説明

排水管キャップ及びそれを用いた排水システム

【課題】 キャップは排水やガスの流出を防止する機能は十分であっても、その機能のみでは、建築物内の環境を良好にすることができず、防音等の性質を求められた、排水管等の周囲に吸音層と遮音層を順に設けた排水管であっても、そのキャップ部位から音が漏れることによって、室内に排水の流れる音が漏れることになる。
【解決手段】排水管用の管の端部、及び管が接続されていない継手の接続部を封止するための排水管キャップであって、該排水管キャップは基体上に、吸音層及び遮音層の一方、又は吸音層、遮音層を順に設けてなる防音材で被覆してなることを特徴とする排水管キャップ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建築物内に設置された排水管の端部や継手部の開口部を閉塞するためのキャップ及びそれを用いた排水システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているように、配管、継手又は集合管の側面を覆う外層と、前記外層の内面側に配置される防音層とを備えた防音管部材であって、防音層が遮音層と吸音層からなり、これらの層により管内の水流によって発生した音を遮断して、音が外部に漏れることがないようにすること、該吸音層はグラスウールやグラスファイバーシートからなることは知られている。
また、特許文献2の記載によっても、建築物の給排水設備や空調装置等の配管に適用される排水管において、管内部から発生する騒音を管外部に漏らさないように、管外面に遮音層と吸音層とからなる防音部材を被覆することは公知である。
さらに特許文献3に記載されているように、排水管本体から発生する騒音を抑制するために、排水管にグラスウールやロックウール、セラミックファイバー等の吸音層と遮音層をこの順で設けることも公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−299773号公報
【特許文献2】特開2008−249067号公報
【特許文献3】特開2008−063756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1〜3に記載されている、排水管等の周囲に吸音層と遮音層を順に設けた排水管は、確かに排水管内部から発生する騒音が外部に漏れることがなく、排水管を設置した建築物内に騒音が伝わることを防止し、快適な環境とすることができる。
排水管の端部や集合管の受け口や継手部の開口部を閉塞するためのキャップは知られており、必要に応じて、排水管や集合管に使用されているが、これまでこのような用途のキャップは、排水やガス等が開口部から流出することにより、居住空間等に排水やガスが流れることを防止するキャップにすぎなかった。
しかしながら、これらのキャップは排水やガスの流出を防止する機能は十分であっても、その機能のみでは、建築物内の環境を良好にすることができず、防音等の性質を求められた上記特許文献1〜3に記載された排水管等の周囲に吸音層と遮音層を順に設けた排水管であっても、そのキャップ部位から音が漏れることによって、室内に排水の流れる音が漏れることになる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、下記に示す手段を採用するものである。
1.排水管用の管の端部、及び管が接続されていない継手の接続部を封止するための排水管キャップであって、該排水管キャップは基体を、吸音層及び遮音層の少なくとも一方を設けてなる防音材で被覆してなることを特徴とする排水管キャップ。
2.吸音層が樹脂製多孔体及び繊維の1種以上からなる1に記載の排水管キャップ。
3.防音材は表面に表皮材を有することを特徴とする1又は2に記載の排水管キャップ。
4.1〜3に記載の排水管キャップを、管の端部又は管が接続されていない継手の接続部を封止するように設け、管の端部又は管が接続されていない継手の接続部と排水管キャップとの接続部にはジョイントテープが巻き付けられてなることを特徴とした排水システム。
【発明の効果】
【0006】
本発明の排水管キャップは、防音材を被覆してなるキャップであるから、排水管の内部を排水が流れることにより生じる騒音がキャップから漏れて室内に伝わることを防止する。それに加えて、防音材が難燃性材料からなる場合には、火災が発生した下層階において排水継手が加熱、もしくは溶融された場合であっても、煙や炎がキャップから漏れることはないし、吸音層が焼成された無機繊維からなる場合には、その無機繊維から煙を発生することがない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】排水管キャップの図
【図2】排水管キャップ設置図
【図3】排水管キャップの図
【図4】排水管キャップ設置図
【図5】排水管キャップ設置図
【図6】排水管キャップ設置図
【図7】排水継手設置例
【図8】排水継手への防音材取り付け例
【図9】排水継手設置例
【図10】防音材構造図
【図11】管への防音材取り付け例1
【図12】管への防音材取り付け例2
【図13】排水継手設置図
【図14】防火材取り付け図
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の排水管キャップは、集合継手や建築物等の床スラブを貫通して設置された排水継手の排水管を接続しない継手部や、排水管の開口端を封止するために使用するキャップであり、さらに、排水継手と排水管が吸音層、遮音層からなる防音材で被覆され、排水継手および立て管との接続部にはジョイントテープを巻き付けられている場合には、同じように吸音層や遮音層の少なくとも一方からなる防音材により被覆されてなるものである。
そして、防音材は表面に表皮材を有すること、排水継手が上記防音材で被覆した横枝部を有し、その横枝部に枝管が接続され、その接続部にジョイントテープを巻き付けてなり、さらに排水継手の主管部用防音材と横枝部用の防音材の継ぎ目に粘着剤付金属基材テープを巻き付けても良く、排水継手に接続された立て管も該枝管と同様に接続されていてもよい。
このように、本発明の排水管キャップはキャップ基材と該キャップ基材の必要な箇所を被覆するように該防音材からなる層、必要により更に被覆層により被覆されてなるものである。これらの各層によりキャップ基材を被覆する手段としては、各層をそれぞれ、あるいは各層を積層させたものを、キャップ基材に対して布テープなどのテープやホッチキス等の任意の固定手段を採用することが可能である。
【0009】
このような、本発明の排水管キャップに関して、図面を示して以下に具体例を基に説明する。
図1(a)は、本発明の排水管キャップの斜視図であり、図1(b)は(a)を縦に切断してなる断面図である。図1(a)の外面は排水管キャップが被覆材にて覆われており、その構造は図1(b)にて示されるように、樹脂製もしくは金属等の不燃性の材料からなるキャップ基材1、そのキャップ基材1のすぐ外面を覆う吸音層2、さらに吸音層2の外面を覆う遮音層3、及び遮音層3のさらに外面を覆う被覆層4からなっている。
図1に記載の排水管キャップは、封止される排水管の端部、もしくは排水継手の封止される非接続部に対して、あたかも受け部を構成してこれらの端部や非接続部を覆うことが可能な構造になっている。
【0010】
このように図1に示す排水管キャップを排水管の端部に使用してなる状態を図2に示す。図2(a)は使用状態の外観図であり、図2(b)はその断面図である。これらの図にて示す本発明の排水管キャップは、排水管の端部に対して受け部を形成できる内径を有し、排水管の端部を覆うようにして接続される。
図2(b)にはジョイントテープ5が巻かれている。そのジョイントテープは排水管の端部や排水継手の封止される非接続部に対して排水管キャップにより気密に封止することを目的にして巻かれるものである。
【0011】
図3(a)及び(b)も図1(a)及び(b)と同様に本発明の排水管キャップであり、基本的には同じ構造を有しているが、図3(a)及び(b)の排水管キャップは、キャップ基材6の一部が、封止される排水管の端部、もしくは排水継手の封止される非接続部に挿入される形状を備えている点で異なるものである。
このため、図3(b)に示すように、キャップ基材の側面は該端部もしくは該非接続部に挿入されるために吸音層や遮音層等による被覆はなされておらず、封止時に該端部や該非接続部の表面を構成するキャップ基材の底部は、吸音層や遮音層等により被覆される。
【0012】
具体的には図4(a)の外観図及び(b)の断面図に示されているように、このキャップはこれらの端部又は非接続部に挿入されることにより封止するものである。
もちろん、このようなキャップにおいても 封止後にジョイントテープ5が巻かれることによってより気密に封止することができる。
以上の図1〜4は直管である排水管の端部を対象とした図であるが、同様に排水継手の封止される非接続部に対して、排水管キャップにより気密に封止できるようにして巻かれた具体的な図は、図5(a)(b)及び図6(a)(b)に示される。
【0013】
本発明の排水管キャップが使用される排水管とは、いわゆる直管でも曲管でもよく、建築物内にある開口された端部であれば、封止する対象となる。また、排水継手の場合も同様に、通常は図7に示される建築物等の床スラブを貫通して設置される排水継手であって、鋳鉄等により形成された継手を基に構成され、継手は上下に上部立て管及び下部立て管との接続部を設けており、さらに枝管との接続部を設けても良い。
これらの排水管や排水継手は、その周囲に吸音層及び遮音層からなる防音材13を被覆してなる。具体的には防音材13は図7の円内に示すように、継手11側から順に吸音層2、遮音層3及び被覆層4により構成されている。図7は排水継手の図であるが、排水管についても同様である。
ここで、継手11は、鋳鉄等の金属製継手や、塩化ビニル等の樹脂製継手を耐火性材料からなる被覆層により被覆してなる耐火被覆管からなる継手であっても良い。
【0014】
以下、防音材13を構成する吸音層2及び遮音層3について説明するが、これらは、本発明の排水管キャップを構成する吸音層2及び吸音層3、及び上記の継手11に設けられた吸音層2及び遮音層3と共通する。
遮音層3は、吸音層2の外側に配される層であり、排水管や排水継手11内に発生した騒音を防音材13の外部へ伝播するのを効果的に抑制する機能を有する。吸音層2と遮音層3との間には、接着層又は粘着層を設けてこれらの層を互いに固定させることもできる。
また、排水管キャップ基材1や排水管、継手の基材から順に、遮音層−吸音層−遮音層と重ねて設けてもよい。
【0015】
上記機能を有する遮音層3としては、高分子を基材とするシート材が用いられる。遮音層3の材料としては限定するものではないが、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、EPDM、SBR、NBR等のゴム又は塩化ビニル単独で重合した樹脂のほか、塩化ビニル単量体と共重合し得る単量体のうち少なくとも1種以上とランダム共重合又はブロック共重合して得られる塩化ビニル共重合樹脂、例えば酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体、塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体、あるいは塩化ビニル共重合体とグラフト共重合し得る樹脂とグラフト共重合して得られる塩化ビニルグラフト共重合樹脂、例えばエチレン−酢酸ビニルグラフト共重合体、ポリウレタン−塩化ビニル共重合体などの塩化ビニル系樹脂を挙げることができる。
【0016】
遮音層の面密度としては、1.5〜5.0kg/mのものが好ましい。遮音層3の面密度が1.5kg/mを下回る場合、十分な遮音性能が得られなくなり、面密度が5.0kg/mを上回る場合には、遮音層3自体の重量が重くなり、作業性が悪くなったり、当該防音部材を配管に取り付けた後に垂れや剥離が生じるといった不具合が生じることになる。
【0017】
また、この遮音層3は、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、酸化マグネシウム、アルミナ、酸化チタン、バライト、酸化鉄、酸化亜鉛、グラファイトなどのフィラーを充填することで、遮音性の改善を図ることができる。尚、フィラーは、十分な遮音性を確保しながらも、該遮音層3の機械的強度が低下することがないように、50〜95重量%の充填量で充填するのがよい。またフィラーの充填は、遮音性の改善以外に当該遮音層3の粘性の調整、配合コストの低減化も図られる。
【0018】
吸音層2は、排水継手内に発生した給排水音などの騒音を効果的に吸音するものである。このような機能を有する吸音層2として、本発明における排水システムにおいては、ウレタンチップ等の樹脂多孔体、グラスウール又はグラスファイバー等の繊維からなるマットを使用することができる。繊維を使用した場合、吸音層は無機繊維であれば耐火性をも備えることができる。
【0019】
この吸音層2として使用される、樹脂多孔体や繊維からなるマットは、シート内に入射した音(空気伝播音)が該シートを構成する孔内や繊維間で衝突を繰り返しながら通過する過程で、粘性摩擦等により熱エネルギーに変換する作用を奏し、この結果、吸音層2内に入射した音を減衰する機能を発揮する。
【0020】
本発明において、吸音層2が十分な空気伝播音の減衰効果(吸音性)を確保するためにグラスウール又はグラスファイバー等の無機繊維からなるマットの無機繊維の繊維密度は、10kg/m〜300kg/mが好ましい。この範囲であれば、十分な吸音性を確保することができ、かつ充分なマット形態を維持することができるので、グラスウール又はグラスファイバー等の無機繊維からなるマットが剥離しない。
【0021】
繊維長及び繊維密度の範囲は、十分な空気伝播音の減衰効果(吸音性)を確保するために必要な臨界的意義を持つ。なお、繊維からなるマットのなかでも、グラスウール又はグラスファイバー等からなるマットは、不燃材料であるガラス繊維から作製されているため、吸音層2自体も耐火性を有することになる。
【0022】
樹脂多孔体の製造方法は例えば発泡ウレタンの製造方法のように、周知の方法を採用することができる。グラスウール又はグラスファイバー等の無機繊維の製造方法は、特に限定するものではなく、従来からある火炎法、遠心法等の公知の方法によって製造される。この場合、シート形態の安定化を図る目的で、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル及びフェノール樹脂、デンプン等の集束剤を添加してもよい。
【0023】
吸音層2の厚さは好ましくは50mm以下、より好ましくは10mm以下であって3mm以上の範囲である。吸音層2の厚みがこの範囲であれば、嵩高になりすぎない範囲にて十分な吸音効果が得られる。このため、防音材13を 継手11の周面に固定したときに、継手11を施工場所のスペース内に配管することが可能になる。
【0024】
上述した排水管キャップや排水継手の好ましい形態は、防音材13をポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリスチレンなどの熱収縮性フィルムからなる被覆層4で覆い、これで排水管キャップや継手11を覆った後に熱収縮させることで、該熱収縮フィルムの熱収縮力によって防音材13を排水管キャップや継手11に締め付け固定されたものを挙げることができる。あるいは、排水管キャップや継手11を防音材13で覆い、その後に防音材13の外面を被覆層4で被覆した後にその熱収縮力により防音材13を継手11に締め付け固定してもよい。防音材13は、必ずしも排水管キャップや継手11に隙間無く被覆させる必要はなく、むしろ、継手11と防音材13の間にしわ等の隙間を発生させておけば、部分的に空気層を設けることにより、遮音層3の透過損失を向上させることができる。
さらに床スラブ12に埋め込まれる範囲の継手11の箇所に対応する、防音材13及び被覆層4の更に外面には、下記の材料からなる断熱部材7を設けることができる。
【0025】
図7に記載の排水継手は、継手11の上下それぞれに上部立て管20、下部立て管21を接続し、かつ横枝部には枝管23を接続してなる例を示した図であって、継手11と上部及び下部立て管20、21及び枝管23はいずれも防音材13により被覆されると共に、継手11と上部及び下部立て管20、21との接続部、継手11と枝管23の接続部には、これらの接続部の表面に露出している防音材13の端部を覆うようにジョイントテープ22を巻回している。
【0026】
継手11は場所により径が異なったり、枝部を有していたり等、直管よりも形状が複雑な形状である場合があるから、その継手11を防音材13で被覆するときには、マット状の防音材13を継手11に巻き付ける手段を採用するが、図8に示したように、予め防音材13を複数の構成部品からなるものとして分割して嵌め込むような形態にしてもよい。具体的には、継手11を巻回できるように、各装着部位に応じて継手11の外周に対応する内径を有する筒状にそれぞれ形成し、その一部に開放部8を設けておく。係る形状に防音材13を予め作製しておくことによって、開放部8から継手11に嵌め込むことによって装着することができる。このときに、開放部8に隙間が空かないように、互いに数ミリから数センチ重なり合わせることができるように形成してもよい。
継手11を防音材13で被覆する際には、継手11の表面と防音材13の吸音層2とを接着剤又は粘着剤により固定することができる。その結果、防音層3が継手11に対してずれることがない。
【0027】
こうして継手11を防音材13で被覆した後、必要に応じて断熱部材7又は区画貫通部処理テープ7でさらに被覆した継手11を、図9に示すように、床スラブ12等の防火区画を形成する防火壁又は床に設けられた防音排水管より大きな直径を有する貫通孔9に挿入し、この貫通孔の内周面と防音排水管の外周面との隙間にセメントモルタル又はロックウールモルタル10を充填して、排水継手を防火区画に配設することができる。
図9は継手が横枝部を備えていない場合の図であるが、このような継手に限定されず、本発明の排水管キャップを使用する継手は、図7に示すように枝管を接続するための横枝部を備えていても良い。
【0028】
以上のように防音材13により被覆された継手11は、具体的には、以下のようにして区画部に配設してもよい。シート状になった断熱部材7又は区画貫通部処理テープ7を、防音材13により被覆された継手11に巻回して被覆する。断熱部材7又は区画貫通部処理テープ7の被覆部分は、少なくとも貫通部を被覆し、貫通部以外の部分(すなわち、床上、床下の貫通部の上下部分)は、特に限定するものではなく、適宜必要により被覆してもよい。好ましくは、貫通部及び少なくとも貫通部下(床下)1mまで被覆するとよい。これにより、断熱部材7又は区画貫通部処理テープ7が被覆された排水システムとなる。
このとき、排水管キャップについても同様に断熱部材7によって、その外面を被覆されていても良い。
【0029】
断熱部材7又は区画貫通部処理テープ7が被覆された排水継手は、図9に示すように、防火区画を形成する防火壁または床スラブ12に設けられた排水継手より大きな直径を有する貫通孔9に挿入する。貫通孔9の内周面と断熱部材7又は区画貫通部処理テープ7が被覆された排水継手との間に隙間が形成されているので、この貫通孔9の内周面と、断熱部材7が被覆された排水継手の外周面との隙間に、セメントモルタル又はロックウールモルタル10を充填する。そして、セメントモルタル又はロックウールモルタルが硬化すると、壁面又は床面に形成されていた貫通孔9は図9に示すように閉塞され、断熱部材7又は区画貫通部処理テープ7が被覆された排水継手は固定されて、防火区画に配設される。
【0030】
ここで使用される断熱部材7には、グラスウール、ロックウール、グラスファイバー、シリカファイバー、セラミックファイバー、金属ファイバー、アルミナファイバー、カーボンファイバー等の無機繊維から選択される1種又は2種以上からなるマット材を断熱層31として使用される。これらの素材は、不燃性であるので断熱部材として優れ、消防法施行令第8条に規定する開口部のない耐火構造の床又は壁の区画(以下「令8 区画」という。)及び共同住宅等の住戸等間の開口部のない耐火構造の床又は壁の区画(以下「共住区画」という。)で要求される耐火性能を十分に満足させることができることに加え、吸音性能も備えているので、貫通部における防音性能をも向上させることができる。
そして、断熱部材7は、このような断熱層31に加えて必要に応じて下記に示す粘着層32及び/又は表皮材33を設けてなるものであり、区画貫通部処理テープ7は、断熱層31を有さず、粘着層32及び表皮材33からなるものである。断熱部材7及び区画貫通部処理テープ7は、セメントモルタル又はロックウールモルタルと排水継手とを均一な接着性によって接着させる機能を有し、さらに断熱層31は断熱作用をも発揮させるものである。
【0031】
また、図10に示すように、該断熱部材7は、断熱層31の裏面に粘着層32を設けてなってもよい。粘着層32を形成する材料としては、例えば、ブチルゴム(IIR)、イソプレンゴム(IR)、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、1,2−ポリブタジエンゴム(1,2−BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NBR)、エチレン−プロピレンゴム(EPM,EPDM)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、アクリルゴム(ACM,ANM)、エピクロルヒドリンゴム(CO,ECO)、多加硫ゴム(U)、シリコーンゴム(O)、フッ素ゴム(FKM,FZ)、ウレタンゴム(U)、ポリイソブチレンゴム、塩化ブチルゴム等のゴム類や、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体等の酢酸ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、炭化水素樹脂、アルキルフェノール樹脂、アクリロニトリル等の他、ロジン、ロジントリグリセリド、水素化ロジン等のロジン系樹脂が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
これらの中でも、本実施形態では、安価であり、粘着性にも優れるブチルゴム(IIR)又はイソプレンゴム(IR)又はアクリル系樹脂が好ましい。予め粘着層32を設けておけば、施工時に単に巻き付けるだけで防音排水管に接着することができるので、作業性が向上する。
【0032】
さらに、上記断熱層31の粘着層32の面と反対面に表皮材33を設けてもよい。表皮材33は不織布により形成されており、表皮材33を設けることによって、セメントモルタル又はロックウールモルタルが表皮材33の内部、すなわち、繊維間にセメントモルタル又はロックウールモルタルが入り込む。そして、セメントモルタル又はロックウールモルタルは、表皮材33を形成する各繊維に密着した状態で硬化し表皮材33に強固に接着される。
その結果、セメントモルタル又はロックウールモルタルによる排水継手の支持状態が良好なものとなり、そのがたつきが極力抑制されるようになる。尚、この表皮材33は、予め断熱層31からなる層と接着等の任意の手段により一体のものとして形成してもよいし、表皮材33に粘着層を設けておいて、必要に応じて現場で断熱層31に取り付けられるようにしてもよい。
【0033】
表皮材33に使用される不織布に使用される繊維としては、例えば、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維、芳香族ポリアミド繊維、グラスウール、ロックウール等の耐炎性繊維、難燃性繊維あるいは不燃性繊維が好ましい。この表皮材33の面密度は、5〜300g/mが好ましく、より好ましくは10〜100g/mである。表皮材33の面密度が5g/m未満の場合には、表皮材33を形成する繊維間の空隙面積が大きくなるため、その形状保持性が低下するおそれがある。このため、セメントモルタル又はロックウールモルタルと排水継手との均一な接着性が得られなくなる。一方、表皮材33の面密度が300g/mを超える場合には、モルタル10と排水継手との接着性に関してそれ以上の効果はみられず、非経済的である。
【0034】
配設された防音排水管は、区画貫通部において断熱部材を被覆した状態で設置されるので、令8 区画及び共住区画で要求される耐火性を十分に満たした防音排水管とすることができる。
このようにして、排水継手が貫通孔9に固定された後、立て管及び場合により枝管が接続される。接続される直管や枝管は金属製又は塩化ビニル樹脂製等の樹脂管でも良いが、いずれの材料の管であっても、立て管や枝管を防音材13で被覆して、排水が流下する際に発生する音を室内に漏れることがないようにする。
また、枝管に関して、管内を排水が流れる際に発生する音が管外部に漏れるようであれば、必要に応じて同様に防音材13及び表皮材7で被覆することが可能である。
【0035】
図11に示すように、金属製、塩化ビニル等の樹脂製、あるいは防音材が被覆されてなる耐火二重管からなる立て管や枝管に対しても、吸音層2、遮音層3からなる防音材13で被覆し、さらに外層15によって被覆することができる。外層15は、上記の熱収縮性フィルム層である被覆層4と同じでもよいが、樹脂による防音材13の外周に密着するカバー状のものとして構成しても良い。外層15は防音材13を保護する部材であり、現場にて立て管を被覆できるように、予め外層15にヒンジ16等を形成して開閉可能としておき、さらに保持部17を形成し、この保持部17において、面ファスナー、接着、ピン、ボタン等の周知の手段により外層15を、防音材13の外面に固定することが可能である。
【0036】
別の例として図12に示すように、外層15の保持部17を互いに嵌合させる構造としても良い。外層の取り外しはその嵌合をはずすことにより簡単に行うことが可能となる。
さらに、図12に示す外層15の変形例として、外層15を6角形などの多角形や非円形等とすることも可能である。このような形状の場合には、外層15と防音材13との間に部分的に空間が形成されるので、この空間がさらに防音性を向上させることになる。
【0037】
また、図13に示すように、立て管や枝管のような直管ではなく継手部分の継手11に対しても同様に、外層15内に吸音層2及び遮音層3からなる防音材13を形成し、これを該継手11に嵌合させるようにして被覆する。この手段によれば、継手11に対して防音材13による被覆を簡単に行うことができる。
【0038】
具体的な例としては、図14に示すように、継手部分の継手11の外面形状に適合するような内面形状を形成してなり、外層15の内部に遮音層3及び吸音層2からなる防音材13を密着させ、これをヒンジ16を介して開閉自在の構造とする。そのような構造のものを継手部分の継手11における、上部立て管を接続する部分と枝管を接続する横枝部が形成されてなる上部用の防音材18と、下部立て管が接続される下部用の防音材19の2つを形成する。
これら防音材18及び防音材19の2つのものをそれぞれ継手11に取り付け、ヒンジ16を閉じることにより継手11の全周を防音材13及び外層15で被覆し、保持部17により上記のような面ファスナー、接着、ピン、ボタン等の周知の手段により固定する手段を採用し得る。
その際には、例えば下部用の防音材19の上部端部であって、上部用の防音材18の下部端部と接する箇所に、該下部用の防音材19の上部端部の端面を覆うように粘着テープを貼りつけても良い。これにより、床下で発生した煙が下部用防音材19内の吸音層2であるグラスウール又はグラスファイバーシート等の無機繊維からなるマットの層内までは移動可能であるが、粘着剤付金属基材テープにより該下部用の防音材19の上部端部の端面において封鎖されているので、煙が上部用の防音材18の下部端部を通って、上階に拡がることを抑制する。
【0039】
これらの手段により防音材13で被覆した継手11及び立て管や枝管を用いて、排水継手に立管を、さらに、上記のように枝管を接続する場合には、図1に示すように排水継手と立管の接続部、及び、排水継手と枝管の接続部に、ジョイントテープ22を巻き付け、さらに必要であれば排水継手の主管部用防音材と横枝部用の防音材の継ぎ目に耐熱性粘着テープを巻き付ける。その耐熱性粘着テープとしては、金属製、ガラス繊維、無機繊維等からなる耐火性を備えた基材シートやセメントシート上に粘着剤層を形成してなるテープを使用することが可能である。
ジョイントテープ22としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等の各種樹脂フィルム上に、未加硫ブチルゴム、アクリル樹脂系粘着剤、シリコン樹脂系粘着剤等の各種の粘着剤層を設けてなるテープであり、中でもポリエチレンフィルムに未加硫ブチルゴム層を設けてなるテープが好ましい。
また、粘着剤付金属基材テープは、アルミガラスクロスにアクリル樹脂系接着剤層を介してガラスクロスを積層させ、さらにその上に未加硫ブチルゴム、アクリル樹脂系粘着剤、シリコン樹脂系粘着剤等の各種の粘着剤層を設けてなるアルミガラスクロステープ等であるが、不燃性テープであればよいので、基材はアルミガラスクロスに限定されず、アルミニウム、ステンレスや銅等の金属箔としても良い。
【0040】
ジョイントテープ22を防音材13で被覆した継手11と立管の接続部に巻き付けることにより、該接続部にて突き合わされた防音材13で被覆した継手11と立管のそれぞれを被覆している防音材13の端部、つまり防音材13間の隙間が露出しないように、防音材13で被覆した継手11と立管の両方の防音材13を跨ぐようにして、ジョイントテープ22の未加硫ブチルゴム側の面を防音材13側となるように巻き付けてなる状態とする。
さらに、必要に応じて、粘着剤付金属基材テープのアクリル樹脂系粘着剤層側の面を防音材13側となるように、排水継手の主管部用防音材と横枝部用の防音材の継ぎ目に巻き付けてなる状態となる。
【0041】
ジョイントテープ22を被覆した結果、防音材13で被覆した継手11と立管それぞれを被覆した防音材13の端部、及び防音材13間の隙間は外部に露出しないことになる。よって、該ジョイントテープの特に未加硫ブチルゴムという柔軟な材料、及びアクリル系樹脂粘着剤により振動が吸収されることも併せて、通常の使用時に継手11の防音材と立て管及び/又は枝管の防音材とを固定すると共に、防音材13の端部から排水により発生する音は、その隙間を通って室内に漏れることがなく、防音効果も発揮できることは明らかである。
【0042】
また火災時において、たとえ継手11内、あるいは継手11を被覆した防音材13の吸音層2を通って階下から煙が伝わる場合においても、その煙は高温になっていない上階において、継手11を被覆した防音材13の端部から室内に漏れることはない。つまり、継手11内及び立管内、あるいは継手11と立管を被覆した防音材13内の吸音層2内を上昇しても、その煙は室内に漏れることがないので、人が確実に避難することが可能である。
【符号の説明】
【0043】
1・・・キャップ基材
2・・・吸音層
3・・・遮音層
4・・・被覆層
5・・・ジョイントテープ
6・・・キャップ基材
7・・・断熱部材又は区画貫通部処理テープ
8・・・開放部
9・・・貫通孔
10・・・セメントモルタル又はロックウールモルタル
11・・・継手
12・・・床スラブ
13・・・防音材
14・・・管
15・・・外層
16・・・ヒンジ
17・・・保持部
18・・・上部用の防音材
19・・・下部用の防音材
20・・・上部立て管
21・・・下部立て管
22・・・ジョイントテープ
23・・・枝管
31・・・断熱層
32・・・粘着層
33・・・表皮材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水管用の管の端部、及び管が接続されていない継手の接続部を封止するための排水管キャップであって、該排水管キャップは基体を、吸音層及び遮音層の少なくとも一方を設けてなる防音材で被覆してなることを特徴とする排水管キャップ。
【請求項2】
吸音層が樹脂製多孔体及び繊維の1種以上からなる請求項1に記載の排水管キャップ。
【請求項3】
防音材は表面に表皮材を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の排水管キャップ。
【請求項4】
請求項1〜3に記載の排水管キャップを、管の端部又は管が接続されていない継手の接続部を封止するように設け、管の端部又は管が接続されていない継手の接続部と排水管キャップとの接続部にはジョイントテープが巻き付けられてなることを特徴とした排水システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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