説明

採掘車の使用方法、鉱山における装置、削岩リグおよび採掘車

本発明は、採掘車の使用方法、鉱山における装置、削岩リグおよび採掘車に関する。作業サイクルに従った仕事が作業現場(19)において採掘車(1)内の採掘作業機(2)によって行なわれる。作業現場において、採掘車は外部電源回路網(20)へ接続される。採掘車が作業現場にあると、採掘車(1)のエネルギー貯蔵器(26)は、掘削計画により決められた作業サイクル中に充電される。作業サイクルを行なった後、エネルギー貯蔵器から得られる電気を移動運転に使用する。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
本発明は、作業サイクルに基づいた仕事を作業現場で採掘車において少なくとも1台の採掘作業機によって遂行する方法に関するものである。作業サイクルの後、採掘車は1つの作業現場から次の現場へ運行される。作業現場では、必要な作動電力用の外部電源回路網へ採掘車を接続する。
【0002】
さらに本発明は、鉱山における装置、削岩リグおよび採掘車に関するものである。本発明の分野は本特許出願の独立請求項の前段にさらに詳細に記載されている。
【0003】
鉱山では、削岩リグおよび対応する採掘作業機を装備した採掘車を用いて、あらかじめ計画された作業現場において採掘作業機の作業サイクルに従って作業を行なう。掘削孔の穿孔などの必要な仕事が作業サイクルに従って遂行された後、採掘車を次の現場へ移動させ、新たな作業サイクルを開始する。地下鉱山ではとくに、作業サイクルに従った作業用の駆動エネルギーが鉱山の電源回路網からの電気である採掘車が一般に使用される。移動運転も鉱山の電源回路網からのエネルギーを用いて行なうことができるが、その場合、移動運転は電気ケーブルによって妨げられる。作業現場間の移動運転を燃焼エンジン、とくにジーゼルエンジンを使用して行なう車両も知られている。しかし、燃焼エンジンからの排出ガスおよび騒音が鉱山では問題となる。さまざまなハイブリッド駆動車両もまた燃焼エンジンを有し、これらの鉱山における使用が問題になっている。
【発明の簡単な説明】
【0004】
本発明は、採掘車の新規で改善された使用方法および装置、削岩リグ、ならびに採掘車を提供することを目的とする。
【0005】
本発明の方法は、採掘車内に位置するエネルギー貯蔵器を移動運転中にエネルギー源として用い、作業サイクル中に外部電源回路網から得られる電気で前記エネルギー貯蔵器を充電することを特徴とする。
【0006】
本発明の装置は以下の点を特徴とする。すなわち、採掘車は少なくとも1つのエネルギー貯蔵器を含み、貯蔵器は、移動運転中に必要な電気エネルギーを貯蔵するよう配設され、本システムは、掘削計画に基づいた作業サイクル中に作業現場でエネルギー貯蔵器を充電する充電手段を含むことである。
【0007】
本発明の削岩リグは以下の点を特徴とする。すなわち、削岩リグは少なくとも1つのエネルギー貯蔵器を含み、貯蔵器は、移動運転中に必要な電気エネルギーを貯蔵するよう配設され、削岩リグは、作業現場にて穿孔が行なわれると同時にエネルギー貯蔵器を充電する充電手段を含むことである。
【0008】
本発明の採掘車は以下の点を特徴とする。すなわち、採掘車は少なくとも1つのエネルギー貯蔵器を含み、貯蔵器は、移動運転中に必要な電気エネルギーを貯蔵するよう配設され、採掘車は、作業現場にて採掘作業機により作業サイクルが行なわれると同時にエネルギー貯蔵器を充電する充電手段を含むことである。
【0009】
本発明の概念によれば、採掘車はエネルギー貯蔵器を備え、エネルギー貯蔵器から放電される電気エネルギーを移動運転に利用する。加えて、作業現場において採掘作業機の使用中、すなわち作業サイクル中にエネルギー貯蔵器を充電する。作業サイクルおよび作業現場は、鉱山の掘削計画もしくは請負作業現場等において事前に決めておく。
【0010】
本発明に利点は、騒音および排出ガスを発生する燃焼エンジンを除去することができ、これによって当然、鉱山の作業条件および作業安全性が向上することである。加えて、周囲に多くの空間を必要とする大型燃焼エンジンを除去してもよい場合、採掘車の建造および配置が行ない易くなる。エネルギー貯蔵器を採掘車のキャリッジ上に配置することが容易になる。さらに、頻繁な長時間の作業サイクル中にエネルギー貯蔵器が充電されるので、この時間を利用することができ、採掘車を特別な充電ステーションまで移動させる必要がない。充電は作業サイクル中に行なわれるので、移動運転を始める時にはエネルギー貯蔵器がすでに充電されている。作業現場に配設されている電気接続を利用するので、別個の何らかの充電ステーションを鉱山もしくは請負作業現場の電源回路網へ配設する必要もない。
【0011】
一実施例の概念によれば、エネルギー貯蔵器の充電中、少なくとも1台の採掘作業機およびその駆動に必要なアクチュエータを同時に使用する。したがって、例えば穿孔もしくは岩盤補強を充電と同時に行なうことができる。
【0012】
一実施例の概念によれば、作業現場において、外部電源回路網からの電気エネルギーを採掘車の電気系統へ供給し、この供給された電気エネルギーの一部分を採掘車の電気系統において採掘作業機へ配電し、さらに第2の部分を充電器へ配電する。
【0013】
一実施例の概念によれば、採掘車は、移動運転を行なうための少なくとも1つの電動モータを含む。電動モータは駆動機械の一部であってよい。電動モータは駆動車輪の推進軸に直接作用させてもよく、この場合、電動ハブモータでよい。他の選択肢として、駆動機械は、電気機械式もしくは電気油圧式トランスミッションを含んでよく、駆動力は電動モータによって生成される。
【0014】
一実施例の概念によれば、移動運転はエネルギー貯蔵器のエネルギーだけを用いて行なう。
【0015】
一実施例の概念によれば、1回の作業サイクルの後、先ず短距離移動運転を外部電源回路網から得られたエネルギーを用いて行ない、その後、電源ケーブルを取り外し、長距離移動運転をエネルギー貯蔵器のエネルギーだけを用いて行なう。このとき、採掘車は、まず作業現場から離して移動させて接続ケーブルを取り外してもよい。
【0016】
一実施例の概念によれば、作業サイクル中に、採掘作業機および補助装置に使用する電力を計測し、エネルギー貯蔵器の充電電力を作業サイクルの入力電力に対して調節する。この装置によって、鉱山の電源回路網の負荷を平衡させ、過負荷を回避することができる。作業サイクルに大きな電力を必要なときは、充電電力を減らしてもよく、同様に、作業サイクルの電力必要量が小さいときは、充電電力をもっと上げてもよい。
【0017】
一実施例の概念によれば、通常の使用では、採掘車のエネルギー貯蔵器は、エネルギー貯蔵器の総容量の所定の割合、例えば全充電容量の最大20%を用いて放電のみを行なってもよい。
【0018】
一実施例の概念によれば、採掘車は少なくとも1つの制御装置を備え、制御装置は、電気消費量およびエネルギー貯蔵器の充電をモニタおよび制御するよう配設されている。
【0019】
一実施例の概念によれば、エネルギー貯蔵器に残っている電荷に対する1つ以上の限度を採掘車の操作部に設定する。操作部は、充電限度およびエネルギー貯蔵器に残っている電荷を操作者に表示する表示部を有している。
【0020】
一実施例の概念によれば、特殊な状況で特別な制御命令を使えば、採掘車の使用はプリセットされた充電限度に達した後でも許容される。このような場合、エネルギー貯蔵器から通常より高い充電、例えばエネルギー貯蔵器の最大容量の50%を暫定的に放電することができる。本装置によれば、電気駆動式車両用の一種の「予備タンク」を有することが可能になる。
【0021】
一実施例の概念によれば、採掘車の操作部は搭載コンピュータを含み、これによって操作者は、例えば運転すべき経路および作業現場、作業現場で遂行すべき仕事およびそれらの推定期間、次の移動運転の地形図、長さおよび推定電気消費量などについての情報、ならびにエネルギー貯蔵器のモニタおよび充電に関する情報を得ることができる。
【0022】
一実施例の概念によれば、移動運転中に採掘車の位置エネルギーを電気エネルギーに変換し、この電気でエネルギー貯蔵器を充電する。車両が低い地面へ移動、すなわち下り坂を走ると、位置エネルギーが放出される。下り坂を運転する際、車両は通常、減速する必要があり、生成された減速エネルギーを充電に利用する。
【0023】
一実施例の概念によれば、作業サイクル後の次の移動運転の経路および高低差を考慮する。加えて、採掘車の位置エネルギーから電気エネルギーへ変換されるエネルギーの量を推定し、減速エネルギーから得られた充電用電気を考慮して、エネルギー貯蔵器へ充電されるエネルギーの最大量を減少する。これによって、車両の減速エネルギーをできる限り効率的に利用し、鉱山の電源回路網から得る充電用電気を減少することができる。これによってエネルギーコストが節約される。操作者は、次の移動運転の情報に基づいて充電を手動制御してもよい。他の選択肢として、採掘車の操作部は、次の移動運転の経路を定義し、その経路および下り坂区域を考慮して充電を自動的に調節するように配設してもよい。
【0024】
一実施例の概念によれば、蓄電するするエネルギー貯蔵器は電池、代表的には電気機械的電池であるある。
【0025】
一実施例の概念によれば、蓄電するエネルギー貯蔵器はコンデンサである。
【0026】
一実施例の概念によれば、採掘車は、燃料からエネルギーを生成するそれ用の動力装置を全く有していない。このように採掘車は、運転に必要なエネルギーを生成する燃焼エンジン、あるいは電気エネルギーを生成する発電機・燃焼エンジンの組合せを有していない。これによって採掘車の構造を簡略化している。しかし、注目すべきは、採掘車が運動エネルギーから電気エネルギーを生成する手段を有してもよいことである。
【0027】
一実施例に概念によれば、採掘車は、次の採掘作業機を1台以上、すなわち、削岩機、ボルト打設装置、ショットクリート装置、スケーリング装置、貫入装置、発破孔装薬器、測定装置、または少量装薬掘削に用いられる穿孔、シールおよび推進剤供給装置を含む。削岩機は、切羽掘削装置、もしくは生産孔の掘削に用いられる装置、すなわち扇形状態に掘削孔を掘削する長孔掘削装置であってもよい。採掘作業機は、剥離前の岩盤を処理するのに用いられるアクチュエータであり、これは、与えられた作業サイクルに従って複数の連続する作業を行なうものである。通常は、採掘作業機によって1つの作業現場で複数の同様な作業を行なう。これらの作業は、掘削計画、装薬計画もしくは同様の採掘計画などの掘削計画において決めてよい。採掘作業機は通常、作業サイクル中、工具が移動するブームへ配設されている。他方、採掘作業機は、採掘車においてその作業サイクル中、工具を支持する同様の支持体もしくは支持構体へ配設してもよい。
【0028】
一実施例の概念によれば、採掘車は、わずかに1本の給電ケーブルによって電源回路網へ接続し、電源回路網の電流は、採掘車内の充電手段および電動モータおよび作業サイクル中に必要な各装置へ送る。採掘車は、採掘車の電気系統における給電ケーブルを通して供給される電力を適切な方法で、作業サイクルの実行に必要なアクチュエータおよびエネルギー貯蔵器を充電する充電手段へ送る手段を有している。この装置は、鉱山の通常の基本設備を何ら変更しないで済む。
【0029】
一実施例の概念によれば、採掘車もしくは作業現場は、作業サイクルおよび充電用電力に必要な電気を供給する別個の給電ケーブルを有する。
【0030】
一実施例の概念によれば、採掘車は、少なくとも1つのコンバータを含み、これは、鉱山の電源回路網から、または他のいくつかの外部電気系統から供給される電力を採掘車の充電手段および電気装置に適するように変換するように配設されている。コンバータは例えば、電源回路網の電圧を所望のように変換し、電圧スパイクを濾波し、または交流を直流に変換することができる。したがって、同一の採掘車であっても、さまざまな電気系統を装備した各鉱山に使用するのに適している。
【0031】
一実施例の概念によれば、採掘車は作業現場で静止する。その場合、採掘車は作業現場に配置され、そのキャリッジは、充電中、および作業現場にて採掘作業機により行なわれる作業サイクル中、基本的に静止している。駆動はスイッチが切られ、採掘車が自身で動くことはない。
【0032】
一実施例の概念によれば、作業現場で行なわれる作業サイクルには、採掘車を作業現場における少なくとも2つの位置すなわち場所に配置して掘削計画に従って作業サイクルを実行することが必要である。その位置は、作業現場内で互いに相対的に近在させてもよい。例えば、これらの位置は、トンネル線の同一の軸方向位置、すなわち同じ杭番号のところにあってトンネル線の異なる側に置いてもよい。扇形掘削もしくはロックボルト打設において、1つの作業現場について、互いにトンネル線方向に間隔をおいて2つ以上の位置を配してもよい。したがって、作業現場で連続した各扇形に必要な作業は、掘削計画での必要に応じてその作業現場に配設された同じ給電点を利用して行なわれる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
次に、添付図面において本発明のいくつかの実施例を、さらに詳細に説明する。
【図1】採掘車、この場合は削岩リグを示す模式的側面図である。
【図2】採掘車の経路プロファイル、作業現場の位置、および作業現場間における移動運転を示す模式図である。
【図3】充電関係の手段および充電のモニタリングを示す模式図である。
【図4】充電および使用に関する情報をディスプレイ上に表示することができる採掘車操作部を示す模式図である。
【0034】
各図では、明確にするため本発明のいくつかの実施例を簡略化して示す。図において、同様の部分は同じ参照番号で示す。
【発明のいくつかの実施例の詳細な説明】
【0035】
図1は、1台以上の採掘作業機2を装備した採掘車1の一例である削岩リグを示す。削岩リグは、駆動機械4によって動かすことができるキャリッジ3を有する。駆動機械4は1つ以上の駆動モータ、および駆動力を1つ以上の車輪7へ伝達する1つ以上の動力伝動手段6を有している。駆動力伝達機構は、機械歯車系および機械的動力伝動部材で構成してもよく、または他の選択肢として、駆動力伝達機構は液圧式もしくは電気式でもよい。キャリッジ3には1本以上のブーム8を配設してもよく、ブームには採掘作業機2を装備することができる。図1に示す実施例では、第1のブーム8aは掘削用ブームであり、この最外端部には送りビーム10を有する削岩装置9が配され、このビームに沿って削岩機11を送り装置12により動かすことができる。削岩機11は、工具14に衝撃パルスを生成する衝撃装置13と、工具14をその長手軸を中心に回転させる回転装置15を備えることができる。これらの掘削ブーム8aの何本かは削岩リグに配してもよい。一例として、ボルト打設装置16を有する第2のブーム8bが示され、ボルト打設装置は、事前に穿孔した掘削孔にロックボルトを配設して被掘削岩洞を支えるものである。図1の実施例では、第3のブーム8cには穿孔した掘削孔を測定する測定装置17が装備されている。他の採掘作業機2は例えば、シール材の岩盤への注入に用いられる貫入装置、コンクリート吹付け装置、スケーリング装置、少量装薬掘削にて使用される装置、および爆薬のセットに使用される発破孔装薬装置である。採掘車1は、鉱山18の掘削計画に基づいて、または採掘作業機2が作業サイクルに従って作業を行ないその作業が比較的長い時間をとる作業現場19に対して事前に起案した同様の計画に基づいて、運転される。例えば、削岩機の作業サイクルは、作業現場19における掘削計画にて決められた複数の掘削孔の穿孔を含んでよい。各掘削孔の穿孔は通常、カラー処理、実掘削、延長ロッドおよびドリルビットの交換、ならびに穿孔後の延長ロッド装置の分解などの複数の作業段階からなる。作業現場19で掘削作業サイクルを行なうことは、ときどき完全な交代制勤務をとったとしても数時間かかることがある。同様に、装薬、ボルト打設、測定、コンクリート吹付けおよび貫入も、やはり時間のかかる作業であることが多い。一般に、採掘作業機2の使用は、掘削孔の掘削、もしくは仕上った孔の更なる処理に関係している。したがって、これは未剥離岩盤の処理を意味している。
【0036】
採掘車1の作業現場19における位置も掘削計画で決定してよい。場合によっては、作業現場もやはり、トンネルの壁などの作業現場を囲撓する表面にあらかじめ印を付けておいてもよい。採掘車1は作業現場19に正確に配置または案内することができ、その後、採掘作業機2は作業サイクルに従って、複数の掘削孔を次々に穿孔し、もしくは複数の穿孔した掘削孔にロックボルトを次々に装設するなどの仕事を行なうことができる。移動運転は、掘削計画に従った仕事をその作業現場において遂行した後にのみ行なう。
【0037】
作業現場19は、鉱山の生産トンネル内の場所でよく、これは杭番号として公知のものを使用して掘削計画において定義される。さらに、作業現場はトンネルの切羽、もしくは補強すべき岩洞内に定義された場所でもよく、この中に複数の掘削孔を扇形に穿孔し、ロックボルトをそれらに取り付ける。
【0038】
図1はさらに、鉱山18が、固定的に設置してもよい電源回路網20を有していることを示し、これは変更可能な回路網からなってもよい。採掘車1が作業現場19にある場合、その採掘作業機2、液圧系、何らかの必要な補助系統は、外部電源回路網20から得られる電気エネルギーによって駆動される。本願において外部電源回路網20とは、採掘車1の電気系統に対して外部の電源回路網のことを言う。鉱山もしくは請負作業現場の電源回路網は、掘削計画に従って設計され、その掘削計画に従って作業現場へ給電することができる。したがって外部電源回路網は、採掘車によって作動する全領域を網羅する充電用回線網を得るようには構成されていない。採掘車1は1本以上の接続ケーブル21によって電源回路網20へ接続することができる。接続ケーブル21はリール22に配設してもよく、電源回路網20の電源コネクタへ接続できる適切なコネクタ23を備えていてもよい。または、リール22およびケーブル21は、鉱山18内に配設してもよく、接続ケーブル21は採掘車1へ接続される。採掘車1にはコンバータ25を配備してもよく、これによって電源回路網20からの給電は採掘車1に適合するように変換することができる。この変換は、電圧を適合するように変換したり、交流を直流に変換したり、他の電気技術的変換をしたりすることを含んでよい。コンバータ25の助けにより、採掘車1は、その電源回路網20の特性および品質に関係なく、どの鉱山18における使用にも適応することができる。
【0039】
採掘車1は1つ以上のエネルギー貯蔵器26も有し、これから電流を放電することができ、同様にこれに対して電流を充電することができる。エネルギー貯蔵器26は、電池、コンデンサもしくは同等物でよい。エネルギーを化学的もしくは電気的電荷として蓄電してもよい。エネルギー貯蔵器26は、電流を駆動用装置4へ給電して、採掘車1は作業現場19間を、燃焼エンジンなしに、もしくは外部電源回路網20への接続なしに、移動することができる。加えて、採掘車1は充電器27を備え、これによりエネルギー貯蔵器26は電源回路網20からの電気で充電することができる。
【0040】
採掘車1が比較的時間のかかる作業を作業現場19で作業サイクルに従って行なう場合、作業現場19で費やされるこの時間を利用して、その作業サイクル中に同時にエネルギー貯蔵器26を充電する。作業現場19で作業サイクルが終了すると、エネルギー貯蔵器26も負荷に接続されて次の移動運転に備える。採掘車を別の充電ステーションへ動かす必要はない。
【0041】
図2は、事前に計画された採掘車1の運転経路28およびその作業現場19を高度に簡略化して示す。運転経路28のプロファイルは、上り坂区域および下り坂区域すらも含んでよい。作業現場19間の移動運転29はエネルギー貯蔵器26からの電流を使用して行なう。当然、エネルギー貯蔵器26の容量は、平坦地区域もしくは下り坂区域では上り坂区域よりも長く持続する。作業現場19ごとに行なわれる充電量は、作業現場後の移動運転29の長さと経路28の立面プロファイルを考慮して設定してもよい。採掘車1の操作者はその充電を手動操作してもよく、または操作部32を配設して充電制御の際に次の移動運転29のエネルギー条件を自動的に考慮するようにしてもよい。
【0042】
エネルギー貯蔵器から得られた電気は、駆動用装置にばかりでなく、移動運転中に必要な補助装置の駆動にも使用してよい。補助装置および機能は、操舵に必要な液圧を生成する液圧式ポンプ、電気制御装置の使用、運転室の換気および除霜、ドライビング灯および同様の装置を含んでよい。
【0043】
エネルギー貯蔵器からの電気は特殊環境における作業現場でも使用することができる。電源回路網の給電が何らかの理由で遮断された場合、採掘車のバックアップ系統がエネルギー貯蔵器からのエネルギーによって作動することができる。このようにして、例えばブームを制御状態で降下させることができる。
【0044】
移動運転で使用される駆動モータは永久磁石交流モータでよい。この種のAC駆動モータは、頑丈で効率的であり、さらに周波数コンバータによって正確に制御することもできる。トラクションモータは、DCモータ、または三相同期、非同期もしくは同期リラクタンスACモータにすることができる。
【0045】
図2にて分かるように、経路28のプロファイルは、採掘車1が減速する必要のある長い下り坂区域を含むことがある。減速は駆動用装置4を使って行なうことができるが、その場合、これに属する電動モータを発電機として接続し、発電した電流をエネルギー貯蔵器26の充電に使用することができる。余分な電流があれば、抵抗器へ送って熱に変換してもよい。採掘車1がその経路28上を低い位置へ移動すると、位置エネルギーが放出され、少なくとも部分的にこれをエネルギー貯蔵器26へ回収することができる。この事項は、作業現場19bで行なう充電の量を決める際に考慮すればよい。操作者は、次の移動運転29に多くの下り坂区域31が含まれていると分かれば、作業現場における充電を減らしてもよい。他の選択肢として、操作部32は、経路情報に基づいて自動的に充電量を減らしてもよい。
【0046】
図3は、作業現場19において、電源回路網20が電気エネルギーを採掘車1内の入力手段34へ供給し、次いで、第1に作業サイクルに必要なアクチュエータ35へ、第2に充電器27へ直流電流を供給する装置を示す。この装置は制御装置36を有し、これは、作業サイクルにより生じる電力条件を判定し、それに基づいて充電器27を調節するように構成されている。次に、エネルギー貯蔵器26の充電電力を作業サイクルの入力電力に対して調節する。このようにして、電源回路網20の負荷を平衡させることができる。採掘作業機2により行なわれる作業サイクルは、多くの低電力消費量の期間を有している。充電電力は、これらの期間中に増大させることができる。同様に、例えば全出力の掘削中に、充電電力を削減したり、または充電を完全に遮断してもよい。
【0047】
充電器27は独立した装置でもよく、または採掘車の電気系統へ一体化してもよい。本特許出願において、充電器および充電手段とは、さまざまな電気装置、機器、制御手段、接続部材および他の必要な機器であって電源回路網の電気を適切な形で車両のエネルギー貯蔵器に充電用に供給できるものを言う。
【0048】
図4は採掘車の操作部32を示し、これには表示部37を装備してもよい。表示部37は、採掘車1のシステムの作動、行なうべき作業サイクル、および移動運転に関する情報を操作者に汎用表示することができる。一例として、図4は表示部37が経路28のプロファイル、その経路上の作業現場19、ならびに移動運転の距離、高低差および推定エネルギー消費量を表示可能であることを示している。さらに、エネルギー貯蔵器26の充電状態38をそれ用のウインドウに表示してもよい。これから分かるように、操作部には充電の下限39を設定してもよく、これを下回ることは通常ない。エネルギー貯蔵器26は通常、最大充電量40から設定下限39までの範囲41内で使用される。操作部は、充電の下限39に近づくと警報を発するように構成してもよく、または操作部は、行なうべき移動運転に対してエネルギー貯蔵器26の充電状態が十分であるか否かを事前に計算して表示してもよい。充電の下限39を下回ることは、関連する指令を操作部へ出すことによって暫定的に許可してもよい。電荷の通常より大きい放電を繰り返すと、エネルギー貯蔵器は早期に故障し廃棄することになるかもしれないが、一時的な過放電がエネルギー貯蔵器の可動寿命に大きな影響を及ぼすことはない。したがって、本装置は一種の電気的「貯蔵タンク」として使用することができ、これは図4では充電状態曲線の破線部分42で示されている。
【0049】
図4はさらに、表示部37が穿孔パターン43などの作業サイクル、および充電計画等に関する情報も表示することができることも示している。実際上、操作部32および表示部37は一種の搭載コンピュータを形成してもよい。
【0050】
これまで説明したのは、採掘車もしくは削岩リグを先ず、ある作業現場から次の作業現場へ直接移動させる状況であった。しかし、採掘車を作業現場から中間場所へ移動させ、こうしてから初めて次の作業現場へ移動させる状況がある。中間場所とは、サービスステーション、安全地点もしくは同様な場所でよい。場合によっては、中間場所で採掘車のエネルギー貯蔵器を充電することも可能である。
【0051】
本特許出願で説明した方式は、掘削トンネルの場合にも使用することができる。トンネルは円形に掘削される。その作業現場は、掘削孔を穿孔し装薬するトンネルの切羽である。円形を爆破する前に、削岩装置を切羽から離して安全地点へ移動させる。爆破後、爆破した岩を取り除いた後、削岩リグは安全地点からトンネルの切羽へ戻され、他の円形を掘削する。トンネルを円形で掘削することは、新たな掘削現場すなわち新たな作業現場が前の掘削現場すなわち前の作業現場からその円形の長さに等しい距離にあることを意味する。したがって移動運転は、前の作業現場から安全地点を径由して次の作業現場までとなる。
【0052】
ここで言及すべきことは、本特許出願において鉱山とは、地下鉱山および露天掘り鉱山を称することである。さらに、本方法、採掘車および削岩リグは、さまざまな岩洞を掘削する場合などの請負工事現場で使用することができる。したがって、請負作業現場も一種の鉱山と考えてよい。請負作業現場では、外部電源回路網を可搬プラットホーム上の束線などのように変更可能である。
【0053】
場合によっては、本特許出願に開示する特徴事項は、他の特徴事項に無関係に用いてもよい。他方、本特許出願に開示する各特徴事項は、必要な場合、組み合わせてさまざまな組合せを作ってもよい。
【0054】
図面および関連説明は本発明の概念を説明することのみを意図したものである。本発明は請求項の範囲内で細部を変えてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
採掘車(1)における少なくとも1つの採掘作業機(2)を用いて、掘削計画に決められた作業サイクルに従った仕事を作業現場(19)において該掘削計画に基づいて遂行し、
前記採掘車(1)を前記作業現場(19)において外部電源回路網に接続して必要な作動エネルギーを供給し、
前記作業サイクル後に前記採掘車(1)の移動運転(29)を行なうことを含む採掘車の使用方法において、該方法は、
前記採掘車(1)内に配置されたエネルギー貯蔵器(26)をエネルギー源として前記移動運転(29)中に使用し、
前記作業サイクル中に外部電源回路網(29)から得られる電気で前記エネルギー貯蔵器(26)を充電することを含むこと特徴とする採掘車の使用方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、該方法は、
前記作業サイクルにより生じる電力条件を判定し、前記エネルギー貯蔵器(26)の充電電力を前記作業サイクルの入力電力に対して調節することを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法において、該方法は、
前記エネルギー貯蔵器(26)からの電荷を通常の移動運転(29)中は所定の充電限界(39)までのみ放電し、
別個の承認に応答してのみ、前記エネルギー貯蔵器(26)からの前記充電限界(39)より大きい放電を許容することを特徴とする方法。
【請求項4】
前記請求項のいずれかに記載の方法において、該方法は、
前記移動運転(29)中は前記採掘車(1)の位置エネルギーを電気エネルギーに変換し、これを使用して前記エネルギー貯蔵器(26)を充電し、
次の移動運転(29)の経路情報(28)に基づいて、前記採掘車(1)の位置エネルギーから電気エネルギーに変換されるエネルギー量を推定し、
前記作業サイクル中に前記外部電源回路網(20)から前記エネルギー貯蔵器(26)へ充電されるエネルギーの量を、前記位置エネルギーから生成される充電エネルギーの量に対して削減することを特徴とする方法。
【請求項5】
前記請求項のいずれかに記載の方法において、該方法は、
前記現場(19)にて行なわれる採掘作業機の作業サイクル中は前記採掘車(1)の駆動力伝達を切ることを特徴とする方法。
【請求項6】
少なくとも1つの採掘作業機(2)を備え、鉱山(18)において掘削計画に従って少なくとも1つの作業現場(19)で該採掘作業機(2)により所定の作業サイクルに従って仕事を行なうように配設された少なくとも1台の採掘車(1)と、
前記鉱山の電源回路網と、
前記採掘車(1)を前記電源回路網(20)へ接続して必要な作動電力を給電する少なくとも1組の接続手段を含み、
前記採掘車(1)は前記作業サイクル後に移動運転を行なう駆動機械(4)を含む鉱山における装置において、
前記採掘車(1)は、少なくとも1つのエネルギー貯蔵器(26)を含み、該貯蔵器は前記移動運転(29)に必要な電気エネルギーを貯蔵するように配設され、
システムは、掘削計画に従って作業サイクル中に前記作業現場(19)にて前記エネルギー貯蔵器(26)を充電する充電手段を含むことを特徴とする鉱山における装置。
【請求項7】
請求項6に記載の装置において、
前記システムは充電器(27)を含み、
前記作業現場(19)は、該充電器(27)を前記鉱山(18)の電源回路網(20)へ接続する接続手段(21、23)を備えていることを特徴とする装置。
【請求項8】
請求項7に記載の装置において、
前記充電器(27)に関連して制御装置(36)が配設され、前記作業サイクルにより生じる電力条件を判定し、前記充電器(27)の充電電力を該作業サイクルの入力電力に対して制御することを特徴とする装置。
【請求項9】
請求項6ないし8のいずれかに記載の装置において、
前記採掘車(1)のエネルギー貯蔵器(26)における電荷の移動運転(29)中における放電が制限され、
別の指令を用いることによって大きな放電が可能であることを特徴とする装置。
【請求項10】
請求項6ないし9のいずれかに記載の装置において、
前記採掘車(1)は少なくとも1つの操作部(32)を含み、該操作部は次の移動運転(29)のためのエネルギー消費量を判定するように配設され、
前記操作部(32)は、該判定されたエネルギー条件に基づいて前記充電器(27)を自動的に制御し、または前記エネルギー条件に基づいて操作者に充電指令を発するように配設されていることを特徴とする装置。
【請求項11】
請求項6ないし10のいずれかに記載の装置において、
採掘車(1)は、1本の単体接続ケーブル(21)によってそれ用の電気系統の外部の電源回路網(20)へ接続され、
前記採掘車(1)は少なくとも1つの操作部(32)を含み、該操作部は、前記外部電源回路網から供給される電気を前記採掘車(1)の前記電気系統において、前記掘削作業サイクルに必要なアクチュエータおよび前記エネルギー貯蔵器(26)の充電手段へ送るように配設されていることを特徴とする装置。
【請求項12】
キャリッジ(3)と、
該キャリッジ(3)を動かす駆動機械(4)と、
前記キャリッジ(3)に対して可動の少なくとも1本のブーム(8)と、
少なくとも1本のブーム(8)上に配設された少なくとも1つの削岩機(11)と、
削岩リグを作業現場(19)において削岩中に外部電源回路網(20)へ接続する少なくとも1組の接続手段とを含む削岩リグにおいて、
該削岩リグは少なくとも1つのエネルギー貯蔵器(26)を含み、該貯蔵器は、移動運転(29)に必要な電気エネルギーを貯蔵するよう配設され、
該削岩リグは、前記作業現場における掘削と同時に前記エネルギー貯蔵器(26)を充電する充電手段を含むことを特徴とする削岩リグ。
【請求項13】
請求項12に記載の装置において、
該削岩リグは少なくとも1つの操作部(32)を含み、該操作部は、前記外部電源回路網(20)から供給される電気を該削岩リグの電気系統において、掘削作業サイクルに必要なアクチュエータおよび前記エネルギー貯蔵器の充電手段へ制御するよう配設されていることを特徴とする装置。
【請求項14】
キャリッジ(3)と、
該キャリッジ(3)を動かす駆動機械(4)と、
掘削計画に決められている作業サイクルに従って作業現場(19)において仕事を遂行する少なくとも1つの採掘作業機(2)とを含み、該掘削作業機(2)は、次のもの、すなわち削岩機、ボルト打設装置、コンクリート吹付け装置、スケーリング装置、貫入装置、発破孔装薬装置および計測器のうちの1つであり、さらに
前記作業現場(19)において採掘車(1)を外部電源回路網(20)へ接続する少なくとも1組の接続手段を含む採掘車において、
該採掘車(1)は少なくとも1つのエネルギー貯蔵器(26)を含み、該貯蔵器は、移動運転(29)に必要な電気エネルギーを貯蔵するよう配設され、
該採掘車(1)は、前記作業現場(19)にて前記採掘作業機(2)により行なわれる作業サイクルと同時に前記エネルギー貯蔵器(26)を充電する充電手段を含むことを特徴とする採掘車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−510014(P2012−510014A)
【公表日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−538015(P2011−538015)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【国際出願番号】PCT/FI2009/050954
【国際公開番号】WO2010/061058
【国際公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(506286478)サンドビク マイニング アンド コンストラクション オサケ ユキチュア (70)
【氏名又は名称原語表記】SANDVIK MINING AND CONSTRUCTION OY
【Fターム(参考)】