説明

排水処理装置

【課題】油水分離槽に貯留した排水に含まれる油脂の除去を簡単に実行することと、シンクの使用を中断する必要のないようにすること。
【解決手段】油を含む排水を貯留し、貯留されている排水を比重差で油層と水層とに自然分離させる油水分離槽2と、油水分離槽2に排水を導入する排水導入口31と、油水分離槽2に形成され、油層を形成する油を槽外に排出するための油排出口32と、油水分離槽2に貯留される排水量に応じて油層を油排出口32に向けて収束させる油層収束手段である覆い61と、水層を形成する水を排水量に応じて槽外に排出するための排水口33とを有する排水処理装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レストラン等の業務用厨房に設置されているシンクには、例えば調理具の洗浄により生じた排水中の油脂を取り除く排水処理装置が備えられている。排水処理装置により油脂を除去してから下水管に排水を流す。
【0003】
排水処理装置には排水中の油脂を取り除くための油水分離槽(グリストラップ)が備えられ、シンクで生じた排水がグリストラップに至ると、グリストラップでは、その槽内に一旦排水を貯留する。貯留した排水に油脂が含まれている場合、油と水との比重差で排水中の油脂は水から分離する。油は水よりも比重が軽いため排水の上部に浮上する。
そして、これまでは浮上した油脂を例えばレストラン等の従業員が柄杓で掬い、油脂専用の容器(バケツ)に移し替え、油脂を取り除いてから、排水を下水管に放流するようにしていた。
【0004】
しかしながら、柄杓で掬う作業は、面倒であるばかりか他の仕事を中断することになる。
また、グリストラップでは、その壁面に油脂、蛋白、炭水化物等を含む油廃液(スカム)が付着する。スカムが付着した状態を放置しておくと、悪臭の発生、配管の詰まり、ゴキブリやネズミの発生要因となる。このため、スカムを除去する必要がある。
【0005】
スカムの除去方法としては、バキュームによる吸い出し、粉末製剤の散布、液体製剤の投入等が考えられる。しかし、これらの除去方法は、その手立てが大掛かりである。そればかりか、従来の除去方法では、グリストラップ、延いてはシンクの使用を一時的に中断しなければならないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−230271号公報
【特許文献2】特開2005−13771号公報
【特許文献3】特開2003−82755号公報
【特許文献4】実願昭52−134480号(実開昭54−60378号)のマイクロフィルム
【特許文献5】特開昭51−27157号公報
【特許文献6】実願平3−98510号(実開平5−39603号)のCD−ROM
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものである。その解決しようとする課題は、少なくとも、グリストラップに貯留した排水に含まれる油脂の除去を簡単に実行することと、シンクの使用を中断する必要のない排水技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するため、本発明の排水処理装置は、以下の手段を採用した。
すなわち、本発明は、油を含む排水を貯留し、貯留されている排水を比重差で油層と水層とに自然分離させる油水分離槽と、この油水分離槽に排水を導入する排水導入口と、前
記油水分離槽に形成され、前記油層を形成する油を槽外に排出するための油排出口と、油水分離槽に貯留される排水量に応じて前記油層を前記油排出口に向けて収束させる油層収束手段と、前記水層を形成する水を排水量に応じて槽外に排出するための排水口とを有することを特徴とする排水処理装置である。
【0009】
本発明によれば、油水分離槽に貯留された排水をしばらく放置しておくと、比重差により油と水とが分離し、油が排水の上層を、水が下層を形成する。また、排水の追加により又は排水とは別に槽内に水を供給すると、その供給量に応じて油水分離槽における貯留量が増大する。当該供給にあたり水を静かに供給することで、水層を増大させつつ油層を上昇させる。
【0010】
当該上昇にあたり、油層収束手段により油層は収束されつつ、下方から水圧を受ける。このため、油排出口に向かう油層の流速は上昇し、油排出口から槽外に吐出される油の流れに勢いが付く。よって、水よりも比重のある油であっても十分に排出できる。よって、従来のように柄杓で油を掬う必要がない。
【0011】
また、本発明は、油を含む排水を貯留し、貯留されている排水を比重差で油層と水層とに自然分離させる油水分離槽と、この油水分離槽に排水を導入する排水導入口と、前記油水分離槽に形成され、前記油層を形成する油を槽外に排出するための油排出口と、排水とは別に槽内に増水用の水を供給する増水手段と、この増水手段による供給水により上昇した前記油水分離槽に貯留されている排水の水位に応じて前記油層を前記油排出口に向けて収束させる油層収束手段と、前記増水手段による増水量を制御し、所定の増水後、前記増水を停止するための増水量制御手段と、前記水層を形成する水を排水量に応じて槽外に排出するための排水口とを有する排水処理装置でもある。
【0012】
油水分離槽から十分に油層が排出された時点で、増水量制御手段により増水を停止すれば、下層の水層まで油水分離槽から排出されることを防止できる。増水の停止制御を実施するには、例えば貯留量を検出するための水量検出センサや水位検知センサを用いるとよい。
【0013】
前記油水分離槽は、油水分離槽に流入する排水から固形物を濾過する濾過部と、濾過部で濾過された排水を貯留し前記油層及び水層に自然分離させる濾過水分離部と、この濾過水分離部の下方から前記水層を形成する水を案内し、当該案内した水を油水分離槽から槽外に排水する前に一旦貯留する暫時貯留部とを有し、暫時貯留部に前記排水口が設けられ、当該排水口から暫時貯留部に貯留された水を槽外に排出し、前記濾過水分離部に前記収束手段及び前記油排出口が設けられていることを特徴としてもよい。
【0014】
排水導入口から油水分離槽に流入する排水に含まれる固形物は濾過部によって排水から除去されるので、油水分離槽内に固形物が堆積しにくくなる。よって、油水分離槽に固形物が堆積することに起因して、油水分離槽の容積が縮小されてしまうことを防止できる。それ故、処理できる排水の量が固形物の堆積に起因して少なくなることを防止できる。
【0015】
暫時貯留部には濾過水分離部の上方に位置する油層を形成する油脂に優先して、前記水層を形成する水が濾過水分離部の下方から案内されるので、油脂は、暫時貯留部に導入されにくくなる。また、前記水層を形成する水を槽外に排出する前に暫時貯留部で一旦貯留した後、暫時貯留部に設けられている排水口から排水するため、排水の槽外への排出制御がし易い。
【0016】
これは、濾過水分離部に、油層と水層とに排水を分離させる機能以外に排水機能も実効させるよりは、油層と水層とに排水を分離させる機能を専ら与えた方が、排水を油層と水
層とに分離させ易くなり、油分の処理がし易くなるからである。
【0017】
濾過水分離部の下方部において暫時貯留部との間で前記水層を形成する水の流通を行う水流通路を形成することが好ましい。このようにすることで、濾過水分離部で分離された水層を形成する水を、油層を形成する油脂に優先して、暫時貯留部に案内することができるからである。
【0018】
前記油水分離槽水には、油水分離を促進するための気泡を発生する気泡発生装置を有することが好ましい。気泡により、排水の油水分離が促進され、油水分離槽で排水から油脂を取り除く効果を促進できる。
【0019】
前記暫時貯留部は、当該暫時貯留部に貯留されている排水を前記油水分離槽から槽外に排出する前に排水中の油分を取り除く排水前油分除去手段を有するようにしてもよい。
油水分離槽から槽外に排出する前に排水前油分除去手段により排水中の油分を取り除けるため、槽外に排出される排水に油分が含まれないようになる。この結果、環境に優しい排水処理装置を提供することができる。
【0020】
また本発明の排水処理装置は、油を含む排水を貯留し、貯留されている排水を比重差で油層と水層とに自然分離させる油水分離槽と、この油水分離槽内に設置され、油水分離槽に排水を貯留した状態で当該貯留した排水内で膨張される膨張部と、前記油水分離槽に形成され、水よりも比重の軽い油を前記膨張部が膨張したときに排出するための油排出口と、前記水層を形成する水を前記膨張部の膨張量に応じて槽外に排出するための排水口とを有する排水処理装置でもある。
【0021】
本発明によれば、油水分離槽に貯留された排水をしばらく放置しておくと、既述のように比重の軽い油が貯留された排水の上部に油分からなる油層を形成し、下部に水からなる水層が形成される。
【0022】
この状態で、膨張部を膨張させると、膨張量に応じて、排水の貯留量が見かけ上増大し、膨張部よりも上方に位置する排水が上昇する。この結果、排水の上層を形成する油層が下層を形成する水層に優先して油排出口から槽外に排出される。
【0023】
前記膨張部としては、流体供給手段に接続され、流体供給手段から流体が流入されて膨張するものを挙げられる。
【0024】
例えば、ひだを付けて鉛直方向に伸縮する蛇腹形状にされたものが膨張部として考えられる。膨張部を膨張させるための流体としてエアを例示できる。また流体供給手段として例えばエアポンプを挙げられる。
【0025】
膨張部は蛇腹形状であるので、油水分離槽に排水を貯留するときには、膨張部からエアを抜いて収縮状態にしておき、その状態で油水分離槽に排水を貯留する。その後、エアポンプによりエアの供給を行って膨張部を膨張させることで、既述のように油水分離槽に貯留されている排水の見かけ上の嵩上げを生じる。よって、排水の上層を形成する油脂が、水層を形成する水に優先して油排出口から排出される。
【0026】
このため、当該発明にあっても従来のように従業員が油脂を柄杓で掬う必要がない。よって排水に含まれる油脂を簡単に除去できる。なお、膨張部が膨張することによる排水全体の押し上げ力は、油水分離槽の容積、排水の単位体積あたり重量、流体供給手段の吐出力等を考慮して決定する。また、膨張部による油水分離槽に貯留されている排水の見かけ上の嵩上げがどれ位であるかは、油水分離槽に設置された水位検知センサによって水位を
検知することで実効される。なお、ここでいう水位とは、油分を含む排水、排水中の水層を形成する水の水位のどちらでもよい。要は油水分離槽に貯留されている排水の嵩の変化を検知できればよい。
【0027】
前記油水分離槽は、油水分離槽に流入する排水から固形物を濾過する濾過部と、濾過部で濾過された排水を貯留し前記油層及び水層に自然分離させる濾過水分離部と、この濾過水分離部の下方から前記水層を形成する水を案内し、当該案内した水を油水分離槽から槽外に排水する前に一旦貯留する暫時貯留部と、この暫時貯留部に貯留された水を槽外に排出するための排水口とを有し、前記濾過水分離部に前記膨張部及び前記油排出口を設けると好適である。
【0028】
排水導入口から油水分離槽に流入する排水に含まれる固形物は濾過部によって排水から除去されるので、油水分離槽内に固形物が堆積しにくくなる。よって、固形物が堆積することに起因して、油水分離槽の容積が縮小されてしまうことを防止できる。それ故、処理できる排水の量が固形物の堆積に起因して減少してしまうことを防止できる。
【0029】
暫時貯留部には前記水層を形成する水が濾過水分離部の下方から案内されるので、濾過水分離部の上方に位置する油層を形成する油脂は、相対的に暫時貯留部に導入されにくくなる。また前記水層を形成する水を槽外に排出する前に暫時貯留部で一旦貯留し、その後、暫時貯留部に設けられている排水口から排水するため、排水の槽外への排出制御がし易くなる。
【0030】
濾過水分離部に油層と水層とに排水を分離させる機能を実効させることに加え、排水機能の実効をも濾過水分離部にさせるのは、濾過水分離部の負担が大きくなる。それよりは、濾過水分離部には油層と水層とに排水を分離させる機能を専ら与えた方が、濾過水分離部により、排水を油層と水層とに分離させ易くなる。
【0031】
濾過水分離部の下方部において暫時貯留部との間で前記水層を形成する水の流通を行う水流通路を有することが好ましい。
なお、濾過水分離部では水層が油層よりも下方に位置する。このため、濾過水分離部の下方部において暫時貯留部との間で前記水層を形成する水の流通を行う水流通路を形成することで、濾過水分離部で分離された水層を形成する水を積極的に暫時貯留部に案内することができる。
【0032】
前記膨張部は、その伸縮方向上端に、前記油水分離槽の内面に付着した油分を前記油水分離槽の内面と当接して削ぎ落とすスクレーパーが設置されると共に、スクレーパーには、前記濾過部によって濾過された濾過水を前記濾過水分離部に通過させる通過口が形成されていることを特徴とすることもできる。
【0033】
当該通過口が暫時貯留部との間で前記水層を形成する水の流通を行うための水流通路の機能を果たす。また、膨張部の伸縮方向上端にスクレーパーが設置されているので、膨張部の膨張及び収縮に応じてスクレーパーが往復動する。
【0034】
当該吸込み口により油水分離槽の内面に付着するスカムをスクレーパーにより削り取れるようになる。スカムは成分が油脂であるので、剥がされると排水を浮上し、やがて油層に含まれるようになる。よって油層が除去されるときに一緒にスカムも排出される。
【0035】
暫時貯留部に形成される前記排水口は、濾過水分離部に形成される油排出口よりも下方に位置することが好ましい。
【0036】
油を含む排水は、油水分離槽において、水よりも比重の軽い油が貯留の上層を形成し、水が下層を形成するので、各層に近接させて各層専用の排出をするための排口を設けることで効率的にそれらの除去ができるからである。
【0037】
前記排水口には、前記暫時貯留部に貯留された水を槽外に排出することを制御する制御手段を有することが好ましい。排水処理は環境への配慮から制御できるようになっていることが好ましく、制御手段によって制御する。
【0038】
前記濾過部には、排水を衝突させることにより排水中の油分を水分から分離させ易くするための分離板を有するようにしてもよい。当該衝突により排水が予め油分と水分とに分離されるため、濾過水分離部で前記油層及び水層に自然分離させ易くなる。
【0039】
濾過水分離部に貯留されている排水の水位を制御するため前記膨張部の膨張量を制御する膨張部制御手段を有すると好適である。膨張部制御手段としては、濾過水分離部の水位を検知する水位検知センサを挙げられる。
【0040】
さらに本発明は、上記した排水処理装置を備えたシンクでもある。
本発明のシンクによれば、スカムの除去をするにあたりシンクの使用を一時的に中断する必要がない。
【発明の効果】
【0041】
本発明により、少なくともグリストラップに貯留した排水に含まれる油脂を簡単に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の第1の実施例に係る排水処理装置が適用されたシンクの全体斜視図である。
【図2】図1の一部切り欠き正面図である。
【図3】図1の平面図である。
【図4】本発明に係るグリストラップの一部切り欠き側面図である。
【図5】図4のV−V線断面図である。
【図6】本発明に係るグリストラップの側面図である。
【図7】図5の矢印VII方向から見た要部拡大斜視図である。
【図8】図6の矢印VIII方向から見た図である。
【図9】図4のIX−IX線断面図である。
【図10】本発明の第2の実施例に係る排水処理装置の断面図であって、図4に相当する図である。
【図11】図10の要部拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明を各実施例に基づいて説明する。
【実施例1】
【0044】
図1に本発明の第1の実施例に係る排水処理装置1が適用されたシンク100を示す。
排水処理装置1は、シンク100において例えば調理具の洗浄によりできた排水に含まれる油脂を取り除くことにより、排水から油分を除去する装置である。油分の除去された排水は、下水として図示しない下水管に向けて流される。
【0045】
シンク100は、流し台としての本体103と、本体103を支持する4本の脚104とを有する。そして、本体103の下方に排水処理装置1が設置される。
【0046】
本体103はその長手方向中央に形成された隔壁103aにより二分され、流し台が左右に分けられた2連シンクである。
【0047】
図1〜3からわかるように各流し台の底面には、排水口105がそれぞれ設けられ、各排水口105には下方に延びる配水管106が連結されている。これらの配水管106は、排水処理装置1への排水の導入口である排水導入口31に取り付けられたジョイントパイプ311に連結される。
【0048】
また、本体103は、吐水口(蛇口)となる図示しないカンロと、水はね防止用のバックボード107が本体103の後縁から立ち上げられている。
【0049】
4本の脚104は、図1に向かって手前側に位置する左右の脚104R、104L同士の連結を除き、フレーム108によって連結されている。ここで、本明細書における前後、左右、上下とは、特に断らない限り、図2を基準とし、図2に正対した状態で手前側及び向こうを前後方向といい、同じく左右の側を左右方向といい、同じく上下の側を上下方向という。
【0050】
排水処理装置1は、アルミその他の耐食性に優れた金属や合金からなる板金を溶接加工して形成され、全体がほぼ中空直方体形状をしている。また、その下面四隅には、運搬用自在車輪であるキャスタ11が取り付けられている。キャスタ11には、その回転を抑制する図示しない回転抑止機構が設けられ、車輪が勝手に回転しないようにされる。
【0051】
次に排水処理装置1の内部構造について詳述する。
既述のように、排水処理装置1は、シンク100から導入されて来る油を含む排水から油分を取り除く装置である。
【0052】
このため、排水処理装置1は、シンク100から流れてくる油分を含む排水を貯留する油水分離槽2を有する。油水分離槽2には、シンク100からの排水を導入する排水導入口31と、油水分離槽2の外(槽外)に専ら油分を排出する排出口32と、油分を除去された排水を槽外に排出するための排水口33とを有する(図4参照)。
【0053】
油水分離槽2は、耐食性の金属板からなる中空の直方体形状をしている。またその内部は隔壁により仕切られ、複数(この実施形態では3つ)の部屋(部)が縦割りに分割されている。
【0054】
当該部屋は、図4及び6からわかるように、左から右へ濾過部5−濾過水分離部6−暫時貯留部7の順で並列されている。換言すると濾過部5は、油水分離槽2における上流側に位置する領域であり、濾過水分離部6は油水分離槽2の中央に位置する領域である。暫時貯留部7は、同右側、すなわち油水分離槽2における排水の流れ方向下流側に位置する領域である。
【0055】
油水分離槽2においてこれらの占める大きさは、濾過部5及び暫時貯留部7は、ほぼ同じであり、共に濾過水分離部6のほぼ3分の1程度の大きさである。
【0056】
また、図4に示すように、濾過部5と濾過水分離部6とを仕切る隔壁を符号201で示し、濾過水分離部6と暫時貯留部7とを仕切る隔壁を符号202で示す。濾過水分離部6内には、濾過部5を経由して流入してくる排水を案内する案内壁203が、上記隔壁201と並列状態で油水分離槽2の底面21bに立設されている。
【0057】
隔壁201と案内壁203とによって、濾過部5から濾過水分離部6に排水を導入するための導入路213が形成される(図4参照)。なお、導入路213を図4に矢印で示す。
【0058】
そして、図4〜6からわかるように、油水分離槽2の外壁を形成し底面21bから立設する壁面のうち、濾過部5側の側壁面(左面)を符号22lで示し、暫時貯留部側の壁面(右面)を符号22rで示す。また、油水分離槽の前・後面壁をそれぞれ符号22f及び22bで示す。
【0059】
さらに、油水分離槽2の天井面を符号21cで示す。底面21b、側壁面22l、側壁面22r、前面壁22f、後面壁22b、天井面21cにより、直方体形状をした中空空間Sが油水分離槽2内に画成される。
【0060】
天井面21cは着脱可能とし、油水分離槽2内を視認できるようになっていることが好ましい。また、前面壁22fに油排出口32が形成されている(図5参照)。
【0061】
次に、これら濾過部5、濾過水分離部6及び暫時貯留部7について詳しく述べる。
濾過部5は、シンク100から配水管106を経由して、排水処理装置1に流入する排水から固形物を濾過するための部位である。また、濾過部5には、前記排水導入口31が設けられている(図6参照)。排水導入口31の形成箇所は、濾過部5の上位における前面、左面及び後面の3カ所である。
【0062】
排水導入口31には、既述のようにシンク100から延びる前記配水管106と連結するためのジョイントパイプ311が濾過部5の壁面に貫通して設けられている。そして、濾過部5内においてジョイントパイプ311の直下には、濾過用に固形物取得籠51が設置されている(図4,6等参照)。固形物取得籠51は、金網製であり、上方に開口する中空直方体形状をしている。この開口にジョイントパイプ311経由でシンク100からの排水が流入する。固形物取得籠51は、濾過部5の内面にほぼ当接するほどの大きさとされている。
【0063】
なお、排水導入口31を3カ所に設置した理由は、本実施形態のように流し台が2つの場合と1つの場合とでそれぞれ使い分けできるようにするためである。但し、排水導入口31の一つは、排水とは別に油水分離槽の中(槽内)に増水用の水を供給する増水手段として適用することできる。増水手段については後述する。
【0064】
また、濾過部5のうち固形物取得籠51の下方には、複数の板を相互に他方の板に対して立体交差させた状態でジグザグに配列してなる分離板部53を有する。分離板部53を濾過部5に設置することにより、固形物取得籠51の下方にはジグザグ状経路54が形成される(図4等参照)。
【0065】
そして固形物取得籠51により濾過された排水は、ジグザグ状経路54を通過する間に分離板部53を形成する各板531に衝突しながら下流に向けて流れる。そのときの衝撃により、濾過された排水に含まれる油分が水から分離し易い状態になる。
【0066】
濾過部5に隣接する濾過水分離部6について述べる。
濾過水分離部6は、濾過部5で固形物が濾過された排水を貯留するため中空立方体形状をした空間部である。ここで貯留した排水を比重差により排水の上層としての油の層(油層)と、下層としての水の層(水層)とに自然分離させる。
【0067】
濾過水分離部6には、油水分離槽2の前面壁22fに形成した前記油排出口32が形成
されている。そして、油排出口32には覆い61が宛がわれている。
【0068】
覆い61は、図4、5及び7からわかるように、濾過水分離部6の上部に設置されている。またその外形状は、正四角錐の頭部を水平に切断して切頭四角錐形状とし、かつ当該切頭四角錐を切頭前の正四角錐の頂点と底面の中心とを結ぶ線に沿って切断したごとき形状をしている。
【0069】
なお、説明の便宜上、符号611は覆い61の天井面を、符号612は覆い61の側面を、符号613を前記頂点と底面の中心とを結ぶ線に沿って切断した場合の切り口を指すものとする。切り口613の形状は、図4〜7に示すように、上底よりも下底が長い台形状をしている。
【0070】
そして、覆い61の切り口613のうち天井面611にあたる部位(切り口のうち天井面に相当部位)613aが油排出口32の上辺32aに当接する状態で、覆い61により、油排出口32が囲繞されるように、覆い61は濾過水分離部6に設置されている(図4〜7参照)。
【0071】
この結果、濾過水分離部6における上部には、覆い61と前面壁22fとにより画成される覆い空間S1、換言すると半割りにした茶碗を伏せたごとき中空(以下、倒立半覆鉢状空間S1)が中空空間S内に形成されるようになる。
【0072】
また、濾過水分離部6の底面中央には、油水分離を促進するための気泡を発生する周知の気泡発生装置63が設置されている(図4参照)。気泡発生装置63の周囲(少なくとも両側)には、前記案内壁203及び隔壁202が、底面21bから立設状態で設けられている。
【0073】
隔壁202には、少なくともその下方部分に濾過水分離部6から暫時貯留部7に向けて濾過水分離部6に貯留されていた排水を通す矩形状をした通し孔202aが形成されている(図8参照)。よって、濾過水分離部6と暫時貯留部7との間において、通し孔202aを経由して水の流通を行う水流通路が、濾過水分離部6の下方部に形成されているといえる。水流通路を符号67で示す。なお、水流通路67を図4に矢印で示す。
【0074】
そして、前面壁22fの外面には、油排出口32から排出される油分を取る油取り籠321aを含む油受け321が設けられている。油取り籠321aは油受け321に対して着脱自在であり、油取り籠321aにより油排出口32から排出される油分が採取される。当該採取した油分は、油取り籠321aを油受け321から取り出して、図示しない廃棄用のバケツ等に廃油として捨てられる。
【0075】
また、油受け321には、油取り籠321aを通過した排水の通る送水管323が取り付けられている(図5、6参照)。送水管323は、暫時貯留部7に貯留されていた排水を槽外に排出するための後述する水吐出管4(図4、6、8参照)に連通されている。
【0076】
さらに、濾過水分離部6には濾過水分離部6内の水位を検知する周知の水位検知センサ62を備えられている。
【0077】
次に暫時貯留部7について述べる。
暫時貯留部7は、濾過水分離部6の下方から前記水層を形成する水を案内し、当該案内した水を油水分離槽2から槽外に排水する前に一旦貯留する部位である。
【0078】
暫時貯留部7は、そこに貯留されている排水を槽外に排出する前に当該貯留されている
排水中に含まれる油分をさらに取り除くための排水前油分除去手段8を有する(図8、9参照)。そして、暫時貯留部7には、排水前油分除去手段8により油分の除去された排水を槽外に排出するための前記排水口33が前面壁22fに設けられている。
【0079】
排水口33は、図4に示すように、濾過水分離部6に形成された油排出口32よりも下方に寸法h分離れて形成されている。また排水口33には、L字を倒立させたごとき形状の水吐出管4が取り付けられ、この水吐出管4を経て、暫時貯留部7に貯留されている排水は排水処理装置1から放出される。
【0080】
水吐出管4の一端には暫時貯留部7内に貯留されている排水の放出面(水面)よりも下方に位置する吸込み口4aを有し(図4参照)、他端には暫時貯留部7の外部に位置して吸込み口4aよりも下方に延びた吐出口4bを有する(図6参照)。また、吸込み口4aには、水吐出管4に付着するごみなどを除去するためのごみ除去口(図示せず)が形成され、ごみ除去口は開閉蓋41により、通常閉塞されている。定期的に又は吐出口からの排水の出が悪くなった場合に開閉蓋41を開いてゴミを除去する。
【0081】
排水前油分除去手段8は、油吸収フィルタ81を用いて暫時貯留部7の排水に未だ含まれている油分をさらに除去するためのものである(図9参照)。
【0082】
排水前油分除去手段8は、上下方向に延びる無軌道状の油吸収フィルタ81と、油吸収フィルタ81をその上・下端で回転自在に支持する駆動ローラ82及び従動ローラ83と、油吸収フィルタ81に付着した油分を削ぎ取る爪部84が一体形成された油籠85とを有する。
【0083】
駆動ローラ82及び油籠85は、暫時貯留部7に貯留されている水面よりも上方に位置する。駆動ローラ82及び従動ローラ83は、側壁面22rに回転自在に取り付けられ、油籠85は後面壁22bに取り付けられている。
【0084】
駆動ローラ82にはこれを回転するための操作ハンドル821が同軸に取り付けられている(図1、6及び8参照)。そして、操作ハンドル821を回転することで、駆動ローラ82が回転し、駆動ローラ82及び従動ローラ83に巻回された油吸収フィルタ81が回転する。当該回転に伴い油吸収フィルタ81に付着した油分が油吸収フィルタ81に当接する爪部84の先端により削ぎ取られる。
【0085】
削ぎ取られた油分は、油籠85に落下し、そこで集油される。当該集められた油は、油取り籠321aで集められた廃油と同様廃棄用のバケツに捨てられる。
【0086】
このように、排水処理装置1にあっては、濾過水分離部6で油層を形成した油と、暫時貯留部7で排水前油分除去手段8により採取した油の両方を排水から除去できるので、下水に流される排水にはほとんど油分が含まれないようにできる。よって油分の含有量が極めて少ない排水への処理が可能になる。
【0087】
次に前記増水手段と、増水手段による増水量を制御して、所定の増水後に止水する増水量制御手段について説明する。
【0088】
増水手段は、既述のようにシンク100で生じた排水とは別に槽内に増水用の水を供給するためのものである。例えば、前記カンロとは別の吐水口が、図示しない配水管経由で3つある排水導入口31のうちの一つに連結されることによって設けられる。
【0089】
また増水量を制御するには、上記吐水口からの水道水の流出と止水を濾過水分離部6に
設けられている前記水位センサ62(図4参照)により実効する。水位センサ62により、濾過水分離部6内に貯留されている排水が所定の水位になることを検知する。当該所定の水位に油水分離槽2の貯留量がなったことを検知すると、自動的に止水して、濾過水分離部6の水位を常に一定にする。
【0090】
水位センサ62としては、例えば水圧が掛かるとリードスイッチが入り、これをトリガに水道管の弁を電気的機構により閉じ、水圧が解除されると給水するダイヤフラム式水位検知センサなどを挙げられる。よって、水位センサ62は、増水量を自動的に制御する増水量制御手段ということができる。
【0091】
また別の例として、水位が下がるにつれて浮き球が下がり、当該浮き玉に連結されたバルブが開いて吐水口から水を捕球する浮玉型便器に利用される浮き玉を、濾過水分離部6に適用してもよい。この場合、浮き球の浮沈をトリガに止水制御と給水制御とを行う。
【0092】
さらに、所定の水位になったらブザーで報知するようにして、止水と給水を手動で行うようにすることも考えられる。この場合、所定の水位とは、当該貯留に伴う排水の水位が当該所定の水位になったときに専ら上層の油層が油排出口32から大部分排出される水位であるとか、ブザーが鳴った後、所定時間の経過後に止水する目安とすることが望ましい。当該水位は、例えば経験則により定められる。
【0093】
そして、積極的に増水しなくてもシンク100で生じた排水を排水処理装置1に単に流すだけの操作を行うことで、油水分離槽2に貯留した排水を順次処理するようにしてもよい。この場合、水位センサはなくてもよい。
【0094】
しかしながら、この場合、油水分離槽2への排水の貯水量以上に一度に排水すると、油と水の両方が、それぞれ油層と水層を形成せずに両者が混在した状態で一度に下水管に流れてしまう虞がある。よって、シンクからの排水から油だけを除去できるようにするには、排水を油水分離槽2に流した後、十分に排水を放置する時間を確保する必要ある。
【0095】
次にこのような構成の実施例1に係る排水処理装置1を用いて排水を処理する手順について述べる。
【0096】
排水処理装置1を初めて使用する場合等、油水分離槽2には排水が貯留されていない場合、シンク100で生じた排水は、排水口105−配水管106−排水導入口31に設けられたジョイントパイプ311−濾過部5−導入路213を経由して、濾過水分離部6に至り、油水分離槽2の全体に次第に貯留されて行く。
【0097】
濾過部5においては、固形物取得籠51により固形物が濾過された排水が下流に向けて流れる。当該下流への流れにあたり、既述のようにジグザグ状経路54を通過する間に分離板部53を形成する各板531に排水は衝突する。そのときの衝撃により、濾過された排水に含まれる油分が水から分離し易い状態になる。
【0098】
濾過水分離部6での貯留と同時に排水は、濾過水分離部6と暫時貯留部7とを仕切る隔壁202に形成された通し孔202aを経由して、暫時貯留部7においても次第に貯留されて行く。
【0099】
排水に油脂が含まれている場合、油と水との比重差で排水中の油脂は水から分離する。油は水よりも比重が軽いので排水の上部に自然浮上し、油が排水の上層を、水が下層を形成しながら、次第に油水分離槽2における排水の貯留量が増大して行く。
【0100】
そして、排水が油排出口32に至るまで貯留され、その間に油層と水層を形成する。油層と水層を形成しつつさらに貯留量が増加すると、濾過水分離部6では油層が油排出口32から排出される。また、暫時貯留部7において貯留された排水にあっては、その上層の油層が排水口33を経由して水吐出管4から槽外に排出される。
【0101】
なお、排水口33は、既述のように、濾過水分離部6に形成された油排出口32よりも寸法h分下方に形成されているので、油排出口32よりも先に排水口33から油分が排出される。濾過部5にあっては、油分は排出されず残存する。暫時貯留部7から油分が排出される前に排水前油分除去手段8により、暫時貯留部7の油分を除去してもよい。
【0102】
暫時貯留部7に形成される排水口33は、濾過水分離部6に形成される油排出口32よりも下方に位置することが好ましい。
【0103】
油を含む排水は、油水分離槽2において、水よりも比重の軽い油が貯留されている排水の上層を形成し、水が下層を形成するので、各層に近接させて各層専用の排口を設けることは好ましい。その結果、各層の除去が効率的にできる。
【0104】
なお、排水が上昇するに連れ濾過水分離部6において上層を形成する油は覆い61と前面壁22fとにより画成される覆い空間S1を上昇して行く。当該上昇に連れ、油層は、覆い空間S1にその形態を合致させながら変化してゆく。すなわち、既述した倒立半覆鉢状に形態を変化させながら、換言すると前記油層を前記油排出口32に向けて収束させながら上昇して行き、やがて油排出口32から流出する。
【0105】
覆い61を濾過水分離部6に取り付けた状態で排水を貯留することで、このように油層を収束させることができるため、覆い61は、排水量に応じて油層を油排出口32に向けて収束させる油層収束手段ということができる。
【0106】
当該上昇にあたり、既述のように、油層収束手段により油層は収束されつつ、貯水量が増大するにしたがって下方から水圧を受ける。このため、油排出口32に向かう油層の流速は上昇し、油排出口32から槽外に吐出される油の流れに勢いが付く。よって、水よりも比重のある油であっても十分に排出できる。よって、従来のように柄杓で油を掬う必要がない。
【0107】
次に、上記のように、排水処理装置1を初めて使用した後、濾過水分離部6と暫時貯留部7から油分が除去された状態の排水を貯留している油水分離槽2にさらに排水した場合における油水分離槽2での油と水の処理及び作用効果について以下説明する。
【0108】
油分を含む排水がシンク100からさらに流れて来ると、濾過部5において油分を含む排水は、下流に押し流されて濾過水分離部6及び暫時貯留部7に至る。濾過部5において排水が下流に向けて流れるにあたり、既述のように固形物取得籠51により固形物が取り除かれた排水は、ジグザグ状経路54を通過する間に分離板部53を形成する各板531に衝突しながら下流に向けて流れる。よって、そのときの衝撃により、濾過された排水に含まれる油分が一層水から分離し易い状態になる。
【0109】
この場合も、油と水との比重差で排水中の油脂は水から分離し、油が排水の上層を、水が下層を形成し、供給量に応じて油水分離槽における貯留量が増大する。当該供給にあたり水を静かに供給することで、水層を増大させつつ油層を上昇させる。
【0110】
当該上昇に連れ上層を形成する油は前記と同様、覆い61と前面壁22fとにより画成される覆い空間S1をその形態を既述のように変化させながら上昇して行く。
【0111】
なお、油水分離槽2から油層が十分に排出された時点で、水位センサ62が機能して油水分離槽2に排水が貯留されないように設定しておくことで、水層までが油水分離槽2から排出されることを防止できる。
【0112】
また、シンク100から油水分離槽2に流入する排水に含まれる固形物は濾過部5によって排水から除去されるので、油水分離槽2内に固形物が堆積しにくくなる。よって、油水分離槽2に固形物が堆積することに起因して、油水分離槽2の容積が縮小されてしまうことを防止できる。それ故、処理できる排水の量が固形物の堆積に起因して少なくなることを防止できる。
【0113】
暫時貯留部7には、濾過水分離部6の上方に位置する油層を形成する油脂に優先して、前記水層を形成する水が濾過水分離部6の下方から案内されるので、油脂は、暫時貯留部7に導入されにくくなる。
また、前記水層を形成する水を槽外に排出する前に暫時貯留部7で一旦貯留した後、暫時貯留部7に設けられている排水口33から排水するため、排水の槽外への排出制御がし易い。
【0114】
濾過水分離部6に、油層と水層とに排水を分離させる機能以外に排水機能も実効させるよりは、油層と水層とに排水を分離させる機能を専ら与えた方が、排水を油層と水層とに分離させ易くなり、油分の処理がし易くなるからである。
【0115】
濾過水分離部6の下方部において暫時貯留部7との間で前記水層を形成する水の流通を行う水流通路67を有するので、濾過水分離部6で分離された水層を形成する水を、油層を形成する油脂に優先して暫時貯留部7に案内することができる。
【0116】
前記油水分離槽水には、油水分離を促進するための気泡を発生する気泡発生装置63を有するので、発生する気泡により、排水の油水分離が促進され、油水分離槽2で排水から油脂を取り除く効果を高めることができる。
【0117】
暫時貯留部7は、そこに貯留されている排水を油水分離槽2から槽外に排出する前に排水中の油分を取り除く排水前油分除去手段8を有するので、油水分離槽2から槽外に排水を排出する前に排水中の油分を取り除くことができる。よって、槽外に排出される排水には油分が含まれないようになり、環境に優しくできる。
【0118】
また、油水分離槽2に貯留される排水の貯留量を増大することに伴い油脂の除去を行うことができるので、当該除去にあたってシンク100での使用、すなわち油分を含む食器等の洗浄を中断する必要もない。
【0119】
さらに所定時間の経過後に、油水分離槽2から水層を形成する水を除く(以下除水とう)。当該除水により、油水分離槽2に貯留されている排水の量を減らし、これにより排水処理装置1による油脂を含む排水の処理を継続して実施する。油水分離槽2に貯留されている排水の量を減らすには、既述のように水吐出管4を経て、暫時貯留部7に貯留されている排水を放出する。
【実施例2】
【0120】
次に図10及び11を参照して、実施例2に係る排水処理装置1Aを説明する。
この排水処理装置1Aが実施例1に係る排水処理装置1と相違する主たる点は、濾過水分離部6における排水の貯留量を見かけ上増大させることにより、濾過水分離部6から油層を排出する点にある。以下説明する。
【0121】
なお、実施例1と同一部分には、実施例1に使用した符号と同一の符号を付して説明を省略する。また、実施例1で示した排水前油分除去手段8を実施例2では示していないが実施例1同様、実施例2でも有する。
【0122】
濾過水分離部6には、油水分離槽2に排水を貯留した状態で当該貯留した排水内で膨張される膨張部50を有する。膨張部50は、腐食しにくい布材や油に強い硬質塩化ビニルなどからなり、外周面にはひだ50aを付けて鉛直方向に伸縮する蛇腹形状にされている。膨張部50を設置する関係上、実施例1の気泡発生装置63及び案内壁203は、実施例2では構成部材として含めていない。しかしそれらが構成部材としてあってもよい。
【0123】
また、膨張部50は、その伸縮方向上端にスクレーパー60が設置されている(図10、11参照)。スクレーパー60は、濾過水分離部6の内面(油水分離槽2の内面)であるに当接し、付着した油分を削ぎ落とすためのものである。
【0124】
スクレーパー60は、洗面器形状をしており、その開口縁601が、濾過水分離部6の内面に当接する。そして、膨張部50が伸縮することで、スクレーパー60は、往復動し、それに伴いスクレーパー60の開口縁601が、濾過水分離部6の内面に当接した油分であるスカムを削ぎ落とす。また濾過水分離部の形状はスクレーパー60が洗面器形状であるため、それに併せて円筒形状をしたものが適用されている。実施例2の濾過水分離部には符号6Aを用いる。
【0125】
スクレーパー60には、その底部周縁と周壁面に濾過部5によって濾過された濾過水を濾過水分離部6Aに通過させる通過口603と、暫時貯留部7との間で水層を形成する水の流通を行う水流通口605が一様に形成されている。通過口603と流通口605との区別は、機能的に行う。濾過部5から濾過水分離部6Aに排水が入る孔が通過口603であり、濾過水分離部6Aから暫時貯留部7に排水を送る孔が流通口605である。
【0126】
よって、通過口603経由で濾過部5と濾過水分離部6Aとの間に濾過されて固形物が除去された排水が通る通路と、水流通口605経由で濾過水分離部6Aと暫時貯留部7との間で濾過水分離部6Aに貯留されている水層を形成する水の流通を行う水流通路67が、濾過水分離部6Aの下方部に形成されているといえる。
【0127】
さらに膨張部50は、流体供給手段であるエアポンプ70に接続されている(図10参照)。エアポンプ70から流体である空気が流入されることにより膨張部50は膨張する。
【0128】
そして、濾過水分離部6Aに貯留されている排水の水位を制御するため膨張部50の膨張量を制御する膨張部制御手段としての水位センサ62を有する。当該水位センサ62は実施例1の水位センサ62と同じであるが、この実施例2では水位センサ62によって所定の水位が検出されると、エアポンプ70に対して発信され、エアポンプ70が自動停止するようになっている。エアポンプの駆動制御をセンサによって行う技術は実施例1の場合と同様であるので説明は省略する。
【0129】
膨張部50を膨張させることによる排水全体の押し上げ力は、膨張部50及び油水分離槽2の各容積、排水の単位体積あたり重量、エアポンプ70の吐出力等を考慮して決定する。また、膨張部50による油水分離槽2に貯留されている排水の見かけ上の嵩上げは、前記水位センサ62によって所定の水位を検知し、当該センサ62の検知信号を受けて膨張部50の膨張率や膨張時間を調整し、これにより油分の排出する量を調整する。
【0130】
所定の水位とは実施例1の場合と同様であるが、例えば、水位センサ62が所定の水位を検知し、検知信号を発信してから所定時間経過後、膨張部50による排水の嵩上げを停止する等が考えられる。
【0131】
排水処理装置はこれを使用する客先により排水に含まれる油分の量や油質も相違すると考えられるので、水位センサ62によって検出する水位や水位検知後の所定時間の経過時間をどれだけにするかは客先ごとに設定できるようにすると使い勝手が向上すると考えられる。
【0132】
暫時貯留部7には、そこに貯留されている排水を吐出する水吐出管4Aの吸込み口4aが、その向きを変更できる構造になっている。このようにすることで水吐出管4Aに付着したごみを除去するためのごみ除去口及びこれを閉塞する開閉蓋41が不要である。ごみを除去する場合は、吸込み口4aの向きを図10の矢印Aのように回転し吸込み口4aが上を向くようにする。こうすれば、水吐出管4の吸込み口4a近傍に付着したごみを簡単に除去することができる。
【0133】
また、吸込み口4aの向きが上記のように上を向くようにすることで、暫時貯留部7に貯留された水を槽外に排出することを抑制できるので、排水口33には暫時貯留部7に貯留された水を槽外に排出することを制御する制御手段を有するといえる。
【0134】
次にこのように構成された実施例2の排水処理装置1の作用効果を説明する。
実施例2の排水処理装置1Aにおいても、油水分離槽2に貯留された排水をしばらく放置しておくと、既述のように比重の軽い油が、油水分離槽2に貯留された排水の上部に位置して油層を形成し、下部に位置する水により水層を形成する。
【0135】
この状態で膨張部50を膨張すると、膨張量に応じて、排水の貯留量が見かけ上増大し、膨張部50よりも上方に位置する排水が上昇する。油排出口32よりも上昇すると、排水の上層を形成する油層が下層を形成する水層に優先して油排出口32から槽外に排出される。油分を排出し終わったら、膨張部50による排水の嵩上げを停止する。
【0136】
油水分離槽2に排水を貯留するときには、膨張部50からエアを抜いて収縮させる。それに伴い油水分離槽2の嵩が下がるので、その分、油水分離槽2に排水を貯留する。貯留後は、エアポンプ70によりエアの供給を再度行って膨張部50を膨張させれば、既述のように油水分離槽2に貯留されている排水の見かけ上の嵩上げを生じる。よって、排水の上層を形成する油脂が油排出口32から再び排出される。このため、油排出口32は、前記油水分離槽2に形成され、水よりも比重の軽い油を膨張部50が膨張したときに排出するための排出口といえる。
【0137】
このため、従来のように従業員が油脂を柄杓で掬う必要がない。よって排水に含まれる油脂を簡単に除去できる。また、膨張部50を膨張させることに伴い油脂の除去を行うことができるので、当該除去にあたってシンク100での使用、すなわち油分を含む食器等の洗浄を中断する必要もない。
【0138】
実施例2にあっても、排水導入口31から油水分離槽2に流入する排水に含まれる固形物は、濾過部5によって排水から除去されるので、油水分離槽2内に固形物が堆積しにくくなる。よって、固形物が堆積することに起因して、油水分離槽2の容積が縮小されてしまうことを防止できる。
【0139】
暫時貯留部7には前記水層を形成する水が濾過水分離部6Aの下方から案内されるので、濾過水分離部6Aの上方に位置する油層を形成する油脂は、相対的に暫時貯留部7に導
入されにくくなる。また前記水層を形成する水を槽外に排出する前に暫時貯留部7で一旦貯留し、その後、暫時貯留部7に設けられている排水口33から排水するため、排水の槽外への排出制御がし易くなる。
【0140】
排水処理装置1Aにあっても濾過水分離部6Aには油層と水層とに排水を分離させる機能が専ら与えられているので、濾過水分離部6Aにより、排水を油層と水層とに分離させ易くなる。
【0141】
さらに、濾過水分離部6Aの下方部に暫時貯留部7との間で前記水層を形成する水の流通を行う水流通路67を有するので、濾過水分離部6で分離された水層を形成する水を積極的に暫時貯留部7に案内し易い点も実施例1の排水処理装置1と同様である。
【0142】
膨張部50の伸縮に伴うスクレーパー60の往復動により削り取られ、スカムは成分が油脂であるので、剥がされると排水を浮上し、やがて油層に含まれる。よって油層が除去されるときに一緒にスカムも排出される。
なお、この明細書で述べた効果は、本願発明の解決しようとする課題ということもできる。
【符号の説明】
【0143】
1 排水処理装置
1A 排水処理装置
2 油水分離槽
4 水吐出管
4a 吸込み口(制御手段)
4b 吐出口
5 濾過部
6 濾過水分離部
7 暫時貯留部
8 排水前油分除去手段
11 キャスタ
21b 底面
21c 天井面
22b 後面壁
22f 前面壁
22l 左側壁面
22r 右側壁面
31 排水導入口
32 油排出口
32a 上辺
33 排水口
41 開閉蓋
50 膨張部
50a ひだ
51 固形物取得籠
53 分離板部
54 ジグザグ状経路
60 スクレーパー
61 覆い(油層収束手段)
62 水位検知センサ(増水量制御手段、膨張部制御手段)
63 気泡発生装置
67 水流通路
70 エアポンプ
81 油吸収フィルタ
82 駆動ローラ
83 従動ローラ
84 爪部
85 油籠
100 シンク
103 本体
103a 隔壁
104 脚
104R 右の脚
104L 左の脚
105 排水口
106 配水管
107 バックボード
108 フレーム
201 隔壁
202 隔壁
202a 通し孔
203 案内壁
213 導入路
311 ジョイントパイプ
321a 油受け
321 油取り籠
323 送水管
531 分離板部形成板
601 周縁
603 通過口
605 水流通口
611 天井面
612 側面
613 切り口
613a 切り口のうち天井面相当部位
821 操作ハンドル
S 中空空間
S1 倒立半覆鉢状空間
h 油排出口と排水口との寸法差

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油を含む排水を貯留し、貯留されている排水を比重差で油層と水層とに自然分離させる油水分離槽と、
この油水分離槽内に設置され、油水分離槽に排水を貯留した状態で当該貯留した排水内で膨張される膨張部と、
前記油水分離槽に形成され、水よりも比重の軽い油を前記膨張部が膨張したときに排出するための油排出口と、
前記水層を形成する水を前記膨張部の膨張量に応じて槽外に排出するための排水口とを有する排水処理装置。
【請求項2】
前記膨張部は流体供給手段に接続され、流体供給手段から流体が流入されて膨張することを特徴とする請求項1に記載の排水処理装置。
【請求項3】
前記膨張部は、ひだを付けて鉛直方向に伸縮する蛇腹形状にされていることを特徴とする請求項1又は2に記載の排水処理装置。
【請求項4】
前記油水分離槽は、前記油水分離槽に流入する排水から固形物を濾過する濾過部と、
濾過部で濾過された排水を貯留し前記油層及び水層に自然分離させる濾過水分離部と、
この濾過水分離部の下方から前記水層を形成する水を案内し、当該案内した水を油水分離槽から槽外に排水する前に一旦貯留する暫時貯留部と、
この暫時貯留部に貯留された水を槽外に排出するための排水口とを有し、
前記濾過水分離部に前記膨張部及び前記油排出口が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の排水処理装置。
【請求項5】
濾過水分離部の下方部において暫時貯留部との間で前記水層を形成する水の流通を行う水流通路を有することを特徴とする請求項4に記載の排水処理装置。
【請求項6】
前記膨張部は、その伸縮方向上端に、前記油水分離槽の内面に付着した油分を前記油水分離槽の内面と当接して削ぎ落とすスクレーパーが設置されると共に、
スクレーパーには、前記濾過部によって濾過された濾過水を前記濾過水分離部に通過させる通過口が形成されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の排水処理装置。
【請求項7】
暫時貯留部に形成される前記排水口は、濾過水分離部に形成される油排出口よりも下方に位置することを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載の排水処理装置。
【請求項8】
前記排水口には、前記暫時貯留部に貯留された水を槽外に排出することを制御する制御手段を有することを特徴とする請求項4〜7のいずれか1項に記載の排水処理装置。
【請求項9】
前記濾過部には、排水を衝突させることにより排水中の油分を水分から分離させ易くするための分離板を有することを特徴とする請求項4〜8のいずれか1項に記載の排水処理装置。
【請求項10】
濾過水分離部に貯留されている排水の水位を制御するため前記膨張部の膨張量を制御する膨張部制御手段を有することを特徴とする請求項4〜9のいずれか1項に記載の排水処理装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の排水処理装置を備えたシンク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−179600(P2012−179600A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−109694(P2012−109694)
【出願日】平成24年5月11日(2012.5.11)
【分割の表示】特願2008−115577(P2008−115577)の分割
【原出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【出願人】(000155333)株式会社木村技研 (29)
【Fターム(参考)】