説明

採尿装置

【課題】ボウルが浅底形状の洋式便器にも使用可能な採尿装置を提供する。
【解決手段】ケーシング12が、洋式便器11のリム11aを跨ぐ状態で取り付けられた採尿装置10は、モータ13によって回転駆動される駆動軸14と、駆動軸14に基端が連結された採尿アーム15と、採尿アーム15の先端に設けられた採尿器16と、を備えている。駆動軸14は、洋式便器11のボウル17内のリム11a寄りの領域に配置され、その上端部14aがリム11aから離れる方向に傾斜状態に保持されている。駆動軸14の駆動源であるモータ13はボウル17内のリム11a寄りの領域に配置され、モータ13の回転力はベルト18を介して駆動軸14に伝達される。採尿器16は上面が開口した箱形容器であり、その平面視形状は二等辺三角形をく字状に湾曲させた形状で、二等辺三角形の底辺に相当する部分が採尿アーム15の先端に着脱可能に取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿分析に供する尿をサンプリングするため洋式便器に取り付けて使用される採尿装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本願発明に関連する従来の採尿装置として、例えば、特許文献1に記載されたものがある。図10に示すように、この採尿装置90は、洋式便器91のボウル92の側部に配置され、先端に採尿部93を有する採尿アーム94を、水平方向に配置された駆動軸95を中心にボウル92内で回動させることにより、採尿部93を収納位置と採尿位置との間で移動させている。この場合、採尿アーム94を回動させる駆動軸95の駆動源は洋式便器91の外側に配置されている。
【0003】
【特許文献1】特許第3484865号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の採尿装置の場合、駆動軸95を中心に採尿アーム94が回動するときその先端にある採尿部93は垂直方向の円弧を描きながらボウル92内を昇降移動するため、ボウル92は採尿部93が昇降移動できるだけの深さが必要である。このため、底の浅い形状の洋式便器においては、採尿アーム94先端の採尿部93がボウル92に接触して、移動不能となることがある。即ち、特許文献1記載の採尿装置はボウルが浅底形状の洋式便器には使用できないことがある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、ボウルが浅底形状の洋式便器にも使用可能な採尿装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の採尿装置は、洋式便器のボウル内のリム寄りの領域に配置され鉛直線から傾斜する状態に保持された駆動軸と、前記駆動軸を回転駆動する動力源と、前記駆動軸に基端が連結された採尿アームと、前記採尿アームの先端に設けられた採尿器と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
このような構成とすれば、鉛直線から傾斜する状態に保持された駆動軸を中心に回動する採尿アームおよび採尿器はリムから離れる方向に下り勾配をなす仮想平面に沿って移動することとなるため、駆動軸の傾斜角度を鉛直線に近づけることにより、この仮想平面の勾配を水平に近づけることができる。即ち、ボウルの深さに応じて駆動軸の傾斜角度を設定すれば、採尿アームおよび採尿器の回動領域をボウル面から離れた位置に設定することができる。従って、ボウルが浅底形状の洋式便器にも使用可能となる。
【0008】
ここで、前記動力源を前記ボウル内に配置すれば、動力源と駆動軸との間の動力伝達機構をボウル内に配置することが可能となるため、リムを跨いで配置される部材の薄小化、簡略化を図ることができる。このため、リムと便座との隙間が小さい洋式便器にも容易に取り付けることが可能となる。
【0009】
一方、収納位置にある前記採尿器内の残留物を排出するための排出孔を設ければ、採尿および尿分析が完了した採尿器内に尿や洗浄水が残留するのを防止することができる。なお、排出孔としては、採尿器に対する使用者の尿流率より小さい流量で尿を排出可能な貫通孔を採尿器に開設したり、収納位置にある採尿器の最下部に開口する貫通孔を採尿器に開設したりすることができる。
【0010】
また、前記採尿器に、前記リムの内周形状に合致可能な形状の対向部を設ければ、対向部をリムの内周に最接近もしくは接触させた状態にして採尿器を収納することが可能となるため、ボウル領域への採尿器の突出を抑制することができる。従って、ボウルの開口領域を広く確保することが可能となり、男性が起立姿勢で排尿する際の不都合を軽減することができる。
【0011】
なお、採尿アームの駆動軸の傾斜角度はボウルの深さに応じて設定可能であるため、ボウルが浅いときは前記傾斜角度を小さくし、ボウルが深いときは前記傾斜角度を大きくすることができるが、前記駆動軸を、その上端が前記リムから離れる方向に傾斜させることが望ましい。このような構成とすれば、一般住宅、医療施設あるいは公共施設などに設置されている洋式便器の殆ど全てに対して使用可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、ボウルが浅底形状の洋式便器にも使用可能な採尿装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態について説明する。図1は本発明の実施の形態である採尿装置を洋式便器に取り付けた状態を示す平面図、図2は図1の一部拡大図、図3は図1における矢線A方向から見た図、図4は図1のB−B線における一部省略断面図である。
【0014】
図1,図2に示すように、本実施形態の採尿装置10は、そのケーシング12が、洋式便器11のリム11aを跨ぐ状態で取り付けられている。採尿装置10は、モータ13によって回転駆動される駆動軸14と、駆動軸14に基端が連結された採尿アーム15と、採尿アーム15の先端に設けられた採尿器16と、を備えている。駆動軸14は、洋式便器11のボウル17内のリム11a寄りの領域に配置され、その上端部14aがリム11aから離れる方向に傾斜状態に保持されている。駆動軸14の駆動源であるモータ13はボウル17内のリム11a寄りの領域に配置され、モータ13の回転力はベルト18を介して駆動軸14に伝達される。
【0015】
図2に示すように、採尿器16は上面が開口した箱形容器であり、その平面視形状は二等辺三角形をく字状に湾曲させた形状をなし、その二等辺三角形の底辺に相当する部分が採尿アーム15の先端に着脱可能に取り付けられている。採尿器16の片側面には、リム11aの内周11bの凹曲面形状に沿った凸曲面形状をした対向部16aが設けられている。また、採尿器16の底部16bの採尿アーム15寄りの角隅部には底部16bを貫通する排出孔16cが設けられている。
【0016】
採尿装置10においては、図4に示すように、洋式便器11のリム11aから離れる方向に傾斜した駆動軸14を中心に回動する採尿アーム15および採尿器16は、図3に示すように、収納位置P1から採尿位置P4に至る範囲内で、リム11aから離れながらトラップ11t(図2参照)に接近する方向に下り勾配をなす仮想平面Lに沿って移動することとなる。従って、駆動軸14の傾斜角度14rを鉛直線Vに近づければ、この仮想平面Lの勾配を水平に近づけることができる。即ち、ボウル17の深さに応じて駆動軸14の傾斜角度14rを設定すれば、採尿アーム15および採尿器16の回動領域をボウル面17aから離れた位置に設定することができる。このため、採尿装置10はボウル17が浅底形状をした洋式便器11にも使用可能である。なお、駆動軸14を、その上端部14aが洋式便器11のリム11aから離れる方向に傾斜させる方式に代えて、上端部14aが採尿器16の収納位置P1から離れる方向に傾斜させてもよい。
【0017】
また、採尿装置10においては、動力源であるモータ13をボウル17内に配置しているため、モータ13と駆動軸14との間の動力伝達機構(ベルト18)もボウル17内に配置することができる。従って、リム11aを跨いで配置される部材の薄小化、簡略化を図ることが可能であり、図3に示すように、リム11aと便座19との隙間Sが比較的小さい洋式便器11にも容易に取り付けることができる。
【0018】
一方、図2に示すように、採尿器16の底部16bには排出孔16cが開設されているため、採尿および尿分析が完了した採尿器16内に尿や洗浄水が残留するのを防止することができる。本実施形態の排出孔16cは、採尿器16に対する使用者の尿流率より小さい流量で尿を排出可能な貫通孔である。また、排出孔16cは、収納位置P1にある採尿器16の最下部に位置する部分である、採尿器16の底部16bの採尿アーム15寄りの角隅部に開設されている。このため、採尿器16が収納位置P1にあるときに採尿器16内に残留する尿や洗浄水を残らず排出することができる。
【0019】
また、図2に示すように、採尿器16の片側面には、リム11aの内周11bの凹曲面形状に沿った凸曲面形状をした対向部16aが設けられているため、対向部16aをリム11aの内周11bに最接近もしくは接触させた状態にして採尿器16を収納することができる。従って、採尿器16が収納位置P1にあるとき、ボウル17領域への採尿器16の突出を最小限に抑制することができる。このため、ボウル17の開口領域を広く確保することが可能となり、男性が起立姿勢で排尿する際の不都合を軽減することができる。
【0020】
なお、採尿アーム15の駆動軸14の傾斜角度14rはボウル17の深さに応じて設定可能であるため、ボウル17が浅いときは傾斜角度14rを小さくし、ボウル17が深いときは傾斜角度14rを大きくすることができるが、本実施形態では、図4に示すように傾斜角度14rを鉛直線Vに対して15度に設定している。このような傾斜角度14rとすれば、一般住宅、医療施設あるいは公共施設などに設置されている洋式便器11の殆ど全てに対して使用可能である。
【0021】
次に、図5〜図9に基づいて、本発明のその他の実施の形態について説明する。図5は本発明のその他の実施の形態である採尿装置を示す側面図、図6は図5に示す採尿装置の正面図、図7は図5に示す採尿装置の一部省略平面図、図8(a)は図5に示す採尿装置を構成する採尿器の平面図、図8(b)は前記採尿器の側面図、図8(c)は前記採尿器の底面図、図9(a)は図8に示す採尿器の正面図、図9(b)は前記採尿器の背面図である。なお、図5〜図9において図1〜図4に示す符号と同符号を付している部材は採尿装置10の構成部材と同じ構造、機能を有する部分であるため説明を省略する。
【0022】
図5〜図7に示すように、本実施形態の採尿装置20は、ケーシング22に内蔵されたモータ13によって回転駆動される駆動軸14と、駆動軸14に基端が連結された採尿アーム15と、採尿アーム15の先端に設けられた採尿器26と、を備えている。図8,図9に示すように、採尿器26は上面が開口した箱形容器であり、その平面視形状は二等辺三角形をく字状に湾曲させた形状をなし、その二等辺三角形の底辺に相当する部分に突設された連結部26dを介して採尿アーム15の先端に着脱可能に取り付けられている。採尿器26の片側面には、図2で示したリム11aの内周11bの凹曲面形状に沿った凸曲面形状をした対向部26aが設けられ、対向部26aの対面には対向部26aと同方向に湾曲した曲面部26eが設けられている。また、採尿器26の底部26bの採尿アーム15寄りの角隅部には底部26bを貫通する排出孔26cが設けられている。
【0023】
また、採尿器26の底部26bの基端寄りの領域は採尿アーム15と略平行な平面部26bfであるが、先端寄りの領域は連結部26dに向かって下り勾配の傾斜面部26buとなっている。さらに、採尿器26の上面開口部26gは対向部26aから曲面部26eに向かって下り勾配をなしている。
【0024】
採尿器26をこのような形状とすれば、図5に示すように、採尿器26が採尿位置P4にあるとき上面開口部26gは略水平状態となるため、採尿器26は、使用者が排泄した尿を効率良く採取することができる。また、採尿器26が収納位置P1にあるときは底部26bの平面部26bfが略水平状態となるとともに傾斜面部26buは平面部26bfに向かって下り勾配をなすため、採尿器26内に残留している尿や洗浄水は速やかに平面部26bfに集まり、排出孔26cから排出される。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の採尿装置は、一般家庭や医療施設などのトイレにある洋式便器において広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態である採尿装置を洋式便器に取り付けた状態を示す平面図である。
【図2】図1の一部拡大図である。
【図3】図1における矢線A方向から見た図である。
【図4】図1のB−B線における一部省略断面図である。
【図5】本発明のその他の実施の形態である採尿装置を示す側面図である。
【図6】図5に示す採尿装置の正面図である。
【図7】図5に示す採尿装置の一部省略平面図である。
【図8】(a)は図5に示す採尿装置を構成する採尿器の平面図であり、(b)は前記採尿器の側面図であり、(c)は前記採尿器の底面図である。
【図9】(a)は図8に示す採尿器の正面図であり、(b)は前記採尿器の背面図である。
【図10】従来の採尿装置を示す図である。
【符号の説明】
【0027】
10,20 採尿装置
11 洋式便器
11a リム
11b 内周
11t トラップ
12,22 ケーシング
13 モータ
14 駆動軸
14a 上端部
14r 傾斜角度
15 採尿アーム
16,26 採尿器
16a,26a 対向部
16b,26b 底部
16c,26c 排出孔
17 ボウル
17a ボウル面
18 ベルト
19 便座
26bf 平面部
26bu 傾斜面部
26d 連結部
26e 曲面部
26g 上面開口部
L 仮想平面
P1 収納位置
P4 採尿位置
S 隙間
V 鉛直線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洋式便器のボウル内のリム寄りの領域に配置され鉛直線から傾斜する状態に保持された駆動軸と、前記駆動軸を回転駆動する動力源と、前記駆動軸に基端が連結された採尿アームと、前記採尿アームの先端に設けられた採尿器と、を備えたことを特徴とする採尿装置。
【請求項2】
前記動力源を前記ボウル内に配置したことを特徴とする請求項1記載の採尿装置。
【請求項3】
収納位置にある前記採尿器内の残留物を排出するための排出孔を設けたことを特徴とする請求項1または2記載の採尿装置。
【請求項4】
前記採尿器に、前記リムの内周形状に合致可能な形状の対向部を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の採尿装置。
【請求項5】
前記駆動軸を、その上端が前記リムから離れる方向に傾斜させたことを特徴とする請求項1記載の採尿装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−14675(P2008−14675A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−183756(P2006−183756)
【出願日】平成18年7月3日(2006.7.3)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】