説明

排水処理装置

【課題】 冷却水を有効に利用し、冷却水の排水量を低減させる。
【解決手段】 ボイラ排水を冷却水との熱交換によって冷却する冷却手段7を備えた排水処理装置1であって、ボイラ給水を冷却水として冷却手段7へ供給し、この冷却手段7からの冷却水を蒸気ボイラ2へ供給することを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ボイラ排水の中和および冷却を行う排水処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
給水を加熱して蒸気を発生させる蒸気ボイラ缶体内の缶水は、給水中に含まれている炭酸水素イオンや炭酸イオンが熱分解して水酸化物イオンが生成し、この水酸化物イオンの濃縮により次第にアルカリ性が強くなる。また、前記蒸気ボイラの運転を続けると、缶水が過度に濃縮してキャリーオーバーなどの不都合が生じるため、適正な缶水濃度を維持するように、定期的に所定割合の缶水を前記蒸気ボイラから排出する必要がある。この操作は、通常、濃縮ブローと呼ばれている。さらに、前記蒸気ボイラを所定時間稼働させた後には、前記缶体の底部に沈殿したいわゆる釜泥(スラッジ)を除去するため、缶水を全て排出しながら洗い流す必要がある。この操作は、通常、全ブローと呼ばれている。
【0003】
前記のような濃縮ブローや全ブローによるボイラ排水を放流する際には、条例などで定められた排水基準に適合するように、冷却や中和といった排水処理を行う必要がある。ボイラ排水を冷却する方法としては、ボイラ排水へ常温水を混合する方法がある。また、特許文献1に記載されている排水処理装置のように、ボイラ排水を冷却水との熱交換によって冷却する方法もある。
【特許文献1】特開2001−293484号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、常温水をボイラ排水へ混合して冷却する方法は、大量の常温水(すなわち、冷却水)を必要とする。さらに、この方法は、冷却水を再利用することができないため、結果的に冷却水の排水量が多くなる。一方、特許文献1の方法は、供給される冷却水が一過性であり、再利用するための手段が開示されていない。このため大量の冷却水が必要になるとともに、結果的に冷却水の排水量も多くなる。したがって、いずれの方法も大量の冷却水を消費することによって、上水や工業用水などの使用料金がかさみやすく、排水処理のコストを増加させる一因となっていた。同時に、排水量が多くなることによって、事業所内における最終処理設備の能力を超過したり、近隣の環境に対して悪影響を与えたりする懸念もあった。
【0005】
この発明が解決しようとする課題は、冷却水を有効に利用し、冷却水の排水量を低減させることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、ボイラ排水を冷却水との熱交換によって冷却する冷却手段を備えた排水処理装置であって、ボイラ給水を冷却水として前記冷却手段へ供給し、この冷却手段からの冷却水をボイラへ供給することを特徴とする。
【0007】
このような請求項1に記載の発明では、前記冷却手段へは、冷却水としてボイラ給水が供給され、このボイラ給水との熱交換によりボイラ排水が冷却される。前記冷却手段において熱交換されたボイラ給水は、前記ボイラへ供給される。
【0008】
請求項2に記載の発明は、ボイラ排水を冷却水との熱交換によって冷却する主冷却手段を備えた排水処理装置であって、前記主冷却手段からの冷却水を副冷却手段へ供給し、この副冷却手段からの冷却水を前記主冷却手段へ供給することを特徴とする。
【0009】
このような請求項2に記載の発明では、前記主冷却手段においてボイラ排水と熱交換された冷却水は、前記副冷却手段で冷却されたのち、再び前記主冷却手段へ供給されてボイラ排水を冷却する。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、ボイラ給水を冷却水として前記冷却手段へ供給し、この冷却手段からの冷却水をボイラへ供給しているので、冷却水を有効に利用でき、冷却水の排水量を低減させることができる。この結果、排水処理にかかるコストが低減されるとともに、事業所内における最終処理設備の能力の超過や近隣の環境に対する悪影響といった懸念を生じない。さらに、前記冷却手段からの冷却水は、熱交換によって加熱された状態でボイラへ供給される。この結果、前記ボイラにおける蒸気の生成に要するエネルギーが減少し、燃料の節約に貢献する。
【0011】
一方、請求項2に記載の発明によれば、前記主冷却手段からの冷却水を前記副冷却手段へ供給し、この副冷却手段からの冷却水を前記主冷却手段へ供給しているので、冷却水を有効に利用でき、冷却水の排水量を低減させることができる。この結果、排水処理にかかるコストが低減されるとともに、事業所内における最終処理設備の能力の超過や近隣の環境に対する悪影響といった懸念を生じない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、この発明に係る排水処理装置を実施するための最良の形態を説明する。
この発明が実施される排水処理装置は、蒸気ボイラからのアルカリ性ブロー排水,すなわちボイラ排水の中和を行うとともに冷却を行い、排水基準に適合した処理水として排出するものである。
【0013】
まず、第一実施形態について説明する。この第一実施形態における排水処理装置は、ボイラ排水の冷却手段とボイラ排水の中和手段とを備えている。
【0014】
前記冷却手段は、ボイラ排水を冷却水との熱交換によって冷却する熱交換器である。この冷却手段は、ボイラ排水を供給する排水入口と、冷却されたボイラ排水を排出する排水出口とを備えている。そして、前記排水入口と前記排水出口には、それぞれボイラ排水の流通経路,たとえばボイラ排水を循環させる循環経路が接続されている。さらに、この冷却手段は、冷却水を供給する冷却水入口と、熱交換された冷却水を排出する冷却水出口とを備えている。
【0015】
前記冷却手段へは、前記冷却水入口から冷却水としてボイラ給水が供給される。このボイラ給水は、たとえば前記蒸気ボイラの前段に接続された給水タンクから供給される。そして、熱交換されたボイラ給水は、前記冷却水出口から排出され、前記蒸気ボイラへ供給される。ここにおいて、熱交換されたボイラ給水は、前記給水タンクへ戻したのち、前記蒸気ボイラへ供給するように構成してもよいし、前記蒸気ボイラへ直接供給するように構成してもよい。
【0016】
前記中和手段は、前記流通経路に対し、外部から中和剤を取り込むとともに、この中和剤をボイラ排水へ混合させるものである。この中和手段は、前記流通経路に中和剤供給経路を接続することにより構成することができ、この中和剤供給経路との接続部において、前記中和剤が取り込まれるとともに、ボイラ排水へ混合される。ここにおいて、前記中和剤は、塩酸,硫酸,硝酸等の酸性薬品を利用することができ、また炭酸ガス等の酸性ガスを利用することができ、さらには炭酸ガスを含んでいるボイラ排ガスを利用することができる。
【0017】
また、前記中和手段において、前記接続部には、前記流通経路からボイラ排水を取り入れるとともに、前記中和剤供給経路から前記中和剤を吸引し、両者を混合する吸引混合手段が設けられている。この吸引混合手段としては、たとえば二流体を吸引混合可能なポンプ、すなわちジェットポンプを使用することができる。また、さらに好適な吸引混合手段として、ボイラ排水の流れによって発生させた負圧を利用して前記中和剤を吸引するとともに、この中和剤とボイラ排水とを混合して吐出する手段を使用することができ、このような吸引混合手段として、たとえばエゼクタやアスピレーターを挙げることができる。このような吸引混合手段を設けた場合、前記中和剤を効率よく取り込み、この中和剤とボイラ排水の混合を促進することができる。さらに、前記中和剤供給経路は、前記中和剤の供給とその停止を制御するため、開閉バルブを備えている。
【0018】
ここで、前記中和手段は、安全性やランニングコストの点から、前記中和剤にボイラ排ガスを用いる構成が好適である。さらには、中和効率に優れる点から、前記接続部に前記エゼクタを設ける構成がとくに好適である。このような構成による中和について具体的に説明すると、まず前記流通経路を流れるボイラ排水が前記エゼクタ内に取り入れられる。そして、このエゼクタ内において、前記中和剤供給経路から吸引されたボイラ排ガスがボイラ排水と混合される。この結果、ボイラ排ガスがボイラ排水に接触しながら溶解し、ボイラ排水が中和される。さらに、前記エゼクタで生じる乱流効果によってボイラ排水が撹拌されるので、効率よく中和することができる。また、前記エゼクタは、可動部を持たないことから、ボイラ排ガスの熱によって故障や劣化を起こしにくい。このため、ボイラ排水に対し、安定してボイラ排ガスを供給,混合することができる。
【0019】
このような第一実施形態の排水処理装置では、ボイラ排水は、前記冷却手段により冷却されるとともに、前記中和手段により中和され、排水基準に適合した処理水として排出される。そして、前記冷却手段においては、前記冷却水入口から冷却水としてボイラ給水が供給され、このボイラ給水との熱交換によりボイラ排水が冷却される。前記冷却手段において熱交換されたボイラ給水は、前記冷却水出口から排出され、前記蒸気ボイラへ供給される。
【0020】
以上のように、前記第一実施形態の排水処理装置によれば、ボイラ給水を冷却水として前記冷却手段へ供給し、この冷却手段からの冷却水を前記蒸気ボイラへ供給しているので、冷却水を有効に利用でき、冷却水の排水量を低減させることができる。この結果、排水処理にかかるコストが低減されるとともに、事業所内における最終処理設備の能力の超過や近隣の環境に対する悪影響といった懸念を生じない。さらに、前記冷却手段からの冷却水は、熱交換によって加熱された状態で前記蒸気ボイラへ供給される。この結果、前記蒸気ボイラにおける蒸気の生成に要するエネルギーが減少し、燃料の節約に貢献する。
【0021】
つぎに、第二実施形態について説明する。この第二実施形態の排水処理装置は、ボイラ排水を冷却水との熱交換によって冷却する主冷却手段とボイラ排水の中和手段とを備え、さらに前記主冷却手段からの冷却水を冷却する副冷却手段を備えている。
【0022】
前記主冷却手段は、前記第一実施形態の冷却手段と同様の構成であり、また前記中和手段は、前記第一実施形態の中和手段と同様の構成である。
【0023】
前記副冷却手段は、たとえばクーリングタワーやチラーなどである。この副冷却手段へは、前記主冷却手段の冷却水出口からの冷却水が供給され、その冷却が行われるようになっている。そして、冷却された冷却水は、前記主冷却手段へ再び供給される。
【0024】
ここで、前記副冷却手段は、前記排水処理装置の設置現場において、施設の空調用や生産ラインの冷却用として、既設のクーリングタワーやチラーがある場合、これらの設備を利用することができる。この場合、クーリングタワーやチラーから負荷機器(たとえば、空調機器や生産機器)へ供給される冷却水の一部を分岐して前記主冷却手段の冷却水入口へ供給するとともに、前記主冷却手段の冷却水出口からの冷却水を前記負荷機器から還流されてくる冷却水へ合流させるように構成する。
【0025】
このような第二実施形態の排水処理装置では、前記第一実施形態の排水処理装置と同様、ボイラ排水は、前記主冷却手段により冷却されるとともに、前記中和手段により中和され、排水基準に適合した処理水として排出される。
【0026】
前記主冷却手段においてボイラ排水と熱交換された冷却水は、前記冷却水出口から排出されて前記副冷却手段へ供給され、この副冷却手段において冷却されたのち、再び前記主冷却手段へ供給されてボイラ排水を冷却する。すなわち、冷却水は、前記主冷却手段と前記副冷却手段の間を循環しながら、繰り返し利用される。
【0027】
以上のように、前記第二実施形態の排水処理装置によれば、前記主冷却手段からの冷却水を前記副冷却手段へ供給し、この副冷却手段からの冷却水を前記主冷却手段へ供給しているので、冷却水を有効に利用でき、冷却水の排水量を低減させることができる。この結果、排水処理にかかるコストが低減されるとともに、事業所内における最終処理設備の能力の超過や近隣の環境に対する悪影響といった懸念を生じない。
【実施例】
【0028】
以下、この発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
まず、この発明の第一実施例について説明する。図1は、第一実施例に係る排水処理装置の構成を示す概略的な説明図である。
【0029】
図1において、排水処理装置1は、蒸気ボイラ2からのアルカリ性のブロー排水(以下、「ボイラ排水」と云う。)を、ボイラ排ガスに含まれる炭酸ガスにより中和処理するとともに冷却して、排水基準に適合した処理水として排出するものである。
【0030】
排水処理装置1は、蒸気ボイラ2からボイラ排水を供給する排水経路3と、ボイラ排水の貯留槽4とを備えている。この貯留槽4には、貯留されたボイラ排水を循環させる排水循環経路5の両端部がそれぞれ接続されており、この排水循環経路5には、上流側から順に循環ポンプ6,冷却手段7およびエゼクタ8がそれぞれ直列配置されている。
【0031】
前記冷却手段7は、熱交換器であって、前記排水循環経路5を流れるボイラ排水を供給する排水入口9と、冷却されたボイラ排水を排出する排水出口10とを備えている。さらに、この冷却手段7は、冷却水を供給する冷却水入口11と、熱交換された冷却水を排出する冷却水出口12とを備えている。
【0032】
前記冷却手段7へ供給される冷却水は、前記蒸気ボイラ2の前段に接続されている給水タンク13に貯留されたボイラ給水である。このボイラ給水は、各種水処理装置(図示省略)で所定の水処理(たとえば、軟水化処理や脱酸素処理など)を行ったのち、前記給水タンク13に貯留されている。前記給水タンク13には、冷却水供給バルブ14を備えた冷却水供給経路15の一端が接続されている。そして、この冷却水供給経路15の他端は、前記冷却水入口11に接続されており、前記給水タンク13内のボイラ給水が前記冷却水供給経路15を介して前記冷却手段7へ供給されるようになっている。前記冷却水供給バルブ14は、制御部16によって開閉制御される。
【0033】
前記冷却水出口12には、冷却水排出経路17の一端が接続されている。この冷却水排出経路17の他端は、前記給水タンク13に接続されており、前記冷却手段7においてボイラ排水と熱交換されたボイラ給水(すなわち、冷却水)は、前記冷却水排出経路17を通って再び前記給水タンク13へ流入するようになっている。
【0034】
前記エゼクタ8は、中和手段を構成する部材であり、前記排水循環経路5が接続される排水供給口18と、中和剤供給経路19が接続される中和剤吸引口20とを有している。また、前記中和剤供給経路19は、前記蒸気ボイラ2において燃料を燃焼させた排ガスを屋外へ排気する排気筒21に接続されており、排ガスの一部が、前記排気筒21から前記中和剤供給経路19を通って前記エゼクタ8へ中和剤として供給されるようになっている。
【0035】
そして、前記エゼクタ8は、前記排水供給口18からボイラ排水を取り入れるとともに、前記中和剤吸引口20からボイラ排ガスを吸引し、ボイラ排水と混合するようになっている。ボイラ排ガスが混合されたボイラ排水は、前記エゼクタ8の吐出口22から前記貯留槽4内へ噴射されるようになっている。
【0036】
ここにおいて、前記エゼクタ8は、可動部を持たないことから、ボイラ排ガスの熱によって故障や劣化を起こしにくい。このため、ボイラ排水に対し、安定してボイラ排ガスを供給,混合し、中和を行うことができる。
【0037】
また、ボイラ排ガスは、前記中和剤供給経路19に設けられた中和剤供給バルブ23とエアバルブ24を開閉操作することで、前記エゼクタ8へ供給され,あるいは供給が停止されるようになっている(後で詳しく説明する)。前記中和剤供給バルブ23と前記エアバルブ24は、それぞれ前記制御部16によって開閉制御されている。
【0038】
前記貯留槽4には、貯留されたボイラ排水の水温およびpHを検出するための温度センサ25とpHセンサ26とがそれぞれ設けられている。また、前記貯留槽4の底部には、中和および冷却されたボイラ排水,すなわち処理水を系外へ排出する処理水排出経路27が接続されており、この処理水排出経路27には排出バルブ28が設けられている。この排出バルブ28は、前記温度センサ25および前記pHセンサ26による検出値が排水基準に適合した水温とpHになったとき、前記制御部16からの指令で開くように制御されている。
【0039】
前記の構成において、前記貯留槽4の底部は、中和反応に伴って生成するスラッジ(たとえば、炭酸カルシウムなど)を処理水とともに系外へ排出するため、中央部へ向かって傾斜を設け、この中央部に前記処理水排出経路27を接続することが好ましい。同時に、高温のボイラ排水を前記貯留槽4の上方から取り出すとともに、前記貯留槽4の下方へ冷却されたボイラ排水を還流させるように、前記排水循環経路5を前記貯留槽4に対して接続することが好ましい。このように構成すると、還流する水流を利用して、スラッジを前記処理水排出経路27の接続口へ向かって集めることができ、処理水とともに系外へ排出しやすくなる。また、前記排水循環経路5へスラッジが持ち込まれることが抑制され、前記循環ポンプ6の詰まりや故障を防止できる。さらに、前記貯留槽4内におけるボイラ排水の高温部分から優先的に冷却されるので、前記貯留槽4内の温度分布が均一になりやすく冷却時間が短縮される。
【0040】
ここで、前記排水処理装置1の作用について説明する。前記蒸気ボイラ2からのボイラ排水は、前記排水経路3を介して前記貯留槽4内に貯留される。この貯留されたボイラ排水が所定の水位に達すると、前記制御部16の指令に基づき前記循環ポンプ6が駆動し、ボイラ排水が前記排水循環経路5を循環する。そして、ボイラ排水は、前記排水循環経路5において、冷却されるとともに中和される。
【0041】
まず、ボイラ排水の冷却について具体的に説明すると、前記排水循環経路5を流れるボイラ排水は、前記排水入口9から前記冷却手段7の内部流路(図示省略)へと導入される。この状態で前記冷却水供給バルブ14を開くと、冷却水が前記冷却水供給経路15を介して前記冷却水入口11から前記内部流路の外側へ供給される。前記冷却手段7へ供給される冷却水は、前記給水タンク13内のボイラ給水である。この冷却水は、前記冷却手段7においてボイラ排水の熱を奪ったのち、前記冷却水出口12から排出され、前記冷却水排出経路17を介して前記給水タンク13へ流入する。一方、冷却されたボイラ排水は、前記排水出口10から前記排水循環経路5へ排出され、前記貯留槽4内へ還流する。
【0042】
つぎに、ボイラ排水の中和について具体的に説明すると、前記排水循環経路5を循環するボイラ排水は、前記中和剤供給経路19から供給されるボイラ排ガスによって、前記エゼクタ8の作用で中和される。すなわち、前記エゼクタ8は、前記排水供給口18からボイラ排水を取り入れるとともに、前記中和剤供給経路19から供給されるボイラ排ガスを前記中和剤吸引口20から吸引し、ボイラ排水とボイラ排ガスとを混合する。これにより、ボイラ排水とボイラ排ガスとを効率よく接触させ、さらに前記エゼクタ8内で生じる乱流効果でボイラ排水を撹拌することによって、ボイラ排水中へボイラ排ガスを溶解させて中和する。そして、このボイラ排水は、前記吐出口22から前記貯留槽4内へ噴射される。ここにおいて、前記エゼクタ8内でボイラ排水へ溶解しきれなかったボイラ排ガスは、前記貯留槽4内に気泡状に吹き出し、ボイラ排水中で微細化して溶解し、中和を促進する。
【0043】
ところで、この実施例では、前記温度センサ25で検出されたボイラ排水の水温に基づき、前記冷却手段7による冷却を前記制御部16で制御している。また、前記pHセンサ26で検出されたボイラ排水のpHに基づき、前記エゼクタ8(すなわち、前記中和手段)による中和を前記制御部16で制御している。
【0044】
まず、前記冷却手段7による冷却の制御について具体的に説明する。前記温度センサ25で検出されるボイラ排水の水温が、排水基準で定められた所定値を超えているとき、前記制御部16は、前記冷却水供給バルブ14を開状態とする。この結果、前記冷却手段7へは、前記冷却水供給経路15を介して、前記給水タンク13から冷却水としてボイラ給水が供給され、ボイラ排水が継続的に冷却される。一方、前記温度センサ25で検出されるボイラ排水の水温が、排水基準で定められた所定値以下になったとき、前記制御部16は、前記冷却水供給バルブ14を閉状態とする。この結果、前記冷却手段7に対する冷却水(すなわち、ボイラ給水)の供給が遮断され、ボイラ排水の冷却が停止される。
【0045】
つぎに、前記エゼクタ8による中和の制御について具体的に説明する。前記pHセンサ26で検出されるボイラ排水のpHが、排水基準で定められた所定値を超えているとき、前記制御部16は、前記中和剤供給バルブ23を開状態とするとともに、前記エアバルブ24を閉状態とする。この結果、前記エゼクタ8が前記中和剤供給経路19を介してボイラ排ガスを吸引可能となり、ボイラ排水が継続的に中和される。一方、前記pHセンサ26で検出されるボイラ排水のpHが、排水基準で定められた所定値以下になったとき、前記制御部16は、前記中和剤供給バルブ23を閉状態とするとともに、前記エアバルブ24を開状態とする。この結果、前記エゼクタ8へは外気が吸引され、ボイラ排水の中和が停止される。このように、ボイラ排ガスを供給しないときに、外気を吸入させると、前記エゼクタ8内で発生する圧力変動に起因する振動が抑制される。
【0046】
以上のように、前記貯留槽4内のボイラ排水が前記排水循環経路5を循環しながら、排水基準で定められた水温とpHになるまで、冷却の制御と中和の制御がそれぞれ個別に行われる。そして、前記貯留槽4内のボイラ排水が排水基準に適合した水温とpHになったとき、前記制御部16は、前記排出バルブ28を開状態にし、前記処理水排出経路27を介してボイラ排水を系外へ排出する。
【0047】
つぎに、この発明の第二実施例について説明する。図2は、第二実施例に係る排水処理装置の構成を示す概略的な説明である。
【0048】
図2に示す第二実施例の排水処理装置29の基本的な構成は、前記第一実施例の排水処理装置1と同一であり、以下の説明では、前記第一実施例の排水処理装置1と異なる部分について説明する。
【0049】
前記排水処理装置29は、前記排水循環経路5において、前記循環ポンプ6と前記エゼクタ8の間にボイラ排水の冷却を行う主冷却手段30が設けられている。さらに、前記排水処理装置29は、クーリングタワー31を備えている。
【0050】
前記主冷却手段30は、前記第一実施例における前記冷却手段7と同様、熱交換器であり、前記排水循環経路5を流れるボイラ排水を供給する排水入口32と、冷却されたボイラ排水を排出する排水出口33とを備えている。さらに、前記主冷却手段30は、冷却水を供給する冷却水入口34と、熱交換された冷却水を排出する冷却水出口35とを備えている。前記冷却水入口34には、前記冷却水供給経路15が接続されており、また前記冷却水出口35には前記冷却水排出経路17が接続されている。
【0051】
前記クーリングタワー31は、副冷却手段を構成する機器であり、前記主冷却手段30においてボイラ排水と熱交換された冷却水を冷却するものである。前記クーリングタワー31は、前記冷却水排出経路17が接続される冷却水取入口36と、前記冷却水供給経路15が接続される冷却水排出口37とを備えている。また、前記クーリングタワー31には、補給水供給経路38が接続されている。この補給水供給経路38は、冷却にともなって蒸発する冷却水を外部から補給する経路であり、この経路に設けられた補給水供給バルブ39を開状態とすることより、冷却水が補給される。さらに、前記クーリングタワー31の底部には、濃縮した冷却水を系外へ排出する濃縮水排出経路40を備えており、この濃縮水排出経路40には、濃縮水排出バルブ41が設けられている。そして、この濃縮水排出バルブ41を開状態とすることにより、濃縮した冷却水が系外へ排出される。
【0052】
図2では、前記蒸気ボイラ2および前記排気筒21を図示していないが、前記排水処理装置29は、前記第一実施例と同様に、前記蒸気ボイラ2からのボイラ排水が前記貯留槽4へ貯留され、またボイラ排ガスが前記エゼクタ8へ供給されるように構成されている。さらに、図2では、前記制御部16も図示していないが、前記冷却水供給バルブ14,前記中和剤供給バルブ23,前記エアバルブ24,前記排出バルブ28,前記温度センサ25および前記pHセンサ26は、それぞれ前記制御部16と電気的に接続されている。
【0053】
この第二実施例においても、前記第一実施例と同様に、ボイラ排水の冷却と中和が行われる。そして、この第二実施例においては、前記主冷却手段30においてボイラ排水と熱交換された冷却水は、前記冷却水出口35から排出され、前記冷却水排出経路17を介して前記冷却水取入口36から前記クーリングタワー31へ流入する。そして、前記クーリングタワー31で冷却された冷却水は、前記冷却水排出口37から排出され、前記冷却水供給経路15を介して前記冷却水入口34から再び前記主冷却手段30へ供給され、ボイラ排水を冷却する。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】この発明に係る排水処理装置の第一実施例の構成を示す概略的な説明図である。
【図2】この発明に係る排水処理装置の第二実施例の構成を示す概略的な説明図である。
【符号の説明】
【0055】
1,29 排水処理装置
2 蒸気ボイラ(ボイラ)
7 冷却手段
30 主冷却手段
31 クーリングタワー(副冷却手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラ排水を冷却水との熱交換によって冷却する冷却手段を備えた排水処理装置であって、
ボイラ給水を冷却水として前記冷却手段へ供給し、この冷却手段からの冷却水をボイラへ供給することを特徴とする排水処理装置。
【請求項2】
ボイラ排水を冷却水との熱交換によって冷却する主冷却手段を備えた排水処理装置であって、
前記主冷却手段からの冷却水を副冷却手段へ供給し、この副冷却手段からの冷却水を前記主冷却手段へ供給することを特徴とする排水処理装置。

【図1】
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【図2】
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