説明

排稈カッター

【課題】カッター軸と掻込軸に沿って刃盤を配置して回転し、これら刃盤回転による切断部に排稈を沿わせるようにして供給し切断処理する排稈カッターにおいて、各切断部への排稈の掻込を効率良く行わせて、正確な切断作用を行わせる。
【解決手段】平行状に相対向する一対のカッター軸1及び掻込軸2に沿って、切断間隔毎に交差D回転して切断作用を行う刃盤3,4を配置し、前記カッター軸1の回転を掻込軸2よりも高速回転とした排稈カッターにおいて、掻込軸2の各刃盤4間隔部に設ける掻込体5の先端部6を、刃盤4の回転径K2よりも大きくして外方へ突出させ、該先端部6が切断開始点M位置の時、切断開始点Mと切断終了点Pとを結んだ線Lに対して略直交状θで、かつ、掻込軸2の放射方向Hに対して切断方向へ向けて傾斜の向かい角αを形成して、カッター軸1の各刃盤3間隔部に介入して回転させることを特徴とする排稈カッターの構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、脱穀済排稈の切断部に対する掻込効率を高める排稈カッターに関する。
【背景技術】
【0002】
一対のカッター軸、及び掻込軸に沿って刃盤を配置し、各刃盤間隔に巻付防止用の羽根板を設ける技術(例えば、特許文献1,2参照)が知られている。
【特許文献1】実開昭53−9259号公報
【特許文献2】特許第4049576号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
カッター軸と掻込軸に沿って刃盤を配置して回転し、これらカッター軸と掻込軸との間の刃盤回転による切断部に排稈を沿わせるようにして供給し切断処理する排稈カッターにあっては、各対向刃盤の切断部のうちの一部に未切断部を生じると、長わらの状態となって、カッター軸や、掻込軸等に巻付き易くなる。しかし、一旦短く切断されたわらは、これらのカッター軸や掻込軸周りに付き周りしようとしても、巻き付くことはない。このため、各切断部への排稈の掻込を効率良く行わせて、正確な切断作用を行わせようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1に記載の発明は、平行状に相対向する一対のカッター軸1及び掻込軸2に沿って、切断間隔毎に交差D回転して切断作用を行う刃盤3,4を配置し、前記カッター軸1の回転を掻込軸2よりも高速回転とした排稈カッターにおいて、掻込軸2の各刃盤4間隔部に設ける掻込体5の先端部6を、刃盤4の回転径K2よりも大きくして外方へ突出させ、該先端部6が切断開始点M位置の時、切断開始点Mと切断終了点Pとを結んだ線Lに対して略直交状θで、かつ、掻込軸2の放射方向Hに対して切断方向へ向けて傾斜の向かい角αを形成して、カッター軸1の各刃盤3間隔部に介入して回転させることを特徴とする排稈カッターの構成とする。カッター軸1と掻込軸2の互に対向する方向への回転によって、供給排稈の切断部への掻込、及び切断が行われる。掻込軸2周りの刃盤4回転外周部に供給された排稈は、この各刃盤4間隔部から外周へ突出の掻込体5の先端部6に係合され掻き込まれて、各刃盤3との交差D回転部において切断される。
【0005】
請求項2に記載の発明は、掻込軸2の刃盤4の回転径K2をカッター軸1の刃盤3の回転径K1よりも小径に形成し、この掻込体5の回転径K3をカッター軸1の刃盤3の回転径K1と略同径に設定したことを特徴とするものである。カッター軸1の回転は掻込軸2の回転よりも高回転するため、このカッター軸1上の刃盤3の回転速は高速に維持されて、排稈の切断効果を高く維持する。しかも、掻込軸2の掻込体5の掻込回転をできるだけ低速にして、排稈の掻込を正確に行わせる。この掻込体5の先端部6は、カッター軸1側の刃盤3の回転径K1と略同径に設定されているため、掻込回転速も大きく維持されて、これらの回転周速差を少なくすることができる。
【発明の効果】
【0006】
請求項1に記載の発明は、掻込体5を低速回転側の掻込軸2側に設け、この掻込体5の先端部6をこの掻込軸2側の刃盤4の回転径K2よりも大きく外周へ突出させ、該先端部6が切断開始点M位置の時、切断開始点Mと切断終了点Pとを結ぶ線Lに対して略直交状θを形成しているため、この先端部6での排稈の掻込係合を行い易くし、しかも、一旦係合された排稈は、この先端部6の向かい角α形態によって安定係合状態を維持されて、係合外れや、逃げを防止して、排稈の掻込を効率良く行わせることができ、各切断箇所での切断を的確に行わせることができる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、掻込軸2の刃盤4間隔部に設ける掻込体5の回転径K3を、カッター軸1の刃盤3の回転径K1と略同径に設定するため、このカッター軸1周りの刃盤3の大回転径に対する掻込軸2周りの刃盤4の小回転径設定の周速差を小さくすることができ、この掻込体5の先端部6の回転を、カッター軸1側の刃盤3の回転側に近付けて、排稈の掻込を円滑に行わせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図面に基づいて、コンバインの脱穀装置10の排稈部後端に、この排稈部から送出される排稈を受けて短く切断処理する排稈カッター11を着脱可能に装着する。この排稈部は稈身を横側状態にして挟持搬送する搬送チェン等から構成されて、この後端下部に排稈カッター11を装着し、搬送される排稈を受けて下方へ掻込しながら切断する。この排稈カッター11は、稈身方向に沿って横長い箱形状のカッタケース12の内部に軸装される。
【0009】
ここにおいて、この排稈カッター11は、平行状に相対向する一対のカッター軸1及び掻込軸2に沿って、切断間隔毎に交差D回転して切断作用を行う刃盤3,4を配置し、前記カッター軸1の回転を掻込軸2よりも高速回転とした排稈カッターにおいて、掻込軸2の各刃盤4間隔部に設ける掻込体5の先端部6を、刃盤4の回転径K2よりも大きくして外方へ突出させ、該先端部6が切断開始点M位置の時、切断開始点Mと切断終了点Pとを結んだ線Lに対して略直交状θで、かつ、掻込軸2の放射方向Hに対して切断方向へ向けて傾斜の向かい角αを形成して、カッター軸1の各刃盤3間隔部に介入して回転させることを特徴とする排稈カッターの構成とする。カッター軸1と掻込軸2の互に対向する方向への回転によって、供給排稈の切断部への掻込、及び切断が行われる。掻込軸2周りの刃盤4回転外周部に供給された排稈は、この各刃盤4間隔部から外周へ突出の掻込体5の先端部6に係合され掻き込まれて、各刃盤3との交差D回転部において切断される。
【0010】
又、掻込軸2の刃盤4の回転径K2をカッター軸1の刃盤3の回転径K1よりも小径に形成し、この掻込体5の回転径K3をカッター軸1の刃盤3の回転径K1と略同径に設定したことを特徴とするものである。カッター軸1の回転は掻込軸2の回転よりも高回転するため、このカッター軸1上の刃盤3の回転速は高速に維持されて、排稈の切断効果を高く維持する。しかも、掻込軸2の掻込体5の掻込回転をできるだけ低速にして、排稈の掻込を正確に行わせる。この掻込体5の先端部6は、カッター軸1側の刃盤3の回転径K1と略同径に設定されているため、掻込回転速も大きく維持されて、これらの回転周速差を少なくすることができる。
【0011】
前記カッタケース11には、カッター軸1と掻込軸2が軸受けされて、脱穀装置10側の伝動機構部から連動される。掻込軸2を駆動する形態とすると、カッター軸1はこの掻込軸2からギヤ機構を介して連動回転されて、上側部を互に掻込側B,Cへ向けて回転させる。又、これら両軸1,2の回転は、掻込軸2よりもカッター軸1を高速に回転させてある。又、カッター軸1に沿って配置の刃盤3は、外周の刃縁部の回転径K1が大きく、これに対して掻込軸2に沿って配置の刃盤4の外周刃縁部の回転径K2は小さく設定している。このようにしてカッター軸1の刃盤3の回転速は、掻込軸2の刃盤4の回転速よりも高速で回転するように設定している。各刃盤3,4は、カッター軸1、又は掻込軸2に沿って排稈の切断長さ毎に配置して、相互に前後方向に対向する刃縁部を軸方向に重合接近させて、交差D状態に回転して排稈を切断するように切断部12を構成する。
【0012】
切断部12は、両刃盤3,4の交差D回転部によって側面視略楕円形状軌跡線に描かれて、前記カッター軸1と掻込軸2との軸芯間を直結する前上り傾斜線Eに対して、直交方向、すなわち切断開始点Mと切断終了点Pとを結ぶ線Lを有し、この切断部12に掻込まれた排稈は、略この線Lの方向に沿って掻き送られながら切断される。切断された排稈は、回転周速の速い刃盤3側へやや引かれた切断方向Fに向け放出される。
【0013】
前記掻込軸2の各刃盤4間の間隔部に掻込体5が配置される。この掻込体5は間隔部よりも若干幅狭い板材によって形成され、掻込軸2の外周面を挟持するように角形の挟持面13を形成して、この挟持面13の両側をビス14で締付けて取付固定することができる。この挟持面13の端部から放射方向Hに伸ばして先端部6を、この刃盤4の回転径K2よりも外方に突出させる。しかも、この掻込体5の先端部6は、略刃盤4の回転径K2位置部から、放射方向Hに対して回転方向C側へ適宜角度の向かい角αに折曲して、前記切断部12の線Lの切断開始側における掻込体5の先端部6が、この線L方向に対して略直交θする状態となるようにしている。このようにして刃盤4の外周部へ突出して回転する掻込体5の先端部6は、前記切断部12の回転領域においては、対向側の刃盤3間の間隔部に深くのぞんで回転する形態で、カッター軸1の外周に形成するカラー15に接近させている。そして、この掻込体5の先端部6の回転径K3を、カッター軸1の刃盤3の回転径K1と略同径に形成して、この刃盤3の回転周速度に近付けるように構成している。
【0014】
前記切断部12の上側部で排稈を掻込む掻込口16上には、切替板17が後端の切替軸18周りに上下回動可能に設けられ、この切替板17の下側にピアノ線材等からなる案内杆19を設け、この案内杆19を下側の刃盤4間の間隔部に対向させて、搬送絡端部の掻込口16部に送込まれた排稈を、掻込軸2上の掻込体5で係合して刃盤4外周に沿って切断部12側へ掻込案内する。この切替板17を下側へ回動して、掻込口16を閉鎖するように切替操作すると、脱穀装置10の排稈部から搬送される排稈は、この切替板17の上側を案内させて後方のドロッパー等へ排出されて、切断しない状態のまま排出することができる。
【0015】
脱穀装置10の排稈部から排稈カッターの掻込口16へ搬送供給される排稈は、これら掻込軸2や、カッター軸1等と平行状態として、掻込口16下側の掻込軸2周りの刃盤4の外周縁に受けられて、この回転方向Cに送込まれると共に、この刃盤4の外周縁から外方へ突出する向かい角αを有した掻込体5の先端部6によって係合されて、切断部12へ回転して掻込まれ、この切断部12を線Lの方向に沿って掻込移行する間に、各刃盤3,4間の回転差によって切断される。このとき各掻込体5の先端部6で係合されている排稈は、カッター軸1側の刃盤3の間隔部からは外れ難く、又、逃げ難く、この先端部6の切断開始点M付近での回転方向Cは、カッター軸1上の刃盤3の回転方向Bと略同調しているため、切断作用を受ける排稈の姿勢を安定維持することができ、切断を正確に、確実に行わせて、効率良く切断させることができる。このため、未切断の排稈を少なくして、掻込軸2や、カッター軸1への巻付をなくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】排稈カッターの側面図。
【図2】その掻込体の形態を示す側面図。
【図3】排稈カッターの背面図。
【符号の説明】
【0017】
1 カッター軸
2 掻込軸
3 刃盤
4 刃盤
5 掻込体
6 先端部
D 交差
K1 回転径
K2 回転径
K3 回転径
L 線
M 切断開始点
P 切断終了点
α 向かい角
θ 直交状

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平行状に相対向する一対のカッター軸(1)及び掻込軸(2)に沿って、切断間隔毎に交差(D)回転して切断作用を行う刃盤(3),(4)を配置し、前記カッター軸(1)の回転を掻込軸(2)よりも高速回転とした排稈カッターにおいて、掻込軸(2)の各刃盤(4)間隔部に設ける掻込体(5)の先端部(6)を、刃盤(4)の回転径(K2)よりも大きくして外方へ突出させ、該先端部(6)が切断開始点(M)位置の時、切断開始点(M)と切断終了点(P)とを結んだ線(L)に対して略直交状(θ)で、かつ、掻込軸(2)の放射方向(H)に対して切断方向へ向けて傾斜の向かい角(α)を形成して、カッター軸(1)の各刃盤(3)間隔部に介入して回転させることを特徴とする排稈カッター。
【請求項2】
掻込軸(2)の刃盤(4)の回転径(K2)をカッター軸(1)の刃盤(3)の回転径(K1)よりも小径に形成し、この掻込体(5)の回転径(K3)をカッター軸(1)の刃盤(3)の回転径(K1)と略同径に設定したことを特徴とする請求項1に記載の排稈カッター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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