説明

採点支援装置

【課題】採点者が人手で1つずつ読みながら採点していた記述式問題の採点を、計算機で半自動的に採点することを可能にする。
【解決手段】採点支援装置1001において、解答データ記憶部1002には、複数の学習者の解答である解答データ1006とその解答データに付けられた採点情報1007とが格納される。解答データ1006には、初め採点情報1007は対応付けられていないが、本発明を利用して採点者が採点を行うにつれて徐々に採点情報1007が対応付けられていく。類似性判定部1003は、解答間の類似性を判定する。採点案生成部1004は、類似性判定部1003を使用して解答データ記憶部1002から採点中の解答データと類似の解答データの採点情報を集めて採点案を生成する。採点情報作成部1005は、生成した採点案の結果を採点者に表示し、採点案の採用の確認や修正を行わせて解答データに対する採点情報を作成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、教育における記述式の問題の答案データの集まりを計算機と人間とが共同で採点する際に使用して好適な採点支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
計算機システムを用いて記述式問題の採点を支援するシステムに関する従来技術として、例えば、特許文献1等に記載された技術が知られている。この従来技術は、添削者の作業効率を向上させる電子フォームを利用した通信添削システムであり、電子的に収集された受講者の解答データと、添削フォーマット、講評記入シート、採点電子フォームとを重ねて表示し、解答用紙の表示・閲覧、記述問題の添削、講評記入等を行うというものである。そして、この従来技術は、記述式問題の採点の際、複数の受講者の解答を並べて表示し、添削し、得点に応じて講評モデル文を挿入するようにしている。
【特許文献1】特開2003−66820号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前述した従来技術による記述式問題に対する採点の支援は、複数の解答を並べて表示すること、及び、点数に応じて講評モデル文を挿入することしかなく、採点の付与については、採点者が個々の記述回答を読み、1つ1つ判断するしかなかったという問題点を有している。
【0004】
本発明の目的は、前述した従来技術の問題点を解決し、採点者が人手で1つずつ読みながら採点していた記述式問題の採点を、計算機で半自動的に採点することを可能にした採点支援装置及び支援方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば前記問題点は、記述式の解答を求める問題に対する答案データの採点を支援する採点支援装置において、計算機システム内に、類似性判定部と、採点案生成部と、採点情報作成部と、解答データ蓄積部とを構築し、前記解答データ蓄積部は、問題に対する解答データの集合を蓄積し、解答データには、採点後の採点情報が順次付与されていき、前記類似性判定部は、採点している問題の解答データと類似する解答データを持つ採点情報の付けられている解答データを解答データ蓄積部から検索し、前記採点案生成部は、前記類似性判定部が検索した類似する解答データを集めて、採点している問題の解答データに対する採点案を生成し、前記採点情報作成部は、解答データに採点情報を付与する際、前記採点案生成部が生成した採点案と採点している問題の解答データとを採点者に表示し、その解答データに対する採点情報の入力を求め、入力された採点情報を採点している解答データに付与することにより達成される。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、採点者が人手により全て解答について採点を行う必要をなくすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、採点支援装置の実施形態を図面により詳細に説明する。
【0008】
図1は採点支援装置の機能構成を示すブロック図である。図1において、1001は採点支援装置、1002は解答データ記憶部、1003は類似性判定部、1004は採点案生成部、1005は採点情報作成部、1006は解答データ、1007は採点情報である。
【0009】
採点支援装置1001は、解答データ記憶部1002、類似性判定部1003、採点案生成部1004、採点情報作成部1005から構成される。解答データ記憶部1002には、複数の学習者の解答である解答データ1006とその解答データに付けられた採点情報1007とが格納される。解答データの収集方法には、色々な方法があり、例えば、採点支援装置1001をネットワークに接続し、そのネットワークに接続した別の装置で学習者たちに記述式問題を配信し、その解答をネットワークを介して集めて解答データ記憶部1002に蓄積する方法でもよいし、また、人手で解答データを集めて、解答データ記憶部1002に入力する方法でもよい。解答データ1006には、初め採点情報1007は対応付けられていないが、本発明の実施形態による採点支援装置を利用し、採点者が採点を行うにつれて徐々に採点情報1007が対応付けられていく。
【0010】
解答データ記憶部1002内の解答データ1006、採点情報1007のデータ構成については後述することとして、まず、解答データ記憶部1002以外の各部について簡単に説明する。類似性判定部1003は、解答間の類似性を判定する。採点案生成部1004は、類似性判定部1003を使用して解答データ記憶部1002から採点中の解答データと類似の解答データの採点情報を集めて採点案を生成する。採点情報作成部1005は、生成した採点案の結果を採点者に表示し、採点案の採用の確認や修正を行わせて解答データに対する採点情報を作成する。
【0011】
図2は採点支援装置1001を実現する計算機システムのハードウェア構成の例を示すブロック図である。図2において、2001は計算機システム、2002はCPU、2003は記憶装置、2004は補助記憶装置、2005は入力装置、2006は出力装置である。
【0012】
採点支援装置1001を実現する計算機システム2001は、PC等としてよく知られているように、各種の処理動作を実施するCPU2002と、半導体メモリによる記憶装置2003と、ハードディスク装置等による補助記憶装置2004と、キーボード、マウス等の入力装置2005と、ディスプレイ、プリンタ、スピーカ等の出力装置2005とが相互に接続されて構成されている。そして、補助記憶装置2004には、図1に示す採点支援装置1001を構成する機能要素である類似性判定部1003、採点案生成部1004、採点情報作成部1005をプログラムにより構成したものと解答データ記憶部1002とが格納される。採点支援装置1001を構成する機能は、各機能を具現するプログラムが、その実行時に記憶装置2003に読み込まれて、CPU2002により実行されることにより実現され、また、入力装置2004、出力装置2005を用いて採点者と対話を行うことにより本発明の実施形態による採点支援装置を実現することができる。また、採点支援装置1001を構成する機能は、直接ハードウェアを使用して実現することもできる。
【0013】
図3は採点支援装置1001を組み込んだ教育システムの構成を示すブロック図である。図3において、3001は学習者用クライアント、3002は教師用クライアントであり、他の符号は図1の場合と同一である。
【0014】
図3に示す教育システムは、図1、図2により説明したような構成の本発明の実施形態による採点支援装置1001と、複数の学習者用クライアント3001と、教師用クライアント3002とがネットワークに接続されて構成されている。そして、採点者である教師は、教師用クライアント3002をを使用して学習者に記述式問題を配信し、学習者は、その解答データ1006を学習者用クライアント3001から採点支援装置1001へ送信して、解答データ記憶部1002に記憶させる。採点支援装置1001は、教師と対話しながら解答データ1006に採点情報を付けていく。
【0015】
次に、本発明の実施形態による採点支援装置1001が対象とする記述式問題やその解答データ、採点情報、学習者に返される採点のイメージについて説明する。
【0016】
図4は記述式問題の例を説明する図である。図4に示している記述式問題4001の例は、問題文として、例えば、
問い1:「あなたのPCの処理速度を上げるために有効であると思うことを箇条書きで列挙せよ。」という問題を掲げた問題部と、解答欄4002とにより構成されており、学習者に問い1の解を箇条書きで列挙するように要求している。
【0017】
図5は学習者が返す解答データ1006の例を説明する図である。図5に示すように、解答データ1006の解答欄5002には、学習者が箇条書きでテキストデータによる解答を書き込んでいる。
【0018】
図6は解答データ1006に付けられた採点情報1007の例を説明する図である。図6に示しているように、採点データ1007は、解答データのカラム6003、評価のカラム6004、コメントのカラム6005を有する表データ6002により構成される。解答データのカラム6003は、各行が図5に示す学習者が解答した解答欄5002内の解答データを箇条書きにした項目である。これに対して、カラム6004とカラム6005とは、それぞれの箇条書きの解答項目に対応付けた採点情報である。評価のカラム6004は、各箇条書きの解答項目に対して、○印で示す「正解」、×印で示す「不正解」の情報を付けており、コメントのカラム6005は、各箇条書きの解答項目に対してコメントの情報を付けている。また、図6に示す採点データには、この採点データ全体に対するコメントを記述するデータ領域6006が設けられており、図6に示す例では、解答データに不足している解を指摘したコメントデータが記述されている。
【0019】
図7は図6により説明した採点情報を解答データに埋め込み、学習者に返す採点付き解答データの表示イメージを説明する図である。図7に示すように、解答データの表示イメージ7001は、問題を掲げた問題部と、採点結果を示す解答欄7002とにより構成される。解答欄7002は、問題に対する個条書きの解答項目と、各各箇条書きの解答項目に付与された正解か不正解すを示す○印、×印と、各解答毎にインデントで示された学習者へのコメントとが記述される。また、それらの箇条書きの解答項目の後に、その学習者が気付かなかった項目(正しい他の解答項目)が指摘されている。
【0020】
図10は採点情報作成部1005が採点情報を作成する際の処理動作を説明するフローチャートであり、次に、これについて説明する。
【0021】
(1)まず、採点情報作成部1005は、未採点の解答データ1006が解答データ記憶部1002に存在する間、ステップ10002以降の一連の処理を繰り返し、それぞれに対して採点情報1007を作成して解答データ記憶部1002に格納していく(ステップ10001)。
【0022】
(2)そして、採点情報作成部1005は、xを未採点の解答データとし、その解答データxについて、採点案生成部1003に依頼して、未採点の解答データxの採点案を生成してもらい、採点案について、
CAND:箇条書き項目の採点案の集合
AUX:追加項目の候補の集合
とする(ステップ10002、10003)。
【0023】
(3)次に、採点情報作成部1005は、CANDとAUXとのデータを表示して、採点者に提示して、その選択、修正、追加入力を求め、最後に、採点者から得られた情報を未採点の解答データxの採点情報1007とし、解答データ記憶部1002に格納する(ステップ10004、10005)。
【0024】
図9は図10のフローにおけるステップ10004の処理で採点者に提示する対話画面の例を示す図である。この画面例9001は、CANDとAUXとのデータを採点者に表示した例である。
【0025】
図9において、CANDを示すデータの部分は、箇条書きの解答項目を示す解答データ9002と、採点済みの採点情報1007から集めた解答データ9002に類似する解答である類似採点済み解答9007、類似採点済み解答9007に対する正解、不正解の評価9003、類似採点済み解答9007に対するコメント9004、類似採点済み解答9007としての採点情報を採用するか否かのチェックボックスを示す採用9005とから構成される。この画面例9001では、採点者がこの「採用」9005のチェックボックスにチェックを入れることにより、その採点情報の採用の可否を、そこに表示されている箇条書きの解答項目である解答データ9002の類似採点済み解答9007に付けることができる。また、カラム9003、9004の行には、全く空白で採点者が自由にテキストを入れることができる行が表示されている。もし、採点者がここに表示されている採点情報ではなく別の採点情報を付けたい場合には、ここに入力することにより、新たな採点情報を作成することができる。また、図9に示す画面例9001には、AUXを示すデータとして他の解答9006も表示される。
【0026】
図11は採点案生成部1004が採点案を生成する際の処理動作を説明するフローチャートであり、次に、これについて説明する。
【0027】
(1)まず、採点案生成部1004は、処理対象の解答データを、xとして、変数CANDのデータを空にする(ステップ11001、11002)。
【0028】
(2)次に、採点案生成部1004は、処理対象解答データxの全ての箇条書き解答項目itemについて、ステップ11004以降の一連の処理を繰り返すことを設定する(ステップ11003)。
【0029】
(3)次に、採点案生成部1004は、解答項目itemに類似し、かつ、採点情報が付けられているものを検索するように、類似性判定部1003に依頼して、検索されたitemに類似し、かつ、採点情報が付けられているものをSIMSとする(ステップ11004)。
【0030】
(4)採点案生成部1004は、次に、itemとSIMSとの対をCANDに追加する。この際、SIMSが空の場合もitemと空との対を作ってCANDに追加する(ステップ11005)。
【0031】
(5)次に、採点案生成部1004は、変数AUXを空にし、解答データ記憶部1002内の正解の採点情報1007が付いた全ての箇条書きの解答項目item2について、以降の処理を繰り返すことを設定する(ステップ11006、11007)。
【0032】
(6)採点案生成部1004は、次に、正解の採点情報1007が付いた全ての箇条書きの解答項目item2内に、処理対象解答データxの箇条書き項目に類似のものはあるかを調べ、この条件が成立するときには、何もせず、条件が成立しないときには、item2は現在採点している解答データに含まれない正解の項目であるからitem2をAUXに追加する(ステップ11008、11009)。
【0033】
(7)最後に、採点案生成部1004は、解答データxの全ての箇条書き項目の採点候補の集合であるCANDと解答データxとでは記述されていない正解の箇条書き候補の集合AUXを返す(ステップ11010)。
【0034】
図12は類似性判定部1003が解答データに対して既に採点済みの採点情報の解答データの類似性を判定する処理を説明するフローチャートであり、次に、これについて説明する。
【0035】
(1)まず、類似性判定部1003は、解答データとしての2つの文章AとBとから予め登録してあるキーワードの集合を抽出する。それらの集合をKAsとKBsとする(ステップ12001)。
【0036】
(2)次に、類似性判定部1003は、集合KAsとKBsとに入っているキーワード間の距離の平均Dを計算する。平均は、例えば、
(Σdistance(a,b)a ∈KAs, b ∈KABs)/(|KAs|・|KBs|)
のような式をもちいて計算することができる。ここで、distance(a,b)は、箇条書き項目aと、箇条書き項目bとの距離である(ステップ12002)。
【0037】
(3)最後に、類似性判定部1003は、距離の平均Dが予め設定された閾値より小さいか否かを調べて判定し、この条件が成立するとき、類似していると答え、条件が成立しないとき、類似していないと答える(ステップ12003〜12005)。
【0038】
図8は箇条書きの解答項目間の類似性判定の結果の関係をリンクで示す図である。図8には、その内部に点線で囲んだような個条書き項目を持つ学習者の解答データ8001〜8004を示しており、解答データ8004内の個条書き項目と、解答データ8001〜8003内の個条書き項目との関係を示している。そして、図8において、解答データ8004の第1番目の箇条書き項目は、解答データ8002の第1番目と第4番目との箇条書き項目、解答データ8003の第1番目の箇条書き項目に類似している。また、解答データ8004の第2番目の箇条書き項目は、解答データ8001の第2番目の個条書き項目、解答データ8002の第3番目の箇条書き項目に類似している。このように、文の類似を調べた場合、一般的には複数個の類似が検出される。従って、図9に示すように、採点情報作成部1005が採点者に採点情報を問い合わせる場合、これらの見つかった複数の類似の箇条書き項目を表示することになる。
【0039】
前述した実施形態は、箇条書き形式に解答を求める記述式問題に対するものとして説明したが、記述式問題の解答形式が決まっていれば、前述と同様に適用することができる。形式が決まっているとは、例えば、箇条書きだけでなく、さらにそれぞれの箇条書き項目が箇条書きになる等の階層的な箇条書き、証明のように推論形式「ならば」で次々につながっていく文言の列などがある。
【0040】
図13は類似性判定部1003が解答データに対して既に採点済みの採点情報の解答データの類似性を判定する他の処理を説明するフローチャートである。図12に示すフローにより説明した類似性判定の処理では、類似性判定部1003が解答データ毎に呼び出されるとして説明したが、類似性判定部1003を解答データ毎に呼び出すのではなく、最初に1度呼び出して、全ての類似する箇条書き項目の間にリンクを張ることにより類似性の判定を行ってもよく、次に、この場合の処理動作を図13に示すフローにより説明する。
【0041】
(1)まず、類似性判定部1003は、全ての解答データの組A,B(A≠B)について、Aの箇条書き項目a,Bの箇条書き項目bの全ての組み合わせに対して以降の処理を繰り返すように設定する(ステップ13001、13002)。
【0042】
(2)その後、類似性判定部1003は、Aの箇条書き項目aとBの箇条書き項目bとがキーワードの距離の平均を求める方法で類似していると判断できるならその間にリンクを張るという処理を繰り返して、全ての類似の箇条書き項目の間にリンクをはる(ステップ13003)。
【0043】
前述した処理により、採点案生成部1004は、類似性判定部1003を呼ぶのではなく、そのリンクがあるか否かだけを調べて、所望の類似した箇条書き項目を検索することができる。
【0044】
図14は採点情報作成部1005が採点情報を作成する際の他の処理動作を説明するフローチャートであり、次に、これについて説明する。ここで説明する処理の例は、図13に示して説明した処理により、最初に類似した箇条書き項目間にリンクを張っておき、解答データに対して採点者が採点情報を確定した時点でそれをリンクに沿って伝播させるというものである。その伝播は、採点情報作成部1005が1つの採点情報を確定させ、書き込んだ後に行われる。
【0045】
(1)採点情報作成部1005は、まず、解答データAの各箇条書き項目itemに関して、以降の処理を繰り返すように設定すると共に、itemとリンクが張られている箇条書き項目item2について、以降の処理を繰り返すように設定する(ステップ14001、14002)。
【0046】
(2)次に、採点情報作成部1005は、item2に採点情報が付いていないものを調べ、この条件が成立するとき、以降の一連の処理を行う(ステップ14003)。
【0047】
(3)そして、採点情報作成部1005は、itemの採点情報(正解、不正解、及びコメント)をitem2に付ける(ステップ14004)。
【0048】
(4)次に、採点情報作成部1005は、ここでの処理を再帰的に適用して、item2にリンクされている未採点の箇条書き項目についても採点情報を伝播させる(ステップ14005)。
【0049】
前述した処理により、リンクでつながっている箇条書き項目の全部に確定した採点情報を伝播させることができ、採点案生成部は、毎回、採点案を生成するのではなく、解答データに採点情報が付けられた時点でリンクが張られているほかの未採点の解答データの採点案情報を作成して、採点案データを採点者に表示し、採点を促すことができる。
【0050】
前述した実施形態は、図12により説明したフローの解答データに対して既に採点済みの採点情報の解答データの類似性を判定する処理で、箇条書きの解答項目間の距離を調べたとき、その距離が小さいものほど類似しているという情報を返し、この情報を使用して図10に示すフローにより説明した採点情報作成部のステップ10004の処理で採点者に提示する図9に示すような対話画面にCANDの要素を表示するとき、類似度の高いものから表示させるようにすることができる。
【0051】
また、前述した実施形態は、類似性を調べるとき、キーワードとして類似していても片方に否定の文言が入っていることで意味が逆になることを防ぐようにすることができる。
【0052】
図15は否定の文言が入っていることを考慮した類似性判定部1003の処理動作を説明するフローチャートであり、次に、これについて説明する。
【0053】
(1)まず、類似性判定部1003は、処理15001で、2つの文章AとBとが類似しているか否かを、前述で説明したキーワード間の距離の平均を求める方法で調べ、類似していないか否かを判定する(ステップ15001、15002)。
【0054】
(2)ステップ15002の条件判定処理による判定で、類似していないと判定された場合、類似していないと答え、類似していると判定された場合、さらに、条件判定処理15004で、AかBの一方だけが否定を含むか否か調べて判定する(ステップ15003、15004)。
【0055】
(3)ステップ15004の条件判定処理による判定で、この条件が成立していたとき、類似していないと答え、そうでない場合、類似していると答える(ステップ15005、15006)。
【0056】
前述した実施形態は、解答データに優先度をつけ、現在採点している箇条書き項目に類似したもののなかで優先度の高いものから順に並べて表示するようにすることができる。これは、採点情報作成部1005が図9に示すような対話画面を作成するとき、優先度を加味し、それが高いものほど上に並ぶように表示させれるようにすればよい。
【0057】
前述した実施形態によれば、最初、採点者が人手で判断し、採点情報を付けていくことになるが、数個の採点を終了すれば、類似した解答データがすでに採点されていることを期待でき、解答データの一部にその採点データが表示されるので、採点者が人手により全てを採点する必要がなくなり、また、数個の採点の後、すでに類似の箇条書き項目に正解、不正解の判定とコメントがついていることが期待されるので、それらを流用することが可能となる。
【0058】
また、解答データの箇条書き項目のそれぞれだけでなく解答データ全体に対する採点情報の案も自動的に生成することができる。また、最初に全ての類似性を判定することができるので、採点者が人手により全てを採点する必要がなくなり、また、採点のときにいちいち類似した解答データを検索せずにすみ、採点者に対して速やかに応対することができる。
【0059】
また、入力された採点情報から即座に類似する解答データの採点案情報を作成することができる。
【0060】
また、最も類似度の高いものから参照することができ、また、キーワードによる類似度の計算が高くても、否定で意味がまったく逆になる場合に誤った採点をしてしまう危険を回避することができる。
【0061】
さらに、利用する解答データの優先度を指定することができるので、例えば、採点者が予め模範解とその採点情報を用意しておいて、採点する解答データと類似したものの中で模範解を優先して使用することができ、採点者の意図に沿った採点を行うことが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、初等中等教育、高等教育、塾、通信講座等の教育、企業における社内教育等に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】採点支援装置の機能構成を示すブロック図。
【図2】採点支援装置を実現する計算機システムのハードウェア構成の例を示すブロック図。
【図3】採点支援装置を組み込んだ教育システムの構成を示すブロック図。
【図4】記述式問題の例を説明する図。
【図5】学習者が返す解答データの例を説明する図。
【図6】解答データに付けられた採点情報の例を説明する図。
【図7】図6により説明した採点情報を解答データに埋め込み、学習者に返す採点付き解答データの表示イメージを説明する図。
【図8】箇条書きの解答項目間の類似性判定の結果の関係をリンクで示す図。
【図9】図10のフローにおけるステップ10004の処理で採点者に提示する対話画面の例を示す図。
【図10】採点情報作成部が採点情報を作成する際の処理動作を説明するフローチャート。
【図11】採点案生成部が採点案を生成する際の処理動作を説明するフローチャート。
【図12】類似性判定部が解答データに対して既に採点済みの採点情報の解答データの類似性を判定する処理を説明するフローチャート。
【図13】類似性判定部が解答データに対して既に採点済みの採点情報の解答データの類似性を判定する他の処理を説明するフローチャート。
【図14】採点情報作成部が採点情報を作成する際の他の処理動作を説明するフローチャート。
【図15】否定の文言が入っていることを考慮した類似性判定部の処理動作を説明するフローチャート。
【符号の説明】
【0064】
1001 採点支援装置
1002 解答データ記憶部
1003 類似性判定部
1004 採点案生成部
1005 採点情報作成部
1006 解答データ
1007 採点情報
2001 計算機システム
2002 CPU
2003 記憶装置
2004 補助記憶装置
2005 入力装置
2006 出力装置
3001 学習者用クライアント
3002 教師用クライアント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記述式の解答を求める問題に対する答案データの採点を支援する採点支援装置において、
計算機システム内に、類似性判定部と、採点案生成部と、採点情報作成部と、解答データ蓄積部とを構築し、
前記解答データ蓄積部は、問題に対する解答データの集合を蓄積し、解答データには、採点後の採点情報が順次付与されていき、
前記類似性判定部は、採点している問題の解答データと類似する解答データを持つ採点情報の付けられている解答データを解答データ蓄積部から検索し、
前記採点案生成部は、前記類似性判定部が検索した類似する解答データを集めて、採点している問題の解答データに対する採点案を生成し、
前記採点情報作成部は、解答データに採点情報を付与する際、前記採点案生成部が生成した採点案と採点している問題の解答データとを採点者に表示し、その解答データに対する採点情報の入力を求め、入力された採点情報を採点している解答データに付与することを特徴とする採点支援装置。
【請求項2】
前記解答データは、文章データを列挙した箇条書き項目からなることを特徴とする請求項1記載の採点支援装置。
【請求項3】
前記採点情報は、解答データである箇条書き項目に対する正解、不正解の判定とコメントデータとからなることを特徴とする請求項2記載の採点支援装置。
【請求項4】
前記類似性判定部は、採点している問題の解答データである個条書き項目と、解答データ蓄積部内の他の解答データの箇条書き項目との類似性の比較を行い、類似する箇条書き項目で採点情報が付けられているものを検索することを特徴とする請求項2記載の採点支援装置。
【請求項5】
前記採点情報作成部が採点者に求める入力は、提示した採点案を採用するか、あるいは、採点案に対する修正であることを特徴とする請求項1記載の採点支援装置。
【請求項6】
前記採点情報は、さらに、その解答データ全体に対するコメントデータを含み、該解答データ全体に対するコメントデータは、前記採点案生成部が前記解答データ蓄積部内の解答データの箇条書き項目において正解と判定されたものの中で、採点している問題の解答データの箇条書き項目のどれとも類似していないものを候補として検索し、その検索結果を採点情報作成部に渡したものであることを特徴とする請求項3記載の採点支援装置。
【請求項7】
前記類似性判定部は、最初に全ての解答データ間の類似性を判定し、類似した解答データ間にリンクを張っておき、採点案生成部は、前記リンクを使用して、採点している問題の解答データに類似した解答データを検索することを特徴とする請求項1記載の採点支援装置。
【請求項8】
前記解答データは、採点データだけでなく採点案データを持ち、前記採点案生成部は、解答データに採点情報が付けられた時点でリンクが張られている他の未採点の解答データの採点案情報を作成することを特徴とする請求項7記載の採点支援装置。
【請求項9】
前記類似性判定部は、採点している問題の解答データである個条書き項目に類似する箇条書き項目で採点情報が付けられているものを複数検索し、前記採点情報作成部は、複数の類似する個条書き項目の中で類似性の高いものから優先して採点者に提示することを特徴とする請求項4記載の採点支援装置。
【請求項10】
前記類似性判定部は、解答データとしての文章データを比較するとき、それぞれの文章からキーワードを抽出し、それらがどれだけ似ているかを判定し、類似していなければ類似していないと判定し、類似している場合でも片方に否定を現すキーワードがある場合は類似していないと判定することを特徴とする請求項4記載の採点支援装置。
【請求項11】
前記採点情報作成部は、類似した解答データに優先度を付与し、類似したものの中の優先度の高いものから得られた採点案を優先して採点者に提示することを特徴とする請求項1記載の採点支援装置。
【請求項12】
記述式の解答を求める問題に対する答案データの採点を支援する採点支援方法において、
計算機システム内に、類似性判定部と、採点案生成部と、採点情報作成部と、解答データ蓄積部とを構築し、
前記解答データ蓄積部は、問題に対する解答データの集合を蓄積し、解答データには、採点後の採点情報が順次付与されていき、
前記類似性判定部は、採点している問題の解答データと類似する解答データを持つ採点情報の付けられている解答データを解答データ蓄積部から検索し、
前記採点案生成部は、前記類似性判定部が検索した類似する解答データを集めて、採点している問題の解答データに対する採点案を生成し、
前記採点情報作成部は、解答データに採点情報を付与する際、前記採点案生成部が生成した採点案と採点している問題の解答データとを採点者に表示し、その解答データに対する採点情報の入力を求め、入力された採点情報を採点している解答データに付与することを特徴とする採点支援方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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