説明

排熱回収方法、排熱回収装置及びコジェネレーションシステム

【課題】排気を生ずるエンジン等の熱源から排熱を効率よく回収する。
【解決手段】熱源(エンジン24)に第1の熱媒体(18)を第1の循環路(エンジン冷却回路14)に循環させて熱源を第1の熱媒体で冷却し、第1の熱媒体に熱源の排熱を吸収させる。第2の循環路(排熱回収回路16)には第2の熱媒体(20)を循環させ、この第2の熱媒体に排気熱を熱交換するとともに、第2の循環路に循環する第2の熱媒体に第1の熱媒体の熱を熱交換する。これら第1及び/又は第2の熱交換により加熱された第2の熱媒体の熱を蓄熱手段(蓄熱タンク64)に蓄熱させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排熱を回収する熱回収技術に関し、例えば、エンジン等、排気を生じる熱源及び前記排気から排熱を回収して温水等の熱媒に蓄熱させる排熱回収方法、排熱回収装置及びコジェネレーションシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料ガスを燃料とするエンジンを動力源とする発電機が知られている。発電機を駆動するエンジンは、燃料の燃焼によって発熱するが、その排熱を回収して利用する排熱回収装置が実用化されている。
【0003】
このような排熱回収に関し、エンジンの排気が持つ熱及び排気の凝縮熱を回収することが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−123885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
排気の凝縮熱の回収(特許文献1)は、排気ガスの潜熱の回収である。この排熱回収装置では、ポンプより送出された熱媒がエンジンオイルとの熱交換の後、熱交換器にて排気との熱交換を行った後、エンジンの冷却と同時にさらに熱交換を行い、回収された熱が蓄熱タンクに溜められる。この場合、熱媒の温度は熱交換される排気中の水蒸気が露点以下になるよう低温に設定され、排気中の凝縮熱(潜熱)を熱媒に回収できるように設定している。
【0006】
ところで、熱交換器に導入される熱媒の温度を低く抑えても、エンジン冷却部への導入温度はエンジン保護のため、ある程度の温度が要求される。そのため、熱交換器で熱媒の温度上昇をさせるには、熱媒流量を抑制する必要がある。熱媒流量を抑えると、エンジンオイルとの熱交換における温度上昇が大きくなるため、期待される温度で熱交換器に熱媒を導入させるのが困難になる。
【0007】
また、エンジンを用いた発電では、余剰電力が発生した際に、その電力をヒータ等により熱に変換して回収するが、そのヒータが熱媒回路に設置されると、熱媒流量が少ない場合にヒータ発熱によって加熱部で熱媒を沸騰させるという不都合がある。
【0008】
斯かる課題について、特許文献1にはその開示や示唆はなく、それを解決する構成等についての開示や示唆はない。
【0009】
そこで、本発明の目的は、排気を生ずるエンジン等の熱源から排熱を効率よく回収することにある。
【0010】
また、本発明の他の目的は、上記目的に加え、発熱源で得られる余剰電力によって得た熱の回収を熱媒の沸騰等の不都合を伴うことなく回収することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明は、排気を生じる熱源及び前記排気から熱を回収する排熱回収方法、排熱回収装置、又はその排熱回収装置を備えるコジェネレーションシステムである。これら排熱回収方法、排熱回収装置又はコジェネレーションシステムでは、熱源に第1の熱媒体を第1の循環路に循環させて熱源を第1の熱媒体で冷却し、第1の熱媒体に熱源の排熱を吸収させる。第2の循環路には第2の熱媒体を循環させ、この第2の熱媒体に排気熱を熱交換するとともに、第2の循環路に循環する第2の熱媒体に第1の熱媒体の熱を熱交換する。これら第1及び/又は第2の熱交換により加熱された第2の熱媒体の熱を蓄熱手段に蓄熱させる。熱源は、エンジンでもよいし、エンジン以外の排気を伴う発熱源であればよい。
【0012】
そこで、上記目的を達成するため、本発明の排熱回収方法は、排気を生じる熱源及び前記排気から熱を回収する排熱回収方法であって、熱源に第1の熱媒体を循環させて前記熱源を前記第1の熱媒体で冷却する冷却工程と、第2の熱媒体を第2の循環路に循環させる循環工程と、前記第2の循環路に循環する前記第2の熱媒体に前記排気の熱を熱交換する第1の熱交換工程と、前記第2の循環路に循環する前記第2の熱媒体に前記第1の熱媒体の熱を熱交換する第2の熱交換工程と、前記第1及び/又は第2の熱交換工程により加熱された前記第2の熱媒体の熱を蓄熱する蓄熱工程とを含むことを特徴とする。
【0013】
また、上記目的を達成するため、本発明の排熱回収装置は、排気を生じる熱源及び前記排気から熱を回収する排熱回収装置であって、熱源に第1の熱媒体を循環させて前記熱源を前記第1の熱媒体で冷却する第1の循環路と、第2の熱媒体を循環させる第2の循環路と、前記第2の循環路に循環する前記第2の熱媒体に前記排気の熱を熱交換する第1の熱交換手段と、前記第2の循環路に循環する前記第2の熱媒体に前記第1の熱媒体の熱を熱交換する第2の熱交換手段と、前記第1及び/又は第2の熱交換手段で加熱された前記第2の熱媒体の熱を蓄熱する蓄熱手段とを備えることを特徴とする。
【0014】
また、上記目的を達成するため、本発明のコジェネレーションシステムは、排気を生じる熱源及び前記排気から熱を回収する排熱回収装置を備えるコジェネレーションシステムであって、熱源に第1の熱媒体を循環させて前記熱源を前記第1の熱媒体で冷却する第1の循環路と、第2の熱媒体を循環させる第2の循環路と、前記第2の循環路に循環する前記第2の熱媒体に前記排気の熱を熱交換する第1の熱交換手段と、前記第2の循環路に循環する前記第2の熱媒体に前記第1の熱媒体の熱を熱交換する第2の熱交換手段と、前記第1及び/又は第2の熱交換手段で加熱された前記第2の熱媒体の熱を蓄熱する蓄熱手段とを備えることを特徴とする。
【0015】
排熱回収方法、排熱回収装置又はコジェネレーションシステムでは、熱源の冷却によって第1の熱媒体に熱交換された熱は、第1の熱媒体から第2の熱媒体に熱交換され、この第2の熱媒体には熱源の排気の持つ熱が熱交換されるので、熱源の排熱と排気の熱との双方が第2の熱媒体に熱交換されて蓄熱される。このような方法では、熱源の冷却と排気とから熱を回収するので、排気では潜熱まで回収でき、排熱回収の効率を高めることができる。
【0016】
また、本発明の排熱回収装置は、前記熱媒体は液体であって、前記蓄熱手段は前記熱媒体を蓄積するタンクを備え、前記タンクの前記熱媒体の下部側から取り出した第2の熱媒体を前記第1の熱交換手段及び前記第2の熱交換手段で加熱させ、該熱媒体を前記タンクの上部側に戻せばよい。斯かる構成では、低温の熱媒体に熱交換を行い、熱交換後の熱媒体をタンクの上層に戻すので、液体の対流作用による層崩れが防止されるとともに、高温による熱媒体での蓄熱ができ、その蓄熱を効率良く行え、質の良い蓄熱が可能である。
【0017】
また、本発明の排熱回収装置は、前記第2の熱媒体の温度を検出する温度検出手段と、前記第2の循環路に前記タンクをバイパスするバイパス路と、前記第2の熱媒体を流す流路を前記バイパス路側又は/及び前記タンク側に切り替える流路切替手段とを備え、前記温度検出手段の検出温度が基準温度以上の場合には、前記第2の熱媒体を前記タンクに戻し、前記検出温度が基準温度未満の場合には、前記第2の熱媒体を前記パイパス路側に循環させてもよい。斯かる構成では、基準温度未満の熱媒体は熱交換のために熱交換手段側に循環し、タンク内に戻される熱媒体の温度を基準温度以上に維持することができ、タンク内の既述の層崩れを防止でき、高温による熱媒体での蓄熱ができ、その蓄熱を効率良く行え、質の良い蓄熱が可能である。
【0018】
また、本発明の排熱回収装置は、前記第1の熱媒体の温度を検出する温度検出手段と、前記第2の循環路に設置されたポンプと、前記温度検出手段の検出温度に応じて前記ポンプを駆動して前記第2の循環路に前記第2の熱媒体を循環させ、前記第2の熱媒体の循環量を前記検出温度が所定温度になる循環量に制御する制御手段とを備えてもよい。この場合、所定温度は熱源側のクーラント量に応じて任意に設定すればよい。
【0019】
斯かる構成では、熱源側から第1の熱媒体に吸収される熱量を温度検出手段の検出温度で監視することができる。この検出温度を熱源側のクーラント量に応じて任意に設定するものとすれば、前記温度検出手段の検出温度に応じて前記ポンプを駆動して前記第2の循環路に前記熱媒体を循環させ、その循環量を前記検出温度が所定温度になる循環量に制御することができるので、熱源を極端に冷却させることなく、熱源側の効率を見極めて排熱回収を行うことができる。
【0020】
また、本発明の排熱回収装置は、前記熱源によって駆動される発電機と、前記発電機で発生した電力を熱に変換し、該熱によって前記第1の熱媒体及び/又は前記第2の熱媒体を加熱する加熱手段とを備えてもよい。斯かる構成とすれば、熱源として例えば、エンジンによって駆動される発電機の出力即ち、電力は加熱手段で熱に変換され、前記第1の熱媒体、又は前記第2の熱媒体又は双方の加熱に用いられ、例えば、余剰電力が熱に変換されて蓄熱に供される。この結果、効率のよい蓄熱が可能となる。
【0021】
また、上記排熱回収装置において、前記熱源にエンジンを用いることができる。また、上記排熱回収装置を用いてコジェネレーションシステムを構成すれば、効率のよい排熱回収を行え、利用効率を高めることができる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明した本発明の排熱回収方法又はその装置によれば、次のような効果が得られる。
【0023】
(1) 排気を生じる熱源及び排気から排熱を効率よく回収でき、回収された熱を熱媒体とともに蓄熱することができる。
【0024】
(2) 排熱回収のための熱媒体が低温で供給することが可能となり、排気の潜熱まで回収可能であり、効率のよい排熱回収を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1の実施の形態に係るコジェネレーションシステムの一例を示す図である。
【図2】コジェネレーションシステムの一例を示す図である。
【図3】制御装置の一例を示す図である。
【図4】主制御の処理手順を示すフローチャートである。
【図5】エンジンの冷却制御の処理手順を示すフローチャートである。
【図6】排熱回収制御の処理手順を示すフローチャートである。
【図7】起動時の動作特性を示す図である。
【図8】安定時の動作特性を示す図である。
【図9】余剰電力発生時の動作特性を示す図である。
【図10】蓄熱タンクの沸き上がり時の動作特性を示す図である。
【図11】余剰電力の発生を示す図である。
【図12】第2の実施の形態に係るコジェネレーションシステムの一例を示す図である。
【図13】第3の実施の形態に係るコジェネレーションシステムの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
〔第1の実施の形態〕
【0027】
この第1の実施の形態について、図1及び図2を参照する。図1は、第1の実施の形態に係るコジェネレーションシステムの発電ユニットを示す図、図2は、貯湯ユニットを示す図である。図1及び図2に示す構成は一例であって、本発明は斯かる構成に限定されるものではない。
【0028】
このコジェネレーションシステム2は、排熱回収方法又は排熱回収装置の一例であって、発電ユニット4と、貯湯ユニット6とを備え、発電ユニット4は、発電機能部10と、排ガス回路12と、エンジン冷却回路14と、排熱回収回路16とを備える。エンジン冷却回路14は、第1の熱媒体18を循環させる第1の循環路、排熱回収回路16は、第2の熱媒体20を循環させる第2の循環路の一例である。熱媒体18は熱源の冷却水であり、熱媒体20は蓄熱媒体である。そこで、このコジェネレーションシステム2では、熱源(エンジン24)を熱媒体18で冷却即ち、熱交換し、この熱媒体18及び排気22の双方の熱を熱媒体20に熱交換して回収し、この熱媒体20の熱を貯湯ユニット6側の蓄熱手段に蓄熱する。
【0029】
発電機能部10は、エンジン24と、発電機26と、パワーコンディショナ28と、発電ユニットコントローラ30とを備えている。エンジン24は、発電機26の駆動手段であって、都市ガス、LPG、ガソリン、灯油、軽油等の燃料を燃焼させて回転力を生成するが、その燃料の燃焼で発熱し、排気22を生じる。従って、エンジン24は発熱源、排熱源であり、エンジン24が発生する排気22も熱源である。
【0030】
発電機26はエンジン24を駆動手段とする発電手段であって、エンジン24の回転力を受けて発電する。この発電出力は、交流であってもよいし、直流であってもよい。
【0031】
パワーコンディショナ28は電力変換手段である例えば、インバータで構成され、発電機26の出力が所定の電圧例えば、商用交流と同等の電圧出力(100〔V〕)に変換される。このパワーコンディショナ28の出力は負荷32に供給されるとともに、余剰電力として活用される。負荷32は例えば、家庭向け電力の消費である。余剰電力PS は、発電電力PO に対し、家庭向け電力としての消費電力PL が少ない場合に生じ(PO >PL ,PS =PO −PL )、この余剰電力はエンジン冷却回路14にある余剰電力ヒータ34に供給され、熱に変換される。
【0032】
発電ユニットコントローラ30はエンジン冷却回路14等の制御手段であって、パワーコンディショナ28の出力によって給電され、各種センサからの検出出力を受け、排熱回収のための制御出力を機能部に付与する。この発電ユニットコントローラ30は貯湯ユニット6側の貯湯ユニットコントローラ62(図2)に接続され、この実施の形態では、貯湯ユニットコントローラ62に接続されているリモートコントローラ8により、貯湯ユニットコントローラ62を通して操作される。リモートコントローラ8は、遠隔制御手段の一例であって、発電ユニットコントローラ30や貯湯ユニット6の遠隔操作に用いられる。
【0033】
また、排ガス回路12はエンジン24の排気(Go)22を通過させる排気手段であって、第1の熱交換器36と、サイレンサー38と、マフラー40とを備える。熱交換器36は、排ガスGoの熱を蓄熱側の熱媒体20に熱交換する手段であって、排ガス回路12と排熱回収回路16との間に設置されている。サイレンサー38及びマフラー40は排ガス系統の消音手段であって、排気に伴う騒音を抑制する。
【0034】
エンジン冷却回路14は、エンジン24を熱媒体18により冷却するとともに、エンジン24の熱(排熱)を熱媒体18に熱交換して回収する手段である。このエンジン冷却回路14には、リザーブタンク42と、ポンプ44と、熱交換部46と、温度センサ48、50と、第2の熱交換器52と、余剰電力ヒータ34とを備える。
【0035】
リザーブタンク42は、熱媒体18を蓄積する手段であって、このリザーブタンク42には、排熱回収回路16から分岐した補水回路54が接続されているとともに、補水弁56及びレベルセンサ58が設置されている。レベルセンサ58が補水の必要レベルを検出したとき、補水弁56が開かれ、熱媒体18が排熱回収回路16からリザーブタンク42に補給される。
【0036】
ポンプ44は、エンジン冷却回路14に熱媒体18を強制的に循環させる手段であって、これにより熱媒体18は、熱交換部46、温度センサ48、50、熱交換器52及び余剰電力ヒータ34に循環する。
【0037】
熱交換部46は、エンジン24に設置された熱交換手段であって、エンジン24の排熱を熱媒体18に熱交換する。温度センサ48、50は熱媒体18の温度検出手段であって、例えば、サーミスタ温度センサで構成される。そこで、温度センサ48は、エンジン24の入側の熱媒体18の温度を検出する。また、温度センサ50は、熱交換部46の出側の熱媒体18の温度を検出し、この実施の形態では余剰電力ヒータ34の出側に設置され、熱交換部46及び余剰電力ヒータ34で加熱された熱媒体18の温度を検出する。
【0038】
熱交換器52は、熱媒体18の熱を蓄熱側の熱媒体20に熱交換する手段であって、エンジン冷却回路14と排熱回収回路16との間に設置されている。
【0039】
また、貯湯ユニット6には、図2に示すように、既述の排熱回収回路16と、給湯側熱交換回路60と、貯湯ユニットコントローラ62とを備える。排熱回収回路16には、蓄熱タンク64と、ポンプ66と、温度センサ68と、三方弁70と、バイパス路72とを備える。蓄熱タンク64は蓄熱手段の一例であって、熱媒体20を蓄積する。
【0040】
ポンプ66は、熱媒体20を排熱回収回路16に強制的に循環させる手段であり、温度センサ68は、蓄熱タンク64又はバイパス路72に流れる熱媒体20の温度を検出する手段であって、例えば、サーミスタ温度センサで構成される。
【0041】
三方弁70は、蓄熱タンク64に併設されたバイパス路72と蓄熱タンク64側の排熱回収回路16との熱媒流路を切り替える手段としての切替弁であって、蓄熱タンク64に対して熱媒体20を流し込む場合にポートA−Cが開かれ、蓄熱タンク64に対して熱媒体20をバイパスする際にポートA−Bが開かれる。
【0042】
給湯側熱交換回路60は、熱媒体20の熱を上水Wに熱交換し、温水HWを得て給湯する手段であるとともに、上水Wを熱媒体20として補給する手段である。この給湯側熱交換回路60には、第3の熱交換器74と、ポンプ76と、リザーブタンク78とを備えている。
【0043】
熱交換器74は、熱媒体20の熱を上水Wに熱交換する手段であり、ポンプ76は、熱媒体20を熱交換器74に強制的に循環させる手段である。熱交換器74で得られた温水HWは家庭内給湯等に供される。
【0044】
リザーブタンク78は、熱媒体20を蓄積するとともに、熱媒体20を大気に開放する手段であって、このリザーブタンク78には上水管路79から分岐された補水管路80が接続され、補水管路80を開閉する手段として補水弁82と、リザーブタンク78内の熱媒体20のレベルを検出する手段としてレベルセンサ84とが設置されている。レベルセンサ84の検出レベルが基準レベル未満であれば、補水弁82が開かれ、上水Wがリザーブタンク78に補水される。このリザーブタンク78は蓄熱タンク64の底部側に補水管路86を介して接続され、蓄熱タンク64の熱媒体20が補水管路86及びリザーブタンク78を通して大気に開放されるとともに、リザーブタンク78から蓄熱タンク64の底部側に熱媒体20が補給される。
【0045】
また、貯湯ユニットコントローラ62は、貯湯ユニット6等の制御手段であって、温度センサ68の検出温度や、リザーブタンク78にあるレベルセンサ84の検出出力等を制御情報とし、ポンプ76の駆動やその停止、補水弁82の開閉等、機能部の制御を行う。
【0046】
貯湯ユニットコントローラ62にはリモートコントローラ8が接続されている。リモートコントローラ8は、貯湯ユニットコントローラ62の遠隔操作手段であって、既述の制御に必要な操作に用いられる。
【0047】
次に、このコジェネレーションシステム2について、排熱回収動作及び給湯動作を説明する。
【0048】
エンジン24を駆動すると、エンジン24は発熱する。その熱はエンジン冷却回路14に循環する熱媒体18に熱交換され、熱媒体18に吸収される。エンジン24に導入される熱媒体18の温度が低い場合には、エンジン24の内部で結露を生じるので、排熱回収に適さない。このため、温度センサ48の検出温度を監視する。エンジン24が効率よく駆動可能な温度例えば68〔℃〕〜73〔℃〕に検出温度が到達した後、排熱回収に移行させることが望ましい。
【0049】
エンジン冷却回路14には熱媒体18(クーラント)を循環させ、熱媒体18でエンジン24を冷却して得られる熱量はほぼ一定である。このため、所定流量として例えば、流量3.0〔L/min 〕が得られるようにポンプ44を所定回転数に制御する。これが基本運転である。エンジン24の入口側温度を温度センサ48で検出し、その検出温度を監視する。熱媒体18の温度調整は熱媒体18の流量の増減によって行う。温度センサ50で熱媒体18の温度を検出し、その検出温度が異常な高温度である場合にエンジン24を停止させる。
【0050】
エンジン24の排気温度は例えば、300〜400〔℃〕の高温である。この排気22は熱交換器36に導入され、その熱は熱媒体20に熱交換された後、サイレンサー38及びマフラー40を経て外気に排出される。熱交換器36で熱交換された熱媒体20の温度が低い場合例えば、およそ40〔℃〕以下の場合には、排気22中の水蒸気が露点温度以下となるので、熱媒体20に凝縮熱(潜熱)を熱交換して回収することができる。
【0051】
排熱回収回路16には、エンジン24の排気22の熱を回収する気体−液体間熱交換手段である熱交換器36と、熱媒体18の熱を熱媒体20に熱交換して回収する液体−液体間熱交換手段である熱交換器52とを備える。
【0052】
そこで、熱交換器36で排気22との熱交換で加熱された熱媒体20は熱交換器52に循環し、エンジン冷却回路14に流れる熱媒体18と熱交換を行う。このとき、熱媒体18の検出温度がエンジン冷却に適した温度として例えば68〔℃〕〜73〔℃〕になるようにポンプ44の回転数を制御する。この制御では、温度センサ48の検出温度が基準温度以上の場合(高い場合)にはポンプ44の回転数を上げ、また、その検出温度が基準温度未満の場合にはポンプ44の回転数を下げ、熱媒体18の循環量を検出温度が基準温度になるように所定循環量に制御する。このため、エンジン24の極端な冷却を防止し、エンジン24側の効率を低下させることがない。
【0053】
熱媒体20は、蓄熱タンク64の下層部から熱交換器36、52に流れるため、ポンプ66の回転数にかかわらず、熱交換器36に低温の熱媒体20が流れる。熱交換器36ではエンジン24の排気22との熱交換が継続的に行われ、排気22から凝縮熱の回収が可能である。
【0054】
熱交換器36及び熱交換器52を通過した熱媒体20は蓄熱タンク64側にポンプ66によって導かれる。この熱媒体20の温度は温度センサ68によって検出され、その検出温度が基準温度例えば、75〔℃〕以上であるか否かを判定する。熱媒体20の検出温度が基準温度以上であれば、三方弁70のポートA−C側に切り替え、高温の熱媒体20を蓄熱タンク64の上層側に戻す。また、検出温度が基準温度未満であれば、三方弁70のポートA−B側に切り替え、低温の熱媒体20はバイパス路72に流して熱交換器36及び熱交換器52に循環させ、低温度の熱媒体20が蓄熱タンク64の上層側に流れ込むのを防止する。
【0055】
この結果、蓄熱タンク64には高温の熱媒体20が戻され、質の高い蓄熱が行われる。また、低温の熱媒体20は再度の排熱回収を行う。このような熱媒体20をバイパス路72側に流す動作は、発電の開始時等に発生する。
【0056】
そして、排熱回収が進むと、蓄熱タンク64には高温の熱媒体20が占める領域即ち、高温の熱媒体20の占める割合が増加する。蓄熱タンク64が高温の熱媒体20で満たされると、これ以上の排熱回収は不要となる。この場合、エンジン24を停止させ、発電を終了させる。このとき、ポンプ44、66を停止させ、排熱回収を終了する。
【0057】
また、熱媒体20の熱は、給湯により消費する。図示しない給湯栓を開くと、給湯要求が発生し、ポンプ76が駆動される。蓄熱タンク64にある熱媒体20はその上層部より給湯側熱交換回路60に循環し、熱交換器74へ導入される。熱交換器74では、上水Wが給水されているので、その上水Wに熱媒体20の熱が熱交換されて温水HWが得られ、給湯される。給湯温度は、ポンプ76の回転数等により、熱交換器74に導入される熱媒体20の流量により調整される。上水Wと熱交換された熱媒体20は低温化されているので、蓄熱タンク64の熱媒体20の下層部側に戻される。このため、熱媒体20の上層部側の温度が乱されることがない。
【0058】
次に、このコジェネレーションシステム2の制御装置について、図3を参照する。図3は、制御装置を示す図である。図3に示す構成は一例であって、本発明は斯かる構成に限定されるものではない。図3において、図1及び図2と同一部分には同一符号を付してある。
【0059】
このシステム2では、既述の制御動作を実現する制御手段として、発電ユニット4側に発電ユニットコントローラ30、貯湯ユニット6側に貯湯ユニットコントローラ62が備えられている。これらコントローラ30、62は例えば、マイクロコンピュータ等で構成され、時間を計測する手段としてタイマーを備えている。
【0060】
発電ユニットコントローラ30には、温度センサ48、50、レベルセンサ58の検出出力、その他の入力88が加えられ、ポンプ44、補水弁56に対する制御出力、その他の出力90が取り出される。
【0061】
レベルセンサ58は、低(L)レベルを検出する水位電極58L、高(H)レベルを検出する水位電極58Hを備える。これらLレベル又はHレベルの検出出力は、補水弁56の開閉制御のため、制御情報として用いられる。
【0062】
その他の入力88は他のセンサの他、例えば、キーボード等の入力機器から入力される情報であり、この発電ユニットコントローラ30には、リモートコントローラ8からの電源投入等の入力も加えられる。
【0063】
そこで、このような検出情報を制御情報にし、発電ユニットコントローラ30では、ポンプ44の駆動やその回転制御、又はその停止等を行い、また、補水弁56の開閉、その他の機能部等の制御が行われる。
【0064】
また、貯湯ユニットコントローラ62には、温度センサ68、レベルセンサ84の検出出力、その他の入力92が加えられ、三方弁70、ポンプ66、76、補水弁82に対する制御出力、その他の出力94が取り出される。
【0065】
レベルセンサ84は、低(L)レベルを検出する水位電極84L、高(H)レベルを検出する水位電極84Hを備える。これらLレベル又はHレベルの検出出力は、補水弁82の開閉制御のため、制御情報として用いられる。
【0066】
その他の入力92は他のセンサの他、例えば、キーボード等の入力機器から入力される情報であり、この貯湯ユニットコントローラ62には、リモートコントローラ8からの電源投入等の入力も加えられる。
【0067】
そこで、このような検出情報を制御情報にし、貯湯ユニットコントローラ62では、ポンプ66又はポンプ76の駆動やその回転制御、又はその停止等を行い、また、補水弁82の開閉、三方弁70の切替え、その他の機能部等の制御が行われる。
【0068】
この場合、発電ユニットコントローラ30と貯湯ユニットコントローラ62は双方向通信にて接続され、各種センサの制御入力や制御出力の状態等のデータの共有が可能となっている。また、貯湯ユニットコントローラ62に接続されたリモートコントローラ8により、動作状態の確認や、各種機能操作が可能である。
【0069】
次に、主制御について、図4を参照する。図4は、主制御の処理手順を示すフローチャートである。図4に示す構成は一例であって、本発明は斯かる構成に限定されるものではない。
【0070】
この処理手順は、排熱回収方法又はその方法を実現する排熱回収プログラムの一例であって、このシステム2の起動中、常に実施される処理であり、メインルーティンを構成している。ステップS02からステップS08までの各工程は起動中、繰り返し実行される。
【0071】
そこで、電源投入されると、各コントローラ30、62の入出力ユニット(I/O)のイニシャライズ、設定の初期化等のシステム初期化が行われる(S01)。この初期化の後、発電可能であるか否かを判定する(ステップS02)。この判定では、センサ異常等の異常が発生しているか否か、蓄熱タンク64が蓄熱可能(蓄熱タンク64内の熱媒体20に低温領域が存在しているか否か等の判定が含まれる。発電が可能な場合には、発電を実施する(ステップS03)。手動による発電指示や予測された電力消費に対応するための発電等により発電を行う場合には(ステップS03のYES)、エンジン24の駆動制御を開始し(ステップS04)、発電を開始させる。
【0072】
発電不能な場合(ステップS02のNO)、発電を実施しない場合には(ステップS03のNO)、エンジンの停止制御を実行し(ステップS05)、エンジン停止とする。
【0073】
エンジンの駆動制御(ステップS04)を実行する場合には、エンジン冷却制御(ステップS06)を行い、熱媒体18によりエンジン24を冷却する処理、排熱回収制御(ステップS07)を実行する。この排熱回収制御では、エンジン24の駆動により発生した熱を熱媒体18、20を媒介として熱交換を行い、排熱を回収する処理、熱媒体20を蓄熱タンク64に蓄積する処理、給湯制御(ステップS08)を行う。給湯制御は、給湯要求があるとき蓄熱タンク64に蓄えられた熱により上水Wを加熱し、供給する処理である。
【0074】
なお、ステップS06、S07、S08の各処理は基本的に独立しており、処理の順番は、このフローチャートに必ずしも従う必要はなく、また、同時に実行されてもよい。
【0075】
次に、エンジン冷却制御の処理手順について、図5を参照する。図5は、エンジン冷却制御の処理手順を示すフローチャートである。図5に示す構成は一例であって、本発明は斯かる構成に限定されるものではない。
【0076】
このエンジン冷却制御(ステップS06:図4)の処理は、排熱回収方法又は排熱回収プログラムの一例であって、エンジン24の駆動に合わせ、熱媒体18の循環によりエンジン冷却を行うとともに、熱媒体18が蒸発等により減少した場合の補水制御を含んでいる。
【0077】
そこで、このエンジン冷却制御の処理では、エンジン24が駆動中であるか否かを判定し(ステップS11)、エンジン24が駆動中であれば(ステップS11のYES)、リザーブタンク42の水位の確認を行う(ステップS12)。リザーブタンク42の熱媒体18のレベルがLレベルに低下していなければ(ステップS12のYES)、補水弁56を閉じ(ステップS13)、補水を停止し、熱媒体18のレベルがLレベルに低下していれば(ステップS12のNO)、補水弁56を開放し(ステップS14)、熱媒体18の補給を行う。熱媒体18の補給は排熱回収回路16に流れる熱媒体20で行われる。この熱媒体20の補給は、水位電極58LがOFF状態にある場合に補給を開始し、水位電極58Hが熱媒体18を検出するまで行う。これにより、エンジン24を冷却するに必要な冷却媒体としての熱媒体18の必要量が維持される。
【0078】
エンジン24の駆動中、ポンプ44は所定回転数Nにて維持され(ステップS15)、メインルーチン(ステップS06)に戻る。このポンプ44の回転数Nは、エンジン24が効率よく駆動可能な温度、例えば68〔℃〕〜73〔℃〕の熱媒体18をエンジン24の熱交換部46に供給し、エンジン24の冷却と余剰電力ヒータ34による熱媒体18の加熱を行っても、熱媒体18が沸騰しない熱媒体流量(循環量)を維持するための回転数Nが決定される。その回転数Nによって得られる熱媒体流量は一定流量(一定循環量)として例えば、3〔L/ min〕であればよい。この流量が多ければ、熱媒体18の温度上昇が抑えられるが、回転数を上げると、その分だけポンプ44の消費電力が増加するので、熱媒体18の沸騰を防止する範囲内の流量に抑えればよい。
【0079】
そして、エンジン24が駆動していない場合には(ステップS11のNO)、補水弁56を閉止し(ステップS16)、ポンプ44の駆動を停止し(ステップS17)、メインルーチン(ステップS06)に戻る。
【0080】
次に、排熱回収制御(ステップS07:図4)の処理手順について、図6を参照する。図6は、排熱回収制御の処理手順を示すフローチャートである。図6に示す構成は一例であって、本発明は斯かる構成に限定されるものではない。
【0081】
この排熱回収制御(ステップS07)の処理は、排熱回収方法又は排熱回収プログラムの一例であって、熱媒体20の循環量を制御するとともに、排熱回収した熱媒体20の温度を監視し、その熱媒体20で蓄熱するか、再度の排熱回収を行うかの切替え制御を含んでいる。
【0082】
そこで、この排熱回収制御の処理では、エンジン24が駆動しているか否かの判定を行う(ステップS21)。エンジン24が駆動中であれば(ステップS21のYES)、熱交換器52で熱交換された熱媒体18の温度を温度センサ48で検出し、その検出温度に応じてポンプ66の回転数を加減し、熱媒体20の流量(循環量)を制御する。
【0083】
この場合、温度センサ48の検出温度T1 が下限基準温度T1Lとして例えば、68〔℃〕未満であれば(ステップS22のYES)、ポンプ66の回転数Nを現状回転数より低下させ、即ち、回転数の低減を行う(ステップS23)。この場合、回転数Nのダウン量(低減量)は所定回転数として例えば、100〔rpm〕ずつ段階的にダウンさせてもよいし、現在の回転数Nに対して所定の割合で連続的に低減させてもよい。ポンプ66に指示される回転数には、最低限の流量(熱交換器52で部分沸騰が発生しない流量)を維持するための回転数として最低回転数Nmin を設定する。このような最低回転数Nmin 以上に回転数を維持すれば、熱媒体18の沸騰を防止し、信頼性のある動作を維持することができる。
【0084】
温度センサ48の検出温度T1 が上限基準温度T1Hとして例えば、73〔℃〕以上であれば(ステップS24のYES)、ポンプ66の回転数Nを現状回転数より上昇させる(ステップS25)。回転数Nのアップ量(増加量)はダウン量と同様に、所定回転数として例えば、100〔rpm〕ずつ段階的にアップさせてもよいし、現在の回転数Nに対して所定の割合で連続的に上昇させてもよい。この場合、ポンプ能力により上限値を予め決め、その値は越えないようにすればよい。そして、ポンプ66は指示された回転数で駆動され(ステップS26)、熱媒体20が循環する。
【0085】
エンジン24が駆動状態でなければ(ステップS21のNO)、温度センサ68の検出温度T3 が基準温度である切替温度TSW以上として例えば、75〔℃〕以上であれば(ステップS27のNO)、熱媒体20の余熱が残っている状態であるため、ステップS22に戻り、排熱回収状態を継続する。
【0086】
この場合、温度センサ68の検出温度T3 が、切替温度TSW未満として例えば、75〔℃〕未満であれば(ステップS27のYES)、ポンプ66を停止し(ステップS28)、排熱回収を停止する。この場合、次の排熱回収の開始に備え、ポンプ66の指示回転数に最低限の流量を確保するための下限値としての回転数を発電ユニットコントローラ30の記憶手段に記憶し(ステップS29)、その回転数を次回の排熱回収時の回転数に設定する。
【0087】
そして、このような排熱回収処理を経て加熱された熱媒体20の温度を検出し、温度センサ68の検出温度T3 が切替温度TSW未満であるか否かを判定する(ステップS30)。温度センサ68の検出温度T3 が切替温度TSW未満として例えば、75〔℃〕未満であれば(ステップS30のYES)、三方弁70をポートA−B側に切り替え(パイパス路72側に流路を設定)、熱媒体20をバイパス路72から熱交換器36、52に循環させ、再度の排熱回収を行うため、メインルーチン(ステップS07)に戻る。
【0088】
また、温度センサ68の検出温度T3 が切替温度TSW以上として例えば、75〔℃〕以上であれば(ステップS30のNO)、三方弁70をポートA−C側に切り替え(蓄熱タンク64側に流路を設定)、熱媒体20をタンク上部より蓄熱タンク64に導入し、蓄熱を行い、メインルーチン(ステップS07)に戻り、排熱回収を継続する。
【0089】
この実施の形態では、温度センサ48の検出温度T1 に対して下限基準温度T1Lと上限基準温度T1Hとを設定してポンプ66の回転制御を行うので、ポンプ66の回転が頻繁に変化する所謂チャタリングを防止でき、制御の安定化を図ることができる。
【0090】
次に、発電ユニットの動作について、図7、図8、図9及び図10を参照する。図7は、発電ユニットの起動時の動作を示す図、図8は、発電ユニットの運転時(安定時)の動作を示す図、図9は、余剰電力ヒータ動作を示す図、図10は、蓄熱タンク沸き上がり時の動作を示す図である。図7、図8、図9及び図10に示す動作は一例であって、斯かる動作及び特性に本発明が限定されるものではない。
【0091】
図7、図8、図9及び図10において、(A)は三方弁70の切替動作及び熱媒体20の循環経路、(B)は温度センサ48、50、68の検出温度T1 、T2 、T3 及び熱交換器36の入口温度T4 の推移、(C)はポンプ66の回転数N1 、ポンプ44の回転数N2 の推移、(D)は余剰電力ヒータ34向けの余剰電力出力の推移を示している。また、各図において、t1 はエンジン始動時点、t2 は三方弁70の切替時点、t3 、t5 、t6 、t8 、t9 、t10は温度センサ48の検出温度T1 が上限基準温度T1Hに到達した時点、t4 、t7 はその検出温度T1 が下限基準温度T1Lに到達した時点であり、ポンプ66の回転数の切替時点である。t11はエンジン24の停止時点、t12は三方弁70の切替時点である。
【0092】
エンジン始動時(t1 )から所定時間では三方弁70はバイパス路72側に流路を形成しており、温度センサ68の検出温度T3 が切替温度TSWに到達した時点(t2 )で三方弁70が蓄熱タンク64側に切り替えられる。これにより、バイパス路72が閉じられ、高温の熱媒体20が蓄熱タンク64に蓄積される。
【0093】
時点t1 からt2 に至る過渡期では、エンジン24の回転に伴って各検出温度T1 、T2 、T3 及び熱交換器36の入口温度T4 が上昇する。
【0094】
時点t2 の直後、熱交換器36の入口温度T4 が急激に降下し、安定状態に移行しているのは、熱媒体20がバイパス路72を循環し、その温度が上昇していたのに対し、蓄熱タンク64から低温の熱媒体20が排熱回収回路16に導入されることに起因する。この時点から過渡期の温度上昇を経て熱回収モードに移行している。
【0095】
このような過渡期を経た後、運転状態は安定状態に移行し、図8に示すように、安定状態では各検出温度T1 、T2 、T3 及び入口温度T4 に大きな変動はない。また、三方弁70は蓄熱タンク64側に切り替えられ、熱媒体20の蓄積が連続的かつ安定した状態で継続している。これに対し、ポンプ66の回転数N1 は、温度センサ48の検出温度T1 の推移に応じて僅かに変動している。この変動は、エンジン24に対する安定した熱回収を行うための制御を示している。
【0096】
発電機26の発電出力は家庭内需要に応じて使用されるが、余剰電力が発生すると、その余剰電力によって余剰電力ヒータ34が駆動され、熱媒体18が余剰電力ヒータ34の発熱によって加熱される。図9の(D)は、その余剰電力ヒータ34向けの電力出力状態を示している。
【0097】
また、蓄熱タンク64の全ての熱媒体20が上限温度に到達すると、この時点が蓄熱タンク64の熱媒体20の沸き上がりとなる。これ以上の排熱回収は無駄であるから、エンジン24を停止することは既述の通りである。この場合、熱交換器36の入口温度T4 がエンジン停止温度Toff に到達した時点t11でエンジン停止を行う。このエンジン停止に続き、時点t12で三方弁70をバイパス路72側に切り替え、熱媒体20をバイパス路72に循環させ、蓄熱タンク64への供給を停止し、全ての熱回収を完了する。このような終了動作により、検出温度T1 、T2 、T3 及び入口温度T4 は下降状態となる。
【0098】
次に、余剰電力の処理について、図11を参照する。図11Aは、発電出力と電力使用状態の推移を示す図、図11Bは図11Aの11B部分の拡大図である。図11に示す発電出力や電力使用状態は一例であって、斯かる状態に本発明が限定されるものではない。
【0099】
図11Aにおいて、P1 は発電量、P2 は一定の発電量(1〔kW〕)ライン、P3 は電力使用量である。図11Bは、余剰電力Pの推移であって、B0 は電力使用量、B1 は瞬時電力使用量、B2 は余剰電力、B3 は余剰電力変動である。
【0100】
余剰電力ヒータ34は余剰電力を受けて発熱し、その熱はエンジン冷却回路14の熱媒体18にエンジン24の通過後に加えられる。エンジン24の回転により発電機26で発電を行い、その電力は、パワーコンディショナ28(インバータ)で周波数や電圧を調整された後(電力変換後)、家庭内に供給される。家庭内の電力使用量に合わせて同量の発電を行うことは難しいが、効率の良い発電量はエンジン24の規格等で決定される。
【0101】
そこで、家庭内の電力使用量がエンジン24の定格発電量以上(本システム2では、1〔kW〕)の場合にエンジン24を駆動し発電を行う。図11Aに示すように、6時〜8時と、16時〜21時に発電を行っている。エンジン24が駆動し発電を行っている場合、その全てを家庭内で消費するわけではないので、その発電量が電力使用量を上回る場合が発生する。その差が余剰電力となり、この余剰電力が発電電力と消費電力との差電力である。この余剰電力を熱に変換する手段が余剰電力ヒータ34である。余剰電力ヒータ34の最大発熱は例えば、定格発電量(1kW)の場合であるが、この場合、加熱される熱媒体18が局部沸騰を起こさないように温度管理する必要がある。そのため、加熱される熱媒体18の流量(循環量)を多くし、温度上昇の抑制や、熱媒体18の温度を低くし、余剰電力加熱による温度上昇があっても、沸騰温度に到達しないようにすればよい。この場合、熱媒体18の沸点を上昇させることも可能である。
【0102】
本システム2では、エンジン冷却回路14に余剰電力ヒータ34が設置され、温度センサ48の検出温度T1 を制御情報にして温度68〔℃〕〜73〔℃〕の範囲に制御された熱媒体18は、エンジン通過後、温度75〔℃〕〜80〔℃〕程度に上昇する。熱媒体18の流量(循環量)は、既述の通り、3〔L/min 〕であるので、余剰電力ヒータ34が最大発熱した際の温度上昇として例えば、約5〔℃〕程の上昇が見込まれるが、仮に5〔℃〕の上昇では、最大温度は85〔℃〕程度であり、水の沸騰温度以下に抑えられることが理解できよう。
【0103】
このように、熱媒体18の沸騰防止がなされ、余剰電力ヒータ34により加熱された熱媒体18は熱交換器52で熱媒体20と熱交換が行われる。余剰電力ヒータ34及びエンジン冷却で加熱された熱媒体18の温度は、熱媒体20の循環量により温度上昇が抑えられ、最も効率のよい値に維持される。即ち、温度センサ48の検出温度T1 を制御情報として熱媒体20の流量(循環量)が制御され、熱媒体20に熱媒体18から熱交換される熱交換量が加減される。
【0104】
以上述べた第1の実施の形態によれば、次のような効果や利点がある。
【0105】
(1) 排気を生じる熱源及び排気から排熱を効率よく回収でき、回収された熱を熱媒体とともに蓄熱ができる。
【0106】
(2) 排熱回収のための熱媒体が低温で供給することが可能となり、排気の潜熱まで回収可能であり、効率のよい排熱回収ができる。
【0107】
(3) エンジン冷却回路14と排熱回収回路16とを分離しているので、効率のよい温度でエンジン24の冷却が可能である。
【0108】
(4) エンジン冷却回路14と排熱回収回路16とを分離しているので、エンジン冷却に使用するクーラント量(熱媒体18の量)を制御し又は抑制できる。
【0109】
(5) 排熱回収を行った熱媒温度が高い場合のみ蓄熱タンク64へ戻すため、質の高い蓄熱が可能である。
【0110】
(6) 余剰電力を熱に変える余剰電力ヒータ34はエンジン冷却回路14に設けられるため、その発熱によるエネルギは一旦エンジン冷却回路14に蓄えられる。エンジン冷却回路14の熱媒流量を多くできるので、余剰電力ヒータ34による加熱によっても、熱媒体18の沸騰を防止できる。
【0111】
〔第2の実施の形態〕
【0112】
この第2の実施の形態では、図12に示すように、給湯側熱交換回路60に熱交換器94を設置し、この熱交換器94で排気22の熱を給湯側の熱媒体20に熱交換する構成としてもよい。斯かる構成とすれば、熱媒体20の温度が低い場合や給湯需要が多い場合に出湯温度を高めることができる。
【0113】
〔第3の実施の形態〕
【0114】
この第3の実施の形態では、図13に示すように、給湯側熱交換回路60に熱交換器96を設置し、この熱交換器96で熱媒体18の熱を給湯側の熱媒体20に熱交換する構成としてもよい。斯かる構成とすれば、熱媒体20の温度が低い場合や給湯需要が多い場合に出湯温度を高めることができる。
【0115】
以上説明したように、本発明の最も好ましい実施の形態等について説明したが、本発明は、上記記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載され、又は明細書に開示された発明の要旨に基づき、当業者において様々な変形や変更が可能であることは勿論であり、斯かる変形や変更が、本発明の範囲に含まれることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明は、エンジン等の排気を生じる熱源及び排気の熱を回収して蓄熱することができ、熱媒体で蓄熱された熱は給湯等に供され、熱源の効率的な運転状態の維持と、排熱の有効利用を図ることができ、有用である。
【符号の説明】
【0117】
2 コジェネレーションシステム
4 発電ユニット
6 貯湯ユニット
8 リモートコントローラ
10 発電機能部
12 排ガス回路
14 エンジン冷却回路
16 排熱回収回路
18 第1の熱媒体
20 第2の熱媒体
22 排気
24 エンジン
26 発電機
28 パワーコンディショナ
30 発電ユニットコントローラ
34 余剰電力ヒータ
36 第1の熱交換器
38 サイレンサー
40 マフラー
42、78 リザーブタンク
44、66、76 ポンプ
48、50、68 温度センサ
52 第2の熱交換器
56、82 補水弁
58、84 レベルセンサ
62 貯湯ユニットコントローラ
64 蓄熱タンク
70 三方弁
74 第3の熱交換器
W 上水
HW 温水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気を生じる熱源及び前記排気から熱を回収する排熱回収方法であって、
熱源に第1の熱媒体を循環させて前記熱源を前記第1の熱媒体で冷却する冷却工程と、
第2の熱媒体を第2の循環路に循環させる循環工程と、
前記第2の循環路に循環する前記第2の熱媒体に前記排気の熱を熱交換する第1の熱交換工程と、
前記第2の循環路に循環する前記第2の熱媒体に前記第1の熱媒体の熱を熱交換する第2の熱交換工程と、
前記第1及び/又は第2の熱交換工程により加熱された前記第2の熱媒体の熱を蓄熱する蓄熱工程と、
を含むことを特徴とする排熱回収方法。
【請求項2】
排気を生じる熱源及び前記排気から熱を回収する排熱回収装置であって、
熱源に第1の熱媒体を循環させて前記熱源を前記第1の熱媒体で冷却する第1の循環路と、
第2の熱媒体を循環させる第2の循環路と、
前記第2の循環路に循環する前記第2の熱媒体に前記排気の熱を熱交換する第1の熱交換手段と、
前記第2の循環路に循環する前記第2の熱媒体に前記第1の熱媒体の熱を熱交換する第2の熱交換手段と、
前記第1及び/又は第2の熱交換手段で加熱された前記第2の熱媒体の熱を蓄熱する蓄熱手段と、
を備えることを特徴とする排熱回収装置。
【請求項3】
前記熱媒体は液体であって、前記蓄熱手段は前記熱媒体を蓄積するタンクを備え、
前記タンクの前記熱媒体の下部側から取り出した第2の熱媒体を前記第1の熱交換手段及び前記第2の熱交換手段で加熱させ、該熱媒体を前記タンクの上部側に戻すことを特徴とする請求項2記載の排熱回収装置。
【請求項4】
前記第2の熱媒体の温度を検出する温度検出手段と、
前記第2の循環路に前記タンクをバイパスするバイパス路と、
前記第2の熱媒体を流す流路を前記バイパス路側又は/及び前記タンク側に切り替える流路切替手段とを備え、
前記温度検出手段の検出温度が基準温度以上の場合には、前記第2の熱媒体を前記タンクに戻し、前記検出温度が基準温度未満の場合には、前記第2の熱媒体を前記パイパス路側に循環させることを特徴とする請求項2記載の排熱回収装置。
【請求項5】
前記第1の熱媒体の温度を検出する温度検出手段と、
前記第2の循環路に設置されたポンプと、
前記温度検出手段の検出温度に応じて前記ポンプを駆動して前記第2の循環路に前記第2の熱媒体を循環させ、前記第2の熱媒体の循環量を前記検出温度が所定温度になる循環量に制御する制御手段と、
を備える請求項2記載の排熱回収装置。
【請求項6】
前記熱源によって駆動される発電機と、
前記発電機で発生した電力を熱に変換し、該熱によって前記第1の熱媒体及び/又は前記第2の熱媒体を加熱する加熱手段と、
を備えることを特徴とする請求項2記載の排熱回収装置。
【請求項7】
前記熱源がエンジンであることを特徴とする請求項2、3、4、5又は6記載の排熱回収装置。
【請求項8】
排気を生じる熱源及び前記排気から熱を回収する排熱回収装置を備えるコジェネレーションシステムであって、
熱源に第1の熱媒体を循環させて前記熱源を前記第1の熱媒体で冷却する第1の循環路と、
第2の熱媒体を循環させる第2の循環路と、
前記第2の循環路に循環する前記第2の熱媒体に前記排気の熱を熱交換する第1の熱交換手段と、
前記第2の循環路に循環する前記第2の熱媒体に前記第1の熱媒体の熱を熱交換する第2の熱交換手段と、
前記第1及び/又は第2の熱交換手段で加熱された前記第2の熱媒体の熱を蓄熱する蓄熱手段と、
を備えることを特徴とするコジェネレーションシステム。
【請求項9】
請求項2、3、4、5又は7に記載の排熱回収装置を備えることを特徴とする請求項8記載のコジェネレーションシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−190140(P2010−190140A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−36615(P2009−36615)
【出願日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(000170130)高木産業株式会社 (87)