説明

排熱エネルギー回収システム

【課題】低温の排熱ガスのエネルギーを効率よく回収することを可能にする。
【解決手段】排熱ガスから与えられる熱によって気化したジメチルエーテル、メタノールおよびエタノールのいずれか一種または二種以上に水蒸気を接触させて改質する改質器1と、前記排熱ガスから与えられる熱によって水から水蒸気を生成して前記改質器1に供給する蒸発器2と、温水から与えられる熱によってジメチルエーテル、メタノールおよびエタノールのいずれか一種または二種以上を気化させて前記改質器1に供給する原料気化器3とを備えることにより、低温で大量に排出される加熱炉などの排ガス及び温水を、DMEなどを原燃料とした水蒸気改質用の熱源として有効利用でき、エネルギー回収効率を大幅に向上できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄鋼関連等の事業体で運用する加熱炉などにおいて大量に排出される低温の排ガス及び温水を有効利用することができる排熱エネルギー回収システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、鉄鋼関連等の事業体で運用する加熱炉において大量に排出される排ガス及び温水の有効利用が、省エネルギーの観点から大きな課題となっている。
近年、レキュペレータ方式やリジェネバーナ一方式等に代表される低い排ガス温度(250℃〜400℃)で運用される加熱炉では、排ガスの利用先として、ボイラーに利用するには温度が低く、さりとて気化器に適用するには温度が高いという問題がある。同様に加熱炉が1200℃以上の高温で運用される関係で大量の冷却水を使用することで発生する温水についても、その利用方法が問題となっている。
【0003】
このような観点から上記した比較的低温の排ガスを利用して排熱回収を行うシステムも既に提案されている(特許文献1参照)。
特許文献1において提案されている低質排熱回収システムの実施形態の1つを図3に示す。
図3において、低質排熱回収システムは、排熱ガスを通流させる低質排熱ガス順路系20と、この低質排熱ガス順路系20から分岐し、DME(ジメチルエーテル)を改質した改質ガスから水素ガスを精製する水素精製系21aとを備えたものである。低質排熱ガス順路系20は排熱ガス温度の高い方から低い方に向かって順に、改質器21、蒸発器22、再生器23、DME気化器24を備えている。又、水素精製系21aは改質ガス温度の高い方から低い方に向かって順に、一酸化炭素変成器25、冷却器26、二酸化炭素吸収器27、水素粗精製回収器28、高純度二酸化炭素回収器29を備えている。
【0004】
次に、上記システムの動作について説明する。DME気化器24は、排熱ガスを熱源として液相のDMEを気化させ、DMEガスにする。一方、蒸発器22は、排熱ガスを熱源として水を気化させ、DME気化器24から供給されるDMEガスとともに改質器21へと送る。改質器21ではDMEガスを水蒸気改質させ、水素リッチな改質ガスを生成する。又、改質器21で反応が充分に行われなかった残りの一酸化炭素(CO)は一酸化炭素変成器25で発熱反応させ、水素、二酸化炭素(CO)ガスを生成する。改質ガスの発熱反応後に生成されたCOは、冷却器26で冷却させて二酸化炭素吸収器27で二酸化炭素吸収剤により吸収される。改質ガスの内、COを吸収剤で吸収させた二酸化炭素吸収器27は、残りを粗精製水素ガスに生成し、水素粗精製回収器28に回収させる。他方、二酸化炭素吸収器27の吸収剤で吸収させたCOは再生器23に供給され、ここで排熱ガスを熱源として高純度のCOが生成され、高純度二酸化炭素回収器29に回収させる。
【0005】
このように、前記の低質排熱回収システムは、産業用機器やごみ焼却施設から排出される低質な排熱ガスをカスケード的に利用することにより水素製造及びCOの分離を図ったものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−31255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように鉄鋼関連等の事業体で運用する加熱炉において、低温の排ガスの形で大量に排出される余剰エネルギーを効率よく回収する手段として、DMEを原燃料とした低温での水蒸気改質は非常に有効であるが、従来の提案システムでは、エネルギー回収対象が排熱ガスのみの点、エネルギー回収方法を限定している点、エネルギー回収効率面の検証がされていない点、等の課題がある。
【0008】
また、排ガスをカスケード的に利用していくと、最終的には、排ガスの温度は相当に低くなる(例えば100℃程度もしくはそれ以下)。しかし、排ガスには、発生源において硫化物や硝酸などがガス状になって含まれており、排ガスの温度が低下すると、これらが凝縮して熱利用を図る熱交換などに付着、堆積し、経時的には熱交換器の配管などに損傷を招いて耐久性を低下させるという問題がある。
【0009】
本発明は、上述事情を背景としてなされたものであり、比較的低温での排熱ガスや温排水を用いて効率よくエネルギー回収を図ることを可能にし、また、排熱ガスの温度低下による硫化物等の凝縮を極力回避可能なシステムを提供することを目的の一つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明の排熱エネルギー回収システムのうち、第1の本発明は、排熱ガスから与えられる熱によって気化したジメチルエーテル、メタノールおよびエタノールのいずれか一種または二種以上に水蒸気を接触させて改質する改質器と、前記排熱ガスから与えられる熱によって水から水蒸気を生成して前記改質器に供給する蒸発器と、温水から与えられる熱によってジメチルエーテル、メタノールおよびエタノールのいずれか一種または二種以上を気化させて前記改質器に供給する原料気化器とを備えることを特徴とする。
【0011】
本発明では、上記のようにジメチルエーテル、メタノール、エタノールを原材料として用いる。それぞれ単独の場合の他、二種以上を混合して用いることができ、その際の混合比は本発明としては特に限定されないものである。また、改質器に導入される原材料としては、上記ガスが主成分として含まれているものであればよく、本発明としては、その他のガスを含むものを排除するものではない。
【0012】
また、排熱ガスの温度は本発明としては特に限定されるものではないが、比較的低温(例えば250〜400℃)のものにおいて、好適に適用することができ、高い回収効率を得ることができる。
また、温水は、排熱ガスの発生源によって得られるものであってもよく、他の発生源において発生したものであってもよい。
また、前記蒸発器で得た水蒸気の一部を用いて温水を直接または熱利用によって得るようにしてもよい。
【0013】
なお、排熱ガスは、上記のように蒸発器と原材料気化器において利用されるため、排気ガスを改質器と蒸発器とで並行して利用するものであってもよいが、改質器で要求される温度の方が、蒸発器で要求される温度よりも高いため、排熱ガスを先ず、改質器に導入し、その後、温度が低下した排熱ガスを蒸発器に導入するようにしてもよい。これにより排熱ガスのエネルギーをより効率よく回収することができる。
【0014】
排熱ガスの熱の利用は、種々の方式の熱交換により行うことができる。
また、上記改質器に原材料気化器で気化した原材料と蒸発器で得た水蒸気とを導入する際に、予混合加熱器に気化原材料と水蒸気とを導入して予め混合して予備加熱するようにしてもよい。これにより改質器での改質反応を効率的に行うことができる。しかも、予備加熱に際し、改質器で熱利用して温度が低下した排熱ガスを利用することで、排熱エネルギーを効果的に回収することができる。予混合加熱器で利用して温度の低下した排熱ガスは、上記のように蒸発器に導入して利用することができる。蒸発器で要求される温度は100℃以上であればよく、予混合加熱器で利用して温度が低下した排熱ガスであっても効率よく利用して排熱エネルギーを回収することができる。
【0015】
蒸発器で利用した排熱ガスは、そのままシステム外に排気してもよく、また、システムに含まれるその他の機器、例えば固定したCOを再生する再生器などに用いることができる。ただし、排熱ガスを熱利用する際に、最終利用後の温度は、180℃以上に制限するのが望ましい。これにより排熱ガスに含まれる硫化物や硫酸、硝酸、塩酸等が、排熱ガスの温度低下によって凝縮し、熱交換器などに付着して損傷を発生させるのを回避することができる。
【0016】
改質器で改質されたガスは、改質器から排出して適宜利用することができる。その際に、改質ガスを冷却器によって冷却することで水分を凝縮させて、これを除去した後に利用系に移送するのが望ましい。利用系では、改質ガスをそのまま燃料などとして利用することもでき、また、水素や二酸化炭素を分離して、精製された水素を燃料電池などに利用するようにしてもよい。
以上の方法により、低温で大量に排出される加熱炉の排ガス及び温水を有効利用したエネルギー回収を可能とする。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によれば、低温で大量に排出される加熱炉の排ガス及び温水を、ジメチルエーテル、メタノールおよびエタノールのいずれか一種または二種以上を原燃料とした水蒸気改質用の熱源として有効利用することにより、従来方式と比べてエネルギー回収効率を大幅に向上することができる。この結果、低温で大量に排出される加熱炉などの排ガス及び温水を有効利用したエネルギー回収を可能とする。
【0018】
例えば、メタノールの場合、燃焼熱のみを考えれば、低位発熱量(LHV)は639kJ/mol、高位発熱量(HHV)は727kJ/molである。これを排熱を有効利用してエネルギー価値を上げるように本発明の改質を行えば、改質熱と気化熱によって、低位発熱量(LHV)は726kJ/mol、高位発熱量(HHV)は858kJ/molである。この熱量は、3モルの水素に与えられることにより、低位発熱量(LHV)は242kJ/mol×3、高位発熱量(HHV)は286kJ/mol×3となり、エネルギー価値が上がる。
【0019】
また、DMEの場合、燃焼熱のみを考えれば、低位発熱量(LHV)は1329kJ/mol、高位発熱量(HHV)は1464kJ/molである。これを排熱を有効利用してエネルギー価値を上げるように本発明の改質を行えば、改質熱と気化熱によって、低位発熱量(LHV)は1452kJ/mol、高位発熱量(HHV)は1716kJ/molである。この熱量は、6モルの水素に与えられることにより、低位発熱量(LHV)は242kJ/mol×6、高位発熱量(HHV)は286kJ/mol×6となり、エネルギー価値が上がる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の排熱エネルギー回収システムの基本的な系統図である。
【図2】同じく、詳細部分を含む系統図である。
【図3】従来の排熱エネルギー回収システムにおける系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の一実施形態の排熱エネルギー回収システムの概略を図1の系統図により説明する。なお、この形態では、DME(ジメチルエーテル)を改質の対象にしているものとして説明する。
加熱炉などで発生した排熱ガスを導入する排熱ガス導入管11が改質器1に接続されており、改質器1では、排熱ガス導入管11で導入される排熱ガスの熱の授受(熱交換)が行われる。改質器1では、気化DMEが気化原材料として供給される気化原材料供給管3bと、蒸気が供給される水蒸気供給管2bとが接続されており、改質器1内でこれら気化原材料と蒸気が互いに接触するとともに、排熱ガスによる熱が付与される。改質器1には、改質されたガスを排出する改質ガス排出管1bが接続されている。
【0022】
改質器1において一部の熱の利用がなされた排熱ガスは、排熱ガス移送管12を通して、蒸発器2に導入される。蒸発器2には、水供給管2aが接続されており、排熱ガス移送管12を通して導入される排熱ガスによって熱の付与(熱交換)が可能になっている。
また、蒸発器2には、一部の熱が利用された排熱ガスを排出する排気管13が接続されている。該排気管13で移送される排熱ガスに対しては適宜の排ガス処理などを行ったり、そのまま破棄したりすることができる。
【0023】
また、原材料気化器3は、原材料である液体DMEが供給される原材料供給管3aが接続されており、さらに加熱炉などから供給される温水供給管15が接続されている。温水供給管15は、原材料供給管3aから供給される液体DMEに熱付与(熱交換)することが可能になっている。原材料気化器3で熱の授受がなされた温水は、原材料気化器3に接続された排水管16によって原材料気化器3外に排出されるようになっている。また、原材料気化器3には、前記した気化原材料供給管3bが接続されている。
【0024】
次に、上記排熱エネルギー回収システムの動作について説明する。
まず、原材料である液体DMEを、原材料供給管3aによって原材料気化器3に供給するとともに、加熱炉を冷却する工程で発生した温水を温水供給管15によって前記原材料気化器3に供給し、原材料気化器3内で液体DMEを温水で加熱して気化させる。液体DMEの沸点は、−23.6℃と低いため、比較的低温の温水によって容易に気化させることができる。気化した気化DMEは気化原材料として、気化原材料供給管3bによって改質器1に供給される。熱の付与に利用された温水は、排水管16によって原材料気化器3外に排出される。
【0025】
一方、水蒸気改質の際に気体原材料と同時に必要となる水蒸気は蒸発器2において得られる。すなわち、水を水供給管2aによって蒸発器2に供給し、排熱ガスによる熱によって前記水を加熱し水蒸気を生成する。排熱ガスは、改質器1で利用して温度が低下した排熱ガスが利用される。すなわち、該排熱ガスは、改質器1に接続された排熱ガス移送管12を通して蒸発器2に導入される。水供給管2aを通して供給される前記水は前記排熱ガスの熱によって加熱されて水蒸気となる。水蒸気は、水蒸気供給管2bを通して前記改質器1に供給される。蒸発器2で一部の熱が利用された排熱ガスは、ある程度の温度(例えば180℃以上)を有したままで、排気管13を通して蒸発器2から排出される。これにより蒸発器2内で、排熱ガスに含まれる硫化物や硝酸が凝縮することなく排気管13を通して外部に排出することができる。
【0026】
このようにして得られた気化DME及び水蒸気は、前記したように気化原材料供給管3bおよび水蒸気供給管2bを通して改質器1に供給される。
改質器1に供給された混合燃料(気化DME及び水蒸気)は250℃〜400℃の加熱炉から出る排ガスにより下記反応式1を基本として水蒸気改質されて、主成分が水素である燃料改質ガスが生成される。燃料改質ガスは、改質ガス移送管1bによって移送され、適宜の処理、使用がなされる。
CHOCH+3HO→6H+2CO …(反応式1)
【0027】
なお、上記では、原材料としてDMEを使用するものについて説明したが、メタノールまたはエタノールもしくはこれらの混合物を原材料として用いることができる。
なお、メタノールの沸点は、64.7℃であるので、原材料気化器3に供給される温水は、これよりも高い温度を有することが必要である。したがって、比較的温度の低い温水を用いる場合は、原材料としてはDMEの方が有利である。また、温水の温度が低い場合、温水を加熱して原材料気化器3に供給することも可能である。
メタノールを用いる場合、改質器1では下記反応式2を基本として排熱ガス及び温水を利用して水蒸気改質されて、主成分が水素である燃料改質ガスが生成される。
CHOH+HO→3H+CO …(反応式2)
【0028】
次に、排熱エネルギー回収システムの詳細を図2に基づいて説明する。
なお、上記概略で説明したものと同様の構成については同一の符号を付して説明する。
圧延工場に備えられる加熱炉10では、操業に伴って排熱ガスおよび温水が発生しており、排熱ガスは、排ガス配管10aによって排気筒10bなどに送られる。排ガス配管10aには、前記した排熱ガス導入管11が分岐しており、該排熱ガス導入管11には、吸気側隔離弁110が介設されている。吸気側隔離弁110の下流側には、ブロワ111が介設され、排熱ガスを強制通気させる。また、排熱ガス導入管11には、必要に応じて排ガス予備加熱器112が介設されている。排ガス予備加熱器112は、排熱ガス導入管11から供給される排熱ガスの温度が十分でない場合に、予備加熱をするために設置することができ、排熱ガスの温度が十分であれば設置の必要はない。また、排熱ガスの温度のバラツキに応じて予備加熱の有無を制御してもよい。
【0029】
排熱ガス導入管11のさらに下流側には、前記で説明した改質器1が接続されている。該改質器1では、気化原材料と水蒸気とが混合されて供給される混合原材料供給管1aが接続されている。混合原材料供給管1aの上流端は、予混合加熱器としての原材料水蒸気混合予熱器5に接続されている。原材料水蒸気混合予熱器5には、前記した気化原材料供給管3bと水蒸気供給管2bとが接続されており、気化原材料供給管3bの上流端は原材料気化器3に接続され、水蒸気供給管2bの上流端は蒸発器2に接続されている。
【0030】
原材料水蒸気混合予熱器5では、前記改質器1で利用されて温度の低下した排熱ガスが排熱ガス移送管5aによって供給され、気化原材料と水蒸気との混合物に熱を付与する。該混合物は、原材料水蒸気混合予熱器5内で適度に加熱されつつ混合され、その後、混合原材料供給管1aを通して改質器1に供給される。
原材料水蒸気混合予熱器5内で気化原材料と水蒸気とが混合され、かつ予備加熱されるので、改質器1内では、均等に混合され、かつ昇温した混合原材料が効果的に昇温して改質反応が生じる。
【0031】
また、原材料気化器3には、前記した原材料供給管3aが接続されており、該原材料供給管3aの上流端にはDMEなどが収容される原材料タンク3cが接続されている。原材料タンク3cから適宜量の液体原材料が原材料供給管3aを通して原材料気化器3に供給されて気化原材料が生成される。
また、蒸発器2には、前記した水供給管2aが接続されており、該水供給管2aの上流端には、水が収容される水タンク2cが接続されている。水タンク2cから適宜量の水が水供給管2aを通して蒸発器2に供給されて水蒸気が生成される。
【0032】
さらに、原料気化器3には、加熱炉10において冷却に用いられて発生した温水を供給する温水供給管15および熱交換後の温水を排水する排水管16が接続されている。また、蒸発器2では、原材料水蒸気混合予熱器5で用いられた排熱ガスを排出する排気管12が接続されている。蒸発器2に接続されている排気管13は、排気側隔離弁115を介して前記排ガス配管10aに合流して排気筒10bに移送される。
蒸発器2で生成された蒸気の一部は、バルブ116を介して蒸気分岐管17によって温水供給管15に供給され、原料気化器3に供給されてもよい。
【0033】
また、改質器1では、改質した改質ガスを排出する前記改質ガス排出管1bが接続されている。改質ガス排出管1bには、改質ガスを冷却する冷却器113を備えており、冷却された改質ガスは利用側に供給される。冷却器113に通された改質ガスは、含有する水分が除去される
【0034】
利用側としては、例えば改質ガスを燃料として直接利用することができ、例えば、加熱炉燃料、圧延ボイラー燃料、HCCI(予混合圧縮着火)等のエンジン発電燃料などとして用いることができる。また、改質ガスから水素を分離精製し、残余のCOを固定するようにしてもよい。生成した水素は、PEFC(固体高分子形燃料電池)発電燃料に用いたり、SOFC(固体酸化物燃料電池)発電燃料に用いたりすることができる。なお、上記した改質ガスの利用はあくまで例示であり、本発明としては、改質ガスの利用形態が特に限定されるものではない。
なお、上記では、排熱回収システムとして、改質器1、蒸発器2、原材料気化器3を有するものについて説明したが、本発明としては、これら機器を最少限を備えるものであればよく、当然にこれら以外に分離器などの適宜の機器を備えるものであってよい。
【0035】
以上、本発明について上記実施形態に基づいて説明を行ったが、本発明としては、上記説明の内容に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りは適宜の変更が可能である。
【実施例1】
【0036】
以下に、本発明の実施例について説明する。
先ず、圧延工場加熱炉で発生した排熱ガスが、400℃、熱量約99万kcal/hr.、排ガス流量約8203Nm/hr.で回収システムに導入されるものとする。回収システムで利用された排熱ガスは、改質器から排出された直後、300℃の温度を有し、蒸発器に導入される際の温度が200℃、蒸発器排出時には180℃の温度を有しているものとする。この例では、回収システムにおいて、原材料として液体メタノールが使用される。
なお、排ガス熱量は、下記式により算出することができる。
排ガス熱量≒排ガス流量×比熱×(T−20℃) … (式3)
ただし、T:排ガス温度
【0037】
(1)改質用エネルギー
排ガス保有熱量(Qt)(400℃→180℃)
Qt=99万kcal/hr.×(400℃−200℃)/(400℃−20℃)=
52万kcal/hr.
回収エネルギー(Qr)=保有熱量×η1=36.5万kcal/hr.
η1:排熱回収システム熱効率(=70%;放熱ロス、熱交換効率などを考慮し仮定)
【0038】
(2)水素発生量(VH2)の算出
水素発生量=改質エネルギー/(メタノール水素発生必要エネルギー)×η2
η2:改質システム熱効率(=約70%と仮定)
H2={(36.5万kcal/hr.×4.186kJ/kcal×22.42L)/(131kJ/3モル×1000L/Nm)}×η2=550Nm/hr.
【0039】
上記に示すように、本発明の排熱エネルギー回収システムでは、排熱エネルギーを効率的に回収して、大量の水素を生成することが可能になる。
【0040】
(実施例2)
次に、圧延工場加熱炉で発生した排熱ガスが、400℃、熱量約99万kcal/hr.、排ガス流量約8203Nm/hr.で回収システムに導入されるものとする。回収システムで利用された排熱ガスは、改質器から排出された直後、300℃の温度を有し、蒸発器に導入される際の温度が200℃であり、蒸発器排出時には180℃の温度を有しているものとする。この例では、回収システムにおいて、原材料としてDMEが使用される。
なお、排ガス熱量は、上記と同様に下記式により算出することができる。
排ガス熱量≒排ガス流量×比熱×(T−20℃) … (式4)
ただし、T:排ガス温度
【0041】
回収熱量の推定
(1)改質用エネルギー
排ガス保有熱量(Qt)(400℃→180℃)
Qt=99万kcal/h×(400℃−200℃)/(400℃−20℃)=52万kcal/h
回収エネルギー(Qr)=保有熱量×η1=36.5万kcal/h
η1:排熱回収システム熱効率(=70%;放熱口ス、熱交換効率などを考慮し仮定)
(2)水素発生量(VH2)の算出
水素発生量=改質エネルギー/(DME水素発生必要エネルギー)×η2
η2:改質システム熱効率(=約70%と仮定)
H2={(36.5万kcal/hr.×4.186kJ/kcal×22.42L)/(252kJ/6モル×1000L/Nm)}×η2=570Nm/hr.
【0042】
上記に示すように、本発明の排熱エネルギー回収システムでは、排熱を効率的に回収して、大量の水素を生成することが可能になる。また、原材料としては、DMEの方がメタノールよりも有利である。
【符号の説明】
【0043】
1 改質器
2 蒸発器
3 原材料気化器
5 原材料水蒸気混合予熱器
10 加熱炉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排熱ガスから与えられる熱によって気化したジメチルエーテル、メタノールおよびエタノールのいずれか一種または二種以上に水蒸気を接触させて改質する改質器と、前記排熱ガスから与えられる熱によって水から水蒸気を生成して前記改質器に供給する蒸発器と、温水から与えられる熱によってジメチルエーテル、メタノールおよびエタノールのいずれか一種または二種以上を気化させて前記改質器に供給する原料気化器とを備えることを特徴とする排熱エネルギー回収システム。
【請求項2】
前記排熱ガスは、前記改質器に供給されて一部の熱が利用された後、前記蒸発器に供給されて一部の熱が利用されることを特徴とする請求項1記載の排熱エネルギー回収システム。
【請求項3】
前記排熱ガスは、発生源において250〜400℃の温度を有することを特徴とする請求項1または2に記載の排熱エネルギー回収システム。
【請求項4】
前記排熱ガスは、熱の最終利用後に、180℃以上の温度を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の排熱エネルギー回収システム。
【請求項5】
気化した前記ジメチルエーテル、メタノールおよびエタノールのいずれか一種または二種以上と、前記水蒸気とを混合・予熱して前記改質器に導入する予混合加熱器を備え、該予混合加熱器には、前記改質器に供給されて一部の熱が利用された排熱ガスが供給されて一部の熱が前記予熱に利用されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の排熱エネルギー回収システム。
【請求項6】
前記予混合加熱器で一部の熱が利用された排熱ガスは、前記蒸発器に供給されて一部の熱が利用されることを特徴とする請求項5記載の排熱エネルギー回収システム。
【請求項7】
前記蒸発器で生成された蒸気の一部から温水を得て前記原料気化器に供給することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の排熱エネルギー回収システム。
【請求項8】
前記改質器によって生成される水素と二酸化炭素とを分離する分離器を備えることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の排熱エネルギー回収システム。
【請求項9】
前記排熱ガスは、加熱炉で発生した低温排ガスであり、前記温水は、前記加熱炉で冷却に用いられた冷却後水であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の排熱エネルギー回収システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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