説明

採集アセンブリ

【課題】サンプルへの直接アクセスを容易にし、超小型採集チューブを診断機器に適合させることができる採集アセンブリを提供する。
【解決手段】容器12と該容器に取り外し可能に且つ密閉可能に取付けられたキャップ・アセンブリ14とで構成された採集アセンブリ10であり、容器の内部空間へのアクセスは、容器12からキャップ・アセンブリ14を取り外すことなく、突き刺しエレメントによって行うことができる。キャップ・アセンブリ14は、キャップ本体30と該キャップ本体に支えられた隔膜状の隔壁32とからなる。隔壁32は突き刺しエレメントが容器の内部空間17へアクセスすることを可能にする。隔壁32は突き刺しエレメントを引き抜くと自己密閉する。隔壁は平らな面50と凹んだ面53とを有し、凹んだ面53はその厚さが中央部分から突出部52へと半径方向に沿って外側に向かうに従って増大するように連続的に湾曲している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は採集アセンブリに関し、特に患者から血液などの少量の試料を採取するのに適した超小型採集容器とキャップとのアセンブリであって、該アセンブリからキャップを取り外さなくても容器の内部にアクセスでき、引き続くテストのために試料を安全確実に維持することのできるアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
分析機器のお陰で、非常に少量の血液で種々の血液学的な診断を行うことが可能になってきた。この血液は、患者の指や耳たぶの小さな突き傷から採集される。血液は超小型の採集容器に採取される。少量の血液が採集されると、容器はキャップによって密閉的にカバーされる。
【0003】
試験室の技師が容器に採集された血液についてテストを行うには、容器からキャップを取り外して血液サンプルにアクセスできるようにする必要がある。或いは、試験室での分析が行えるように、容器の全内容がこの容器から機器のこれに適合するサンプルホルダに移される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そのために、(i) 試験室での分析のための機器に適合し、したがって試料が分析のために容器の外に移される必要がなく、(ii)針やプローブによって容器内に容易にアクセスできしかも容器からの洩れを防ぐことのできる再密閉可能な部分を提供し、(iii) 試料を安全確実な状態に維持し、(iv)試料及びユーザーへの汚染を防ぐ超小型の採集容器が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、容器とキャップとを具えた採集アセンブリである。
【0006】
この容器は、開口端と閉鎖端と両者の間の円筒壁とを具え、この円筒壁は試料を収容するための容器の内部空間を形成していることが望ましい。
【0007】
最も好ましくは、容器の開口端には、キャップ本体が取り外し可能に且つ密閉的に取付けられている。このキャップ本体は、容器の内部空間に再密閉可能にアクセスできる隔壁を支えている。この隔壁は、針又は機器のプローブによって繰り返して突き刺されそして再密閉可能な材料で形成されている。最も好ましくは、この隔壁は熱可塑性エラストマーで形成されている。この熱可塑性エラストマーは、バーモント州、St. Albansの QST,Inc. から発売されているMONOPRENE (QST, Inc.の商標)等のイソプレン・プロピレンで構成されている。
【0008】
好ましくは、この隔壁は容器の内部空間から遠い方の側に凹面を有する円盤状をなし、隔壁の再密閉を容易にしている。この熱可塑性エラストマーは突き破られた隔壁の再密閉を可能にし、この採集アセンブリが逆さまの姿勢に保持された場合にも試料が洩れないようになっている。
【0009】
好ましくは、キャップ本体は、上部と、下部と、この上部から下部に延びる外面と内面を有する円筒側壁と、前記上部のアクセス通路と、該通路を横切って支えられている隔壁とを具えている。
【0010】
キャップ本体は、更に、前記上部から容器の内部空間内に延出し、前記円筒側壁と共に環状領域を規定する下向きの環状スカートを具えている。容器の開口端はこの環状領域に収容されている。この下向きのスカートはアクセス通路を具え、この通路を横切って前記隔壁が支えられている。
【0011】
好ましくは、この隔壁とキャップ本体とは共に射出成形されるか或いはインサート成形される。
【0012】
本発明の利点は、キャップが突き破り可能でしかも自己密閉性を有することで、診断機器システムのためのサンプルへの直接アクセスを容易にし、超小型採集チューブを診断機器に適合させることが可能なことである。
【0013】
本発明の別の利点は、自己密閉性の突き破り可能なキャップは、試料を別の容器に移すことなく容器内の試料を混合でき、自己密閉性の突き破り可能なキャップを介して診断機器による試料への直接のアクセスが可能になることである。
【0014】
最も注目すべきことは、本発明は、キャップを容器から外すことなくキャップの天部を通じて試料にアクセスでき、これによってユーザーが試料に触れることが最小限に抑えられることである。
【0015】
更に、本発明は、このアセンブリを廃棄された採集アセンブリのために使用される機器と同様な機器に直接使用できる。
【0016】
本発明の隔壁の利点は、(i) 多数回の突き刺しと再密閉が可能であり、(ii)突き刺しエレメントがこれを突き破るのに2ポンド以下の力ですみ、(iii) 凹面が、突き刺しエレメントが取り除かれた後に隔壁が適正に密閉されることを助けることである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、次のような効果が得られる。
すなわち、
(1)キャップが突き破り可能でしかも自己密閉性を有するため、診断機器システムのためのサンプルへの直接アクセスを容易にし、超小型採集チューブを診断機器に適合させることができるという効果がある。
【0018】
(2)自己密閉性の突き破り可能なキャップは、試料を別の容器に移すことなく容器内の試料を混合でき、自己密閉性の突き破り可能なキャップを介して診断機器による試料への直接のアクセスが可能になる。
【0019】
(3)キャップを容器から外すことなくキャップの天部を通じて試料にアクセスでき、これによってユーザーが試料に触れることが最小限に抑えられることである。
【0020】
(4)このアセンブリを廃棄された採集アセンブリのために使用される機器と同様な機器に直接使用できる。
【0021】
(5)本発明の隔壁は、多数回の突き刺しと再密閉が可能であり、また、隔壁が凹面を有する円盤状部材によって形成した場合には、突き刺しエレメントが取り除かれた後に隔壁が適正に密閉される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は本発明の採集アセンブリの正面図である。
【図2】図2は、図1の採集アセンブリの斜視図であり、容器、キャップ及び隔壁を示す。
【図3】図3は、図1の採集アセンブリの断面図である。
【図4】図4は、図3の採集アセンブリの一部の側断面図である。
【図5】図5は、プローブが挿入された図4の採集アセンブリを示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1〜図3は本発明の採集アセンブリ10を示し、これらの図を通じて同じ符号が同じ部品を示している。
【0024】
この採集アセンブリ10は容器12とキャップ14を具えている。キャップ14はその容器に取り外し可能に取り付けられている。
【0025】
容器12は、開口した上端16と、閉鎖された丸い底部19を具えた下端18と、両者の間に延在する円筒壁20とを有する細長い部材である。この円筒壁20は、その内側に血液試料等の試料を収容するための内部空間17を規定している。円筒壁20は、閉鎖された丸い底部19を越えて突出して環状延長部22を形成し、容器12が平らな面に直立できるようになっている。
【0026】
図2に示されているように、容器12の上部開口端16は、血液サンプルを採集し易くするための傾斜した末端リム24を具えている。更に、このチューブ12の上端16は半径方向に外側に張り出したキャップ嵌合用フランジ26を具え、容器12の上端16にキャップ・アセンブリ14を取り外し自在に密閉的に取付ける手段を提供する。血液等の試料がこの容器の内部空間17に採集されると、この容器はキャップ・アセンブリ14によって密閉的に閉鎖される。
【0027】
図4を参照すると、キャップ・アセンブリ14は、キャップ本体30と、該キャップ本体30に支えられた密閉可能な隔壁32とを具えている。キャップ本体30は、逆さにしたカップの形をした一体的に成形されたプラスチックの部材であることが望ましい。キャップは、平らな上面34と、反対側の開口した下面36と、両者の間に延びる円筒側壁38とを具えている。開口した下面36に隣接するこの円筒側壁38には、容器のキャップ嵌合用フランジ26を収容するための環状溝39が形成されている。円筒状側壁38は、上部開口端16の周囲の前記容器の円筒壁20の外面に係合する内側を向いた複数の突起40を具え、キャップ本体30と容器12の間の密閉係合を可能にしている。
【0028】
更に、キャップ本体30は、平らな上面34から下方に延びる中央に位置する環状スカート42を具えている。この環状スカート42と円筒側壁38は、両者の間に容器12の上端16を収容するための開口端を有する環状凹部43を形成している。環状スカート42は、開口した上限部44と、容器の内部空間17に入り込んだ反対側の開口した下限部46と、キャップ本体30を通って容器12の内部空間17にアクセスする両者の間の中央通路45とを具えている。環状スカート42の下限部46は、キャップ本体30と容器12との密閉を良好にするために、容器12の上部開口端16に隣接する円筒壁20の内面に係合する外側を向いた環状リブ48を具えている。
【0029】
更に、キャップ本体30は、環状スカート42の下限部46に隔壁32を支えている。この隔壁32は、熱可塑性エラストマーで形成された円盤状部材である。図4に示されているように、隔壁32は平坦部分50と上方に延びた環状突出部52を具えている。この環状突出部52は、これが環状スカート42の開口下限部46に押し込まれて嵌合し、密閉係合状態に維持される直径をする。隔壁32の平坦部分50は容器12の内部空間に対面している。環状突出部52は、前記平坦部分50の反対側に凹面53を形成している。隔壁32はその中央に約0.028インチの厚さを有する部分54を形成している。この部分54によって、容器12の内部空間17から液体サンプルを吸い出すのに使用されるカニューレ或いはプローブを約2ポンドの力で隔壁に容易に突き刺すことができる。
【0030】
使用の際には、液体サンプルは容器12に採集され、キャップ・アセンブリ14が容器の上部開口端に密閉固定される。
【0031】
図5に示されているように、サンプル採取用カニューレ或いはプローブ60は、カニューレ60をキャップ本体30の通路45を通じて挿し込むことによって容器12に挿入される。次に、カニューレ60の末端62は前記部分54の箇所で隔壁32を突き刺す。隔壁32の材料は軟らかい熱可塑性エラストマーなので、隔壁32は低い挿入力で容易に突き破られる。したがって、約0.0625インチの直径を有する比較的大径の機器用プローブの場合でも、隔壁32のこの部分54を2ポンド以下の力で突き破ることができる。
【0032】
カニューレ60の挿入は、容器12の内部空間内の液体サンプルに達するまで行われ、それから、液体サンプルの一部が採取される。カニューレ60は、次に通路45を通じて引き戻されることによって取り出される。隔壁32からカニューレ60を引き出すと、熱可塑性エラストマー製の隔壁は自然に自己密閉する。更に、これに対面する凹面50が、カニューレ60によって隔壁32に開けられた孔の再密閉を助ける。隔壁の形状は、カニューレの引き出し方向の凹面を形成している。この形状によってもたらされる圧縮力は、カニューレ60が容器から引き出される際に、隔壁32に開けられたすべての孔を再密閉するように働く。このようにして、隔壁32のこの特定の形状とこれを形成している材料とによって、隔壁は多数の孔空き箇所ができた後でも再密閉が可能となる。したがって、各サンプルの抽出の度に自己密閉する隔壁によって、容器12内の液体サンプルを繰り返して採取することが可能になる。
【0033】
本発明の採集アセンブリは、採集された試料を見やすいように成形された熱可塑性材料で作られている。例えば、代表的な材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニール等が挙げられる。この採集容器には親水性材料又はシリコンが組み込まれ、或いは容器に導入された血液の流れや混合を円滑にするために、その内面に特殊な表面組織が付与されている。
【0034】
一つの理由或いは別の理由で材料の入っている流体採集容器の特定の形式を規定するために、或いは採集された試料に対して行われる試験の種類を規定するために、色付けされたキャップを提供することは本発明の範囲に入るものであるが、透明なキャップも提供することができる。容器は、採集された試料を特定するのに必要なラベルを貼るスペースを提供できるような寸法を有することにも留意されたい。
【符号の説明】
【0035】
12 チューブ
14 キャップ・アセンブリ
16 開口端
17 内部空間
20 円筒壁
30 キャップ本体
32 隔壁
60 カニューレまたはプローブ
42 環状スカート
43 凹面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口端と閉鎖端と両者の間に延在して試料を収容するチューブ内部空間を規定する円筒壁とを有する細長い試料採集チューブと、
前記チューブの前記開口端に取り外し可能に且つ密閉可能に取付けられたキャップ本体を有するキャップ・アセンブリとを具え、
該キャップ本体は、プローブの突き刺しによって前記チューブの内部へのアクセスを可能にする突き刺し可能な膜を支持し、
前記膜は熱可塑性エラストマーで形成され、プローブが引き抜かれると自己密閉可能であり、かつ前記膜は、平らな面と、該平らな面と反対側の面であって前記チューブの内部空間から離れている凹んだ面と、を有する円盤形状をなし、前記キャップ本体によって密閉的に支持されており、
前記膜の凹んだ面は、その厚さが前記膜の中央に配置された部分から前記膜の環状の突出部へと半径方向に沿って外側に向かうに従って増大するように連続的に湾曲した面形状を有していることを特徴とする試料採集アセンブリ。
【請求項2】
前記キャップ本体は、上面と、その反対側の下面と、両者の間の円筒側壁とを具え、該円筒側壁は前記チューブの前記上部開口端に密閉係合可能であることを特徴とする請求項1に記載の試料採集アセンブリ。
【請求項3】
前記キャップ本体は、更に、前記キャップ本体の前記上面から下方に延びる環状スカートを具え、前記円筒側壁と前記環状スカートが、両者の間に前記チューブの前記開口端を収容するための環状領域を規定し、前記環状スカートが前記キャップ本体を貫通するアクセス通路を規定し、前記膜が前記アクセス通路内に支えられていることを特徴とする請求項2に記載の試料採集アセンブリ。
【請求項4】
前記環状スカートは、両者間に前記通路が規定されている上端と下端とを有する細長い円筒状スカートを具え、該スカート壁の前記下端は前記チューブの内部空間に入り込み、前記膜は前記スカート壁の前記下端を横切って密閉支持されていることを特徴とする請求項3に記載の試料採集アセンブリ。
【請求項5】
上部開口端を有する試料採集容器を密閉的にカバーするキャップ・アセンブリであって、
前記容器の前記開口端の上に取り外し可能に固定される剛性材料で形成されたキャップ本体と、
前記キャップ本体に支持され、プローブの突き刺しによって前記キャップを通じて前記容器へのアクセスを可能にする突き刺し可能な隔壁とを具え、該突き刺し可能な隔壁は、プローブが引き抜かれると自己密閉可能な熱可塑性エラストマーの隔壁で形成され、
前記隔壁は、前記通路を横切って支持され、前記自己閉塞を促進するために、前記平らな面と、該平らな面と反対側の面であって前記キャップ本体の前記上面に面する凹んだ面と、を有する円盤状部材であり、
前記膜の凹んだ面は、その厚さが前記膜の中央に配置された部分から前記膜の環状の突出部へと半径方向に沿って外側に向かうに従って増大するように連続的に湾曲した面形状を有していることを特徴とするキャップ・アセンブリ。
【請求項6】
前記キャップ本体は、更に、前記キャップ本体の前記上面から下方に延びた環状スカートを具え、前記円筒側壁と前記環状スカートが両者の端に環状領域を規定し、前記環状スカートが前記キャップ本体を貫通するアクセス通路を規定し、前記隔壁が前記アクセス通路内に支えられていることを特徴とする請求項5に記載のキャップ・アセンブリ。
【請求項7】
前記環状スカートは、両者の間に前記通路を規定する上端と下端とを有する細長い円筒スカート壁を具え、前記隔壁が前記スカート壁の前記下端を横切って密閉的に支えられている請求項6に記載のキャップ・アセンブリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−177528(P2011−177528A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−99786(P2011−99786)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【分割の表示】特願2000−207874(P2000−207874)の分割
【原出願日】平成12年7月10日(2000.7.10)
【出願人】(595117091)ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー (539)
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
【住所又は居所原語表記】1 BECTON DRIVE, FRANKLIN LAKES, NEW JERSEY 07417−1880, UNITED STATES OF AMERICA
【Fターム(参考)】