説明

排水栓操作装置

【課題】スラストロック機構の動作不良を防ぐため、スラストロック機構への水の浸入を防止することのできる排水栓操作装置を提供する。
【解決手段】排水栓操作装置12は、筒状のケーシング34の上方の開口28Cを貫通し、上下動可能に設けられた伝達軸部36Bと、伝達軸部36Bの上部に接続された操作ボタン24と、ケーシング34内に収容され、伝達軸部36Bの上下動をインナーワイヤに伝達する筒状の軸管部36Aと、ケーシング34と軸管部36Aとの間に配置され、伝達軸部36B及び軸管部36Aがケーシング34に対して上昇又は下降した時に、それぞれ所定の位置で伝達軸部36B及び軸管部36Aを保持するスラストロック機構34と、を備え、軸管部36Aは中心に上下に貫通する貫通孔が形成されており、貫通孔は、ケーシングの上方の開口28Cの下方に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水栓操作装置に関し、特に、上下動することにより浴槽の排水口を開閉する弁体を、インナーワイヤと、アウターチューブとからなるレリースワイヤを利用して、遠隔操作する排水栓操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、浴槽の排水口に設けられた上下動可能な排水栓が設けられ、浴槽の周囲に設けられた操作部の操作ボタンが押されるたびに、排水栓が上下して排水口を開閉することができる排水栓操作装置が用いられている。このような排水栓操作装置では、操作ボタンの上下動は、インナーワイヤ及びアウターチューブからなるレリースワイヤにより排水栓へと伝達される。
【0003】
また、近年、操作ボタンが押されるたびに、アウターチューブに対してインナーワイヤを進出させた状態と、インナーワイヤを退行させた状態とを切り換えることができるスラストロック機構を有する操作部を備えた排水栓操作装置が用いられている。このような装置によれば、操作ボタンを押すたびに、排水栓が上昇して排水口が開放された状態と、排水栓が下降して排水口が閉鎖された状態とを切り換えることができる。
【0004】
しかしながら、操作ボタンの上下動は駆動軸を介して操作部のケーシング内に伝達されており、この駆動軸はケーシングの上部に設けられた開口から内部に挿入されているため、この開口からケーシング内に石鹸水が入り、スラストロック機構内に石鹸水の成分が固着しまうと動作不良を生じる虞がある。
【0005】
これに対して、例えば、特許文献1には、駆動軸を包囲するように防水カバーを設け、さらに、防水カバーの上縁を操作ボタンの下面に接続し、下縁をスラストロック機構の上部に接続することにより、スラストロック機構への水の浸入を防止した排水栓操作装置が開示されている。
また、例えば、特許文献2には、操作ボタンの駆動軸にOリングを取付け、このOリングにより駆動軸と開口との隙間を封止した排水栓操作装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−150065号公報
【特許文献2】特開平11−21968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されたように駆動軸を包囲するように防水カバーを設けた排水栓操作装置では、浴室を洗浄する際に、操作ボタンを取り外して内部を清掃することが推奨されており、このように操作ボタンを取り外してしまうと、防水カバーの上部から水が浸入し、スラストロック機構まで到達する虞がある。
【0008】
また、特許文献2に開示されたように駆動軸にOリングを取り付けた排水栓操作装置では、駆動軸に作動抵抗がかかるため、操作ボタンが動作不良になる虞がある。
【0009】
本発明は、上述した問題を解決するためになされたものであり、スラストロック機構の動作不良を防ぐため、スラストロック機構への水の浸入を防止することのできる排水栓操作装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目標を達成するために、本発明は、上下動することにより浴槽の排水口を開閉する弁体を、インナーワイヤと、アウターチューブとからなるレリースワイヤを利用して、遠隔操作する排水栓操作装置であって、アウターチューブの端部を保持し、上下に開口部を有する筒状のケーシングと、ケーシングの上方の開口部を貫通し、上下動可能に設けられた伝達軸と、伝達軸の上部に接続された押しボタンと、ケーシング内に収容され、伝達軸の上下動をインナーワイヤに伝達する筒状の軸管と、ケーシングと軸管との間に配置され、伝達軸及び軸管がケーシングに対して上昇した時に、所定の位置で伝達軸及び軸管を保持するスラストロック機構と、を備え、軸管は、中心に上下に貫通する貫通孔が形成されており、貫通孔は、ケーシングの上方の開口部の下方に配置されていることを特徴とする。
【0011】
このように構成された本発明によれば、開口部からケーシング内に水が浸入しても、軸管の貫通孔を通って、ケーシングの下方から排出される。これにより、スラストロック機構が配置されたケーシングと軸管との間に水が浸入することを防止できるため、例えば、石鹸水などの固着成分を有する水によりスラストロック機構が固着するのを防止でき、排水栓の動作不良を防止できる。
【0012】
本発明において、好ましくは、軸管の上面に貫通孔へ水を導く導水面が形成されている。
このように構成された本発明によれば、軸管の上部に到達した水を確実に軸管部内の貫通孔に誘導できる。
【0013】
本発明において、好ましくは、伝達軸は、軸管と連結アームを介して一体化されており、連結アームの上面が、導水面の一部を構成している。
このように構成された本発明によれば、伝達軸を伝った水が連結アームにおいて、確実に軸管の貫通孔内へ誘導できる。また、連結アームまで到達した水が、連結アームを伝って軸管部外へと流れることを防止できる。
【0014】
本発明において、好ましくは、スラストロック機構の下部には、ケーシングの内周面と、軸管の外周面との間に入り込んだ水の排出を促進させる排水促進路が設けられている。
このように構成された本発明によれば、万が一、ケーシングと軸管部との間に水が浸入したとしても、排水促進路によりこの部分に水を滞留させることなく、下方へ促すことができる。これにより、スラストロック機構の固着を確実に防止できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の排水栓操作装置によれば、スラストロック機構への水の浸入を確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態による排水栓操作部を含む排水栓装置を備えた浴槽を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態による排水栓操作部を含む排水栓装置の構成図である。
【図3】図2に示す排水栓操作装置における操作部の詳細な構成を示す鉛直断面図である。
【図4】図2に示す排水栓操作装置における操作部の詳細な構成を示す分解上方斜視図である。
【図5】図2に示す排水栓操作装置における操作部の詳細な構成を示す分解下方斜視図である。
【図6】図3に示す操作部を構成するアウター部材を示し、(A)は上方斜視図、(B)は下方斜視図である。
【図7】図3に示す操作部を構成するガイド部材の構成を示す図であり、(A)は上面図、(B)は立面図、(C)は鉛直断面図、(D)は上部の拡大斜視図である。
【図8】図3に示す操作部を構成するスリーブの構成を示す図であり、(A)は上方斜視図、(B)は下方斜視図である。
【図9】図3に示す操作部を構成するシャフトの構成を示す図であり、(A)は上方斜視図、(B)は下方斜視図、(C)は鉛直断面図である。
【図10】図3に示す操作部を構成する軸受の構成を示す図であり、(A)は上方斜視図、(B)は下方斜視図である。
【図11】図3に示す操作部を構成する回転リングの構成を示す図であり、(A)は上方斜視図、(B)は下方斜視図である。
【図12A】図3に示す操作部の動作を示す図であり、回転リングのガイド突起が、アウター部材の突起部の間の隙間に収容された状態を示す。
【図12B】図3に示す操作部の動作を示す図であり、回転リングのガイド突起の下部傾斜面が、ガイド部材の突起部の傾斜部と当接した状態を示す。
【図12C】図3に示す操作部の動作を示す図であり、回転リングのガイド突起の側面が、ガイド部材の突起部の側面と当接した状態を示す。
【図12D】図3に示す操作部の動作を示す図であり、回転リングのガイド突起の第1の上部傾斜部が、アウター部材の突起部の第1の傾斜部と当接した状態を示す。
【図12E】図3に示す操作部の動作を示す図であり、回転リングのガイド突起の第1及び第2の上部傾斜部が、アウター部材の突起部の第1及び第2の傾斜部と当接した状態を示す。
【図12F】図3に示す操作部の動作を示す図であり、回転リングのガイド突起の下部傾斜部が、ガイド部材の突起部の傾斜部と当接した状態を示す。
【図12G】図3に示す操作部の動作を示す図であり、回転リングのガイド突起の下部傾斜部が、ガイド部材の突起部の第1の傾斜部と当接するとともに、回転リングのガイド突起の側面が、ガイド部材の突起部の側面と当接した状態を示す。
【図12H】図3に示す操作部の動作を示す図であり、回転リングのガイド突起の上部傾斜部が、アウター部材の突起部の第3の傾斜部と当接した状態を示す。
【図12I】図3に示す操作部の動作を示す図であり、回転リングのガイド突起が、アウター部材の突起部の間の隙間の下方に位置した状態を示す。
【図13】図3に示す操作部における水の排水経路を示し、ケーシングの外部を通って排出される経路を示す。
【図14】図3に示す操作部における水の排水経路を示し、ケーシング内に浸入し、シャフトの軸管内を通って排出される経路を示す。
【図15】図3に示す操作部における水の排水経路を示し、ケーシングとシャフトの軸管との隙間を通って排出される経路を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態による排水栓操作装置を図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態による排水栓操作部を含む排水栓装置を備えた浴槽を示す斜視図であり、図2は、本実施形態による排水栓操作部を含む排水栓装置の構成図である。図1に示すように、浴槽1は例えば樹脂製の成型部材からなり、底部に排水口2が形成され、上縁に沿ってフランジ部4が形成されている。浴槽のフランジ部4には、凹部6が形成されており、この凹部6内には貫通孔8が形成されている。
【0018】
図2に示すように、排水栓装置10は、排水栓操作部12と、排水栓部14と、これら排水栓操作部12及び排水栓部14とを結ぶレリースワイヤ部16とを有する。排水栓操作部12は浴槽1のフランジ部4の凹部6内の貫通孔8に取り付けられ、排水栓部14は浴槽1の排水口2に取り付けられ、レリースワイヤ部16は浴槽1の外部に沿って設けられたガイド筒18内を延びている。
【0019】
レリースワイヤ部16は、一端が排水栓操作部12に接続された第1のレリースワイヤ18と、一端が排水栓部14に接続された第2のレリースワイヤ20と、第1及び第2のレリースワイヤ18、20を連結する動作反転部22と、により構成される。第1及び第2のレリースワイヤ18、20は、それぞれ、アウターチューブと、アウターチューブ内に収容され、アウターチューブに対して相対的に進退可能なインナーワイヤとにより構成される。動作反転部18は、第1及び第2のレリースワイヤ18、20におけるアウターチューブに対するインナーチューブの動作方向を逆方向に変換することができる(詳細は、特願2010−152162号参照)。
なお、この実施形態では、レリースワイヤ部16に動作反転部22を設けたが、もちろん動作反転部22を設けないようにしてもよい。
【0020】
排水栓操作部12は、レリースワイヤ部16の第1のレリースワイヤ18が接続されており、後に詳述するように、操作ボタン24が押し下げられるごとに、第1のレリースワイヤ18のインナーワイヤをアウターチューブに対して進行させた状態と、インナーワイヤをアウターチューブに対して後退させた状態とを交互に切り換えることができる。
【0021】
排水栓部14は、上下動することにより浴槽1の排水口2を開閉する栓蓋26と、栓蓋26を上下に昇降させる昇降機構27とを有する。昇降機構27にはレリースワイヤ部16の第2のレリースワイヤ20が接続されており、昇降機構27は、第2のレリースワイヤ20のインナーワイヤがアウターチューブに対して進行することにより、栓蓋26を上昇させて排水口2を開放し、インナーワイヤがアウターチューブに対して退行することにより、排水口2を閉鎖する。
【0022】
このような構成により、排水栓装置10は、操作ボタン24を押し下げるごとに、排水栓部14が栓蓋26を上下させて、排水口2を閉鎖した状態と、排水口2を開放した状態とを交互に切り換えることができる。
【0023】
図3は、排水栓操作部12の詳細な構成を示す鉛直断面図であり、図4、図5はそれぞれ排水栓操作部12の分解上方斜視図、分解下方斜視図である。これらの図に示すように、排水栓操作部12は、操作ボタン24と、アウター部材28、ガイド部材30、及びスリーブ32により構成される円筒形状のケーシング34と、シャフト36と、軸受38と、回転リング40と、ワッシャ42と、スプリング44と、を有する。本実施形態では、回転リング40と、ワッシャ42と、スプリング44とによりスラストロック機構46が構成され、このスラストロック機構46は、シャフト36がケーシング34に対して上昇した時に、所定の位置でシャフト36を保持する。
【0024】
図6は、アウター部材28を示し、(A)は上方斜視図、(B)は下方斜視図である。図6に示すように、アウター部材28は、円筒形状の円筒部28Aと、円筒部28Aの上縁に接続されたフランジ板部28Bとを有する。フランジ板部28Bの中心には開口28Cが形成され、フランジ板部28Bの外周部には、周方向に間隔をあけて円筒部28Aの外部へと通じる周辺開口28Dが形成されている。アウター部材28の円筒部28Aの下端には、上下方向に延びる切り欠き部28Eと、係合溝28Gとが形成されている。円筒部28Aの上部内周面には、後に詳述するガイド突起部28Fにより構成された第1のガイド部が形成されている。
【0025】
図7はガイド部材30の構成を示す図であり、(A)は上面図、(B)は立面図、(C)は鉛直断面図、(D)は上部の拡大斜視図である。同図に示すように、ガイド部材30は、径の異なる上部円筒部30Aと、下部円筒部30Bとにより構成される。上部円筒部30Aは外径がアウター部材28の内径と略等しく、また、下部円筒部30Bはアウター部材28と略同径である。上部円筒部30Aと、下部円筒部30Bとの接続箇所には内フランジ30Cが形成されており、内フランジ30Cには後述するシャフト36の円筒部を挿通できるような開口30Dが形成されている。
【0026】
ガイド部材30の上部円筒部30Aの外周面には上下方向に延びる隆起部30Eと係合爪30Fとが形成されている。アウター部材28及びガイド部材30は、ガイド部材30の上部円筒部30Aが下方からアウター部材28の内側に収容され、ガイド部材30の隆起部30E及び係合爪30Fが、それぞれ、アウター部材28の切り欠き部28E及び係合溝28Gに嵌り込むことにより、一体となっている。
【0027】
また、ガイド部材30の下部円筒部30Bの下端には、上下方向に延びる切り欠き部30Hと、係合溝30Iとが形成されている。ガイド部材30の上部円筒部30Aの上縁には、後に詳述する第2のガイド部30Jが形成されている。
【0028】
図8は、スリーブ32の構成を示す図であり、(A)は上方斜視図、(B)は下方斜視図である。同図に示すように、スリーブ32は、下端の外周にフランジ部32Aを有する円筒状の外部円筒部32Bと、外部円筒部32Bの内側に配置された内部円筒部32Cと、外部円筒部32B及び内部円筒部32Cの下端部を接続する放射状に延びる複数の連結アーム32Dと、内部円筒部32Cから下方に延びる軸部32Eと、内部円筒部32Cの上部を閉塞する上方板部32Fと、を有する。スリーブ32の下端部において、外部円筒部32B、内部円筒部32C及び連結アーム32Dにより囲まれた部分には開口32Jが形成されている。
【0029】
内部円筒部32Cの内部には第1のレリースワイヤ18の上端部が挿入され、アウターチューブ18Aが内部円筒部32Cにより保持されている。また、上方板部32Fの中心から軸部32Eの下端まで貫通する貫通孔32Gが形成されており、この貫通孔32Gを第1のレリースワイヤ18のインナーワイヤ18Bが挿通している。
【0030】
また、スリーブ32の外部円筒部32Bの上端部の外周には、上下方向に延びる隆起部32Hと係合爪32Iとが形成されている。そして、ガイド部材30及びスリーブ32は、アウター部材28及びガイド部材30と同様に、スリーブ32の上端部がガイド部材30の下端部の内側に収容され、スリーブ32の隆起部32H及び係合爪32Iが、それぞれ、ガイド部材30の切り欠き部30H及び係合溝30Iに嵌り込むことにより、一体となっている。
【0031】
図9は、シャフト36の構成を示す図であり、(A)は上方斜視図、(B)は下方斜視図、(C)は鉛直断面図である。同図に示すように、シャフト36は、円筒状の軸管部36Aと、軸管部36Aの上端の内周面に放射状に設けられた連結アーム36Bと、連結アーム36Bを介して軸管部36Aに接続された伝達軸部36Cとにより構成される。軸管部36Aは、ガイド部材30の内フランジ30Cに形成された開口30Dを挿通可能な外径を有する。伝達軸部36Cは、アウター部材28のフランジ板部28Bの中心に形成された開口28Cに挿通可能な径を有する。軸管部36Aと、連結アーム36Bとにより囲まれた部分には開口36Dが形成されている。
【0032】
また、軸管部36Aの上縁には外フランジ36Eが形成されており、この外フランジ36Eの上面の周縁には上方に向かって縁部36Fが立設されている。また、外フランジ36Eの縁部36Fの内側部分には、中心に向かって傾斜する傾斜面36Gが形成されており、さらに、軸管部36Aと伝達軸部36Gとを連結する連結アーム36Bの上面は上方に向かって凸に湾曲した傾斜面36Hが形成されている。後に詳述するように、この外フランジ36Eの傾斜面36G及び連結アーム36Bの傾斜面36Hがケーシング34内に浸入した水を軸管部36Aへと導く導水面として機能する。
【0033】
図10は、軸受38の構成を示す図であり、(A)は上方斜視図、(B)は下方斜視図である。同図に示すように、軸受38は、円筒状に形成された円筒部38Aと、円筒部38Aの上部に接続された嵌合突起38Bとを有する。円筒部38Aは、シャフト36の軸管部36Aと略同径を有する。嵌合突起38Bは平面視十字状の突起からなり、円筒部38Aの直径と同じ幅を有する基部38Cと、シャフト36の軸管部36Aの内径と略同じ幅を有する上部38Dとを有し、基部38Cと上部38Dとの接続部に段差38Eが形成されている。また、軸受38の円筒部38Aには下方から第1のレリースワイヤのインナーワイヤ18Bの上端部が挿入されて、嵌合突起38B内に定着されている。
【0034】
図10は、回転リング40の構成を示す図であり、(A)は上方斜視図、(B)は下方斜視図である。回転リング40は、円筒状に形成された円筒部40Aの周囲に周方向に所定の間隔で複数のガイド突起40Bが形成されている。回転リング40の円筒部40Aは、内径がシャフト36の軸管部36Aの内径と等しくなっている。また、ガイド突起40Bは、後述するように、アウター部材28の内周面に形成された第1のガイド部を構成するガイド突起28F及びガイド部材30の第2のガイド部30Jと係合可能な厚さを有している。
【0035】
操作部を組み立てるには、まず、シャフト36の軸管部36Aに、回転リング40、ワッシャ42、及びスプリング44の順序で挿通させる。そして、シャフト36の伝達軸部36Cをアウター部材28のフランジ板部28Bに形成された開口28Cに挿入する。
【0036】
さらに、アウター部材28とガイド部材30とを連結し、ガイド部材30の下端側の開口から軸受38を嵌合突起38Bがシャフト36の軸管部36A内に収容されるように挿入する。そして、スリーブ32をアウター部材30の下部に連結することにより排水栓操作部12を組み立てることができる。
【0037】
図3に示すように、組立状態の排水栓操作部12において、アウター部材28と、ガイド部材30と、スリーブ32とが連結され、一体のケーシング34を構成する。また、軸受38の嵌合突起38Bの上部38Dがシャフト36の軸管部36Aの内側に嵌り込むことにより、軸受38とシャフト36とが一体となっている。なお、軸受38の嵌合突起38Bは十字型に形成されており、さらに、嵌合突起38Bの基部38Cにより、シャフト36の軸管部36Aと、軸受38の筒状部38Aの上部との隙間が形成されているため、この隙間を介して、筒状部38Aの内部と軸受38の外部(すなわち、ケーシング34の内部の空間)とが連通している。
【0038】
一体となったこれら軸受38及びシャフト36は、ケーシング38に対して長手方向(上下方向)に上下移動可能にケーシング38内に収容されている。軸受38及びシャフト36は、ケーシング38と同軸に配置されており、これにより、ケーシング38(アウター部材28)の上部に形成された開口28Cの下方に、シャフト36の軸管部36Aが位置する。
【0039】
また、スプリング44は圧縮状態となっており、下端がガイド部材30の内フランジ30Cに当接し、上端がワッシャ42を介して回転リング40の円筒部40Aの下面に当接している。これにより、回転リング40は、シャフト36の軸管部36Aに対して回転自在であるとともに、シャフト36の外フランジ36Eの下面に当接している。
【0040】
インナーワイヤ18Bが接続された軸受38とシャフト36とが一体となっており、また、アウターチューブ18Aはケーシング34のスリーブ32で保持されているため、ケーシング34に対してシャフト36が上昇することにより、インナーワイヤ18Bがアウターチューブ18Aに対して退行し(すなわち、上方に引き上げられ)、ケーシング34に対してシャフト36が下降することにより、インナーワイヤ18Bがアウターチューブ18Aに対して進出する(すなわち、下方に押し出される)。
【0041】
以下、操作部の動作を、図12A〜図12Iを参照しながら説明する。なお、以下の説明では、アウターチューブに対してインナーワイヤが退行した状態から説明を開始する。なお、図12A〜図12Iでは、説明のため、アウター部材については輪郭のみを示している。
【0042】
まず、アウター部材28に形成された第1のガイド部を構成するガイド突起部28F、ガイド部材30に形成された第2のガイド部30J、及び回転リング40の外周面に形成されたガイド突起40Bの形状を説明する。
【0043】
同図に示すように、アウター部材28に形成された第1のガイド部は、アウター部材28の内周に所定の間隔で形成された複数のガイド突起部28Fにより形成される。アウター部材28の内周面に形成されたガイド突起部28Fは、その両側面は鉛直に延びており、下部には反時計周り(図中左から右方向)に上方に向かって傾斜する第1の傾斜部28Hと、第1の傾斜部28Hに連続して下方に向かって傾斜する第2の傾斜部28Iと、第2の傾斜部28Iに連続して上方に向かって傾斜する第3の傾斜部28Jとが形成されている。また、これらのガイド突起部28Fの間には、周方向に、後述する回転リング40に形成されたガイド突起40Bを収容可能な隙間28Kが形成されている。
【0044】
また、回転リング40の外周面に所定の間隔で形成された各ガイド突起40Bは、上部には、反時計回りに上方に向かって傾斜する第1の上部傾斜部40Cと、第1の上部傾斜部40Cに連続して下方に向かって傾斜する第2の上部傾斜部40Dと、が形成されており、下部には時計回りに下方に向かって傾斜する下部傾斜部40Eが形成されている。
【0045】
また、ガイド部材30に形成された第2のガイド部30Jは、ガイド部材30の上縁に周方向に所定の間隔で形成された複数の突起部30Kにより構成される。各突起部30Kは、反時計回りに平坦に延びる平坦部30Lと、平坦部30Lから連続して下方に向かって傾斜する傾斜部30Mと、傾斜部30Mから下方に向かって延びる溝部30Nとを有する。また、図7(D)に示すように、溝部30Nの底部には、内側に向かう傾斜30Pが設けられている。
【0046】
図12Aに示すように、アウターチューブに対してインナーワイヤが退行した状態では、回転リング40の各ガイド突起40Bがアウター部材28のガイド突起部28Fの間の隙間28Kに位置するため、スプリング44の伸張力により、回転リング40及びシャフト36がケーシング34に対して上方へと押し上げられ、シャフト36の軸管部36Aの上端がケーシング34の上面に当接している。このため、インナーワイヤは、ケーシング34に保持されたアウターチューブに対して退行した状態となっている。
【0047】
次に、図12Bに示すように、操作ボタン24が押されると、シャフト36及びシャフトの外フランジ36Eと係合する回転リング40が下方に向かって押し下げられ、回転リング40のガイド突起40Bの下部傾斜部40Eの下側端部が、ガイド部材30の突起部30Kの傾斜部30Mの上側端部と当接する。また、これとともに、シャフト36を介して軸受38が押し下げられ、インナーワイヤがアウターチューブに対して進行する。
【0048】
そして、この状態でさらに操作ボタン24が押されると、回転リング40のガイド突起40Bの下部傾斜部40Eが、ガイド部材30の突起部30Kの傾斜部30Mと当接したまま、図12Cに示すように、回転リング40のガイド突起40Bの第2の上部傾斜部40D側(図中右側)の側面が、ガイド部材30の突起部30Kの平坦部30L側(図中左側)の側面に当接するまで回転リング40が半時計回りに回転する。そして、このように回転リング40のガイド突起40Bの図中右側側面が、ガイド部材30の突起部30Kの左側側面に当接すると、これ以上の操作ボタン24の押し込みができなくなる。
【0049】
次に、操作ボタン24を解放すると、図12Dに示すように、スプリング36が伸張して、回転リング40及びシャフト36が上方に押し上げられ、回転リング40の第1の上部傾斜部40Cの上方端部が、アウター部材28のガイド突起部28Fの第1の傾斜面28Hの下方端部と当接する。
【0050】
さらに、スプリングが伸張すると、回転リング40の第1の上部傾斜部40Cの上方端部が、アウター部材28のガイド突起部28Fの第1の傾斜面28Hの下方端部と当接しているため、図12Eに示すように、回転リング40の第2の上部傾斜部40Dが、アウター部材28のガイド突起部28Fの第2の傾斜部28Iと係合するまで、回転リング40が時計回りに回転し、この状態で保持される。この状態では、図12Aを参照して説明した回転リング40のガイド突起40Bが、アウター部材28のガイド突起部28Fの間の隙間28Kに位置している状態に比べて、シャフト36がケーシング34に対して下方に位置しており、すなわち、インナーワイヤがアウターチューブに対して進行した状態となっている。
【0051】
次に、再び操作ボタン24を押し下げる。これにより、図12Fに示すように、回転リング40がシャフト36を介して押し下げられ、回転リング40のガイド突起40Bの下方傾斜面40Eの下端部が、ガイド部材30の突起部30Kの傾斜部30Mの上端部と当接する。
【0052】
さらに、操作ボタン24を押し下げると、図12Gに示すように、回転リング40のガイド突起40Bの下方傾斜面40Fが、ガイド部材30の突起部30Kの傾斜部30Mに当接することにより、回転リング40のガイド突起40Bの図中右側の側面が、ガイド部材30の突起部30Kの図中左側の側面と当接するまで、回転リング40が反時計周りに回転する。
【0053】
そして、操作ボタン24を解放すると、スプリング44が伸張して、回転リング40及びシャフト36を押し上げる。これにより、図12Hに示すように、回転リング40のガイド突起40Bの第1の上部傾斜面40Cの上端部が、アウター部材28のガイド突起部28Fの第3の傾斜面28Iの下端部と当接する。
【0054】
さらに、スプリング44が伸張することにより、回転リング40の第1の上部傾斜面40Cがアウター部材28のガイド突起部28Fの第3の傾斜面28Iに当接することにより、回転リング40が回転する。そして、図12Kに示すように、回転リング40のガイド突起40Bがアウター部材28のガイド突起部28Fの間の隙間28Kの下方に位置するまで回転すると、さらに、スプリング44が伸張して、回転リング40及びシャフト36を上方へ押し上げ、図12Aを参照して説明した状態へと戻る。これにより、再び、ケーシング34に対してシャフト36が上方へ移動することになり、アウターチューブに対してインナーワイヤが退行した状態へと戻る。
【0055】
以上のようにして、操作ボタン24を押し下げるごとに、排水栓操作部12は、インナーワイヤがアウターチューブに対して退行した状態と、インナーワイヤがアウターチューブに対して進行した状態とを切り換えることができる。
【0056】
次に、上述の排水栓操作部12における水が浸入した場合について説明する。
図13は、本発明の実施形態による排水栓操作部12における水の排出経路を示す図である。同図に示すように、浴槽のフランジ4の凹部6内には、操作ボタン24と凹部6の内壁との隙間から水が浸入する。このように凹部6内に浸入した水は、アウター部材28のフランジ板部28Bに形成された開口28Dを通り、ケーシング34の外周を通って下方へ落下する。このため、スラストロック機構46が配置されたケーシング34とシャフト36との間に水が浸入することを防止できる。
【0057】
さらに、例えば、操作ボタン24と凹部6の内壁との隙間から水が大量に浸入した場合や、操作ボタン24を取り外して浴槽の清掃を行う場合などには、アウター部材28のフランジ板部28Bの開口28Cと、シャフト36の伝達軸部36Cとの隙間からケーシング34内に水が浸入し得る。
【0058】
このようにケーシング34内に進入した水は、図14に示すように、シャフト36の伝達軸部36Cに沿って、或いは、アウター部材28の開口28Cから垂直に落下して軸管部36Aの上部に到達する。軸管部36Aの上端に形成された外フランジ36Eの上面には、中心に向かって傾斜面36Gが形成されており、また、軸管部36Aと伝達軸部36Cとを連結する連結アーム36Bの上面にも傾斜面36Hが形成されているため、軸管部36Aの上部まで到達した水は、これら傾斜面36G,36Hにより軸管部36Aの内部へと導かれる。さらに、このように軸管部36A内へ導かれた水は、軸管部36Aの下端において、軸管部36Aの内面と軸受38の嵌合突起38Bとの間に形成された隙間を通り、軸受38の外周へと流れる。軸受38の外周へと流れた水は、ケーシング34と軸受38との間の隙間を下降し、スリーブ32の外部円筒部32Bと内部円筒部32Cとの間を通り、スリーブ下部に形成された開口32Jを通って、ケーシング34の下方へと排出される。このよう、例え、ケーシング34内に水が浸入しても、シャフト36の軸管部36Aの内部を通って排出され、スラストロック機構46が配置されたケーシング34とシャフト36との間に水が浸入することを防止できる。
【0059】
また、万が一、アウター部材28の開口28Cと、シャフト36の伝達軸部36Cとの隙間からケーシング34内に水が浸入し、さらに、アウター部材28の内面に沿って水が浸入した場合には、浸入した水はアウター部材28の内面に沿って下方に流れる。そして、この水は、ガイド部材30の突起部30Kへと到達すると、突起部30Kの傾斜部30Mに案内されて溝部30Nへと導かれる。溝部30Nには内側に向かって下方に傾斜する傾斜30Pが形成されているため、突起部30Kに水が滞留することなく、ガイド部材30の内面に沿って下方に流れることとなる。そして、ガイド部材30の下部円筒部30Bにおいて、シャフト36の軸管部36A内を流れた水と合流してケーシング34外へと排出される。
【0060】
以上説明したように、本実施形態の排水栓の操作装置によれば、アウター部材28の開口28Cからケーシング34内に水が浸入しても、軸管部36Aの内部を通って、ケーシング34の下方から排出される。これにより、スラストロック機構46が配置されたケーシング34とシャフト36との間に水が浸入することを防止できるため、例えば、石鹸水などの固着成分を有する水によりスラストロック機構46が固着するのを防止でき、排水栓の動作不良を防止できる。
【0061】
また、軸管部36Aの上部の外フランジ36E及び連結アーム36Bに傾斜面を設けることにより、軸管部36Aの上部に到達した水を確実に軸管部36A内に誘導できる。
【0062】
さらに、連結アーム36Bにより軸管部36Aと伝達軸部36Cとを連結しており、さらに、連結アーム36Bに傾斜面が設けられているため、伝達軸部36Cを伝った水を確実に軸管部36A内に誘導できる。さらに、連結アーム36Bまで到達した水が連結アーム36Bを伝って軸管部36Aの外側表面に達するのを防止できる。
【0063】
また、例えば、操作ボタン24を取り外して洗浄する際などに、万が一、ケーシング34と軸管部36Aとの間に水が浸入したとしても、ガイド部材30の第2のガイド部30Jの溝部30Nに内側に向かう傾斜30Pが設けられているため、ケーシング34の内面に沿って流れる水を、第2のガイド部30Jに滞留させることなく、下方へ促すことができる。
【符号の説明】
【0064】
2 排水口
10 排水栓操作装置
14 排水栓部
16 レリースワイヤ部
18 第1のレリースワイヤ
18A アウターチューブ
18B インナーワイヤ
20 第2のレリースワイヤ
24 操作ボタン
26 栓蓋
27 昇降機構
28 アウター部材
28C 開口
30 ガイド部材
30J 第2のガイド部
30P 傾斜
30N 溝部
34 ケーシング
36 シャフト
36A 軸管部
36B 連結アーム
36C 伝達軸部
36G 傾斜面
36H 傾斜面
46 スラストロック機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下動することにより浴槽の排水口を開閉する弁体を、インナーワイヤと、アウターチューブとからなるレリースワイヤを利用して、遠隔操作する排水栓操作装置であって、
前記アウターチューブの端部を保持し、上下に開口部を有する筒状のケーシングと、
このケーシングの上方の開口部を貫通し、上下動可能に設けられた伝達軸と、
この伝達軸の上部に接続された押しボタンと、
前記ケーシング内に収容され、前記伝達軸の上下動を前記インナーワイヤに伝達する筒状の軸管と、
前記ケーシングと前記軸管との間に配置され、前記伝達軸及び軸管が前記ケーシングに対して上昇した時に、所定の位置で前記伝達軸及び軸管を保持するスラストロック機構と、を備え、
前記軸管は、その中心に上下に貫通する貫通孔が形成されており、
前記貫通孔は、前記ケーシングの上方の開口部の下方に配置されていることを特徴とする排水栓操作装置。
【請求項2】
前記軸管の上面に前記貫通孔へ水を導く導水面が形成されている、請求項1記載の排水栓操作装置。
【請求項3】
前記伝達軸は、前記軸管と連結アームを介して一体化されており、
前記連結アームの上面が、前記導水面の一部を構成している、請求項2記載の排水栓操作装置。
【請求項4】
前記スラストロック機構の下部には、前記ケーシングの内周面と、前記軸管の外周面との間に入り込んだ水の排出を促進させる排水促進路が設けられている、請求項1乃至3のうち何れか1項に記載の排水栓操作装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図12D】
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【図12E】
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【図12F】
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【図12G】
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【図12H】
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【図12I】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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