説明

接地開閉器付断路器のインターロック機構

【課題】1つのインターロック機構で電動操作時、手動操作時両方の誤作動を防止し、インターロックのリセットが容易であり、可動ブレードが確実に3位置を占めることを可能とする接地開閉器付断路器を提供する。
【解決手段】インターロック機構がリセットされ、操作軸がカムの凸部に押されるときは、上板の孔とロックピンの位置がずれることで上板がロックピンを支持し、インターロック機構が動作を開始し、操作軸がカムの凸部から外れたときは、上板の孔とロックピンの位置が一致することでロックピンが上板の孔を通過し、かつ、下板の孔とロックピンの位置がずれることで下板がロックピンを支持し、インターロック機構がロックし、前記操作軸がカムの次の凸部に押されるときは、下板の孔とロックピンの位置が一致することでロックピンが下板の孔を通過し、ロックピンがロックピン受けと嵌合することで歯車列の回転を停止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接地開閉器付断路器のインターロック機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
接地開閉器付断路器は、断路器と接地開閉器とを1つにまとめて構成するものであり、主回路閉、主回路開、接地の3つの動作を1つの可動ブレードを回動させて行うことができる。
【0003】
接地開閉器付断路器は、通常、電動および手動により操作される。電動操作の場合はギヤードモータにより、手動操作の場合には手動ハンドルにより、歯車機構等を通じて可動ブレードを回動させ、主回路閉、主回路開、接地の3位置を切り換える。
【0004】
接地開閉器付断路器の操作においては、従来より、主回路閉、主回路開、接地の3位置の切り換えを確実に行うことが課題となっていた。この問題を解決する一例として、特許文献1に示すインターロック機構を有する接地開閉器付断路器が挙げられる。
【0005】
図14に示すように、このインターロック機構は、主に、可動ブレードが3位置以外のときは手動ハンドルが挿脱できないようにするスライド用ロックピン70と、可動ブレードが3位置を占める場合に手動ハンドルのロック孔に嵌入することで手動ハンドルの回転を止める回転用ロックピン71で構成される。そして、可動ブレードが3位置を占めるときのみスライド用ロックピン70および回転用ロックピン71を開放する構成とすることで、3位置以外での手動ハンドル73の着脱を防止することを特徴としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−180594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に示す接地開閉器付断路器(以下、従来例という)では、以下のような問題があった。すなわち、従来例では、手動操作においては、上記のインターロック機構を用いることで誤作動を防止することが可能であったが、電動操作の場合には、別途、インターロック機構を設ける必要があった。そのため、構成が複雑かつ部品点数が多くなるという問題があった。
【0008】
また、従来例では、インターロックのリセットに手間がかかるという問題があった。図14に示すように、従来例ではインターロック機構をリセットするために、取手72を上げた状態で手動ハンドル73を2、3回転させ、カム74がコロ75を押さない状態にすることでスライド用ロックピン70および回転用ロックピン71が拘束部材76に拘束される状態にした後に、取手72を放すという一連の操作が必要であった。このとき誤ってスライド用ロックピン70および回転用ロックピン71が拘束部材76に拘束される前に取手72を放すと、回転用ロックピン71と手動ハンドルのロック孔73aが係り合い、可動ブレードが3位置を占めていない状態で接地開閉器付断路器の動作を停止させてしまう誤作動のおそれがあった。
【0009】
以上の問題に鑑み、本発明は、1つのインターロック機構で電動操作時および手動操作時両方の誤作動を防止し、インターロックのリセットが容易であり、可動ブレードが確実に3位置を占めることを可能とする接地開閉器付断路器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の接地開閉器付断路器は、モーターの回転または手動操作ハンドルの回転を歯車列を介して可動ブレードに伝えることで可動ブレードを回動させ、可動ブレードが断路器の閉、開および接地開閉器の閉の3位置を占めるときにモーターの回転または前記手動操作ハンドルの回転をインターロック機構により制御する接地開閉器付断路器に関するものである。このインターロック機構は、その歯車列を構成する1つの歯車の回転軸上に配され歯車列と連動して回転するロックピン受けと、そのロックピン受けからその回転軸上に延長して配される手動操作ハンドルと、そのロックピン受けに向かって付勢されロックピン受けと嵌合するロックピンと、前述の歯車列と連動して回動し、3位置に対応する三つの凸部を有するカムと、凸部に連動して軸方向に変位する操作軸と、一端をその操作軸と連結し、他端を前述のロックピン受けと前述のロックピンの間に配され、操作軸の変位により平行移動し、前述のロックピンと対向した位置にそのロックピンが通過できる孔を有する上板および下板とで構成される。そして、このインターロック機構がリセットされ、操作軸がカムの凸部に押されるときは上板の孔とロックピンの位置がずれることで上板がロックピンを支持する。次に、このインターロック機構が動作を開始し、カムが回転することで操作軸がカムの凸部から外れたときは、上板の孔とロックピンの位置が一致することでロックピンが上板の孔を通過し、かつ、下板の孔とロックピンの位置がずれることで下板がロックピンを支持する。最後に、このインターロック機構がロックし、操作軸がカムの次の凸部に押されるときは、下板の孔とロックピンの位置が一致することでロックピンが下板の孔を通過し、さらに、ロックピンがロックピン受けと嵌合することで歯車列の回転を停止させることを特徴とする。
【0011】
上記の接地開閉器付断路器では、可動ブレードが3位置のいずれかを占めて動作が停止している状態から他の3位置へ動作をさせるためには、ロックピンを鉛直上方に持ち上げてインターロックを解除すればよい。また、電動操作による場合はモーターを、手動操作による場合は手動操作ハンドルを、それぞれ用いることで歯車列を回転させ、接地開閉器付断路器を動作させることができる。
【0012】
上記インターロック機構において、インターロック機構がリセットされ、操作軸がカムの凸部に押されて、上板の孔とロックピンの位置がずれることで上板がロックピンを支持するとき(以下、リセット時という。)には、可動ブレードは未だ3位置(断路器の閉、開および接地開閉器の閉)のいずれかを占めている。
【0013】
なお、操作軸には上板と下板の一端が連結しており、その上板および下板の間にはそれらと係止するためのピンが操作軸を貫通するように取付けられている。さらに、これらの上板および下板はそれぞれがピンに向かって相対向するように付勢されている。また、操作軸はカムに向かって付勢されるように構成され、回転するカムの凹凸に連動して操作軸が変位するように構成される。
【0014】
リセット時には、上板および下板は操作軸に設けられたピンに向かって相対向して付勢され、それぞれピンと係止した状態である。この状態で、上板の孔とそれに向かって付勢されるロックピンの位置がずれるようにすることで、上板がロックピンを支持するように構成する。
【0015】
上記インターロック機構において、インターロック機構が動作を開始し、カムが回転することで操作軸がカムの凸部から外れ、上板の孔とロックピンの位置が一致することでロックピンが上板の孔を通過し、かつ、下板の孔とロックピンの位置がずれることで下板がロックピンを支持するとき(以下、動作時という。)には、可動ブレードはリセット時の3位置からは離れているが、未だ次の3位置を占める前の状態にある。
【0016】
リセット時から動作時に移るに際して、操作軸がカムの凸部から凹部に移動する。上板はリセット時と同様に、操作軸に設けられたピンに向かって付勢されつつピンに係止している。そのため、上板は操作軸がカムの凸部から凹部に変位した分だけ操作軸と同じ方向に移動する。この移動後の状態でロックピンが上板の孔を通過するように構成する。一方、下板もピンに向かって付勢されつつピンに係止しているので、操作軸がカムの凸部から凹部に変位した分だけ操作軸と同じ方向に移動する。この移動後の状態で、下板の孔とロックピンの位置がずれるようにすることで、下板がロックピンを支持するように構成する。
【0017】
上記インターロック機構において、インターロック機構がロックし、操作軸がカムの次の凸部に押され、下板の孔とロックピンの位置が一致することでロックピンが下板の孔を通過し、さらに、ロックピンがロックピン受けと嵌合することで歯車列の回転を停止させるとき(以下、ロック時という。)には、可動ブレードが次の3位置への移行を完了する。
【0018】
動作時からロック時に移るに際して、下板は操作軸のピンに向かって付勢されつつピンに係止しているので、操作軸がカムの凹部から凸部に変位した分だけ下板も操作軸と同じ方向に移動する。この移動後の状態で、下板の孔とロックピンの位置が合うようにすることでロックピンが下板の孔を通過するように構成する。
【0019】
さらに、ロックピンが下板の孔を通過するタイミングにおいて、ロックピン受けのロックピンを受け入れる凹部が下板の孔と対向し、下板の孔を通過したロックピンを受け入れるように構成する。こうすることで、ロックピンがロックピン受けと嵌合し、可動ブレードが3位置を占める状態(つまり、カムの凸部に操作軸がある状態)においてインターロックがかかり接地開閉器付断路器の動作を停止する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の接地開閉器付断路器は、モーターの動きを伝える歯車列と連動して回転するロックピン受けの回転軸上に手動操作ハンドルが配される。この構成により、電動操作時および手動操作時の両方で共通のインターロック機構を用いることができる。このため、電動操作用と手動操作用のインターロック機構をそれぞれ別に設ける必要がなくなり簡易な構成とすることが可能となる。
【0021】
また、上記インターロック機構は、操作軸がカムの凸部に押されるときは上板の孔とロックピンの位置がずれるように構成される。すなわち、操作軸がカムの凸部に押されるときは、上板がロックピンを支持することができる構成となっている。これにより、操作軸がカムの凸部に押されて可動ブレードが3位置を占めている場合(すなわち、ロック時)にロックピンを鉛直上方に引き上げるだけで、ロックピンが上板により支持され、インターロックを解除することができる。これによりインターロック機構のリセットを簡易に行うことが可能となる。
【0022】
さらに、上記インターロック機構は、リセット時の状態では上板がロックピンを支持し、動作時の状態では下板がロックピンを支持するため、リセット時および動作時にインターロックがかかる誤作動の恐れがない。ロック時になってはじめてロックピンが下板の孔を通過してロックピン受けの凹部に嵌り、インターロックがかかる。ロック時にのみ可動ブレードが3位置を占める構成とすることで、可動ブレードが3位置を占める場合にのみ動作が確実にロックされる接地開閉器付断路器を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は本発明によるインターロック機構を有する接地開閉器付断路器の概略側面図である。
【図2】図2は本発明によるインターロック機構を有する接地開閉器付断路器の概略平面図である。
【図3】図3は本発明によるインターロック機構とモーターおよびそれに連動する歯車列の構成を示す概略正面図である。
【図4】図4はモーターに減速機構としての遊星歯車機構を連結した構成を示す図である。
【図5】図5はローラーを取付けた遊星歯車装置の斜視図である。
【図6】図6はモーターの回転をカムに伝達するための歯車列の構成を示す図である。
【図7】図7は本発明によるインターロック機構の正面図であり、リセット時の状態を示す図である。
【図8】図8は本発明によるインターロック機構の正面図であり、動作時の状態を示す図である。
【図9】図9は本発明によるインターロック機構の正面図であり、ロック時の状態を示す図である。
【図10】図10は本発明によるインターロック機構の位置検出機構の構成を示す図である。
【図11】図11は本発明によるインターロック機構の平面図である。
【図12】図12はインターロック機構を構成するカムの側面図および平面図である。
【図13】図13は各3位置におけるカムと操作軸の位置関係を示す図である。
【図14】図14は従来の接地開閉器付断路器に係るインターロック機構の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る接地開閉器付断路器のインターロック機構を、実施例として示す図面に基づいて説明する。なお、下記実施例は、本発明に係る接地開閉器付断路器の一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各部の形状並びに構成を適宜変更して実施することも可能である。
【実施例1】
【0025】
本発明の接地開閉器付断路器は、図1および図2に示すように、モーター1とそれに連結する歯車A、歯車B、歯車C、歯車Dと、歯車Dからその回転軸上に延びる回転軸2と、回転軸2の回転を往復運動に変換するブレード側ウォームギア5と、ブレード側ウォームギア5と可動ブレード6を連結する絶縁ロッド7で概略構成される。可動ブレード6は碍子9を介して支持されている。
【0026】
また、図2に示すとおり、本発明に係るインターロック機構を構成するロックピン受け42が歯車Cとその回転軸を同一にして固定されている。ロックピン受け42の軸上には手動操作ハンドル8が接続される。歯車Dの回転軸上には、歯車Dの回転を伝える回転軸2が延びている。回転軸2には、図6に示すように、カム側ウォームギア33を介してカム30が配される。また、図7乃至9に示すように、カム30はその上端部を、操作軸44の先端に取付けられたローラーBと接するように配される。
【0027】
図3において、モーター1の紙面奥には図4で示す遊星歯車機構20が配される。遊星歯車機構20を構成する遊星歯車装置21の詳細を図5に示す。遊星歯車装置21は、太陽歯車22を中心にそれと回転自在に連結する遊星歯車23とその外周に回転自在に連結する内歯車24、およびキャリア25で構成されている。キャリア25は遊星歯車23と連結され、遊星歯車23と連動するが、内歯車24とは連動しないように構成される。
【0028】
遊星歯車機構20を構成する複数の遊星歯車装置21の一つには、その内歯車24の外周面にローラーが設けられる。本実施例においては、図5に示すように、2つのローラーAが互いに円周方向に180度間隔をおいて取付けられている。ローラーAは、図3に示す上下動するストッパー15が下方に移動したときに、ストッパー15と係止するように内歯車24の側面に設けられるのが好ましい。遊星歯車機構20を構成する遊星歯車装置21の数は必要な減速比に応じて決めればよい。また、遊星歯車機構20は図4に示すように歯車Aに連結し、図6に示す歯車A乃至Dで構成される歯車列にモーターからの回転運動を減速して伝える。
【0029】
図3に示すように、ストッパー15を保持するストッパー支持板16が遊星歯車装置21の上方に据付られる。ストッパー支持板16はその両端がコの字状に折れ曲がっており、その両端に孔(不図示)が設けられている。ストッパー15はこの両端の孔を貫通し、ストッパー支持板16の上端に取付けられた復帰ばねDにより遊星歯車装置21に向かって付勢されている。復帰ばねDのばね力は、ストッパー15が下方に付勢された場合に、ストッパー15がローラーAと係止して遊星歯車装置21の回転を止めるのに十分であり、かつ、ストッパー15が上方に付勢された場合に、ストッパー15がローラーAとの係止から確実に解放される程度のものであることが必要である。
【0030】
図3に示すように、ストッパー15は、リンク14を介してロックピン10に連結している。リンク14はその中央付近を固定軸18により回動自在に保持される。固定軸18の一端は図2に示すように取付板Aに固定される。これにより、ロックピン10が引き上げられるとストッパー15が鉛直下方に移動し、ローラーAと係止することで遊星歯車装置21の回転を停止させる。なお、図3に示すように、ロックピン10はソレノイド12により電動で引き上げることが可能である。また、ロックピン10は、図2、図3に示すように、手動ハンドル13に連結しており、手動で引き上げることも可能である。
【0031】
次に、図6において、歯車Aの回転をカム30に伝達するための歯車列の一例を示す。歯車Aと歯車Dは、中間歯車である歯車Bおよび歯車Cを介してそれぞれが回転自在に連結する。モーター1の回転は歯車Aから歯車Bおよび歯車Cを介して歯車Dに伝わる。歯車Dの回転軸にはウォーム31が設けられる。ウォーム31に歯合するウォームホイール32にはこれと同一の回転軸を有するカム30が設けられる。カム30は、モーター1から減速されて伝えられた回転運動を後ほど説明するインターロック機構に伝達する。
【0032】
以下、モーター1の回転を可動ブレード6に伝えるための動作について説明する。三位置断路器を動作させるためにモーター1を回転させる。次に、図3に示すソレノイド12もしくは手動ハンドル13でロックピン10を引き上げる。ロックピン10を引き上げることで前述の通りストッパー15が鉛直下方に移動する。これによりローラーAがストッパー15に係止し、ローラーAが設けられた内歯車24が回転しないようにロックされる。内歯車24がロックされると、上述のとおり、モーター1の回転は図5に示す太陽歯車22、遊星歯車23、キャリア25を通して歯車Aに伝達される。
【0033】
歯車Aの回転は、図2に示す歯車B、歯車C、および歯車Dを経て、図1に示す回転軸2を介してウォーム3とウォームホイール4で構成されるブレード側ウォームギア5に伝達される。歯車Aの回転はブレード側ウォームギア5により回転方向を90度変換され、減速されながら絶縁ロッド7に伝えられ、最終的に可動ブレード6に伝えられる。
【0034】
一方、モーター1の回転は、図6に示すように、歯車A、歯車B、歯車C、および歯車Dを経て、ウォーム31とウォームホイール32で構成されるカム側ウォームギア33に伝えられる。上記歯車列の回転運動は、カム側ウォームギア33により回転方向を90度変換され、減速されてカム30に伝達される。その後、カム30の回転は、以下に説明する図7乃至図9のインターロック機構60に伝達される。
【0035】
以下、本発明のインターロック機構60の構成について説明する。図7乃至図9に示すインターロック機構60は、ロックピン10と、ロックピン受け42と、カム30と、図10に詳細を示す位置検出機構61と、図11に示す手動操作ハンドル8で概略構成される。
【0036】
図12に示すように、カム30は円盤状であって、その外周近傍の円周方向で略120度の範囲に凸部が3つ設けられている。後述するが、これら3つの凸部はそれぞれ断路器の閉、開および接地開閉器の閉に対応する。図7に示すように、カム30の上端部にはカム30の回転軸と平行な方向に沿って延びる操作軸44が設けられる。操作軸44の先端にはローラーBが連結される。このローラーBはカム30に設けられた3つの凸部の間を、モーターの回転・反転運動に応じて、往復運動する。後述するが、ローラーBがカム30の凹凸上を往復運動することで操作軸44が左右に移動する。
【0037】
以下、図10に基づいて位置検出機構61の構成を説明する。操作軸支持板46は左右両端が折れ曲がったコの字形状である。この両端部分にはそれぞれ孔46a、46bが設けられている。操作軸44はこれらの孔46a、46bを貫通して摺動するように取付けられる。操作軸支持板46の内側には、上板40および下板41の一端が操作軸44を介して取付けられている。上板40および下板41の一端にはそれぞれ孔40a、41a、41bが設けられ、操作軸44がそれらの孔を通して摺動するように構成される。また、下板41のエル字形状に形成された直角付近には、切欠45が設けられている。上板40がその切欠45を通して下板41の上に重なるように配される。また、上板40と下板41を重ねて配置するかわりに上板40と下板41をその間に所定の距離を保って平行に配してもよい。なお、操作軸支持板46は、図11に示す取付板Aにねじ止め等で固定される。
【0038】
上板40が下板41の上に重なるように配される場合には、上板40は1.5mm程度の厚みを有するのが好ましい。図8に示すように、インターロック機構の上板の孔40bにロックピンが落ち、下板41の上にロックピン10が支持されている状態でインターロック機構60に振動が加わると、ロックピン10が上板の孔40bから飛び出してしまうおそれがある。上板40の厚みを1.5mm程度とすることで、インターロック機構60に振動が加わってもロックピン10が上板の孔40bから飛び出すおそれを低減することができる。
【0039】
図10に示すとおり、操作軸44にはピン47が打ち込まれており、その両側に上板40および下板41の一端が配される。操作軸支持板46の両端内側には同じばね力を有する復帰ばねAおよび復帰ばねBが取付けられている。復帰ばねAおよび復帰ばねBはそれぞれ上板40と下板41をピン47に向かって押すように配される。ピン47は、操作軸44を貫通して両側から突出し、操作軸の動きに応じて上板40、下板41を左右に押す。図7において、操作軸44が紙面左に移動するときには、ピン47は上板40を左に押す。このとき下板41も復帰ばねBのばね力により左に移動する。また、操作軸44が紙面右に移動するときには、ピン47は下板41を右に押す。このとき上板40も復帰ばねAのばね力により右に移動する。
【0040】
図7乃至図9で示すように、上板40および下板41の他端はロックピン支持板51とロックピン受け42の間に配される。図10で示すように、上板40および下板41の他端にはロックピン10が貫通できる孔40b、孔41cがそれぞれ設けられている。また、図7に示すようにロックピン10は、左右両端が折れ曲がったコの字形状のロックピン支持板51に設けられた孔51a、51bを貫通するように配される。ロックピン支持板51の上端内側には復帰ばねCの一端が固定され、復帰ばねCの他端はロックピン10の中ほどに設けられたばね受け52に固定されている。この構成により、ロックピン10はロックピン受け42に向かって鉛直下方に付勢されている。なお、ロックピン支持板51は、図11に示す取付板Bにねじ止め等で固定されている。
【0041】
以下、インターロック機構60の動作について説明する。図7はインターロック機構のリセット時の状態を示す。すなわち、インターロック機構60を構成するローラーBがカム30の凸部に乗り上げている状態を示している。操作軸44は紙面右よりに移動した状態で、復帰ばねBを圧縮した状態となっている。上述のとおり、復帰ばねAと復帰ばねBは同じばね力のものを採用するため、復帰ばねBのばね力により操作軸44を紙面左方向へ付勢する力が加わる。復帰ばねAにより付勢され、ピン47に係止している上板40は、それに設けられた孔40bの縁部分がロックピン10の側周部から若干(約1.5mm)ずれる位置に静止する。ここで、復帰ばねCにより付勢されるロックピン10は上板40に支持された状態となっている。
【0042】
次に、図8で示す動作時の動きについて説明する。図7の状態では、操作軸44は復帰ばねBのばね力によって左方向に付勢されている。カム30が回転を始めると、図8で示すように操作軸44と連結しているローラーBはカム30の回転に応じてカム30の凸部から凹部に移動する。この動きに連動して、操作軸44が左方向に移動する。上板40も操作軸44に取付けられているピン47に押されることで左方向に移動する。上板40が左方向に向かって約1.5mm動くと、復帰ばねCから鉛直下方に付勢されているロックピン10が上板40の孔40bに落下する。この状態では、下板41も操作軸44と連動して右側に動くことで、下板の孔41cの縁部分がロックピン10の側周部から若干(約1.5mm)ずれる位置に移動する。これにより、ロックピン10は下板41に支持される。
【0043】
次に、図9で示すロック時に至る動きについて説明する。図8の状態から、さらにカム30が回転すると、図9に示すように、ローラーBはカム30の凸部に乗り上げ、操作軸44もこれに連動して紙面右方向に移動する。上板40はロックピン10に係止しているため動かないが、下板41はピン47に押されることで紙面右方向に移動する。ロックピン10と下板41の孔41cの位置が合うとロックピン10は下板41を貫通する。このタイミングでロックピン受け42はロック孔43が鉛直上方を向くように構成されており、下板の孔41cを通過したロックピン10がロック孔43に嵌合する。
【0044】
このとき図3に示すロックピン10と連結しているリンク14が反時計方向に回転し、リンク14と連結しているストッパー15が垂直上方に持ち上げられる。これによりストッパー15とローラーAの係合が解除される。ローラーAのロックが解除され、図5に示す内歯車24が回転可能となることで、上述のとおりモーター1の回転が歯車Aに伝わらなくなる。これにより、ローラーBがカム30の凸部に乗り上げた場合、すなわち、可動ブレード6が3位置を占めた場合にモーター1の駆動が歯車列に伝わらなくなり、インターロックを確実に行うことが可能となる。
【0045】
次の動作を始める場合には、図9に示すロック時の状態からロックピン10を引き上げる。すると上板40は復帰ばねAのばね力により紙面右方向に付勢され、図7に示すように、上板40がピン47で係止するまで右方向に移動する。このとき、上板の孔40bの縁部分がロックピン10の側周部から若干(約1.5mm)ずれる位置に移動することでロックピン10が上板40に支持され、リセット時の状態となる。
【0046】
なお、ロックピン10を鉛直下方に付勢する復帰ばねCは、ロックピン10が下板41との係合から外れた場合にロックピン10をロック孔43に瞬時に落とせる程度のばね力を有するものであることが好ましいが、上板40および下板41の水平方向の摺動を妨げない程度のばね力であることが必要である。また、復帰ばねCは、図8において、インターロック機構60が多少の衝撃を受けてもロックピン10が上板の孔40bから飛び出さない程度のばね力でロックピン10を付勢するものが望ましい。
【0047】
最後に、カム30の回転とロックピン10の位置および可動ブレード6の位置の関係を中心に、装置全体の動きについて補足的に説明する。図13は各3位置(断路器の閉、開および接地開閉器の閉)におけるカム30と操作軸44の位置関係を示す図である。カム30の3つの凸部が各3位置に対応し、カム30の任意の凸部から隣接する凸部までが可動ブレード6の一動作に対応する。
【0048】
図13(a)に示す操作軸44がカム30の中央の凸部に乗り上げている状態を断路器の開とする。接地開閉器付断路器を動作させるために、まずロックピン10を引き上げ図7に示すリセット時の状態にする。これにより前述のとおり、モーター1の回転が絶縁ロッド7等を通して可動ブレード6に伝わる(図1、図2参照)。
【0049】
一方で、モーター1の回転がカム30に伝わることで、図13(b)に示すように、ローラーBが凸部から凹部に落ちる。すると、図8に示す動作時の状態となり、操作軸44、上板40、および下板41が紙面左方向に移動する。これにより、ロックピンが上板の孔40bに落ちて下板41の上面に支持される。
【0050】
更にカム30が回転し、図13(c)に示すように、ローラーBが凸部に乗り上げる。すると、操作軸44および下板41が紙面右方向に移動する。これにより、図9のロック時の状態で示すように、ロックピン10が下板の孔41cを通過し、さらにロックピン受け42のロック孔43に嵌合する。
【0051】
ロックピン10がロック孔43に嵌合することにより、図3に示すストッパー15が鉛直上方に移動し、ストッパー15とローラーAの係合が解除される。これによって上述の通り、モーター1の回転は歯車Aへは伝わらなくなり、したがって、モーター1の回転は可動ブレード6に伝わらなくなる。このように可動ブレード6の動きが停止することで接地の状態を確実に実現することが可能となる。
【0052】
なお、本実施例においては、図12に示す円盤形状のカムを用いたが、カムの形状はこれに限定されず、3位置に対応するための3つの凸部を有するものであればどのような形状のものであってもかまわない。
【0053】
上記実施例では、断路器の開から接地開閉器の閉への移行について説明したが、断路器の閉から断路器の開への移行も同様に行うことが可能である。また、接地開閉器の閉から断路器の開、断路器の開から断路器の閉の状態へ移行するにはモーター1を反転させ、カム30を反転させることで同様に動作させることが可能となる。
【0054】
以上より、本実施例の接地開閉器付断路器は、図11に示すように、モーターの動きを伝える歯車列に連動して回転するロックピン受けの回転軸上に手動操作ハンドルが配されるので、電動操作時および手動操作時の両方で共通のインターロック機構を用いることができる。このため、電動操作用と手動操作用のインターロック機構をそれぞれ別に設ける必要がなくなり簡易な構成とすることが可能となる。
【0055】
また、本実施例の接地開閉器付断路器は、図9に示すロック時には、復帰ばねAのばね力により上板40が右方向に付勢される。よって、ロック時の状態でロックピンを鉛直上方に引き上げるだけで、復帰ばねAが伸び切り、上板の孔40bの縁部分とロックピン10の側周部の位置が若干ずれる。これにより、図7に示すように上板40がロックピンを支持することが可能となる。つまり、従来例に比べインターロック機構のリセットを簡易に行うことが可能となる。
【0056】
さらに、本実施例のインターロック機構は、図7に示すリセット時には上板40がロックピン10を支持し、図8に示す動作時には下板41がロックピン10を支持し、図9に示すロック時においてのみロックピン10が上板40および下板41を通過し、ロック孔43に嵌合する。これにより、可動ブレード6が3位置を占める場合のみに動作が確実にロックされる接地開閉器付断路器を実現することが可能となる。
【符号の説明】
【0057】
1 モーター
6 可動ブレード
8 手動操作ハンドル
10 ロックピン
15 ストッパー
30 カム
40 上板
41 下板
42 ロックピン受け
43 ロック孔
44 操作軸
46 操作軸支持板
47 ピン
51 ロックピン支持板
52 ばね受け
60 インターロック機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モーターの回転または手動操作ハンドルの回転を歯車列を介して可動ブレードに伝えることで前記可動ブレードを回動させ、前記可動ブレードが断路器の閉、開および接地開閉器の閉の3位置を占めるときに前記モーターの回転または前記手動操作ハンドルの回転をインターロック機構により制御する接地開閉器付断路器において、
前記インターロック機構は、
前記歯車列を構成する1つの歯車の回転軸上に配され前記歯車列と連動して回転するロックピン受けと、
前記ロックピン受けからその回転軸上に延長して配される手動操作ハンドルと、
前記ロックピン受けに向かって付勢され前記ロックピン受けと嵌合するロックピンと、
前記歯車列と連動して回動し、前記3位置に対応する三つの凸部を有するカムと、
前記凸部に連動して軸方向に変位する操作軸と、
一端を前記操作軸と連結し、他端を前記ロックピン受けと前記ロックピンの間に配され、操作軸の変位により平行移動し、前記ロックピンと対向した位置に前記ロックピンが通過できる孔を有する上板および下板とで構成され、
前記インターロック機構がリセットされ、前記操作軸が前記カムの凸部に押されるときは、前記上板の孔と前記ロックピンの位置がずれることで前記上板が前記ロックピンを支持し、
前記インターロック機構が動作を開始し、前記操作軸が前記カムの凸部から外れたときは、前記上板の孔と前記ロックピンの位置が一致することで前記ロックピンが前記上板の孔を通過し、かつ、前記下板の孔と前記ロックピンの位置がずれることで前記下板が前記ロックピンを支持し、
前記インターロック機構がロックし、前記操作軸が前記カムの次の凸部に押されるときは、前記下板の孔と前記ロックピンの位置が一致することで前記ロックピンが前記下板の孔を通過し、前記ロックピンが前記ロックピン受けと嵌合することで歯車列の回転を停止させることを特徴とする接地開閉器付断路器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−243514(P2011−243514A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−116824(P2010−116824)
【出願日】平成22年5月21日(2010.5.21)
【出願人】(501383635)株式会社日本AEパワーシステムズ (168)
【Fターム(参考)】