説明

排水管及び排水管構造

【課題】騒音を低減しつつ、汚物などが付着し難い排水管及び前記排水管を備えた排水管構造を提供する。
【解決手段】排水管1は、管軸方向と直交する断面において、複数の円弧部1a,1aを管周方向に沿って配列した断面形状に形成された内壁10を有する。円弧部1aは、管外方向に向かって突出する曲面形状に形成される。隣り合う円弧部1a,1aの境界部分1bは、管内方向に向かって突出する曲面形状に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水管及び排水管構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物内には、水洗便所、台所、浴室、洗面所などから排出される生活排水(汚水)を公共下水道に導くための排水管が設置されている。排水管としては、内外壁が平滑な断面円形状の円管が一般的に使用されている。
【0003】
ところが、円管では、水が管軸方向及び管周方向への動きを許容された状態で流れるため、水流が乱れてしまい、水が内壁に衝突しながら流れていた。そして、水が内壁に衝突する衝突音が建物内まで伝播して騒音となっていた。また、横引き管(水平方向に延在する直線状の排水管)内を流れる水が縦引き管(鉛直方向に延在する直線状の排水管)内に流入する際に、水の流れが急激に切り替わると、横引き管と縦引き管とを接続する曲管(曲線状の排水管)付近で流速が急激に減速するため、後続(上流)の水が曲管内を流れる水に追突して、その弾みで跳ね上がり、曲管の内壁に衝突していた。そして、水が曲管の内壁に衝突する衝突音も建物内まで伝播して騒音となっていた。
【0004】
そこで、このような問題を解決するものとして、特許文献1には、排水管の内壁に、螺旋状の案内突条を設けた発明が開示されている。そして、当該構成を採用することによって、内壁に沿った旋回流が発生して、当該旋回流により水に遠心力が作用するため、水が内壁に沿うように流れる。そのため、水が内壁に衝突するのを抑制することが可能になり、騒音を低減させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−12658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、前記特許文献1に記載の発明では、案内突条が排水管の内壁から管内方向に突出して設けられ、かつ案内突条の先端に角部が形成されているため、汚物、油脂分など(以下、「汚物など」という。)が案内突条に付着して排水管内に滞留し易かった。そのため、排水管内が害虫や雑菌の温床となり易かったり、排水口から建物内に悪臭が発生し易かったりするという問題があった。
【0007】
本発明は、かかる問題を解決するために成されたものであり、騒音を低減しつつ、汚物などが付着し難い排水管を提供することを課題とする。
また、前記排水管を備えた排水管構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る排水管は、管軸方向と直交する断面において、複数の円弧部を管周方向に沿って配列した断面形状に形成された内壁を有し、前記円弧部は、管外方向に向かって突出する曲面形状に形成されており、隣り合う前記円弧部の境界部分は、管内方向に向かって突出する曲面形状に形成されていることを特徴とする。
【0009】
かかる構成によれば、排水管の内壁が複数の円弧部を管周方向に沿って配列した断面形状に形成されているとともに、円弧部が管外方向に向かって突出する曲面形状に形成されていることにより、排水管の内壁に、管軸方向に沿って延在する複数の溝が形成され、各溝に流入した水は管周方向への動きを規制された状態で管軸方向に沿って流れる。したがって、水流が整えられるため、水が内壁に衝突するのを抑制することが可能になり、騒音を低減させることができる。
また、溝に流入した水は周方向への動きを規制された状態で管軸方向に沿って流れるため、管軸方向の流速が高まり、曲管付近で流速が急激に減速し難くなる。したがって、後続の水が曲管内を流れる水に追突して、その弾みで跳ね上がるのを防止できるため、水が曲管の内壁に衝突するのを抑制することが可能になり、騒音を低減させることができる。
更に、隣り合う円弧部の境界部分が、管内方向に向かって突出する曲面形状に形成されていることにより、境界部分が汚物などの流れを阻害しないため、排水管の内壁に汚物などが付着し難くなる。
【0010】
また、前記排水管が管軸周りにねじられることにより、前記内壁に螺旋溝が形成されるように構成するのが好ましい。
【0011】
かかる構成によれば、排水管の内壁に形成された複数の溝が螺旋溝となり、内壁に沿った旋回流が発生して、当該旋回流により水に遠心力が作用するため、水が内壁に沿うように流れる。したがって、水が内壁に衝突するのを一層抑制することが可能になり、騒音を一層低減させることができる。
また、溝が曲面で形成されているので、螺旋状にしても汚物が付着し難くなる。
【0012】
本発明に係る排水管構造は、水平方向に沿って延在する直線状の第1の排水管と、前記第1の排水管の下流側に配置され、鉛直方向に沿って延在する直線状の第2の排水管と、前記第1の排水管と前記第2の排水管とを接続する曲線状の第3の排水管と、を組み合わせて構成された排水管構造であって、前記第1の排水管は、管軸方向と直交する断面において、複数の円弧部を管周方向に沿って配列した断面形状に形成された内壁を有し、前記円弧部は、管外方向に向かって突出する曲面形状に形成されており、隣り合う前記円弧部の境界部分は、管内方向に向かって突出する曲面形状に形成されていることを特徴とする。
【0013】
なお、第2の排水管や第3の排水管を、前記第1の排水管と同様の構成にしてもよい。
【0014】
かかる構成によれば、第1の排水管の内壁が複数の円弧部を管周方向に沿って配列した断面形状に形成されているとともに、円弧部が管外方向に向かって突出する曲面形状に形成されていることにより、第1の排水管の内壁に、管軸方向に沿って延在する複数の溝が形成され、各溝に流入した水は管周方向への動きを規制された状態で管軸方向に沿って流れる。したがって、水流が整えられるため、水が第1の排水管の内壁に衝突するのを抑制することが可能になり、第1の排水管−第3の排水管の全てに円管を使用した排水管構造に比較して、騒音を低減させることができる。
また、溝に流入した水は周方向への動きを規制された状態で管軸方向に沿って流れるため、管軸方向の流速が高まり、曲管付近で流速が急激に減速し難くなる。したがって、後続の水が曲管内を流れる水に追突して、その弾みで跳ね上がるのを防止できるため、水が曲管の内壁に衝突するのを抑制することが可能になり、騒音を低減させることができる。
更に、隣り合う円弧部の境界部分が、管内方向に向かって突出する曲面形状に形成されていることにより、境界部分が汚物などの流れを阻害しないため、第1の排水管の内壁に汚物などが付着し難くなる。
【0015】
また、前記第1の排水管が管軸周りにねじられることにより、前記内壁に螺旋溝が形成されるように構成するのが好ましい。
なお、第2の排水管や第3の排水管を、前記第1の排水管と同様の構成にしてもよい。
【0016】
かかる構成によれば、第1の排水管の内壁に形成された複数の溝が螺旋溝となり、内壁に沿った旋回流が発生して、当該旋回流により水に遠心力が作用するため、水が内壁に沿うように流れる。したがって、水が第1の排水管の内壁に衝突するのを一層抑制することが可能になり、騒音を一層低減させることができる。
また、溝が曲面で形成されているので、螺旋状にしても汚物が付着し難くなる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、騒音を低減しつつ、汚物などが付着し難い排水管及び前記排水管を備えた排水管構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態に係る排水管を備えた排水管構造の概略構成図である。
【図2】実施形態に係る排水管を管軸方向と直交する方向から見た断面図である。
【図3】第1の変形例に係る排水管の斜視図である。
【図4】第2の変形例に係る排水管を管軸方向と直交する方向から見た断面図である。
【図5】(a)は第3の変形例に係る排水管を管軸方向と直交する方向から見た断面図であり、(b)は第4の変形例に係る排水管を管軸方向と直交する方向から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態に係る建物について図面を参照して詳細に説明する。説明において、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0020】
図1は、実施形態に係る排水管1を備えた排水管構造100の概略構成図であり、図2は、実施形態に係る排水管1を管軸方向と直交する方向から見た断面図である。
図1に示すように、排水管構造100は、水平方向に沿って延在する直線状の横引き管2と、鉛直方向に沿って延在する直線状の縦引き管3,3と、横引き管2と縦引き管3とを接続する曲線状の曲管4,4と、を組み合わせて構成されている。なお、横引き管2は、上流側から下流側に向かうにつれて下り勾配となるように傾斜して配置されてもよい。
【0021】
本実施形態では、上流側から、縦引き管3、曲管4、横引き管2、曲管4、縦引き管3の順に配置されている。上流側に配置された縦引き管3の上端部は、図示しない水洗便所などの排水口に接続されており、下流側に配置された縦引き管3の下端部は、図示しない浄化槽や公共下水道に接続されている。
【0022】
第1の排水管である横引き管2と第3の排水管である曲管4とは、端面同士を突き合わせた状態で、横引き管2と曲管4との合わせ面6に鞘管5を外嵌することにより連結されている。また、第2の排水管である縦引き管3と曲管4とは、端面同士を突き合わせた状態で、縦引き管3と曲管4との合わせ面6に鞘管5を外嵌することにより連結されている。
【0023】
各排水管1は、水洗便所などから排出される水(生活排水)Wを、図示しない公共下水道に導くためのポリ塩化ビニル樹脂製の部材である。排水管1は、図2に示すように、中空形状を呈しており、管軸方向と直交する断面において、複数の(6つの)円弧部1a,1aを管周方向に沿って配列した断面形状に形成された内壁10を有している。
【0024】
円弧部1aは、管外方向に向かって突出する曲面形状に形成されている。当該円弧部1aを設けることにより、排水管1の内壁10には、管軸方向に沿って延在する断面曲面状の溝1cが形成されている。なお、円弧部1aの数、円弧部1aのピッチP,溝1cの深さD(円弧部1aの曲率)は、特に限定されるものではなく、排水管1の径、勾配、排出される水Wの流量、水Wの流速などを考慮して、適宜設定される。
【0025】
隣り合う円弧部1a,1aの境界部分1bは、管内方向に向かって突出する曲面形状に形成されている。すなわち、境界部分1bは、R状の面取り形状に形成されている。境界部分1bの周方向の長さは、円弧部1aの周方向の長さより小さく設定されている。
【0026】
次に、本実施形態に係る排水管1の動作及び作用効果について、図1及び図2を参照して説明する。
【0027】
水洗便所などから水Wが排出されると、排出された水Wが縦引き管3内に流れ込み、縦引き管3内を流下する。このとき、流れ込んだ水Wの一部は、縦引き管3の溝1cに流入して、管周方向への動きを規制された状態で管軸方向に沿って流下する。
そして、縦引き管3内を流下してきた水Wは、曲管4、横引き管2、曲管4及び縦引き管3の順に流れていき、公共下水道へ排出される。このとき、縦引き管3内を流下してきた水Wの一部は、曲管4、横引き管2、曲管4及び縦引き管3の溝1cに流入して、管周方向への動きを規制された状態で管軸方向に沿って流れる。
【0028】
以上説明した本実施形態によれば、内壁10に形成された溝1cに流入した水Wが、管周方向への動きを規制された状態で管軸方向に沿って流れることにより、水流が整えられるため、水Wが内壁10に衝突するのを抑制することが可能になり、騒音を低減させることができる。
【0029】
また、溝1cに流入した水Wが、周方向への動きを規制された状態で管軸方向に沿って流れることにより、管軸方向の流速が高まるため、曲管4付近で流速が急激に減速し難くなる。したがって、後続の水Wが曲管4内を流れる水Wに追突して、その弾みで跳ね上がるのを防止できるため、水Wが曲管4の内壁10に衝突するのを抑制することが可能になり、騒音を低減させることができる。
【0030】
更に、隣り合う円弧部1a,1cの境界部分1bが、管内方向に向かって突出する曲面形状に形成されていることにより、境界部分1bが汚物などの流れを阻害しないため、排水管1の内壁10に汚物などが付着し難くなる。
【0031】
以上、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して説明したが、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更することができる。
【0032】
本実施形態では、横引き管2、縦引き管3及び曲管4の全ての排水管1に溝1cを形成したが、これに限定されることなく、例えば、特に騒音発生源となる曲管4(横引き管2から縦引き管3へ流入する際に通過する曲管4)の直前に配置される横引き管2のみに溝1cを形成して、縦引き管3や曲管4に従来公知の円管を使用してもよい。この場合には、横引き管2と曲管4とを、例えば、曲管4内に横引き管2の端部を挿通した状態で、横引き管2と曲管4とにネジを挿通することにより連結し、かつ漏水を防止するために、横引き管2の外壁12と曲管4の内壁との間に、シール部材を介在させてもよい。なお、水Wの流れを阻害しないように、ネジの先端を横引き管2の内壁10から突出させないようにすることが好ましい。
【0033】
また、本実施形態では、排水管1がポリ塩化ビニル樹脂で形成されているが、これに限定されることなく、例えば、金属で形成されてもよいし、ポリエチレン樹脂、ポリプロプレン樹脂、メタクリル樹脂等のポリ塩化ビニル樹脂以外の熱可塑性樹脂で形成されてもよいし、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂で形成されてもよい。また、前記した樹脂を無機繊維、有機繊維、炭素繊維などの繊維によって強化したものを用いてもよい。
【0034】
また、図3に示すように、排水管1が管軸周りにねじられてもよい。
本変形例では、排水管1をねじって(図3中の符号A,A参照)、溝1cを螺旋溝としている。なお、本変形例は、横引き管2や曲管4に適用されてもよい。また、排水管1は、1mで1回転する程度にねじるのが好ましい。
【0035】
次に、本変形例に係る排水管1の製造方法について説明する。本変形例に係る排水管1の製造方法は、加熱工程と、ねじり工程と、冷却工程と、を含んでいる。
【0036】
はじめに、前記した実施形態に係る排水管1を原管として、図示しない製造装置に当該原管の両端部を固定した状態で、熱変形可能な温度まで原管を加熱する。
そして、熱変形可能な温度まで達したら、原管を加熱しつつ管軸回り(図3中の時計方向)にねじる。
原管を所望の形状までねじった後は、冷却して硬化させる。
【0037】
以上説明した変形例によれば、排水管1の内壁10に形成された複数の溝1cが螺旋溝となり、内壁10に沿った旋回流が発生して、当該旋回流により水Wに遠心力が作用するため、水Wが内壁10に沿うように流れる。したがって、水Wが排水管1の内壁10に衝突するのを一層抑制することが可能になり、騒音を一層低減させることができる。
更に、溝1cが曲面で形成されているので、螺旋状にしても汚物が付着し難くなる。
【0038】
また、本実施形態では、排水管1の外壁12が内壁10と同一の断面形状に形成されているが、これに限定されることなく、外壁12の断面形状は適宜変更してよい。例えば、図4に示すような円形状に形成されてもよいし、図5(a)に示すような四角形状に形成されてもよいし、図5(b)に示すような楕円形状に形成されてもよい。
【符号の説明】
【0039】
100 排水管構造
1 排水管
10 内壁
12 外壁
1a 円弧部
1b 境界部分
1c 溝
2 横引き管(第1の排水管)
3 縦引き管(第2の排水管)
4 曲管(第3の排水管)
5 鞘管
6 合わせ面
W 水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管軸方向と直交する断面において、複数の円弧部を管周方向に沿って配列した断面形状に形成された内壁を有し、
前記円弧部は、管外方向に向かって突出する曲面形状に形成されており、
隣り合う前記円弧部の境界部分は、管内方向に向かって突出する曲面形状に形成されていることを特徴とする排水管。
【請求項2】
前記排水管が管軸周りにねじられることにより、前記内壁に螺旋溝が形成されることを特徴とする請求項1に記載の排水管。
【請求項3】
水平方向に沿って延在する直線状の第1の排水管と、前記第1の排水管の下流側に配置され、鉛直方向に沿って延在する直線状の第2の排水管と、前記第1の排水管と前記第2の排水管とを接続する曲線状の第3の排水管と、を組み合わせて構成された排水管構造であって、
前記第1の排水管は、管軸方向と直交する断面において、複数の円弧部を管周方向に沿って配列した断面形状に形成された内壁を有し、
前記円弧部は、管外方向に向かって突出する曲面形状に形成されており、
隣り合う前記円弧部の境界部分は、管内方向に向かって突出する曲面形状に形成されていることを特徴とする排水管構造。
【請求項4】
前記第1の排水管が管軸周りにねじられることにより、前記内壁に螺旋溝が形成されることを特徴とする請求項3に記載の排水管構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−132516(P2012−132516A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285565(P2010−285565)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000174884)三井ホーム株式会社 (87)
【Fターム(参考)】