説明

排熱回収ボイラ

【課題】約650℃で約50m/s、場合によっては100m/sとなる高温高速のガスタービンからの排ガスの旋回流によって励起される伝熱管パネルの振動による応力を低減し、安定運用を可能とする排熱回収ボイラを提供すること。
【解決手段】複数の伝熱管を束ねた伝熱管パネル13を吊り下げた排熱回収ボイラ内にガスタービンからの排ガスを流入させて伝熱管内で蒸気を生成させる際に、排ガスの流れ方向に直交する水平方向に伝熱管パネル13を束ねる所定幅のハニカムサポート29と水平サポート19を上下方向に複数段設け、該ハニカムサポート29と水平サポート19として各伝熱管パネル13の両側の数本の伝熱管部分は、ハニカムサポート29と水平サポート19の幅を前記所定幅より広くすることで、高温高速のガスタービン排ガスの旋回流があっても、伝熱管パネル13の防振が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排熱回収ボイラ(HRSG)に関し、特にガスタービンからの高温高速の排ガス流により励振される排熱回収ボイラの伝熱管パネルのサポート構造に関する。
【背景技術】
【0002】
急増する電力需要に応えるために、高効率発電の一環として、最近複合発電プラントが注目されている。この複合発電プラントはまず、ガスタービンによる発電を行うとともに、ガスタービンから排出される排ガス中の熱を排熱回収装置(排熱回収ボイラ)によって回収し、この排熱回収ボイラで発生した蒸気により、蒸気タービンを駆動させて発電するものである。
【0003】
この複合発電プラントは、ガスタービンによる発電と蒸気タービンによる発電を同時に行うことができるために、発電効率が高い上にガスタービンは負荷応答性に優れており、急激な電力需要の上昇、下降にも充分対応し得る負荷追従性に優れた利点もあり、特にいわゆる毎日起動停止(Daily Start Stop)運転や、週末起動停止(Weekly Start Stop)運転を行うプラントには有効である。
【0004】
ところが、この複合発電プラントにおいては、LNG、灯油などのクリーンな燃料を使用するので、SOx量やダスト量は少なくなるが、ガスタービンの燃焼においては酸素量が多く、高温燃焼を行うために、排ガス中のNOx量が増加するので、脱硝装置を内蔵した排熱回収ボイラが用いられている。
【0005】
図7には脱硝装置が配置された複合発電プラントの概略系統図を示す。図7において、ガスタービン1からの高温高速の排ガス11は排熱回収ボイラ(HRSG)ダクト12に設置された過熱器3、第1の蒸発器4、脱硝装置5、第2の蒸発器6、節炭器7に順次に接触して熱交換される。また第1の蒸発器4と第2の蒸発器6からの蒸気を含む水が管路28aと管路28bから汽水分離ドラム8にそれぞれ送られ、該汽水分離ドラム8から分離された蒸気は飽和蒸気管37を経て過熱器3でさらに過熱された後、主蒸気管31を経由して蒸気タービン9を駆動する過熱蒸気として利用される。蒸気タービン9で用いられた蒸気は復水器10で水Wに戻され、給水管路32に配置された給水ポンプ30により節炭器7に循環され、節炭器7でガスタービン1からの排ガス11より予熱されてドラム8内に供給される。ドラム8内の水は降水管33を通って下降し、管路35a、35bを経て蒸発器4、6へ導入され、その後、管路28a、28bを経てドラム8内に戻る。主蒸気管31に接続されたタービンバイパス管38は、蒸気タービン9をバイパスして蒸気を直接復水器10に導いても良い。
【0006】
また、図7には、蒸気タービン9への蒸気の流量を調節する蒸気タービン加減弁39、蒸気タービン9への蒸気の供給により蒸気のバイパス量を調節するタービンバイパス弁40および排ガスダクト12のダンパ41が設けられている。
【0007】
以上の説明は、複合発電プラントにおける高温高速の排ガス11、給水W及び蒸気の各流れの概要を説明したものであるが、一般に、排熱回収ボイラ(HRSG)内には、過熱器3、蒸発器4、6及び節炭器7等の熱交換器が組み込まれて、排ガス11の排熱を回収するとともに排ガス11の脱硝を行うために脱硝装置5が配置されている。
【0008】
図8には排熱回収ボイラ(HRSG)内に配置される熱交換器を構成する伝熱管パネル13の斜視図を示している。該伝熱管パネル13は、前記図7の過熱器3、第1の蒸発器4、第2の蒸発器6及び節炭器7等の伝熱面を構成する熱交換器であり、上部、下部管寄せ17、17とそれらの間に多数の伝熱管25を接続し、伝熱管25の外周には排ガス11からの熱を吸収し易くしたフィン26が螺旋状に巻き付けられ、溶接接続されたフィンチューブ24からなる。このような伝熱管パネル13が図8に示す例では、パネル面をガス流れに直交する方向に向けて3つ伝熱管パネル13を一ユニットとして、このユニットを複数並べて配置し、これらをガス流れに直交するボイラ左右方向の水平サポート19とガス流れ方向に沿った連結金具18で束ねている。
【0009】
3列の伝熱管25を千鳥配置する伝熱管パネル13の横断面図を図9に示し、図10に図9の伝熱管パネルの側面図と図11に図9の伝熱管パネル13の上下に管寄せを接続する前の状態の側面図を示している。
【0010】
これら図9、図10及び図11の断面図、側面図及び組み立て前の側面図に示す構成からなるフィンチューブ24(伝熱管25とフィン26からなる)をハニカムサポート29で束ね、さらにハニカムサポート29の外側を水平サポート19で束ねて一つの伝熱管パネル13として用いる例である。ここでは、各伝熱管パネル13は伝熱管25とその回りに螺旋状に溶接されるフィン26からなるフィンチューブ24を備え、このフィンチューブ24を2列また3列千鳥配置した例を示している。
【0011】
図9〜図11に示す、3列の伝熱管群を一伝熱管パネルユニットとして製造する場合には、上部、下部管寄せ17、17の間のフィンチューブ24の上下にそれぞれ波板からなるハニカムサポート29a、29b、29cの互いに接触する部分の要所を溶接接続して溶接部Yとする。
【0012】
また、図12にHRSGの鳥瞰図を示す。HRSGはダクト12の内部に図8に示す伝熱管パネル13を収納した蒸気発生器である。従来のHRSGでは、ダクト12の内部には、ガスタービン1からの約650℃で約20m/sの高温高速の排ガス11が流入し、伝熱管パネル13で熱吸収され比較的低温になったガスが煙突14から排出される。
【0013】
図13はHRSGの排ガス入口部分の内部に配置される伝熱管パネル構造を示す側面図である。ダクト12は架構16を介して地面15に支持されている。伝熱管パネル13A、13B、13Cは、各々ヘッダ17A、17B、17Cに吊下げ支持されている。伝熱管パネル13A、13B、13Cには、約650℃で約20m/sの排ガス11が作用し、伝熱管パネル13A、13B、13Cがガス流れに対し前後方向及び左右方向にも揺動する。
【0014】
この伝熱管パネル13A、13B、13Cの振動を抑制するため、図13に示す伝熱管パネル13A、13B、13Cに複数の水平サポート19で束ねて伝熱管パネル13A、13B、13Cの固有振動数を高めることにより、伝熱管群を通過する排ガスに対する振動を抑制してきた(特許第3625948号公報参照)。
【0015】
しかし、近年、ガスタービンが大型化し、高温高流速からなる排ガス11のダクト12内での偏流が拡大し、高温高速の排ガス11による伝熱管パネル13の振動揺動が増幅され、パネル端部のガス流れに直交するボイラ左右方向の水平サポート19に損傷が生じることが問題視されるようになってきた。
【0016】
下記特許文献1記載の発明では、フィン付きの伝熱管(フィンチューブ)を水平サポートにより挟持固定した構成で伝熱管パネルの振動揺動を無くすような対策を講じている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特許第3625948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
前述のように、特許文献1記載の発明では、伝熱管パネルの振動揺動を解決するために水平サポートの段数を増加させて設置しているが、旋回成分の偏流による振動は抑制出来ないことが問題であった。
【0019】
ガスタービンが大型化することで、排熱回収ボイラ(HRSG) に流入する排ガスは、従来の約20m/sの流速に比べて遥かに高温高速流である約50m/s以上で、しかも約650℃という高温ガスとなっている。そのため、HRSG内で高速高温の排ガスに偏流が生じると、局所的には約100m/sの高温高速の排ガスの流れが部分的に発生する場合があり、従来の水平サポートでは伝熱管パネルの振動をとても抑制できなく、伝熱管パネルがHRSGのダクト壁面に接触して、伝熱管パネルだけでなくダクトを損傷させることもあった。
【0020】
このため、単純に水平サポートを補強するために補強用の部材を増加させても、伝熱管の伝熱面積を塞ぐために熱回収効率が低下し、さらに水平サポートの補強部材の質量が数倍に増加するといった解決すべき問題があった。
【0021】
そこで、本発明の課題は、上記従来技術における問題点を解決し、約650℃で約50m/s、場合によっては100m/sとなる高温高速のガスタービン排ガスの旋回流によって励起される伝熱管パネルの振動による応力を低減し、安定運用を可能とする排熱回収ボイラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の上記課題は次の解決手段により達成される。
請求項1記載の発明は、ガスタービンからの排ガスを流入させるダクト内に複数の伝熱管を束ねた伝熱管パネルを吊り下げて配置してガスタービンからの排ガスの熱を伝熱管内に回収して蒸気を生成させる排熱回収ボイラにおいて、排ガスの流れ方向に直交する水平方向に伝熱管パネルを束ねる所定幅の水平サポートを上下方向に複数段設け、伝熱管パネルの両側の数本の伝熱管部分における各段の水平サポートの幅を前記所定幅より広くしたことを特徴とする排熱回収ボイラである。
【0023】
請求項2記載の発明は、各伝熱管パネルの両側の数本の伝熱管部分は、所定幅の水平サポートの略3倍の幅としたことを特徴とする請求項1記載の排熱回収ボイラである。
【0024】
請求項3記載の発明は、伝熱管は外周部にフィンを巻き付けたフィン付き伝熱管からなり、該フィン付き伝熱管の左右からフィン付き伝熱管を挟持して固定する波形バッフル板からなるハニカムサポートを設け、該ハニカムサポートの外側に水平サポートを設け、各伝熱管パネルの両側の数本の伝熱管部分は、ハニカムサポートと水平サポートの幅を共に前記水平サポートの所定幅より広くしたことを特徴とする請求項1又は2記載の排熱回収ボイラである。
【0025】
請求項4記載の発明は、ガスタービンからの排ガスを流入させるダクト内に複数の伝熱管を束ねた伝熱管パネルを吊り下げて配置してガスタービンからの排ガスの熱を伝熱管内に回収して蒸気を生成させる既設の排熱回収ボイラにおいて、排ガスの流れ方向に直交する水平方向に伝熱管パネルを束ねる所定幅の水平サポートを上下方向に複数段設け、各段の水平サポートとして各伝熱管パネルの両側の数本の伝熱管部分は、前記水平サポートの上下に前記水平サポートと略同一幅の補強水平サポートを配置し、該補強水平サポートを取り付けた伝熱管パネルの補強水平サポートの外側から補強水平サポートを挟み込んで補強水平サポートを支持する開き防止板を設けたことを特徴とする排熱回収ボイラである。
【0026】
請求項5記載の発明は、補強水平サポートは、その外側の中央にはリブを有する構成として配置し、該リブで開き防止板を支持させた構成からなる請求項4記載の排熱回収ボイラである。
【0027】
請求項6記載の発明は、伝熱管が外周部にフィンを巻き付けたフィン付き伝熱管からなり、該フィン付き伝熱管の左右から挟持して固定する波形バッフル板からなるハニカムサポートを設け、該ハニカムサポートの外側に水平サポートを設け、各伝熱管パネルの両側の数本の伝熱管部分は、ハニカムサポートの上下に該ハニカムサポートと略同一幅の補強ハニカムサポートを設け、さらに前記水平サポートの上下に該水平サポートと略同一幅の補強水平サポートを配置したことを特徴とする請求項4又は5記載の排熱回収ボイラである。
【0028】
(作用)
図1に、本発明によるHRSGの全体で伝熱管パネル13の防振構造を示す。複数の伝熱管25(伝熱管25の外周にフィン26を巻いたフィンチューブ24でも良い)の質量Mと水平サポート19(水平サポート19とハニカムサポート29でも良い)を水平サポート19によって束ねた伝熱管パネル13は排ガス11の流れ方向に対して直交する方向(左右方向)の全伝熱管数(図1に示す例では32本)に対し、約20%の管数分(図1に示す例では6本)の範囲(図1中の幅L1×2の範囲)におけるパネル端部の水平サポート19の幅Hを従来の3倍である3Hにしている。具体的には、水平サポート19の上部にサポート19U、下部に19Dを追設している。従って、水平サポート19は、ガス流れ方向に直交する方向(左右方向)に全長Lからなり、その内でパネル両端部に長さL1×2、幅3Hの水平サポート構造(サポート19U、水平サポート19及び下部サポート19D)とその間にある幅H、長さL2の水平サポート19からなる。
【0029】
上記上下サポート19U、19Dを追設することが、パネル13の左右方向の振動変位の低減、及びパネル13の衝突時の応力低減に有効であることを、パネル13の振動系を用いて以下に説明する。
【0030】
まず、パネル13の左右方向(ガス流れに直交する方向)の振動の低減について説明する。図2に示す従来構造、及び図1に示す本発明によるパネル構造の振動系を、各々図4及び図3に示す。図4に示す従来構造の振動系において、図2中のパネル13内の32本の伝熱管25の質量Mと水平サポート19の剛性Kは次式(1)及び(2)に示すように、質量Mは長さLに比例し、剛性Kはヤング率Eと水平サポート19の幅Hに比例し、長さLに反比例する。
【0031】
この振動系の固有振動数fは、式(3)に示すように(K/M)の1/2乗に比例する。
M∝L (1)
K∝E×H/L (2)
f∝(K/M)1/2 (3)
図2と図4に示すように、従来構造においては、水平サポート19によって束ねられる32本の伝熱管25の振動方向は同方向(いわゆる同位相の振動)となり、パネル13全体の振動変位が大きくなる。
【0032】
これに対し、本発明による伝熱管パネル13の構造の振動系は、図3に示す三つの振動系を連結した系である。図3において、各々パネル13の両端部における約20%の伝熱管25の本数分(実施例では3本×2)の質量M1及び剛性K1と各々パネル13の両端部以外のパネル13における約60%の伝熱管数分(本実施例では20本)の質量M2及び剛性K1との間には次式(4)、(5)及び(6)で表される関係がある。
M1∝M/L×L1=M/5.3 (4)
K1∝E×3H/L1=16E×H/L=16K (5)
M2=M/L×L2=M/1.6 (6)
K2=E×H/L2=1.6×E×H/L=1.6K (7)
また、M1−K1振動系及びM2−K2振動系の固有振動数f1及びf2は、各々式(8)及び(9)で表される。
f1∝(K1/M1)1/2=9.2×f (8)
f2∝(K2/M2)1/2=1.6×f (9)
式(8)を式(9)で割ることで、式(10)のように、f2に対するf1の比が求まる。
f1/f2=5.73 (10)
式(10)に示すように、M1−K1振動系の固有振動数f1は、M2−K2振動系の固有振動数f2の5.73倍になる。このように、固有振動数が異なる三つの振動系(パネル左端のM1−K1振動系、パネル中央のM2−K2振動系、パネル右端のM1−K1振動系)を形成することで、各振動系の振動方向の違い(いわゆる位相の違い)を利用することで、パネル13全体の振動変位δを低減でき、ひいては隣接するパネル13の端部同士の衝突荷重及びパネル13の端部とケーシング(ダクト12のケーシング)の衝突荷重の低減が可能となる。
【0033】
次に、パネル13の衝突時の応力低減について説明する。図2に示す従来構造の水平サポート19の幅Hに対して図1に示す本実施例による構造では、幅3Hの水平サポート構造(上部の補強用サポート19U、水平サポート19及び下部の補強用サポート19D)は3倍になる。このことより、本実施例によるサポート構造では、パネル13の衝突荷重を受ける面積が従来の3倍となり、伝熱管パネル13の衝突時の応力を低減できる。
【0034】
なお、上記説明において、伝熱管パネル13の端部の幅を従来の水平サポート19の幅Hの3倍とした例、あるいは補強用の補強上部サポート19U、水平サポート19及び補強下部サポート19D)を用いて水平サポート19に幅Hの略3倍とした例を説明したが、本発明では、伝熱管パネル13の端部に設ける補強上部サポート19U及び補強下部サポート19Dの幅は、水平サポート19の幅Hと同じとは限らず、必要に応じてさらに広い幅としても良い。
【0035】
上記したように本発明によれば、伝熱管パネル13の両端部における水平サポート19の幅を、パネル13の中央部における水平サポート19の幅(H)と違えることで、三つの振動系(パネル左端部振動系、パネル中央部振動系、パネル右端部振動系)を形成でき、これら三つの振動系での振動の位相差を利用してパネル13の左右方向振動を低減することで、隣接するパネル13の端部同士あるいはパネル13の端部とケーシングの衝突荷重を低減することができる。また、パネル13の端部の水平サポート19の幅を従来の略3倍にすることで、伝熱管パネル13端部の衝突時に発生する応力を低減することもできる。これらの作用により、排熱回収ボイラの安定運用に寄与する排熱回収ボイラ防振構造が得られる。
【発明の効果】
【0036】
請求項1記載の発明によれば、約50m/s以上、局所的には約100m/sの高温高速のガスタービン排ガスが排熱回収ボイラのダクト内に導入されて、該排ガスが旋回流となっても、伝熱管パネルの振動変位を伝熱管パネルの水平サポートの簡易構造からなる補強により低減することができ、隣接する伝熱管パネル端部同士あるいは伝熱管パネル端部と排熱回収ボイラケーシングの衝突力を低減でき、排熱回収ボイラの安定運用に寄与する防振構造が得られる。
【0037】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、伝熱管パネル端部の水平サポートの幅を従来の略3倍にすることで、パネル端部の衝突時に発生する応力を低減できることから排熱回収ボイラの安定運用に寄与する防振構造が得られる。
【0038】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明の効果に加えて、伝熱管が外周部にフィンを巻き付けたフィン付き伝熱管からなる場合には、フィン付き伝熱管の左右から挟持して固定する波形バッフル板からなるハニカムサポートを設け、該ハニカムサポートの外側に水平サポートを設け、各伝熱管パネルの両側の数本の伝熱管部分は、ハニカムサポートと水平サポートの幅を共に前記水平サポートの所定幅より広くしたことで伝熱管パネルの振動変位を低減することかでき、隣接する伝熱管パネル端部同士あるいは伝熱管パネル端部と排熱回収ボイラケーシングの衝突力を低減できる。
【0039】
請求項4記載の発明によれば、既設の排熱回収ボイラにおいて水平サポートを溶接により補強できない場合にも補強水平サポートの外側から補強水平サポートを支持する開き防止板により保持することで、伝熱管パネル端部の水平サポートの幅を従来の約3倍にすることができ、高温高速流のガスタービン排ガスが排熱回収ボイラのダクト内に導入されて当該排ガスが旋回流になっても、該伝熱管パネルの振動変位を低減することができ、隣接する伝熱管パネル端部同士あるいは伝熱管パネル端部と排熱回収ボイラケーシングの衝突力を低減でき、排熱回収ボイラの安定運用に寄与する防振構造が得られる。
【0040】
請求項5記載の発明によれば、請求項4記載の発明の効果に加えて、補強水平サポートの外側の中央にはリブを有する構成として、該リブで開き防止板を支持させるので補強水平サポートを溶接なしで容易に保持できる効果がある。
【0041】
請求項6記載の発明は、請求項4又は5記載の発明の効果に加えて、伝熱管の外周部にフィンを巻き付けたフィン付き伝熱管を用いる場合には、フィン付き伝熱管の左右から挟持して固定する波形バッフル板からなるハニカムサポートを設け、該ハニカムサポート外側に水平サポートを設け、各伝熱管パネルの両側の数本の伝熱管部分は、ハニカムサポートの上下に該ハニカムサポートと略同一幅の補強ハニカムサポートを設け、さらに前記水平サポートの上下に該水平サポートと略同一幅の補強水平サポートを設けることで伝熱管パネルの振動変位を低減することができ、伝熱管パネル端部同士あるいは伝熱管パネル端部と排熱回収ボイラケーシングの衝突力を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明によるHRSGの全体で伝熱管パネルの防振構造を示す側面図である。
【図2】従来技術によるHRSGの全体で伝熱管パネルの防振構造を示す側面図である。
【図3】図1に示す本発明によるHRSGのパネル構造の振動系を示す。
【図4】図2に示す従来技術によるHRSGのパネル構造の振動系を示す。
【図5】本発明の一実施例の伝熱管パネルの水平サポートの補強を行った場合の構成を示す一部斜視図である。
【図6】本発明の一実施例の伝熱管パネルの水平サポートの補強を行った場合の構成を示す一部斜視図である。
【図7】脱硝装置が配置された複合発電プラントの概略系統図を示す
【図8】排熱回収ボイラ(HRSG)内に配置される熱交換器を構成する伝熱管パネルの斜視図を示している。
【図9】排熱回収ボイラ内に配置される伝熱管パネルの断面図である。
【図10】図9の伝熱管パネルの側面図である。
【図11】図9の伝熱管パネルの組み立て前の側面図である。
【図12】本発明の実施例のHRSGの鳥瞰図である。
【図13】図12のHRSGの入口部分の側面図である。
【図14】図13のA−A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明の実施例を図面とともに説明する。
図12に示す排熱回収ボイラ(HRSG)の鳥瞰図と図13のHRSG入口側の伝熱管パネルを配置したダクト内部の側面図は本発明の実施例にも適合し、図14には図13のA−A線断面図を示す。
【0044】
本発明の実施例の伝熱管パネル13A、13B、13Cをガスタービンからの排ガス11の流れ方向に沿って順次配置する。また図14には、例えば伝熱管パネル13Aは排ガス11のガス流れに直交する方向に左、中央、右と3列並列配置された例を示しており、伝熱管パネル13AL、伝熱管パネル13AM、伝熱管パネル13ARからなる。
【0045】
また各伝熱管パネル13AL、伝熱管パネル13AM、伝熱管パネル13ARはダクト12の前後方向の連結金具18とダクト12の横断方向に水平サポート19(ハニカムサポート29を設けることもできるが、図示していない)がそれぞれ複数段配置されている。連結金具18は水平サポート19の端部に設けられている。
【0046】
また各伝熱管パネル13AL、伝熱管パネル13AM、伝熱管パネル13ARは上部、下部管寄せ17A、17B、17Cにそれぞれ接続している。
【実施例1】
【0047】
図5には本実施例で用いる2列の伝熱管25とフィン26からなるフィンチューブ24を一つの伝熱管パネル13としてハニカムサポート29と水平サポート19で束ねた場合の防振補強構造を斜視図で示す。なお、図5にはフィンチューブ24は一部だけを点線で示しており、図5はハニカムサポート29とその外側に設けた水平サポート19の一端部側の部分斜視図である。また、水平サポート19の端部同士は水平サポート端部補強板20で接続している。なお、ハニカムサポート29を備えていない伝熱管構造は図示していないが、ハニカムサポート29とフィンチューブ24が無く、水平サポート19で伝熱管25を束ねた構造にも、本実施例の防振補強構造を適用できる。
【0048】
図5には一つのハニカムサポート29と一つの水平サポート19で約32本×2列のフィンチューブ24を束ねた例を図示している。そして図5に示すように所定幅(H)の波形バッフル板からなるハニカムサポート29と水平サポート19の両端部の上下に約同一幅(H)の波形バッフル板からなる上方補強用ハニカムサポート29Uと上方水平サポート19Uと下方ハニカムサポート29Dと下方水平サポート19Dをそれぞれフィンチューブ24の6本×2列分に相当する部分に設けて互いに溶接接続する。従ってハニカムサポート29と水平サポート19の上下の両端部では約3倍の幅のサポート構造体で伝熱管25とフィン26からなるフィンチューブ24を支持することができる。
【0049】
なお、水平サポート19と水平サポート端部補強板20とハニカムサポート29で囲まれた空間部には充填部材43を埋め込む。
【0050】
前記所定幅(H)は30〜50mmとする。また、水平サポート19と水平サポート端部補強板20とハニカムサポート29の互いの接触部分は熱交換器製造工場での作製時に適宜溶接することができる。
【0051】
この場合の応力が強く掛かる箇所は図5のハニカムサポート29のコーナー部S1と上方ハニカムサポート29Uと下方ハニカムサポート29Dがなくなり、ハニカムサポート29だけの幅Hになるコーナー部S2で、有限要素法による解析では、その値は従来の一倍幅の水平サポート19を使用する場合の約40%であった。
【実施例2】
【0052】
次に本発明の第2実施例として既設の排熱回収ボイラ(HRSG)の2列のフィンチューブ24をハニカムサポート29と水平サポート19で束ねた場合の防振補強構造の斜視図を図6に示す。また、水平サポート19の端部同士は水平サポート端部補強板20で接続している。なお、図6にはフィンチューブ24は一部だけを点線で示しており、また、ハニカムサポート29を備えていない伝熱管構造は図示していないが、ハニカムサポート29とフィンチューブ24が無く、水平サポート19で伝熱管25を束ねた構造にも、本実施例の防振補強構造を適用できる。
【0053】
既設の排熱回収ボイラ(HRSG)ではハニカムサポート29と水平サポート19を補強する場合に伝熱管パネル13は取り外すことができなく、また図5に示すようなハニカムサポート29と水平サポート19の伝熱管パネル13への取り付け時のように、上方ハニカムサポート29Uと上方水平サポート19Uと下方ハニカムサポート29Dと下方水平サポート19Dをそれぞれ溶接接続することが不可能であるので、上方ハニカムサポート29Uと下方ハニカムサポート29D及び上方水平サポート19Uと下方水平サポート19Dをそれぞれハニカムサポート29と水平サポート19の上下に取り付けて、約32本×2列のフィンチューブ24を束ねた例を図6に示している。
【0054】
そして図6に示すように所定幅(H)の波形バッフル板からなるハニカムサポート29と水平サポート19の両端部の上下に約同一幅(H)の波形バッフル板からなる補強用の上方ハニカムサポート29Uと上方水平サポート19Uと下方ハニカムサポート29Dと下方水平サポート19Dをそれぞれフィンチューブ24の6本×2列分に相当する部分に設けて、補強用のハニカムサポート29U,29Dと水平サポート19U、19Dを複数の開き防止板22で支持する構造とする。
【0055】
既設の所定幅(H)の波形バッフル板からなる補強用のハニカムサポート29U,29Dを既設ハニカムサポート29の上下に取り付け、さらにその外側に補強用の水平サポート19U、19Dを既設水平サポート19の上下に取り付ける。この補強用の水平サポート19Uと水平サポート19Dの幅は既設の水平サポート19と略同一幅とし、また32本からなるフィンチューブ24を用いる伝熱管パネル13において両端部のフィンチューブ24の6本×2列分の外周に取り付ける。
【0056】
その後、既設の水平サポート19の外周には、フィンチューブ24の6本×2列分のリブ19aを取り付け、水平サポート19の外側から両端のフィンチューブ24の6本×2列分の一対の門型の開き防止板22を上下方向から挿し込み、門型の開き防止板22の底部を前記リブ19aで支持させる。
【0057】
図6に示すように千鳥配置の2列のフィンチューブ24からなる伝熱管パネル13の場合は、既設の水平サポート19の長手方向に対して門型の開き防止板22を傾斜させて補強用のサポート19Uとサポート19Dの外側から差し込むことで、溶接接続されていない補強用のサポート19Uとサポート19Dを安定的に保持することができる。
【0058】
千鳥配置でない並列配置のフィンチューブ24からなる伝熱管パネル13の場合は、門型の開き防止板22を既設の水平サポート19の長手方向に対して直交する方向に補強用のサポート19Uとサポート19Dの外側から差し込むことで、溶接接続されていない補強用のサポート19Uとサポート19Dを安定的に保持することができる。
【0059】
補強用のハニカムサポート29U,29Dと水平サポート19U,Dの長手方向に対して傾斜させて門型の開き防止板22で保持する場合の有限要素法解析によると、図6のハニカムサポート29U,29Dのコーナー部S3で示す一番応力が掛かる箇所が従来の一倍幅のハニカムサポート29と水平サポート19を使用する場合の応力の70%であった。
【0060】
上記本発明の実施例において伝熱管25の回りにフィン26を設けたフィンチューブ24を用いる伝熱管パネル13を例示して説明したが、伝熱管25の回りにフィン26を配置していない伝熱管パネル13にも本発明の水平サポート19の補強構造を適用することもできる。
【0061】
上記実施例で説明した伝熱管パネル13の端部に設ける補強上部サポート19U及び補強下部サポート19D及びハニカムサポート29U,29Dの幅は、水平サポート19の幅H及びハニカムサポート29U,29Dの幅Hと同じとは限らず、必要に応じてさらに広い幅としても良い。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明による伝熱管パネルの水平サポートの補強構造は、ガスタービンが大型化する傾向にあるので、ますます排ガス偏流が増加することが予想され、本発明による伝熱管パネルの水平サポートの補強構造の利用可能性がさらに増えるものと考えられる。
【符号の説明】
【0063】
1 ガスタービン 3 過熱器
4 第1の蒸発器 5 脱硝装置
6 第2の蒸発器 7 節炭器
8 汽水分離ドラム 9 蒸気タービン
10 復水器 11 排ガス
12 排熱回収ボイラ(HRSG)ダクト
13A ガス流れ前側の伝熱管パネル
13B、ガス流れ中央部の伝熱管パネル
13C ガス流れ後側伝熱管パネル
13AL、13BL、13CL 左側の伝熱管パネル
13AM、13BM、13CM 中央の伝熱管パネル
13AR、13BR、13CR 右側の伝熱管パネル
14 煙突 15 地面
16 架構
17A、17B、17C 上部、下部管寄せ
18 連結金具 19 水平サポート
19U、19D 補強用の水平サポート
19a リブ
20 水平サポート端部補強板
22 開き防止板 24 フィンチューブ
25 伝熱管 26 フィン
28a、28b 管路 29 ハニカムサポート
29U、29D 補強用ハニカムサポート
30 給水ポンプ 31 主蒸気管
32 給水管路 33 降水管
35a、35b 管路 37 飽和蒸気管
38 タービンバイパス管 39 蒸気タービン加減弁
40 タービンバイパス弁 41 ダンパ
43 充填部材 W 水
Y 溶接部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンからの排ガスを流入させるダクト内に複数の伝熱管を束ねた伝熱管パネルを吊り下げて配置してガスタービンからの排ガスの熱を伝熱管内に回収して蒸気を生成させる排熱回収ボイラにおいて、排ガスの流れ方向に直交する水平方向に伝熱管パネルを束ねる所定幅の水平サポートを上下方向に複数段設け、伝熱管パネルの両側の数本の伝熱管部分における各段の水平サポートの幅を前記所定幅より広くしたことを特徴とする排熱回収ボイラ。
【請求項2】
各伝熱管パネルの両側の数本の伝熱管部分は、所定幅の水平サポートの略3倍の幅としたことを特徴とする請求項1記載の排熱回収ボイラ。
【請求項3】
伝熱管は外周部にフィンを巻き付けたフィン付き伝熱管からなり、該フィン付き伝熱管の左右からフィン付き伝熱管を挟持して固定する波形バッフル板からなるハニカムサポートを設け、該ハニカムサポートの外側に水平サポートを設け、各伝熱管パネルの両側の数本の伝熱管部分は、ハニカムサポートと水平サポートの幅を共に前記水平サポートの所定幅より広くしたことを特徴とする請求項1又は2記載の排熱回収ボイラ。
【請求項4】
ガスタービンからの排ガスを流入させるダクト内に複数の伝熱管を束ねた伝熱管パネルを吊り下げて配置してガスタービンからの排ガスの熱を伝熱管内に回収して蒸気を生成させる既設の排熱回収ボイラにおいて、排ガスの流れ方向に直交する水平方向に伝熱管パネルを束ねる所定幅の水平サポートを上下方向に複数段設け、各段の水平サポートとして各伝熱管パネルの両側の数本の伝熱管部分は、前記水平サポートの上下に前記水平サポートと略同一幅の補強水平サポートを配置し、該補強水平サポートを取り付けた伝熱管パネルの補強水平サポートの外側から補強水平サポートを挟み込んで補強水平サポートを支持する開き防止板を設けたことを特徴とする排熱回収ボイラ。
【請求項5】
補強水平サポートは、その外側の中央にはリブを有する構成として配置し、該リブで開き防止板を支持させた構成からなる請求項4記載の排熱回収ボイラ。
【請求項6】
伝熱管が外周部にフィンを巻き付けたフィン付き伝熱管からなり、該フィン付き伝熱管の左右から挟持して固定する波形バッフル板からなるハニカムサポートを設け、該ハニカムサポートの外側に水平サポートを設け、各伝熱管パネルの両側の数本の伝熱管部分は、ハニカムサポートの上下に該ハニカムサポートと略同一幅の補強ハニカムサポートを設け、さらに前記水平サポートの上下に該水平サポートと略同一幅の補強水平サポートを配置したことを特徴とする請求項4又は5記載の排熱回収ボイラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−57468(P2013−57468A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−196723(P2011−196723)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(000005441)バブコック日立株式会社 (683)