説明

掘削工具装置用吸引装置

【課題】作業時に周囲環境への粉塵負荷を低減し、吸引導管が詰まらない吸引装置を得る。
【解決手段】第1端部12、および第2端部13を有し、前記掘削工具装置6の工具7を少なくとも部分的に包囲する受容空間20を設けた掘削工具装置6の吸引装置11であって、吸引装置11を掘削工具装置6に固定するよう吸引装置11の第1端部12に設けた固定装置14と、吸引装置11が基礎構造に接触するよう、吸引装置11の第2端部13に設けた接触領域15と、真空源に接続するための、接続装置18とを設けた該吸引装置11において、吸引装置11の第2端部13の領域19に、少なくとも1個の支持素子21を設け、この支持素子21には、工具7の貫通案内開口22、および少なくとも1個の規定の吸引開口23を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前半に記載する掘削工具装置用吸引装置に関するものである。
【0002】
コンクリート壁やコンクリート天井などの岩状物の基礎構造を、たとえば、ドリルハンマー、組み合わせハンマー、チゼルハンマーのような掘削工具装置の工具を用いて加工する際、粉塵など、掘削屑が発生する。特に粉塵の発生は、建物の部屋など、周囲環境の汚染につながり、使用者の仕事の妨げとなる。
【背景技術】
【0003】
このような理由から、特許文献1に記載の手持ちドリル装置の吸引装置は、第1端部およびこの第1端部とは反対側の第2端部を有し、掘削工具装置の工具を少なくとも部分的に包囲する受容空間を設ける。吸引装置の第1端部には、吸引装置を掘削工具装置に固定するための固定装置を設ける。吸引装置の第2端部には、吸引装置が基礎構造に接触する接触領域を設ける。さらにこの吸引装置には、工具7の長手方向に平行にその長手方向が伸縮可能である弾性部分を設ける。さらに、真空源に接続するための 接続装置を設ける。
【特許文献1】独国実用新案登録第8119612号明細書
【0004】
基礎構造に作業を加える際、吸引装置の接触領域は、基礎構造と接触し、ドリル作業において発生する、材料の粉塵や破片を、例えば産業用粉塵吸引機の形式とした真空源により吸い込む。弾性部分を設けることで、掘削作業が進み、工具が基礎構造に入りこんでも吸引装置が基礎構造に接触可能となる。
【0005】
この既知の吸引装置の欠点は、真空源より発生する吸引気流の関係で、掘削された材料の大きい破片も吸い込まれ、これら大きい破片が、接続装置より生じる吸引チャネル、および真空源にいたる吸引導管をつまらせる恐れがある。特に、工具として、たとえば尖頭チゼルを設けた、組み合わせハンマーおよびチゼルハンマーにおいては、吸引すべき粉塵のほかにも、掘削した材料からは、多量の種々の大きさの破片が発生する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このため、本発明の課題は、基礎構造に作業をするときに、周囲の環境に対する粉塵負荷を格段に減らし、吸引導管が詰まらない吸引装置を得るにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、独立請求項に記載する特徴により解決される。好適な構成は、従属請求項に記載する。
【0008】
本発明によれば、吸引装置の第2端部の領域に、少なくとも1個の支持素子を設け、この支持素子には、工具の貫通案内開口、および少なくとも1個の規定の吸引開口を設ける。
【発明の効果】
【0009】
工具の貫通案内開口は、吸引装置の案内を構成し、吸引装置の弾性部分にもかかわらず、吸引装置が折れ曲がることを回避する。規定の吸引開口の形態および数に応じて、吸い込む際、および吸引装置の吸引空間での気流の案内は影響を受け、そのため掘削装置の作業箇所ごとに、とくに発生する粉塵の、より好適な吸引を制御することが可能となる。少なくとも1個の規定の吸引開口の形態により、吸い込まれる、掘削された材料から出る破片の最大の大きさは限定されるため、吸引チャネルが詰まるのを防ぐことができる。支持素子は、掘削した材料から出る大きい破片を吸引装置内に吸い込むのを防ぐための絞りとなる。好適には、支持素子は、耐久性のある弾性材料で構成する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明吸引装置を設けた掘削工具の側面図である。
【図2】本発明吸引装置の第1実施例における、図1のII‐II線上の横断面図である。
【図3】図2のIII‐III線上の縦断面図である。
【図4】本発明吸引装置の第2実施例における、図1のII‐II線上の横断面図である。
【図5】本発明吸引装置の第3実施例および第4実施例における、図1のII‐II線上の横断面図である。
【図6】本発明吸引装置の第5実施例における、図1のII‐II線上の横断面図である。
【図7】図6におけるVII‐VII線上の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
吸引装置には弾性部分を設け、好適には支持素子を、この弾性部分に取り付け、また好適には、吸引装置の弾性部分に類似の、もしくは同一の弾性材料で構成する。
【0012】
好適には、固定装置は、吸引装置を掘削工具装置に着脱可能に固定するよう構成し、さらに、たとえばクランプ素子を設け、このクランプ素子により、吸引装置をハウジング部分、掘削工具装置の工具ホルダに固定可能とする。
【0013】
好適には、支持素子に、複数個のセグメントを設け、これらセグメントは吸引装置の外周から、掘削工具の貫通案内開口まで延在させる。セグメントは、少なくとも1個の規定の吸引開口を生ずるよう、互いに離間させて配列する。この吸引装置の用途に応じて、セグメントの材料厚さ、およびセグメント相互間の距離のものを選択する。このような支持素子は、とくにその頑丈な形態とした場合において際立つ。セグメントはたとえば、貫通案内開口に向かう遊端を設け、必要に応じて、内側に転向し、再び自動的にその初期位置に復帰できるようにする。
【0014】
好適には、セグメントは、吸引装置の第2端部が存在する平面に対して角度をなすよう指向させ、吸引装置の第2端部から吸引装置の第1端部に向かって延在させる。このため、基礎構造と接触する吸引装置の第2端部は、凹状の空間を構成し、この空間の中に、少なくとも1個の吸引開口を通るには大きすぎる、掘削された材料から発生する破片を捕捉できる。
【0015】
好適には、セグメントは、貫通案内開口に向かって細くなる台形形状とする。この構成により、好適な空気流の案内が得られる。
【0016】
支持素子を壁部片で構成し、この壁部片には、工具の貫通案内開口 、および少なくとも1個の規定の吸引開口を設け、少なくとも1個の吸引開口を広範囲にわたり互いに密接するよう分布させる。壁部片により、吸引装置を第2端部領域を閉じ、対応する貫通案内開口の形態により、吸引装置の案内を工具により行い、また少なくとも1個の規定の吸引開口により、掘削した材料から発生する粉塵および破片の十分な吸引が達成される。
【0017】
好適には、少なくとも1個の吸引開口の横断面を、丸みを帯びた横断面とする。この構成により、吸引装置に吸い込まれる破片の大きさを好適に制御できる。
【0018】
好適には、支持素子を格子部片で構成し、この格子部片には工具の貫通案内開口を設け、さらに格子部片の網目で規定の吸引開口を構成する。格子部片で第2端部領域を覆うことで、対応する貫通案内開口の形状により、吸引装置の案内を工具で行い、また少なくとも1個の規定の吸引開口により、掘削された素材から出る粉塵および破片の十分な吸引が達成される。
【0019】
好適には、支持素子に、複数個のリブを互いに離間して配置し、これらリブは、吸引装置の外周から、工具の貫通案内開口まで延在させ、これらリブには、それぞれ接触端面を設け、これら接触端面を、吸引装置が基礎構造に接触する平面上に配置する。好適には、リブ相互間に、壁部片を設け、この壁部片は接触端面が存在する平面に対し、一定の角度をなす凹状空間を構成する。リブは、工具軸線方向に、高い剛性を有する構成とし、この構成により、基礎構造で壁部片が吸い込まれるのを防ぎ、吸引空気流が作業中分断されない。
【0020】
好適には、少なくとも1個の吸引開口は、2mm以上の最小断面寸法を有する構成とする。この構成により、好適な空気流案内を、真空源である産業粉塵吸引機により行う。
【0021】
好適には、少なくとも1個の吸引開口は、30mm以下の最大断面寸法を有する構成とする。この構成により、掘削した材料から発生する大きい破片が吸い込まれるのを回避でき、そのため、対応する吸引導管の横断面の形状において、吸引導管が詰まるのも回避できる。吸引導管の横断面を大きいものとし、充分な吸引力を有する真空源と接続することにより、少なくとも1個の規定の吸引開口の横断面をより大きく構成することができる。
以下図面につき、本発明の好適な実施例を詳述する。
【実施例】
【0022】
図1〜3に示す吸引装置11を、掘削工具装置6としての組み合わせハンマーに取り付ける。吸引装置11の第1端部12に、クランプ止め輪としての固定装置14を設け、吸引装置11を掘削工具装置6に着脱可能に固定する。吸引装置11の第2端部13に接触領域15を設け、この接触領域15により吸引装置11が基礎構造に接触する。吸引装置11は、第1端部12から第2端部13の方向に延在する剛性のある剛固部分16と、この剛固部分16から吸引装置11の第2端部13まで延在する弾性のある弾性部分17とを有し、この弾性部分17は、その長手方向部分を、工具7の長手方向に平行に伸縮可能とする。剛固部分16および弾性部分17は、受容空間20を有し、この受容空間20は、掘削工具装置6に取り付けた工具7を部分的に包囲する。吸引装置11の剛固部分16に、図示しない真空源に接続する接続装置18である接続部を設ける。吸引装置11の第2端部13の領域19に、絞りとして支持素子21を設け、この支持素子21には、工具7の貫通案内開口22、および複数個の規定した吸引開口23を設ける。
【0023】
支持素子21には複数個のセグメント26を設け、これらセグメント26は吸引装置11の外周から、工具7の貫通案内開口22まで延在させる。これらセグメント26は、規定の吸引開口23を構成するよう互いに離間させて配列する。さらに、セグメント26の輪郭を、貫通案内開口22にむかって細くなる台形形状にする。セグメント26は、吸引装置11の第2端部13が存在する平面Eに対して角度Aをなして、吸引装置11の第2端部13から吸引装置11の第1端部12に向かって延在させる。
【0024】
図4に示す支持素子31は、格子部片により構成し、この格子部片には工具の貫通案内開口32を設け、多数の網目36が規定の吸引開口33を構成する。
【0025】
図5には、この一つの図面内に、支持素子に関する2つの実施例である、支持素子41および51を示す。
【0026】
一点鎖線より左側に示す支持素子41は、壁部片により構成し、工具の貫通案内開口42および複数個の規定の吸引開口43を設け、これら吸引開口は種々の異なる直径の円とする。これら吸引開口43は、広範囲にわたり互いに密接するよう分布させる。
【0027】
一点鎖線より右側に示した支持素子51は、壁部片により構成し、工具の貫通案内開口52および複数個の吸引開口53を設け、これら吸引開口は、非円形の種々の断面形状であり、異なる形状とし、それぞれ広範囲にわたり互いに密接するよう分布させる。
【0028】
代案として、壁部片で構成する支持素子には、断面が円形の吸引開口43、および断面が非円形の吸引開口53を、交互に、もしくはそれぞれグループにまとめて設けてもよい。
【0029】
図6および図7に示す支持素子61には、複数個のリブ66を互いに離間して配置し、これらリブ66は、吸引装置11の外周から、工具7の貫通案内開口62まで延在させる。リブ66には、それぞれ吸引装置11が基礎構造に接する平面Fに実際に触れる部分である接触端面67を設ける。リブ66の間には、壁部片68を設け、吸引装置11の外周から、工具7の貫通案内開口62の方向に延在させる。これら壁部片68の遊端は、吸引開口63を生ずるため、貫通案内開口62から離間させて設ける。さらに、壁部片68は、接触端面67に対して角度Bをなす平面F上に配置する。
【0030】
すべての吸引開口23,33,43,53,63の断面形状は、2mm以上の最小寸法、および30mm以下の最大寸法を有するものとする。
【符号の説明】
【0031】
6 掘削工具装置
7 工具
11 吸引装置
12 第1端部
13 第2端部
14 固定装置
15 接触領域
16 剛固部分
17 弾性部分
18 接続装置
19 領域
20 受容空間
21 支持素子
22 貫通案内開口
23 吸引開口
26 セグメント
31 支持素子
32 貫通案内開口
33 吸引開口
36 網目
41 支持素子
42 貫通案内開口
43 吸引開口
51 支持素子
52 貫通案内開口
53 吸引開口
61 支持素子
62 貫通案内開口
63 吸引開口
66 リブ
67 接触端面
68 壁部片
A 角度
B 角度
E 平面
F 平面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端部(12)、およびこの第1端部(12)とは反対側の第2端部(13)を有し、前記掘削工具装置(6)の工具(7)を少なくとも部分的に包囲する受容空間(20)を設けた掘削工具装置(6)のための吸引装置(11)であって、
この吸引装置(11)を前記掘削工具装置(6)に固定するよう、前記吸引装置(11)の第1端部(12)に設けた固定装置(14)と、
吸引装置(11)が基礎構造に接触するよう、前記吸引装置(11)の第2端部(13)に設けた接触領域(15)と、
真空源に接続するための、接続装置(18)と
を設けた該吸引装置において、
前記吸引装置(11)の第2端部(13)の領域(19)に、少なくとも1個の支持素子(21;31;41;51)を設け、この支持素子(21;31;41;51)には、工具(7)のための貫通案内開口(22;32;42;52)、および少なくとも1個の規定の吸引開口(23;33;43;53)を設けたことを特徴とする吸引装置。
【請求項2】
前記支持素子(21)に、複数個のセグメント(26)を設け、これらセグメント(26)は吸引装置(11)の外周から、前記工具(7)の貫通案内開口(22)まで延在させ、前記セグメント(26)が、少なくとも1個の規定の吸引開口(23)を生ずるよう、互いに離間させて配列した請求項1記載の吸引装置。
【請求項3】
前記セグメント(26)を、前記吸引装置(11)の前記第2端部(13)が存在する平面(E)に対して角度(A)をなすよう指向させ、かつ前記吸引装置(11)の前記第2端部(13)から前記吸引装置(11)の第1端部(12)に向かって延在させた請求項2記載の吸引装置。
【請求項4】
前記セグメント(26)の輪郭を、前記貫通案内開口(22)に向かって細くなる台形形状とした請求項2または3に記載の吸引装置。
【請求項5】
前記支持素子(41;51)を壁部片で構成し、この壁部片には、前記工具(7)の貫通案内開口 (42;52)、および少なくとも1個の規定の前記吸引開口(43;53)を設け、少なくとも1個の前記吸引開口(43;53)を広範囲にわたり互いに密接するよう分布させた請求項1記載の吸引装置。
【請求項6】
少なくとも1個の前記吸引開口(43)の横断面を、丸みを帯びた横断面とした請求項5記載の吸引装置。
【請求項7】
前記支持素子(31)を格子部片で構成し、この格子部片には前記工具(7)の貫通案内開口(32)を設け、さらに前記格子部片の網目(36)により規定の前記吸引開口(33)を構成した請求項1記載の吸引装置。
【請求項8】
前記支持素子(61)に、複数個のリブ(66)を互いに離間して配置し、これらリブ(66)は、吸引装置(11)の外周から、工具(7)の貫通案内開口(62)まで延在させ、これらリブ(66)には、それぞれ接触端面(67)を設け、これら接触端面(67)を、吸引装置(11)が基礎構造に接触する平面(F)上に配置した請求項1記載の吸引装置。
【請求項9】
少なくとも1個の前記吸引開口(23;33;43;53;63)は、2mm以上の最小断面寸法を有する構成とした請求項1〜8のうちいずれか1項に記載の吸引装置。
【請求項10】
少なくとも1個の前記吸引開口(23;33;43;53;63)は、30mm以下の最大断面寸法を有する構成とした請求項1〜9のうちいずれか1項に記載の吸引装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−35121(P2013−35121A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−211304(P2012−211304)
【出願日】平成24年9月25日(2012.9.25)
【分割の表示】特願2007−122732(P2007−122732)の分割
【原出願日】平成19年5月7日(2007.5.7)
【出願人】(591010170)ヒルティ アクチエンゲゼルシャフト (339)
【住所又は居所原語表記】Feldkircherstrasse 100, 9494 Schaan, LIECHTENSTEIN
【Fターム(参考)】