説明

排水ソケット及び便器設置構造

【課題】サイホン起動が十分に早いものとなる排水ソケットと、この排水ソケットを用いた便器設置構造とを提供する。
【解決手段】排水ソケット20は、排水口4が上方から差し込まれる第1筒部21と、該第1筒部21に対し縮径方向に張り出す環状の径方向部23と、該径方向部23の内周側から下方に延在した第2筒部22と、径方向部23に係止され、必要に応じ接着剤等によって固定されたオリフィス板30等を備えている。オリフィス板30は、外周側の円環部31と、該円環部31の内周端から垂下する短い筒状の環壁部32と、該環壁部32の下端に連なる円環状の張出部33とを有している。段部たる円環部31よりも環壁部32の高さΔH分だけ下位に前記張出部33が位置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便器の排水口と排水管とを接続する排水ソケットに関する。また、本発明は、この排水ソケットを用いた便器設置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
便器の排水口を排水ソケットによって排水管に接続した代表的な従来例(特開平8−260551号の従来技術の欄及び図6に記載)について第2図を参照して説明する。
【0003】
便器(洋風便器)1の便鉢2は、トラップ3を介して排水口4に連通している。この排水口4は円筒形であり、筒軸心方向を略鉛直方向として下方に向って開放している。排水ソケット10は、該排水口4が上方から差し込まれる第1筒部11と、該第1筒部11に対し段部13を介して連なる第2筒部12と、該第2筒部12の下端に設けられたオリフィス14と、第2筒部12を取り巻く外筒体15等を備えている。第1筒部11の上部外周には、外周筒状部11aが一体に設けられ、この外周筒状部11aと第1筒部11との間にパッキン18が押し込まれて装着されている。
【0004】
段部13は、第1筒部11の下端から縮径方向(内方)へ延出した環形状である。第2筒部12は、この段部13の内周端から下方に延在している。オリフィス14は、第2筒部12の下端から縮径方向に突設された環形の鍔状に形成されている。外筒体15は、第1筒部12の下端に連なっている。この外筒体15の下端がトイレルームの床面Fに当接している。
【0005】
排水口4は、この第1筒部11に上方から差し込まれている。第1筒部11の上端に装着された環状のパッキン18の内周側リップ部が排水口4の外周面に水密的に当接している。
【0006】
第2筒部12の下部が、床面Fから突出した排水管19に上方から差し込まれている。
【0007】
フラッシュ時の便鉢洗浄排水がこの排水ソケット10に流入してきた場合、水の一部がオリフィス14に当って内方へ弾ね返ることにより、排水ソケット10及び排水口4付近が満水状態となり、その後この満水状態の水が落下することによりトラップ3にサイホン排出流が形成される。
【0008】
上記特開平8−260551号の図1〜3には、このサイホン排出流が早期に形成されるようにするために、第2筒部12の上部に縮径方向に環状の張出部を設けることが記載されている。この張出部の上面は段部13と面一状である。
【0009】
第3図は、同号公報の図2に記載の排水ソケット10Aを示すものであり、符号17が張出部を示している。第3図の排水ソケット10Aのその他の構成は上記排水ソケット10と同一であり、同一符号は同一部分を示している。
【特許文献1】特開平8−260551号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特開平8−260551号のように、第2筒部12の上部に張出部17を設けた排水ソケットにおいて、この張出部17の上面が段部13と面一状である場合、排水口から落下してきた水の一部が張出部17で弾ね返され、排水口4の下端と段部13との間の間隙を通って排水口4の外周面と第1の筒部11との間に逃げ、その分だけ排水ソケット内が満水になるのが遅くなり、サイホン起動が十分には早くならないおそれがあった。本発明は、サイホン起動が十分に早いものとなる排水ソケットと、この排水ソケットを用いた便器設置構造とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の排水ソケットは、便器の下方に向って開放する排水口に装着される排水ソケットであって、該排水口が上方から挿入される第1筒部と、該第1筒部の下端から縮径方向に張り出す環状の段部と、該段部の内周縁から下方に延出した第2筒部と、該第2筒部の上部から縮径方向に突設された環状の張出部とを有する排水ソケットにおいて、該張出部を前記段部よりも下位に設けたことを特徴とするものである。
【0012】
この張出部と段部との高低差は、3〜10mm程度であることが好ましい。
【0013】
本発明の便器設置構造は、かかる本発明の排水ソケットを用いて便器の排水口と排水管とを接続したものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、張出部が段部よりも下位に設けられているので、張出部に当った水が排水口の外周へ逃げることが防止ないし抑制される。これにより、サイホン起動が十分に早くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。
【0016】
第1図(a)は実施の形態に係る排水ソケットを示す縦断図面であり、第1図(b)は同(a)のB−Bに沿う断面図、第1図(c)はオリフィス板の縦断図面である。
【0017】
この排水ソケット20は、排水口4(第1図では(b)図に2点鎖線にて図示)が上方から差し込まれる第1筒部21と、該第1筒部21に対し縮径方向に張り出す環状の径方向部23と、該径方向部23の内周側から下方に延在した第2筒部22と、径方向部23に係止され、必要に応じ接着剤等によって固定されたオリフィス板30等を備えている。前記第2図と同様に、第1筒部21の上部外周には外周筒状部21aが設けられ、パッキンが装着可能とされている。
【0018】
この第2筒部22は、その軸心線方向が四分円弧状に湾曲し、排水口24が側方を向いている。
【0019】
第1筒部21を下方に延長するようにして台座カバー部26が設けられ、この台座カバー部26の下端にベース部27が連なっている。このベース部27がトイレルームの床面上に設置される。
【0020】
径方向部23に係止されたオリフィス板30は、外周側の円環部31と、該円環部31の内周端から垂下する短い筒状の環壁部32と、該環壁部32の下端に連なる円環状の張出部33とを有している。該円環部31は前記径方向部23の上面に重なっている。径方向部23の内周縁と第2筒部22の上端との交叉部は、周方向に延在した浅い棚段状部25となっており、この棚段状部25の上面に張出部33が重なっている。(a),(b)図に示される通り、排水口24側を除いた第2筒部22上端内周の大部分において、その内周縁よりも内方へ張出部33が張り出している。
【0021】
この実施の形態では、径方向部23に重なった円環部31が第1筒部21の下端から内方(縮径方向)に延出した環状の段部を構成している。この段部たる円環部31よりも環壁部32の高さΔH分だけ下位に前記張出部33が位置している。このΔHは3〜10mm、特に5〜7mm程度が好適である。張出部33の内周縁から環壁部32までの幅すなわち張出部33の内径(半径)と外径(半径)との差Wは5〜15mm、特に8〜12mm程度が好適である。
【0022】
この排水ソケット20は、例えば特開2004−197331号などのように、便器の排水口の位置と床排水管の位置とがずれている場合に用いられるものであり、排水口24と床排水管とは、床面に沿って横引きされた横引配管(図示略)を介して接続される。ただし、排水口24が下方を向いていてもよいことは当然である。
【0023】
この排水ソケット20を用いて便器排水口4を排水管に接続した便器設置構造においては、該排水口4の内周面とオリフィス板30の環壁部32とが略々面一状であることが好ましい。即ち、排水口4の下部の内径と環壁部32の内径2が略々同一であることが好ましい。また、排水口4の下端と円環部31との上下方向の間隔(高低差)は5〜10mm程度であることが好ましい。これにより、排水口4からの水が張出部33に当り易くなると共に、排水口4の外周側へ回り込みにくくなる。
【0024】
このように設置された便器において、便器の便鉢をフラッシュ洗浄した場合、トラップを介して排水口4から排水ソケット20内に流れ落ちてきた水の一部がオリフィス板30の張出部33に当たり、第1筒部21及びその上側の便器排水口4内が水で満水状態となり、この水が落下することによってサイホンが形成される。
【0025】
この実施の形態では、排水ソケット20上部の張出部33の外周に環壁部32が存在し、且つ段部たる円環部31よりも張出部33がΔH分だけ低位となっているので、張出部33に当った水が排水口4の外周側に入り込むことが防止ないし抑制され、排水ソケット20の第1筒部21付近及び排水口4付近が早期に満水になり、サイホンが早期に形成される。
【0026】
第1図の実施の形態ではオリフィス板30を用いて張出部33を形成しているが、張出部を排水ソケットと一体に設けてもよい。
【0027】
第4図はこの一例を示す縦断図面である。この実施の形態は、前記第3図の排水ソケット10においてオリフィス状の張出部14Aを第2筒部12の上部に配置したものである。なお、第2筒部12の下端のオリフィス14は省略されているが、設置されてもよい。張出部14Aの上面と段部13の上面との高低差ΔHは3〜10mmである。
【0028】
第4図のその他の構成は第3図と同一であり、同一符号は同一部分を示している。
【0029】
この実施の形態でも、張出部14AがΔH分だけ段部13よりも低位に設けられているので、上記第1図の排水ソケットと同様の作用効果が奏される。
【0030】
上記実施の形態はいずれも本発明の一例であり、本発明は図示以外の形態をもとりうる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施の形態に係る排水ソケットを示す断面図である。
【図2】従来例に係る便器設置構造の断面図である。
【図3】従来例に係る排水ソケットの断面図である。
【図4】別の実施の形態に係る排水ソケットを示す断面図である。
【符号の説明】
【0032】
4 排水口
10,10A,20 排水ソケット
13 段部
14A 張出部
11,21 第1筒部
12,22 第2筒部
30 オリフィス板
31 円環部
32 環壁部
33 張出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器の下方に向って開放する排水口に装着される排水ソケットであって、
該排水口が上方から挿入される第1筒部と、
該第1筒部の下端から縮径方向に張り出す環状の段部と、
該段部の内周縁から下方に延出した第2筒部と、
該第2筒部の上部から縮径方向に突設された環状の張出部と
を有する排水ソケットにおいて、該張出部を前記段部よりも下位に設けたことを特徴とする排水ソケット。
【請求項2】
請求項1において、該張出部と段部との高低差が3〜10mmであることを特徴とする排水ソケット。
【請求項3】
便器の排水口と排水管とが排水ソケットを介して接続された便器設置構造において、該排水ソケットが請求項1又は2に記載の排水ソケットであることを特徴とする便器設置構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−327300(P2007−327300A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−161180(P2006−161180)
【出願日】平成18年6月9日(2006.6.9)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】