説明

採血ホルダー

【課題】折畳み状態で採血ホルダー全体の大きさを抑えることができ、また、展開状態(使用状態)でホルダー本体の形状を維持することができる採血ホルダーを提供すること。
【解決手段】採血ホルダー1は、採血容器が挿入される内部空間21を有するホルダー本体2と、ホルダー本体2の基端部に設けられ、鋭利な針先を有する中空針が装着される底板5とを備えるものである。ホルダー本体2は、底板5に対して固定され、中空針の外周側の一部を囲むように配置された固定壁3と、固定壁3に対して変位可能に支持された1つの可動壁4とを有し、可動壁4は、ホルダー本体2の中心部側に向かって没入した没入状態と、該没入状態から外側に向かって展開した展開状態とに変位可能であり、該展開状態では、可動壁4と固定壁3とが筒状の内部空間21を形成するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、採血容器(採血管)に血液を採取する際に使用する採血ホルダー(針ホルダー)に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、各種血液検査に用いられる血液を採血管等の採血容器に採取する際には、採血ホルダーが使用されている。
【0003】
従来の採血ホルダーとしては、採血管を収納するホルダー本体と、ホルダー本体の基端部に設けられ、針体を支持する支持部とを有するものが知られている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
【0004】
特許文献1に記載の採血ホルダーは、ホルダー本体が例えばポリプロピレンのような樹脂材料で構成された筒状をなすものであり、その長手方向に沿って形成された薄肉部(一体蝶番)が複数形成されている。また、これらの薄肉部は、それぞれ、ホルダー本体の周方向に沿って等間隔に配置されている。各薄肉部により、ホルダー本体を容易に変形させることができる。これにより、ホルダー本体は、形状が円筒状をなし、採血管を収容可能な第1の状態と、薄肉部により折り畳まれた第2の状態とに変更することができる。
【0005】
また、特許文献2に記載の採血ホルダーは、ホルダー本体が互いに連結された4枚の壁部によって構成されており、隣接する壁部同士が連結部(境界部)を介して互いに回動可能となっている。これにより、ホルダー本体は、形状が角筒状をなし、採血管を収容可能な第1の状態と、第1の状態から各壁部が回動して折り畳まれた第2の状態とに変更することができる。
【0006】
しかしながら、特許文献1および特許文献2に記載の採血ホルダーでは、第2の状態でその厚さを小さく抑えることができ、第1の状態で減圧採血管が挿入されるが、ホルダー本体に対する把持状態(例えば、把持位置や把持力)によっては、ホルダー本体がつぶれてしまい、円筒状(形状)が崩れてしまう。このため、採血ホルダーに採血管を挿入することができないという問題があった。
【0007】
【特許文献1】特表平2−503281号公報
【特許文献2】特表2003−505185号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、没入状態(折畳み状態)では、展開状態よりも採血ホルダーの厚さを抑えることができ、また、展開状態(使用状態)でホルダー本体の形状を維持することができる採血ホルダー提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的は、下記(1)〜(11)の本発明により達成される。
(1) 採血容器が挿入される内部空間を有するホルダー本体と、前記ホルダー本体の基端部に設けられ、鋭利な針先を有する中空針が装着される底部とを備える採血ホルダーであって、
前記ホルダー本体は、
前記底部に対して固定され、前記中空針の外周側の一部を囲むように配置された固定壁と、
前記固定壁に対して変位可能に支持された1つの可動壁とを有し、
前記可動壁は、前記ホルダー本体の中心部側に向かって没入した没入状態と、該没入状態から前記可動壁が外側に向かって展開した展開状態とに変位可能であり、該展開状態では、前記可動壁と前記固定壁とが筒状の前記内部空間を形成するように構成されていることを特徴とする採血ホルダー。
【0010】
(2) 前記固定壁には、前記可動壁を回動可能に支持する回動支持部が設けられている上記(1)に記載の採血ホルダー。
【0011】
(3) 前記固定壁と前記可動壁とは、それぞれ、外方に向かって湾曲したものであり、
前記ホルダー本体は、前記展開状態で、前記固定壁と前記可動壁とがほぼ円筒状の前記内部空間を形成するように構成されている上記(1)または(2)に記載の採血ホルダー。
【0012】
(4) 前記底部は、前記可動壁に対応する位置に、弓状に欠損した欠損部を有し、
前記展開状態では、前記可動壁よりも内側に前記欠損部の縁部が位置しており、
前記没入状態では、前記可動壁の少なくとも一部が前記欠損部の縁部よりも内側に位置する上記(3)に記載の採血ホルダー。
【0013】
(5) 前記固定壁は、その外周部に突出して形成されたフランジを有し、
前記フランジは、前記内部空間を介して前記展開状態の前記可動壁と反対側の部分では、一部が欠損しているかまたは形成されていない上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の採血ホルダー。
【0014】
(6) 前記没入状態の前記ホルダー本体を前記展開状態に至るまで展開させる展開手段を有する上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の採血ホルダー。
【0015】
(7) 前記展開手段は、前記可動壁に設けられ、指を掛けて前記可動壁を操作する操作部を有する上記(6)に記載の採血ホルダー。
【0016】
(8) 前記没入状態を維持する没入状態維持手段を有する上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の採血ホルダー。
【0017】
(9) 前記没入状態維持手段は、前記固定壁の内周部に設けられた凹部と、前記可動壁の縁部に設けられ、前記没入状態で前記凹部に係合する係合部とで構成されている上記(8)に記載の採血ホルダー。
【0018】
(10) 前記展開状態を維持する展開状態維持手段を有する上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の採血ホルダー。
【0019】
(11) 前記展開状態維持手段は、前記可動壁に設けられ、前記展開状態で前記固定壁に係合する爪部とで構成されている上記(10)に記載の採血ホルダー。
【0020】
前記可動壁の外周部の周方向の長さは、前記固定壁の外周部の周方向の長さの0.6〜0.95倍であるのが好ましい。
【0021】
前記操作部は、前記可動壁の外周部に突出形成された突部で構成されており、前記展開手段は、前記固定壁に設けられ、前記可動壁を操作する際に前記突部を案内するガイド溝をさらに有するのが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、没入状態(折り畳み状態)で可動壁がホルダー本体の中心部側に向かって没入することとなるため、展開状態と比較して、採血ホルダーの厚さを小さく抑えることができる。これにより、例えば没入状態の採血ホルダーを包装した場合、その包装体の大きさも抑えることができる。また、この採血ホルダーを包装する包装部材自体の大きさも抑えることができる。
【0023】
また、展開状態では、可動壁が外側へ確実に展開して、その展開した可動壁と固定壁とで連続した壁部が構成される。これにより、採血ホルダーの全体形状が確実に筒状となり、さらに、その筒状が維持される。
【0024】
また、展開手段を有する場合には、没入状態のホルダー本体を展開状態とする際に、例えば中空針の針先に指先が触れるのが防止され、よって、その展開操作を安全に行なうことができる。
【0025】
また、この展開手段が突部で構成された操作部とガイド溝とを有する場合には、操作部に対する操作を円滑に行なうことができ、よって、可動壁が容易かつ確実に変位する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の採血ホルダーを添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の採血ホルダー(没入状態)を示す斜視図、図2は、図1に示す採血ホルダーを先端側から見た図(平面図)、図3は、図1中のA−A線断面図およびその部分拡大図、図4は、本発明の採血ホルダー(展開状態)を示す斜視図、図5は、図4に示す採血ホルダーを先端側から見た図(平面図)、図6は、図4中のB−B線断面図、図7は、図4中のC−C線断面図である。なお、以下では、説明の都合上、図1、図3、図4、図6および図7中の上側を「先端」、下側を「基端」と言う。また、図3および図7では、それぞれ、針体が省略されている。
【0027】
各図に示す採血ホルダー1は、その内側に中空針20を装着したもの(採血ホルダー組立体)となっている。中空針20は、長尺な針本体201と、針本体201の基端部に固着されたハブ202と、ゴム鞘(被覆部材)204とを有している(図2、図5参照)。針本体201は、その先端に鋭利は針先203を有している(図6参照)。また、ハブ202は、針本体201を採血ホルダー1に固定する部材であり、針本体201よりも拡径した円柱状をなす。
【0028】
また、中空針20の基端側に設置されるものとしては、特に限定されないが、本実施形態では、各種血液検査に用いられる血液を貯留する血液バッグ(検査用血液バッグ)(図示せず)を一例に挙げる。血液バッグは、チューブまたはコネクタを介して、ハブ202と接続され、針本体201と連通している。
なお、中空針20の基端側が先端側と同様に、鋭利な針先が形成されていてもよい。すなわち、中空針20は、両頭針であってもよい。この場合には、各種血液検査に用いる血液は、血液バッグからだけではく、ドナー(供血者や患者)から直接採取することもできる。
【0029】
図1、図4に示すように、採血ホルダー1は、ホルダー本体2と、ホルダー本体2の基端部に一体的に形成された底板(底部)5とを有している。この採血ホルダー1は、ホルダー本体2の後述する可動壁4が内側に没入した没入状態(図1に示す状態)と、その可動壁4が没入状態から展開した展開状態(図4に示す状態)とに変形することができるように構成されている。
【0030】
未使用の採血ホルダー1は、没入状態で、例えばブリスター包装材のような包装部材(図示せず)によって包装されて(収納されて)いる。この採血ホルダー1を使用するときには、包装部材から取り出される。なお、包装部材によって包装されている採血ホルダー1は、中空針20を予め装着したものであってもよい(採血ホルダー組立体)、また、中空針20が未装着のものであってもよい。
【0031】
図4に示すように、採血ホルダー1は、展開状態で、血液バッグから血液を取り出す(採取する)ための採血管(採血容器)30が先端側から挿入される。この採血管30は、有底筒状をなす本体部301と、本体部301の開口を封止する栓体302とで構成されている。本体部301は、横断面形状がほぼ円形をなすものであり、例えば各種樹脂材料(例えばポリプロピレン)や各種ガラス材料のような透明性を有する材料で構成されている。また、栓体302は、円板状をなすものであり、例えばイソプレンゴムのようなゴム材料で構成されている。なお、採血ホルダー1は、展開状態で中空針20が底板5に装着される。
【0032】
次に、採血ホルダー1を構成する各部位(部材)についてそれぞれ説明する。
図1に示すように、底板5は、形状が平板状をなし、その中央部に中空針20を装着する(支持する)固定部51を有している。固定部51は、基端方向に向かって突出した管状をなす部位である。この固定部51に、中空針20のハブ202が例えば嵌合したり、螺合したりすることにより、中空針20が装着される。
【0033】
また、底板5は、固定部51を中心とした円弧状(C字状)をなす縁部52が形成されている(図2参照)。縁部52が円弧となる円を想定した場合、底板5には、弓状に欠損した欠損部が形成されていると言うことができる。この欠損部によって、平坦な縁部53が構成されて(形成されて)いる。この縁部53は、縁部52の両端部同士をつないでいる。
【0034】
このような形状の底板5では、没入状態で、採血ホルダー1全体の厚さを確実に抑えることができる。よって、例えば没入状態の採血ホルダー1を包装した際、その包装体の大きさも抑えることができる。また、採血ホルダー1を包装する包装部材自体の大きさも抑えることができる。
【0035】
図1〜図3に示すように、ホルダー本体2は、底部5に対して固定された固定壁3と、固定壁3に回動可能(変位可能)に支持された可動壁4とを有している。この固定壁3と可動壁4とで、ホルダー本体2の内側に内部空間21が画成される(形成される)。この内部空間21には、底部5の固定部51に固定された中空針20(針本体201)が位置する(収納される)こととなる。
【0036】
固定壁3は、底板5の縁部52から立設している。また、固定壁3は、底板5の縁部52に沿って形成されている。これにより、固定壁3は、縁部52と同様に、固定部51を中心として、外方に向かって湾曲したほぼ円弧状をなすものとなる。よって、固定壁3は、中空針20の外周側の一部を囲むことができる(図2、図5参照)。
【0037】
固定壁3の外周部32における先端側には、縁部31からそれと反対側の縁部37に渡って、板状のフランジ321が突出して形成されている。展開状態の採血ホルダー1の内部空間21に採血管30を押し込む(挿入する)際等には、フランジ321の中空針20(内部空間21)を介して対向した部分(以下、この部分を「指掛け部322」と言う)にそれぞれ指を掛けて、押し込み操作を行なうことができる。また、フランジ321が可動壁4に設けられておらず、固定壁3に設けられていることにより、前記押し込み操作を行なう際に指を指掛け部322(フランジ321)に安定して掛けることができる。これにより、押し込み操作(挿入操作)を確実に行なうことができる。
【0038】
また、フランジ321は、固定壁3の外周部32の全体に渡って形成さているが、その幅は均一ではない。すなわち、フランジ321は、各指掛け部322で、幅が最も大きくなり、それらを除く部分(中空針20を介して展開状態の可動壁4と反対側の部分(以下、この部分を「非指掛け部323」と言う))で、幅が抑えられている(一部が欠損している)。
【0039】
前述したように、展開状態の採血ホルダー1に採血管30を押し込む際には、各指掛け部322にそれぞれ指を掛けて、その操作を行なう。従って、非指掛け部323は、その機能上、指が掛けられる部分とはなり難いため、その幅を抑えることができるのである。これにより、没入状態で、非指掛け部323の分、採血ホルダー1の大きさを抑えることができる。
【0040】
なお、フランジ321は、固定壁3の外周部32の全体に渡って形成されたものに限定されず、例えば、固定壁3の外周部32の一部に形成されていない部分を有するものであってもよい。すなわち、フランジ321は、2つの指掛け部322とこれらの間に位置する非指掛け部323とを有するものに限定されず、例えば、非指掛け部323を省略したものであってもよい。
【0041】
図3に示すように、固定壁3の内周部33には、採血ホルダー1の長手方向に沿って、第1の凹部(凹部)34が形成されている。第1の凹部34は、その横断面形状がほぼ三角形をなしており、その内側に没入状態の可動壁4の縁部(第1の係合部44)が係合する(入り込む)。これにより、没入状態が維持される。例えば採血ホルダー1が没入状態で包装部材に包装されている場合、その包装部材内で可動壁4が不本意に回動する、すなわち、不本意に展開状態となるのを確実に防止することができる。このように、第1の凹部34は、没入状態を維持する没入状態維持手段としての機能を有している。
【0042】
また、図3に示すように、第1の凹部34の縁部37側付近には、凸条341が突出形成されている。この凸条341は、没入状態の可動壁4の外周部42に係合することができる。これにより、第1の凹部34による没入状態の維持が補助され、よって、没入状態をより確実に維持することができる。
【0043】
また、固定壁3の縁部31には、可動壁4を回動可能に支持する回動支持部35が設けられている(例えば、図2、図3参照)。これにより、可動壁4は、回動支持部35を回動中心として、回動する。
【0044】
回動支持部35の構成としては、特に限定されないが、例えば、回転軸と軸受けとで構成されたものであってもよいし、縁部31と一体的に形成された薄肉部で構成されたものであってもよい。このような構成により、可動壁4を固定壁3に対して容易かつ確実に回動させることができる。
【0045】
固定壁3の内周部33の縁部37付近には、採血ホルダー1の長手方向に沿って、第2の凹部38が形成されている。図7に示すように、第2の凹部38には、展開状態の可動壁4の縁部(第1の係合部44)が係合する。
【0046】
図1、図4に示すように、固定壁3の縁部37側には、周方向に沿って、ガイド溝36が設けられている。ガイド溝36は、固定壁3をその厚さ方向に貫通しており、内周部33側から、可動壁4の後述する操作部41が突出して(露出して)いる。このガイド溝36は、可動壁4を回動操作する際に、操作部41を案内する部位である。
【0047】
固定壁3には、回動支持部35を介して、可動壁4が回動可能に支持されている。この可動壁4は、ホルダー本体2の中心部(固定部51)側に向かって没入した没入状態と、回動することにより没入状態から外側に向かって展開した展開状態とを取り得る。なお、可動壁4が回動する(展開する)際には、可動壁4の下端部が底板5に対して摺動してもよいし、可動壁4の下端部が底板5から若干離間して、その底板5に対して接触しないで回転してもよい。
【0048】
可動壁4は、外方に向かって湾曲した板片で構成されている。この可動壁4の外周部42の周方向の長さは、固定壁3の外周部32の周方向の長さの0.6〜0.95倍であるのが好ましく、0.7〜0.9倍であるのがより好ましい。
【0049】
可動壁4の外周部42の周方向の長さがこのような数値範囲である場合、没入状態で、可動壁4のほとんどが底板5の内側に確実に位置する(図2参照)。これにより、没入状態で、可動壁4がそれに対応する(その直下の)底板5の縁部53から突出するのが可能な限り抑制され、よって、採血ホルダー1全体の大きさをより確実に抑えることができる。例えば没入状態の採血ホルダー1を包装した際に、その包装体の大きさを抑えることができる。
【0050】
また、可動壁4は、その形状が外側に向かって湾曲しているため、没入状態で内周部43が中空針20に触れるのが防止されている。これにより、中空針20の針本体201の不本意な変形(例えば曲げや折れ)を確実に防止することができる。
【0051】
また、可動壁4の先端部には、固定壁3のフランジ321に当接する当接部45が設けられている。当接部45は、可動壁4が回動した際にフランジ321上を摺動する。この当接部45が設けられていることにより、可動壁4が円滑に回動することができる。
【0052】
前述したように、没入状態では、固定壁3の第1の凹部34に可動壁4の回動中心と反対側の縁部が係合する(図3参照)。これにより、没入状態を確実に維持することができる。また、この縁部は、没入状態で第1の凹部34に係合する第1の係合部44となっている。このように、採血ホルダー1では、可動壁4の第1の係合部44と固定壁3の第1の凹部34とにより、没入状態を維持する没入状態維持手段が構成されている。
【0053】
可動壁4の外周部42には、没入状態のホルダー本体2を展開状態に至るまで展開させる展開手段としての操作部41が設けられている。この操作部41は、可動壁4の縁部であって、第1の係合部44と異なる位置に配置されている。
【0054】
操作部41は、突出形成された突部で構成されており、当該突部に指を掛けて、可動壁4を回動操作することができる。没入状態で固定壁3(第1の凹部34)に係合している可動壁4(第1の係合部44)に対して、操作部41を操作すると、まず、第1の係合部44が第1の凹部34から移動し始め、その後、凸条341を乗り越える。これにより、没入状態の維持が解除される。さらに操作部41を操作すると、これに伴って可動壁4は、外方に向かって回動し、遂には、展開状態となる。
【0055】
また、操作部41は、当該操作部41を操作した際に、ガイド溝36に沿って移動する。これにより、操作部41に対する操作を円滑に行なうことができ、よって、可動壁4が容易かつ確実に回動する。
【0056】
図7に示すように、展開状態では、可動壁4の第1の係合部44が固定壁3の第2の凹部38に係合する。これにより、展開状態を確実に維持することができる。例えば展開状態の採血ホルダー1に採血管30を挿入しようとしたとき、可動壁4が不本意に回動する、すなわち、不本意に没入状態となるのを確実に防止することができる。
【0057】
なお、固定壁3の第2の凹部38の凸条341側直近には、ホルダー本体2の中心部に向かって突出した小突部(図示せず)が形成されている。これにより、可動壁4は、第1の係合部44が第2の凹部38に係合する直前で、前記小突部から反力を受け、若干撓む。可動壁4がこの小突部を乗り越えると前記反力が解除され、可動壁4は、その形状が復元する、すなわち、第1の係合部44が第2の凹部38に向かうように変形する。これにより、第1の係合部44が第2の凹部38により確実に係合し、よって、展開状態をより確実に維持することができる。
【0058】
また、図6に示すように、操作部41には、内側に向かって突出した第2の係合部(爪部)411が形成されている。この第2の係合部411は、展開状態で、固定壁3のガイド溝36と縁部37との間に形成された柱状の柱状部371に係合する。これにより、展開状態をより確実に維持することができる。
【0059】
このように、採血ホルダー1では、展開状態で第1の係合部および第2の係合部がそれぞれ固定壁3の所定部位に係合するよう構成されているため、これら部位が展開状態を維持する展開状態維持手段として機能するものであると言うことができる。
【0060】
また、複数の箇所で展開状態が維持されるため、当該展開状態でのホルダー本体2の強度が増加する。これにより、ホルダー本体に対する把持状態(例えば、把持位置や把持力)によらず、当該ホルダー本体2の形状が維持される。
【0061】
図4に示すように、展開状態では、可動壁4と固定壁3とが連続した壁部を構成する。これにより、ホルダー本体2が全体として円筒状をなし、よって、先端側から内部空間21内に採血管30を確実に挿入することができる。採血管30を挿入すると、針本体201が栓体302を刺通する。これにより、採血管30と前記血液バッグとが針本体201を介して互いに連通し、この血液バッグから採血管30に血液を採り込むことができる。なお、採血ホルダー1の使用後には、当該採血ホルダー1が破棄される。このとき、採血ホルダー1を再度没入状態として破棄してもよい。
【0062】
また、図5、図7に示すように、展開状態では、底板5の縁部53が可動壁4よりも内側に位置している。これにより、没入状態では、底板5の縁部53が突出することがなく、採血ホルダー1の厚さを小さく抑えることができる。
【0063】
また、ホルダー本体2(底板5を含む)の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル等の各種樹脂材料が挙げられる。このような構成材料を用いることにより、例えば、固定壁3と底部5とを例えば金型で容易に一体的に成形することができる。
【0064】
以上、本発明の採血ホルダーを図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、採血ホルダーを構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0065】
また、針体の基端側に設置されるものとしては、本実施形態では、血液バッグを一例に挙げたが、これ限定されず、例えば、針ハブに支持され、針体本体と連通する針管であてもよい。この場合、針体は、両頭針となる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の採血ホルダー(没入状態)を示す斜視図である。
【図2】図1に示す採血ホルダーを先端側から見た図(平面図)である。
【図3】図1中のA−A線断面図およびその部分拡大図である。
【図4】本発明の採血ホルダー(展開状態)を示す斜視図である。
【図5】図4に示す採血ホルダーを先端側から見た図(平面図)である。
【図6】図4中のB−B線断面図である。
【図7】図4中のC−C線断面図である。
【符号の説明】
【0067】
1 採血ホルダー
2 ホルダー本体
21 内部空間
3 固定壁
31 縁部
32 外周部
321 フランジ
322 指掛け部
323 非指掛け部
33 内周部
34 第1の凹部
341 凸条
35 回動支持部
36 ガイド溝
37 縁部
371 柱状部
38 第2の凹部
4 可動壁
41 操作部
411 第2の係合部(爪部)
42 外周部
43 内周部
44 第1の係合部
45 当接部
5 底板(底部)
51 固定部
52、53 縁部
20 中空針
201 針本体
202 ハブ
203 針先
204 ゴム鞘(被覆部材)
30 採血管(採血容器)
301 本体部
302 栓体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
採血容器が挿入される内部空間を有するホルダー本体と、前記ホルダー本体の基端部に設けられ、鋭利な針先を有する中空針が装着される底部とを備える採血ホルダーであって、
前記ホルダー本体は、
前記底部に対して固定され、前記中空針の外周側の一部を囲むように配置された固定壁と、
前記固定壁に対して変位可能に支持された1つの可動壁とを有し、
前記可動壁は、前記ホルダー本体の中心部側に向かって没入した没入状態と、該没入状態から前記可動壁が外側に向かって展開した展開状態とに変位可能であり、該展開状態では、前記可動壁と前記固定壁とが筒状の前記内部空間を形成するように構成されていることを特徴とする採血ホルダー。
【請求項2】
前記固定壁には、前記可動壁を回動可能に支持する回動支持部が設けられている請求項1に記載の採血ホルダー。
【請求項3】
前記固定壁と前記可動壁とは、それぞれ、外方に向かって湾曲したものであり、
前記ホルダー本体は、前記展開状態で、前記固定壁と前記可動壁とがほぼ円筒状の前記内部空間を形成するように構成されている請求項1または2に記載の採血ホルダー。
【請求項4】
前記底部は、前記可動壁に対応する位置に、弓状に欠損した欠損部を有し、
前記展開状態では、前記可動壁よりも内側に前記欠損部の縁部が位置しており、
前記没入状態では、前記可動壁の少なくとも一部が前記欠損部の縁部よりも内側に位置する請求項3に記載の採血ホルダー。
【請求項5】
前記固定壁は、その外周部に突出して形成されたフランジを有し、
前記フランジは、前記内部空間を介して前記展開状態の前記可動壁と反対側の部分では、一部が欠損しているかまたは形成されていない請求項1ないし4のいずれかに記載の採血ホルダー。
【請求項6】
前記没入状態の前記ホルダー本体を前記展開状態に至るまで展開させる展開手段を有する請求項1ないし5のいずれかに記載の採血ホルダー。
【請求項7】
前記展開手段は、前記可動壁に設けられ、指を掛けて前記可動壁を操作する操作部を有する請求項6に記載の採血ホルダー。
【請求項8】
前記没入状態を維持する没入状態維持手段を有する請求項1ないし7のいずれかに記載の採血ホルダー。
【請求項9】
前記没入状態維持手段は、前記固定壁の内周部に設けられた凹部と、前記可動壁の縁部に設けられ、前記没入状態で前記凹部に係合する係合部とで構成されている請求項8に記載の採血ホルダー。
【請求項10】
前記展開状態を維持する展開状態維持手段を有する請求項1ないし9のいずれかに記載の採血ホルダー。
【請求項11】
前記展開状態維持手段は、前記可動壁に設けられ、前記展開状態で前記固定壁に係合する爪部とで構成されている請求項10に記載の採血ホルダー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−237782(P2008−237782A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−86101(P2007−86101)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】