排水ソケット
【課題】水洗便器のサイホン作用を早期に発生させることにより、洗浄水量を抑制し、節水を図ることができる、排水ソケットを提供する。
【解決手段】排水ソケット1は、洋式水洗便器の一つである便器本体20の排出口21に接続される便器接続部22と、便器本体20が設置される床23側に配設された排水管24に接続される排水管接続部25と、便器接続部22と排水管接続部25とを連通する排水流路26の内周面26aに排水流路26の軸心C方向に向かって突設された棚部27と、を備えている。棚部27の上面に、汚水返し手段として、軸心Cに向かって上り勾配をなす斜面部27aを設けている。また、排水流路26の内周面26aと、棚部27の斜面部27aとの間に、下方へ向かうにつれて軸心C方向へ突出するリブ状のガイド部材28を複数設けている。
【解決手段】排水ソケット1は、洋式水洗便器の一つである便器本体20の排出口21に接続される便器接続部22と、便器本体20が設置される床23側に配設された排水管24に接続される排水管接続部25と、便器接続部22と排水管接続部25とを連通する排水流路26の内周面26aに排水流路26の軸心C方向に向かって突設された棚部27と、を備えている。棚部27の上面に、汚水返し手段として、軸心Cに向かって上り勾配をなす斜面部27aを設けている。また、排水流路26の内周面26aと、棚部27の斜面部27aとの間に、下方へ向かうにつれて軸心C方向へ突出するリブ状のガイド部材28を複数設けている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水洗便器本体の排出口と、床側に配設された排水管との間に配置される排水ソケットに関する。
【背景技術】
【0002】
水洗便器本体の後方下面に汚物を排出するために設けられた排出口と、床側に配設された排水管との接続部分には、通常、排水ソケットが配置されている。従来の排水ソケットとして、例えば、特許文献1記載のものがある。特許文献1記載の排水ソケットにおいては、その流出口側にオリフィスが形成され、当該オリフィスの上流側に絞りが設けられている。このような構造とすれば、サイホン作用を早期に発生させることができるため、洗浄水量が抑制され、節水を図ることができる。
【0003】
【特許文献1】特開平8−260551号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の排水ソケットは、オリフィスおよび絞りを備えているため、便器本体内の汚水が排出された場合、絞りおよびオリフィスによって汚水の流下が妨げられ、排水ソケット内に、一時的に汚水の塊(以下、「水膜」という。)が形成される。そして、この水膜が排水ソケット内を流下することによってサイホン作用が発生し、汚水全体が排出される。
【0005】
しかしながら、この排水ソケットにおける絞りおよびオリフィスは汚水の流下を妨げるだけであり、その作用にも限界があるため、排水開始直後の汚水の大部分は流下してしまう。このため、排水ソケット内に、水膜が形成されにくく、サイホン作用を早期に発生させることができないのが実状である。従って、洗浄水量を抑制し、節水を図るという目的も充分に達成されていない。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、水洗便器のサイホン作用を早期に発生させることにより、洗浄水量を抑制し、節水を図ることができる排水ソケットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の排水ソケットは、便器本体の排出口に接続される便器接続部と、床側に配設された排水管に接続される排水管接続部と、前記便器接続部と前記排水管接続部とを連通する排水流路の内周面に当該排水流路の軸心方向に向かって突設された棚部と、を備えた排水ソケットにおいて、
前記棚部の上面に、前記軸心に近づくにつれて上方へ変位した部分を有する汚水返し手段を設けたことを特徴とする。
【0008】
このような構成とすれば、便器接続部から排水流路内に流入した汚水は、排水流路の内周面を伝って流下し、棚部の上面に設けられた汚水返し手段の「上方に変位した部分」に衝突することにより、速やかに排水流路の軸心方向へ巻き上げられる。そして、排水流路の軸心方向へ巻き上げられた前記汚水と、排水流路の内周面を伝わらず排水流路の略中央を落下してきた汚水とが衝突することにより、速やかに水膜が形成される。このため、水洗便器のサイホン作用が早期に発生し、比較的少量の洗浄水で汚物を排出することが可能となり、洗浄水量を抑制し、節水を図ることができる。
【0009】
また、本発明の排水ソケットは、便器本体の排出口に接続される便器接続部と、床側に配設された排水管に接続される排水管接続部と、前記便器接続部と前記排水管接続部とを連通する排水流路と、を備えた排水ソケットにおいて、
前記排水管接続部の内径を前記排水流路の内径より小とし、前記排水管接続部と前記排水流路との境界位置に前記排水流路の軸心方向に向かって突出した棚部を設け、前記棚部の上面に、前記排水流路の軸心に近づくにつれて上方へ変位した部分を有する汚水返し手段を設けたことを特徴とする。
【0010】
このような構成とすれば、前述と同様、便器接続部から排水流路内に流入した汚水は、排水流路の内周面を伝って流下し、棚部の上面に設けられた汚水返し手段の「上方に変位した部分」に衝突することにより、速やかに排水流路の軸心方向へ巻き上げられる。そして、排水流路の軸心方向へ巻き上げられた前記汚水と、排水流路の内周面を伝わらず排水流路の略中央を落下してきた汚水とが衝突することにより、速やかに水膜が形成される。このため、水洗便器のサイホン作用が早期に発生し、比較的少量の洗浄水で汚物を排出することが可能となり、洗浄水量を抑制し、節水を図ることができる。また、排水管接続部の内径を排水流路の内径より小としたことにより、排水流路を落下する汚水は、当該排水流路と排水管接続部との境界部分でその落下が妨げられるため、速やかなる水膜形成に有効である。
【0011】
また、本発明の排水ソケットは、便器本体の排出口に接続される便器接続部と、床側に配設された排水管に接続される排水管接続部と、前記便器接続部と前記排水管接続部とを連通する排水流路と、を備えた排水ソケットにおいて、
前記排水管接続部の内径を前記排水流路の内径より小とし、前記排水管接続部と前記排水流路との境界位置に前記排水流路の軸心方向に向かって突出した第一棚部を設け、前記排水管接続部の下流側端部の内周面に当該排水管接続部の軸心方向に向かって突出した第二棚部を設け、前記第一棚部、前記第二棚部の少なくとも一方の上面に、前記軸心に近づくにつれて上方へ変位した部分を有する汚水返し手段を設けたことを特徴とする。
【0012】
このような構成とすれば、便器接続部から流入して排水流路内を落下する汚水は、第一棚部および第二棚部によって落下が妨げられ、第一棚部、第二棚部の少なくとも一方の上面に設けられた汚水返し手段の「上方に変位した部分」に衝突することにより、排水流路の内周面若しくは排水管接続部の内周面を伝って流下した汚水が速やかに排水流路の軸心方向へ巻き上げられる。そして、巻上げられた前記汚水と第一棚部および第二棚部に衝突せずに排水流路若しくは排水管接続部の略中央を落下してきた汚水とが衝突することにより、速やかに水膜が形成される。このため、水洗便器のサイホン作用が早期に発生し、比較的少量の洗浄水で汚物を排出することが可能となり、洗浄水量を抑制し、節水を図ることができる。
【0013】
ここで、前記汚水返し手段として、排水流路の軸心に向かって上り勾配をなす斜面部を設ければ、便器接続部から流入して排水流路の内周面を伝って落下する汚水は斜面部に衝突することにより、排水流路の軸心方向へ巻き上げられる。そして、巻き上げられた汚水と排水流路の略中央を落下して斜面部と衝突しない汚水とが衝突することにより、速やかに水膜が形成される。従って、水洗便器にサイホン作用が早期に発生し、比較的少量の洗浄水で汚物を排出することが可能となり、洗浄水量を抑制し、節水を図ることができる。
【0014】
この場合、前記斜面部を、凹曲面、凸曲面若しくは平面のいずれかとすれば、便器接続部から流入して排水流路の内周面を伝って落下する汚水が、より効率的に乱流状態を形成しながら排水流路の軸心方向へ巻き上げられるため、水膜形成作用が高まり、速やかに水膜を形成することができる。
【0015】
一方、前記斜面部の前記軸心側の内周縁に沿って、上方へ突出した堰部を設けることもできる。このような構成とすれば、棚部の上面に衝突した汚水は、さらに効率的に乱流状態を形成しながら排水流路の軸心方向へ巻き上げられるため、水膜形成作用を高めることができる。
【0016】
また、前記汚水返し手段として、前記軸心に向かって上り勾配をなす階段部を設ければ、棚部の上面に衝突した汚水は、効率的に乱流状態を形成しながら排水流路の軸心方向へ巻き上げるため、水膜形成作用がさらに高まる。
【0017】
さらに、前記排水流路の内周面と、前記棚部または前記第一棚部の上面との間に、下方へ向かうにつれて前記軸心方向へ突出するガイド部材を設けることもできる。このような構成とすれば、便器接続部から排水流路内に流入する汚水中の固形物は、ガイド部材に接触することにより、排水流路の軸心方向へ誘導されるため、固形物が棚部に衝突して、その上面に残留するのを防止することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、水洗便器のサイホン作用を早期に発生させることにより、洗浄水量を抑制し、節水を図ることができる、排水ソケットを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態について説明する。図1は本発明の第1実施形態である排水ソケットを示す平面図、図2は図1におけるA−A線断面図、図3は図1に示す排水ソケットを水洗便器に配設した状態を示す縦断面図である。
【0020】
図1〜図3に示すように、本実施形態の排水ソケット1は、洋式水洗便器の一つである便器本体20の排出口21に接続される便器接続部22と、便器本体20が設置される床23側に配設された排水管24に接続される排水管接続部25と、便器接続部22と排水管接続部25とを連通する排水流路26の内周面26aに排水流路26の軸心C方向に向かって突設された棚部27と、を備えている。排水管接続部25は、棚部27から連続して形成されており、その内径寸法は排水流路26の内径寸法より小さい。棚部27の上面には、汚水返し手段として、軸心Cに近づくにつれて上方へ変位した部分、即ち、軸心Cに向かって上り勾配をなす斜面部27aを設けている。
【0021】
また、排水流路26の内周面26aと、棚部27の上面(斜面部27a)との間に、下方へ向かうにつれて軸心C方向へ突出するリブ状のガイド部材28を複数設けている。これらのガイド部材28は、棚部27の斜面部27a上に、軸心Cを中心にして放射状をなすように等角度間隔で立設されている。ガイド部材28は合計12個設けているが、これに限定するものではないので、増減可能である。
【0022】
排水ソケット1において、便器接続部22から排水流路26内に流入した汚水のうち、内周面26aを伝って落下した汚水は棚部27の上面に設けられた斜面部27aに衝突することにより、排水流路26の軸心C方向へ巻き上げられる。そして、巻き上げられた前記汚水と、斜面部27aに衝突せずに落下してきた汚水とが衝突することにより、速やかに水膜が形成される。このため、便器本体20のサイホン作用が早期に発生し、比較的少量の洗浄水で汚物を排出することが可能となり、洗浄水量を抑制し、節水を図ることができる。
【0023】
また、排水流路26の内周面26aと、棚部27の斜面部27aとの間に、下方へ向かうにつれて軸心C方向へ連続的に突出するリブ状のガイド部材28を設けているため、便器接続部22から排水流路26内に流入する汚水中の固形物は、これらのガイド部材28に接触することにより、排水流路26の軸心C方向へ誘導されるため、固形物が棚部27に衝突して、その斜面部27a上に残留するのを防止することができる。
【0024】
次に、図4〜図16を参照し、本発明の第2〜14実施形態について説明する。図4〜図16は本発明の第2〜14実施形態である排水ソケットを示す縦断面図である。なお、図4〜図16において、図1〜図3に示す符号と同じ符号を付している部分は、第1実施形態の排水ソケット1の構成部分と同じ構造、機能を有する部分であるため、説明を省略する。
【0025】
図4に示す排水ソケット2は、前述した排水ソケット1におけるガイド部材28を省略した構造である。棚部27の上面に斜面部27aを設けているため、内周面26aを伝って落下した汚水が斜面部27aに衝突して軸心C方向へ巻き上げられ、速やかに水膜が形成される。このため、サイホン作用が早期に発生し、比較的少量の洗浄水で汚物を排出することが可能となり、洗浄水量を抑制し、節水を図ることができる。
【0026】
図5に示す排水ソケット3においては、汚水返し手段として、棚部27の上面に斜面部27aを設けるとともに、斜面部27aの軸心C側の内周縁に沿って上方へ突出した堰部27bが設けている。このような構成とすれば、棚部27の斜面部27aに衝突した汚水は、排水流路26の軸心C方向へ巻き上げられるとともに、堰部27bにより汚水を棚部27上に留める作用も生じるため、優れた水膜形成作用を発揮する。
【0027】
図6に示す排水ソケット4においては、汚水返し手段として、棚部27の上面に、排水流路26の軸心Cに向かって上り勾配をなす階段部27cを設けている。棚部27の階段部27cに衝突した汚水は、排水流路26の軸心C方向へ巻き上げられるとともに、複数の段差を有する階段部27cにより汚水の流動も妨げられるため、優れた水膜形成作用を得ることができる。
【0028】
図7に示す排水ソケット5においては、汚水返し手段として、棚部27の上面に、排水流路26の軸心Cに向かって上り勾配をなす凹曲面27dを設けている。便器接続部22から流入して排水流路26内を落下する汚水は、棚部27の凹曲面27dに衝突することにより、速やかに、排水流路26の軸心C方向へ巻き上げられるため、優れた水膜形成作用を得ることができる。
【0029】
図8に示す排水ソケット6においては、排水管接続部25の内径25aを排水流路26の内径26bより小とし、排水流路26と排水管接続部25との境界に位置する排水流路26の内周面26aに、当該排水流路26の軸心C方向に向かって突設された第一棚部29を設け、排水管接続部25の内周面25bの下流側端部に、排水流路26の軸心C方向に向かって突出した第二棚部30を設け、汚水返し手段として、第二棚部30の上面に、軸心Cに近づくにつれて上り勾配をなす斜面部30aを設けている。
【0030】
便器接続部22から流入して排水流路26内を落下する汚水は、第一棚部29および第二棚部30によって落下が妨げられるとともに、第二棚部30の上面に設けられた斜面部30aに衝突することにより、排水流路26の軸心C方向へ巻き上げられる。そして、巻き上げられた前記汚水と、第一棚部29および第二棚部30に衝突せずに落下した汚水とが衝突することにより、速やかに水膜が形成され、サイホン作用が早期に発生し、比較的少量の洗浄水で汚物を排出することが可能となるため、洗浄水量を抑制し、節水を図ることができる。
【0031】
図9に示す排水ソケット7においては、前述した排水ソケット6の構成に加え、第一棚部29の上面にも、軸心Cに近づくにつれて上り勾配をなす斜面部29aを設けている。このような構成とすることにより、水膜形成作用がさらに高まるため、サイホン作用が早期に発生し、比較的少量の洗浄水で汚物を排出することが可能となり、洗浄水量が抑制され、節水を図ることができる。
【0032】
図10に示す排水ソケット8においては、第二棚部30の上面に斜面部30aを設けるとともに、第二棚部30の軸心C側の内周縁に沿って上方へ突出した堰部30bを設けている。第二棚部30の斜面部30aに衝突した汚水は、排水流路26の軸心C方向へ巻き上げられるとともに、堰部30bにより、汚水を第二棚部30上に留める作用も生じるため、優れた水膜形成作用を発揮する。
【0033】
図11に示す排水ソケット9においては、汚水返し手段として、第二棚部30の上面に、排水流路26の軸心Cに向かって上り勾配をなす階段部30cを設けている。第二棚部30の階段部30cに衝突した汚水は、排水流路26の軸心C方向へ巻き上げられるとともに、複数の段差を有する階段部30cにより汚水の流動も妨げられるため、優れた水膜形成作用を得ることができる。
【0034】
図12に示す排水ソケット10においては、汚水返し手段として、第二棚部30の上面に、排水流路26の軸心Cに向かって上り勾配をなす凹曲面30dを設けている。便器接続部22から流入して排水流路26内を落下する汚水は、第二棚部の凹曲面30dに衝突することにより、速やかに、排水流路26の軸心C方向へ巻き上げられるため、優れた水膜形成作用を得ることができる。
【0035】
図13に示す排水ソケット11においては、排水管接続部25の内径25aを便器接続部22の内径22aより小とするとともに、便器接続部22の軸心C1と排水管接続部25の軸心C2とを偏位させて配置し、便器接続部22と排水流路26との境界に位置する排水流路26の内周面26aに、当該排水流路26の軸心C方向に向かって突設された棚部31を設けている。また、汚水返し手段として、棚部31の上面に、軸心Cに近づくにつれて上り勾配をなす斜面部31aを設けている。
【0036】
斜面部31aを設けるとともに便器接続部22と排水管接続部25とを偏位させているため、汚水の落下が大幅に抑制され、速やかに水膜が形成される。このため、サイホン作用が早期に発生し、比較的少量の洗浄水で汚物を排出することが可能となり、洗浄水量を抑制し、節水を図ることができる。
【0037】
図14に示す排水ソケット12においては、汚水返し手段として、棚部31の上面に、排水流路26の軸心Cに向かって上り勾配をなす階段部31bを設けている。棚部31の階段部31bに衝突した汚水は、排水流路26の軸心C方向へ巻き上げられるとともに、複数の段差を有する階段部31bにより汚水の流動も妨げられるため、優れた水膜形成作用を得ることができる。
【0038】
図15に示す排水ソケット13においては、汚水返し手段として、棚部31の上面に、軸心Cに近づくにつれて上り勾配をなす斜面部31aを設けるとともに、棚部31の軸心C側の内周縁に沿って上方へ突出した堰部31cを設けている。棚部31の斜面部31aに衝突した汚水は、排水流路26の軸心C方向へ巻き上げられるともに、堰部31cにより汚水を棚部31上に留める作用も生じるため、優れた水膜形成作用を発揮する。
【0039】
図16に示す排水ソケット14においては、汚水返し手段として、棚部31の上面に、排水流路26の軸心Cに向かって上り勾配をなす凹曲面31dを設けている。便器接続部22から流入する汚水は、棚部31の凹曲面31dに衝突することにより、速やかに排水流路26の軸心C方向へ巻き上げられるため、優れた水膜形成作用を得ることができる。
【0040】
なお、前述した図8〜図13に示す排水ソケット6〜11において、第一棚部29、第二棚部30の両方若しくはいずれか一方に、図1〜図3に示すようなガイド部材28を設けることもできる。また、図13〜図16に示す排水ソケット11〜14において、棚部31に図1〜図3に示すようなガイド部材28を設けてもよい。
【0041】
さらに、図9に示す排水ソケット7においては、第一棚部29の上面および第二棚部30の上面に、軸心Cに近づくにつれて上り勾配をなす斜面部29a,30aを設けているが、これに限定するものではないので、斜面部29a,30aの代わりに、図11に示す階段部30c、図12に示す凹曲面30dあるいは図5に示す棚部27の内周縁に沿って上方へ突設された堰部27bなどを採用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、一般住宅や公共施設などの水洗トイレに配置されている水洗便器において広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の第1実施形態である排水ソケットを示す平面図である。
【図2】図1におけるA−A線断面図である。
【図3】図1に示す排水ソケットを水洗便器に配設した状態を示す縦断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態である排水ソケットを示す縦断面図である。
【図5】本発明の第3実施形態である排水ソケットを示す縦断面図である。
【図6】本発明の第4実施形態である排水ソケットを示す縦断面図である。
【図7】本発明の第5実施形態である排水ソケットを示す縦断面図である。
【図8】本発明の第6実施形態である排水ソケットを示す縦断面図である。
【図9】本発明の第7実施形態である排水ソケットを示す縦断面図である。
【図10】本発明の第8実施形態である排水ソケットを示す縦断面図である。
【図11】本発明の第9実施形態である排水ソケットを示す縦断面図である。
【図12】本発明の第10実施形態である排水ソケットを示す縦断面図である。
【図13】本発明の第11実施形態である排水ソケットを示す縦断面図である。
【図14】本発明の第12実施形態である排水ソケットを示す縦断面図である。
【図15】本発明の第13実施形態である排水ソケットを示す縦断面図である。
【図16】本発明の第14実施形態である排水ソケットを示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0044】
1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14 排水ソケット
20 便器本体
21 排出口
22 便器接続部
22a,25a,26b 内径
23 床
24 排水管
25 排水管接続部
25b,26a 内周面
26 排水流路
27,31 棚部
27a,29a,30a,31a 斜面部
27b,30b,31c 堰部
27d,30d,31d 凹曲面
28 ガイド部材
29 第一棚部
30 第二棚部
C,C1,C2 軸心
【技術分野】
【0001】
本発明は、水洗便器本体の排出口と、床側に配設された排水管との間に配置される排水ソケットに関する。
【背景技術】
【0002】
水洗便器本体の後方下面に汚物を排出するために設けられた排出口と、床側に配設された排水管との接続部分には、通常、排水ソケットが配置されている。従来の排水ソケットとして、例えば、特許文献1記載のものがある。特許文献1記載の排水ソケットにおいては、その流出口側にオリフィスが形成され、当該オリフィスの上流側に絞りが設けられている。このような構造とすれば、サイホン作用を早期に発生させることができるため、洗浄水量が抑制され、節水を図ることができる。
【0003】
【特許文献1】特開平8−260551号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の排水ソケットは、オリフィスおよび絞りを備えているため、便器本体内の汚水が排出された場合、絞りおよびオリフィスによって汚水の流下が妨げられ、排水ソケット内に、一時的に汚水の塊(以下、「水膜」という。)が形成される。そして、この水膜が排水ソケット内を流下することによってサイホン作用が発生し、汚水全体が排出される。
【0005】
しかしながら、この排水ソケットにおける絞りおよびオリフィスは汚水の流下を妨げるだけであり、その作用にも限界があるため、排水開始直後の汚水の大部分は流下してしまう。このため、排水ソケット内に、水膜が形成されにくく、サイホン作用を早期に発生させることができないのが実状である。従って、洗浄水量を抑制し、節水を図るという目的も充分に達成されていない。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、水洗便器のサイホン作用を早期に発生させることにより、洗浄水量を抑制し、節水を図ることができる排水ソケットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の排水ソケットは、便器本体の排出口に接続される便器接続部と、床側に配設された排水管に接続される排水管接続部と、前記便器接続部と前記排水管接続部とを連通する排水流路の内周面に当該排水流路の軸心方向に向かって突設された棚部と、を備えた排水ソケットにおいて、
前記棚部の上面に、前記軸心に近づくにつれて上方へ変位した部分を有する汚水返し手段を設けたことを特徴とする。
【0008】
このような構成とすれば、便器接続部から排水流路内に流入した汚水は、排水流路の内周面を伝って流下し、棚部の上面に設けられた汚水返し手段の「上方に変位した部分」に衝突することにより、速やかに排水流路の軸心方向へ巻き上げられる。そして、排水流路の軸心方向へ巻き上げられた前記汚水と、排水流路の内周面を伝わらず排水流路の略中央を落下してきた汚水とが衝突することにより、速やかに水膜が形成される。このため、水洗便器のサイホン作用が早期に発生し、比較的少量の洗浄水で汚物を排出することが可能となり、洗浄水量を抑制し、節水を図ることができる。
【0009】
また、本発明の排水ソケットは、便器本体の排出口に接続される便器接続部と、床側に配設された排水管に接続される排水管接続部と、前記便器接続部と前記排水管接続部とを連通する排水流路と、を備えた排水ソケットにおいて、
前記排水管接続部の内径を前記排水流路の内径より小とし、前記排水管接続部と前記排水流路との境界位置に前記排水流路の軸心方向に向かって突出した棚部を設け、前記棚部の上面に、前記排水流路の軸心に近づくにつれて上方へ変位した部分を有する汚水返し手段を設けたことを特徴とする。
【0010】
このような構成とすれば、前述と同様、便器接続部から排水流路内に流入した汚水は、排水流路の内周面を伝って流下し、棚部の上面に設けられた汚水返し手段の「上方に変位した部分」に衝突することにより、速やかに排水流路の軸心方向へ巻き上げられる。そして、排水流路の軸心方向へ巻き上げられた前記汚水と、排水流路の内周面を伝わらず排水流路の略中央を落下してきた汚水とが衝突することにより、速やかに水膜が形成される。このため、水洗便器のサイホン作用が早期に発生し、比較的少量の洗浄水で汚物を排出することが可能となり、洗浄水量を抑制し、節水を図ることができる。また、排水管接続部の内径を排水流路の内径より小としたことにより、排水流路を落下する汚水は、当該排水流路と排水管接続部との境界部分でその落下が妨げられるため、速やかなる水膜形成に有効である。
【0011】
また、本発明の排水ソケットは、便器本体の排出口に接続される便器接続部と、床側に配設された排水管に接続される排水管接続部と、前記便器接続部と前記排水管接続部とを連通する排水流路と、を備えた排水ソケットにおいて、
前記排水管接続部の内径を前記排水流路の内径より小とし、前記排水管接続部と前記排水流路との境界位置に前記排水流路の軸心方向に向かって突出した第一棚部を設け、前記排水管接続部の下流側端部の内周面に当該排水管接続部の軸心方向に向かって突出した第二棚部を設け、前記第一棚部、前記第二棚部の少なくとも一方の上面に、前記軸心に近づくにつれて上方へ変位した部分を有する汚水返し手段を設けたことを特徴とする。
【0012】
このような構成とすれば、便器接続部から流入して排水流路内を落下する汚水は、第一棚部および第二棚部によって落下が妨げられ、第一棚部、第二棚部の少なくとも一方の上面に設けられた汚水返し手段の「上方に変位した部分」に衝突することにより、排水流路の内周面若しくは排水管接続部の内周面を伝って流下した汚水が速やかに排水流路の軸心方向へ巻き上げられる。そして、巻上げられた前記汚水と第一棚部および第二棚部に衝突せずに排水流路若しくは排水管接続部の略中央を落下してきた汚水とが衝突することにより、速やかに水膜が形成される。このため、水洗便器のサイホン作用が早期に発生し、比較的少量の洗浄水で汚物を排出することが可能となり、洗浄水量を抑制し、節水を図ることができる。
【0013】
ここで、前記汚水返し手段として、排水流路の軸心に向かって上り勾配をなす斜面部を設ければ、便器接続部から流入して排水流路の内周面を伝って落下する汚水は斜面部に衝突することにより、排水流路の軸心方向へ巻き上げられる。そして、巻き上げられた汚水と排水流路の略中央を落下して斜面部と衝突しない汚水とが衝突することにより、速やかに水膜が形成される。従って、水洗便器にサイホン作用が早期に発生し、比較的少量の洗浄水で汚物を排出することが可能となり、洗浄水量を抑制し、節水を図ることができる。
【0014】
この場合、前記斜面部を、凹曲面、凸曲面若しくは平面のいずれかとすれば、便器接続部から流入して排水流路の内周面を伝って落下する汚水が、より効率的に乱流状態を形成しながら排水流路の軸心方向へ巻き上げられるため、水膜形成作用が高まり、速やかに水膜を形成することができる。
【0015】
一方、前記斜面部の前記軸心側の内周縁に沿って、上方へ突出した堰部を設けることもできる。このような構成とすれば、棚部の上面に衝突した汚水は、さらに効率的に乱流状態を形成しながら排水流路の軸心方向へ巻き上げられるため、水膜形成作用を高めることができる。
【0016】
また、前記汚水返し手段として、前記軸心に向かって上り勾配をなす階段部を設ければ、棚部の上面に衝突した汚水は、効率的に乱流状態を形成しながら排水流路の軸心方向へ巻き上げるため、水膜形成作用がさらに高まる。
【0017】
さらに、前記排水流路の内周面と、前記棚部または前記第一棚部の上面との間に、下方へ向かうにつれて前記軸心方向へ突出するガイド部材を設けることもできる。このような構成とすれば、便器接続部から排水流路内に流入する汚水中の固形物は、ガイド部材に接触することにより、排水流路の軸心方向へ誘導されるため、固形物が棚部に衝突して、その上面に残留するのを防止することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、水洗便器のサイホン作用を早期に発生させることにより、洗浄水量を抑制し、節水を図ることができる、排水ソケットを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態について説明する。図1は本発明の第1実施形態である排水ソケットを示す平面図、図2は図1におけるA−A線断面図、図3は図1に示す排水ソケットを水洗便器に配設した状態を示す縦断面図である。
【0020】
図1〜図3に示すように、本実施形態の排水ソケット1は、洋式水洗便器の一つである便器本体20の排出口21に接続される便器接続部22と、便器本体20が設置される床23側に配設された排水管24に接続される排水管接続部25と、便器接続部22と排水管接続部25とを連通する排水流路26の内周面26aに排水流路26の軸心C方向に向かって突設された棚部27と、を備えている。排水管接続部25は、棚部27から連続して形成されており、その内径寸法は排水流路26の内径寸法より小さい。棚部27の上面には、汚水返し手段として、軸心Cに近づくにつれて上方へ変位した部分、即ち、軸心Cに向かって上り勾配をなす斜面部27aを設けている。
【0021】
また、排水流路26の内周面26aと、棚部27の上面(斜面部27a)との間に、下方へ向かうにつれて軸心C方向へ突出するリブ状のガイド部材28を複数設けている。これらのガイド部材28は、棚部27の斜面部27a上に、軸心Cを中心にして放射状をなすように等角度間隔で立設されている。ガイド部材28は合計12個設けているが、これに限定するものではないので、増減可能である。
【0022】
排水ソケット1において、便器接続部22から排水流路26内に流入した汚水のうち、内周面26aを伝って落下した汚水は棚部27の上面に設けられた斜面部27aに衝突することにより、排水流路26の軸心C方向へ巻き上げられる。そして、巻き上げられた前記汚水と、斜面部27aに衝突せずに落下してきた汚水とが衝突することにより、速やかに水膜が形成される。このため、便器本体20のサイホン作用が早期に発生し、比較的少量の洗浄水で汚物を排出することが可能となり、洗浄水量を抑制し、節水を図ることができる。
【0023】
また、排水流路26の内周面26aと、棚部27の斜面部27aとの間に、下方へ向かうにつれて軸心C方向へ連続的に突出するリブ状のガイド部材28を設けているため、便器接続部22から排水流路26内に流入する汚水中の固形物は、これらのガイド部材28に接触することにより、排水流路26の軸心C方向へ誘導されるため、固形物が棚部27に衝突して、その斜面部27a上に残留するのを防止することができる。
【0024】
次に、図4〜図16を参照し、本発明の第2〜14実施形態について説明する。図4〜図16は本発明の第2〜14実施形態である排水ソケットを示す縦断面図である。なお、図4〜図16において、図1〜図3に示す符号と同じ符号を付している部分は、第1実施形態の排水ソケット1の構成部分と同じ構造、機能を有する部分であるため、説明を省略する。
【0025】
図4に示す排水ソケット2は、前述した排水ソケット1におけるガイド部材28を省略した構造である。棚部27の上面に斜面部27aを設けているため、内周面26aを伝って落下した汚水が斜面部27aに衝突して軸心C方向へ巻き上げられ、速やかに水膜が形成される。このため、サイホン作用が早期に発生し、比較的少量の洗浄水で汚物を排出することが可能となり、洗浄水量を抑制し、節水を図ることができる。
【0026】
図5に示す排水ソケット3においては、汚水返し手段として、棚部27の上面に斜面部27aを設けるとともに、斜面部27aの軸心C側の内周縁に沿って上方へ突出した堰部27bが設けている。このような構成とすれば、棚部27の斜面部27aに衝突した汚水は、排水流路26の軸心C方向へ巻き上げられるとともに、堰部27bにより汚水を棚部27上に留める作用も生じるため、優れた水膜形成作用を発揮する。
【0027】
図6に示す排水ソケット4においては、汚水返し手段として、棚部27の上面に、排水流路26の軸心Cに向かって上り勾配をなす階段部27cを設けている。棚部27の階段部27cに衝突した汚水は、排水流路26の軸心C方向へ巻き上げられるとともに、複数の段差を有する階段部27cにより汚水の流動も妨げられるため、優れた水膜形成作用を得ることができる。
【0028】
図7に示す排水ソケット5においては、汚水返し手段として、棚部27の上面に、排水流路26の軸心Cに向かって上り勾配をなす凹曲面27dを設けている。便器接続部22から流入して排水流路26内を落下する汚水は、棚部27の凹曲面27dに衝突することにより、速やかに、排水流路26の軸心C方向へ巻き上げられるため、優れた水膜形成作用を得ることができる。
【0029】
図8に示す排水ソケット6においては、排水管接続部25の内径25aを排水流路26の内径26bより小とし、排水流路26と排水管接続部25との境界に位置する排水流路26の内周面26aに、当該排水流路26の軸心C方向に向かって突設された第一棚部29を設け、排水管接続部25の内周面25bの下流側端部に、排水流路26の軸心C方向に向かって突出した第二棚部30を設け、汚水返し手段として、第二棚部30の上面に、軸心Cに近づくにつれて上り勾配をなす斜面部30aを設けている。
【0030】
便器接続部22から流入して排水流路26内を落下する汚水は、第一棚部29および第二棚部30によって落下が妨げられるとともに、第二棚部30の上面に設けられた斜面部30aに衝突することにより、排水流路26の軸心C方向へ巻き上げられる。そして、巻き上げられた前記汚水と、第一棚部29および第二棚部30に衝突せずに落下した汚水とが衝突することにより、速やかに水膜が形成され、サイホン作用が早期に発生し、比較的少量の洗浄水で汚物を排出することが可能となるため、洗浄水量を抑制し、節水を図ることができる。
【0031】
図9に示す排水ソケット7においては、前述した排水ソケット6の構成に加え、第一棚部29の上面にも、軸心Cに近づくにつれて上り勾配をなす斜面部29aを設けている。このような構成とすることにより、水膜形成作用がさらに高まるため、サイホン作用が早期に発生し、比較的少量の洗浄水で汚物を排出することが可能となり、洗浄水量が抑制され、節水を図ることができる。
【0032】
図10に示す排水ソケット8においては、第二棚部30の上面に斜面部30aを設けるとともに、第二棚部30の軸心C側の内周縁に沿って上方へ突出した堰部30bを設けている。第二棚部30の斜面部30aに衝突した汚水は、排水流路26の軸心C方向へ巻き上げられるとともに、堰部30bにより、汚水を第二棚部30上に留める作用も生じるため、優れた水膜形成作用を発揮する。
【0033】
図11に示す排水ソケット9においては、汚水返し手段として、第二棚部30の上面に、排水流路26の軸心Cに向かって上り勾配をなす階段部30cを設けている。第二棚部30の階段部30cに衝突した汚水は、排水流路26の軸心C方向へ巻き上げられるとともに、複数の段差を有する階段部30cにより汚水の流動も妨げられるため、優れた水膜形成作用を得ることができる。
【0034】
図12に示す排水ソケット10においては、汚水返し手段として、第二棚部30の上面に、排水流路26の軸心Cに向かって上り勾配をなす凹曲面30dを設けている。便器接続部22から流入して排水流路26内を落下する汚水は、第二棚部の凹曲面30dに衝突することにより、速やかに、排水流路26の軸心C方向へ巻き上げられるため、優れた水膜形成作用を得ることができる。
【0035】
図13に示す排水ソケット11においては、排水管接続部25の内径25aを便器接続部22の内径22aより小とするとともに、便器接続部22の軸心C1と排水管接続部25の軸心C2とを偏位させて配置し、便器接続部22と排水流路26との境界に位置する排水流路26の内周面26aに、当該排水流路26の軸心C方向に向かって突設された棚部31を設けている。また、汚水返し手段として、棚部31の上面に、軸心Cに近づくにつれて上り勾配をなす斜面部31aを設けている。
【0036】
斜面部31aを設けるとともに便器接続部22と排水管接続部25とを偏位させているため、汚水の落下が大幅に抑制され、速やかに水膜が形成される。このため、サイホン作用が早期に発生し、比較的少量の洗浄水で汚物を排出することが可能となり、洗浄水量を抑制し、節水を図ることができる。
【0037】
図14に示す排水ソケット12においては、汚水返し手段として、棚部31の上面に、排水流路26の軸心Cに向かって上り勾配をなす階段部31bを設けている。棚部31の階段部31bに衝突した汚水は、排水流路26の軸心C方向へ巻き上げられるとともに、複数の段差を有する階段部31bにより汚水の流動も妨げられるため、優れた水膜形成作用を得ることができる。
【0038】
図15に示す排水ソケット13においては、汚水返し手段として、棚部31の上面に、軸心Cに近づくにつれて上り勾配をなす斜面部31aを設けるとともに、棚部31の軸心C側の内周縁に沿って上方へ突出した堰部31cを設けている。棚部31の斜面部31aに衝突した汚水は、排水流路26の軸心C方向へ巻き上げられるともに、堰部31cにより汚水を棚部31上に留める作用も生じるため、優れた水膜形成作用を発揮する。
【0039】
図16に示す排水ソケット14においては、汚水返し手段として、棚部31の上面に、排水流路26の軸心Cに向かって上り勾配をなす凹曲面31dを設けている。便器接続部22から流入する汚水は、棚部31の凹曲面31dに衝突することにより、速やかに排水流路26の軸心C方向へ巻き上げられるため、優れた水膜形成作用を得ることができる。
【0040】
なお、前述した図8〜図13に示す排水ソケット6〜11において、第一棚部29、第二棚部30の両方若しくはいずれか一方に、図1〜図3に示すようなガイド部材28を設けることもできる。また、図13〜図16に示す排水ソケット11〜14において、棚部31に図1〜図3に示すようなガイド部材28を設けてもよい。
【0041】
さらに、図9に示す排水ソケット7においては、第一棚部29の上面および第二棚部30の上面に、軸心Cに近づくにつれて上り勾配をなす斜面部29a,30aを設けているが、これに限定するものではないので、斜面部29a,30aの代わりに、図11に示す階段部30c、図12に示す凹曲面30dあるいは図5に示す棚部27の内周縁に沿って上方へ突設された堰部27bなどを採用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、一般住宅や公共施設などの水洗トイレに配置されている水洗便器において広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の第1実施形態である排水ソケットを示す平面図である。
【図2】図1におけるA−A線断面図である。
【図3】図1に示す排水ソケットを水洗便器に配設した状態を示す縦断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態である排水ソケットを示す縦断面図である。
【図5】本発明の第3実施形態である排水ソケットを示す縦断面図である。
【図6】本発明の第4実施形態である排水ソケットを示す縦断面図である。
【図7】本発明の第5実施形態である排水ソケットを示す縦断面図である。
【図8】本発明の第6実施形態である排水ソケットを示す縦断面図である。
【図9】本発明の第7実施形態である排水ソケットを示す縦断面図である。
【図10】本発明の第8実施形態である排水ソケットを示す縦断面図である。
【図11】本発明の第9実施形態である排水ソケットを示す縦断面図である。
【図12】本発明の第10実施形態である排水ソケットを示す縦断面図である。
【図13】本発明の第11実施形態である排水ソケットを示す縦断面図である。
【図14】本発明の第12実施形態である排水ソケットを示す縦断面図である。
【図15】本発明の第13実施形態である排水ソケットを示す縦断面図である。
【図16】本発明の第14実施形態である排水ソケットを示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0044】
1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14 排水ソケット
20 便器本体
21 排出口
22 便器接続部
22a,25a,26b 内径
23 床
24 排水管
25 排水管接続部
25b,26a 内周面
26 排水流路
27,31 棚部
27a,29a,30a,31a 斜面部
27b,30b,31c 堰部
27d,30d,31d 凹曲面
28 ガイド部材
29 第一棚部
30 第二棚部
C,C1,C2 軸心
【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器本体の排出口に接続される便器接続部と、床側に配設された排水管に接続される排水管接続部と、前記便器接続部と前記排水管接続部とを連通する排水流路の内周面に当該排水流路の軸心方向に向かって突設された棚部と、を備えた排水ソケットにおいて、
前記棚部の上面に、前記軸心に近づくにつれて上方へ変位した部分を有する汚水返し手段を設けたことを特徴とする排水ソケット。
【請求項2】
便器本体の排出口に接続される便器接続部と、床側に配設された排水管に接続される排水管接続部と、前記便器接続部と前記排水管接続部とを連通する排水流路と、を備えた排水ソケットにおいて、
前記排水管接続部の内径を前記排水流路の内径より小とし、前記排水管接続部と前記排水流路との境界位置に前記排水流路の軸心方向に向かって突出した棚部を設け、前記棚部の上面に、前記排水流路の軸心に近づくにつれて上方へ変位した部分を有する汚水返し手段を設けたことを特徴とする排水ソケット。
【請求項3】
便器本体の排出口に接続される便器接続部と、床側に配設された排水管に接続される排水管接続部と、前記便器接続部と前記排水管接続部とを連通する排水流路と、を備えた排水ソケットにおいて、
前記排水管接続部の内径を前記排水流路の内径より小とし、前記排水管接続部と前記排水流路との境界位置に前記排水流路の軸心方向に向かって突出した第一棚部を設け、前記排水管接続部の下流側端部の内周面に当該排水管接続部の軸心方向に向かって突出した第二棚部を設け、前記第一棚部、前記第二棚部の少なくとも一方の上面に、前記軸心に近づくにつれて上方へ変位した部分を有する汚水返し手段を設けたことを特徴とする排水ソケット。
【請求項4】
前記汚水返し手段として、前記軸心に向かって上り勾配をなす斜面部を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の排水ソケット。
【請求項5】
前記斜面部を、凹曲面、凸曲面若しくは平面のいずれかとしたことを特徴とする請求項4記載の排水ソケット。
【請求項6】
前記斜面部の前記軸心側の内周縁に沿って、上方へ突出した堰部を設けたことを特徴とする請求項4記載の排水ソケット。
【請求項7】
前記汚水返し手段として、前記軸心に向かって上り勾配をなす階段部を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の排水ソケット。
【請求項8】
前記排水流路の内周面と、前記棚部または前記第一棚部の上面との間に、下方へ向かうにつれて前記軸心方向へ突出するガイド部材を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の排水ソケット。
【請求項1】
便器本体の排出口に接続される便器接続部と、床側に配設された排水管に接続される排水管接続部と、前記便器接続部と前記排水管接続部とを連通する排水流路の内周面に当該排水流路の軸心方向に向かって突設された棚部と、を備えた排水ソケットにおいて、
前記棚部の上面に、前記軸心に近づくにつれて上方へ変位した部分を有する汚水返し手段を設けたことを特徴とする排水ソケット。
【請求項2】
便器本体の排出口に接続される便器接続部と、床側に配設された排水管に接続される排水管接続部と、前記便器接続部と前記排水管接続部とを連通する排水流路と、を備えた排水ソケットにおいて、
前記排水管接続部の内径を前記排水流路の内径より小とし、前記排水管接続部と前記排水流路との境界位置に前記排水流路の軸心方向に向かって突出した棚部を設け、前記棚部の上面に、前記排水流路の軸心に近づくにつれて上方へ変位した部分を有する汚水返し手段を設けたことを特徴とする排水ソケット。
【請求項3】
便器本体の排出口に接続される便器接続部と、床側に配設された排水管に接続される排水管接続部と、前記便器接続部と前記排水管接続部とを連通する排水流路と、を備えた排水ソケットにおいて、
前記排水管接続部の内径を前記排水流路の内径より小とし、前記排水管接続部と前記排水流路との境界位置に前記排水流路の軸心方向に向かって突出した第一棚部を設け、前記排水管接続部の下流側端部の内周面に当該排水管接続部の軸心方向に向かって突出した第二棚部を設け、前記第一棚部、前記第二棚部の少なくとも一方の上面に、前記軸心に近づくにつれて上方へ変位した部分を有する汚水返し手段を設けたことを特徴とする排水ソケット。
【請求項4】
前記汚水返し手段として、前記軸心に向かって上り勾配をなす斜面部を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の排水ソケット。
【請求項5】
前記斜面部を、凹曲面、凸曲面若しくは平面のいずれかとしたことを特徴とする請求項4記載の排水ソケット。
【請求項6】
前記斜面部の前記軸心側の内周縁に沿って、上方へ突出した堰部を設けたことを特徴とする請求項4記載の排水ソケット。
【請求項7】
前記汚水返し手段として、前記軸心に向かって上り勾配をなす階段部を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の排水ソケット。
【請求項8】
前記排水流路の内周面と、前記棚部または前記第一棚部の上面との間に、下方へ向かうにつれて前記軸心方向へ突出するガイド部材を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の排水ソケット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2007−217894(P2007−217894A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−37127(P2006−37127)
【出願日】平成18年2月14日(2006.2.14)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月14日(2006.2.14)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
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