説明

採血ホルダー

【課題】折畳み状態で採血ホルダー全体の大きさを抑えることができ、展開状態でホルダー本体の形状を維持することができる採血ホルダーを提供すること。
【解決手段】採血ホルダー1は、採血容器が挿入される内部空間21を有するホルダー本体2と、ホルダー本体2の基端部に設けられた底板5とを備えている。ホルダー本体2は、底板5に対して固定され、内部空間21を介して互いに対向して配置された固定壁3a、3bと、固定壁3a、3bの間に内部空間21を介して互いに対向して設けられ、固定壁3a、3bに対してそれぞれ変位可能に支持された可動壁4a、4bとを有し、可動壁4a、4bは、それぞれホルダー本体2の中心部側に向かって折畳まれた折畳み状態と、折畳み状態からそれぞれ外側に向かって展開した展開状態とに変位可能であり、展開状態では、可動壁4a、4bと固定壁3a、3bとが筒状の内部空間21を形成するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、採血容器(採血管)に血液を採取する際に使用する採血ホルダー(針ホルダー)に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、各種血液検査に用いられる血液を採血容器(採血管)に採取する際に、採血ホルダーが使用されている。
【0003】
従来の採血ホルダーとしては、採血管を収納するホルダー本体と、ホルダー本体の基端部に設けられ、針体を支持する支持部とを有するものが知られている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
【0004】
特許文献1に記載の採血ホルダーは、ホルダー本体が例えばポリプロピレンのような樹脂材料で構成された筒状をなすものであり、その長手方向に沿って形成された薄肉部(一体蝶番)が複数形成されている。また、これらの薄肉部は、それぞれ、ホルダー本体の周方向に沿って等間隔に配置されている。各薄肉部により、ホルダー本体を容易に変形させることができる。これにより、ホルダー本体は、形状が円筒状をなし、採血管を収容可能な第1の状態と、薄肉部により折り畳まれた第2の状態とに変更することができる。
【0005】
また、特許文献2に記載の採血ホルダーは、ホルダー本体が、互いに対向した一対の壁からなり、それぞれの壁の長手方向に沿って折り目が形成されている。そして、各折り目により、ホルダー本体を容易に変形させることができる。これにより、ホルダー本体は、形状が円筒状をなし、採血管が収容可能な第1の状態と、折り目により折り畳まれた第2の状態とに変更することができる。
【0006】
しかしながら、特許文献1および特許文献2に記載の採血ホルダーでは、第2の状態でその厚さを小さく抑えることができ、第1の状態で減圧採血管が挿入されるが、ホルダー本体に対する把持状態(例えば、把持位置や把持力)によっては、ホルダー本体がつぶれてしまい、円筒状(形状)が崩れてしまう。このため、採血ホルダーに採血管を挿入することができないという問題があった。
【0007】
【特許文献1】特表平2−503281号公報
【特許文献2】特表2003−505185号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、折畳み状態では、展開状態よりも採血ホルダーの厚さを抑えることができ、また、展開状態(使用状態)でホルダー本体の形状を維持することができる採血ホルダーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的は、下記(1)〜(12)の本発明により達成される。
(1) 採血容器が挿入される内部空間を有するホルダー本体と、前記ホルダー本体の基端部に設けられ、鋭利な針先を有する中空針が装着される底部とを備える採血ホルダーであって、
前記ホルダー本体は、
前記底部に対して固定され、前記内部空間を介して互いに対向して配置された一対の固定壁と、
前記一対の固定壁の間に前記内部空間を介して互いに対向して設けられ、前記各固定壁に対してそれぞれ変位可能に支持された少なくとも一対の可動壁とを有し、
前記各可動壁は、それぞれ前記ホルダー本体の中心部側に向かって折畳まれた折畳み状態と、該折畳み状態から前記各可動壁がそれぞれ外側に向かって展開した展開状態とに変位可能であり、該展開状態では、前記各可動壁と前記各固定壁とが筒状の前記内部空間を形成するように構成されていることを特徴とする採血ホルダー。
【0010】
(2) 前記各固定壁には、それぞれ、1つの前記可動壁を回動可能に支持する回動支持部が設けられている上記(1)に記載の採血ホルダー。
【0011】
(3) 前記各固定壁と前記各可動壁とは、それぞれ、外方に向かって湾曲したものであり、
前記ホルダー本体は、前記展開状態で、前記一対の固定壁と前記一対の可動壁とがほぼ円筒状を前記内部空間を形成するように構成されている上記(1)または(2)に記載の採血ホルダー。
【0012】
(4) 前記各可動壁は、それぞれ、前記折畳み状態で前記底部の内側に収納される上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の採血ホルダー。
【0013】
(5) 前記各固定壁は、それぞれ、その外周部に突出して形成されたフランジを有する上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の採血ホルダー。
【0014】
(6) 前記折畳み状態の前記ホルダー本体を前記展開状態に至るまで展開させる展開手段を有する上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の採血ホルダー。
【0015】
(7) 前記展開手段は、前記ホルダー本体の先端部に着脱自在に装着され、その装着された状態で前記ホルダー本体を前記折畳み状態から前記展開状態に展開する蓋体で構成されている上記(6)に記載の採血ホルダー。
【0016】
(8) 前記蓋体は、前記各固定壁に対して前記中空針の軸回りに回動可能に支持されるものであり、前記各可動壁の内周部をその周方向に沿って摺動可能な摺動部を有し、
前記蓋体が回転した際、前記摺動部が前記中空針の軸回りに回動し、これにより、前記折畳み状態の前記各可動壁がそれぞれ押し広げられる上記(7)に記載の採血ホルダー。
【0017】
(9) 前記折畳み状態を維持する折畳み状態維持手段を有する上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の採血ホルダー。
【0018】
(10) 前記折畳み状態維持手段は、前記各固定壁の内周部および/または前記底部に突出形成された突部を有し、該突部に、対応する前記可動壁の外周部が、前記折畳み状態で、当接するよう構成されている上記(9)に記載の採血ホルダー。
【0019】
(11) 前記展開状態を維持する展開状態維持手段を有する上記(1)ないし(10)のいずれかに記載の採血ホルダー。
【0020】
(12) 前記展開状態維持手段は、前記各固定壁の内周部に設けられた凹状部と、前記各可動壁の外周部にそれぞれ設けられ、前記展開状態で、対応する前記凹状部に係合する爪部とで構成されている上記(11)に記載の採血ホルダー。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、折畳み状態で各可動壁がそれぞれホルダー本体の内側に向かって折畳まれることとなるため、展開状態と比較して、採血ホルダーの厚さを小さく抑えることができる。これにより、例えば折畳み状態の採血ホルダーを包装した場合、その包装体の大きさも抑えることができる。また、この採血ホルダーを包装する包装部材自体の大きさも抑えることができる。
【0022】
また、展開状態では、各可動壁がそれぞれ外側へ確実に展開して、その展開した各可動壁と各固定壁とで連続した壁部が構成される。これにより、採血ホルダーの全体形状が確実に筒状となり、さらに、その筒状が維持される。
【0023】
また、展開手段を有する場合には、折畳み状態のホルダー本体を展開状態とする際に、例えば中空針の針先に指先が触れるのが防止され、よって、その展開操作を安全に行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の採血ホルダーを添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の採血ホルダー(折畳み状態)の分解斜視図、図2は、図1に示す採血ホルダーを先端側から見た図(平面図)、図3は、本発明の採血ホルダー(展開状態)の斜視図、図4および図5は、それぞれ、図3に示す採血ホルダーの縦断面図、図6〜図10は、それぞれ、本発明の採血ホルダーが折畳み状態から展開状態まで変化する過程を順に示す図である。なお、以下では、説明の都合上、図1および図3〜図5中の上側を「先端」、下側を「基端」と言う。また、図2および図3では、蓋体が省略されている。
【0025】
各図に示す採血ホルダー1は、その内側に中空針20を装着したもの(採血ホルダー組立体)となっている。中空針20は、長尺な針本体201と、針本体201の基端部に固着されたハブ202と、ゴム鞘(被覆部材)204とを有している(図2参照)。針本体201は、その先端に鋭利は針先203を有している(図5参照)。また、ハブ202は、針本体201を採血ホルダー1に固定する部材であり、針本体201よりも拡径した円柱状をなす。
【0026】
また、中空針20の基端側に設置されるものとしては、特に限定されないが、本実施形態では、各種血液検査に用いられる血液を貯留する血液バッグ(検査用血液バッグ)(図示せず)を一例に挙げる。血液バッグは、チューブまたはコネクタを介して、ハブ202と接続され、針本体201と連通している。
【0027】
なお、中空針20の基端側が先端側と同様に、鋭利な針先が形成されていてもよい。すなわち、中空針20は、両頭針であってもよい。この場合には、各種血液検査に用いる血液は、血液バッグからだけではく、ドナー(供血者や患者)から直接採取することもできる。
【0028】
図1に示す採血ホルダー1は、ホルダー本体2と、ホルダー本体2の基端部に一体的に形成された底板(底部)5と、ホルダー本体2の先端部に着脱自在に装着される蓋体(展開手段)6とを有している。この採血ホルダー1は、ホルダー本体2が折畳まれた折畳み状態(図1に示す状態)と、そのホルダー本体2が折畳み状態から展開した展開状態(図3に示す状態)とに変形することができるように構成されている。
【0029】
未使用の採血ホルダー1は、折畳み状態で、例えばブリスター包装材のような包装部材(図示せず)によって包装されて(収納されて)いる。この採血ホルダー1を使用するときには、包装部材から取り出される。なお、包装部材によって包装されている採血ホルダー1は、中空針20を予め装着したものであってもよい(採血ホルダー組立体)、また、中空針20が未装着のものであってもよい。
【0030】
図3に示すように、採血ホルダー1は、展開状態で、血液バッグから血液を取り出す(採取する)ための採血管(採血容器)30が先端側から挿入される。この採血管30は、有底筒状をなす本体部301と、本体部301の開口を封止する栓体302とで構成されている。本体部301は、横断面形状がほぼ円形をなすものであり、例えば各種樹脂材料(例えばポリプロピレン)や各種ガラス材料のような透明性を有する材料で構成されている。また、栓体302は、円板状をなすものであり、例えばイソプレンゴムのようなゴム材料で構成されている。なお、採血ホルダー1は、展開状態で中空針20が底板5に装着される。
【0031】
次に、採血ホルダー1を構成する各部位(部材)についてそれぞれ説明する。
図1に示すように、底板5は、形状が平板状をなし、その中央部に中空針20を装着する(支持する)固定部51を有している。固定部51は、基端方向に向かって突出した管状をなす部位である。この固定部51に、中空針20のハブ202が例えば嵌合したり、螺合したりすることにより、中空針20が装着される。
【0032】
また、底板5の長手方向(図2中上下方向)に位置する(対向する)2つの縁部52は、それぞれ、外方(外側)に向かって湾曲している。
【0033】
また、各縁部52それぞれを円弧とする円を想定した場合、底板5の幅方向(図2中左右方向)に弓状に欠損した欠損部が2つ形成されていると言うことができる。各欠損部によって、対向する2つの平坦な縁部53が構成されて(形成されて)いる。
【0034】
このような底板5では、両縁部53間の長さが、両縁部52間の長さよりも短くなっている。これにより、折畳み状態で、採血ホルダー1全体の大きさ(幅)を確実に抑えることができる。よって、例えば折畳み状態の採血ホルダー1を包装した際、その包装体の大きさも抑えることができる。また、採血ホルダー1を包装する包装部材自体の大きさも抑えることができる。
【0035】
図1〜図3に示すように、ホルダー本体2は、底板5に対して固定された一対の固定壁3aおよび3bと、固定壁3a、3b間に回動可能(変位可能)に設けられた一対の可動壁4aおよび4bとを有している。採血ホルダー1では、固定壁3aおよび3bが中空針20を介して対向して配置されており、これと同様に可動壁4aおよび4bも中空針20を介して対向して配置されている。このように配置された固定壁3aおよび3bと、可動壁4aおよび4bとで、ホルダー本体2の内側に内部空間21が画成される(形成される)。この内部空間21には、中空針20(針本体201)が位置する(収納される)こととなる。
【0036】
固定壁3a、3bは、それぞれ底板5の各縁部52から立設した板片で構成されており、中空針20(内部空間21)を介して互いに対向している。固定壁3aの構成と固定壁3bの構成とは、ほぼ同一であるため、以下、固定壁3aについて代表的に説明する。
【0037】
固定壁3aは、それに対応する底板5の縁部52と同様に、外方に向かって湾曲している。すなわち、固定壁3aは、それに対応する底板5の縁部52に沿って形成されている。
【0038】
この固定壁3aは、その最大幅が底板5の両縁部53間の長さよりも短く設定されている(図2参照)。これにより、固定壁3aは、底板5の内側に位置した(収納された)ものとなり、よって、固定壁3aの両縁部31がそれぞれ対応する縁部53から突出するのが防止される。これにより、折畳み状態で、採血ホルダー1全体の厚さをより確実に抑えることができ、よって、例えば折畳み状態の採血ホルダー1を包装した際のその包装体の大きさを抑えることができる。
【0039】
固定壁3aの外周部32における先端側には、フランジ321が突出して形成されている。フランジ321は、円弧状をなす小片であり、その長さが底板5の両縁部53間の長さとほぼ同じとなっている。これにより、前述と同様に、折畳み状態で、採血ホルダー1の幅をより確実に抑えることができる。
【0040】
また、展開状態の採血ホルダー1の内部空間21に採血管30を押し込む(挿入する)際等には、固定壁3aおよび3bの各フランジ321に指を掛けて、押し込み操作を行なうことができる。また、各フランジ321が可動壁4a(可動壁4bも同様)に設けられておらず、固定壁3aに設けられていることにより、前記押し込み操作を行なう際に指をフランジ321に安定して掛けることができる。これにより、押し込み操作(挿入操作)を確実に行なうことができる。
【0041】
図2に示すように、固定壁3aの内周部と底板5とにまたがって、突部(折り畳み状態維持手段)34が突出して形成されている。突部34は、その形状が長尺なブロック状をなす部位である。この端面341には、折畳み状態の可動壁4aの外周部42が当接する。これにより、折畳み状態を確実に維持することができる。例えば採血ホルダー1が折畳み状態で包装部材に包装されている場合、その包装部材内で可動壁4aが不本意に回動する、すなわち、不本意に展開状態となるのを確実に防止することができる。このように、突部34は、折畳み状態を維持する折畳み状態維持手段としての機能を有している。
【0042】
また、固定壁3aの一方の縁部31には、可動壁4bを回動可能に支持する回動支持部35が設けられている(例えば、図1〜図3参照)。固定壁3aの他方の縁部31の先端側には、固定壁3aの内周部33から外周部32を貫通する貫通孔(凹状部)36が設けられている(例えば、図1、図4、図5参照)。
【0043】
回動支持部35の構成としては、特に限定されないが、例えば、回転軸と軸受けとで構成されたものであってもよいし、縁部31と一体的に形成された薄肉部で構成されたものであってもよい。このような構成により、可動壁4bを固定壁3aに対して容易かつ確実に回動させることができる。なお、回動支持部35は、図3に示す構成では、前者の構成となっている。
【0044】
貫通孔36は、固定壁3bが回動可能に支持する可動壁4aの後述する爪部41が、展開状態で、係合する部位である(図4および図5参照)。なお、この爪部41が係合する部分は、凹状部により構成されている。この凹状部は、本実施形態では固定壁3aの内周部33から外周部32を貫通する貫通孔36で構成されているが、これに限定されず、例えば、固定壁3aの内周部33から外周部32を貫通するまでには至らない凹部で構成されていてもよい。
【0045】
前述したように、固定壁3aには、回動支持部35を介して、可動壁4bが回動可能に支持されている。また、固定壁3bには、回動支持部35を介して、可動壁4aが回動可能に支持されている。可動壁4aの構成と可動壁4bの構成とは、ほぼ同一であるため、以下、可動壁4aについて代表的に説明する。
【0046】
可動壁4aは、外方に向かって湾曲した板片で構成されている。可動壁4aの外周部42の周方向の長さは、固定壁3aや3bの外周部32の周方向の長さとほぼ同等となっている。また、可動壁4aの高さも固定壁3aや3bの高さとほぼ同等となっている。
【0047】
図1、図2に示すように、折畳み状態では、可動壁4aは、ホルダー本体2の中心部(中空針20)側に向かって折畳まれており、そのほとんどが底板5の内側に位置する(収納される)。これにより、折畳み状態で、可動壁4aがそれに対応する(その直下の)底板5の縁部53から突出するのが可能な限り抑制され、よって、採血ホルダー1全体の幅をより確実に抑えることができる。例えば折畳み状態の採血ホルダー1を包装した際に、その包装体の大きさを抑えることができる。
【0048】
また、可動壁4aは、その形状が外側に向かって湾曲しているため、折畳み状態で内周部43が中空針20に触れるのが防止されている。これにより、中空針20の針本体201の不本意な変形(例えば曲げや折れ)を確実に防止することができる。
【0049】
このような可動壁4aと可動壁4bとは、中空針20に関して点対称に配置されており、折畳み状態から展開状態へ移行する際に同じ方向(反時計回り)に回転するものである。これにより、後述する蓋体6に対する1回の回転操作で、底板5の内側に位置する可動壁4aと可動壁4bとを、一括して外側に向かって展開させる(回転させる)ことができる。
【0050】
なお、可動壁4aと可動壁4bとが展開する際には、各可動壁4a、4bの下端部が底板5に対して摺動してもよいし、各可動壁4a、4bの下端部が底板5から若干離間して、その底板5に対して接触しないで回転してもよい。
【0051】
可動壁4aと可動壁4bとが外側に向かって展開すると、採血ホルダー1(ホルダー本体2)は、展開状態となる。この展開状態では、可動壁4aおよび4bと固定壁3aおよび3bとが連続した壁部を構成する。これにより、ホルダー本体2が全体として筒状をなし、よって、内部空間21内に採血管30を確実に挿入することができる(図3参照)。
【0052】
また、本実施形態では、展開状態では、可動壁4aと固定壁3aと可動壁4bと固定壁3bとが、この順に、中空針20を中心として等角度間隔に配置される。
【0053】
可動壁4a(可動壁4bも同様)の外周部42には、固定壁3aの貫通孔36に対応する位置に、突出形成された爪部41が配置されている。この爪部41は、展開状態で、固定壁3aの貫通孔36に係合する(図4、図5参照)。これにより、展開状態を確実に維持することができる。例えば展開状態の採血ホルダー1に採血管30を挿入しようとしたとき、可動壁4aや4bが不本意に回動する、すなわち、不本意に折畳み状態となるのを確実に防止することができる。このように、採血ホルダー1では、各爪部41とそれに対応する貫通孔36または前述した凹部、すなわち、各爪部41と各凹状部とにより、展開状態を維持する展開状態維持手段が構成されていると言うことができる。
【0054】
なお、ホルダー本体2(底板5を含む)の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル等の各種樹脂材料が挙げられる。このような構成材料を用いることにより、各固定壁3aおよび3bと底板5とを例えば金型で容易に一体的に成形することができる。
【0055】
ホルダー本体2の先端部には、蓋体6が着脱自在に装着される。図6〜図10に示すように、蓋体6は、ホルダー本体2の先端部に装着された装着状態で、折畳み状態のホルダー本体2を展開状態に至るまで展開させる展開手段として機能するものである。
【0056】
図1、図4および図5に示すように、蓋体6は、平板状の天板61と、天板61の上面(先端側の面)に設けられた把持部62と、天板61の下面に設けられた4つの係合片(係合部)63、2つの摺動部(ボス)64および2つの押圧片(押圧部)65とを有している。
【0057】
天板61は、その平面形状が、底板5と対応したような形状、すなわち、底板5とほぼ同様の形状をなしている。この天板61の長手方向に位置する2つの縁部611は、それぞれ、外方に向かって湾曲している。
【0058】
天板61の下面には、4つの係合片63が下方に向かって突出して形成されている。これら4つの係合片63では、2つの係合片63が組となって、各縁部611に沿って配置されている。
【0059】
各係合片63の内側には、それぞれ、天板61の中心部に向かって突出した爪部631が一体的に形成されている。図4、図5に示すように、この爪部631は、装着状態で、固定壁3a(固定壁3bも同様)の外周部32の先端部に、周方向に沿って突出形成されたリブ(凸条)322に係合する。これにより、蓋体6は、固定壁3aおよび3bに、中空針20の軸回りに回動可能に支持される。
【0060】
天板61の下面の中央部付近には、2つの摺動部64が下方に向かって突出して、一体的に形成されている。これらの摺動部64は、ほぼ天板61の対角線上に配置されている(例えば、図6参照)。各摺動部64は、それぞれ、円柱状をなすものであり、その外周部(外周面)が、装着状態で蓋体6を回転させた際に、対応する固定壁(固定壁3aまたは固定壁3b)の内周部33をその周方向に沿って摺動する(図7参照)。
【0061】
また、天板61の下面には、2つの押圧片65が下方に向かって突出して、一体的に形成されている。これらの押圧片65は、天板61の長手方向に沿って、当該天板61の中心部を介して互いに対向している(例えば、図6参照)。また、各押圧片65は、それぞれ、摺動部64よりも外側であって、係合片63よりも内側に配置されている。このように形成された各押圧片65は、それぞれ、装着状態で蓋体6を回転させた際に、対応する固定壁(固定壁3aまたは固定壁3b)の内周部33を外方に向かって押圧する(図8、図9参照)。
【0062】
蓋体6の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、ホルダー本体2と同様の構成材料を用いることができる。
【0063】
次に、装着状態の蓋体6を回転操作することによって、ホルダー本体2が折畳み状態から展開状態に至るまでの過程について、図6〜図10を参照しつつ説明する。なお、可動壁4aの動作と可動壁4bとの動作は、同一であるため、以下、可動壁4aの動作と、その可動壁4aに対応する蓋体6の摺動部64および押圧片65の作用とについて、代表的に説明する。
【0064】
[1] 図6に示すように、ホルダー本体2は、折畳み状態となっている。また、ホルダー本体2の先端部には、蓋体6が装着されている。前述したように、装着状態では、蓋体6の各係合片63が、それぞれ、対応する固定壁3aまたは3bのリブ322に係合している。これにより、蓋体6の不本意な離脱が防止される。
【0065】
また、図6に示す状態では、可動壁4aが固定壁3aの突部34に当接している。これにより、可動壁4aの位置が規制されている。
【0066】
また、蓋体6の摺動部64が可動壁4aの内側に位置して(当接して)おり、押圧片65が可動壁4aの外側に位置している。押圧片65は、固定壁3bの内側に位置して(当接して)いる。
【0067】
[2] 図6に示す状態から、把持部62を把持して蓋体6を所定方向(図7中では時計回り)に所定角度回転させる(図7参照)。これにより、まず、摺動部64が中空針20の軸回りに回動し始める。この摺動部64は、折畳まれた可動壁4aの内周部43に対し摺動しつつ、当該内周部43を外方に押圧する。また、このとき、可動壁4aが固定壁3aの突部34を乗り越え、突部34による規制が解除される。これにより、可動壁4aが回動支持部35を中心として反時計回りに回動し始める。
【0068】
[3] 図7に示す状態から蓋体6を所定方向(図8中では時計回り)にさらに所定角度回転させる(図8参照)。このとき、可動壁4aは、前述したように摺動部64の押圧作用により回動するが、摺動部64には、可動壁4aを外側に押圧することができなくなる押圧限界となる位置があるため、摺動部64がこの位置を越えた場合、摺動部64の作用では回動できない。
【0069】
そこで、可動壁4aに対する摺動部64の押圧作用が及ばなくなるのを補うために、摺動部64に替わって、押圧片65が可動壁4aの内周部43に対し摺動しつつ、当該内周部43を外方に押圧する。押圧片65は、摺動部64が押圧限界を超えると、固定壁3bの内周部33から可動壁4aの内周部43に移行する。このとき、押圧片65が固定壁3bの内周部33と外方へ押圧し始める(図8参照)。
【0070】
[4] 図8に示す状態から蓋体6を所定方向(図9中では時計回り)にさらに所定角度回転させる(図9参照)。これにより、可動壁4aは、前述したように押圧片65の押圧作用によりさらに回動し、遂には、可動壁4aが展開状態に至るまで押し広げられ、よって、ホルダー本体2が展開状態となる。また、このとき、可動壁4aの爪部41が固定壁3aの貫通孔36に係合するため、展開状態が確実に維持される。
【0071】
[5] 図9に示す状態から蓋体6を所定方向(図10中では時計回り)にさらに所定角度回転させる(図10参照)。これにより、蓋体6の各係合片63がそれぞれ対応する固定壁(固定壁3aまたは3b)のリブ322から離脱する。よって、ホルダー本体2に対する蓋体6の係合が解除され、当該蓋体6を先端方向に(図10中紙面手前側)に取り外すことができる。
【0072】
このような構成の採血ホルダー1では、折畳み状態のホルダー本体2を展開状態とする際に、蓋体6を介して、その展開操作を行なうことができる。これにより、ホルダー本体2を展開する際に、例えば中空針20に指先が触れるのが防止され、その操作を安全に行なうことができる。また、可動壁4a、4bを一括して展開させることができるため、ホルダー本体2が迅速に展開する。
【0073】
また、蓋体6を取り外した状態のホルダー本体2(内部空間21内)に、採血管30を挿入することができる。採血管30を挿入すると、針本体201が栓体302を刺通する。これにより、採血管30と前記血液バッグとが針本体201を介して互いに連通し、この血液バッグから採血管30に血液を採り込むことができる。
【0074】
また、採血ホルダー1の使用後には、当該採血ホルダー1が破棄される。このとき、採血ホルダー1を再度折畳み状態として破棄してもよい。
【0075】
以上、本発明の採血ホルダーを図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、採血ホルダーを構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0076】
また、ホルダー本体は、本実施形態では一対の可動壁を有するものであるが、これに限定されず、例えば、複数対の可動壁を有するものであってもよい。
【0077】
また、針体の基端側に設置されるものとしては、本実施形態では、血液バッグを一例に挙げたが、これ限定されず、例えば、針ハブに支持され、針体本体と連通する針管であてもよい。この場合、針体は、両頭針となる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の採血ホルダー(折畳み状態)の分解斜視図である。
【図2】図1に示す採血ホルダーを先端側から見た図(平面図)である。
【図3】本発明の採血ホルダー(展開状態)の斜視図である。
【図4】図3に示す採血ホルダーの縦断面図である。
【図5】図3に示す採血ホルダーの縦断面図である。
【図6】本発明の採血ホルダーが折畳み状態から展開状態まで変化する過程を順に示す図である。
【図7】本発明の採血ホルダーが折畳み状態から展開状態まで変化する過程を順に示す図である。
【図8】本発明の採血ホルダーが折畳み状態から展開状態まで変化する過程を順に示す図である。
【図9】本発明の採血ホルダーが折畳み状態から展開状態まで変化する過程を順に示す図である。
【図10】本発明の採血ホルダーが折畳み状態から展開状態まで変化する過程を順に示す図である。
【符号の説明】
【0079】
1 採血ホルダー
2 ホルダー本体
21 内部空間
3a、3b 固定壁
31 縁部
32 外周部
321 フランジ
322 リブ(凸条)
33 内周部
34 突部
341 端面
35 回動支持部
36 貫通孔(凹状部)
4a、4b 可動壁
41 爪部
42 外周部
43 内周部
5 底板
51 固定部
52、53 縁部
6 蓋体
61 天板
611 縁部
62 把持部
63 係合片(係合部)
631 爪部
64 摺動部(ボス)
65 押圧片(押圧部)
20 中空針
201 針本体
202 ハブ
203 針先
204 ゴム鞘(被覆部材)
30 採血管(採血容器)
301 本体部
302 栓体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
採血容器が挿入される内部空間を有するホルダー本体と、前記ホルダー本体の基端部に設けられ、鋭利な針先を有する中空針が装着される底部とを備える採血ホルダーであって、
前記ホルダー本体は、
前記底部に対して固定され、前記内部空間を介して互いに対向して配置された一対の固定壁と、
前記一対の固定壁の間に前記内部空間を介して互いに対向して設けられ、前記各固定壁に対してそれぞれ変位可能に支持された少なくとも一対の可動壁とを有し、
前記各可動壁は、それぞれ前記ホルダー本体の中心部側に向かって折畳まれた折畳み状態と、該折畳み状態から前記各可動壁がそれぞれ外側に向かって展開した展開状態とに変位可能であり、該展開状態では、前記各可動壁と前記各固定壁とが筒状の前記内部空間を形成するように構成されていることを特徴とする採血ホルダー。
【請求項2】
前記各固定壁には、それぞれ、1つの前記可動壁を回動可能に支持する回動支持部が設けられている請求項1に記載の採血ホルダー。
【請求項3】
前記各固定壁と前記各可動壁とは、それぞれ、外方に向かって湾曲したものであり、
前記ホルダー本体は、前記展開状態で、前記一対の固定壁と前記一対の可動壁とがほぼ円筒状を前記内部空間を形成するように構成されている請求項1または2に記載の採血ホルダー。
【請求項4】
前記各可動壁は、それぞれ、前記折畳み状態で前記底部の内側に収納される請求項1ないし3のいずれかに記載の採血ホルダー。
【請求項5】
前記各固定壁は、それぞれ、その外周部に突出して形成されたフランジを有する請求項1ないし4のいずれかに記載の採血ホルダー。
【請求項6】
前記折畳み状態の前記ホルダー本体を前記展開状態に至るまで展開させる展開手段を有する請求項1ないし5のいずれかに記載の採血ホルダー。
【請求項7】
前記展開手段は、前記ホルダー本体の先端部に着脱自在に装着され、その装着された状態で前記ホルダー本体を前記折畳み状態から前記展開状態に展開する蓋体で構成されている請求項6に記載の採血ホルダー。
【請求項8】
前記蓋体は、前記各固定壁に対して前記中空針の軸回りに回動可能に支持されるものであり、前記各可動壁の内周部をその周方向に沿って摺動可能な摺動部を有し、
前記蓋体が回転した際、前記摺動部が前記中空針の軸回りに回動し、これにより、前記折畳み状態の前記各可動壁がそれぞれ押し広げられる請求項7に記載の採血ホルダー。
【請求項9】
前記折畳み状態を維持する折畳み状態維持手段を有する請求項1ないし8のいずれかに記載の採血ホルダー。
【請求項10】
前記折畳み状態維持手段は、前記各固定壁の内周部および/または前記底部に突出形成された突部を有し、該突部に、対応する前記可動壁の外周部が、前記折畳み状態で、当接するよう構成されている請求項9に記載の採血ホルダー。
【請求項11】
前記展開状態を維持する展開状態維持手段を有する請求項1ないし10のいずれかに記載の採血ホルダー。
【請求項12】
前記展開状態維持手段は、前記各固定壁の内周部に設けられた凹状部と、前記各可動壁の外周部にそれぞれ設けられ、前記展開状態で、対応する前記凹状部に係合する爪部とで構成されている請求項11に記載の採血ホルダー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−237781(P2008−237781A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−86100(P2007−86100)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】