説明

排水管継手

【課題】複数層を有する建物の上階と下階とを仕切る床スラブを貫通した状態で埋め戻し固定され、床スラブに埋め戻される埋設部分の内側に流下する排水に直接作用して流れを調節する張り出し部を備える排水管継手において、通常使用時に音の発生を抑えることができ、且つ、排水設備の更新時には埋め戻しの埋戻し材を破壊することなく床スラブから引き抜くことを可能とする。
【解決手段】張り出し部は、管壁が外面側に凹みを形成しながら管内方に入り込んで形成され、凹みが充填材Jで満たされており、床スラブCSに埋め戻される埋設部分21aから床スラブの下側に垂れ下がる垂下部分21bにわたる下側部位21は、外面の形状が、周方向には凹凸がなく下方に向かって段階的に外径が小さくなる形状とされており、下端に下階の排水立て管51の受け口53に挿入して接続される直管状の下端直管部33が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水管継手に関する。より詳しくは、複数層を有する建物の上階と下階とを仕切る床スラブを貫通した状態で埋め戻し固定され、床スラブに埋め戻される埋設部分の内側に流下する排水に直接作用して流れを調節する張り出し部を備える排水管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数層を有する建物の排水設備において、排水管継手を床スラブの貫通孔に挿通させた状態で貫通孔をモルタル等で塞ぐことで、排水管継手を床スラブに直接埋め戻して設置することがある。そして、床スラブに埋め戻される排水管継手には、その内部に張り出し部を備えているものがある(下記特許文献1)。張り出し部は、その上面に流下する排水が当たることで、主として、流下する排水の流れの向きを変えたり、速度を落としたりして排水の流れを調節することを目的として設けられ、排水性能の向上に大きく貢献している。その一方で、張り出し部の上面に排水が衝突することで生じる音については、かねてから問題視されている。特に、排水管継手が床スラブに直接埋め戻される場合には、その衝突音が床スラブにダイレクトに伝播して住人に伝わるため切実な問題である。張り出し部の一つの形態として、外面に凹部を設けて管壁を内方に凹ませる所謂肉ぬすみ形態がある。肉ぬすみ形態は、管壁の肉厚変化を抑えることでヒケなどの鋳造欠陥や成型不良を起こしにくくして高い剛性を確保しやすい。その上、剛性の高さと、流下する排水が当たる上面の全周が自由状態ではなく管壁に支持された形状であることがあいまって、排水が当たったときに振動しにくく音が発生しにくい。したがって、振動および音の発生そのものを抑えることで、音が住人に伝わるのを抑えることができる点で優れている。
【0003】
ところで、床スラブに直接埋め戻された排水管継手を更新するにあたっては、まず、排水管継手を床スラブから撤去しなければならない。従来、既存の排水管継手を床スラブから撤去する際には、下記特許文献2に示されるように、排水管継手の形状に関わらず常に、床スラブの貫通孔と排水管継手との間を埋めるモルタル(埋戻し材)をはつり機等で破壊したうえで、作業者が排水管継手を引っ張り上げて、床スラブからを引き抜く方法が採られている。埋戻し材の破壊にあたっては、振動や騒音が床スラブを伝わり直接的に居住空間へ伝播する。しかしながら、このことは、従来、当たり前のこととして認識されており、あまり問題視されてはいなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−104762号公報
【特許文献2】特開2007−138428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、近年の在宅介護家庭の増加などを鑑み、従来の常識にとらわれることなく、住環境を一層の改善すべく熟考を重ねた。その結果、排水設備の更新時においても住人の日常生活への影響に配慮し、できるだけ振動や音を生じさせないために、埋戻し材を破壊することなく排水管継手を床スラブから引き抜くことを独自に想起した。しかしながら、排水管継手が床スラブに直接埋め戻されている場合には、張り出し部が肉盗み形態であると、外面の凹部に埋戻し材が入り込んで凝固しているため、単に排水管継手を引っ張るだけでは引き抜くことができず、現実的には埋戻し材の破壊は避けられなかった。したがって、通常使用時に音の発生を抑えることと、更新時における埋戻し材の破壊工程の廃止は両立させることができなかった。
【0006】
そこで、本発明の課題は、複数層を有する建物の上階と下階とを仕切る床スラブを貫通した状態で埋め戻し固定され、床スラブに埋め戻される埋設部分の内側に流下する排水に直接作用して流れを調節する張り出し部を備える排水管継手において、通常使用時に音の発生を抑えることができ、且つ、排水設備の更新時には埋戻し材を破壊することなく床スラブから引き抜くことを可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は次の手段を採用する。
本発明は、複数層を有する建物の上階と下階とを仕切る床スラブを貫通した状態で埋め戻し固定され、床スラブに埋め戻される埋設部分の内側に流下する排水に直接作用して流れを調節する張り出し部を備える排水管継手であって、前記張り出し部は、管壁が外面側に凹みを形成しながら管内方に入り込んで形成され、前記凹みが充填材で満たされており、床スラブに埋め戻される埋設部分から床スラブの下側に垂れ下がる垂下部分にわたる下側部位は、外面の形状が、周方向には凹凸がなく下方に向かって段階的に外径が小さくなる形状とされており、下端に下階の排水立て管の受け口に挿入して接続される直管状の下端直管部が設けられていることを特徴とする。
【0008】
かかる排水管継手によれば、張り出し部の形態が、管壁が外面側に凹みを形成しながら管内方に入り込んで形成された所謂肉ぬすみ形態であるため剛性が高く、流下する排水が当たる上面の全周が自由状態でなく管壁に連続する形状であることがあいまって、振動および音の発生を抑えることができる。そして、張り出し部の外面側の凹みが充填材で満たされ、床スラブに埋め戻される埋設部分から床スラブの下側に垂れ下がる垂下部分にわたる下側部位の外面が、周方向には凹凸がなく下方に向かって段階的に外径が小さくなる形状とされ、下端に直管状の下端直管部が設けられている。埋設部分の外面において周方向に凹凸が無いため、排水管継手の外面形状に埋戻し材が入り込むことがない。また、埋設部分から下の下側部位の外面が、下方に向かって段階的に外径が小さくなる形状、言い換えれば、上方に向かって段階的に外径が大きくなる形状であるため、排水管継手を上方へ変位させると、埋設部分の外形を型にして形成された埋戻し材の貫通孔を、それ以下の部分が確実に通過できる。したがって、排水設備の更新の際に、埋戻し材を破壊することなく排水管継手を床スラブから引き抜くことが可能であり、埋戻し材の破壊に伴う振動・騒音を無くすことができる。
【0009】
本発明の排水管継手は、床スラブの下側に垂れ下がる垂下部分に、下方に向かって外径が小さくなることで外面に段差が形成されており、該段差の下側に連続して前記下端直管部が設けられているのが好ましい。この場合、下方に向かって外径が小さくなっているため、埋戻し材を破壊することなく床スラブから引き抜くことが可能であって、排水管継手の更新に際して埋戻し材の破壊に伴う振動・騒音が生じないのはもとより、振動・騒音を抑制しながら排水立て管だけを更新することのできる排水設備を容易に構築することができる。というのも、段差が、下端直管部に外嵌された筒状の部材に当たることで該部材が相対的に上方へ変位しようとするのを止める、言い換えれば、当該排水管継手が相対的に下方へ変位しようとするのを止めるストッパとして機能することができるためである。排水設備の新設時、下端直管部の外側に筒状のスペーサー部材を嵌め、下端直管部を下階の排水立て管の上部の受け口に挿入して排水管継手を排水立て管に積み上げれば、スペーサー部材の長さ分だけは受け口に挿入されず、残りの一定長さだけが挿入された状態で排水管継手が位置決めされる。その状態で排水管継手を床スラブに埋め戻しておよび、あるいは支持具、吊り具等を用いて固定した後、スペーサー部材を取り除くと、スペーサー部材の長さ分だけ排水立て管を上方への変位させることが可能な状態となる。それにより、排水立て管を上方へ変位させて下側の排水管継手から引き抜き、斜め下方に変位させて上側の排水管継手から引き抜くことで、上下の排水管継手が固定されたままでも排水立て管を切断することなく更新することが可能となる。排水立て管を切断しないことで、それに伴う振動・騒音を生じることなく排水立て管のみを更新することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の排水管継手よれば、通常使用時に流下する排水が張り出し部に当たることによる音の発生を抑えることができ、且つ、排水設備の更新時には埋戻し材を破壊することなく床スラブから引き抜くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態1に係る排水設備の正面図である。
【図2】図1に示される排水設備のII−II線断面図である。
【図3】図2に示される排水管継手のIII−III線断面図である。
【図4】図3に示される排水管継手のIV−IV線断面図である。
【図5】図3に示される排水管継手のV−V線断面図である。
【図6】図1に示される排水設備の正面図であり、排水設備の新設時に排水管継手を配管する過程を示す図である。
【図7】図1に示される排水設備の正面図であり、排水管継手を更新する過程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[実施形態1]
図1〜7を参照しながら本発明の一実施形態について説明する。本実施形態に係る排水設備H1は、立て管系統に排水管継手11と排水立て管51を備えている。まず、この排水設備H1を構成する各部材について説明する。
【0013】
<排水管継手11について>
図1に示されるように、排水管継手11は、複数層を有する建物の上階Aと下階Bとを仕切る床スラブ(コンクリートスラブ)CSを貫通して各階に設置されている。排水管継手11は、床スラブCSに形成された貫通孔CHに挿通されてモルタルMrで埋め戻されて床スラブCSに固定されている。排水管継手11は、上階Aの排水立て管51(51a)及び排水横枝管61により導かれた排水を合流させて下階Bの排水立て管51(51b)に流入させる。排水管継手11は、床スラブCSの上側(上階A)に露出している部分である上側部位13の上端部に上受け口15を備えており、上階Aの排水立て管51(51a)の直管状の下端部が挿入されて接続されている。また、上側部位13には、胴周りに突出して複数の横枝管受け口17が設けられており、排水横枝管61の末端が挿入されて接続されている。なお、図1において、紙面手前に延びる排水横枝管は図示を省略している。
【0014】
排水管継手11の床スラブCSに埋没している埋設部分21aから床スラブCSの下側(下階B)に露出している垂下部分21bにわたる下側部位21は、上から順に、胴部23、テーパ縮径部25、第1の直管部31及び第2の直管部33が連なって構成されている。胴部23、テーパ縮径部25及び第1の直管部31の上側の一部分が床スラブCSに埋没しており、第1の直管部31の下側の残りの部分と第2の直管部33とが床スラブCSから下階Bに垂下している。
【0015】
胴部23は、外側から見ると凹凸のない直管状である。図2等に示されるように、内側には張り出し部27,29が設けられている。張り出し部27,29は、管の軸心から見て左下がりに傾斜するように管内壁から管内方に張り出しており、相互に対向する二箇所に設けられている。張り出し部27,29は上下位置が互いに重複しつつもずれた位置に設けられており、胴部23からテーパ縮径部25に跨って設けられている。この張り出し部27,29に流下する排水が当たることで排水を減速させながら旋回させることができる。その結果、排水時の管内の圧力変動が抑制されスムーズに排水することができる。
【0016】
張り出し部27,29は、図3〜図5に示されるように、周囲の管壁12が、その厚みを極端に変えることなく管内方に入り込んで形成されている。排水管継手11は、鋳物を主体として構成されており、その全体のうち張り出し部27,29の形成されている部分以外の部分は、基本的には鋳鉄からなる一重構造の管壁で形成されている。その鋳鉄製の管壁12が、管内方に入り込んで張り出し部27,29が形作られているのである。そのため、張り出し部27,29の外面側には鋳鉄の凹部27u,29uが形成されており、その凹部27u,29uは充填材Jで満たされている。したがって、排水管継手11の外面は、張り出し部27,29の形成されている部分は充填材Jで構成されている。充填材Jは、鋳鉄製の周囲の管壁12と段差無く滑らかな外面形状を形成しており、胴部23の外面形状は凹凸のない直管状であり、テーパ縮径部25の外面形状は凹凸のない略テーパ形状となっている。
【0017】
本実施形態では、充填材Jとして、珪砂に水ガラスを配合してCO2ガスとの反応により硬化させたものを用いている。充填材Jを予め鋳物とは別体として形成しておき、凹部27u,29uに嵌め込んで接着する。接着には両面テープあるいは接着剤を用いることができる。充填材Jとしては、他の耐火材も好ましく用いられ、例えば、珪砂に少量の熱可塑性フェノールレジンを混合して焼成したもの、珪酸カルシウムを主原料として繊維材料を混合した成形材料、あるいはモルタル等が挙げられる。また、凹部27u,29uを型にして充填材Jの原料を流し込み、成型してもよい。
【0018】
第1の直管部31と第2の直管部33とは、図2に示されるように、内径は同じであり、内面は段差のない一続きの直管形状である。管壁は、第2の直管部33に比べて第1の直管部31の方が厚く、第2の直管部33は第1の直管部31に比べて外径が小さくなっている。それにより、第1の直管部31と第2の直管部33との間には外面に段差35が形成されている。本実施形態では、第2の直管部33の厚みは約5mmであり、第1の直管部31の厚みは9〜10mm程度であり、間に4〜5mmの段差35が形成されている。段差35より下に延びる第2の直管部33が下階Bに配管された排水立て管51(51b)の上端に設けられた上部受け口53に挿入されて排水立て管51と接続されている。この第2の直管部33が本発明の下端直管部に相当する。この排水設備H1では、排水管継手11が上下の床スラブCSに固定されたままで間の排水立て管51だけを更新することもできるように、下端直管部(第2の直管部)33が、上部受け口53に対して底付き状態ではなく、一定長さのみが挿入されて更に挿入することのできる余地を残した状態となっている(図2参照)。その構成の詳細については、排水立て管51の更新方法とともに後で詳述する。
【0019】
<排水立て管51>
排水立て管51は、直管の上端部に排水管継手11の下端直管部(第2の直管部)33を挿入可能な上部受け口53を備えており、直管状の排水用塩ビライニング鋼管(DVLP)である立て管本体55と、その上端部に組み付けられた受け口ソケット71とで構成されている。受け口ソケット71は、下部に立て管本体55と同径の頸部73を有し、頸部73の上側に上方へ広がる拡開部75を介して、下端直管部(第2の直管部)33を挿入可能な略筒状の部分として上部受け口53が形成されている。上部受け口53の上端付近の内面には、Oリングパッキン53pが保持されており、下端直管部(第2の直管部)33と水密に接続されている。上部受け口53は、その内面形状がOリングパッキン53pの保持位置より下方に向かって広がった形状となっており、排水立て管51の更新の際に、下端直管部(第2の直管部)33に対して排水立て管51を傾けるためのスペースを形成している。
【0020】
受け口ソケット71の頸部73と立て管本体55とは、受け口ソケット71の下端に設けられた所謂メカニカル形式の接続構成77で接続されている。その接続構成77は、図2に示されるように、受け口ソケット71の下端に形成された下部受け口77uに立て管本体55の上端部を挿入した状態で、立て管本体55に外嵌した別体のフランジ部材77fを、間に環状のパッキン77pを挟んで下部受け口77uの鍔部77tにボルト・ナット77bで締結したものである。その締結力により、鍔部77tとフランジ部材77fとに挟まれた環状パッキンが変形して立て管本体55の外周面にも密着することで、受け口ソケット71と立て管本体55とが水密に接続されている。
【0021】
<排水設備H1の施工方法について>
排水設備H1の立て管系統は、基本的には、排水立て管51と排水管継手11とを交互に積み上げることにより施工することができる。排水立て管51に排水管継手11を積み上げるときは、図6に白抜き矢印Xとして示されるように、排水管継手11を床スラブCSの貫通孔CHに挿通させて下方に変位させ、下階Bに配管された排水立て管51の上部受け口53に下端直管部(第2の直管部)33を挿入する。その際、下端直管部(第2の直管部)33には、筒状のスペーサー部材81を外嵌しておく。スペーサー部材81が段差35に当たるとともに上部受け口53の上面に当たった状態となることで、排水管継手11の変位は止められる。その結果、下端直管部(第2の直管部)33は、スペーサー部材81の長さ分だけは上部受け口53に挿入されず、その下側の残りの一定長さのみが上部受け口53に挿入された状態で位置決めされる(図1参照)。そして、その状態で床スラブCSの貫通孔CHをモルタルMrで埋めて排水管継手11を床スラブCSに固定する。排水管継手11に排水立て管51を積み上げるときは、排水管継手11の上受け口15に排水立て管51の下端部を挿入し、上受け口15に底付きになるまで差し込んで排水管継手11の上に立設される。スペーサー部材81は、施工後に取り除くことができるものであり、例えば、径方向の断面で見て半円形の二部材をつき合わせて分解可能に接合して筒状にしたものである。スペーサー部材81は、施工後、排水立て管51のみを更新する前までには取り除かれる。
【0022】
<排水設備H1の更新方法について>
排水設備H1の排水管継手11と排水立て管51とを更新する場合には、まず、施工時とは逆に、排水管継手11と排水立て管51とを上から順に引き抜いて撤去する。そして、新たな排水管継手11と排水立て管51とを下から順に積み上げて配管する。排水管継手11を撤去する際には、モルタルMrを破壊することなく引き抜けばよい。排水管継手11は、埋設部分21aの外面の周方向には凹凸がないためモルタルMrのくい込みがなく、埋設部分21aより下の下側部位21が下方に向かって段階的に外形が小さくなる形状であるから、図7に白抜き矢印Yで示されるように上方へ変位させることで、排水管継手11の埋設部分21aの外面形状を型にして形成されたモルタルMrの貫通孔MHをそれ以下の部分が確実に通過できる。そのため、モルタルMrを破壊することなく引き抜くことができる。そうすると、排水管継手11の撤去後には、床スラブCSには、排水管継手11の外面形状を型にしてモルタルMrで形成された貫通孔MHが残る。新たな排水管継手11を配管する際には、このモルタルMrの貫通孔MHを利用し、白抜き矢印Zで示されるように、ちょうど同じ形の排水管継手を嵌め込んで配管すればよい。また、モルタルMrの貫通孔MHよりもスリムな排水管継手を配管して隙間をモルタル等の目地材で埋めてもよい。
【0023】
<排水設備H1の排水立て管51だけを更新する方法について>
排水設備H1の排水立て管51のみを更新する場合は、施工時に用いたスペーサー部材81は予め取り除いておく。すると、スペーサー部材81の長さ分だけは、上部受け口53で下端直管部(第2の直管部)33をのみ込みながら排水立て管51を上方へ変位させることができる。スペーサー部材81の長さは、排水立て管51を上方へ変位させると排水立て管51の下端部が排水管継手11の上受け口15から引き抜かれる長さに設定されている。したがって、先ず、排水立て管51を上方へ変位させて下の排水管継手11から引き抜く。次いで、排水立て管51を斜めに傾けながら下方へ変位させて上部受け口53を上の下端直管部(第2の直管部)33から引き抜く。これにより、排水立て管51を切断することなく、固定された上下の排水管継手11の間から撤去することができる。そして、逆の手順で新たな排水立て管51を配管することで排水立て管51のみを更新することができる。
【0024】
以上の構成の排水設備H1によれば、以下の作用効果を奏する。
まず、排水管継手11は、内部の張り出し部27,29により、排水の流れをコントロールして排水時の圧力変動を抑え、スムーズに排水することができる。そして、この張り出し部27,29は周囲の管壁が管内方に入り込んで形成されており、外側に凹部27u,29uが形成されることで鋳鉄の肉厚が極端に変化しないので、鋳造後の内部応力を小さく抑えることでヒケなどの鋳造欠陥を防ぐとともに剛性も高められている。そのうえ、張り出し部27は、図3によく示されるように、流下する排水が当たる上面27aの周囲がすべて周囲の管壁12に繋がっており自由状態ではないため、流下する排水が上面27aに当たった際に張り出し部27が振動しにくく音の発生を抑えることができる。
【0025】
また、図7に示されるように、排水設備H1の更新時には、モルタルMrを破壊することなく排水管継手11を床スラブCSから引き抜くことができる。したがって、モルタルMrの破壊作業をしないことで、それに伴う振動・騒音はもちろん粉塵の発生等を無くすことができる。また、排水管継手11を引き抜いた後に残るモルタルMrの貫通孔MHに同じ形の排水管継手を配管すれば、埋め戻し作業が不要であって作業工程が減るとともに、埋め戻しのための材料が不要となる。排水管継手11よりもスリムな排水管継手を配管した場合でも、埋め戻しのための材料が少なくて済む。
【0026】
また、排水管継手11は、下端直管部(第2の直管部)33の上端に径方向外側に広がる段差35が形成されており、下端直管部(第2の直管部)33にスペーサー部材81を外嵌しておきさえすれば、単に排水立て管51に積み上げるだけで排水立て管51の上部受け口53に対する下端直管部(第2の直管部)33の挿入長さを規制することができる。したがって、排水立て管51を切断することなく上下の排水管継手11から引き抜いて更新することのできる排水設備H1を容易に新設することができる。かかる排水設備H1によれば、排水立て管51だけを更新する際に排水立て管51の切断作業をしないことで、それに伴う振動・騒音の発生を無くすことができる。
【0027】
なお、上記実施形態1は、その他種々の変更例が考えられるものである。
排水設備が、切断を伴わず排水立て管だけ更新することを要せず、配管時に排水立て管51の上部受け口53に対する下端直管部(第2の直管部)33の挿入長さを規制する必要が無い場合には、排水管継手11に段差35を形成せず、第1の直管部31と第2の直管部33とを肉厚の等しい外面もストレートな直管状としてもよい。
また、排水管継手11は、上受け口15を分割形成して連結する所謂二体型としてもよい。
また、排水管継手11は、鋳鉄でなく硬質塩化ビニル等の樹脂を主体として形成してもよい。
また、排水管継手11は、樹脂製の主体部分を複数の部材を組み立てて一体化して形成することもできる。
【0028】
なお、本発明の応用技術として、例えば樹脂製の主体部分を複数の部材を組み立てて一体化して形成する場合などに、下側部位における樹脂製の主体部分の外面において、全周あるいは部分的にそれ以下の部分よりも凹んでいる部分が生じる場合には、その凹んでいる部分を充填材で満たして、周方向には凹凸がなく下方に向かって段階的に外径が小さくなる形状として床スラブから引き抜き可能とすることができる。
【符号の説明】
【0029】
11 排水管継手
12 管壁
21 下側部位
21a 埋設部分
21b 垂下部分
23 胴部
25 テーパ縮径部
27a 上面
27,29 張り出し部
27u,29u 凹部
31 第1の直管部
33 第2の直管部
35 段差
51 排水立て管
53 上部受け口
55 管本体
H1 排水設備
CS 床スラブ
CH 貫通孔
J 充填材
Mr モルタル


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数層を有する建物の上階と下階とを仕切る床スラブを貫通した状態で埋め戻し固定され、床スラブに埋め戻される埋設部分の内側に流下する排水に直接作用して流れを調節する張り出し部を備える排水管継手であって、
前記張り出し部は、管壁が外面側に凹みを形成しながら管内方に入り込んで形成され、前記凹みが充填材で満たされており、
床スラブに埋め戻される埋設部分から床スラブの下側に垂れ下がる垂下部分にわたる下側部位は、外面の形状が、周方向には凹凸がなく下方に向かって段階的に外径が小さくなる形状とされており、下端に下階の排水立て管の受け口に挿入して接続される直管状の下端直管部が設けられていることを特徴とする排水管継手。
【請求項2】
請求項1に記載の排水管継手であって、
床スラブの下側に垂れ下がる垂下部分には、下方に向かって外径が小さくなることで外面に段差が形成されており、該段差の下側に連続して前記下端直管部が設けられていることを特徴とする排水管継手。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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