説明

掘削土の撹拌混合装置

【課題】 硬質地盤への掘進抵抗を低く抑えながら、地盤における掘削土と填充材との撹拌混合を良好に実施可能にすると共に、地表近くでも良好に地盤改良を可能にする掘削土の撹拌混合装置を提供する。
【解決手段】 撹拌軸の周囲に、掘削翼の回転径に略等しい回転径の共回り防止翼がコ状に配設され、この共回り防止翼の垂直片の内側には掘削軸の近傍まで延出する翼部材が固設され、外側には、掘削時に削孔壁面に食い込む抵抗フランジが垂直片に沿って摺動自在に突設され、共回り防止翼の垂直片の内側に位置して撹拌軸に固設された撹拌翼が設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基礎工事などにおいて、掘削土(土塊)と填充材を機械的に混合して固結させるなどして、地盤を例えば円柱状に改良する掘削土の撹拌混合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤改良工法において、改良対象地盤の下部に支持層(硬質地盤)がある場合は、支持層まで改良地盤(例えば、コラム、杭など)を形成する場合が多い。
支持層が傾斜している場合、あるいは高支持力を期待する場合には、改良地盤の先端を支持層に確実に根入れする必要がある。根入れとは、改良地盤の底面の全断面を支持層に貫入させることである。
ところで、支持層が傾斜している場合は、根入れをしないと改良地盤が支持層の傾斜に従い滑動する等の障害の恐れがあるし、高支持力を期待する場合は、根入れをしないと支持力不足による沈下や山留壁においては横方向の支持力不足による大変形等の障害の恐れがある。
一般に、地盤を円柱状に改良する地盤改良機は、図8に示すように、掘削翼2、撹拌翼3を設けた掘削軸1を所定の掘進機構により回転掘進させ、掘削時または引き抜き時に掘削軸1内に設けられた流体通路より、低圧でスラリー化した固化材を充填しながら強制撹拌し掘削土(土塊)と固結させて、地盤改良を行っている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、この掘削土の撹拌混合装置にあっては、粘性土、特に固いまたは粘着力の大きい粘性土やピート層では、地盤に対し掘削土(土塊)が撹拌翼と共回りして掘削土(土塊)と填充材を効率よく撹拌混合することができないという不都合があった。
【0004】
これに対して、掘削軸にボス等を介して掘削径側に突出するような抵抗板を回動自在に設け、この抵抗板の内方に共回り防止翼を設けた掘削土の撹拌混合装置が提案されている(例えば、前記特許文献1参照)。
【0005】
ところが、この掘削土の撹拌混合装置にあっては、抵抗板が掘削軸の軸方向に長大であり、しかも掘削径側に突出しているため、特に硬質地盤に対する根入れにおいて掘進抵抗が大きくなってしまう。
【0006】
一方、抵抗板を掘削径、つまり掘削翼の径に対し僅か大きめに突出させるとともに、その抵抗板の外側に短めの各一の抵抗フランジを突設したものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。これによれば、硬質地盤に対する根入れにおいて掘進抵抗を軽減でき、抵抗板は掘削土(土塊)から大きな掘削抵抗を受けることがなく、抵抗フランジがその掘削抵抗を僅か受けるのみである。
【0007】
しかし、この掘削土の撹拌混合装置にあっては、掘削軸の地盤からの引き抜き時に抵抗板とともに前記抵抗フランジが地盤内から地上に出ると、この抵抗フランジにはこれの回転を規制する地盤が存在しないため、抵抗板は自由回転可能になり、共回り防止機構が働かなくなってしまう。従って、地盤の表面近くでは、掘削土(土塊)と填充材との良好な撹拌混合が行われなくなってしまう。
【0008】
また、前記抵抗板の上下方向の複数箇所に、それぞれ短くて等しい突出量の抵抗フランジを設けたものが提案されている(例えば、特許文献3参照)。これによれば、引き抜き時に抵抗板の上部とともに、前記上部の抵抗フランジが地盤内から地上に出ても、中位部や下部に位置する抵抗フランジが依然として地盤内にあるため、この共回り防止翼は自由回転することはない。つまり、共回り防止機構が働いて、地盤の表面近くでも掘削土(土塊)と填充材との撹拌混合が十分に行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭60−78013号公報
【特許文献2】特開2006−316515号公報
【特許文献3】特開2008−57322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、かかる従来の掘削土の撹拌混合装置にあっても、上部の抵抗フランジが地盤内から地上に出ても共回り防止機能を発揮させるためには、前述のように中位部や下部に抵抗フランジを別々に設けなければならず、共回り防止翼に対する抵抗フランジの取り付け構造および作業が煩雑になる。また、これらの複数段に亘る抵抗フランジは特に硬質地盤への掘削抵抗を大きくしてしまい、施工時間が長引くという不都合があった。
【0011】
本発明はかかる従来の問題点に着目してなされたものであり、一段の抵抗フランジを用いても、これを昇降させることで、抵抗フランジを多数設けた従来装置に比べ組付け作業を効率化できるとともに、掘進開始から引き上げ完了までの工程において掘削土(土塊)と填充材との撹拌、混合を十分に実施でき、また硬質地盤への掘進抵抗を低く抑え、かつ硬質地盤(支持層)の掘削部において、掘削土と填充材との良好な撹拌混合を実施することができる掘削土の撹拌混合装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述した目的を達成するために、本発明にかかる掘削土の撹拌混合装置は、中空の掘削軸の先端側に掘削翼が、それより上方に撹拌翼が設けられ、その中空の撹拌軸内が流体通路となり、撹拌軸の先端近傍には流体通路に連通して吐出口が設けられた掘削軸を、回転しつつ地盤中に掘進および地盤中より引き上げし、この掘削時及び/または引き上げ時に流体通路より填充材を供給し吐出口より吐出し、地盤中に掘削土と填充材を撹拌混合する掘削土の撹拌混合装置であって、
前記掘削軸には、掘削軸に回転自在に設けられた少なくとも2本の水平片と、この水平片の先端間を連結する垂直片とで、掘削翼の回転径に略等しい回転径のコ状回転体が配設され、この垂直片の内側には、掘削軸の近傍まで延出する翼部材が固設され、外側には、掘削時に削孔壁面に食い込む抵抗フランジが垂直片に沿って摺動自在に突設されている共回り防止翼が設けられ、
掘削軸に固設された撹拌翼が共回り防止翼の垂直片の内側に位置して配設されていることを特徴とする。
【0013】
上記構成により、掘削軸を掘進装置により回転掘進させ、掘削軸内の流体通路から送出される低圧のスラリー化した固化材(填充材)を掘削土に注入させながら掘削翼および撹拌翼を回転掘進させて、掘削土と強制撹拌させる。
このとき、掘削翼で掘削された掘削土(土塊)は、撹拌翼で撹拌すると共回りしようとするが、抵抗フランジが削孔壁面より地盤中に食い込んでいるので共回り防止翼は回転できず回転は停止されている。従って、回転する撹拌翼と共に共回りしようとする掘削土(土塊)は、共回り防止翼の翼部材で共回りが阻止され、撹拌翼との間で確実にせん断(破砕、粉砕)されて撹拌混合される。これにより良好な地盤改良が行える。
【0014】
そして、抵抗フランジは共回り防止翼の垂直片に沿って摺動自在であるので、掘削時は地盤(掘削土)の圧力を受けて回転することなく垂直片に沿って上方位置に摺動しているので、根入れにおいて硬質地盤に掘進しても抵抗フランジが硬質地盤に到達する前に掘進を終了でき、掘進抵抗を低く抑えることができ、かつ硬質地盤の掘削部において掘削土と填充材との良好な撹拌混合を実施することができる。
一方、掘削軸の引き上げ時には、抵抗フランジは削孔壁面より地盤中に食い込んでいるため抵抗フランジが回転することはなく、抵抗フランジに作用するS方向の圧力(抵抗)及びスプリングの反発力も加わって所定の下方位置に移動して停止する。このため、共回り防止翼の垂直片の上半部以上が地盤内から地上に出た場合にも、その抵抗フランジは垂直片の下部にあって地盤内に位置する。従って、共回り防止機能が働くことになる。
【0015】
また、本発明にかかる掘削土の撹拌混合装置の前記共回り防止翼の翼部材は、一端が垂直片に固設され、他端が掘削軸に回転自在に取り付けられていることを特徴とする。
この構成により翼部材は、一端が垂直片に固設され、他端が掘削軸に連結されているので、強度が向上する。もちろん撹拌翼との間では共回り防止機能を発揮する。
【0016】
また、本発明にかかる掘削土の撹拌混合装置の前記抵抗フランジは、共回り防止翼の垂直片に内蔵されたばね(スプリング)により軸先端方向に向かって付勢されていることを特徴とする。
【0017】
この構成により、共回り防止翼が上昇して抵抗フランジが地上に出るまでは、たとえ抵抗フランジを下方に押し下げる外力が小さくなっても、この抵抗フランジにこれを常時下方へ付勢するばね(スプリング)の反発力が作用しているので、抵抗フランジは下方位置を保持し、共回り防止機能が依然として機能している。また、かかる掘削中および引き上げ中における共回り防止を、一段の抵抗フランジを上下方向に昇降させるのみで、簡単に実現することができる。かくして掘削土(土塊)の強制撹拌、混合が効率的に実施可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、昇降可能な抵抗板として一段の抵抗フランジを用いても、これを昇降させることで、抵抗フランジを多数設けた従来装置に比べ組付け作業を効率化できるとともに、掘進開始から引き上げ完了までの工程において掘削土(土塊)と填充材との撹拌、混合を十分に実施でき、また硬質地盤への根入れにおいても掘進抵抗を低く抑えることができ、かつ硬質地盤の掘削部において掘削土と填充材の良好な撹拌混合を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態による掘削土の撹拌混合装置を概念的に示す正面図である。
【図2】図1における掘削土の撹拌混合装置を示す要部の正面図である。
【図3】図2における掘削土の撹拌混合装置のA−A線断面図である。
【図4】図2における掘削土の撹拌混合装置のB−B線断面図である。
【図5】図1における掘削土の撹拌混合装置の要部を示す一部破断の正面図である。
【図6】本発明の掘削土の撹拌混合装置による掘削軸の掘進時および引き上げ時に亘る抵抗フランジの挙動を示す説明図(a)(b)(c)である。
【図7】本発明の他の実施の形態を示す掘削土の撹拌混合装置の正面図である。
【図8】従来の掘削土の撹拌混合装置を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態による掘削土の撹拌混合装置の正面図、図2は、図1の要部を拡大した正面図、図3は、図2におけるA−A線断面図、図4は、図2のB−B線断面図、図5は、図1における掘削土の撹拌混合装置の要部に示す一部破断の正面図、図6は、本発明の掘削土の撹拌混合装置による掘削軸の掘削時および引き上げ時に亘る抵抗フランジの挙動を工程順(a)(b)(c)に示す説明図である。
【0021】
この実施形態の掘削土の撹拌混合装置は、所定の掘進装置によって回転しながら地盤内に掘進する掘削軸11と、この掘削軸11の先端部に取り付けられた掘削翼12と、この掘削翼12の上方において、掘削軸11の上下3段の所定高さ位置に取り付けられた撹拌翼13と、コ状の共回り防止翼14とを備えている。
この共回り防止翼14は、掘削軸11の上下に所定の間隔をおいてボス18が回転自在に設けられ、このボス18に固着されて水平片15が掘削軸11と直交する水平方向に延出し、この上下の水平片15、15の先端が垂直片16で連結されて掘削翼12の回転径と略等しい回転径のコ状回転体14aが設けられ、この垂直片16の内側には翼部材17が掘削軸11に向かって固設され、掘削軸11の近傍まで延設し、垂直片16の外側には、掘削時に削孔壁面に食い込む抵抗フランジ19が垂直片16に沿って摺動自在に突設されて構成されている。従って、この状態での共回り防止翼14は掘削軸11に対し回転自在であり、共回り防止翼14は、コ状回転体14aの回転径が掘削翼12の回転径と略等しいが、抵抗フランジ19は、その回転径より外方に突出しているので、掘削すると抵抗フランジ19が削孔壁面に食い込むことになり、共回り防止翼14は回転が阻止される。
前記撹拌翼13は、この共回り防止翼14の垂直片16の内側に位置して設けられている。図示の本例では、上下の撹拌翼13、13の間に2本の翼部材17、17が配設されている場合を示している。
【0022】
前記共回り防止翼14の垂直片16の外側面には、掘削時に削孔壁面の地盤に食い込む抵抗フランジ19が、上下方向に摺動可能に突設されている。この抵抗フランジ19は、掘削翼12の回転径より少し外側に突出しており、掘削時には削孔壁面より地盤中に食い込む。これにより掘削軸11が回転しても共回り防止翼14は回転しない。また、抵抗フランジ19は、垂直片16に対し上下摺動自在に取付れらているので、地盤中に掘進するときは、地盤の抵抗を受けて垂直片16の上方に摺動して位置し、地盤中より引き上げるときは、地盤の抵抗を受けて垂直片16の下方に摺動して位置する。
さらに、抵抗フランジ19は、図5に示すように垂直片16に内蔵されたばね(スプリング)27により下方に向かって付勢されている。従って、地盤中より引き上げるときに、共回り防止翼14の垂直片16が地盤上よりは半分以上出て、抵抗フランジ19を下方に押し下げる外力が小さくなっても、抵抗フランジ19はばね(スプリング)27で下方に付勢されているので、垂直片16での下方の位置を保持できることとなる。
【0023】
次に、抵抗フランジ19の共回り防止翼の垂直片16に対する取付構造の実施の形態を図2乃至図5について説明する。
共回り防止翼14の垂直片16の外側面には、図3及び図4に示すように中壁21aと、この中壁21aに連続する側壁21b、21cとから断面コ字状の凹溝21が長手方向(垂直方向)に形成されている。これらの各壁21a、21b、21cは所定の厚みを持ち、側壁21b、21cの各外側面には、ゴムや樹脂などからなるシート状のシール材22を介してシールリップ取付部材23が取り付けられている。これらの取付部材23は、図3及び図4に示すように平面視で側壁21b、21cの厚みより大きく凹溝21の開口を狭めるように少し開口側に突出して取り付けられており、これらの取付部材23の外側面にシールリップ24a、24bの基部が載置されている。そして、これらのシールリップ24a、24b、シールリップ取付部材23およびシール材22は、ボルト25によって前記各側壁21b、21cの外側面に固定されている。取付部材23の外側面に基部が取り付けられたシールリップ24a、24bは、互いに対向する方向に延出し自由状態となっており、図4に示すように摺動自在に取り付けられた抵抗フランジ19の側面に密接して取付部材24a、24bと抵抗フランジ19との間より掘削土や填充材が浸入するのを防止する。
【0024】
一方、前記抵抗フランジ19は全体として平板状をなし、その基部の左右(表裏)両側面には、凹欠部26が設けられている。従って、この抵抗フランジ19の基部は前記凹溝21内に嵌まり込み、さらに凹欠部26に前記取付部材23の凹溝21の開口側に突出している部分が嵌り込んでいる。この取付部材23の対向部分(前記突出部分)と凹欠部26との嵌合によって、抵抗フランジ19は、その基部において垂直片16に脱抜不可で、垂直片16に沿って摺動可能に支持される。このとき前記シールリップ24a、24bの自由端側は抵抗フランジ19の基部付近の両側面に密接する。
これにより、掘削中の掘削土(土塊)が凹溝21内や凹欠部26内に浸入するのを防止できる。従って、抵抗フランジ19の垂直片16に対する円滑な摺動と安定保持を可能にしている。また、図5に示すように凹溝21内の上部には、抵抗フランジ19の基部を常時下方へ所定のバネ力にて付勢するばね(スプリング)27が収納されている。
【0025】
次に、前記実施の形態の撹拌混合装置を用いて地盤改良を行う手順を、図6(a)(b)(c)と共に説明する。
掘削翼12および撹拌翼13が固着され、抵抗フランジ19を有する共回り防止翼14を備える掘削軸11を、所定の掘進装置に取り付け、駆動回転させながら地盤への掘進を開始させる。
【0026】
そして、図6(a)に示すように掘削軸11を回転させながら地盤内へ掘進させると、掘削翼12の回転径に対応する掘削径の削孔が形成される。共回り防止翼14の回転径は、掘削翼12の回転径と略等しい径となっているため、共回り防止翼もその削孔内を前記掘進方向に推進する。しかし、共回り防止翼14には抵抗フランジ19が設けられ、この抵抗フランジ19は削孔の径より外出した位置に存在するため、削孔壁面より地盤中に食い込んで掘進することとなり、このため掘削軸11に対し回転自在の共回り防止翼14は、回転せずに掘進する。このとき抵抗フランジ19は、側方地盤からR方向の圧力(抵抗)を受けて共回り防止翼14の垂直片16に沿って上方に摺動し、図6(a)に示すように垂直片16の上方に位置することとなる。
【0027】
この掘進において掘削軸11の先端部の掘削翼12で掘削された掘削土(土塊)は、撹拌翼13で撹拌すると共回りしようとするが、共回り防止翼14は抵抗フランジ19が削孔壁面より地盤中に食い込んでいるため回転せず、従って共回り防止翼14も回転しないので、回転する撹拌翼13と共に共回りしようとする掘削土(土塊)は、共回り防止翼14と撹拌翼13、及び掘削翼12と共回り防止翼14との間で確実にせん断され、撹拌混合が行われる。
【0028】
すなわち、掘削軸11の掘削翼12と撹拌翼13は、掘進中および引き抜き中のいずれに拘わらず回転しているので、掘削土(土塊)は共回りしようとするが、しかし、掘削軸11に取り付けられた撹拌翼13の近傍(本例で撹拌翼13、13間)に設けられた共回り防止翼18の翼部材17は回転しないので、掘削土(土塊)は共回り防止翼14の翼部材17で共回りが阻止される。このため共回り防止翼18の翼部材17と撹拌翼13との間で掘削土(土塊)の撹拌混合が行われる。従って、この掘進時に、掘削軸11内の流体通路(図示せず)から所定の填充材(例えば、セメントミルク)を供給し、、吐出口28より吐出させ、掘削された掘削土と填充材を撹拌混合することで地盤改良が行われる。この地盤改良は、共回り防止翼14の存在で地盤の掘削土が土塊となることなく確実にせん断されるので、良好な地盤改良となる。
【0029】
この地盤改良工程では、掘進工程なので抵抗フランジ19は、側方地盤から上方向(矢印R方向)への力を受けるので上昇し、垂直片16の上方に位置している。従って、図6(a)に示すように掘削翼12が硬質地盤29に到達しても抵抗フランジ19は硬質地盤29には到達しないので硬質地盤29への掘進抵抗を低く抑えることができる。しかも、共回り防止翼14の下部(抵抗フランジ19の位置より下部の部分)は、停止状態のまま硬質地盤中に挿入することができるので、硬質地盤中の掘削部の掘削土と填充材の撹拌混合も充分に実施することができる。
【0030】
一方、前記掘進により所定の深度まで到達すると、掘削軸11を回転(正回転または逆回転)させながら地盤中から引き上げる。この引き上げ時にも填充材を吐出しつつ掘削土と撹拌混合しつつ引き上げてもよい。この引き上げ時の撹拌混合も前記掘進時と同様に共回り防止翼14の存在で良好に撹拌混合が行われる。
この地盤中からの引き上げ時には、抵抗フランジ19は、図6(b)に示すように側方地盤から下方向(矢印S方向)への力を受けると共に、ばね(スプリング)27の反発力による押し下げ力も加わり、垂直片16に沿って下降し、垂直片16の下方に位置している。この場合、抵抗フランジ19は、削孔壁面より地盤中に食い込んでいるので共回り防止翼14の回転を制止して地盤内を上昇し、ついには共回り防止翼14の頭部が地面上に出てくる。この共回り防止翼14の頭部付近が地面より上に出た後も、抵抗フランジ19は下降によって垂直片16の下方に位置しているので、地盤中にあって削孔壁面に食い込んだ状態にあり、共回り防止翼14の回転は阻止されており、共回り防止機能を維持する。
【0031】
さらに掘削軸11を引き上げると、図6(c)に示すように共回り防止翼14は、下端部を地盤中に僅か残して地面上に引き上げられた状態となる。この状態でも抵抗フランジ19は、ばね(スプリング)27で垂直片16の下方に押し下げられているので、抵抗フランジ19の一部は地盤中に残っており、共回り防止翼14の回転は阻止され、共回り防止機能を引き続き維持することとなる。このため、地面に近い地盤内においても、前記掘進時と同様にして共回り防止翼14による掘削土の共回り防止により、掘削土と填充材との良好な撹拌混合が促進される。
【0032】
図7は、本発明の他の実施形態を示す掘削土の撹拌混合装置の正面図である。この実施の形態は、共回り防止翼14の翼部材17が、掘削軸11と垂直片16との間に架設され、一端は垂直片16に固定され、他端は掘削軸11に回転自在に連結された構成であり、他は前記実施の形態と同様であるもので、同一構成要素には同一符号を付して他の詳細な説明は省略する。本実施の形態では、翼部材17の掘削軸11への連結は、掘削軸11に回転自在に設けられたボス18に連結されて回転自在となっている。この実施の形態の掘削土の撹拌混合装置においても前記実施の形態と同様の作用、効果を奏する。
【0033】
このように、本実施形態は、中空の掘削軸11の先端側に掘削翼12が、それより上方に撹拌翼13、13が設けられ、その中空の撹拌軸11内が流体通路となり、撹拌軸11の先端近傍には流体通路に連通する吐出口28が設けられ、前記撹拌軸11の周囲に、掘削翼12の回転径に略等しい回転径の共回り防止翼14が回転自在に設けられ、この共回り防止翼14は、水平片15と垂直片16でコ状に設けられ、この垂直片16の内側には、掘削軸11の近傍まで延出するか、または先端が掘削軸11に回転自在に連結する翼部材17、17が設けられ、該共回り防止翼14の垂直片16の外側面には、掘削時に削孔壁面の地盤中に食い込む抵抗フランジ19が、上下方向に摺動自在に突設されて構成されている。
【0034】
これにより、一段の抵抗フランジ19を用いても、これを昇降させることで、抵抗フランジを多数設けた従来装置に比べ組付け作業を効率化できるとともに、掘進開始から引き上げ完了までの工程において掘削土(土塊)と填充材との良好な撹拌、混合を実施でき、また硬質地盤への掘進抵抗を低く抑えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、硬質地盤への掘進抵抗を低く抑えながら、地盤における掘削土と填充材との撹拌混合を、掘進から引き上げまでの全工程で効率的に実施することができるという効果を有し、掘削土と填充材を機械的に混合して固結させるなどして、地盤を円柱状に改良する掘削土の撹拌混合装置等に有用である。
【符号の説明】
【0036】
11 掘削軸
12 掘削翼
13 撹拌翼
14 共回り防止翼
15 水平片
16 垂直片
17 翼部材
18 ボス
19 抵抗フランジ
27 ばね(スプリング)
28 吐出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空の掘削軸の先端側に掘削翼が、それより上方に撹拌翼が設けられ、その中空の撹拌軸内が流体通路となり、撹拌軸の先端近傍には流体通路に連通して吐出口が設けられた掘削軸を、回転しつつ地盤中に掘進および地盤中より引き上げし、この掘削時及び/または引き上げ時に流体通路より填充材を供給し吐出口より吐出し、地盤中に掘削土と填充材を撹拌混合する掘削土の撹拌混合装置であって、
前記掘削軸には、掘削軸に回転自在に設けられた少なくとも2本の水平片と、この水平片の先端間を連結する垂直片とで、掘削翼の回転径に略等しい回転径のコ状回転体が配設され、この垂直片の内側には、掘削軸の近傍まで延出する翼部材が固設され、外側には、掘削時に削孔壁面に食い込む抵抗フランジが垂直片に沿って摺動自在に突設されている共回り防止翼が設けられ、
掘削軸に固設された撹拌翼が共回り防止翼の垂直片の内側に位置して配設されていることを特徴とする掘削土の撹拌混合装置。
【請求項2】
前記共回り防止翼の翼部材は、一端が垂直片に固設され、他端が掘削軸に回転自在に取り付けられていることを特徴とする請求項1記載の掘削土の撹拌混合装置。
【請求項3】
前記抵抗フランジは、共回り防止翼の垂直片に内蔵されたばねにより軸先端方向に向かって付勢されていることを特徴とする請求項1または2記載の掘削土の撹拌混合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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