説明

排藁切断装置

【課題】容易に排藁の切断長の切替を行うことができる排藁切断装置を提供する。
【解決手段】所定間隔をあけて複数の大径回転刃22aと小径回転刃22bとを交互に固定した高速回転軸22と、所定間隔をあけて複数の回転刃23aを固定するとともに、前記高速回転軸22に対して近接または離間可能に配置した低速回転軸23と、前記高速回転軸22に対して前記低速回転軸23を近接位置または離間位置に切替固定可能とする切替機構30とを備えた排藁切断装置20において、前記切替機構30は、間欠回転運動を行うゼネバ機構40と、該ゼネバ機構40と低速回転軸23とを連結する連結機構50とを備え、前記低速回転軸23の位置を切替可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排藁切断装置の技術、特に排藁切断装置における排藁切断長を切替えるための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンバイン等の収穫機における排藁切断装置には、排藁の長短を切替える切替機構を有している。
排藁切断装置内は、大径回転刃と小径回転刃を所定間隔あけて配置した高速回転軸と、低速回転刃の刃先が前記大小回転刃の刃先と近傍になるよう配置された低速回転軸とが平行に配置されている。
切替機構は、前記低速回転軸と前記高速回転軸の軸間距離を調整して、排藁を長寸と短寸に切替えている。
例えば、特許文献1のように、排藁切断長の長短の切替を行う場合、切替レバーの回動操作を行い、係止手段によるカッター軸の係止状態を解除する。その解除された状態で、切替レバーを回動し、低速回転軸を移動させ、高速回転軸との軸間距離を変更させるように構成している。そして、排藁の短寸切断作業を行う場合は、低速回転軸と高速回転軸を近づけ、低速回転刃と、大径高速回転刃及び小径高速回転刃とが重なり合う状態としていた。また、排藁の長寸切断作業を行う場合は、低速回転軸と高速回転軸を遠ざけ、低速回転刃と大径高速回転刃のみが重なり合う状態とした排藁切断装置の技術は公知となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−159555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の排藁切断装置においては、排藁の切断長が短寸・長寸の二段階調整であり、切断せずに垂れ流しとする場合には、切替カバーを回動する別の操作が必要となり、また、結束機等の付属装置を機体後部に装着した場合には、付属装置を装着したままの垂れ流し作業への切替えには、付属装置を取り外したり解除したりする操作が必要となり手間が掛かかっていた。
【0005】
つまり、前述したように、排藁切断装置内の排藁の短寸切り、長寸切り、垂れ流しの切替に手間が掛かるという問題点があった。
【0006】
本発明は以上の状況に鑑み、容易に排藁の切断長の切替を行うことができる排藁切断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、所定間隔をあけて複数の大径回転刃と小径回転刃とを交互に固定した高速回転軸と、所定間隔をあけて複数の回転刃を固定するとともに、前記高速回転軸に対して近接または離間可能に配置した低速回転軸と、前記高速回転軸に対して前記低速回転軸を近接位置または離間位置に切替固定可能とする切替機構と、を備えた排藁切断装置において、前記切替機構は、間欠回転運動を行うゼネバ機構と、該ゼネバ機構と低速回転軸とを連結する連結機構と、を備え、前記低速回転軸の位置を切替可能とするものである。
【0009】
請求項2においては、前記連結機構は、低速回転軸を支持する位置決めカムと、該位置決めカムを所定位置で保持するための位置決めピンと、前記位置決めカムと連結して回動するための第一アームと、該第一アームと前記ゼネバ機構とを連結する第二アームと、を備えるものである。
【0010】
請求項3においては、前記低速回転軸は、短寸切断位置と、長寸切断位置と、垂れ流し位置との三段階に切替え可能に構成したものである。
【0011】
請求項4においては、前記ゼネバ機構は、切替作動入力軸と、該入力軸上に固設されたカムと、該カムに当接する円板と、該円板上に所定間隔をあけて突出した割り出しピンと、を備え、前記カムに逆転防止凹部を形成したものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0013】
請求項1においては、ゼネバ機構の間欠回転運動により、低速回転軸の位置の切替えが容易となる。また、ゼネバ機構の回転運動が、電気的に制御し易く、低速回転軸の位置の切替が容易となる。
【0014】
請求項2においては、低速回転軸を確実に切替位置で保持することができる。
【0015】
請求項3においては、排藁を、長寸切り、短寸切り、垂れ流しの三つの状態で放出可能となり、放出後の排藁の使用目的に合わせて、切断またはそのままの長さで排藁を放出することが可能となる。特に、排藁垂れ流しの際、排藁が排藁切断装置内を通過するため、風の影響が少なく、排藁の放出姿勢が安定する。
【0016】
請求項4においては、誤って切替作動入力軸を逆転させても、逆転防止凹部により逆転が阻止され、ゼネバ機構や連結機構を破損させることがない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施例に係るコンバインの全体的な構成を示した側面図。
【図2】排藁切断装置の構成を示した平面図。
【図3】排藁切断装置の駆動部の構成を示した側面図。
【図4】ゼネバ機構の構成及び間欠回転運動を段階的に示した側面図。
【図5】(a)排藁短寸切断位置におけるカムと位置決めピンの関係を示した側面図、(b)排藁長寸切断位置におけるカムと位置決めピンの関係を示した側面図、(c)排藁無切断位置におけるカムと位置決めピンの関係を示した側面図。
【図6】低速回転軸を短寸切断位置とした場合における排藁切断装置の構成を示した側面図。
【図7】低速回転軸を長寸切断位置とした場合における排藁切断装置の構成を示した側面図。
【図8】低速回転軸を垂れ流し位置とした場合における排藁切断装置の構成を示した側面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の実施の一形態である排藁切断装置20を備えるコンバイン1の全体の概略構成について説明する。説明上、図中の矢印Aの方向を「前方」と定義し、この前方方向に向かって左右及び後方を決定する。
【0019】
図1に示すように、コンバイン1は圃場を走行しつつ、圃場から稲や麦等の穀稈を刈取り、その穀稈から穀粒を脱穀し、収穫作業を行う。本実施形態のコンバイン1は、刈取られた穀稈のうち、穀粒の付いた穂先部のみを脱穀する自脱型のコンバインである。
コンバイン1は、主として刈取り装置2、脱穀装置3、選別装置4、運転部9、排藁処理装置5等を備えている。
【0020】
刈取り装置2は、コンバイン1の前部に配置され、引起し装置、下部搬送装置、穂先搬送装置、刈刃等を備え、圃場から穀稈を刈取り、その穀稈を脱穀装置3へと渡す。
【0021】
脱穀装置3は、刈取り装置2の後方に配置され、主としてフィードチェーン3a、扱胴3b等を備える。脱穀装置3は、フィードチェーン3aにより、刈取り装置2から受け取った穀稈を横に倒した状態で前方から後方へと搬送しながら、扱胴3bの回転により、穀稈から穀粒を分離(脱穀)する。
【0022】
選別装置4は、脱穀装置3の下方に配置され、脱穀装置3によって脱穀された穀粒に混じった藁屑や塵挨等を、風力選別や揺動選別により分離する。
【0023】
選別装置4により藁屑等と分離された精粒は、揚穀筒6を経て、脱穀装置3の右方に設けられたグレンタンク7に搬入され、貯溜される。グレンタンク7には排出オーガ8が連通接続されている。排出オーガ8を作動することにより、グレンタンク7に貯溜された精粒を、排出オーガ8を経てグレンタンク7の外部に搬出することが可能である。
【0024】
運転部9は前記グレンタンク7の前方に配置され、オペレータがコンバイン1の運転及び各種装置の操作を行う。
【0025】
排藁処理装置5は、脱穀装置3の後方に配置され、フィードチェーン3aから受け取った脱穀済みの穀稈(以下、単に「排藁」と記す)を排藁チェーン5aにより後方へ搬送し、所定の処理を施す。
【0026】
次に、図1から図3を用いて、排藁処理装置5に備えた排藁切断装置20の構成について説明する。
【0027】
排藁切断装置20は、排藁チェーン5aにより搬送されてきた排藁を、所定の長さに切断するものである。排藁切断装置20には、主に切断ケース21、高速回転軸22、大径回転刃22a、小径回転刃22b、低速回転軸23、回転刃23a、切替機構30等が備えられる。
【0028】
図1に示すように、切断ケース21は排藁チェーン5aの下後方に配置される。切断ケース21は箱状に構成されており、上方及び下方が開放され、上開口部は切替カバーにより閉じることを可能としている。左右両側には側板21a・21a(図2参照但し右側の側板21a省略)を備えている。図2に示すように、切断ケース21の内側では、高速回転軸22と低速回転軸23とが、左右両側の側板21a・21aの間で平行に左右方向に横架され、低速回転軸23が高速回転軸22の前上方に位置するように配置される。
また、図2及び図3に示すように、左右両側の側板21a(右側図示省略)に、案内孔21bが後述する支持軸24を中心とした円弧状長孔として開口されている。低速回転軸23は、その両端部を前記案内孔21bに挿通し、案内孔21bによって支持され、前後方向にスライド自在となっている。よって、高速回転軸22と低速回転軸23の軸間距離は、低速回転軸23の移動範囲(前記案内孔21bの範囲)内で変更可能である。
【0029】
また、図2に示すように、高速回転軸22には、円盤状の複数の大径回転刃22a・22a・・・と小径回転刃22b・22b・・・とが所定間隔をあけて交互に配置される。その大径回転刃22aと小径回転刃22bの刃先が重なり合うように、円盤状の複数の回転刃23a・23a・・・が、低速回転軸23に配置されている。
【0030】
図2または図3に示すように、高速回転軸22は左右両側の側板21a・21aに回転自在に支持されている。
高速回転軸22の端部は、側板21aから外側に突出される。この高速回転軸22の突出端部には、入力プーリ22dと駆動スプロケット22cとが、軸方向に並設し固設している。
図2に示すように、低速回転軸23は、側板21aの内側で、後述のアーム機構60に回転自在に支持されている。また、低速回転軸23の端部は、側板21a・21aより外方に突出される。図3に示すように、この低速回転軸23の突出端部には、大径ギア23bが固設されている。
【0031】
図2または図3に示すように、支持軸24は、前記低速回転軸23の下方に配設されており、側板21aに回転自在に支持され、低速回転軸23に対して、平行に配置される。支持軸24は、側板21aに回転自在に支持され、外側方に突出して切断ケース21内に収納されている。支持軸24の突出部には、従動スプロケット24aと小径ギア24bとが、それぞれ固設されている。
【0032】
高速回転軸22上の駆動スプロケット22cと、支持軸24上の従動スプロケット24aと、それらの下方にある図示しないスプロケットとの間にチェーン22fが巻回されている。また、低速回転軸23上の大径ギア23bと、支持軸24上の小径ギア24bとが噛合している。そして、図示しないエンジンから伝達される動力が、高速回転軸22上の入力プーリ22dに駆動ベルト22e等を介して伝達可能とされる。
【0033】
駆動ベルト22eを介して、エンジンからの動力(回転力)が、入力プーリ22dに伝達された場合、高速回転軸22が図3における反時計回りに回転する。この回転によって駆動スプロケット22cも同一方向に回転する。この駆動スプロケット22cから、従動スプロケット24aにチェーン22fを介して、動力が伝達されると、支持軸24が図3における反時計回りに回転され、小径ギア24bが回転し、チェーン22fを介して図示しない下方に配置した拡散コンベアを回転駆動する。
【0034】
そして、小径ギア24bから大径ギア23bに動力が伝達され、低速回転軸23が図3における時計回りに回転する。このような高速回転軸22と低速回転軸23の回転により、図2に示す、高速回転軸22上の大径回転刃22a及び小径回転刃22bと、低速回転軸23上の回転刃23aとがそれぞれ反対方向に回転することとなる。
なお、低速回転軸23の回転速度は、ギア比等の構成により、高速回転軸22の回転速度よりも低速となるように設定される。
【0035】
次に、図2及び図4から図8を用いて、切替機構30の構成について説明する。
図6から図8に示すように、切替機構30は、低速回転軸23の前後方向の位置を調節することによって、高速回転軸22と低速回転軸23の軸間距離を調節し、排藁切断における排藁長の調節を行う機構である。また、本実施例の切替機構30は、低速回転軸23を、図6に示す短寸切断位置、図7に示す長寸切断位置、図8に示す垂れ流し位置に、切替固定可能とするものである。
なお、左右両側の切替機構30・30は、略左右対称に構成されるため、右側の切替機構30についての説明は省略する。
【0036】
切替機構30は、主にアーム機構60、ゼネバ機構40、連結機構50等を備えている。
図2及び図6から図8に示すように、アーム機構60は、前記低速回転軸23を所定位置に保持する機構であって、切断ケース21の側板21a内側に配置され、上アーム26、下アーム25、支持軸24等を備えている。
【0037】
図6から図8に示すように、アーム機構60を支える支持軸24は、低速回転軸23上の回転刃23aより下方で、高速回転軸22よりも前方に位置し、側板21aによって回動自在に支持されている。
下アーム25は、その下部を前記支持軸24によって回動自在に支持され、その上部には、低速回転軸23を回動自在に支持している。
図2、図6に示すように、下アーム25の上部に上アーム26の下部が固設され、該上アーム26は、前記下アーム25よりも機体内側に配設されている。図6から図8に示すように、上アーム26の下部と下アーム25の上部には、前記低速回転軸23が回動自在に支持されている。また、上アーム26の上部には、後述する位置決めカム51を回転自在に支持するアーム軸27の一端が固設されている。該アーム軸27は側板21aに開口したカム案内孔21cを貫通して外側方に突出している。該カム案内孔21cは前記支持軸24を中心とした円弧状の長孔に形成されている。
【0038】
ゼネバ機構40は、割り出し装置であって、切替作動入力軸41の回転を間欠回転運動に変換するものであり、その間欠回転運動により、後述する連結機構50及びアーム機構60を介して、低速回転軸23の位置を略前後方向に移動させる。なお、連結機構50及びアーム機構60を介して、低速回転軸23の位置を移動させることができれば、ゼネバ機構40でなくともカム機構等でもよく、また、ゼネバ機構40のみでアーム機構60を作動させる構成とすることも可能であり、限定するものではない。
【0039】
図2、図4、図6から図8に示すように、前記ゼネバ機構40は、側板21aの外側に配置され、主に、切替作動入力軸41、円板軸42、カム43、円板44、割り出しピン45a・45b等を備えている。
【0040】
前記切替作動入力軸41及び円板軸42は、側板21aから外側へと突出するように、低速回転軸23の上後方に支持されている。
本実施例では、切替作動入力軸41を上方に、円板軸42を下方に配置しているが限定するものではない。
カム43は半円板状の半円カム43aと異形カム43bからなり、前記切替作動入力軸41上に固定されている。詳しくは、切替作動入力軸41上において、側板21a側に半円カム43aを配置し、切替作動入力軸41上の軸方向に所定間隔あけて、異形カム43bを配置している。また、異形カム43bは、図4に示すように、切替作動入力軸41に固設される円板部43dの外周より略「く」字状に形成した突部43eを有し、該突部43eの中途部には更に突起43f及び逆転防止凹部43cが形成されている。
【0041】
以下、ゼネバ機構40における説明上、切断ケース21側と対向している面を表面、側板21a側と対向している面を裏面とする。
【0042】
前記カム43の下方に配置された円板44は、その中心部が前記円板軸42上に固定され、軸方向において、前記半円カム43aと異形カム43bの間に配置されている。
該円板44の表面には、同心円上に所定角度(本実施例では120度)間隔をあけて、複数の円柱状の割り出しピン45a(71a・71b・71c)の一端が、固設されている。また、円板44の裏面には、同心円上に所定角度(本実施例では120度)間隔をあけて、且つ、表面の各割り出しピン45aの位置の略中間に、表面と同数同形の割り出しピン45b(72a・72b・72c)の一端が、固設されている。
つまり、割り出しピン45a・45bが、同心円上に所定間隔をあけて、表裏面に交互に突出している。また、表面の割り出しピン45aの一箇所には、後述する第二アーム54の一端が回動自在に連結されている。
【0043】
また、前述した、切替作動入力軸41と円板44は常に摺動もしくは当接している。
異形カム43bの外縁部と割り出しピン45aの外周部、半円カム43aの外縁部と割り出しピン45bの外周部は、それぞれの回転の向きに応じて、摺動、当接、離間する関係にある。なお、ゼネバ機構40の構成は上記構造に限定するものではなく、周知のゼネバ機構を採用することも可能である。
【0044】
また、ゼネバ機構40の動力は、切替作動入力軸41に接続する。本実施例では、図示しないモータにより切替作動入力軸41が回転駆動され、該モータは制御手段と接続され、該制御手段には運転部9に設けた図示しない切替スイッチと接続されている。
また、切替作動入力軸41の回転駆動手段をモータ等のアクチュエーターとしたが、エンジンの動力、または、手動による回転でもよく限定するものではない。
【0045】
ここで、カム43が一回転する過程を説明する。
図4の(a)に示す初期位置において、円板44の表面の割り出しピン71aと、異形カム43bの円板部43dとが当接している。また、円板44の裏面にある上部二箇所の割り出しピン72a・72bと、半円カム43aの円弧部81とが当接している。
【0046】
前記状態より切替スイッチを操作するとモータを駆動して切替作動入力軸41を一回転させる。つまり、切替スイッチの操作によりモータが作動されると、切替作動入力軸41が時計回りに回転し、異形カム43bの突部43eが円板部43dと摺接していた割り出しピン71aと当接して押し、円板44を所定量反時計回りに回転させる。この突部43eが割り出しピン71aに当接する直前には、半円カム43aの円弧部81は割り出しピン72bから離れる。そして、図4(b)に示すように、突起43fにより割り出しピン71aを押して、円板軸42を回転させる。
【0047】
図4の(b)の状態よりさらに、切替作動入力軸41が時計回りに回転して、突部43eの突起43fが、割り出しピン71aと摺動し、該突起43fによって円板44の回転を補助するように構成している。さらに、突部43eが割り出しピン71aを押して円板軸42が回転し、該突部43eの外周部が、割り出しピン71aから離れるとき、図4の(c)に示すように、半円カム43aの弦82が、割り出しピン72bと当接して押す。よって、円板44が反時計回りに回転し続けることになる。
【0048】
そして、半円カム43aの弦82の端部が、割り出しピン72bに位置して、押し動作が終了すると、円板44の回転は停止し、さらに、切替作動入力軸41は回転して、円弧部81が割り出しピン72b・72cと摺接した状態となり、図4の(a)初期位置から図4の(d)に示す、カム43が一回転した状態で停止する。
【0049】
つまり、カム43が時計回りに一回転することで、円板44は反時計回りに三分の一回転することとなる。また、切替作動入力軸41は円板44の外周と常に当接または摺動する関係にあり、初期位置においては、円弧部81が割り出しピン45b・45bと摺接しているため、円板44は回転することができず、固定された状態となる。
【0050】
また、切替作動入力軸41の回転を手動等によって行う場合、切替作動入力軸41を誤って反時計回りに(図4参照)回転してしまう場合が想定される。その切替作動入力軸41の逆転防止の為、図4に示すように、異形カム43bには、逆転防止凹部43cが設けられている。
つまり、図4の(a)の状態から、切替作動入力軸41を反時計回りに回転させると、逆転防止凹部43cに割り出しピン71aが嵌まり込む。さらに回転すると、割り出しピン71cが逆転防止凹部43cと反対側の面に当たり、切替作動入力軸41はそれ以上反時計回りに回転できず、切替作動入力軸41を時計回りに回転させることしかできない構成となっている。
【0051】
次に連結機構50について図2、図5から図8を用いて説明する。
連結機構50は、前記アーム機構60と前記ゼネバ機構40とを繋ぐ機構であって、側板21aの外側で、ゼネバ機構40の前方に配置される。連結機構50は、主に、アーム軸27、位置決めカム51、位置決めピン52a・52b・52c、第一アーム53、第二アーム54等を備えている。
【0052】
図2及び図6に示すように、前記アーム軸27は、左右両側の側板21a・21aに開口されたカム案内孔21cを挿通し、水平に横架され、切断ケース21の左右両側の側板21a・21aから外側に突出される。
【0053】
位置決めカム51は、アーム機構60を介して低速回転軸23の位置決めを行うカムである。図5の(b)に示すように、位置決めカム51は、下方に広がった略扇状に形成され、その略円弧状の外周下部51g及び前後両側の外周部51h・51fは、なめらかな曲線で形成されている。該位置決めカム51の略中央には、前記アーム軸27の一端が固設されている。
また、図2または図5に示すように、位置決めカム51の外周下部51gの内側には、連通孔51dが開口されており、該連通孔51dには三つの係止孔51a・51b・51cが形成されている。
一方、位置決めピン52a・52b・52cが、側板21aの外側で所定間隔をあけてカム案内孔21c下部位置に三箇所突設されている。この側面視中央の位置決めピン52bが前記連通孔51dに挿入されて、係止孔51a・51b・51cのいずれかに係合するように構成され、両側の位置決めピン52a・52cが位置決めカム51の外周に当接または摺接するように構成されている。
【0054】
また、図5の(b)に示すように、前記位置決めカム51の上部(外周下部51gと反対側の中央部)には、機体外側方向に突出する係合ピン51eが配設され、図6に示す第一アーム53と係合する構成としている。
つまり、第一アーム53の一端には、長手方向に長い長孔53aが開口され、該長孔53aに前記係合ピン51eが貫入されている。該第一アーム53の他端は、側板21aより外側へと突出したアーム軸53bによって、回動自在に支持されている。
該第一アーム53の上下中途部には、軸53cが固設され、該軸53cに第二アーム54の一端が回動自在に支持されている。該第二アーム54の他端は、前記ゼネバ機構40の割り出しピン45aの一箇所(図4では割り出しピン71c)のみと回動自在に連結されている。
【0055】
前記構成により、以下に切替機構30の動きを説明する。
図8の垂れ流し位置の状態より、切替スイッチを操作してモータを駆動して、ゼネバ機構40の切替作動入力軸41が時計回りに一回転すると、円板44が回転されて割り出しピン45aに連結された第二アーム54が後方へ押されて、図6(短寸切断位置)に示すように、割り出しピン45aが、右下に位置する。
この第二アーム54の後方移動に伴い、該第二アーム54に連結された第一アーム53は、固定支点であるアーム軸53bを中心に後方に回動する。この回動によって、第一アーム53の上部の長孔53aに貫通している係合ピン51eが、後方に移動する。
この係合ピン51eの後方への移動により、図6または図5(a)に示すように、位置決めカム51は、アーム軸27を中心に回転するとともに、後方へ引っ張られて移動する。このとき、アーム軸27は、カム案内孔21cに沿って最後端位置まで移動される。位置決めカム51は時計回りに回転し、後方の外周部51fは、位置決めピン52cと当接した位置で回転を停止し、また、係止孔51c内に位置決めピン52bが位置する。なお、この位置決めカム51の回転時に、係合ピン51eは、長孔53a内を上下方向に摺動する。
そして、アーム軸27と連結された上アーム26は、後方へと回動されて移動し、上アーム26を貫通している低速回転軸23は、案内孔21bの最後端へと移動する。また、下アーム25は、低速回転軸23の動きに伴い、支持軸24を回動軸として、後方へと回動する。
【0056】
従って、低速回転軸23と高速回転軸22との軸間距離は最短となり、回転刃23aと、大径回転刃22a及び小径回転刃22bとがそれぞれ排藁切断に関与する。よって、切断ケース21内に投入された排藁は、図2のL1の長さ、つまり短寸に切断され、切断ケース21の下部の開口部から圃場へ向かって排出される。
この状態において、切断作業時に低速回転軸23と高速回転軸22との間の距離を広げるような力がかかっても、位置決めカム51は外周部51fが位置決めピン52cと当接し、係止孔51cが位置決めピン52bと当接しているために、位置決めカム51を支持する下アーム25及び上アーム26は回動されず、低速回転軸23を短寸切断位置に維持することができるのである。
【0057】
次に、図6の短寸切断位置の状態より図7の長寸切断位置に切替える場合には、切替スイッチを操作してモータを駆動して、ゼネバ機構40の切替作動入力軸41を時計回りに一回転させる。すると、図7に示すように、第二アーム54と連結した割り出しピン45aが、中央上部に移動する。
この移動によって、割り出しピン45aと連結された第二アーム54が、前方へと移動する。該第二アーム54の前方移動に伴い、該第二アーム54に連結された第一アーム53は、固定支点であるアーム軸53bを中心に前方に回動する。この回動によって、第一アーム53の長孔53aに貫通している係合ピン51eが、第一アーム53に押され前方に移動する。
この係合ピン51eの前方への移動により、図7または図5(b)に示すように、位置決めカム51はアーム軸27を中心に回転するとともに前方へ押されて移動する。このとき、位置決めカム51の外周下部51gの前後両側が位置決めピン52c・52aと当接する。同時に、位置決めピン52bの外周部を、係止孔51cが摺動し、位置決めピン52bと係止孔51cとの係止関係が解除され、係止孔51bが位置決めピン52b付近に位置する。
そして、前記位置決めカム51の前方への動きに伴い、位置決めカム51と固設されたアーム軸27は、カム案内孔21cの前後中途部へと移動する。
そして、アーム軸27と連結された上アーム26は、前方へと移動し、上アーム26を貫通している低速回転軸23は、案内孔21bの前後中途部へと移動する。また、下アーム25は低速回転軸23の動きに伴い、支持軸24を回動軸として、前方へと回動する。
【0058】
従って、低速回転軸23と高速回転軸22との軸間距離は、前記排藁短寸よりも長くなり、回転刃23aと、大径回転刃22aのみが排藁切断に関与する。よって、切断ケース21内に投入された排藁は、図2のL2の長さ、つまり長寸に切断され、切断ケース21の下部の開口部から圃場へ向かって排出される。
この状態において、切断作業時に低速回転軸23と高速回転軸22との間の距離を広げるような力がかかっても、位置決めカム51は外周下部51gの前後両側が位置決めピン52c・52aと当接しているために、位置決めカム51を支持する下アーム25及び上アーム26は回動されず、低速回転軸23を長寸切断位置に維持することができるのである。
【0059】
次に、図7の長寸切断位置の状態より図8の垂れ流し位置に切替える場合には、切替スイッチを操作してモータを駆動して、ゼネバ機構40の切替作動入力軸41が、時計回りに更に一回転すると、図8に示すように、第二アーム54と連結された割り出しピン45aが、下前方へと移動する。
よって、割り出しピン45aと連結された第二アーム54が下前方へと移動する。第二アーム54の下前方の移動に伴い、第一アーム53はアーム軸53bを中心に前方に回動する。
そして、第一アーム53の回動により係合ピン51eが前方へ移動し、図8または図5(c)に示すように、係合ピン51eを介して位置決めカム51が前方への移動とともに、位置決めカム51はアーム軸27を中心に回転する。その際、位置決めカム51の外周下部51gが、位置決めピン52cの外周部を離れて、位置決めピン52aに外周部51hと当接する。同時に、位置決めピン52bの外周部を、係止孔51bから係止孔51aに摺動する。
よって、位置決めカム51と固設されたアーム軸27は、カム案内孔21cの最前端へと移動する。そして、アーム軸27と連結した上アーム26は前方へと回動し、上アーム26を貫通している低速回転軸23は、案内孔21bの最前端へと移動する。また、下アーム25は低速回転軸23の動きに伴い、支持軸24を回動軸として、前方へと回動する。
【0060】
従って、低速回転軸23と高速回転軸22との軸間距離が最長となり、回転刃23aと、大径回転刃22a及び小径回転刃22bとが、それぞれ排藁切断に関与することがない。よって、切断ケース21に排藁が投入されても切断されることなく、切断ケース21の下部の開口部から圃場へ向かって排出される。よって、切断ケース21内を通過して排出される排藁は、風の影響が少なく、排藁の放出姿勢が安定する。
この状態において、作業時に低速回転軸23と高速回転軸22との間の距離を広げるような力がかかっても、位置決めカム51は外周部51hが位置決めピン52aと当接し、位置決めピン52bが係止孔51aに位置しているために、位置決めカム51を支持する下アーム25及び上アーム26は回動されず、低速回転軸23を垂れ流し位置に維持することができるのである。
【0061】
以上のように、所定間隔をあけて複数の大径回転刃22aと小径回転刃22bとを交互に固定した高速回転軸22と、所定間隔をあけて複数の回転刃23aを固定するとともに、前記高速回転軸22に対して近接または離間可能に配置した低速回転軸23と、前記高速回転軸22に対して前記低速回転軸23を近接位置または離間位置に切替固定可能とする切替機構30と、を備えた排藁切断装置20において、前記切替機構30は、間欠回転運動を行うゼネバ機構40と、該ゼネバ機構40と低速回転軸23とを連結する連結機構50とを備え、前記低速回転軸23の位置を切替可能となるよう構成した。
このように構成することで、ゼネバ機構40の間欠回転運動により、低速回転軸23の位置の切替えが容易となる。また、ゼネバ機構40の回転運動が、電気的に制御し易く、低速回転軸23の位置の切替が容易となる。
【0062】
前記連結機構50は、低速回転軸23を支持する位置決めカム51と、該位置決めカム51を所定位置で保持するための位置決めピン52a・52b・52cと、前記位置決めカム51と連結して回動するための第一アーム53と、該第一アーム53と前記ゼネバ機構40とを連結する第二アーム54とを備えた。
このように構成することにより、低速回転軸23を確実に切替位置で保持することができる。
【0063】
前記低速回転軸23は、短寸切断位置と、長寸切断位置と、垂れ流し位置との三段階に切替え可能に構成した。
このように構成することにより、排藁を、長寸切り、短寸切り、垂れ流しの三つの状態で放出可能となり、放出後の排藁の使用目的に合わせて、切断またはそのままの長さで排藁を放出することが可能となる。特に、排藁垂れ流しの際、排藁が排藁切断装置20内を通過するため、風の影響が少なく、排藁の放出姿勢が安定する。
【0064】
前記ゼネバ機構40は、切替作動入力軸41と、該入力軸上に固設されたカム43と、該カム43に当接する円板44と、該円板44上に所定間隔をあけて突出した割り出しピン45a・45bとを備え、前記カム43に逆転防止凹部43cを形成した。
このように構成することにより、誤って切替作動入力軸41を逆転させても、逆転防止凹部43cにより逆転が阻止され、ゼネバ機構40や連結機構50を破損させることがない。
【符号の説明】
【0065】
20 排藁切断装置
22 高速回転軸
22a 大径回転刃
22b 小径回転刃
23 低速回転軸
23a 回転刃
30 切替機構
40 ゼネバ機構
50 連結機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定間隔をあけて複数の大径回転刃と小径回転刃とを交互に固定した高速回転軸と、
所定間隔をあけて複数の回転刃を固定するとともに、前記高速回転軸に対して近接または離間可能に配置した低速回転軸と、
前記高速回転軸に対して前記低速回転軸を近接位置または離間位置に切替固定可能とする切替機構と、を備えた排藁切断装置において、
前記切替機構は、
間欠回転運動を行うゼネバ機構と、
該ゼネバ機構と低速回転軸とを連結する連結機構と、を備え、
前記低速回転軸の位置を切替可能とすることを特徴とする排藁切断装置。
【請求項2】
前記連結機構は、
低速回転軸を支持する位置決めカムと、
該位置決めカムを所定位置で保持するための位置決めピンと、
前記位置決めカムと連結して回動するための第一アームと、
該第一アームと前記ゼネバ機構とを連結する第二アームと、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の排藁切断装置。
【請求項3】
前記低速回転軸は、
短寸切断位置と、長寸切断位置と、垂れ流し位置との三段階に切替え可能に構成した
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の排藁切断装置。
【請求項4】
前記ゼネバ機構は、
切替作動入力軸と、
該入力軸上に固設されたカムと、
該カムに当接する円板と、
該円板上に所定間隔をあけて突出した割り出しピンと、を備え、
前記カムに逆転防止凹部を形成したことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の排藁切断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−162007(P2010−162007A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−9235(P2009−9235)
【出願日】平成21年1月19日(2009.1.19)
【出願人】(391025914)八鹿鉄工株式会社 (131)
【Fターム(参考)】