説明

掘削装置および掘削方法

【課題】チェン式カッターの掘削機で、掘削機の掘削姿勢を、圧接板およびアクチュエータにより修正する構成のため、構造が複雑となる課題がある。
【解決手段】
地上走行車1に設けたクレーン6に吊設したリーダー26に、掘削機5をワイヤー25により昇降自在に吊設し、前記掘削機5に該掘削機5が掘削する掘削溝の長手方向の傾斜を検出する傾斜検出装置30を設け、傾斜検出装置30の傾斜情報に基づいて掘削作業中の前記掘削機5の掘削体21の回転方向を切り替え、もって、掘削機5の作業姿勢を修正する掘削装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地上走行車に支持させて掘削作業を行う掘削装置および掘削方法に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、地上走行車に突設されたブームに、掘削装置(チェン式カッター)を昇降駆動可能に支持し、この掘削機の姿勢を制御する構成は、公知である(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−190652
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記公知例は、掘削機のフレームに伸縮する圧接板を設け、この圧接板を掘削溝の壁面に押し当てて、掘削機の掘削姿勢を修正するものであるから、掘削機の全体の姿勢を修正するのが容易でないという課題がある。
また、公知例は、圧接板およびアクチュエータを掘削機に設けるので、構造が複雑となる課題がある。
本願は、簡単な構成で掘削機の傾斜を修正するようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、地上走行車1に設けたクレーン6に吊設したリーダー26に、掘削機5をワイヤー25により昇降自在に吊設し、前記掘削機5に該掘削機5が掘削する掘削溝の長手方向の傾斜を検出する傾斜検出装置30を設け、傾斜検出装置30の傾斜情報に基づいて掘削作業中の前記掘削機5の掘削体21の回転方向を切り替え、もって、掘削機5の作業姿勢を修正する掘削装置としたものである。
請求項2の発明は、前記傾斜検出装置30は、掘削機5が掘削する掘削溝の幅方向の傾斜を検出する構成とし、傾斜検出装置30の傾斜情報に基づいて掘削作業中の前記クレーン6を伸縮あるいは起伏させて、もって、掘削機5の作業姿勢を修正する掘削装置としたものである。
請求項3の発明は、前記地上走行車1の所定位置には、掘削機5の傾斜情報を表示する表示モニタ40を設けた掘削装置としたものである。
請求項4の発明は、前記掘削機5の駆動モーター23および/または前記クレーン6の伸縮用モーター10は、前記傾斜検出装置30の傾斜情報に基づいて傾斜自動制御する構成とした掘削装置としたものである。
請求項5の発明は、地上走行車1に設けたクレーン6にワイヤー25により昇降自在に吊設した掘削機5の掘削作業姿勢を傾斜検出装置30により検出し、掘削機5の掘削抵抗の反力により掘削機5の傾斜を、掘削機5の掘削抵抗の反力方向を切り替えて、掘削機5の作業姿勢の傾斜を修正する掘削方法としたものである。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明では、掘削体21の回転方向を切り替えて掘削機5の掘削溝の長手方向の傾斜(左右傾斜)姿勢を修正できるので、掘削溝の掘削精度を向上させることができる。
請求項2の発明では、クレーン6を伸縮あるいは起伏させて掘削機5の掘削溝の幅向の傾斜(前後傾斜)姿勢を修正できるので、掘削溝の掘削精度を向上させることができる。
請求項3の発明では、作業者は表示モニタ40により掘削機5の傾斜情報から、掘削機5の作業姿勢を把握でき、操作性および作業性を向上させることができる。
請求項4の発明では、掘削機5の駆動モーター23および/またはクレーン6の伸縮用モーター10は、傾斜検出装置30の傾斜情報に基づいて自動的に掘削機5の作業姿勢の修正制御でき、操作性および作業性を向上させることができる。
請求項5の発明では、掘削機5の掘削抵抗の反力により掘削機5の傾斜を、掘削機5の掘削抵抗の反力方向を切り替えて、掘削機5の作業姿勢の傾斜を修正するので、掘削溝の掘削精度を向上させることができ、自動的に掘削機5の作業姿勢の修正制御でき、操作性および作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】地上走行車および掘削装置の側面図および掘削装置の正面図。
【図2】掘削装置の正面図。
【図3】掘削装置の側面図。
【図4】掘削装置の傾斜状態の一例の正面図。
【図5】掘削装置の傾斜修正状態の一例の正面図。
【図6】掘削装置の傾斜状態の一例の正面図。
【図7】掘削装置の傾斜修正状態の一例の正面図。
【図8】表示モニタの正面図。
【図9】表示モニタの他の表示例の正面図。
【図10】表示モニタの他の表示例の正面図。
【図11】表示モニタの他の表示例の正面図。
【図12】ブロック図。
【図13】フロー図。
【図14】フロー図。
【図15】地上走行車および掘削装置の他の作業状態の側面図。
【図16】地上走行車および掘削装置の他の作業状態の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施例を図により説明する。1は地上走行車であり、走行装置(クローラ)2の上方にテーブル3を設ける。テーブル3の構成は任意であり、テーブル3には、旋回あるいは前後移動する移動テーブルを設けてもよい。
テーブル3には掘削機(チェン式カッター)5を吊設するクレーン6を設ける。クレーン6は基部ブーム7に対して移動ブーム8を伸縮自在に構成する。移動ブーム8は一つあるいは複数設けても良い。10は移動ブーム8を伸縮駆動する伸縮用モーター(図12)である。
【0009】
前記掘削機5の構成は任意であるが、縦状のポスト15の上部に駆動スプロケット16を駆動軸17により軸装し、ポスト15の下部に従動スプロケット18を従動軸19により軸装する。駆動スプロケット16と従動スプロケット18との間に無端チェン20を掛け回す。無端チェン20にはビットあるいはバケット等により構成した掘削体21を所定間隔おいて複数並設する。前記駆動スプロケット16は、正回転と逆回転とに切り替え自在の駆動モーター23により駆動する構成とする。
【0010】
この掘削機5は、クレーン6の先端の吊設部24から垂下するワイヤー25により吊設され、吊設部24から垂下するリーダー26に支持された状態で昇降する。前記ワイヤー25は前記吊設部24内に設けたワイヤー繰出巻き取り装置(図示省略)により出し入れされ、掘削機5を昇降させる。
しかして、前記掘削機5には、該掘削機5の左右方向(掘削溝の長手方向)の傾斜であるX方向(+−X方向)傾斜の傾斜角度と(例えば、図2)、前記掘削機5の前後方向(掘削溝の幅方向)の傾斜であるY方向(+−Y方向)傾斜の傾斜角度(例えば、図3)とを検出(計測)する傾斜検出装置30を設ける(図12)。傾斜検出装置30はコントローラ31に接続し、コントローラ31にX方向およびY方向の傾斜情報を送出する。コントローラ31には前記駆動モーター23を接続し、コントローラ31は傾斜検出装置30のX方向情報に基づいて駆動モーター23の正逆回転方向の切替を制御する構成とする。
【0011】
即ち、掘削機5は、掘削体21の掘削抵抗の反力により傾斜する傾向があることが判明し、図4のように、掘削体21が正面視右回転の場合、掘削機5の下部が右側に位置する左傾斜(+X方向傾斜)となり、掘削体21が左回転の場合、掘削機5の下部が左側に位置する右傾斜(−X方向傾斜)となる(図6)。
そのため、掘削機5が左傾斜になったときには(図4)、掘削体21を左回転させ(図5)、掘削機5が右傾斜になったときには(図6)、掘削体21を右回転させて(図7)、X方向傾斜を修正する。
【0012】
また、コントローラ31には前記伸縮用モーター10を接続し、コントローラ31は傾斜検出装置30のY方向情報に基づいて伸縮用モーター10を作動させてクレーン6を伸縮あるいは起伏させる。
即ち、掘削地盤の硬軟(強弱)により掘削抵抗は変化し、この掘削抵抗の弱い側の、掘削機5の軸心に対して前後方向(掘削溝の幅方向)に傾斜することがあり、図3のように、掘削機5の上部が前側に倒れると前傾斜(+Y方向傾斜)となり、掘削機5の上部が後側に倒れると後傾斜(−Y方向傾斜)となる。
そのため、掘削機5が前傾斜(+Y方向傾斜)になったときには、移動ブーム8を縮小させ、掘削機5が後傾斜(−Y方向傾斜)になったときには、移動ブーム8を伸長させて、Y方向傾斜を修正する。
【0013】
上記の場合、前記コントローラ31は、傾斜検出装置30の情報に基づいて、掘削機5のX方向傾斜およびY方向傾斜の程度を演算し、このX方向およびY方向の傾斜を修正するように、駆動モーター23の回転数および回転方向の自動制御と、伸縮用モーター10の回転方向の自動制御とを行う(図13,図14)。
【0014】
さらに、地上走行車1の操縦部(図示省略)等の所定位置に、掘削機5の傾斜情報を表示する表示モニタ40を設け(例えば、図8)、掘削機5の自動制御により作動を視認し、作業の安全性を向上させる。
前記表示モニタ40の表示構成は任意であるが、図8の表示モニタ40の表示状態の一例では、X方向とY方向の傾斜角度を表示する。
【0015】
図9は、表示モニタ40の他の表示状態の例を示し、X方向とY方向の傾斜角度と、掘削機5の回転方向と、クレーン6の状態を表示している。
また、図10は、表示モニタ40の他の表示状態の例を示し、作業状態を表示しており、傾斜自動制御と手動操作との選択を行える。
また、図11は、表示モニタ40の他の表示状態の例を示し、姿勢制御の設定画面を表示している。
【0016】
また、前記表示モニタ40の情報に基づいて、手動による傾斜修正も可能に構成する。所定位置には駆動モーター23の正逆転の回転方向を切り替える回転方向切替スイッチ41と、クレーン6の伸縮スイッチ42と、起伏スイッチ43と、入力手段44を設け、これらの操作情報は表示モニタ40に表示する。
【0017】
(実施例の作用)
地上走行車1を走行させて掘削現場に至り、掘削現場の掘削箇所に、地上走行車1のクレーン6に取付けたリーダー26の下部を設置する。
次に、クレーン6のワイヤー25の下端に掘削機5の上部を取付け、ワイヤー25を繰り出して掘削機5をリーダー26に対して下降させ、掘削作業を開始する。
この掘削作業の開始に際し、例えば、クレーン6を旋回させることにより、地面に接地しているリーダー26の上部を左右に振って、掘削機5のX方向の傾斜を修正して初期設定する。
【0018】
同様に、例えば、基部ブーム7に対して移動ブーム8を伸縮または起伏させてY方向の傾斜を修正し、初期設定する。
この場合、地上走行車1の操縦部(図示省略)等の所定位置に、掘削機5の傾斜情報を表示する表示モニタ40を設けているので、表示モニタ40の表示を視認しつつ操作して、掘削機5を所定位置に所定姿勢で位置させて、掘削作業を開始する。
表示モニタ40は、掘削機5の姿勢修正操作すると、操作に応じた掘削機5の姿勢を表示する。
したがって、掘削作業開始準備を頗る容易に、かつ、掘削作業精度を向上させられる。
【0019】
次に、駆動モーター23により掘削機5を駆動させて掘削作業を行っていると、掘削機5の掘削抵抗の反力により、掘削機5は左右に傾斜するので、掘削機5の回転方向を反対に切り替えて、X方向の傾斜を修正する。
この場合、掘削機5あるいはリーダー26の所定部位には、X方向の傾斜角度と、Y方向の傾斜角度とを検出(計測)する傾斜検出装置30を設け、傾斜検出装置30はコントローラ31に接続し、コントローラ31には駆動モーター23を接続しているので、傾斜検出装置30のX方向の傾斜情報に基づいてコントローラ31は掘削機5が設定より傾斜していると判定すると、駆動モーター23の正逆回転方向の切替を自動制御して、掘削機5の作業姿勢を正常状態に保持する。
【0020】
例えば、正面視において、掘削体21が右回転の場合、掘削機5の下部が右側に位置する左傾斜(+X方向傾斜)となるので(図4)、掘削体21を左回転させて修正する。
反対に、掘削体21が左回転の場合、掘削機5の下部が左側に位置する右傾斜(−X方向傾斜)となる(図6)ので、掘削体21を右回転させて、X方向の傾斜を修正する。
このように、掘削作業中の掘削機5の作業姿勢は、自動制御により修正され、掘削溝の掘削精度を向上させられる。
【0021】
また、コントローラ31にはクレーン6の伸縮用モーター10を接続しているので、コントローラ31は傾斜検出装置30のY方向の傾斜情報に基づいて伸縮用モーター10を作動させてクレーン6を伸縮あるいは起伏させる。
即ち、図3のように、掘削機5の上部が前側に倒れると前傾斜(+Y方向傾斜)となり、掘削機5の上部が後側に倒れると後傾斜(−Y方向傾斜)となるが、掘削機5が設定より前傾斜(+Y方向傾斜)になったときには、移動ブーム8を縮小させ、掘削機5が後傾斜(−Y方向傾斜)になったときには、移動ブーム8を伸長させて、Y方向を修正する。
【0022】
上記の場合、地上走行車1の操縦部(図示省略)等の所定位置に、掘削機5の傾斜情報を表示する表示モニタ40を設けているので、例えば、コントローラ31に掘削機5の基本姿勢を設定し、この基本姿勢を表示モニタ40は表示し、掘削機5の自動制御状態をデーター上視認(確認)し、作業の安全性を向上させる。
【0023】
また、図8の表示モニタ40の表示状態では、X方向とY方向の傾斜角度を表示しているので、常時、掘削機5の掘削作業姿勢の監視を行える。
また、図9の表示モニタ40の他の表示状態の例では、X方向とY方向の傾斜角度と、掘削機5の回転方向と、クレーン6の状態を表示しているので、適切な修正方向を表示でき、一層、詳細な掘削作業姿勢の監視を行え、傾斜修正精度を向上させられる。
【0024】
また、図10の表示モニタ40の他の表示状態の例では、作業状態を表示しているので、作業状態に応じて、傾斜自動制御と手動操作との選択の切替を行える。
また、図11は、表示モニタ40の他の表示状態の例では、姿勢制御の設定画面を表示しているので、地盤等の作業条件に応じて、適切な掘削姿勢を設定して、この設定した目標作業姿勢となるように、自動傾斜修正制御を行え、操作性および作業性を向上させられる。
【0025】
例えば、コントローラ31への入力手段44により初期設定情報を入力すると、これを、表示モニタ40に表示すると共に、コントローラ31は、リーダー26の上部を左右に振って、掘削機5のX方向の傾斜の初期設定を実行し、クレーン6を伸縮あるいは起伏させてY方向の傾斜の初期設定を実行する。
【0026】
また、図15のように、障害物がある場合や、傾斜・段差(図16)がある場合でも、適切な掘削姿勢を設定して、この設定した目標作業姿勢となるように、自動傾斜修正制御を実行する。
また、駆動モーター23の正逆転の回転方向を切り替える回転方向切替スイッチ41と、クレーン6の伸縮スイッチ42と、起伏スイッチ43を設けているので、手動による傾斜修正も行える。
【符号の説明】
【0027】
1…地上走行車、2…走行装置、3…テーブル、5‥掘削機、6…クレーン、7…基部ブーム、8…移動ブーム、10…伸縮用モーター、15…ポスト、16…駆動スプロケット、17…駆動軸、18…従動スプロケット、19…従動軸、20…無端チェン、21…掘削体、23…駆動モーター、24…吊設部、25…ワイヤー、26…リーダー、30…傾斜検出装置、31…コントローラ、40…表示モニタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上走行車1に設けたクレーン6に吊設したリーダー26に、掘削機5をワイヤー25により昇降自在に吊設し、前記掘削機5に該掘削機5が掘削する掘削溝の長手方向の傾斜を検出する傾斜検出装置30を設け、傾斜検出装置30の傾斜情報に基づいて掘削作業中の前記掘削機5の掘削体21の回転方向を切り替え、もって、掘削機5の作業姿勢を修正する掘削装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記傾斜検出装置30は、掘削機5が掘削する掘削溝の幅方向の傾斜を検出する構成とし、傾斜検出装置30の傾斜情報に基づいて掘削作業中の前記クレーン6を伸縮あるいは起伏させて、もって、掘削機5の作業姿勢を修正する掘削装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記地上走行車1の所定位置には、掘削機5の傾斜情報を表示する表示モニタ40を設けた掘削装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2または請求項3において、
前記掘削機5の駆動モーター23および/または前記クレーン6の伸縮用モーター10は、前記傾斜検出装置30の傾斜情報に基づいて傾斜自動制御する構成とした掘削装置。
【請求項5】
地上走行車1に設けたクレーン6にワイヤー25により昇降自在に吊設した掘削機5の掘削作業姿勢を傾斜検出装置30により検出し、掘削機5の掘削抵抗の反力により掘削機5の傾斜を、掘削機5の掘削抵抗の反力方向を切り替えて、掘削機5の作業姿勢の傾斜を修正する掘削方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−100690(P2013−100690A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245319(P2011−245319)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(390020488)太洋基礎工業株式会社 (15)
【出願人】(000177416)三和機材株式会社 (144)