送油管は、合流して1本の送油管となり1個の油処理手段に接続されたものである。
【0021】
これにより、油処理手段のコストを安価にすることができる。
【0022】
また、他の手段は、各油溜り部には油面検知器を設け、油面検知器が所定の高さの油面を検知した時に、各ポンプが作動するような指令を制御装置によって与えるものである。
【0023】
これにより、油溜り部の油を自動的に油処理手段に送ることができ、油処理を確実に行うことができる。
【0024】
また、他の手段は、制御装置にはタイマー機能を有し、油面検知器が所定の高さの油面を検知した時、またはポンプが前回作動した後にタイマー機能が所定の時刻をカウントした時の、いずれかの条件が揃った時に、ポンプが作動するような指令を制御装置によって与えるものである。
【0025】
これにより、油溜り部に長期間放置された油が凝固することなく、油処理を確実に行うことができる。
【0026】
また、他の手段は、油処理手段としての油分解装置の内部に燃焼バーナーを備え、燃焼バーナーにより油を燃焼させ分解するものである。
【0027】
これにより、油分解処理を短時間で確実に行うことができる。
【0028】
また、他の手段は、油処理手段としての油分解装置には補助送風ファンが取り付けられ、油分解装置の内部には触媒を担持した担体と加熱手段とを備え、補助送風ファンにより空気中の酸素を油分解装置内部に供給するとともに、加熱手段により触媒および担体に付着貯留した油を適正温度まで加熱し、油を触媒酸化反応によって分解するものである。
【0029】
これにより、油分解処理を短時間で安全に行うことができる。
【0030】
また、他の手段は、触媒が少なくとも白金またはパラジウムのいずれかを含むものである。
【0031】
これにより、油を比較的低温で酸化分解し、加熱エネルギーを低減させることができる。
【0032】
また、他の手段は、油処理手段としての油分解装置が、独立した筐体内に納められ、屋外に設置されたものである。
【0033】
これにより、油分解処理を安全に行うことができる。
【0034】
また、他の手段は、油処理手段としての油分解装置には、酵素を含浸した担体と給水経路と排水経路とを備え、担体に付着貯留された油に給水経路から水を供給し、酵素によって反応させ油の分解を行い、そののち排水経路から水とともに油の分解成分を排水するものである。
【0035】
これにより、油分解処理を熱などのエネルギーを使わず安全に行うことができる。
【0036】
また、他の手段は、油処理手段としての油分解装置が、屋内の台所に備えられた流し台下方に設置されたものである。
【0037】
これにより、給水経路と排水経路の接続工事を簡便に行うことができる。
【0038】
また、他の手段は、油処理手段としての油固形化装置には油凝固剤供給装置が接続され、油固形化装置内部に油凝固剤供給装置より定期的に油凝固剤が供給されることにより、油固形化装置内部に貯留された油を固形化するものである。
【0039】
これにより、油処理手段のコストを安価にすることができる。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、送風手段を屋外に設置することにより騒音を低減させるとともに、油処理手段によりメンテナンスを簡素化もしくは不要とし、メンテナンスにかかる手間を低減させた排気処理システムを提供することができる。
【0041】
また、捕集された空気中の油粒を分離させる機能を高め、屋外に排気する空気の清浄度をよりいっそう高めるという効果も奏する。
【0042】
また、油分解処理に燃焼や触媒酸化反応を用いた場合は、油分解処理を短時間で確実かつ安全に行うことができる。
【0043】
また、油分解処理に酵素反応を用いた場合は油分解処理を熱などのエネルギーを使わず安全に行うことができる。
【0044】
また、機器のコストを安価にする、工事を簡便にするなどの効果も奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
本発明の請求項1記載の発明は、屋内に設置され浮遊する油粒を含んだ空気を捕集するための捕集フードと、捕集フードに接続され屋内から屋外にかけて設置された空気を搬送するためのダクトと、ダクトに接続され屋外に設置された送風手段を有する送風ユニットとを備え、浮遊する油粒を含んだ空気から油を分離するための油分離機構が、少なくとも捕集フードの1箇所と送風ユニットの1箇所とを含む複数箇所に設けられ、各油分離機構にはそれぞれ油溜り部、送油管および送油装置が接続され、送油管には油処理手段が接続されたもので、送風手段を屋外に設置することにより騒音を低減させるとともに、油処理手段によりメンテナンスを簡素化もしくは不要とし、メンテナンスにかかる手間を低減させるという作用を有する。
【0046】
本発明の請求項2記載の発明は、油分離機構として、捕集フードからダクト、送風ユニットに至る通風経路内の通風抵抗となるような小孔を有するグリスフィルターを設けたことにより、油分離機構のコストを安価にするという作用を有する。
【0047】
本発明の請求項3記載の発明は、送風ユニットに設けられた油分離機構として、羽根車に付着した油を遠心力でケーシング内面に付着させケーシング内面の最下端に位置する油溜り部に油を集めることにより油分離機能を有する送風手段としての排気ファンと、排気ファンの吸込側通風経路に設けられた通風抵抗となるような小孔を有するグリスフィルターとを設けたことにより、捕集された空気中の油粒を分離させる機能を高め、屋外に排気する空気の清浄度をよりいっそう高めるという作用を有する。
【0048】
本発明の請求項4記載の発明は、排気ファンとして羽根車が後向き翼のターボファンを用いたことにより、羽根車への油付着を防止し、排気ファンのメンテナンスの手間を低減させるという作用を有する。
【0049】
本発明の請求項5記載の発明は、複数の各送油装置がポンプであり、ポンプの吸引側に取り付けられた送油管の一端を油溜り部内部に臨ませるとともに、ポンプの吐出側に取り付けられた各送油管は、合流して1本の送油管となり1個の油処理手段に接続されたことにより、油処理手段のコストを安価にするという作用を有する。
【0050】
本発明の請求項6記載の発明は、各油溜り部には油面検知器を設け、油面検知器が所定の高さの油面を検知した時に、各ポンプが作動するような指令を制御装置によって与えることにより、油溜り部の油を自動的に油処理手段に送ることができ、油処理を確実に行うことができるという作用を有する。
【0051】
本発明の請求項7記載の発明は、制御装置にはタイマー機能を有し、油面検知器が所定の高さの油面を検知した時、またはポンプが前回作動した後にタイマー機能が所定の時刻をカウントした時の、いずれかの条件が揃った時に、ポンプが作動するような指令を制御装置によって与えることにより、油溜り部に長期間放置された油が凝固することなく、油処理を確実に行うことができるという作用を有する。
【0052】
本発明の請求項8記載の発明は、油処理手段としての油分解装置の内部に燃焼バーナーを備え、燃焼バーナーにより油を燃焼させ分解することにより、油分解処理を短時間で確実に行うことができるという作用を有する。
【0053】
本発明の請求項9記載の発明は、油処理手段としての油分解装置には補助送風ファンが取り付けられ、油分解装置の内部には触媒を担持した担体と加熱手段とを備え、補助送風ファンにより空気中の酸素を油分解装置内部に供給するとともに、加熱手段により触媒および担体に付着貯留した油を適正温度まで加熱し、油を触媒酸化反応によって分解することにより、油分解処理を短時間で安全に行うことができるという作用を有する。
【0054】
本発明の請求項10記載の発明は、触媒が少なくとも白金またはパラジウムのいずれかを含むことにより、油を比較的低温で酸化分解し、加熱エネルギーを低減させるという作用を有する。
【0055】
本発明の請求項11記載の発明は、油処理手段としての油分解装置が、独立した筐体内に納められ、屋外に設置されたことにより、油分解処理を安全に行うことができるという作用を有する。
【0056】
本発明の請求項12記載の発明は、油処理手段としての油分解装置には、酵素を含浸した担体と給水経路と排水経路とを備え、担体に付着貯留された油に給水経路から水を供給し、酵素によって反応させ油の分解を行い、そののち排水経路から水とともに油の分解成分を排水することにより、油分解処理を熱などのエネルギーを使わず安全に行うことができるという作用を有する。
【0057】
本発明の請求項13記載の発明は、油処理手段としての油分解装置が、屋内の台所に備えられた流し台下方に設置されたことにより、給水経路と排水経路の接続工事を簡便に行うことができるという作用を有する。
【0058】
本発明の請求項14記載の発明は、油処理手段としての油固形化装置には油凝固剤供給装置が接続され、油固形化装置内部に油凝固剤供給装置より定期的に油凝固剤が供給されることにより、油固形化装置内部に貯留された油を固形化し、油処理手段のコストを安価にするという作用を有する。
【0059】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図4を参照しながら説明する。
【0060】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における排気処理システムの構成断面図である。
【0061】
図1において、1は、屋内2の調理台2a上方に開口設置され浮遊する油粒を含んだ空気を捕集するための捕集フードで、内部に油分離機構3として通風経路4内の通風抵抗となるような小孔を有する金属製のグリスフィルター3aが設けられている。このような構成の油分離機構3は、コストを比較的安価にすることができる。5は、捕集フード1に接続され屋内2から壁6を貫通して屋外7にかけて設置された空気を搬送するためのダクトである。8は、ダクト5に接続され屋外7に設置された送風手段9としての排気ファン9aを有する送風ユニットで、排気ファン9aの吸込側通風経路9bには油分離機構3として通風抵抗となるような小孔を有する金属製のグリスフィルター3bが設けられている。排気ファン9aとしては、回転方向に対して羽根車9cが後向き翼のターボファンを用いており、これによって羽根車9cに付着した油を遠心力でケーシング9d内面に付着させ、ケーシング9d内面の最下端9eに油を集めることにより油分離機能を有するものである。 羽根車9cに後向き翼のターボファンを用いた理由は、翼の油付着面が凸面で付着した油が遠心力で飛ばされやすいためで(前向き翼のシロッコファンの場合は油付着面が凹面で付着した油が遠心力で飛ばされにくい)、羽根車9cへの油堆積付着を極力少なくし、排気ファン9aのメンテナンスの手間を低減させるものである。
【0062】
グリスフィルター3a、3bおよびケーシング9dの最下端9eには、分離された油を溜めるための油溜り部10a、10b、10cが設けられ、油溜り部10a、10b、10c内部には、それぞれ送油装置11としてのポンプ11a、11b、11cの吸引側に取り付けられた送油管12a、12b、12cの一端が臨ませてある。また、ポンプ11a、11b、11cの吐出側に取り付けられた送油管13a、13b、13cは、合流して1本の送油管13となり1個の油処理手段14に接続されている。なお、油溜り部10a、10b、10cの、内部には油面検知器(一例として光学プリズム式油面センサー)15a、15b、15cが、また、近傍には制御装置16a、16b、16cが、それぞれ設けられている。
【0063】
油処理手段14は、本実施の形態1では油分解装置14aであり、独立した筐体17内に納められ、屋外7に設置されている。油分解装置14aには、補助送風ファン18が取り付けられ、油分解装置14aの内部には、少なくとも白金またはパラジウムのいずれかを含む触媒19aを担持した担体19bと加熱手段20としてのヒータ20aを備えている。なお、本実施の形態1では、コストを安価にするために、送油管13a、13b,13cを合流させ1本の送油管13として1個の油処理手段14に接続してあるが、必要に応じて複数の油処理手段14を設けてもよい。また、本実施の形態1では、油分離機構3としてのグリスフィルター3a、3bを、捕集フード1内部と送風ユニット8内部に設けているが、必要に応じて、例えばダクト5内部に追加して設けてもよい(その場合は、付随の油溜り部、ポンプ、送油管、油面検知器、制御装置も追加となる)。
【0064】
つぎに、本実施の形態1における動作を説明する。調理台2aで調理を行った際に発生する油は、油粒などとして調理台2a上方の空気中に浮遊する。スイッチ動作やタイマー(図示せず)などにより排気ファン9aが運転を開始し、調理台2a上方の油粒を含んだ空気は捕集フード1で捕集され、グリスフィルター3a〜ダクト5〜グリスフィルター3b〜排気ファン9aの順に送られ、屋外7に排出される。この時、まず、捕集フード1内のグリスフィルター3aに衝突した空気中の油粒が、油溜り部10aに分離、回収される。グリスフィルター3aで回収できなかった残留油粒は、つぎに、送風ユニット8内のグリスフィルター3bに衝突し、油溜り部10bに分離、回収される。さらに、グリスフィルター3bでも回収できなかった比較的粒径の小さい残留油粒は、排気ファン9aの羽根車9cを通る際に、羽根車9cに付着した油粒を遠心力でケーシング9d内面に付着させ、付着した油は重力によってケーシング9d内面の最下端9eに位置した油溜り部10cに分離、回収される。このように、油分離機能を含む油分離機構3を複数個設けた理由は、 捕集された空気中の油粒を分離させる機能を高め、屋外7に排気する空気の清浄度をよりいっそう高めるためで、本実施の形態1においては、油捕集効率が少なくとも90%以上確保できるものである。
【0065】
油溜り部10a、10b、10cに分離、回収された油は、油面検知器15a、15b、15cが所定の高さの油面(例えば油溜り部の深さに対し2/3の高さの油面)を検知した時に、ポンプ11a、11b、11cによって、送油管12a、13aと、送油管12b、13bと、送油管12c、13cとから、合流した送油管13を通って油処理手段14としての油分解装置14aに送られることにより、自動的かつ確実に油分解工程に移行することができる。油分解工程では、加熱手段20としてのヒータ20aに通電し担体19bを加熱するとともに、補助送風ファン18を運転し担体19bに空気を供給する。担体19bを加熱することにより、担体19bに担持された触媒19aと担体19bに付着貯留された油の温度が上昇し、適正温度としての触媒19aの活性温度に達した時に供給された空気中の酸素と油とが触媒酸化反応を起こし、油成分は分解され二酸化炭素と水蒸気となり屋外7へ排出される。この触媒19aを用いた分解方式は、油の分解を短時間で効率よく行うことができ、本実施の形態1では、一般家庭の台所などで使用された場合、1日の油発生量を30分程度で分解することが可能となる。また、触媒19aの材質は、油を比較的低温(200〜300℃程度)で酸化分解し加熱エネルギーを低減させるという目的で、少なくとも白金またはパラジウムのいずれかを含むとしているが、他の触媒であってもよい。
【0066】
ポンプ11a、11b、11cの作動は、制御装置16a、16b、16cの指令によって、油面検知器15a、15b、15cが油溜り部10a、10b、10cの所定の高さの油面を検知した時に作動を開始するが、油の回収量が少なく、ポンプ11a、11b、11cの作動頻度が少ない場合は、 油溜り部10a、10b、10cに油が長期間放置されて凝固し、ポンプ11a、11b、11cによって送油できなくなることがある。そこで、本実施の形態1では、制御装置16a、16b、16cにタイマー機能を有し、油面検知器15a、15b、15cが所定の高さの油面を検知した時、またはポンプ11a、11b、11cが前回作動した後にタイマー機能が所定の時刻をカウントした時の、いずれかの条件が揃った時に、ポンプ11a、11b、11cが作動するような指令を制御装置16a、16b、16cによって与えるものである。これにより、たとえ油面検知器15a、15b、15cが油面を検知しなくても、所定の時刻になったらポンプ11a、11b、11cで送油を開始するため、油が凝固する前に確実に油分解工程に移行することができるものである。また、本実施の形態1では、比較的低温(200〜300℃程度)で油を酸化分解し、安全性を確保しているが、万一の油分解装置14aの異常温度上昇時にも、他の機器に影響が及ばないように、油分解装置14aは独立した筐体17内に納められ、屋外7に設置されている。このことで、よりいっそうの安全性を確保することができる。
【0067】
このように、本実施の形態1によれば、送風手段9を屋外7に設置することにより騒音を低減させるとともに、油処理手段14によりメンテナンスを不要とし、メンテナンスにかかる手間とコストを低減させることができるものである。
【0068】
(実施の形態2)
実施の形態1と同一部分は同一符号を附し、詳細な説明は省略する。図2は、本発明の実施の形態2における排気処理システムの構成断面図である。
【0069】
図2において、31は、油処理手段14としての油分解装置14aの内部に設けられた燃焼バーナーで、気化ヒータ32、点火装置33およびバーナーファン34が取り付けられている。送油管13から油分解装置14aに送られてきた油は、気化ヒータ32によって気化され燃焼しやすい状態となった後、点火装置33によって着火し、バーナーファン34の運転により供給される空気中の酸素とともに燃焼され、油成分は分解され二酸化炭素と水蒸気となり屋外7へ排出される。この方式により、油分解処理を短時間で確実に行うことができる。本実施の形態1では、一般家庭の台所などで使用された場合、1日の油発生量を3分程度で分解することが可能となる。
【0070】
(実施の形態3)
実施の形態1、2と同一部分は同一符号を附し、詳細な説明は省略する。図3は、本発明の実施の形態3における排気処理システムの構成断面図である。
【0071】
図3において、油処理手段14としての油分解装置14aは、屋内2の台所に備えられた流し台2b下方に設置され、内部には酵素41aを含浸した担体41bが備えられ、油分解装置14aの上部には給水経路42と給水弁42aが、油分解装置14aの下部には排水経路43と排水弁43aが、それぞれ設けられている。酵素41aとしては、油が分解できればよく、例えば、リパーゼなどがある。
【0072】
つぎに、本実施の形態3における動作を説明する。送油管13から油分解装置14aに送られてきた油を処理する場合は、まず、給水弁42aを「開」にし給水経路42から水を油分解装置14a内に供給し、所定の水が溜ったのちに給水弁42aを「閉」とする。この時、担体41bは水に漬され、担体41bに含浸された酵素41aの反応によって油の分解を行い、そののち、排水弁43aを「開」にし排水経路43から水とともに油の分解成分を排水する。この方式は、油の分解に時間はかかるものの、熱などのエネルギーを使わずに油分解を行うことができるため、省エネルギー化を図ることができるものである。また、熱を使わないため、油分解装置14aが異常温度になることもなく、本実施の形態3のように、油分解装置14aを屋内2の台所に備えられた流し台2b下方に設置しても、安全上問題ない。また、油分解装置14aを、水配管が近くにある流し台2b下方に設置することにより、給水経路42と排水経路43の接続工事を簡便に行うという効果を奏する。
【0073】
(実施の形態4)
実施の形態1乃至3と同一部分は同一符号を附し、詳細な説明は省略する。図4は、本発明の実施の形態4における排気処理システムの構成断面図である。
【0074】
図4において、油処理手段14として油固形化装置51が設けられ、油固形化装置51には、油凝固剤供給装置52と下部には廃棄蓋53が取り付けられている。送油管13から油固形化装置51に送られてきた油は、油固形化装置51内部に貯留されるが、油凝固剤供給装置52より定期的に油凝固剤が供給されることにより、油固形化装置51内部に貯留した油を固形化する。使用者は、定期的に廃棄蓋53を開けて固形化油を廃棄する必要があるが、従来のように機器を分解して掃除などのメンテナンスを行う必要がなく、メンテナンスを簡素化し手間を低減させることができる。しかも、この方式は、比較的油処理手段14のコストを安価にすることができる。定期的に油凝固剤の供給は、貯留した油を固形化できればよく、例えば、1日に1回程度、油凝固剤を供給する。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の排気処理システムは、家庭の台所や業務用厨房などの空間に浮遊する油粒を浄化し排気する用途として有用であり、また、工場などで浮遊するオイルミストなどを浄化する用途などにも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の実施の形態1の排気処理システムを示す構成断面図
【図2】本発明の実施の形態2の排気処理システムを示す構成断面図
【図3】本発明の実施の形態3の排気処理システムを示す構成断面図
【図4】本発明の実施の形態4の排気処理システムを示す構成断面図
【図5】従来の排気処理システムを示す構成断面図
【図6】従来の排気処理システムを示す構成断面図
【符号の説明】
【0077】
1 捕集フード
2 屋内
2b 流し台
3 油分離機構
3a,3b グリスフィルター
4 通風経路
5 ダクト
7 屋外
8 送風ユニット
9 送風手段
9a 排気ファン
9b 吸込側通風経路
9c 羽根車
9d ケーシング
9e 最下端
10a,10b,10c 油溜り部
11 送油装置
11a,11b,11c ポンプ
12a,12b,12c 送油管
13 送油管
13a,13b,13c 送油管
14 油処理手段
14a 油分解装置
15a,15b,15c 油面検知器
16a,16b,16c 制御装置
17 筐体
18 補助送風ファン
19a 触媒
19b 担体
20 加熱手段
31 燃焼バーナー
41a 酵素
41b 担体
42 給水経路
43 排水経路
51 油固形化装置
52 油凝固剤供給装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋内に設置され浮遊する油粒を含んだ空気を捕集するための捕集フードと、前記捕集フードに接続され屋内から屋外にかけて設置された空気を搬送するためのダクトと、前記ダクトに接続され屋外に設置された送風手段を有する送風ユニットとを備え、前記浮遊する油粒を含んだ空気から油を分離するための油分離機構が、少なくとも前記捕集フードの1箇所と前記送風ユニットの1箇所とを含む複数箇所に設けられ、前記各油分離機構にはそれぞれ油溜り部、送油管および送油装置が接続され、前記送油管には油処理手段が接続された排気処理システム。
【請求項2】
油分離機構として、捕集フードからダクト、送風ユニットに至る通風経路内の通風抵抗となるような小孔を有するグリスフィルターを設けた請求項1記載の排気処理システム。
【請求項3】
送風ユニットに設けられた油分離機構として、羽根車に付着した油を遠心力でケーシング内面に付着させ前記ケーシング内面の最下端に位置する油溜り部に油を集めることにより油分離機能を有する送風手段としての排気ファンと、前記排気ファンの吸込側通風経路に設けられた通風抵抗となるような小孔を有するグリスフィルターとを設けた請求項1記載の排気処理システム。
【請求項4】
排気ファンは、羽根車が後向き翼のターボファンである請求項3記載の排気処理システム。
【請求項5】
複数の各送油装置はポンプであり、前記ポンプの吸引側に取り付けられた送油管の一端を油溜り部内部に臨ませるとともに、前記ポンプの吐出側に取り付けられた各送油管は、合流して1本の送油管となり1個の油処理手段に接続された請求項1〜4のいずれかに記載の排気処理システム。
【請求項6】
各油溜り部には油面検知器を設け、前記油面検知器が所定の高さの油面を検知した時に、各ポンプが作動するような指令を制御装置によって与える請求項5記載の排気処理システム。
【請求項7】
制御装置にはタイマー機能を有し、油面検知器が所定の高さの油面を検知した時、またはポンプが前回作動した後に前記タイマー機能が所定の時刻をカウントした時の、いずれかの条件が揃った時に、前記ポンプが作動するような指令を前記制御装置によって与える請求項6記載の排気処理システム。
【請求項8】
油処理手段としての油分解装置の内部に燃焼バーナーを備え、前記燃焼バーナーにより油を燃焼させ分解する請求項1〜7のいずれかに記載の排気処理システム。
【請求項9】
油処理手段としての油分解装置には補助送風ファンが取り付けられ、前記油分解装置の内部には触媒を担持した担体と加熱手段とを備え、前記補助送風ファンにより空気中の酸素を前記油分解装置内部に供給するとともに、前記加熱手段により前記触媒および前記担体に付着貯留した油を適正温度まで加熱し、油を触媒酸化反応によって分解する請求項1〜7のいずれかに記載の排気処理システム。
【請求項10】
触媒は少なくとも白金またはパラジウムのいずれかを含む請求項9記載の排気処理システム。
【請求項11】
油処理手段としての油分解装置は、独立した筐体内に納められ、屋外に設置された請求項8〜10のいずれかに記載の排気処理システム。
【請求項12】
油処理手段としての油分解装置には、酵素を含浸した担体と給水経路と排水経路とを備え、前記担体に付着貯留された油に前記給水経路から水を供給し、前記酵素によって反応させ油の分解を行い、そののち前記排水経路から水とともに油の分解成分を排水する請求項1〜7のいずれかに記載の排気処理システム。
【請求項13】
油処理手段としての油分解装置は、屋内の台所に備えられた流し台下方に設置された請求項12記載の排気処理システム。
【請求項14】
油処理手段としての油固形化装置には油凝固剤供給装置が接続され、前記油固形化装置内部に前記油凝固剤供給装置より定期的に油凝固剤が供給されることにより、前記油固形化装置内部に貯留された油を固形化する請求項1〜7のいずれかに記載の排気処理システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−196800(P2008−196800A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−33203(P2007−33203)
【出願日】平成19年2月14日(2007.2.14)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】