説明

掘削機の位置計測方法

【課題】屈曲した縦坑でも掘削機の位置と掘削方向とを、正確に把握することのできる技術の提供を。
【解決手段】本発明にかかる掘削機の位置計測方法は、予め位置が特定されている少なくとも3つのミラーを下方に向けて配設し、掘削機に設定された計測対象面上の少なくとも3つの特定点にそれぞれ設置したレーザー光式測距手段によって前記ミラーを視準して、各特定点から各ミラーまでの距離を計測する手順と、前記各ミラーの位置情報と前記各特定点から各ミラーまでの距離情報とに基づいて前記掘削機の傾斜角度を計測する手順と、前記各特定点から各ミラーまでの距離と前記掘削機の傾斜角度に基づいて前記掘削機の位置と掘削方向を算出する手順とを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掘削機を用いて、ほぼ鉛直方向に掘り下げる場合における前記掘削機の位置(深さ)と掘削方向とを正確に把握することのできる方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、掘削機を用いて、縦坑をほぼ鉛直方向に掘り下げる場合には、地表等の基準点から地下の前記掘削機までの距離を、順次繰り出されるワイヤー等を用いて計測することによって、前記掘削機の位置を把握することが行われていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、上述したような従来のワイヤー等を用いた計測方法は、縦坑の底を地表の基準点等から見通し可能な場合には適用可能であるが、縦坑が屈曲しているような場合で見通し不可能になると、ワイヤー等を用いた計測方法では計測困難であった。また、ワイヤー等を用いた計測方法で縦坑の底までの深さを計測可能な場合であっても、掘削機の掘削方向は把握できないので、意図しない方向に掘削機が進む場合もあり、所望の計画線に沿った掘削が困難であるという問題があった。
【0004】
そこで、図2に示したように、連通管を用いたレベル計5を使用することによって、縦坑が屈曲して見通し不可能な場合でも、掘削機1の位置を計測することが可能となる。
図2において、前記掘削機1は下面に備えたカッター1Aを回転させることによって掘削を行うものであり、掘削機1の外殻1Bの内部に必要な機材が設置されている。
そして、所定深さ堀り進んだ後には掘削を一時停止して、セグメントを組み立てて縦坑の壁面を構成する。
前記傾斜計3は掘削機1の上端に設定された計測対象面M上に直角方向に配置された2つの傾斜計から構成されている。
ジャイロ4は掘削機1に固定さている。
【0005】
レベル計5は計測基準面GL側の所定の高さに設置された流体供給部5Aと、計測対象点P側に設置された流体圧力計測部5Bと、両者を連通状態で接続する連通管5Cとから構成されている。
流体圧力計測部5Bにおいて計測される流体圧力は掘削機1の深さに応じて変化するので、流体圧力を正確に計測することによって掘削機1の深さを正確に随時把握することができるのである。
【0006】
以上のようにして、傾斜計3からの計測データと、ジャイロ4からの計測データと、レベル計5からの計測データを、前記データ伝送装置2を介して地上の計測装置6に伝送する。
地上の計測装置6においては、伝送されてきた計測データを分析処理装置6Aを用いて分析・解析して、掘削機1の位置と掘削方向とを維持把握することができる。
しかし、連通管を用いたレベル計より正確な計測が要求されてきた。
【0007】
そこで、本発明は、屈曲した縦坑でも掘削機の位置と掘削方向とを、正確に把握することのできる技術の提供を目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかる請求項1の掘削機の位置計測方法は、
予め位置が特定されている少なくとも3つのミラーを下方に向けて配設し、掘削機に設定された計測対象面上の少なくとも3つの特定点にそれぞれ設置したレーザー光式測距手段によって前記ミラーを視準して、各特定点から各ミラーまでの距離を計測する手順と、
前記各ミラーの位置情報と前記各特定点から各ミラーまでの距離情報とに基づいて前記掘削機の傾斜角度を計測する手順と、
前記各特定点から各ミラーまでの距離と前記掘削機の傾斜角度に基づいて前記掘削機の位置と掘削方向を算出する手順と
を含んでいることを特徴としている。
【0009】
請求項2では、
掘削の進行に応じて、請求項1に記載の掘削機の位置計測方法によって計測する手順と、
複数回計測した掘削機の位置と掘削方向とに基づいて掘削機の軌跡を求める手順と
を含んでいることを特徴としている。
【0010】
請求項3では、
掘削機によって掘削を進行させる稼働状態と、掘削機による掘削を一時的に停止させてセグメント施工等の作業を行う停止状態とを交互に繰り返すことによって、ほぼ鉛直方向に掘り下げる掘削機の位置計測方法において、
掘削機の稼働状態においては、請求項2に記載の掘削機の位置計測方法によって計測した掘削機の位置と掘削方向とに基づいて掘削機の軌跡を求め、
掘削機の停止状態においては、請求項1に記載の掘削機の位置計測方法によって計測した掘削機の位置と掘削方向とに基づいて掘削機の軌跡を補正することを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の掘削機の位置計測方法によれば、縦坑の底の掘削機を地表の基準点等から見通し不可能な場合にも、掘削機に設置したレーザー光式測距手段によって特定位置のミラーを視準して距離を計測することによって、掘削機の位置と掘削方向とを正確に、且つ随時把握しながら掘削することができる。
そして、掘削機が作動中に計測した掘削機の位置と掘削方向を、掘削機が一時停止してセグメント施工時にレーザー光式測距手段を用いて計測したデータによって補正することによって、常時正確な計測が可能となったのである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明にかかる掘削機の位置計測方法を説明する説明図である。
【図2】連通管を用いたレベル計による掘削機の位置計測方法の説明図である。
【図3】前記掘削機の位置計測方法の説明図である。
【図4】前記掘削機の位置計測方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明にかかる掘削機の位置計測方法を、その実施の形態を示した図1を参照して詳細に説明する。
図1は本発明にかかる掘削機の位置計測方法を説明するための説明である。
図1において、掘削機41に設定された計測対象面42上の少なくとも3つの特定点には、それぞれレーザー光式測距手段43A、43B、43Cが設置されている。
予め位置が特定されている特定位置には、ミラー44A、44B、44Cが下方を向けて配設されている。
【実施例1】
【0014】
実施例1の掘削機の位置計測方法では、前記レーザー光式測距手段43A、43B、43Cによって前記ミラー44A、44B、44Cを視準して、各特定点から各ミラー44A、44B、44Cまでの距離を計測する。
3つのレーザー光式測距手段43A、43B、43Cから各ミラー44A、44B、44Cまでの距離を測定することによって、前記計測対象面42の傾斜角度を知ることができる。
従って、前記計測対象面42に垂直な掘削方向も知ることができるのである。
【0015】
この場合には、少なくとも3台のレーザー光式測距手段を用いて掘削機の位置と掘削方向とを知ることができるのである。なお、レーザー光式測距手段による距離測定は、掘削機が静止している状態、即ち、セグメント施工時に行うとよい。
【0016】
また、掘削機による掘削の進行に応じて、前述した掘削機の位置計測方法によって掘削機の位置を複数回計測し、複数回計測した掘削機の位置と掘削方向とに基づいて掘削機の軌跡を求めるので、掘削機の移動軌跡と現在位置とを知ることができる。
【0017】
また、掘削機によって掘削を進行させる稼働状態と、掘削機による掘削を一時的に停止させてセグメント施工等の作業を行う停止状態とを交互に繰り返すことによって、ほぼ鉛直方向に掘り下げるような掘削の場合には、掘削機の稼働状態と停止状態において、次のように計測する。
まず、掘削機によって掘削を進行させる掘削機の稼働状態においては、前述した掘削機の位置計測方法によって計測した掘削機の位置と掘削方向とに基づいて掘削機の軌跡を求める。
【0018】
つぎに、掘削機による掘削を一時的に停止させてセグメント施工等の作業を行う掘削機の停止状態においては、前述したようにレーザー光式測距手段によって計測した掘削機の位置と掘削方向とに基づいて掘削機の軌跡を補正する。
このようにして、常時最も正確な掘削機の位置と軌跡を計測することができるのである。
【0019】
以上のようにして、掘削機41に設置したレーザー光式測距手段によって計測したデータは、図2に示した例と同様に、データ伝送装置2を介して地上の計測装置6に伝送する。
地上の計測装置6においては、伝送されてきた計測データを分析処理装置6Aを用いて分析・解析して、掘削機41の位置と掘削方向とを維持把握する。
分析処理装置6Aのデスプレイ画面6Bには、図3の(A)に示したように、計画掘削軸XYと、図3の(B)における現時点での掘削機41’の掘削方向(矢印)に対応した掘削軸に対応した掘削軸が、図3の(A)の交差軸X’Y’として、グラフィック表示されている。
【0020】
以上の構成の掘削機の位置計測方法を用いることにより、図4に示したように、鉛直方向に掘り下げるのではなく障害物等を避けながら掘り下げる場合でも、地上の基準面から視準できない位置にある掘削機1の現時点の位置と掘削方向とを随時把握して、適切な制御を行うことが可能になったのである。
【符号の説明】
【0021】
41 掘削機
42 計測対象面
43A、43B、43C レーザー光式測距手段
44A、44B、44C ミラー
2 データ伝送装置
6 計測装置
6A 分析処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め位置が特定されている少なくとも3つのミラーを下方に向けて配設し、掘削機に設定された計測対象面上の少なくとも3つの特定点にそれぞれ設置したレーザー光式測距手段によって前記ミラーを視準して、各特定点から各ミラーまでの距離を計測する手順と、
前記各ミラーの位置情報と前記各特定点から各ミラーまでの距離情報とに基づいて前記掘削機の傾斜角度を計測する手順と、
前記各特定点から各ミラーまでの距離と前記掘削機の傾斜角度に基づいて前記掘削機の位置と掘削方向を算出する手順と
を含んでいることを特徴とする掘削機の位置計測方法。
【請求項2】
掘削の進行に応じて、請求項1に記載の掘削機の位置計測方法によって計測する手順と、
複数回計測した掘削機の位置と掘削方向とに基づいて掘削機の軌跡を求める手順と
を含んでいることを特徴とする掘削機の位置計測方法。
【請求項3】
掘削機によって掘削を進行させる稼働状態と、掘削機による掘削を一時的に停止させてセグメント施工等の作業を行う停止状態とを交互に繰り返すことによって、ほぼ鉛直方向に掘り下げる掘削機の位置計測方法において、
掘削機の稼働状態においては、請求項2に記載の掘削機の位置計測方法によって計測した掘削機の位置と掘削方向とに基づいて掘削機の軌跡を求め、
掘削機の停止状態においては、請求項1に記載の掘削機の位置計測方法によって計測した掘削機の位置と掘削方向とに基づいて掘削機の軌跡を補正する
ことを特徴とする掘削機の位置計測方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−99863(P2011−99863A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−265028(P2010−265028)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【分割の表示】特願2001−203397(P2001−203397)の分割
【原出願日】平成13年7月4日(2001.7.4)
【出願人】(599098127)株式会社ソーキ (28)