説明

排液処理方法及び排液処理装置付き流し台

【課題】 厨房等から排出される排液を、グリストラップ或いは外部へ排出する前に、排出適合基準に適合するように処理する。
【解決手段】 排出元から流入する排液を貯留槽内に貯留し、貯留槽内に処理剤を供給して、貯留槽内の排液と処理剤を貯留槽内で攪拌し、処理済み排液を貯留槽からグリストラップに又はグリストラップを通さず外部に排出可能とした。排出元から流入する排液と処理剤をポンプで攪拌して、そのポンプからグリストラップに又はグリストラップを通さず外部に排出可能とした。攪拌処理した排液を更に攪拌処理してから、グリストラップに又はグリストラップを通さず外部に排出可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、例えば、給食センタ−、レストラン、ホテル、食物加工所、スーパー、デパート、病院といった各種施設の厨房、その他の調理場等(排出元)から排出される排液を処理する排液処理方法、及び排液処理装置とこれを利用した排液処理装置付き流し台に関するものである。
【背景技術】
【0002】
給食センタ−、ホテル、食物加工所、スーパー、デパート、病院、飲食店などの厨房には、調理油、生ごみ、食べ残しの食物類、箸、爪楊枝、紙屑、ビニール屑、その他の塵芥、それらに伴う液体等(以下、これらを「排液」という。)が日常的に発生する。わが国では、「水質汚濁防止法排出基準」に適合しない排液を下水管、排水管に直接排水することは禁止されているため、現在は厨房内(又は厨房外)に設置されている貯液槽(グリストラップ)に排液を溜めておき、このグリストラップ内の排液を、例えば、週に一度、月に一度といったように定期的に清掃業者に依頼して清掃しているのが実情である。
【0003】
しかし、清掃業者の清掃では排液が十分浄化されないので、清掃に加えて、排液を中和剤で中和して、排出許容限度(排出基準値)に適合させてから、グリストラップから下水道や浄化槽に排出していた。従って、二次的な費用や労力がかかりその分コスト高となっていた。また、次回の定期清掃日となるまでにグリストラップ内には排液が充満し、その排液が排水管や下水管に未処理のまま流れ出てしまうこともあり、環境汚染や厨房内の悪臭の原因となっていた。
【0004】
また、規模の小さな飲食店やコンビニエンスストアなどでは、グリストラップを設置するための十分なスペースが確保できない場合があり、容量の小さな(小型の)グリストラップしか設置できないことがある。この場合は前記清掃や中和処理の頻度が多くなり、その都度、手間と費用が掛る。このため、小型であっても頻繁に排液処理する必要のない排液処理手段の開発が望まれている。
【0005】
本願発明者は、先に特許文献1に示すグリストラップの排液を処理するためのグリストラップ排液処理装置を開発した。これはグリストラップから排液を汲み上げながら、その排液に石鹸化液剤を供給して混合攪拌して石鹸化液にし(鹸化し)、その石鹸化液(鹸化液)をグリストラップ内へ戻す(又は外部に排出する)ものである。
【0006】
特許文献1のグリストラップ排液処理装置によれば、グリストラップから吸引した排液を鹸化してグリストラップに戻すため、油脂分や洗剤による環境汚染の問題がなく、グリストラップ自体が鹸化液剤により清掃されるといった利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−208068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1記載のグリストラップ排液処理装置は、グリストラップ内に貯留される排液を処理するうえでは有利な効果を奏する優れた技術であるが、従前と同様に厨房等から排出される排液はグリストラップ内に溜められるため、一時的にグリストラップ周辺で悪臭が発生するとか、厨房等の作業環境が悪化する原因となっていた。本願発明の課題は、厨房等の排出元から排出される排液を、グリストラップに入れる前に排液を排出許容限度(排出基準値)に適合させるべく攪拌処理し、その攪拌処理後の排液をグリストラップ(あるいは直接外部)に排出することによって、上記問題を解決し得る排液処理方法、並びに排液処理装置、及びこれを利用した排液処理装置付き流し台を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明の排液処理方法の一つは、排液と処理剤を攪拌して、排液を排出許容限度(排出基準値)に適合させるべく処理してグリストラップ又は外部に排出する排液処理方法において、排出元から排出された排液がグリストラップ又は外部に排出される前に、その排液に処理剤を供給し、その排液と処理剤を攪拌し、攪拌処理された排液をグリストラップに又はグリストラップを通さずに外部に排出することを特徴とする排液処理方法である。
【0010】
本願発明の排液処理方法の他の一つは、排出元から排出された排液がグリストラップ又は外部に排出される前に、その排液と処理剤をポンプで吸引して、そのポンプにより排液と処理剤を攪拌し、攪拌処理後の排液を前記ポンプからグリストラップに又はグリストラップを通さずに外部に排出することを特徴とする排液処理方法である。
【0011】
本願発明の排液処理方法の他の一つは、排出元から排出された排液がグリストラップ又は外部に排出される前に、その排液を貯留槽に貯留し、貯留槽内の排液と処理剤容器内の処理剤をポンプにより吸引し、その排液と処理剤を前記ポンプで攪拌し、攪拌処理された排液をポンプからグリストラップに又はグリストラップを通さずに外部に排出することを特徴とする排液処理方法である。
【0012】
本願発明の排液処理方法の他の一つは、排出元から排出された排液がグリストラップ又は外部に排出される前に、その排液と処理剤を貯留槽に貯留し、その排液と処理剤を貯留槽内において攪拌し、攪拌処理された排液を貯留槽からグリストラップに又はグリストラップを通さずに外部に排出することを特徴とする排液処理方法である。
【0013】
本願発明の排液処理方法の他の一つは、排出元から排出された排液がグリストラップ又は外部に排出される前に、その排液を貯留槽に貯留し、貯留槽内の排液と処理剤をポンプにより吸引し、その排液と処理剤を前記ポンプで攪拌し、攪拌処理された処理済み排液をポンプから前記貯留槽に戻し又は他の貯留槽に入れ、その処理済み排液に処理剤を入れて再度攪拌し、再度の攪拌を所望回数行った処理済み排液を、グリストラップに又はグリストラップを通さずに外部に排出することを特徴とする排液処理方法である。
【0014】
本願発明の排液処理方法の他の一つは、前記排液処理方法において、処理剤を鹸化剤にして、攪拌処理により排液を石鹸化液にし(鹸化し)、その石鹸化液をグリストラップに又はグリストラップを通さずに外部に排出することを特徴とする排液処理方法である。
【0015】
本願発明の排液処理装置の一つは、排液を排出許容限度(排出基準値)に適合させるべく処理してグリストラップ又は外部に排出する排液処理装置において、排出元から排出された排液がグリストラップ又は外部に排出される前に、その排液を吸引するポンプと、処理剤容器を備え、ポンプと処理剤容器は通路で連結され、前記ポンプは前記排液と処理剤容器内の処理剤を吸引してそれらをポンプ内で攪拌し、攪拌後にグリストラップに又はグリストラップを通さずに外部に排出可能であることを特徴とする排液処理装置である。
【0016】
本願発明の排液処理装置の他の一つは、排出元から排出される排液がグリストラップ又は外部に排出される前に、その排液を貯留する貯留槽と、貯留槽に貯留された排液とその排液内に入れた処理剤とを貯留槽内で攪拌処理する攪拌機と、攪拌処理後の排液をグリストラップに又はグリストラップを通さずに外部に排出する排出処理部を備えたことを特徴とする排液処理装置である。
【0017】
本願発明の排液処理装置の他の一つは、排出元から排出された排液がグリストラップ又は外部に排出される前に、その排液を貯留する貯留槽と、処理剤容器を備え、貯留槽内の排液と処理剤容器内の処理剤を吸引してそれらを攪拌するポンプと、攪拌後の排液を前記貯留槽に戻すか又は他の貯留槽に入れる循環機構と、貯留槽内の処理済み排液をグリストラップに又はグリストラップを通さずに外部に排出する排出機構を備えたことを特徴とする排液処理装置である。
【0018】
本願発明の排液処理装置の他の一つは、前記排液処理装置において、貯留槽内の排液を加温する加温装置を備えたことを特徴とする排液処理装置である。
【0019】
本願発明の排液処理装置の他の一つは、前記排液処理装置において、貯留槽内に貯留される排液の量を測定する排液量計測手段を備え、前記排液量測定手段によって計測された排液量が所定の閾値を超えると、処理剤装置から処理剤が前記貯留槽内に供給され、攪拌装置によって貯留槽内の排液及び処理剤が攪拌されることを特徴とする排液処理装置である。
【0020】
本願発明の排液処理装置の他の一つは、前記排液処理装置において、貯留槽が第1の貯留槽と第2の貯留槽を備え、第1の貯留槽は、排出元から排出される排液を貯留するものであり、第2の貯留槽は、第1の貯留槽からオーバーフローする排液を受けて貯留するものであり、処理剤は前記第2の貯留槽内に供給され、前記第2の貯留槽内の排液及び処理剤が攪拌機によって攪拌されることを特徴とする排液処理装置である。
【0021】
本願発明の排液処理装置付き流し台は、水槽と排水口を備えた流し台において、流し台が、請求項7乃至請求項12のいずれかに記載の排液処理装置を備え、前記排水口から排出された排液が前記排液処理装置によって攪拌処理され、攪拌処理された排液を、グリストラップに又はグリストラップを通さずに外部に排出する排出機構を備えたことを特徴とする排液処理装置付き流し台である。
【発明の効果】
【0022】
本願発明の排液処理方法は、次のような効果がある。
(1)厨房等の排出元から排出される排液をグリストラップに入れる前に処理するので、処理済み排液を、グリストラップを通さずに外部(例えば、下水道)に排出することができグリストラップを設けなくてもよい。グリストラップを設けるにしても排液を清掃業者が清掃するまでグリストラップ内に貯留しておく必要がないため、グリストラップを容量の少ないもの(小型のもの)にすることができ、小型店舗でもグリストラップの設置が容易になる。
(2)排出元から排出される排液をグリストラップに入れる前に処理するので、その処理排液をグリストラップ内に溜めてもグリストラップから悪臭などが発生しにくく、作業環境を悪化させる原因を排除することができる。
(3)排液と処理剤を攪拌できるポンプを使用すれば、貯留槽(攪拌槽)を設けずに、排出元から排出される排液を連続攪拌することが可能となるので、バッチ式の攪拌よりも攪拌作業効率が向上する。
(4)排液を二回以上攪拌処理すれば、排液を排出基準に適合させ易くなる。
【0023】
本願発明の排液処理装置には、次のような効果がある。
(1)排出元から排出される排液をグリストラップに入れる前に処理することができるのでグリストラップの容量を軽減させることができる。場合によっては、排液処理装置がグリストラップの代用となるため、グリストラップを設ける必要が無くなる。
(2)排出元から排出される排液をグリストラップに入れる前に処理するので、その処理排液をグリストラップ内に溜めてもグリストラップから悪臭などが発生しにくく、作業環境を悪化させる原因を排除することができる。
(3)排液と処理剤を攪拌できるポンプを使用した場合は、排液貯留槽(攪拌槽)が不要になるので、排液処理装置が小型化になる。
(4)排液量計測手段を設けて貯留槽内の排液量が所定の閾値を超えたときに排液処理を行うものとすれば、効率良く排液処理を行うことができて、処理剤の無駄も省ける。
(5)貯留槽を2槽に分けて、第1の貯留槽から第2の貯留槽にオーバーフローする油脂分主体の排液を処理することができるので、一槽の場合よりも効率的に排液を処理することができる。
(6)加温手段を備えたものとすると、排液と処理剤との反応が促進され、より短時間で処理することができるとともに、寒冷地においても効果的に排液処理することができる。
(7)排液処理装置がグリストラップに代用になり得るので、グリストラップを設けることなく排液を排出することもできる。
【0024】
本願発明の排液処理装置付き流し台には、上記効果に加え次のような効果がある。
(1)厨房に、本願発明の排液処理装置付き流し台を設置するだけで、排液を処理することができる。
(2)排液処理装置を通常の流し台の下方のスペースを利用して設置できるので、排液処理装置を設けても流し台が横或いは前後に大きくなることが無く、流し台の設置に従来の流し台の設置よりも広いスペースを必要としない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1の実施形態における排液処理装置を配置した状態を示す全体斜視図。
【図2】第2の実施形態における排液処理装置を配置した状態を示す全体図。
【図3】第2の実施形態における排液処理装置の貯留槽を2槽とした場合の全体図。
【図4】第2の実施形態における排液処理装置の貯留槽を流し台に隣接して配置した場合の全体図。
【図5】第3の実施形態における排液処理装置を配置した状態を示す全体斜視図。
【図6】本願発明の排液処理装置付き流し台を説明するための全体図。
【図7】既存のグリストラップの一例を示す断面図。
【図8】グリストラップ排液処理装置の実施形態の一例を示す斜視説明図。
【図9】排液処理装置に処理タンクが備えられた場合のグリストラップ排液処理装置を示す斜視説明図。
【図10】グリストラップ内に配置して使用するグリストラップ排液処理装置を示す斜視説明図。
【図11】グリストラップの縁に吊り下げて使用するグリストラップ排液処理装置の側面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[排液処理方法の実施形態]
本願発明の排液処理方法における実施形態の一例を図1に基づいて説明する。本願発明の排液処理方法は、給食センタ−、レストラン、ホテル、食物加工所、スーパー、デパート、病院といった各種施設の厨房、あるいはその他の調理場など「排液が発生する場所」(以下、「排出元」という。)からの排液を処理する方法であり、従来は一旦グリストラップに排液を溜めた後に排液処理していたものを、本願発明では排出元からの排液をグリストラップに溜める前に(あるいは溜めることなく)直接、排出許容限度(排出基準値)に適合させるべく排液処理を行うものである。
【0027】
図1は、本願発明の排液処理装置1を配置した状態を示す全体図であり、排出元に設置された流し台Rには排水管Tが接続され、この排水管Tには本願発明の排液処理装置1が連結され、排液処理装置1の先にはグリストラップAが設置されている。この図から分かるように、排出元からの排液Bすなわち流し台Rから流れ出る排液Bは、攪拌処理装置2内に吸入され、それと同時に処理剤容器3に貯留された処理剤も攪拌処理装置2内に吸入される。このように排液Bと処理剤が合わせて吸入されることによって、排液Bと処理剤は攪拌処理装置2内で攪拌され、この結果、攪拌された排液Bと処理剤との混合液(以下、便宜上「攪拌処理済み排液B」という。)はグリストラップAに排出される。もちろん、グリストラップAに排出することなく、下水管など外部に排出することもできる。
【0028】
なお、処理剤として採用される代表的なものは鹸化剤(鹸化液)であり、この鹸化剤は、排液Bのうち特に油脂分を石鹸液状にする(石鹸化液にする)ものであり、液状、ゲル状、粉状、その他の鹸化剤を使用することができる。鹸化剤の一例として、出願人の商品(商品名「クリンエコフロー」)を用いることも可能で、この「クリンエコフロー」に含有される主成分は、脂肪酸ナトリウム、脂肪酸カリウム、ヤシ脂肪酸ジェタノールアミド、無機質類数種、精製水などとなっている。処理剤としては、排液Bを環境に優しいものに改質可能であれば鹸化剤に限らず、界面活性剤、消臭剤、中和剤、又はこれら二以上の混合剤を使用することもできる。
【0029】
図1に示す排液処理装置1は一例であり、排液処理装置1としては後述する種々の形態のものを採用することができる。要は、排出元からの排液Bを、グリストラップ(あるいは下水管など外部)に排出する前に、排液Bに処理剤を加え、排液Bと処理剤とを攪拌し、攪拌処理された排液Bを排出することができれば、本願発明の排液処理方法として種々の手段を採用することができる。
【0030】
[排液処理装置の第1の実施形態]
本願発明の排液処理装置の第1の実施形態を図1に基づいて説明する。図1は、第1の実施形態における排液処理装置1を配置した状態を示す全体斜視図である。本実施形態の排液処理装置1は、攪拌処理装置2と処理剤容器3を備えるもので、排出元からの排液Bを直接(グリストラップに排出する前に)攪拌処理するものである。
【0031】
(処理剤容器及び処理剤)
処理剤容器3は、容器本体3aと管、チューブ等を使用した送入路3bを備えており、容器本体3aは処理剤を貯留するもので、送入路3bは容器本体3a内の処理剤が攪拌処理装置2まで移動するための通路である。処理剤として採用される代表的なものは鹸化剤であり、この鹸化剤は、排液Bのうち特に油脂分を石鹸液状にする(石鹸化液にする)ものであり、液状、ゲル状、粉状、その他の鹸化剤が使用できる。鹸化剤の一例として、出願人の商品(商品名「クリンエコフロー」)を用いることも可能で、この「クリンエコフロー」に含有される主成分は、脂肪酸ナトリウム、脂肪酸カリウム、ヤシ脂肪酸ジェタノールアミド、無機質類数種、精製水などとなっている。処理剤としては、排液Bを環境に優しいものに改質可能であれば鹸化剤に限らず、界面活性剤、消臭剤、中和剤、又はこれら二以上の混合剤を使用することもできる。
【0032】
排液Bに供給する鹸化剤の比率は、石鹸化効率やコスト等の面か考えると排液B:鹸化剤=5:1程度が好ましいが、排液Bの汚れ具合によってこの比率を変えることも可能であり、例えば、汚れが著しい場合は鹸化剤の比率を大きくし、汚れが少ない場合は鹸化剤の比率を小さくすることもできる。
【0033】
処理剤容器3の容器本体3aには処理剤を投入可能な投入口(図示しない)が設けられており、この投入口から投入された処理剤が容器本体3a収容され、この容器本体3a内の処理剤が送入路3bを通じて攪拌処理装置2に供給される。
【0034】
(攪拌処理装置)
攪拌処理装置2には吸入手段が備えられており、この吸入手段によって排出元(ここでは流し台R)からの排液Bを、攪拌処理装置2内に吸入する。この吸入手段は、内蔵された真空ポンプ等の圧力装置(図示しない)と、流入口2aとによって構成される。図1に示すように、流し台Rの排水管Tに接続された流入パイプSは、途中で送入路3bと合流している。このため、吸入手段によって排液Bを攪拌処理装置2内に吸入すると、同時に容器本体3a内の処理剤も攪拌処理装置2内に吸入されることとなる。なお、図1では流入パイプSと送入路3bとの合流手段としてジョイントU(T字管)を用いているが、この合流手段には従来から用いられている様々な手段(例えば、流入パイプSに送入路3bを直接貫入させる手段)を採用することもできる。
【0035】
吸入手段によって攪拌処理装置2内に吸入された排液Bと処理剤は、攪拌処理装置2内で混合されるとともに圧力装置の吸引力によって攪拌されることとなる。鹸化剤などの処理剤が添加された排液Bは石鹸液化されるが、このように攪拌することで排液Bの石鹸液化は著しく促進される。
【0036】
処理剤が加えられて攪拌された(以下、これら一連の処理を「攪拌処理」という)排液Bは、攪拌処理装置2に備えられる排出手段によって排出される。この排出手段は、内蔵された真空ポンプ等の圧力装置(図示しない)と、排出口2bで構成され、この圧力装置によって攪拌処理された排液Bが排出口2bから圧送される。なお、排出手段の圧力装置は省略することも可能で、この場合、例えば排出口2bから攪拌処理された排液Bを自由落下させることができる。また、排出手段の圧力装置は、吸入手段の圧力装置と兼用することもできる。
【0037】
排液Bは、排出口2bに接続される外部排出管4を通してグリストラップAに排出することもできるし、あるいは下水管など外部に排出することもできる。一方、我が国では下水道法(第12条)の規定により、業務用厨房等から排出される排液は、浄化槽の阻集器(グリストラップ等)で処理したうえで排出することが義務付けられている。また、この阻集器の構造は、(社)空気調和・衛生工学会が制定するSHASE−Sのうち阻集器に関連した規格に適合したもの、又は下水道事業管理者がSHASE−Sの規格と同等以上の性能と認めたものでなければならない。よって本願発明の排液処理装置1を、グリストラップと同等以上の性能、すなわちSHASE−Sのうち阻集器に関連した規格に適合した性能、あるいはこの規格と同等以上の性能を備えたものにすれば、グリストラップAを設けることなく下水管など外部に排出することができる。この点については、後述する実施形態2〜3に関しても同様である。
【0038】
ここで使用できる攪拌処理装置2は、前記した吸入手段と排出手段を備えていればよく、本願発明の排液処理装置1の専用品として新たに作成してもよいし、市販されているベーンポンプ(例えば荏原製作所のラバーベーンポンプ)等を使用することもできる。
【0039】
[排液処理装置の第2の実施形態]
本願発明の排液処理装置の第2の実施形態を図2に基づいて説明する。本実施形態の排液処理装置1は、攪拌処理装置2と処理剤容器3に加えて貯留槽5を備えたもので、貯留槽5を除くものについての構造や作用は実施形態1と共通し、本実施形態で説明しない内容は実施形態1と同様である。
【0040】
図2は、第2の実施形態における排液処理装置1を配置した状態を示す全体図である。本実施形態では、排出元(ここでは流し台R)からの排液Bを、貯留槽5に直接流入させて貯留し、流入パイプSを通じて攪拌処理装置2に流入させ、攪拌処理装置2と処理剤容器3によって攪拌処理する。さらに攪拌処理された排液Bは、攪拌処理装置2の排出手段によってグリストラップA(あるいは、グリストラップAを通さず下水管など外部)に排出される。本実施形態における攪拌処理装置2と処理剤容器3の構造及び作用は、実施形態1と同様である。ただし、本実施形態における攪拌処理装置2の吸入手段で吸入する排液Bが貯留槽5内のものであるのに対して、実施形態1における吸入手段で吸入する排液Bは排出元(流し台R)からのものである点で相違する。
【0041】
(貯留槽)
図2に示す貯留槽5は、排液Bを貯留する槽本体5aと、槽本体5aを支持する支持脚5bと、槽本体5a内の排液Bを排出する排出口5cを備えている。また排出口5cには、開閉弁6を介して流入パイプSが接続されている。貯留槽5は流し台Rの直下に配置され、流し台Rから流下してくる排液Bを直接受け取る。そのため槽本体5aは、上部のうち一部が(あるいは全面が)開口している。槽本体5aの内部には、排液Bを貯留することのできる空間を備えており、図2ではその形状が直方体のものを示しているが、排液Bを貯留することができれば、これに限らず平面視で長円形や多角形のものなど、任意の形状とすることができる。
【0042】
貯留槽5内に貯留された排液Bの量を計測するために、フロート7など排液量計測手段を備えることもできる。この計測結果(排液量)に基づいて、開閉弁6の開閉操作を行うこととすると、排液処理作業が効率的となる。さらに、制御手段(図示しない)を設置して、計測結果に基づく開閉弁6の開閉操作を自動化すると、より排液処理作業が効率的となって好適である。
【0043】
貯留槽5は図2に示すものに限らず、図3に示すように2槽に分けたものとすることもできる。図3は、第2の実施形態における排液処理装置1の貯留槽5を2槽とした場合の全体図である。この図に示す貯留槽5は、槽本体5a内に隔壁53を設けることによって、流し台Rから直接流下してくる排液Bを貯留する第1貯留槽51と、第1貯留槽51からオーバーフローする排液Bを貯留する第2貯留槽52に分けられている。この隔壁53は、貯留槽5の槽本体5aを構成する側壁よりも低くなっており、第1貯留槽51の貯留容量を超えると、排液Bは隔壁53の上を溢れて(オーバーフローして)第2貯留槽52に流れ込み、第2貯留槽52内に貯留されていく。排液Bの水分と油脂分のうち、比重差から油脂分の方が液面に浮くことから、第1貯留槽51から第2貯留槽52に流れ込むのは主に排液B中の油脂分である。つまり、排液Bのうち処理すべき油脂分の多くは第2貯留槽52内に貯留されることとなるので、第2貯留槽52内の排液Bを排液処理すると効率的となる。なお、第2貯留槽52内の排液Bを攪拌処理装置2に流入させるため、図3に示すように、第2貯留槽52の上方から流入パイプSを挿入して、攪拌処理装置2の吸入手段によって第2貯留槽52内の排液Bを吸引してもよいし、図2と同様、第2貯留槽52に設けられた排出口5cから開閉弁6及び流入パイプSを通じて攪拌処理装置2に流入させてもよい。なお図に示すように、第1貯留槽51、第2貯留槽52にはそれらの内部の排液Bを排出させる(例えばメンテナンスの際)ための排出口(ドレイン)と開閉弁6を設けることもできる。
【0044】
この場合も、第2貯留槽52内に貯留された排液Bの量を計測するために、フロート7など排液量計測手段を備えることもできるし、制御手段を設置して計測結果に基づく吸引操作(攪拌処理装置2の吸入手段による)を自動化することもできる。
【0045】
貯留槽5は、図2に示す支持脚5bで支持することもできるが、図3に示すように、底部にキャスターJを設置した移動式とすることもできる。この場合、貯留槽5の移動が容易となって好適である。もちろん、キャスターJを回転自在式とすることも、ストッパー付きとすることもできる。
【0046】
貯留槽5は図4に示すように流し台Rに隣接するように配置することもできる。図4は、第2の実施形態における排液処理装置1の貯留槽5を流し台Rの横に隣接して配置した場合の全体図である。この図に示すように、流し台Rからの排液Bを第1貯留槽51内に流入させるため、流し台Rの排水管Tに接続された排出管WにはポンプPが設けられている。このポンプPの揚力によって、流し台Rからの排液Bは第1貯留槽51の上方までポンプアップされ、第1貯留槽51内に流下する。図4では貯留槽5を図3と同様2槽に分けたものとしているが、図2に示すような1槽のものでもよい。また、フロート7の設置(自動運転含む)や、貯留槽5の支持方式(支持脚5b又はキャスターJ)の選択に関しても、図2や図3について行った説明と同様である。
【0047】
排液Bに処理剤を供給して攪拌すると排液B中の油脂分が石鹸液状になることは前記のとおりであるが、この油脂分を石鹸液化させる作用は、一般に排液Bの温度に影響される。寒冷地など排液Bの温度が極端に低いと、油脂分の石鹸液状化が困難なことが知られている。そこで、貯留槽5内に貯留された排液Bの温度を適温まで上昇させる加温手段8を設置すると、油脂分の石鹸液化が促進されて好適である。図4では、この加温手段8として貯留槽2の側面にヒーターを設置しているが、従来から用いられている加温技術を用いることもできるし、設置位置も適宜設計できる。また、温度センサを設置して、排液Bの温度が所定温度範囲外にあるときにだけ加温手段8を動作させることもできる。この加温手段8は、図4の場合に限らず、図2や図3でも当然に設置することができる。
【0048】
[排液処理装置の第3の実施形態]
本願発明の排液処理装置の第3の実施形態を図5に基づいて説明する。図5は、第3の実施形態における排液処理装置1を配置した状態を示す全体斜視図である。本実施形態の排液処理装置1は、攪拌処理装置2及び処理剤装置9を備えるとともに、攪拌処理装置2が貯留槽10と攪拌装置11と排出手段を有した場合を説明するものであって、本実施形態で説明を省いた内容は実施形態1や実施形態2と同様である。
【0049】
本実施形態の排液処理装置1は、図5に示すように、攪拌処理装置2と処理剤装置9を備えたものである。また、攪拌処理装置2は、貯留槽10と攪拌装置11と排出手段(排出口12を含む)を有しており、処理剤装置9は、処理剤容器9aと処理剤供給手段(排出管9bを含む)を有している。排出元(ここでは流し台R)から排出される排液Bは、流し台Rの排水管Tに接続された排出管Wを通じて貯留槽10内に直接流入する。この際、図5に示すように、必要に応じて排出管WにポンプPを配置し、貯留槽10の上部に設けられる開口部まで排液Bをポンプアップすることもできる。貯留槽10に直接投入されて貯留された排液Bには、処理剤装置9から処理剤が供給され、さらに排液Bと処理剤との混合液は攪拌装置11によって攪拌されて排液処理される。このように排液処理された排液Bは、排出口12から排出される。
【0050】
(処理剤装置)
処理剤装置9は、処理剤を収容可能な処理剤容器9aと、処理剤を貯留槽10内に供給する処理剤供給手段を備えたものであり、この処理剤供給手段は、処理剤容器9aと貯留槽10とを連絡する排出管9bと、処理剤容器9aから排出管9bへ処理剤を送り込む圧送手段からなる。この処理剤として採用される代表的なものは鹸化剤であり、この鹸化剤は、排液Bのうち特に油脂分を石鹸液状にする(石鹸化液にする)ものであり、液状、ゲル状、粉状、その他の鹸化剤が使用できる。鹸化剤の一例として、出願人の商品(商品名「クリンエコフロー」)を用いることも可能で、この「クリンエコフロー」に含有される主成分は、脂肪酸ナトリウム、脂肪酸カリウム、ヤシ脂肪酸ジェタノールアミド、無機質類数種、精製水などとなっている。処理剤としては、排液Bを環境に優しいものに改質可能であれば鹸化剤に限らず、界面活性剤、消臭剤、中和剤、又はこれら二以上の混合剤を使用することもできる。
【0051】
排液Bに供給する鹸化剤の比率は、石鹸化効率やコスト等の面か考えると排液B:鹸化剤=5:1程度が好ましいが、排液Bの汚れ具合によってこの比率を変えることも可能で、例えば、汚れが著しい場合は鹸化剤の比率を大きくし、汚れが少ない場合は鹸化剤の比率を小さくすることもできる。
【0052】
処理剤容器9aには処理剤を投入可能な投入口(図示しない)が設けられており、この投入口から投入された処理剤が処理剤容器9aに収容されている。処理剤容器9a内の処理剤は、処理剤供給手段によって貯留槽10内に供給される。この処理剤供給手段のうち圧送手段としては、従来から用いられている種々の技術を採用することができる。例えば、図5に示すモータMを駆動源として処理剤容器9a内の処理剤を圧送する圧送手段とすることもできるし、排出管9bにポンプを設置して処理剤を吸引する圧送手段とすることもできる。また、処理剤容器9aを貯留槽10よりも高い位置に設置するとともに排出管9bに開閉弁を設け、この開閉弁の操作によって処理剤を貯留槽10に落下させる構造とすることにより、圧送手段を省略することもできる。
【0053】
図5に示すように、貯留槽10を2槽とした場合、オーバーフローした排液Bを受ける第2貯留槽10b内に処理剤を供給して第2貯留槽10b内の排液Bのみを処理することもできるし、あるいは、第1貯留槽10a及び第2貯留槽10bの両方に処理剤を供給して全ての排液Bを処理することもできる。
【0054】
(攪拌処理装置の貯留槽)
貯留槽10は、排液Bを貯留することのできる空間を備えており、また貯留槽10の上方に設けられた開口部から排液Bを直接受けることができる。図5の貯留槽10は、その形状が直方体であって6面のうち4つの側面と底面が塞がれ、上面のみが開放された構造となっているが、排液Bを直接受けることができて内部に排液Bを貯留することができれば、これに限らず平面視で長円形や多角形のものなど、任意の形状とすることができる。上面部分は、排液Bの流入が可能であって処理剤装置9からの処理剤を供給し得る開口部さえ確保できれば、他の部分(開口部以外)を塞いだ構造とすることもできる。
【0055】
図5に示す貯留槽10は、内部に設けられる隔壁10cによって第1貯留槽10aと第2貯留槽10bの2槽に分かれている。この図に示すように、第1貯留槽10aは流し台Rから直接流入してくる排液Bを貯留するものであり、第2貯留槽10bは第1貯留槽10aからオーバーフローしてくる排液Bを貯留するものである。隔壁10cは、貯留槽10を構成する側壁よりも低くなっており、第1貯留槽10aの貯留容量を超えると、排液Bは隔壁10cの上を溢れて(オーバーフローして)第2貯留槽10bに流れ込み、第2貯留槽10b内に貯留されていく。排液Bの水分と油脂分のうち、比重差から油脂分の方が液面に浮かび上がることから、第1貯留槽10aから第2貯留槽10bに流れ込むのは主に排液B中の油脂分である。つまり、排液Bのうち処理すべき油脂分の多くは第2貯留槽10b内に貯留されることとなるので、第2貯留槽10b内の排液Bを排液処理すると効率的である。従って、第2貯留槽10b内の排液Bに処理剤を供給し、第2貯留槽10b内の排液Bと処理剤を攪拌すればよいこととなる。もちろん、貯留槽10内を仕切ることなく1槽として貯留槽10内の排液B全てを攪拌処理することも可能であり、また3層以上に分けて最下流(オーバーフローする最後方)にあたる貯留槽の排液Bを中心に攪拌処理する構造とすることもできる。
【0056】
(攪拌処理装置の攪拌装置)
鹸化剤などの処理剤が添加された排液Bは石鹸液化されるが、さらに攪拌することで排液Bの石鹸液化は著しく促進される。そこで、本実施形態の排液処理装置1の貯留槽10には、処理剤が供給された排液Bを攪拌する攪拌装置11が設けられている。この攪拌装置11は、処理剤と排液Bを効果的に攪拌することができればスクリュー方式やベーン方式など任意の構造とすることができる。一例として図5に示すように、回転軸と羽根を備えたスクリュー方式の攪拌装置11とすることができる。この回転軸を回転させることによって羽根が処理剤と排液Bを攪拌し、排液Bの石鹸液化は著しく促進される。回転軸は、図5に示すモータMを駆動源として回転するものであり、その回転速度や回転時間(すなわち攪拌時間)は排液Bの汚染程度により任意に設計することができる。なお、回転軸を回転させるモータMは、処理剤装置9の処理剤容器9a内にある処理剤を圧送する際に利用するモータMと兼用とすることもできるし、それぞれ別のモータMを用意することもできる。なお、図5に示すように貯留槽10を2槽とした場合、オーバーフローした排液Bを受ける第2貯留槽10b内に攪拌装置11を設置して第2貯留槽10b内の排液Bのみを攪拌することができるし、あるいは、第1貯留槽10a及び第2貯留槽10bの両方に攪拌装置11を設置して全ての排液Bを攪拌することもできる。
【0057】
(攪拌処理装置の排出手段)
貯留槽10内で処理剤が供給されて攪拌された排液B(排液処理された排液B)は、排出手段によって貯留槽10の外へ排出される。この排出手段は、貯留槽10の底面部に設けられた排出口12と、排液Bを外部へ圧送する圧送手段からなる。この排出手段を構成する圧送手段としては、従来から利用される水中ポンプを採用することもできるが、貯留槽10内の排液Bを排出口12から自由落下させる構造としてこの圧送手段を省略することもできる。
【0058】
図5に示すように貯留槽10を2槽とした場合、オーバーフローした排液Bを受ける第2貯留槽10bの底面部に排出口12を設けて第2貯留槽10b内の排液Bのみを排出することができる。あるいは、第1貯留槽10a及び第2貯留槽10bの両方の底面部に排出口12を設けて全ての排液Bを排出することもできる。また排液Bは、排出口12に接続される外部排出管4を通してグリストラップAに排出することもできるし、あるいは下水管など外部に排出することもできる。排液処理装置1が、グリストラップと同等以上の性能、すなわちSHASE−Sのうち阻集器に関連した規格に適合した性能、あるいはこの規格と同等以上の性能を備えていれば、グリストラップAを設けることなく下水管など外部に排出することができる点については、実施形態1と同様である。
【0059】
(排液量計測手段)
排液Bに処理剤を供給して攪拌する排液処理は、任意のタイミングで開始することができるが、貯留槽10内にある程度排液Bが溜まった時点で実施する方が効率的である。例えば、人が貯留槽10内を監視して、排液Bが所定量に達したことを確認した時点で、排液処理を開始することができる。この場合、貯留槽10内に排液Bが貯留する量(貯留量)を目視によって確認することもできるが、水位計やフロートなどの排液量計測手段13(図5)を設置するとより的確に排液Bの貯留量を確認することができる。
【0060】
排液量計測手段13を設置する効果として、人の判断によって排液処理の操作を行う場合に限らず、自動的に排液処理の操作を実施することが可能となる。一例を挙げると、排液量計測手段13として水位センサを設置し、この水位センサで取得する水位データを電子計算機(以下、「パソコン」という。)に伝達させ、さらにパソコンであらかじめ定めた水位の閾値と比較して排液処理の操作を行うか否かの判断を行う。パソコンが、排液処理の操作を行うと判断すると、制御装置(図示しない)にその旨の信号を送り、この制御装置によって処理剤装置9と攪拌装置11を自動運転させる。その後、排液処理が所定時間経過すると、排液Bは排出口12から貯留槽10の外へ排出され、排液Bの水位も閾値を下回り、この水位データが水位センサからパソコンへ伝達され、パソコンが制御装置に指示して処理剤装置9と攪拌装置11の運転を停止させる。もちろん、排液処理が所定時間経過した時点で、自動的に処理剤装置9と攪拌装置11の運転を停止させることもできる。
【0061】
あるいは、水質測定器(図示しない)を備えて排液Bの水質を測定し、その水質が所定の基準値を満足すれば自動的に処理剤装置9と攪拌装置11の運転を停止させるようにすることもできる。この場合、水質測定や、その測定結果の表示手段、基準値を満足するか否かの判断等は、後に記載する「グリストラップ排液処理装置の実施例1〜5」と同様とすることができる。なお、水質を測る場合その測定項目は様々であり、例えば「水質汚濁防止法(排水基準を定める省令)」では、排水の排出基準として有害物質による汚染状態と有害物質以外による汚染状態に分け、さらに有害物質による汚染状態では、カドミウム及びその化合物、シアン化合物、六価クロム化合物の含有量など27の測定項目が掲げられ、有害物質以外による汚染状態では15項目が掲げられている。表1に、「水質汚濁防止法(排水基準を定める省令)」で定める、有害物質以外による汚染状態を測るための測定項目とその基準値を示す。
【0062】
【表1】

【0063】
排液量計測手段13として、接触式のセンサを使用することもできる。接触式センサの検知部分が所定の高さとなるように設置し、排液Bの液面が上昇して接触式センサの検知部分に接触するとその信号を制御装置に伝送して自動運転を開始(あるいは停止)させる。あるいは、排液量計測手段13としてフロートを設置することもできる。この場合、排液Bの液面の上下に伴うフロートの上下によって、機械的にスイッチのon/offを行うことで処理剤装置9と攪拌装置11の運転を制御することもできる。その他、排液量計測手段13として、従来から用いられている技術を利用することもできる。
【0064】
(加温手段)
排液Bに処理剤を供給して攪拌すると排液B中の油脂分が石鹸液状になることは前記のとおりであるが、この油脂分を石鹸液状化させる作用は、一般に排液Bの温度に影響される。寒冷地など排液Bの温度が極端に低いと、油脂分の石鹸液状化が困難なことが知られている。そこで、貯留槽10内に貯留された排液Bの温度を適温まで上昇させる加温手段8を設置すると、油脂分の石鹸液状化が促進されて好適である。図5では、加温手段8として貯留槽10の側面にヒーターを設置しているが、その他、従来から用いられている加温技術を用いることもできるし、設置位置も適宜設計できる。また、温度センサを設置して、排液Bの温度が所定温度範囲外にあるときにだけ加温手段8を動作させることもできる。
【0065】
(キャスター)
攪拌処理装置2は固定式とすることもできるが、図5に示すように、底部にキャスターJを設置した移動式とすることもできる。この場合、排液処理装置1の移動が容易となって好適である。もちろん、キャスターJを回転自在式とすることも、ストッパー付きとすることもできる。
【0066】
(排液処理装置の配置)
本実施形態の排液処理装置1(攪拌処理装置2と処理剤装置9を備える)は、任意の場所に配置することができるが、図5に示すように、排液処理装置1をグリストラップAに隣接して配置すると、排出口12に繋がれた外部排出管4を短くすることができて好適である。あるいは、流し台Rの直下に排液処理装置1を配置すると、流し台Rの排水管Tに繋がれる排出管Wやこれに設置されるポンプPが不要となるほか、厨房等の作業場所が狭くならないので好適である。その他、排液処理装置1の配置は種々の選択が可能である。
【0067】
[排液処理装置付き流し台の実施形態]
本願発明の排液処理装置付き流し台における実施形態の一例を図6に基づいて説明する。図6は、本願発明の排液処理装置付き流し台14を説明するための全体図である。
【0068】
排液処理装置付き流し台14は、従来から用いられている流し台に本願発明の排液処理装置1を取り付けたものである。この流し台は、既存のものでも、新たに作成されるものでもよく、水槽15と、水槽15の底部に設けられる排水口16備えたものであり、図6に示すように、排水口16に連結される排水管17を備えることもできる。図6では、水槽15が2槽に分かれており、これに伴って排水口16と排水管17も2つずつ具備しているが、水槽15は1槽とすることも3層以上に分けることも可能で、これに応じて排水口16と排水管17も1又は3以上具備することもできる。
【0069】
排液処理装置付き流し台14に備えられる排液処理装置1は、前記した[排液処理装置の第1の実施形態]〜「排液処理装置の第3の実施形態」で説明したもののいずれかと同じものであり、図6では、攪拌処理装置2(排出口2a含む)、処理剤容器3(容器本体3a、送入路3b)、貯留槽5(第1貯留槽51、第2貯留槽52、隔壁53)、フロート7を備えたものとしている。この他、加温手段8を備えることもできるし、処理剤容器3に代えて処理剤装置9を備えることもできる。また図6は、図3と同様、貯留槽5を隔壁53によって第1貯留槽51と第2貯留槽52の2槽に分けているが、これに限らず1槽とすることも3層以上とすることもできる。
【0070】
なお、排液処理装置付き流し台14に備えられる排液処理装置1を構成する部品は、全てを同一のケースに収めるなど一体の構造としてもよいし、たとえば処理剤容器3のみが別体で他は一体の構造とすることもできる。またこの排液処理装置1は、図6に示すように水槽15の直下に配置して、水槽15からの排液Bを直接貯留槽5に流下させることもできるし、あるいは、排液処理装置1を水槽15に隣接するように配置して、水槽15からの排液Bをポンプ等により貯留槽5に汲みあげる構造とすることもできる。
【0071】
排液Bは、攪拌処理装置2に備えられる排出手段の排出口2b(又は攪拌処理装置2を構成する貯留槽5の排出口5c)に接続される外部排出管4を通してグリストラップAに排出することもできるし、あるいは下水管など外部に排出することもできる。一方、我が国では下水道法(第12条)の規定により、業務用厨房等から排出される排液は、浄化槽の阻集器(グリストラップ等)で処理したうえで排出することが義務付けられている。また、この阻集器の構造は、(社)空気調和・衛生工学会が制定するSHASE−Sのうち阻集器に関連した規格に適合したもの、又は下水道事業管理者がSHASE−Sの規格と同等以上の性能と認めたものでなければならない。よって本願発明排液処理装置付き流し台14に備えられる排液処理装置1が、グリストラップと同等以上の性能、すなわちSHASE−Sのうち阻集器に関連した規格に適合した性能、あるいはこの規格と同等以上の性能を備えていれば、グリストラップAを設けることなく下水管など外部に排出することができる。
【0072】
(使用例)
図6に基づいて、排液処理装置付き流し台14の使用例を説明する。水槽15内には、食器などを洗った水や塵芥、油脂分などが混合された排液Bが溜まり、排水口16を通じて排水管17から排出される。図6に示すように2つの排水口16は、貯留槽5のうち第1貯留槽51(図では左側)の上方に向けられており、水槽15からの排液Bは全て第1貯留槽51に流下して貯留される。第1貯留槽51の貯留容量を超えると、排液Bは隔壁53の上を溢れて(オーバーフローして)第2貯留槽52に流れ込み、次第に第2貯留槽52に貯留されていく。第2貯留槽52内に設置された排液量計測手段13が、あらかじめ定められた閾値水位を超えたことを検知すると、この信号が制御手段(図示しない)に伝送されて、攪拌処理装置2の吸入手段による吸入操作が開始され、第2貯留槽52内の排液Bが徐々に攪拌処理装置2内に吸入されていく。また同時に、処理剤容器3の容器本体3a内の処理剤が送入路3bを通じて攪拌処理装置2内に吸入されていく。このように排液Bは、攪拌処理装置2内で処理剤が添加されて攪拌される。なお、温度センサで計測した排液Bの温度に基づいて、加温手段8(図6では図示しない)によりあらかじめ排液Bを適温まで加温しておくこともできる。排液処理を開始して所定時間が経過すると、攪拌処理装置2の吸入手段による吸入操作を停止し、さらに所定時間経過すると、排出手段の排出口2bに接続される外部排出管4を通して排液BがグリストラップAに(あるいは、グリストラップAを通さず排液処理装置1の外部に)排出される。必要に応じて、第1貯留槽51の底部に設けられた開閉弁6を開放して、第1貯留槽51から排液B(油脂分がほとんどない状態)を排出することもできる。
【0073】
[グリストラップ排液処理装置との併用]
本願発明の排液処理装置及び排液処理装置付き流し台は、厨房等からの排液を直接処理し得るものであり、処理した排液をグリストラップに排出する場合、グリストラップ内の排液は再度処理を必要としない。もっとも、グリストラップ内の排液を更に処理することはもちろん可能であり、この処理を実施する排液処理装置(以下、本願発明の排液処理装置と区別するため「グリストラップ排液処理装置」という。)について以下説明する。
【0074】
(従来のグリストラップによる排液処理)
はじめにグリストラップA内における通常の排液処理を図7に基づいて説明する。厨房などで生じた排液B(通常、塵芥が含まれている)がグリストラップA内に排出されると、排液Bに含まれる塵芥はグリストラップA内のバスケットCで回収される。グリストラップA内は数枚の仕切りDが設けられており、これによって排液Bの流速は減速するため、比重差からグリセリンと脂肪酸が結合した油脂分Eは上方に、水分F(通常、汚泥を含む)は下方に分離される。分離された水分Fは、トラップGを経て徐々に下水道や浄化槽に排出される。
【0075】
このように従来のグリストラップによる排液処理では、水分Fのみを外部に排出し油脂分Eは別途処理していたのに対して、ここに示すグリストラップ排液処理装置はこの油脂分Eも処理して外部に排出するものである。より詳しくは、油脂分Eと水分Fを化学反応で脂肪酸に変化させる(グリセリンと切り離す)。油脂を脂肪酸とすることで、油脂分Eそのものより生分解性がはるかに高まる。
【0076】
(グリストラップ排液処理装置の実施例1)
以下、グリストラップ排液処理装置の第1の実施例を図8に基づいて説明する。当該実施例は、グリストラップA内に直接鹸化剤を投入し、排液Bを図8に示すグリストラップ排液処理装置100によって処理するものである。グリストラップ排液処理装置1は、図8に示すように、汲み上げポンプ102、排出ポンプ103、塵芥除去器104、モータMが一つのケース105内に収容されている。ケース105は、底面に車輪106やハンドル107を取り付けて移動可能とすることもできる。
【0077】
(処理剤供給工程)
グリストラップA内の排液Bに直接処理剤である鹸化剤を投入する。排液Bと鹸化剤の混合比率は、石鹸化効率やコスト等の面から5:1程度が好ましいが、排液Bの汚れ具合によってこの比率を変え、例えば、汚れが著しい場合は鹸化剤の割合を大きく、汚れが少ない場合は鹸化剤の割合を小さくすることもできる。
【0078】
ここで使用する鹸化剤は、排液B、特に排液B中の油脂分Eを石鹸液状にする(石鹸化液にする)ことができるものであり、液状、ゲル状、粉状、その他の形状のものが使用され、一例として、出願人の商品(商品名「クリンエコフロー」)等を用いることができる。「クリンエコフロー」に含有される主成分は、脂肪酸ナトリウム、脂肪酸カリウム、ヤシ脂肪酸ジェタノールアミド、無機質類数種、精製水などである。なお、排液Bを改質可能であって環境に優しいものであれば、鹸化剤の他に界面活性剤、消臭剤、中和剤、又はこれら二以上の混合剤を使用することもできる。
【0079】
(混合攪拌工程)
図8に示すように、汲み上げポンプ102には連結パイプ102aが連結され、この連結パイプ102aの先には汲み上げパイプ又はホース(以下これらを「汲み上げホース108」という。)が連結され、この汲み上げホース108の先端はグリストラップA内の排液Bに差し込まれている。モータMの駆動により汲み上げポンプ102を作動させ、汲み上げホース108を通して鹸化剤が供給された排液Bを吸引し、汲み上げポンプ102内に貯蔵する。汲み上げポンプ102はグリストラップA内の排液Bを吸引する能力を必要とし、液体を吸引・吐出可能なバキューム、水中ポンプ、陸上ポンプ、その他の任意の電動式ポンプ等を用いることができる。また、汲み上げホース108は可撓性を有するものが適する。
【0080】
汲み上げポンプ102内に貯蔵された排液Bは、汲み上げポンプ102内に備えられる混合攪拌器(図示しない)によって鹸化剤と混合攪拌され石鹸化液となる。この混合攪拌処理が終わると、石鹸化液状態の排液Bは移送パイプ又はホース(以下、これらを「移送ホース109」という)を通じて塵芥除去器104内に排出される。この移送ホース109は、汲み上げホース108同様可撓性を有するものが適する。排出された石鹸化液状態の排液Bは、塵芥除去器104の通孔110を通過してトレイ111の中に流入し、さらにトレイ111の下部に接続されているホース112に流下する。この際、通孔110を通過し得なかった塵芥は、塵芥除去器104内に残って後に除去回収される。
【0081】
ホース112を流下した石鹸化液状態の排液Bは排出ポンプ103に貯蔵される。その後、後述する「排出工程」において、排出ポンプ103の連結パイプ103aに連結された排出パイプ又はホース(以下これらを「排出ホース113」という。)を経てグリストラップA内に排出される。この排出ホース113は、汲み上げホース108同様に可撓性を有するものが適する。排出ポンプ103内に貯蔵される間に、さらに石鹸化液状態の排液Bを混合攪拌すると、より確実に石鹸化液とすることができる。
【0082】
ホース112にフィルタHを設け、このフィルタHを流下させることで石鹸化液状態の排液Bを濾過、脱色、脱臭といった処理を行うこともできる。このフィルタHは、水中の汚れを除く効能を有するナノバブルあるいはマイクロ・ナノバブルを生成する装置を用いることができる。特に、オゾンによって生成されたナノバブル、マイクロ・ナノバブルは非常に強力な殺菌効果や消毒効果があり、その殺菌能力は塩素系殺菌剤に比べると約10倍で、そのうえトリハロメタンなど有害性物質を発生しないという効果もある。なお、フィルタHの配置箇所はホース112に限らず濾過、脱色、脱臭の効率が良くなるよう適宜選択可能で、配置数も同様に適宜選択することができる。
【0083】
(水質測定表示工程)
混合攪拌工程を経た石鹸化液状態の排液Bは、図8に示す水質測定器114によって水質測定される。水質を測る場合その測定項目は様々であり、例えば「水質汚濁防止法(排水基準を定める省令)」では、排水の排出基準として有害物質による汚染状態と有害物質以外による汚染状態に分け、さらに有害物質による汚染状態では、カドミウム及びその化合物、シアン化合物、六価クロム化合物の含有量など27の測定項目が掲げられ、有害物質以外による汚染状態では15項目が掲げられている。「水質汚濁防止法(排水基準を定める省令)」で定める、有害物質以外による汚染状態を測るための測定項目とその基準値は、前掲の表1のとおりである。
【0084】
水質測定器114では、全ての測定項目を測ることのできる計器類を備えたものとすることもできるが、排水の水質基準は監督する自治体によっても異なり、排出先によっては任意に水質基準を定められる場合もあるので、1又は2以上の測定項目を測ることのできる計器類を備えたものとすることもできる。なお、水質測定器114は排出ホース113の途中、グリストラップAの中、排出ポンプ103の中などに設置できるうえ、一箇所又は二箇所以上に設置することができる。また図8に示すように、水質測定器114に短い管とフランジを取り付けボルトによる取り付け構造とするなど、容易に排出ホース113に着脱できる構造とすることができる。このように水質測定器114をグリストラップ排液処理装置100の本体とは別体として着脱容易なものとすることもできるし、水質測定器114をあらかじめグリストラップ排液処理装置100の本体に組み込んだ構造とすることもできる。水質測定器114をフィルタHと一体型にし、装置全体の小型化を図ることもできる。
【0085】
水質測定器114で測定された測定値あるいはリトマス試験紙などによる測定結果(以下、これらをまとめて「測定水質」という。)は、情報伝達手段(図示しない)によりモニター115に伝達されて表示される。また、事前に目標とする測定項目ごとの基準値あるいはリトマス試験紙などによる判定基準(以下、これらをまとめて「基準水質」という。)をパソコンなどの情報格納手段に入力して格納しておき、この基準水質情報もあわせて表示することもできる。すなわち、水質測定器114で測定された測定水質がパソコンに伝達され、既に格納された測定項目とその基準水質とを合わせて情報整理し、その結果をモニター115に伝達して、測定項目−測定水質−基準水質といった具合に表示させる。このように、測定項目ごとに測定水質と基準水質を対応させて表示すると、排液Bの処理状態(汚染状態)が容易に確認できる。なお、モニター115が情報格納手段を備えている場合には、必ずしもパソコンを必要とはしない。
【0086】
モニター115では、測定項目、測定水質、基準水質の組み合わせに代えて、あるいはこれに加えて項目ごとに合否判定を表示することもできる。この合否判定は、事前に格納された基準水質と水質測定器114から伝達された測定水質を基にパソコンで計算し、その計算結果をモニター115に伝達して表示させる。表示内容としては、例えば、水素イオン濃度の測定水質が基準水質の範囲内に収まっていれば、水素イオン濃度については基準適合を意味する青色表示(その他、OKなど)とし、浮遊物質量が基準水質を5%ほど超えている場合は黄色表示(その他、注意など)、基準水質を極度に超えている場合は赤色表示(その他、NGなど)とすることもできる。また、各測定項目から総合的に判断して合否判定表示をすることもできる。
【0087】
パソコンあるいは情報格納手段を備えたモニター115にプリンタを接続すると、モニター115に表示する内容を印刷(印字)させることもできる。日付や時間、又は気温や湿度などとともに印刷しファイリングすれば、周辺環境に応じた鹸化剤の最適量の解析など、種々の解析、予測に役立つものとなる。
【0088】
モニター115は、ケース105などに組み込んで本体と一体型とすることもできるし、あるいは本体とは別体としてケース105などに着脱容易とすることもできる。
【0089】
(排出工程)
水質測定器114を通過した石鹸化液状態の排液Bは、モータMの駆動により排出ポンプ103を作動させて、排出ホース113を経て再度グリストラップA内に戻すか、又はグリストラップAの外部の下水道や浄化槽に排出する。水質測定器114を排出ホース113の途中や排出ポンプ103の中などに設置した場合、排出ホース113の排出先を2系統以上設け、測定水質に応じて排液Bの排出先を切り替えることもできる。すなわち、基準水質に適合すると判断された場合には、排出ポンプ103の排出先を下水道や浄化槽に切り替え、基準水質に適合しないと判断された場合には、排出先をグリストラップA内に切り替える。この切り替えは、手動とすることもできるし、制御装置を設けて自動制御方式を採ることもできる。
【0090】
グリストラップAに、グリストラップA用の水質測定器114aを設置すればグリストラップA内の排液Bの処理状態(汚染状態)が把握できる。水質測定器114aで測定された測定水質はパソコン(若しくは情報格納手段を備えたモニター115)に伝達され、この測定水質と既にパソコンに格納されている測定項目及びその基準水質とを合わせてモニター115に伝達し、表示させる。グリストラップA内の排液Bが目標の水質となっていなければ、再度、処理剤供給工程、混合攪拌工程、水質測定表示工程、排出工程といった一連の排液処理を実施し、モニター115に表示された水質測定器114aの測定水質が目標の値に到達していれば排液処理を終了する。この一連の排液処理を繰り返し実施するか否かは、人によって判断して操作することもできるが、事前に格納された基準水質と水質測定器114aから伝達された測定水質を基にパソコンで計算し、その計算結果に基づいて制御装置により自動運転させることもできる。
【0091】
(グリストラップ排液処理装置の実施例2)
グリストラップ排液処理装置の第2の実施例を図8に基づいて説明する。本実施例は、グリストラップ排液処理装置100に処理剤容器116が備えられた場合を説明するものであり、その基本的構造や排液処理方法等はグリストラップ排液処理装置の実施例1と共通する。
【0092】
図8に示す処理剤容器116は、処理剤である鹸化剤を収容可能な容器である。この処理剤容器116の底面には処理剤供給路116aが連結され、この処理剤供給路116aの下端は連結パイプ102aに接続され、処理剤容器116内の鹸化剤が汲み上げホース108で汲み上げられた排液Bと混合されるようにしてある。処理剤供給路116aは管状であり、その途中に開閉弁116bが設けられ、前記開閉弁116bの開閉操作によって鹸化剤の流量調整、供給停止、供給開始の操作が可能となっている。図8では、処理剤容器116を連結パイプ102aの上方に配置し、鹸化剤を自由落下させて連結パイプ102a内の排液Bに供給させるが、処理剤容器116を低い位置に配置し、汲み上げポンプ102の駆動により処理剤容器116内の鹸化剤を吸引する構造としてもよい。もちろん、図8のように処理剤容器116を連結パイプ102aの上方に配置した場合であっても、汲み上げポンプ102の駆動により処理剤容器116内の鹸化剤を吸引するものとしてもよい。
【0093】
(グリストラップ排液処理装置の実施例3)
グリストラップ排液処理装置の第3の実施例を図9に基づいて説明する。本実施例は、グリストラップ排液処理装置100に処理タンク117が備えられた場合を説明するものであり、その基本的構造や排液処理方法等はグリストラップ排液処理装置の実施例1〜2と共通する。
【0094】
処理タンク117は排液Bと鹸化剤を混合して貯めることのできるタンクであって、図9に示すように移送ホース109が差込まれて汲み上げポンプ102で吸引された排液Bが処理タンク117内に送り込まれるようにしてある。更に処理剤容器116に連結された処理剤供給路116aも処理タンク117内に差込まれて鹸化剤が供給されるようにしてある。処理タンク117内には塵芥除去器104が設けられ、グリストラップ排液処理装置の実施例1で説明したように排液Bに含まれる塵芥は塵芥除去器104内に残って後に除去回収される。
【0095】
処理タンク117内には、回転軸118aと羽根118bを備える攪拌装置118が配置されており、回転軸118aの回転による羽根118bの攪拌作用に伴い、処理タンク117内で排液Bと鹸化剤が混合攪拌されることで、排液Bは石鹸液化される。処理タンク117内で石鹸化液状態となった排液Bは、ホース112を通して排出ポンプ103内に吸引される。
【0096】
(グリストラップ排液処理装置の実施例4)
グリストラップ排液処理装置の第4の実施例を図10に基づいて説明する。本実施例は、グリストラップAの排液B内に汲み上げポンプ119を沈めたグリストラップ排液処理装置1を用いる場合を説明するものであり、その基本的構造や排液処理方法等はグリストラップ排液処理装置の実施例1〜3と共通する。
【0097】
このグリストラップ排液処理装置100は、図10に示すように、汲み上げポンプ119はグリストラップAの排液B内に沈められ収納ケース120内に収められたものである。汲み上げポンプ119に連結された汲み上げホース108の吸引口121からグリストラップA内の排液Bを吸引し、汲み上げポンプ119を通過させて石鹸液化した後に、排出ホース113の排出口122から排出できるようにしてある。
【0098】
汲み上げホース108の途中には、処理剤容器116に連結された処理剤供給路116aが接続されており、モータMにより汲み上げポンプ119を作動させて汲み上げホース108の吸引口121からグリストラップA内の排液Bを吸引すると同時に、処理剤容器116から鹸化剤を吸引する。モータMは、汲み上げポンプ119に内蔵しておくこともできる。また図10の例では処理剤容器116がグリストラップAの外に配置されているが、処理剤容器116はケース105内に設置することもできる。処理剤供給路116aは管状であり、その途中には開閉弁116bを設けることもできる。
【0099】
汲み上げポンプ119内に吸引された排液Bは鹸化剤と混合攪拌されて石鹸化液となる。図10の汲み上げポンプ119は、吸引した液体を攪拌して送り出すものであることにおいては前記グリストラップ排液処理装置の実施例1〜3の汲み上げポンプ102と同じであるが、汚泥吸引用水中ポンプなどのように塵芥や汚泥を含む排液Bを吸引しても故障しにくい構造のものを使用することが望ましい。
【0100】
図10に示す収納ケース120は、汲み上げポンプ119を被覆しグリストラップA内の排液Bから保護する筐体である。汲み上げポンプ119及び収納ケース120をグリストラップA内の排液B中に入れる場合は、例えば、収納ケース120を支持台123(図7)で支持したり、収納ケース120をグリストラップAの周縁に係止して排液B中に吊下げたりすることができる。支持台123は、汲み上げポンプ119及び収納ケース120の高さを調節することができる。
【0101】
排出ホース113の途中には水質測定器114が取り付けられ、排出ホース113の排出口122は塵芥除去器104内にセットされている。排出ホース113から排出される石鹸化液状態の排液Bを塵芥除去器104に排出することにより塵芥及び汚泥が分離除去されるようにしてある。塵芥除去器104を通過した排液Bは、塵芥除去器104の下に配置されたフィルタHで濾過、脱色、脱臭等された後にグリストラップA内に流下する。
【0102】
前記グリストラップ排液処理装置の実施例1〜3同様、ケース105の外面にはモニター115が設置され、グリストラップAの排液B内にはグリストラップA用の水質測定器114aを設置することができる。
【0103】
(グリストラップ排液処理装置の実施例5)
グリストラップ排液処理装置の第5の実施例を図11に基づいて説明する。本実施例は、汲み上げポンプ内蔵型の開口ケースが備えられたグリストラップ排液処理装置100を用いる場合を説明するものであり、その基本的構造や排液処理方法等はグリストラップ排液処理装置の実施例1〜4と共通する。
【0104】
このグリストラップ排液処理装置100は、図11に示すように、汲み上げポンプ内蔵型の開口ケース124が設けられ、開口ケース124の一部はグリストラップAの排液B内に沈められている。開口ケース124にある開口部125からグリストラップA内の排液Bを吸引し、開口ケース124を通過させて石鹸液化した後に、排出ホース113から排出できるようにしてある。
【0105】
開口ケース124は汲み上げポンプを収容可能なサイズとしてあり、開口ケース124の側面にグリストラップA内の排液Bを取り込むための開口部125が設けられている。図11に示す開口部125は一例であり、開口部125の大きさ、数、形成位置は任意に選択することができる。開口ケース124内には前記開口部125から取り込んだ排液Bを一時的に貯蓄しておくための貯蓄スペース126を設けてある。
【0106】
開口ケース124は、グリストラップAの周縁に渡した棒状またはパイプ状の長尺な支持材127に吊り下げられた吊り具128で支持され、昇降機(例えば、ウインチ)129の操作で昇降できるようにしてある。吊り具128は金属製のチェーンであるが、それ以外のもの、例えば、ロープ、帯等であっても良いし、吊り具128は一本でも二本以上でも良い。
【0107】
吊り具128はグリストラップAの周縁以外にも、例えば、グリストラップAの上方に設置した支持材127に吊り下げて係止することができる。より具体的には、グリストラップAの天板を外し、その開口部分に単管パイプ、角鋼管、H形鋼といった細長棒材などの支持材127を架設し、その支持材127に吊り具128を吊り下げる。開口ケース124を昇降機129で吊り下げることで、グリストラップA内の液の量が減少しても汲み上げポンプで確実に排液Bが汲み上げられ、昇降機129を操作することにより手軽に昇降させることができる。開口ケース124の開口部125は、グリストラップA内の排液Bの油脂層(排液Bの油脂分Eの層)内に浸しておくことが望ましい。
【0108】
開口ケース124には、処理剤容器116に連結された処理剤供給路116aが接続されており、開口ケース124に内蔵された汲み上げポンプによって開口部125からグリストラップA内の排液Bを吸引すると同時に、処理剤容器116から鹸化剤を吸引する。図11の例では処理剤容器116がグリストラップAの外に配置されているが、処理剤容器116はグリストラップA内に設置することもできる。処理剤供給路116aは管状であり、その途中には開閉弁(図示しない)を設けることもできる。
【0109】
開口ケース124内に吸引された排液Bは鹸化剤と混合攪拌されて石鹸化液となる。開口ケース124に内蔵される汲み上げポンプは、吸引した液体を攪拌して送り出すものであることにおいては前記グリストラップ排液処理装置の実施例1〜3の汲み上げポンプ102と同じであるが、汚泥吸引用水中ポンプなどのように塵芥や汚泥を含む排液Bを吸引しても故障しにくい構造のものを使用することが望ましい。
【0110】
排出ホース113の途中には水質測定器114が取り付けられ、排出ホース113の先には塵芥除去器130が配置されている。この塵芥除去器130は、開口ケース124と同じく支持材127に吊り下げられている。排出ホース113から排出される石鹸化液状態の排液Bを塵芥除去器130に排出することにより、塵芥及び汚泥が分離除去されるようにしてある。また塵芥除去器130の下にはフィルタHが配置されていて、塵芥除去器130を通過した排液Bは、フィルタHで濾過、脱色、脱臭等された後にグリストラップA内に流下する。
【0111】
前記グリストラップ排液処理装置の実施例1〜4同様、ケース105の外面にはモニター115が設置され、グリストラップAの排液B内にはグリストラップA用の水質測定器114aを設置することができる。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本願発明の排液処理方法、及び排液処理装置と排液処理装置付き流し台は、給食センタ−、ホテル、食物加工所、スーパー、デパート、病院、飲食店などの厨房で利用できるほか、工場や農場で排出される排液の処理に応用することができる。
【符号の説明】
【0113】
1 排液処理装置
2 攪拌処理装置
2a (攪拌処理装置2の)流入口
2b (攪拌処理装置2の)排出口
3 処理剤容器
3a (処理剤容器3の)容器本体
3b (処理剤容器3の)送入路
4 外部排出管
5 貯留槽
5a (貯留槽5の)槽本体
5b (貯留槽5の)支持脚
5c (貯留槽5の)排出口
51 (貯留槽5の)第1貯留槽
52 (貯留槽5の)第2貯留槽
53 (貯留槽5の)隔壁
6 開閉弁
7 フロート
8 加温手段
9 処理剤装置
9a 処理剤容器
9b 排出管
10 (攪拌処理装置2の)貯留槽
10a (貯留槽10の)第1貯留槽
10b (貯留槽10の)第2貯留槽
10c (貯留槽10の)隔壁
11 (攪拌処理装置2の)攪拌装置
12 (攪拌処理装置2の)排出口
13 排液量計測手段
14 排液処理装置付き流し台
15 (排液処理装置付き流し台の)水槽
16 (排液処理装置付き流し台の)排水口
17 (排液処理装置付き流し台の)排水管
100 グリストラップ排液処理装置
102 汲み上げポンプ
102a (汲み上げポンプの)連結パイプ
103 排出ポンプ
103a (排出ポンプの)連結パイプ
104 塵芥除去器
105 ケース
106 車輪
107 ハンドル
108 汲み上げホース
109 移送ホース
110 通孔
111 トレイ
112 ホース
113 排出ホース
114 水質測定器
114a (グリストラップA用)水質測定器
115 モニター
116 処理剤容器
116a 処理剤供給路
116b 開閉弁
117 処理タンク
118 攪拌装置
118a 回転軸
118b 羽根
119 汲み上げポンプ
120 収納ケース
121 吸引口
122 排出口
123 支持台
124 開口ケース
125 開口部
126 貯蓄スペース
127 支持材
128 吊り具
129 昇降機
130 塵芥除去器
A グリストラップ
B 排液
C バスケット
D 仕切り
E 油脂分
F 水分
G トラップ
H フィルタ
J キャスター
M モータ
P ポンプ
R 流し台
S 流入パイプ
T (流し台Rの)排水管
U ジョイント
W 排出管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排液と液状鹸化剤を攪拌して、排液を排出許容限度(排出基準値)に適合させるべく処理してグリストラップ又は外部に排出する排液処理方法において、
排出元から排出された排液がグリストラップ又は外部に排出される前に、その排液に液状鹸化剤を供給し、その排液と液状鹸化剤を攪拌し、攪拌処理された排液をグリストラップに又はグリストラップを通さずに外部に排出することを特徴とする排液処理方法。
【請求項2】
排液と液状鹸化剤を攪拌して、排液を排出許容限度(排出基準値)に適合させるべく処理してグリストラップ又は外部に排出する排液処理方法において、
排出元から排出された排液がグリストラップ又は外部に排出される前に、その排液と液状鹸化剤をポンプで吸引して、そのポンプにより排液と液状鹸化剤を攪拌し、攪拌処理後の排液を前記ポンプからグリストラップに又はグリストラップを通さずに外部に排出することを特徴とする排液処理方法。
【請求項3】
排液と液状鹸化剤を攪拌して、排液を排出許容限度(排出基準値)に適合させるべく処理してグリストラップ又は外部に排出する排液処理方法において、
排出元から排出された排液がグリストラップ又は外部に排出される前に、その排液と液状鹸化剤を貯留槽に貯留し、その排液と液状鹸化剤を貯留槽内において攪拌し、攪拌処理された排液を貯留槽からグリストラップに又はグリストラップを通さずに外部に排出することを特徴とする排液処理方法。
【請求項4】
水槽と排水口と排液処理装置を備えた流し台において、
排液処理装置が、厨房、調理場等の排出元から排出された排液がグリストラップに排出される前に、又はグリストラップの外部に排出される前に、その排液を吸引するポンプと、処理剤容器を備え、ポンプと処理剤容器は通路で連結され、前記ポンプは前記排液と処理剤容器内の液状鹸化剤を吸引してそれらを当該ポンプの入り口で合流させ、当該排液を排出許容限度に適合させるべく前記排液と液状鹸化剤を当該ポンプ内で攪拌混合して石鹸化液にし、その石鹸化液をグリストラップに入れるか又はグリストラップを通さずにグリストラップの外部に排出可能であり、
前記排水口から排出された排液が前記排液処理装置によって攪拌処理され、
攪拌処理された排液を、グリストラップに又はグリストラップを通さずに外部に排出する排出機構を備えたことを特徴とする排液処理装置付き流し台。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−223767(P2012−223767A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−173681(P2012−173681)
【出願日】平成24年8月6日(2012.8.6)
【分割の表示】特願2010−194659(P2010−194659)の分割
【原出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(504233362)株式会社日本エコシス (8)
【Fターム(参考)】