説明

排水配管

【課題】縦管、横管に関わりなく、同一の自封装置を使用し、且つ自封装置の動作を確実なものとし、配管内の排水残りを防止することが可能である排水配管を提供する。
【解決手段】排水配管1は、偏芯管2、自封装置10、点検栓20より構成され、偏芯管2は上流部3、偏芯部4、下流部5から成る管体であり、偏芯部4に、自封装置10を取り付けた点検栓20を有する縦管・横管のどちらとしても使用可能な兼用管で、自封装置10は上流部3の軸方向に対して傾斜して固定されており、排水流路を屈折させ、点検栓20に設けられた流路形成部23は上流部3と略同径であり、点検栓20が固定された際には上流部3と面一に連続し、排水配管1を横管として使用した際に排水を残留させない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空調機器や潜熱回収型燃焼装置等のドレン(凝結水)用排水配管、及び洗面台、シンク等の槽体に取り付けられる排水配管に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来においては、洗面台、シンク等、使用によって排水が発生する家庭用設備が知られている。これら家庭用設備においては、槽体下部に、使用によって生じた排水を排水口から床下配管へ導く排水配管が備えられている。
【0003】
上記家庭用設備における排水配管では、単純に排水を下水側へと繋ぐと、下水側と家庭用設備が連通していることにより、下水側より臭気や害虫が配管内部を通り、屋内に侵入することとなる。そのため、排水配管においては、排水配管の途中に、排水管と連結し、下水からの害虫、及び異臭を防ぐための排水トラップが設けられている。
【0004】
また空調機器や潜熱回収型燃焼装置の排水配管においては、その使用に際し凝結水が発生する。該凝結水は、ドレン管を通じて外へ流さなければならないが、この場合においても前述の排水機器の場合と同様に、下水からの害虫、及び異臭を防ぐための排水トラップが設けられている。
【0005】
ところで、前記下水からの害虫、及び異臭を防ぐための排水トラップとして、内部に封水と呼ばれる排水の溜まり部分を設け、流路の一部を排水で満たすことによって封じ、臭気や害虫類の逆流を防ぐトラップ機能を備えた封水式排水トラップと呼ばれる排水トラップが一般的である。
【0006】
しかし、上記封水式排水トラップにおいては、長期の留守等の理由で長期期間排水機器等を使用しないと内部の封水が蒸発し、流路が開放されて臭気や害虫類の逆流を防ぐことが出来なくなる、破封と呼ばれる現象を生じる問題がある。特に冬場の空調機器の使用においては、凝結水が室内機側から発生せず、排水トラップ内部に新しい排水(封水)が追加されない為に、夏場の使用よりも破封が生じやすい。
【0007】
そこで、封水を使用しない非封水式排水トラップが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011−089359
【特許文献2】特開2010−7358
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記非封水式排水トラップとして、例えば図2に記載されたような、略筒体状であって、可撓性を有する素材から成る、自封トラップと呼ばれる自封装置が知られている。該自封装置は一端が開口して流入口を形成し、他端に流出口を形成している。該流出口は、筒体の中間部より、断面略三角形状となる様、対向する面同士に傾斜が設けられ、該面同士が当接する構成によって流路を閉塞している。自封装置は該構造より、流入口からの空気、排水等の侵入による一定の圧力が生じた際には流出口の閉塞が解除されて排水を通すが、流出口から臭気等の侵入による圧力が生じても、流出口は閉塞を保ち、上流側へ臭気、害虫等が逆流することはない。
【0010】
また、排水配管は使用者や施工者の都合に応じて、その都度種々のレイアウトに変更して使用されるものである。しかし横管内に自封装置を設けた場合、流出口を開口するに足る一定の圧力を得ることは難しく、自封装置の閉塞の解除が成されるまで、横管内に大量の残留排水が充満してしまうという問題があった。
【0011】
そこで、例えば図3に示したように、横管配置用に特化した形状の自封トラップを横管に配置する方法が知られているが、この場合、横管用の自封トラップを新たに用意する必要があった。又、この様に横管用に形状を特化させた自封トラップであっても、流出口を開口するに足る一定の圧力を得ることは容易ではなかった。更に、自封トラップの固定の為の突起が管内下方から突出しているため、該突出部から上流にかけては、常に排水が残留していた。つまり、自封装置の閉塞の解除が成されるまで横管内に大量の残留排水が充満してしまうという問題は何ら解決されていなかった。
【0012】
そこで本発明は、上述した従来技術の問題に鑑み、縦管、横管に関わりなく、同一の自封装置を使用し、且つ自封装置の動作を確実なものとし、配管内の排水残りを防止することが可能である排水配管を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、
排水機器の排水を処理する排水配管において、
前記排水配管は流入口と流出口を有する自封装置を備えており、
前記自封装置は略筒体状にして可撓性を有する素材から成り、
自封装置は内部からの圧力が生じた場合においてのみ前記流出口が開口し、外部からの圧力に対しては閉塞状態を維持する構成であって、
前記自封装置が排水配管の軸に対して傾斜する位置に保持されていることを特徴とする排水配管である。
【0014】
請求項2に記載の発明は、
前記排水配管が縦管若しくは横管として使用出来る兼用管であり、
前記排水配管が横管として使用された際には、
前記自封装置の流入口が流出口より天地方向に高い位置に配置されることを特徴とする請求項1に記載の排水配管である。
【0015】
請求項3に記載の発明は、
排水機器の排水を処理する排水配管において、
前記排水配管は上流部、偏芯部、下流部を有し、
前記偏芯部において、上流部と下流部の軸をずらし、
且つ前記偏芯部内に前記自封装置を配置したことを特徴とする請求項1若しくは請求項2に記載の排水配管である。
【0016】
請求項4に記載の発明は、
前記自封装置は一端に流入口を、対向する端部に流出口を備えており、筒体の一部において傾斜面を形成し、内面同士が当接することで筒体が閉塞する流出口を形成し、
流入口から流出口へ流れようとする気体、液体、泡などの流体の圧力に対して弾性変形して筒体内部を開口して流体を通過させると共に、
流出口から流入口へ流れようとする流体の圧力に対しては閉塞した状態を維持して流体の通過を防止する自封装置であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の排水配管である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の排水配管は、内部に自封機能を備える自封装置を有し、且つ該自封装置を排水配管の軸方向に対して傾斜し、角度を与えて保持してある為、縦管、横管を兼用することが可能である。特に横管として使用した際においては、自封装置の流入口が流出口より天地方向において高い位置に配置されることになるため、排水配管の軸と平行に配置した場合と比べて、排水により強い圧力を付与することが出来、少ない排水による閉塞の解除が可能となる。従って、自封装置上流の排水配管内に排水が残留せず、効率の良い動作が可能となる。
【0018】
また、排水配管は上流部、偏芯部、下流部を有し、偏芯部において上流部と下流部との軸をずらし、且つ偏芯部内に自封装置を配置したことにより、上流部の内径と略同型の自封装置を傾斜して設置することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る排水配管を横管として使用した状態を示す断面図である。
【図2】従来の自封装置を示すa)平面図、b)正面図、c)側面図である。
【図3】従来の横管用自封装置を横管内に配置している配管例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明する。尚、以下の説明は、実施例の理解を容易にするためのものであり、これによって、本発明が制限して理解されるべきではない。また、以下の説明では、上下左右の位置関係は、特に断りのない限り、図1の様に本発明の排水配管1を横管として設置した状態を基準として説明する。
【0021】
本実施例の排水配管1は図1に示すように偏芯管2、自封装置10、点検栓20より構成されており、本実施例の排水配管1の上流には排水機器(図示せず)と接続している配管30が、下流には下水側へと続く配管40がそれぞれ連結されている。
【0022】
偏芯管2は内部に排水流路を有する管体であり、排水機器側に接続される上流部3と、下水側に接続される下流部5と、前記上流部3と下流部5を周方向へ偏芯させて繋ぐ偏芯部4とから構成され、且つ偏芯部4の上方に、後述する自封装置10及び点検栓20を脱着・点検する為の点検口6が開口している。上流部3と、偏芯部4、下流部5の内径は略同型であり、上流部3と下流部5は、それぞれ配管30と配管40が内部に接続される為に端部が拡径している。偏芯部4は上流部3側において垂下する当接壁7を有し、該当接壁7下端より略平行に伸びた後の部分より傾斜し、下流部5へ連続する。又、前記上流部3と下流部5は、中心軸の位置は相違するが、軸方向において互いに平行に延出している。
【0023】
自封装置10は、可撓性を有する材質から成る略円筒形状であり、一端に排水が流入する流入口11を、対向する端部に排水が流出する流出口12を有している。流入口11は円形の開口であり、流出口12は円筒の一端を押し潰し、軸上で重ね合わせた形状をしており、内部より圧力が掛からない限りにおいて閉塞している。従って、流入口11から流出口12に向けて排水が流れる際には、該排水の圧力により流出口12の閉塞が拡開され、下流へ排水が排出されるが、排水の無い場合において流出口12は閉塞されており、臭気や害虫の下流からの侵入を防ぐ。また、流入口11側端部は拡径しており、フランジを形成している。本明細書における自封装置10は上面視において略三角形状をしており、前述した図2に記載の、従来より知られる自封装置と、流入口側端部にフランジを有する以外において形状に差異は無い。自封装置10は上記の様な構成により、非封水式排水トラップとして扱われる。
【0024】
また、閉塞解除ラインWは、自封装置10の流出口12の閉塞を解除する為に必要な水量を表すラインであり、該閉塞解除ラインWよりも多くの排水が貯留された場合、例え排水に勢いが無くとも、排水の自重によって流出口12の閉塞は解除される。
【0025】
点検栓20は点検口6に設置される部材であり、取り出し部21と保持部22と流路形成部23を有する。取り出し部21は上面に開口した有底筒状であり、取り出し部21の外径は前記点検口6の内径と略等しく、且つ外周に環状のパッキン26が設けられている。保持部22は取り出し部21の下方に位置し、自封装置10を内周より固定する円形の開口を有する。また、保持部22は下方側が流路形成部23に近接するよう傾斜しており、前記開口もそれに伴い傾斜している。開口の周囲には楕円形状の壁が設けられており、該壁の周囲には楕円形のパッキン27が嵌合している。流路形成部23は上流部3の内径と同径であり、配置時において上流部3の流路と連続する。
【0026】
本発明の排水配管1の組み立ては以下の様に行われる。
【0027】
まず、点検栓20の下方に設けられた、保持部22の開口に自封装置10を挿入する。この際、保持部22の開口は自封装置10の内側と当接する。該当接後、リング24を自封装置10の外側より嵌入し、保持部22とリング24によって自封装置10を挟止する。これにより、流路形成部23と自封装置10の内部は連続した排水流路となるが、保持部22は傾斜している為、自封装置10は流路形成部23に対して傾斜して取り付けられ、内部の流路が流路形成部23と自封装置10との境目において屈折する。
【0028】
次に、自封装置10を取り付けた点検栓20を点検口6より挿入する。この時、取り出し部21の外径が点検口6の内径と略等しく、且つ外周にパッキン26が設けられている為、点検栓20は点検口6と水密に嵌合する。また、取り出し部21(流路形成部23)の下方は前記偏芯部4の当接壁7と当接し、該当接部分と取り出し部21の下流側下端とを繋ぐ楕円状のパッキン27によって偏芯部4の内周は水密に封鎖され、嵌合後において排水が流路形成部23以外に侵入することはない。そして、該取り付けの際において、流路形成部23と上流部3の内径が略同一である為、上流部3と流路形成部23が当接している部分は段差無く面一に連続して排水を排出する。また、この時自封装置10は上流部3、及び下流部5の軸方向に対して下方に傾斜して固定される形となる。
【0029】
この様にして、一連の排水流路が完成する。該排水流路に排水が流れた場合、排水は排水機器より、上流側の配管30、上流部3、流路形成部23、自封装置10の流入口11、流出口12、下流部5、配管40の順に通過し、下水側へと流れていく。この際、自封装置10の流入口11下端が流出口12下端より天地方向に高い位置に配置される為、流路形成部23と自封装置10との境目において、排水流路は下方に屈折する。
【0030】
排水が流れている間、流入口11より流出口12側へと一定以上の圧力が掛かることによって流出口12の閉塞が解除され、排水を下流部5側へと排出する。
【0031】
排水終了時付近において、排水に勢いがなくなった場合、流出口12は再び閉塞される。この際、上流部3と流路形成部23は面一に形成されている為、貯留される排水は全て自封装置10の内部に溜まり、上流の配管内には排水が残らない。そして閉塞解除ラインWよりも上方まで排水が貯留されると、排水の自重によって再び排出口12が拡開し、排水を下流へと流す。従って、閉塞解除ラインWよりも上方まで排水が貯留されることはない。
【0032】
つまり、本構成によれば、流入口11が流出口12よりも天地方向に高い位置に配置されていることによって、残留する排水は全て自封装置10へと流れて溜まる為、管内に残留する排水は最小限に抑えられる。
【0033】
当該作用は、空調機器等の使用によって少量の排水(ドレン水)が勢い無く断続的に流れて来た場合にも同様である。断続的に少量の排水が流れてきても、閉塞解除ラインWよりも排水貯留量が多くなれば、自封装置10は流出口12を拡開し、排水を順次下流へ排出し、該排出後、再び閉塞する。
【0034】
また、本実施例における排水配管1では、偏芯管2に点検口6を設けている為、点検口6より点検栓20を引き抜いてメンテナンスを行うことが出来る。従って、偏芯管2と他の配管との接続を解除することなく、自封装置10のメンテナンスを行うことが出来る。
【0035】
尚、本実施例においては、排水配管1を横管として使用しているが、本発明は縦管・横管兼用管であり、本実施例の様に横管としての使用に限られる訳ではなく、縦管として配置使用しても可能であり、何ら問題はない。本発明を縦管として使用する際は、偏芯管2の上流部3を上方へ向け、上流側配管と接続するだけでよい。従って、本発明によれば、内部の構造を組み替え等変化させることなく縦管・横管として接続可能であり、また、縦管・横管において、同一の自封装置を使用することができ、且つ従来よりも排水性能の良い排水配管を提供することが出来る。
【0036】
直管部分に傾斜して自封装置を設けた場合、図3に記載の排水配管のように、自封装置を固定する為の突起が管内に必要であるが、該突起により上流側の配管と自封装置の流入口の間に段差が生じてしまい、残留排水が増加する。しかし、本願発明においては自封装置10を固定する部分が当接壁7に隠れ、上流部3と流路形成部23との境を面一にすることが可能である。
【0037】
尚、本実施例において、自封装置10は流出口12の当接面を上下に向けて配置してあるが、本発明によれば該方向に向けて設置される場合に限られる訳ではなく、当接面を水平に向けて配置することも可能である。
【0038】
また、本実施例においては、自封装置10は非封水式排水トラップとして、単体で設置使用したが、異臭及び排水などの逆流を防ぐ逆流防止弁として、Uトラップや椀トラップ等の封水式排水トラップと併用して設置しても良い。
【符号の説明】
【0039】
1 排水配管
2 偏芯管
3 上流部
4 偏芯部
5 下流部
6 点検口
7 当接壁
10 自封装置
11 流入口
12 流出口
20 点検栓
21 取り出し部
22 保持部
23 流路形成部
24 リング
26 パッキン
27 パッキン
30 配管
40 配管
W 閉塞解除ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水機器の排水を処理する排水配管において、
前記排水配管は流入口と流出口を有する自封装置を備えており、
前記自封装置は略筒体状にして可撓性を有する素材から成り、
自封装置は内部からの圧力が生じた場合においてのみ前記流出口が開口し、外部からの圧力に対しては閉塞状態を維持する構成であって、
前記自封装置が排水配管の軸に対して傾斜する位置に保持されていることを特徴とする排水配管。
【請求項2】
前記排水配管が縦管若しくは横管として使用出来る兼用管であり、
前記排水配管が横管として使用された際には、
前記自封装置の流入口が流出口より天地方向に高い位置に配置されることを特徴とする請求項1に記載の排水配管
【請求項3】
排水機器の排水を処理する排水配管において、
前記排水配管は上流部、偏芯部、下流部を有し、
前記偏芯部において、上流部と下流部の軸をずらし、
且つ前記偏芯部内に前記自封装置を配置したことを特徴とする請求項1若しくは請求項2に記載の排水配管
【請求項4】
前記自封装置は一端に流入口を、対向する端部に流出口を備えており、筒体の一部において傾斜面を形成し、内面同士が当接することで筒体が閉塞する流出口を形成し、
流入口から流出口へ流れようとする気体、液体、泡などの流体の圧力に対して弾性変形して筒体内部を開口して流体を通過させると共に、
流出口から流入口へ流れようとする流体の圧力に対しては閉塞した状態を維持して流体の通過を防止する自封装置であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の排水配管

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−60737(P2013−60737A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199317(P2011−199317)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(000157212)丸一株式会社 (158)
【Fターム(参考)】