説明

排水栓

【課題】捕集体に溜まったごみを容易に除去できるようにする。
【解決手段】排水栓10は、排水口近傍の排水路内に配置される。排水栓10は、排水口を開閉可能な弁部12と、この弁部12の下部に垂設された軸部16と、この軸部16に変位可能に支持された捕集体13と、この捕集体13を貫通可能な貫通体17を備えて構成されている。捕集体13は、平面視したときに、弁部12に隠れる第1の位置と、弁部12の外縁からはみ出す第2の位置との間で変位可能に設けられている。第1の位置で捕集体13を貫通する貫通体17に、ごみを絡め取ることができる。捕集体13が第2の位置に変位すると、捕集体13が貫通体17から離れ、貫通体17に絡んだごみを捕集体13から除去可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水栓に係り、更に詳しくは、排水口から流れ込むごみを捕集することができる排水栓に関する。
【背景技術】
【0002】
浴槽や洗面化粧台のボウルにおいては、水が流れ込む排水口を開閉可能な排水栓が利用されている。かかる排水栓の周知な構成(以下、「従来構造」と称する。)として、チェーンに接続されるとともに、排水口を閉塞可能な円錐台状をなすゴム製の排水栓がある。この排水栓にあっては、排水口を開閉するときに、排水栓自体或いは排水栓に近い位置のチェーンを手で直接掴むので、手が濡れたりする、という不都合がある。また、排水口を閉塞しない状態では、排水栓を置くスペースが必要になり、ボウル等の使用時に排水栓が邪魔になる、という不都合もある。
【0003】
ここで、前記不都合を解消し得る排水栓として、例えば、特許文献1に開示されるものがある。同文献の排水栓は、排水口周りに着座可能な弁と、この弁下面に垂設された軸部と、この軸部の延出方向中間部に設けられたごみの捕集体となる目皿とを備えている。同文献の排水栓では、ワイヤの一端側に設けられた操作ボタンを操作することで軸部を昇降させ、弁による排水口の開閉を遠隔操作できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−61931号公報
【特許文献2】特開2009−257045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1にあっては、排水路から排水栓を取り出した後、目皿に溜まったごみを除去する清掃作業が面倒で困難になるという不都合を招来する。これは、目皿を清掃するため、目皿の内側に指先やブラシ等を挿入する際、目皿の真上にある弁に指やブラシ等が当たるため、目皿の内側に指先やブラシ等を入れ難くなったり、指やブラシ等の動きに制約を受けたりすることに起因する。また、目皿に溜まるごみは毛髪や繊維が多く、これが放射状或いは格子状に形成される目皿に絡まる傾向があることにも原因がある。
【0006】
ところで、特許文献2では、排水路内に設けられるヘアキャッチャーを開示しており、このヘアキャッチャーは、軸部の中間に設けられた二体の目皿を備えている。これら目皿のうち、下方の目皿は、軸部を中心として回転可能に設けられ、上方の目皿の投影面からずらしてごみの除去を行えるようになっている。ところが、同文献の目皿にあっても、絡まった毛髪や繊維の除去作業は容易でなく、改善の余地がある。しかも、同文献は、前記従来構造タイプの排水栓に用いられるものであり、特許文献1のような弁の開閉を遠隔操作できるタイプのものに用いられるものでない。
【0007】
[発明の目的]
本発明は、前記不都合及び改善すべき点に着目して案出されたものであり、その目的は、弁部と捕集体とが軸部で連結される排水栓において、捕集体に溜まったごみを除去する作業の容易化を図ることができる排水栓を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、排水口近傍の排水路内に配置される排水栓において、
前記排水口を開閉可能な弁部と、この弁部下面に垂設された軸部と、この軸部に変位可能に支持された捕集体と、この捕集体を貫通可能な貫通体とを備え、
前記捕集体は、平面視したときに、弁部に隠れる第1の位置と、弁部の外縁からはみ出す第2の位置との間で変位可能に設けられ、第1の位置で貫通体が貫通し、第2の位置で貫通体から離れる、という構成を採っている。
【0009】
本発明において、前記捕集体には、貫通体を受容する受容部が形成され、当該受容部に貫通体を受容したときに、捕集体が第1の位置に位置決め可能に設けられる、という構成を採ることが好ましい。
【0010】
また、前記貫通体は、弁部に固定されて軸部の延出方向に延びる棒状に形成される、という構成を採ることができる。
【0011】
更に、前記捕集体における軸部の延出方向の移動を規制可能なストッパを備える、という構成も好ましくは採用される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、捕集体を貫通する貫通体で、毛髪等のごみを絡め取ることができる。そして、排水栓を排水路内から取り出し、捕集体を貫通体から離れる位置に変位すると、貫通体にごみが絡んだ状態を維持でき、これにより、貫通体に絡んだごみを捕集体から除去することが可能となる。つまり、捕集体を第1の位置から第2の位置に変位させることで、捕集体からごみを除去可能となり、その作業の容易化、迅速化を図ることができる。しかも、捕集体が第2の位置に変位した後では、指先等で捕集体のごみを除去するときに、弁部が邪魔になり難くなり、これによっても、作業負担の軽減を図ることができる。
【0013】
また、受容部によって捕集体を第1の位置に位置決め可能としたので、排水栓を排水口近傍の排水路内に配置するときに、排水路内に捕集体をスムースに挿入することが可能となる。
【0014】
更に、貫通体を前述のように棒状としたので、貫通体に絡まったごみを当該貫通体の先端側から抜き取るように除去することができ、ごみの除去作業をより一層容易に行うことが可能となる。
【0015】
また、捕集体に対してストッパを設けたので、排水栓を排水路内から取り外すときに、貫通体が捕集体に貫通した相対位置を維持することができる。これにより、捕集体を第1の位置から第2の位置に変位する前に、貫通体が捕集体に貫通しなくなることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1実施形態に係る排水栓の概略正面断面図。
【図2】前記排水栓の概略斜視図。
【図3】捕集体を第2の位置に変位した状態の図2と同様の斜視図。
【図4】(A)は、一部構成を省略した図2のA−A線に沿う断面図、(B)は、一部構成を省略した図3のB−B線に沿う断面図。
【図5】第2実施形態に係る排水栓の図2と同様の斜視図。
【図6】(A)及び(B)は、第2実施形態に係る排水栓の図4(A)及び(B)と同様の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施の形態について図面を参照しながら説明する。
なお、本明細書及び特許請求の範囲中、特に明示しない限り、「上」及び「下」は、図1を基準として用い、「平面視」は、同図中上側から排水栓を見た場合について用いる。
【0018】
[第1実施形態]
図1〜図4において、第1実施形態に係る排水栓10は、浴槽や洗面化粧台のボウル、キッチンのシンク等の底部Bに設けられた排水口11A近傍の排水路11内に配置される。排水栓10は、排水口11Aを開閉可能な弁部12と、排水路11内に配置される捕集体13と、この捕集体13の下方に設けられた補助捕集体14と、弁部12、捕集体13及び補助捕集体14を固定する軸部16と、弁部12の下面側に連結されて垂下する貫通体17とを備えて構成されている。
【0019】
前記排水路11は、本実施形態では、前記底部Bから下向きに延びている。排水路11は、排水口11Aを含む上方領域がカバー体20により形成され、当該カバー体20の下方領域が管体21により形成されている。カバー体20及び管体21の内周面には、段差形成面20A,21Aがそれぞれ形成されている。カバー体20の段差形成面20Aには、捕集体13が載置可能に設けられ、管体21の段差形成面21Aには、補助捕集体14が載置可能に設けられている。また、排水路11において、各段差形成面20A,21Aの間には流路22が接続されている。この流路22は、洗面ボウル等の上方に設けられて当該ボウルから水が溢れることを防止する図示しないオーバーフロー穴に接続されている。従って、前記オーバーフロー穴に入ったごみは、流路22から流れ出て、補助捕集体14によって捕集される。
【0020】
前記弁部12は、平面視円形の弁本体25と、この弁本体25の外縁側に設けられた環状(閉ループ状)のパッキン26とを備えている。弁部12は、パッキン26が排水口11Aの形成縁に密着することで、当該排水口11Aに流れ込もうとする水を止水し、この状態から弁本体25を上昇して前記密着を解除することで、排水口11Aへの水の流れ込みを許容するようになっている。
【0021】
前記捕集体13は、軸部16の延出方向中間部分で支持されている。捕集体13は、排水の通過を許容しつつ毛髪等のごみDを捕集可能な網状体や格子状体により形成される上目皿部28と、前記軸部16を挿通可能な挿通部29と、上目皿部28に形成されて貫通体17を受容可能な受容部30とを備えている。挿通部29と軸部16は非固定とされ、これにより、軸部16の延出方向における捕集体13の移動が許容される。更に、捕集体13は、軸部16を中心とする回転、つまり、図4(A)中矢印R方向に回転可能となる。これにより、捕集体13は、平面視したときに、捕集体13が弁部12に隠れる第1の位置(図2、図4(A)参照)と、弁部12の外縁からはみ出す第2の位置(図3、図4(B)参照)との間で回転変位可能となっている。なお、図1に示されるように、排水栓10を排水路11に配置したとき、捕集体13は、前記第1の位置にセットされることとなる。
【0022】
前記受容部30は、図4(A)に示されるように、上目皿部28の外縁から貫通体17まで当該上目皿部28を切り欠くように形成されている。受容部30の平面形状は、捕集体13が前記第1及び第2の位置間を変位するときに、貫通体17が通過する円弧状の経路に沿って形成され、貫通体17の側面から受容部30まで1mm程度の隙間を有している。これにより、受容部30は、捕集体13の前述した回転変位を許容している。また、図4(A)に示される第1の位置で、受容部30の反開放端部は貫通体17の側面と当接し、捕集体13の同図中時計回り方向の回転を規制して当該捕集体13を位置決め可能となっている。
【0023】
前記補助捕集体14は、中心から放射状に延びる格子状体を有する下目皿部32と、前記軸部16の下端に固定される固定部33とを備えている。下目皿部32の下面側には、下方に延びるロッド35が設けられ、このロッド35の先端にはエンドキャップ36が取付けられている。排水栓10の下端であるエンドキャップ36は、昇降体38上方に位置し(図1参照)、この昇降体38は、図示しないワイヤの一端側に連結され、当該ワイヤの他端側には図示しない操作ボタンが設けられている。この操作ボタンを操作することで昇降体38が上下に変位し、補助捕集体14、軸部16及び弁部12も上下に変位して弁部12による排水口11Aの開閉を遠隔操作できるようになっている。
【0024】
前記軸部16は、弁本体25下面に垂設され、丸棒状をなしている。軸部16の上端側は、弁本体25の下面における中心位置より図1中右側にずれた位置に固定されている。軸部16における捕集体13と補助捕集体14との間には、円筒状のストッパ40が設けられている。ストッパ40は、排水栓10を排水路11に配置したときに、前記挿通部29の下面から下方に離れている(図1参照)。この一方、排水栓10を排水路11から取出したときに、ストッパ40の上端面に挿通部29下面が当接するようになっている(図2参照)。
【0025】
前記貫通体17は、軸部16と平行に上下方向に延びる丸棒状をなしている。貫通体17の上端側は、弁本体25の下面における中心位置より図1中左側にずれた位置、つまり、当該中心を挟んで軸部16の反対側に固定されている。貫通体17の先端側は、前記受容部30に受容され、捕集体13を貫通可能となっている。また、貫通体17の長さは、捕集体13の挿通部29がストッパ40上に当接されたときに、貫通体17の先端側が上目皿部28の下部より突き出し、捕集体13を貫通した状態を維持するように設定されている。
【0026】
次に、本実施形態における捕集体13のごみDの除去方法について説明する。
【0027】
先ず、弁部12を掴んで排水栓10を持ち上げ、当該排水栓10を排水路11から取り出す。このとき、図2に示されるように、受容部30が貫通体17を受容し、捕集体13が平面視で弁部12に隠れる第1の位置となる。また、捕集体13がストッパ40上に当接して当該ストッパ40により捕集体13の下降を規制し、貫通体17の先端側が上目皿部28の下部よりはみ出た状態が維持可能となる。この状態で、軸部16を中心として、捕集体13を第1の位置から第2の位置に180°回転させて、当該貫通体17から捕集体13を離れた位置に変位させる(図3参照)。これにより、図4(A)及び(B)にも示されるように、第1の位置で上目皿部28に捕集され且つ貫通体17に絡んだごみDは、第2の位置に変位しても、その絡んだ状態を維持できている。つまり、捕集体13の回転変位によって上目皿部28からごみDを除去することが可能となる。
【0028】
貫通体17に絡んだごみDは、指先等で摘みながら引き下げることにより、貫通体17から抜き取って除去される。上目皿部28に残ったごみDは、指先やブラシ等で除去される。このとき、第2の位置での捕集体13は弁部12と平面視で殆ど重ならないので、ごみDを除去するときに、弁部12が指先やブラシ等に当たり難い。
【0029】
前述のようにごみDを除去した後、捕集体13を回転変位して第1の位置にセットする。このとき、受容部30の反開放端部と貫通体17の側面が当接するので、捕集体13を第1の位置に容易に位置決め可能となる。この状態で、排水口11A近傍の排水路11に排水栓10を挿入することで、排水栓10の配置が完了する。
【0030】
従って、このような実施形態によれば、捕集体13を回転変位させることで上目皿部28からごみDを簡単且つ短時間で除去することができる。しかも、貫通体17に絡んだごみDも直線的な抜き取る動作だけで除去でき、ごみDの除去作業全体の労力軽減を図ることが可能となる。ここで、上目皿部28では、排水口11Aから流れ込むごみDが貫通体17に絡んだり集中したりする傾向がある。これにより、上目皿部28の大部分のごみDが貫通体17に絡みつつ除去可能となり、上目皿部28に残るごみDが少なくなることが期待できる。
【0031】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、以下の説明において、前記第1実施形態と同一若しくは同等の構成部分には同一符号を用いるものとし、説明を省略若しくは簡略にする。
【0032】
図5及び図6には、本発明の第2実施形態が示されている。この第2実施形態の捕集体45は、軸部16の径方向に直線的に変位、すなわち、図5中左右方向に変位可能に設けられている。捕集体45は、図6(A)中左右方向に延びる長穴46Aを有する挿通部46と、上目皿部47の同図中左端側を開放し、長穴46Aの長手方向と同方向に延びる切り欠きが形成された受容部48とを備えている。
【0033】
前記捕集体45は、長穴46Aの図6(A)中右側に軸部16が位置するときに前記第1の位置に配置される。また、第1の位置に配置された捕集体45を同図中右方向に変位し、図6(B)に示されるように、長穴46Aの同図中左側に軸部16が位置すると、捕集体45が弁部12の外縁からはみ出す第2の位置に配置される。捕集体45は、第1の位置から第2の位置に変位すると、受容部48から貫通体17が離れ、これにより、第1実施形態と同様に、貫通体17にごみDを絡めて上目皿部47からごみDを除去可能となる。なお、捕集体45は、図6(B)に示される位置において、軸部16を中心として回転可能となり、受容部48が同図中右側や上側、下側に位置するように回転変位した状態とすることができる。
【0034】
本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。
すなわち、本発明は、特定の実施の形態に関して特に図示し、且つ、説明されているが、本発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上に述べた実施形態に対し、形状、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状などの限定の一部若しくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【0035】
例えば、貫通体17は、弁部12下面における中心位置等の前記各実施形態と異なる位置に固定したり、補助捕集体14上面に垂設したり、L字状に形成して軸部16に固定したりしてもよい。但し、前記実施形態のような形状、連結位置とすることで、貫通体17にごみDを絡めた除去作業を行い易くなる点で有利となる。
【0036】
また、前記上目皿部28,47及び下目皿部32は、ごみを捕集し得る限りにおいて、他の形態に変更してもよい。
【符号の説明】
【0037】
10・・・排水栓、11・・・排水路、11A・・・排水口、12・・・弁部、13,45・・・捕集体、16・・・軸部、17・・・貫通体、30,48・・・受容部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水口近傍の排水路内に配置される排水栓において、
前記排水口を開閉可能な弁部と、この弁部下面に垂設された軸部と、この軸部に変位可能に支持された捕集体と、この捕集体を貫通可能な貫通体とを備え、
前記捕集体は、平面視したときに、弁部に隠れる第1の位置と、弁部の外縁からはみ出す第2の位置との間で変位可能に設けられ、第1の位置で貫通体が貫通し、第2の位置で貫通体から離れることを特徴とする排水栓。
【請求項2】
前記捕集体には、貫通体を受容する受容部が形成され、当該受容部に貫通体を受容したときに、捕集体が第1の位置に位置決め可能に設けられていることを特徴とする請求項1記載の排水栓。
【請求項3】
前記貫通体は、弁部に固定されて軸部の延出方向に延びる棒状に形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の排水栓。
【請求項4】
前記捕集体における軸部の延出方向の移動を規制可能なストッパを備えていることを特徴とする請求項1,2又は3記載の排水栓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−207365(P2012−207365A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71305(P2011−71305)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(392008529)ヤマハリビングテック株式会社 (349)
【Fターム(参考)】