説明

採液収容装置

【課題】十分な量の生体組成液を短い時間で収容し易く、しかも、構成が簡単な採液収容装置を提供する。
【解決手段】基体部11とこの基体部11から突出した生体への穿刺部13とが一体に設けられ、穿刺部13には採液流路17が設けられると共に、基体部11には採液流路17と連通した収容流路15が設けられ、採液流路17で採液された生体組成液が毛細管現象により収容流路15に移送されて収容されるように構成されていて、収容流路15が、生体組成液を毛細管現象により移送可能な形状を有する曲部又は分岐部を備えて構成され、少なくとも採液流路15から最も離間した最奥部36が大気に開放されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、生体に穿刺して生体組成液を採液すると共に、採液された生体組成液を測定や分析等の処理が実施可能に収容する採液収容装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生体組成液を採液して各種の検査を実施するための装置として、生体から生体組成液を採液する部位と、採液された生体組成液の測定や分析等の処理を行う部位とが一体に設けられた装置が知られている。
【0003】
下記特許文献1には、生体に穿刺して採血する採血針が、装置本体に突出して一体に設けられた採血装置等が提案されている。この採血装置では、例えばSOI板等からなる装置本体の周縁から採血針が突設され、採血針に採血用の空洞部が設けられ、装置本体に採血針の空洞部と連通した流路が蛇行して設けられると共に、流路の端部にポンプ部が設けられて構成されている。ここでは、採血針を生体に穿刺してポンプ部で血液を流路内に吸引し、この流路内で血糖値等の測定が実施される。このような採血装置では、血液を蛇行した流路内に吸引するためにポンプ部等の駆動部が必要であり、装置の構成が複雑になり易かった。
【0004】
下記特許文献2には、切開要素と、分離要素と、これらを連結するコネクタとを有するランスが、基材に突出して一体に設けられた構成を有する分析物測定用の装置が提案されている。この装置では、コネクタの切開要素と分離要素との間のギャップから基材の測定部位まで直線的に充填チャネルが設けられており、切開要素の先端で皮膚を切開し、切開要素と分離要素との間のギャップに体液を採液し、この体液が充填チャネルの毛管作用により測定部位に移送されて測定が実施される。このような装置では、ポンプ部等を用いずに体液を測定部位まで移送することができるが、小型化すると、充填チャネルが短く、十分な体液を収容し難かった。
【0005】
下記特許文献3には、基質と、該基質から二次元的に延在する微細針とが一体に形成された検査細片装置が提案されている。ここでは、微細針に体液が貯留される開口部が設けられ、この開口部と連通する流路が基質に延びると共に、この流路に多数の副流路が設けられ、多数の副流路の上方に連続した空間が設けられて反応領域等が構成されている。この検査細片装置では、微細針を生体に穿刺すると、微細針の開口部に体液が貯留され、この貯留された体液が吸上げまたは毛管作用で流路に収容され、その後、流路の体液が副流路に収容され、更に、副流路に体液が十分に収容されると反応領域等に収容されて、各種の測定が実施される。このような装置では、毛管作用により開口部、流路、多数の副流路を経て反応領域等に十分な体液を円滑に収容することは容易でなく、十分な体液を収容するのに長時間を要し易かった。
【特許文献1】特開2000−185034号公報
【特許文献2】特開2004−298628号公報
【特許文献3】特開2004−113772号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、生体組成液を採液する穿刺部と、採液された生体組成液を測定や分析等の処理を実施する部位とが一体化された装置では、ポンプ等の駆動部を設けずに、毛細管現象を利用して十分な量の生体組成液を収容する場合、生体組成液を移送するための力が弱いため、流路の構成により収容量や収容速度が大きく変化し易く、所望の収容量や収容速度を確保することは容易でなかった。
【0007】
特に、生体への負担を少なくするために、微細な穿刺部を用いる場合には、採液部位や流路が微細になるため、十分な収容量を確保することは困難であった。
【0008】
そこで、この発明は、十分な量の生体組成液を短い時間で収容し易く、しかも、構成が簡単な採液収容装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明は、基体部と該基体部から突出した生体への穿刺部とが一体に設けられ、前記穿刺部には採液流路が設けられると共に前記基体部には前記採液流路と連通した収容流路が設けられ、前記採液流路で採液された生体組成液が毛細管現象により前記収容流路に移送されて収容される採液収容装置であって、前記収容流路は、前記生体組成液を毛細管現象により移送可能な形状を有する曲部又は分岐部を備えて構成され、少なくとも前記採液流路から最も離間した最奥部が大気に開放されていることを特徴とする。
【0010】
このような発明では、生体組成液を毛細管現象により移送可能な形状を有する曲部又は分岐部を備えているので、収容流路の総延長を長く形成し易く、収容流路全体の容積を大きくでき、また、収容流路を長くすることで生体組成液の収容量に対して収容流路の生体組成液と接触する内壁面を広く確保し易いため、毛細管現象により生体組成液を移送するための力を確保し易い。そのため、収容流路に十分な量の生体組成液を短い時間で収容し易くすることが可能である。また、毛細管現象により生体組成液が収容流路に移送されて収容されるので、生体組成液を採液するための駆動手段を設ける必要がなくて構成も簡単にできる。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、収容流路が生体組成液を毛細管現象により移送可能な形状を有する曲部又は分岐部を備えて構成され、少なくとも前記採液流路から最も離間した最奥部が大気に開放されているので、十分な量の生体組成液を短い時間で収容し易く、しかも、構成が簡単な採液収容装置を提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、この発明の実施の形態について図を用いて説明する。
【0013】
図1乃至3は、この発明の実施の形態を示す。
【0014】
図1において、符号10は採液収容装置を示し、板状の基体部11と、この基体部11の周縁の一部から板面に沿う方向に突出した穿刺部13とが一体に設けられている。穿刺部13にはマイクロ流路からなる採液流路17が設けられると共に、基体部11には採液流路17と連通したマイクロ流路からなる収容流路15が設けられている。
【0015】
この採液収容装置10は、穿刺部13を生体に穿刺して、生体組成液を採液流路17に採液し、この生体組成液を毛細管現象により収容流路15に移送して収容することで、生体組成液の測定や分析等の処理を実施可能にする装置である。
【0016】
採液収容装置10の採液対象の生体組成液は、人体、動物等の生体の血液、間質液など、生体内に存在する各種の液状体である。また、この生体組成液に対する処理としては、生体組成液に含まれる各種成分の測定や分析、生体組成液と他の成分との反応など、少量の生体組成液に対して行われる各種の処理等が含まれる。例えば、血中グルコース量の測定、ケトン体、グリコヘモグロビン、脂質、蛋白質、抗原抗体反応等の血液検査、DNA解析、抗体及び蛋白質の同定、化学物質の検査などが挙げられる。
【0017】
まず、採液収容装置10の穿刺部13について説明する。この実施の形態では、穿刺部13は、図2に示すように、基体部11側に基端部21、先端に尖頭形状部23を備えると共に、側周囲に凹凸を有する凹凸表面部25を備えており、基端部21、尖頭形状部23、及び凹凸表面部25の穿刺部13の突出方向に直交する断面形状が全長にわたり、台形形状を呈している。
【0018】
穿刺部13の大きさは、用途に応じて適宜選択可能であるが、例えば、基体部11からの突出方向に直交する断面の最大長が100〜2000μmの範囲で、突出方向の全長が0.15〜2mmの範囲のものとしてもよい。突出方向に直交する断面の最大長が過剰に小さいと、使用時の強度が確保し難いと共に採液流路17が過剰に細くなるため十分な採液量を確保し難くなり、一方、過剰に大きいと、生体への穿刺時に周辺細胞の損傷や痛みが大きくなるなど生体への負担が大きくなる。また、突出方向の全長が過剰に小さいと、生体へ穿刺し難くなり易く、一方、過剰に大きいと、穿刺部13の使用強度を確保し難く、穿刺時に曲がりや折れなどが生じ易くなる。
【0019】
穿刺部13の突出方向に直交する断面形状は、例えば、半円形、円形、半楕円形、楕円形、三角形、正方形、長方形、台形、菱形、五角形以上の多角形、各種異形形状など、適宜選択可能である。成形が容易である等の理由で、図2に示すように、台形形状としている。
【0020】
また、穿刺部13の側周囲の少なくとも一部には、凹凸表面部25が設けられているのが好ましく、特に、凸部27が穿刺部の突出方向に複数繰り返し配置されるのが好適である。その場合、穿刺部13の突出方向に直交する断面積が極大となる極大点26a、26b、26cと、同断面積が極小となる極小点28a、28b、28cとが交互に配置され、先端に近い極大点26aにおける断面積が基体部11側の各極大点26b、26cにおける断面積と同じか、より大きく形成されているのが特に好ましい。このようにすれば、穿刺する際、周辺細胞の損傷や痛みを小さくし易く、生体への負担を軽減することができるからである。凹凸表面部25の形状や位置などは、採液収容装置10の目的や、生体の穿刺部位等に応じて適宜選択することが可能である。
【0021】
なお、生体への負担をより軽減すると共に穿刺部13の使用強度を確保するなどの目的で、極大点26a、26b、26cの断面形状の最大長を40〜600μm、好ましくは80〜300μmとし、極小点28a、28b、28cの断面形状の最大長を20〜300μm、好ましくは40〜150μmとし、極大点26a、26b、26c間の距離を5〜200μm、好ましくは20〜100μmとするのがよい。
【0022】
穿刺部13の採液流路17は、生体に穿刺後に生体内の生体組成液を採液し、毛細管現象により基体部11の収容流路15に移送することが可能に構成されている。この採液流路17としては、穿刺部13の先端側及び/又は側周囲の所定位置に開口して穿刺部13内に形成された中空孔形状、穿刺部13の側周囲に開口して形成された溝形状、スリット形状などを有していてもよい。成形が容易であって、生体組成液に接触する開口を広く確保し易いと共に穿刺部13の使用強度を確保し易いなどの理由で、溝形状とするのが好適である。
【0023】
採液流路17を中空孔形状又は溝形状とする場合、採液流路17の穿刺部13の突出方向に直交する断面形状は、円弧形状、略三角形形状(略V字形状)、略四角形形状(略U字状)等、任意の形状を採用できる。この断面形状は、後述する基体部11の収容流路15と同一形状とすれば、収容流路15との間に段差が形成され難いため好ましい。
【0024】
この実施の形態では、溝形状の2本の採液流路17が、穿刺部13の突出方向に沿って形成されており、採液流路17の穿刺部13の突出方向に直交する断面形状がそれぞれ略四角形形状(略U字状)を呈している。断面形状をこのようにすれば、同一の開口幅で断面積を大きく確保し易いからである。また、各採液流路17が凹凸表面部25に連続して設けられており、複数の凸部27を穿刺部13の突出方向に貫通すると共に、内壁面の底面17aが全長にわたり平坦な面状に形成されている。
【0025】
採液流路17の穿刺部13の突出方向に直交する断面積は、穿刺部13の使用強度を確保できると共に、採液された生体組成液を毛細管現象により十分な移送速度で移送可能な範囲で設定されるのが好ましい。この断面積は、例えば、基体部11の収容流路15に収容される生体組成液の収容量が10〜600nlである場合、採液量を確保する等の理由で、200μm以上とすることができ、後述する基体部11の収容流路15と同一としてもよい。
【0026】
また、溝形状の採液流路17の場合、開口幅を基体部11の収容流路15と同一としてもよいが、例えば、基体部11の収容流路15に収容される生体組成液の収容量が10〜600nlである場合、10〜30μmとすることができる。
【0027】
側周囲に凹凸表面部25が設けられた穿刺部13に溝形状の採液流路17を設ける場合、採液流路17が凹凸表面に連続して開口するのが好適である。これにより、採液流路17の生体組成液と接触する開口面積を広く確保することができ、採液し易くできるからである。
【0028】
なお、このような採液流路17は1本であってもよいが、この実施の形態のように、複数本に分けて設けると、採液量を向上し易くできると共に、生体組成液に接する内壁面の面積を広く確保し易くてより好適である。
【0029】
次に、採液収容装置10の基体部11について説明する。
【0030】
基体部11は、図1に示すように、穿刺部13を生体に穿刺可能に配置できる平板形状を有し、一方の面側に採液流路17と連通した収容流路15が設けられている。操作性を向上するなどの目的で、穿刺部13とは反対側には収容流路15が配置されない保持部が設けられている。
【0031】
基体部11の形状、大きさなどは、穿刺部13を固設できると共に、所望の収容量の収容流路15を形成可能であれば特に制限されるものではない。
【0032】
基体部11の収容流路15は、穿刺部13の採液流路17から移送された生体組成液を、毛細管現象により移送して流路内に収容可能に構成されている。この収容流路15は、軸線に沿う内壁面により区画され、収容流路15の全長にわたり、収容流路15の軸線に対する内壁面の勾配の急激な変化は好適でない。
【0033】
また、この収容流路15は、全長にわたって大気に開放されていてもよいし、最奥部36が大気に開放されている以外は中空孔形状となっていてもよい。収容流路15が大気に開放されていれば、生体組成液が移送収容される際に内部の気体を排気し易くでき、一方、収容流路15が中空孔形状となっていれば、収容流路15内で移送される生体組成液と接触する面を広く確保できるため、毛細管現象による生体組成液を移送する力をより大きくし易くできる。板材等で溝形状の収容流路を被覆して中空孔形状にするには、板材に収容流路15と対称の溝形状を形成しておき、収容流路15と溝形状とを対向させて板材を接合することにより開口を被覆し、収容流路15を中空孔形状にすることも可能である。
【0034】
この実施の形態では、全長にわたり大気に開放された溝形状の収容流路15が設けられている。収容流路15が溝形状であれば、成形が容易であり、収容流路15内の気体を排気し易くできる。特に、複数方向から生体組成液が導入されるように構成された後述の部分収容流路31xでは、開口が大気に開放されていることで、内部の気体を容易に排気できるため、同時に複数方向から生体組成液を導入して移送収容することが可能となり、好適である。
【0035】
収容流路15は、図1に示すように、分岐部33x、33yと、屈曲又は湾曲した曲部35x、35yとを備えることで、基体部11の板面に沿う二次元方向に広がるように延長して構成されている。各分岐部33xには、両分岐部33x間に配設された部分収容流路31xと、採液流路17と連通する部分収容流路31yと、分岐部33xと分岐部33yとの間に直線状に配設された部分収容流路31zと、分岐部33xと分岐部33yとの間に曲部35x、35yを備えて配設された部分収容流路31wとが連通されている。各分岐部33yには、両分岐部33y間に配設された部分収容流路31xと、部分収容流路31zと、部分収容流路31wとが連通されている。この収容流路15では、部分収容流路31wに最奥部36が存在する。
【0036】
このように、分岐部33x、33yを設けることにより、複数の部分収容流路31w、31x、31zに分岐して生体組成液を移送可能にすれば、分岐部33x、33yを設けない場合に比べて、収容流路15内で生体組成液が移送される距離を短くでき、生体組成液の収容時間を短縮できて好ましい。
【0037】
収容流路15の各部分収容流路31w、31x、31y、31zの軸線と直交する断面形状は、円弧形状、略三角形形状(略V字形状)、略四角形形状(略U字状)等、任意の形状を採用できる。ここでは、分岐部33x、33yを介して連通する各部分収容流路31w、31x、31y、31zの軸線と直交する断面の断面形状を、互いに相似形状又は同一形状としておくことが好適である。相似形状であれば、断面形状全体が類似しているため、特に、同一形状であれば、断面形状全体が一致しているため、分岐部33x、33yにおいて各部分収容流路31w、31x、31y、31zの内壁面間に段差を形成し難いからである。ここでは、全ての部分収容流路31w、31x、31y、31zにおいて略四角形形状(略U字状)とされている。同一の開口幅で断面積を多く確保し易いからである。
【0038】
収容流路15の容積は、目的とする測定や分析等の処理に十分な生体組成液の収容量を収容可能であることが必要であり、例えば、収容流路15全体の生体組成液の収容量を10〜600nlとしてもよい。
【0039】
部分収容流路31w、31x、31y、31zの軸線と直交する断面の断面積は、所望量の生体組成液を毛細管現象により十分な移送速度で移送可能な範囲で設定されるのが好ましい。例えば、収容流路15に収容される生体組成液の収容量が10〜600nlである場合、200〜1800μmとするのが好適である。この断面積が過剰に小さいと、部分収容流路31w、31x、31y、31zの全長が長くなり易いため、収容流路15の配置スペースが広くなり易く、また、流動抵抗が増加する等により毛細管現象による移送速度が低下し易くなる。一方、断面積が過剰に大きいと、生体組成液の収容量に対する表面張力が小さくなり易く、毛細管現象による移送速度が低下し易くなる。この断面積は、同一の部分収容流路31w、31x、31y、31zの軸線に沿って連続的に増加、減少することも可能である。
【0040】
溝形状の部分収容流路31w、31x、31y、31zの開口幅は、成形時に均質な内壁面を形成し易いと共に、十分な表面張力が得られるように設定すればよく、例えば、収容流路15の収容量が10〜600nlである場合、10〜30μmとすることができる。
【0041】
なお、穿刺部13の採液流路17と連通する部分収容流路31yの内壁面は、採液流路17の内壁面と段差無く連続していることが好ましい。採液流路17から移送される生体組成液を毛細管現象により収容流路15に移送させ易くできるからである。ここでは、穿刺部13の採液流路17と部分収容流路31yとは軸線と直交する断面形状が同一で、明確な境界が形成されることなく連続している。
【0042】
収容流路15では、内壁面に収容流路15の形状が変化する形状変形部位が存在すると、その形状変化部位の前後で、例えば、内壁面の濡れ易さ、流動抵抗等、生体組成液と内壁面との接触状態が変化し易く、そのために、生体組成液が円滑に移送され難くなり易い。特に、大きな段差や内壁面の不連続部位等のように、急激に形状が変化する形状変化部位が存在する場合には顕著である。
【0043】
ところが、この収容流路15では、曲部35x、35yを有しているため、この部位では少なくとも一部の内壁面が湾曲或いは屈曲して形状変化しており、また、分岐部33x、33yでは、少なくとも3方以上の部分収容流路31w、31x、31y、31z間を連通するため、内壁面の少なくとも一部が湾曲或いは屈曲して形状変化すると共に、他の一部が不連続に配置されている。そのため、この曲部35x、35yや分岐部33x、33yなどでは、毛細管現象による生体組成液の円滑な移送を確保し難く、十分な量の生体組成液を短い時間で収容することが困難になり易い。特に、この部位に段差などが存在すると、生体組成液の移送が不可能となることもある。
【0044】
そこで、この収容流路15では、曲部35x、35y及び分岐部33x、33yを毛細管現象により生体組成液の移送が可能な形状にすることが必要がある。
【0045】
曲部35x、35y及び分岐部33x、33yを毛細管現象により生体組成液の移送が可能な形状にするための構成としては、例えば、収容流路15の内壁面の少なくとも一部が、曲部35x、35y及び分岐部33x、33yにおいて実質的に段差なく連続させることが好ましい。実質的に段差無く連続するとは、突起等の凹凸、頂点を有する屈曲面等、収容流路15内で移送される生体組成液の濡れ易さが不連続に変化する部位や、移送される生体組成液の流動抵抗が不連続に変化する部位が存在せずに連続していることなどが含まれる。
【0046】
例えば、曲部35x、35yでは、内壁面の少なくとも一面、好ましくは全面が、その両側の収容流路15の内壁面と共に滑らかに平面又は曲面で連続すればよい。また、分岐部33x、33yでは、部分収容流路31w、31x、31y、31zの流路内の断面形状が略四角形(略U字形)の場合には、基体部11の板面に沿う内壁面の少なくとも一面、好ましくは基体部11の板面に沿う一対の面が、分岐部33x、33yを介して連通される各部分収容流路31w、31x、31y、31zの内壁面と共に滑らかに平面又は曲面で連続すればよい。また、各部分収容流路31w、31x、31y、31zの流路内の断面形状が略三角形(略V字形)又は弧形状の場合の場合には、基体部11の板面に沿う内壁面とこの内壁面と対向する縁部との一方又は両方が、分岐部33x、33yを介して連通される各部分収容流路31w、31x、31y、31zの内壁面と縁部との一方又は両方と共に滑らかに平面、曲面、直線又は曲線で連続すればよい。
【0047】
この実施の形態では、各部分収容流路31w、31x、31y、31zの断面形状が略四角形(略U字形)であり、曲部35x、35yでは、部分収容流路31wの溝形状の底面が滑らかに連続する平坦な面となっており、溝形状の両側面が滑らかに連続する曲面となっている。また、分岐部33x、33yでは、図3(a)〜(c)に示すように、溝形状の底面33aが部分収容流路31の底面31a間を滑らかに連続する平坦な面となっている。しかも、溝形状の部分収容流路31w、31x、31y、31z及び分岐部33x、33yの全ての底面31a、33aが、収容流路15の全長にわたり、基体部11の板面に沿う二次元方向に、平坦に連続する平面となっており、溝形状の深さが均一となっている。これにより、移送される生体組成液がこの底面31a、33aに沿って移送され易く、収容流路15全体に生体組成液を円滑に移送し易くしている。
【0048】
また、曲部35x、35y及び分岐部33x、33yを毛細管現象により生体組成液の移送が可能な形状にするための構成としては、分岐部33x、33yに隣接する各部分収容流路31w、31x、31y、31zの端部が、各軸線と直交する断面の流路内の断面積の最小値に対する最大値の比が2.5倍以下となるように形成してもよい。この範囲であれば、各部分収容流路31w、31x、31y、31z間で毛細管現象による生体組成液を移送する力や流動抵抗が大きく変化することを防止でき、各部分収容流路31w、31x、31y、31zに生体組成液を同等に移送することが可能である。その場合、分岐部33x、33yを除く収容流路15全体において、各軸線と直交する断面積の最小値に対する最大値の比を2.5倍以下とするのが好適である。特に好ましくは、この実施の形態のように、全ての部分収容流路31w、31x、31y、31zの軸線と直交する断面が全長において、同一形状であることが好適である。これにより、分岐部33x、33yにおいて大きな段差が形成され難くできるからである。
【0049】
このような基体部11には、必要に応じ、収容流路15に接するように、生体組成液の測定や分析等の処理を行うための電極等の各種の部材、酵素、DNA断片等の薬剤などを配置しておくことができる。
【0050】
このような採液収容装置10は、生体適合性材料により作製されている。この生体適合性材料としては、例えば、高分子ポリマ、生体高分子、蛋白質、および生体適合性無機材料が含まれる。
【0051】
高分子ポリマとしては、医療用に使用可能なものが好ましく使用可能であり、例えば、ポリ塩化ビニル,ポリエチレングリコール,パリレン,ポリエチレン,ポリプロピレン,シリコーン,ポリイソプレン,ポリメチルメタクリレート,フッ素樹脂,ポリエーテルイミド,ポリエチレンオキサイド,ポリエチレンテレフタレート,ポリエチレンサクシネート,ポリブチレンテレフタレート,ポリブチレンサクシネート,ポリブチレンサクシネートカーボネート,ポリフェニレンオキサイド,ポリフェニレンサルファイド,ポリホルムアルデヒド,ポリアンヒドリド,ポリアミド(6ナイロン、66ナイロン),ポリブタジエン,ポリ酢酸ビニル,ポリビニルアルコール,ポリビニルピロリドン,ポリエステルアミド,ポリメタクリル酸メチル,ポリアクリロニトリル,ポリサルホン,ポリエーテルサルホン,ABS樹脂,ポリカーボネート,ポリウレタン(ポリエーテルウレタン、ポリエステルウレタン、ポリエーテルウレタン尿素),ポリ塩化ビニリデン,ポリスチレン,ポリアセタール,ポリブタジエン,エチレン酢酸ビニル共重合体,エチレンビニルアルコール共重合体,エチレンプロピレン共重合体,ポリヒドロキシエチルメタクリレート,ポリヒイドロブチレート,ポリオルトエステル,ポリ乳酸,ポリグリコール,ポリカプロラクトン,ポリ乳酸共重合体,ポリグリコール酸・グリコール共重合体,ポリカプロノラクトン共重合体,ポリジオキサノン,パーフルオロエチレン−プロピレン共重合体,シアノアクリレート重合体,ポリブチルシアノアクリレート,ポリアリルエーテルケトン,エポキシ樹脂,ポリエステル樹脂,ポリイミド,フェノール樹脂、アクリル樹脂が挙げられる。
【0052】
生体高分子としては、例えば、セルロース,でんぷん,キチン・キトサン,寒天,カラギーナン,アルギン酸,アガロース,ブルラン,マンナン,カードラン,キサンタンガム,ジェランガム,ペクチン,キシログルカン,グアーガム,リグニン,オリゴ糖,ヒアルロン酸,シゾフィラン,レンチナンなどが含まれ、蛋白質としてはコラーゲン,ゼラチン,ケラチン,フィブロイン,にかわ,セリシン,植物性蛋白質,牛乳蛋白質,ラン蛋白質,合成蛋白質,ヘパリン,核酸が含まれ、糖、あめ、ブドウ糖、麦芽糖、ショ糖およびこれらのポリマーアロイなどが挙げられる。
【0053】
生体適合性無機材料としては、例えば、ガラス等のセラミック,ナノ複合化セラミック,Al/ZrO複合セラミックス,Si系ナノ複合材料,水酸化アパタイト,炭酸カルシウム,カーボン,グラファイト(ナノグラファイバー),カーボンナノチューブ(CNT),フラーレン複合材料,ハイドロキシアパタイト・ポリマー複合材料,コバルトクロム合金,ステンレス、チタン、チタン合金などが挙げられる。
【0054】
これらの生体適合性材料のうち、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、コラーゲン、でんぷん、ヒアルロン酸、アルギン酸、キチン、キトサン、セルロース、ゼラチンなどを含む生分解性ポリマ、およびこれらの化合物などの生分解性材料を用いることが好適である。微生物存在下の環境に配置することで分解されるため、使用後の採液収容装置10の廃棄が容易だからである。
【0055】
特に、ポリ乳酸を用いることが好適である。生体組成液に対する適度な親和性があるため、毛細管現象を利用して生体組成液を採液流路17及び収容流路15により採液し易いと共に、移送収容し易く、しかも、生体組成液中の成分の過剰な吸着を抑制し易いからである。
【0056】
また、このような生体適合性材料により作製された採液収容装置10では、採液収容装置10の表面、少なくとも採液流路17及び収容流路15の内壁面の表面に生体適合性向上処理が施されているのが好適である。
【0057】
この生体適合性向上処理とは、生体組成液に接触する表面を改質したり、表面処理剤を付着させることにより、生体組成液との親和性を調整したり、生体組成液中の成分の吸着を抑制し易くする表面処理である。
【0058】
生体組成液との親和性を調整するための生体適合性向上処理は、例えば、ポリエチレングリコール、水酸化ナトリウム、ポリソルベート、Poloxamer、シリコーン等の薬剤を付着して固定化することで行うことができる。
【0059】
また、生体組成液中の成分の吸着を抑制し易くするための生体適合性向上処理は、例えば、ヘパリン、燐酸、ポリエチレングリコール、水酸化ナトリウム、ポリソルベート、Poloxamer、シリコーン等の薬剤を付着して固定化することで行うことができる。
【0060】
特に限定されるものではないが、生体組成液との親和性は、例えば接触角の大きさにより評価することができ、これにより適宜選択された親和性を確保すれば、毛細管現象により生体組成液を採液流路17及び収容流路15に採液及び収容し易くできる。一方、生体組成液中の成分の吸着は出来るだけ抑制されるのが好ましく、生体組成液との親和性を阻害しない範囲で適切に付着させることが可能である。
【0061】
このような構成を有する採液収容装置10を製造するには、特に限定されるものでないが、例えば、上述のような材料により、成形型を用いて穿刺部13及び基体部11を一体に成形し、その後、エシキマレーザ等を用いて採液流路17及び収容流路15を形成することにより作製したり、採液流路17及び収容流路15の形成部位を有する成形型により、穿刺部13及び基体部11を一体に成形することにより作製し、その後、必要に応じて各種の生体適合性向上処理を施すことにより製造することができる。
【0062】
このような採液収容装置10を用いて、生体組成液の測定や分析等の処理を行うには、次のようにすることができる。
【0063】
まず、図1に示すような採液収容装置10を、基体部11の穿刺部13とは反対側の保持部を利用して図示しない操作用ホルダに保持させ、操作用ホルダを把持して穿刺部13を尖頭形状部23側から生体に穿刺する。これにより、穿刺部13の凹凸表面部25が生体内に配置されて、凹凸表面部25に連続して形成されている2本の採液流路17の凹凸に沿う開口が生体組成液に接触する。すると、採液流路17の開口に接する生体組成液が、生体内の圧力及び毛細管現象により採液流路17に採液される。
【0064】
そして、各採液流路17で生体組成液が採液されつつ基体部11側に毛細管現象により移送され、各採液流路17と連通する2本の部分収容流路31y内に毛細管現象により移送される。このとき、各採液流路17の内壁面と各部分収容流路31の内壁面とがそれぞれ段差無く連続しているため、生体組成液は各採液流路17から各部分収容流路31yに円滑に移送される。そして、移送された生体組成液がそれぞれ分岐部33xに到達する。
【0065】
各分岐部33xでは、図3に示すように、各部分収容流路31yの両側面31bが部分収容流路31x、31wの一方の側面31c、31dと屈曲して連結され、他方の側面31c、31dと不連続状態となっている。また、各部分収容流路31yの両側面31bは部分収容流路31zの両側面31eと不連続状態となっている。しかし、部分収容流路31yの底面31aは各分岐部33xの底面33aを介して他の部分収容流路31w、31x、31zの各底面31aと平坦に連続しているため、分岐部33xに到達した生体組成液は、各分岐部33xの底面33aを経由して、各分岐部33xに連結されている複数の部分収容流路31w、31x、31zの各底面31aに同等に導入される。
【0066】
そして、各部分収容流路31w、31x、31zに導入された生体組成液は、それぞれの内部で更に毛細管現象により移送される。部分収容流路31z内で移送された生体組成液は分岐部33yに到達し、この分岐部33yでも分岐部33xと同様にして、生体組成液が各部分収容流路31x、31wに導入され、部分収容流路31wに存在する最奥部36まで到達する。このとき、分岐部33x間に連結されている部分収容流路31xと、分岐部33xと分岐部33yとの間に連結されている部分収容路31wでは、複数方向となる両端側から生体組成液が導入されるが、部分収容流路31x、31wが大気に開放されているため、部分収容流路31x、31w内の気体が外部へ放出されることができ、両端部側から同時に移送されても、部分収容流路31x、31wの全長に、生体組成液が移送されて収容されることができる。
【0067】
その後、全ての収容流路15に生体組成液が移送されることにより、生体組成液の収容が終了する。
【0068】
そして、この状態で、収容流路15に収容された生体組成液の測定や分析等の処理を実施し、使用を完了する。
【0069】
以上のような採液収容装置10によれば、毛細管現象により生体組成液が収容流路15に移送されて収容されるので、生体組成液を採液するための駆動手段を設ける必要がなく、構成が簡単である。
【0070】
そして、収容流路15が、生体組成液を毛細管現象により移送可能な形状の分岐部33x、33y、曲部35x、35yを備えているので、部分収容流路31w、31x、31y、31zをより多く設けることで収容流路15の総延長を長く形成し易く、収容流路15全体の容積を大きく確保し易い。また同時に、生体組成液の収容量に対して収容流路15の生体組成液と接触する内壁面を広くし易く、毛細管現象により生体組成液を移送するための力を確保し易い。
【0071】
ここでは、収容流路15には、その分岐部33x、33yの内壁面の一部に屈曲部分や不連続部分が形成されているが、収容流路15の内壁面の底面部分が、収容流路15の略全長にわたり実質的に段差なく連続しているので、一部の部分収容流路31yから分岐部33x、33yを介して他の部分収容流路31w、31x、31zへ生体組成液が移送される際、毛細管現象により生体組成液を移送するための力を維持し易く、各部分収容流路31w、31x、31zに生体組成液を毛細管現象により円滑に移送することができる。
【0072】
その結果、収容流路15に十分な量の生体組成液を短い時間で収容し易くすることが可能であり、採液時の生体への負荷を軽減するために穿刺部13が微細に形成されることで、穿刺部13の採液流路の数や大きさが制限されても、生体組成液の十分な測定や分析などの処理を容易に実施することが可能である。
【0073】
なお、上記実施の形態では、分岐部33x、33yとして、各部分収容流路31w、31x、31y、31zの内壁面同士が直接連結された例について説明したが、後述する実施例の図5(b)のように、曲部を用いずに、各部分収容流路31の内壁面同士が分岐部33の内壁面を介して連結されていてもよい。
【0074】
また、上記では、収容流路15として、分岐部33x、33y及び曲部35x、35yを備えた例について説明したが、何ら限定されるものではなく、収容流路15の形状は適宜設計することが可能である。例えば、後述する実施例の図5(c)に示すように、分岐部を殆ど或いは全く用いず曲部を複数有する流路であってもよい。
【0075】
更に、上記では、部分収容流路31yの底面31a及び両側面と採液流路17の底面17a及び両側面との間、並びに、部分収容流路31w、31x、31zの底面31a及び分岐部33x、33yの底面33aが、同一平面となるように連続した例について説明したが、これらが曲面や傾斜面で連続されていてもよい。
【0076】
上記実施の形態では、全ての部分収容流路31w、31x、31y、31zの軸線と直交する断面形状が全て同一形状を呈する例について説明したが、それぞれ或いは一部が異なる形状であってもよい。その場合、部分収容流路31w、31x、31y、31zの深さを同一にして、幅を異ならせることが可能であり、深さが互いに異なる形状とすることも可能である。
【0077】
更に、上記では、2つの採液流路17に連通する収容流路15を1系統に連通して設けたが、特に限定されるものではなく、複数の採液流路17に連通する収容流路15が互いに連通されない別系統に設けられていてもよい。
【0078】
また、上記では、収容流路15が基体部11の一方の面に設けた例について説明したが、基体部11の両面に収容流路15が設けて、収容量を確保し易くしていてもよい。
【0079】
更に、上記では、生体組成液の測定や分析などの処理を行う部位は、収容流路15と接触する位置であればよいが、測定や分析などの処理を行う部位を特定の位置に設定することもできる。その場合、例えば、図4に示すように、基体部11の穿刺部13とは離間した位置に、多数の部分収容流路31が密集して設けられた密集部37を設け、穿刺部13の採液流路17から密集部37との間を連通する部分収容流路31yに接して測定部39を設けてもよい。これにより、採液時に採液流路17で採液された生体組成液が密集部37における毛細管現象により部分収容流路31yで移送させて、生体組成液を測定や分析などの処理を行うことができる。そのため、密集部37を生体組成液を移送するための駆動部として利用することができる。
【0080】
上記実施の形態では、穿刺部13として、凹凸表面部25を有するものについて説明したが、凹凸のない均一な表面形状に形成された穿刺部13であってもよい。
【実施例】
【0081】
以下、実施例について説明する。
実施例1〜7
【0082】
長さ4mm、幅2mm、厚さ100μmの短冊形状の板状体の一方の面に、図5(a)〜(g)に示す平面形状の収容流路15と2本の採液流路17とが設けられた7種類の試験片を、ポリ乳酸を用いて射出成形により製造した。収容流路15及び採液流路17は、軸線に直交する断面形状が幅20μmで、深さ40μmの略四角形(略U字形状)の開放溝形状とした。
【0083】
この試験片の2本の採液流路17に疑似血液を滴下し、この疑似血液が収容流路15に移送されて収容される状態を観察した。
【0084】
なお、各試験片の収容流路15の平面形状は、次の通りとした。
【0085】
実施例1では、図5(a)に示すように、4方の部分収容流路31間を連通する2個の分岐部33により、直線形状の部分収容流路31を直交方向に分岐した分岐型の形状とした。
【0086】
実施例2では、図5(b)に示すように、3方の部分収容流路31間を連通する分岐部33により、直線形状の部分収容流路31を順次扇状に分岐した分岐型の形状とした。ここでは、連通された各部分収容流路31の内壁面同士が分岐部33の内壁面を介して連結されている。
【0087】
実施例3では、図5(c)に示すように、2方の直線形状の部分収容流路31と半円形状の曲部35との間を屈曲形状の曲部35により順次連結し、同心半円状に連続したスパイラル型の形状とした。
【0088】
実施例4では、図5(d)に示すように、4方の直線形状の部分収容流路31又は半円形状の曲部35間を多数の分岐部33により相互に分岐及び連結し、同心円型の形状とした。
【0089】
実施例5では、図5(e)に示すように、3方若しくは4方の直線形状の部分収容流路31又は円弧状の曲部35間を分岐部33により連通し、円弧状の曲部35と円弧の中心側から放射方向に延びる直線形状の部分収容流路31とを相互に分岐及び連結し、円形及び放射型の形状とした。
【0090】
実施例6では、図5(f)に示すように、4方の直線形状の部分収容流路31間を連通する分岐部33により、直線形状の多数の部分収容流路31を直交方向に分岐及び連結し、格子型の形状とした。
【0091】
実施例7では、図5(g)に示すように、4方の直線形状の部分収容流路31間を連通する分岐部33と2方の部分収容流路31間を連通する屈曲部34とにより、多数の直線形状の部分収容流路31を分岐又は連結し、交差型の形状とした。
【0092】
以上の実施例1〜7の試験片において、疑似血液を滴下して観察したところ、何れも収容流路15の全てに疑似血液が移送されて収容されることができた。
比較例1
【0093】
採液流路17の端部に、収容流路15の代わりに、直径500μmで深さ50μmの円形凹部を設けた他は、全て実施例1〜7と同一にして疑似血液が移送されて収容される状態を観察した。この円形凹部最大断面形状は採液流路17に対して42倍程度であった。
【0094】
その結果、疑似血液が採液流路17の端部までしか移送されず、円形凹部には収容されなかった。
比較例2
【0095】
収容流路15の軸線と直交する幅が全長にわたり20μmであり、採液流路17と分岐部33との間の部分収容流路31の深さが40μmであり、分岐部33を介して連通する各部分収容流路の深さが50μmであって、分岐部33で不連続に変化する他は、全て実施例1と同一にして、疑似血液が移送されて収容される状態を観察した。
【0096】
その結果、疑似血液が分岐部33までしか移送されず、その後の部分収容流路31には収容されなかった。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】この発明の実施の形態の採液収容装置を示す斜視図である。
【図2】同実施の形態の採液収容装置の穿刺部を示し、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は正面図である。
【図3】同実施の形態の採液収容装置の収容流路の一部を拡大して示しており(a)は平面図、(b)は(a)のA−A断面図、(c)は(a)のB−B断面図である。
【図4】同実施の形態の採液収容装置の変形例を示す基体部の平面図である。
【図5】(a)〜(g)は、それぞれ実施例1〜7の試験片の結果を示す写真である。
【符号の説明】
【0098】
10 採液収容装置
11 基体部
13 穿刺部
15 収容流路
17 採液流路
25 凹凸表面部
31 部分収容流路
31a 底面
33 分岐部
33a 底面
34 屈曲部
35 湾曲部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体部と該基体部から突出した生体への穿刺部とが一体に設けられ、前記穿刺部には採液流路が設けられると共に前記基体部には前記採液流路と連通した収容流路が設けられ、前記採液流路で採液された生体組成液が毛細管現象により前記収容流路に移送されて収容される採液収容装置であって、
前記収容流路は、前記生体組成液を毛細管現象により移送可能な形状を有する曲部及び/又は分岐部を備えて構成され、少なくとも前記採液流路から最も離間した最奥部が大気に開放されていることを特徴とする採液収容流路。
【請求項2】
前記収容流路の内壁面の少なくとも一部は、前記曲部及び/又は分岐部において実質的に段差なく連続することを特徴とする請求項1に記載の採液収容流路。
【請求項3】
前記収容流路の内壁面の少なくとも一部は、前記収容流路の略全長にわたり実質的に段差なく連続することを特徴とする請求項1又は2に記載の採液収容流路。
【請求項4】
前記収容流路は、全長にわたり大気に開放された溝形状を呈することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一つに記載の採液収容装置。
【請求項5】
前記収容流路は、複数方向から前記生体組成液が導入される部位を有することを特徴とする請求項4に記載の採液収容装置。
【請求項6】
前記収容流路は、前記分岐部を介して連通した複数の部分収容流路を備え、互いに連通された前記各部分収容流路の前記分岐部に隣接する端部は、該収容流路の軸線と直交する断面の該部分収容流路内の断面積の最小値に対する最大値の比が2.5倍以下となるように形成されていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一つに記載の採液収容装置。
【請求項7】
前記分岐部を除く前記収容流路の軸線と直交する断面の該収容流路内の断面積の最小値に対する最大値の比が2.5倍以下であることを特徴とする請求項1乃至6の何れか一つに記載の採液収容装置。
【請求項8】
前記曲部及び前記分岐部を除く前記収容流路の軸線と直交する断面形状が同一であることを特徴とする請求項1乃至7の何れか一つに記載の採液収容装置。
【請求項9】
前記収容流路の軸線と直交する断面の断面形状は、略四角形形状であることを特徴とする請求項1乃至8の何れか一つに記載の採液収容装置。
【請求項10】
前記収容流路の内壁面の少なくとも一面は、前記収容流路の全長にわたり二次元方向に平坦に連続する平面からなることを特徴とする請求項9に記載の採液収容装置。
【請求項11】
前記採液流路は複数本設けられていることを特徴とする請求項1乃至10の何れか一つに記載の採液収容装置。
【請求項12】
前記穿刺部は、側周囲の少なくとも一部に凹凸表面を有し、前記採液流路は、前記凹凸表面に連続して開口したスリット又は溝形状を呈することを特徴とする請求項1乃至11の何れか一つに記載の採液収容装置。
【請求項13】
前記基体部及び前記穿刺部は、生体適合性材料から形成されていることを特徴とする請求項1乃至12の何れか一つに記載の採液収容装置。
【請求項14】
前記生体適合性材料は、生分解性材料であることを特徴とする請求項13に記載の採液収容装置。
【請求項15】
前記生分解性材料は、ポリ乳酸であることを特徴とする請求項14に記載の採液収容装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−61082(P2009−61082A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−231196(P2007−231196)
【出願日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【出願人】(503467089)株式会社ライトニックス (10)
【Fターム(参考)】