接地開閉器付断路器
【課題】3位置断路器の開閉部に簡易な構成を採用し、装置の信頼性向上及び装置全体の小型化を達成する。
【解決手段】密閉容器内に、略直交するように設けられた2つの中空導体と、これら中空導体を摺動する2つの可動接触子と、これら可動接触子と対向する2つの固定接触子と、2つの可動接触子が連結する2つの湾曲リンクと、これら湾曲リンクが連結され駆動軸を中心に回動する2穴レバーとでガス絶縁開閉装置を構成する。駆動軸は2つの中空導体の軸線がなす角度の2等分線上に配置する。可動接触子と2穴レバーそれぞれが断路器側湾曲リンクと連結する2つの連結点と、可動接触子と2穴レバーそれぞれが接地開閉器側湾曲リンクと連結する2つの連結点とが、上記2等分線に関して線対称となるときに、前記断路器及び前記接地開閉器がともに開状態となるように構成する。
【解決手段】密閉容器内に、略直交するように設けられた2つの中空導体と、これら中空導体を摺動する2つの可動接触子と、これら可動接触子と対向する2つの固定接触子と、2つの可動接触子が連結する2つの湾曲リンクと、これら湾曲リンクが連結され駆動軸を中心に回動する2穴レバーとでガス絶縁開閉装置を構成する。駆動軸は2つの中空導体の軸線がなす角度の2等分線上に配置する。可動接触子と2穴レバーそれぞれが断路器側湾曲リンクと連結する2つの連結点と、可動接触子と2穴レバーそれぞれが接地開閉器側湾曲リンクと連結する2つの連結点とが、上記2等分線に関して線対称となるときに、前記断路器及び前記接地開閉器がともに開状態となるように構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は3位置開閉部を有する断路器・接地開閉器(以下、3ポジション開閉器という。)に関し、特に、簡易な構成で装置全体の小型化が可能な3ポジション開閉器に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス絶縁開閉装置(以下、GISという。)は、遮断器や断路器や接地開閉器等の機器を有して構成される。GISには、密閉容器内に接地開閉器と断路器を一体に構成した3ポジション開閉器が多く使用される。
【0003】
従来一般的に用いられている3ポジション開閉器の概要を図1(A)乃至(C)に示す。この3ポジション開閉器は、容器101と、三相の主回路導体102a、102b、102cと、断路器側固定接触子110aと、断路器側可動接触子107aと、直線リンク106a、106bと、駆動軸104と、一穴レバー105と、接地開閉器側可動接触子107bと、接地開閉器側固定接触子110bと、主回路導体103とで概略構成されている。この3ポジション開閉器は、断路器側導体103aと接地側導体103bの中心線が成す角度(以下、開き角度という。)が鈍角となっており、GIS全体が大型化するという問題があった。
【0004】
そこで、図2(A)乃至(C)に示すように、断路器側導体203aと接地側導体203bの開き角度が略直角を成すように構成することでタンク長を短くすることが考えられる。しかし、この構成では、断路器側可動接触子207aおよび接地開閉器側可動接触子207bの初動時に、断路器側可動接触子207aと断路器側導体203aの円筒摺動面、および接地開閉器側可動接触子207bと接地側導体203bの円筒摺動面の摩擦力が非常に大きくなる。このため、駆動出力の大きな操作器が必要となり、GIS全体が大きくなるという問題があった。また、可動接触子と円筒摺動面の摩擦により異物が生じやすくなるという問題があった。
【0005】
断路器側導体と接地側導体の開き角度が略直角を成す構成として、例えば、特許文献1に示すような3ポジション開閉器が挙げられる。特許文献1には、中心導体の間に設けられた略V字形のカム溝を有するカムと、このカム溝をローラーによって移動する断路器側の可動接触子と接地開閉器側の可動接触子を有する3ポジション開閉器が開示されている。
【0006】
この構成では、断路器側導体と接地側導体の開き角度が略直角を成す構成とすることでタンク長を短くすることが可能である。しかし、ローラーがカム溝を摺動することで摺動粉が発生するという問題があった。また、構成が複雑で製作に手間がかかるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公昭54−29701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、断路部と接地開閉部の可動接触子を連動して直線移動させるために簡易な機構を採用しつつ、可動接触子と中空導体間の摺動摩擦力を極力抑えることで異物の発生を防ぎ、操作器も含めてGIS全体を小型化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によるガス絶縁開閉装置は、密閉容器内に、略直交するように設けられた断路器側及び接地開閉器側の2つの中空導体と、これらの中空導体内をそれぞれ摺動する2つの可動接触子と、これらの可動接触子に対向する2つの固定接触子と、これらの可動接触子がそれぞれ連結する2つの湾曲リンクと、これらの湾曲リンクが連結され駆動軸を中心に回動する2穴レバーとで構成する。2つの可動接触子は2穴レバーの回動に応じて互いに略直角方向に直線移動するように配置し、2穴レバーの駆動軸は2つの中空導体の軸線がなす角度の2等分線上に位置するように配置する。断路器側の可動接触子と2穴レバーそれぞれが断路器側湾曲リンクと連結する2つの連結点と、接地開閉器側の可動接触子と2穴レバーそれぞれが接地開閉器側湾曲リンクと連結する2つの連結点とが、上記2等分線に関して線対称となるときに、断路器及び接地開閉器がともに開状態であって、2穴レバーがこの開状態から断路器側に所定の角度振れたときに断路器が閉路状態となり、2穴レバーが上記開状態から接地開閉器側に所定の角度振れたときに接地開閉器が閉路状態となるように構成する。
【0010】
好ましくは、前記2つの中空導体の前記2つの可動接触子が摺動する面に、摺動摩擦力を低減するための部材を配置したことを特徴とする。
【0011】
ここで、本発明における可動接触子と2穴レバーを連結する「湾曲リンク」とは、弓なりに曲がった形状のリンクのみならず、直角リンク等、所定の角度を有する形状のリンクも広く含むものである。また、本発明における「2穴レバー」とは、駆動軸を中心に円弧運動し、駆動軸と反対側の端部2箇所に可動接触子を直線移動させるための湾曲リンクを2つ連結できるものであればよく、その外形状については特に限定されない。
【発明の効果】
【0012】
本発明の3ポジション開閉器は、略直交する中空導体内で可動接触子を摺動させるときに、2穴レバーにより湾曲リンクを介して可動接触子を直線移動させる構成をとる。この構成により、1穴レバーを用いた場合の、特に初動時に顕著に生じる摩擦力を低減することが可能となる。また、摩擦力の低減により操作器の小型化が可能となり、ひいては装置全体を小型化することが可能となる。
【0013】
また、2穴レバーに直接湾曲リンクを連結することでリンク機構部を構成するため、特許文献1に示すような複雑な構成を採ることなく、簡易な構成とすることが可能となる。このように簡易な構成をとることで、製作時の負担を軽減することが可能となる。また、リンク機構部からの摺動粉等の異物の発生を低減することが可能となり、装置の信頼性を向上させることができる。
【0014】
さらに、中空導体の内周面に摺動摩擦を低減するための部材を取付けることで、可動接触子が移動するときに生じる摺動摩擦を更に低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1(A)(B)(C)は従来の3ポジション開閉器の構成および動作を示す断面図である。
【図2】図2(A)(B)(C)は従来の3ポジション開閉器の断路器側導体と接地側導体間の開き角度を略直角とした構成を示す断面図である。
【図3】図3(A)は図2(A)の開閉部の拡大図であり、図3(B)は接地開閉器が閉状態から動作を開始した直後の駆動力と負荷力を示すベクトル図である。
【図4】図4(A)は図2(B)の開閉部の拡大図であり、図4(B)は接地開閉器が開状態および断路器が開状態であるときの駆動力と負荷力を示すベクトル図である。
【図5】図5(A)は図2(C)の開閉部の拡大図であり、図5(B)は接地開閉器が開状態であって断路器が閉状態となる直前における駆動力と負荷力を示すベクトル図である。
【図6】図6(A)(B)(C)は、本発明に係る3ポジション開閉器の構成および動作を示す断面図である。
【図7】図7(A)は図6(A)の開閉部の拡大図であり、図7(B)は接地開閉器が閉状態から動作を開始した直後の駆動力と負荷力を示すベクトル図である。
【図8】図8(A)は図6(B)の開閉部の拡大図であり、図8(B)は接地開閉器が開状態および断路器が開状態であるときの駆動力と負荷力を示すベクトル図である。
【図9】図9(A)は図6(C)の開閉部の拡大図であり、図9(B)は接地開閉器が開状態であって断路器が閉状態となる直前における駆動力と負荷力を示すベクトル図である。
【図10】図10(A)は、摺動摩擦係数を1.2とした場合の、可動接触子行程と駆動トルクと負荷トルクとの関係を示した断路器側の負荷トルク曲線である。図10(B)は、摺動摩擦係数を1.2とした場合の、可動接触子行程と駆動トルクと負荷トルクとの関係を示した接地開閉器側の負荷トルク曲線である。図10(C)は、図10(A)および図10(B)に示す負荷トルク曲線を加算したものである。
【図11】図11(A)は、摺動摩擦係数を1.0とした場合の、可動接触子行程と駆動トルクと負荷トルクとの関係を示した断路器側の負荷トルク曲線である。図11(B)は、摺動摩擦係数を1.0とした場合の、可動接触子行程と駆動トルクと負荷トルクとの関係を示した接地開閉器側の負荷トルク曲線である。図11(C)は、図11(A)および図11(B)に示す負荷トルク曲線を加算したものである。
【図12】図12(A)は、摺動摩擦係数を0.5とした場合の、可動接触子行程と駆動トルクと負荷トルクとの関係を示した断路器側の負荷トルク曲線である。図12(B)は、摺動摩擦係数を0.5とした場合の、可動接触子行程と駆動トルクと負荷トルクとの関係を示した接地開閉器側の負荷トルク曲線である。図12(C)は、図12(A)および図12(B)に示す負荷トルク曲線を加算したものである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の態様を図面に基づいて説明する。なお、下記実施例は、本発明に係る3ポジション開閉器の一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各部の形状並びに構成を適宜変更して実施することが可能である。
【実施例1】
【0017】
図6(A)(B)(C)は、本発明の1実施例を示す図である。図6(A)は断路部が開路状態で接地部が閉路状態である。この状態を、以下、接地状態という。図6(B)は断路部および接地部がともに開路状態である。この状態を以下、断路状態という。図6(C)は断路部が閉路状態で接地部が開路状態である。この状態を以下、閉路状態という。
【0018】
密閉容器1内に三相の主回路導体2a、2b、2cがガス絶縁されて配置されている。主回路導体2aは固定接触子10aに電気的に接続されている。主回路導体2b、2cも図示しない固定接触子にそれぞれ電気的に接続されている。密閉容器1の主回路導体2aと反対側の端部には主回路導体3が絶縁スペーサー13により支持されている。密閉容器1の紙面上側には、接地開閉器の固定接触子10bがフランジ蓋14にねじ止め等で固定される。
【0019】
図7(A)に図6(A)の開閉部の拡大図を示す。断路開閉部9a側の固定接触子10aは、可動接触子7aと対向するように配置されている。可動接触子7aは中空状の断路器側導体3aにより摺動可能に保持されている。断路器側導体3aは集電子8aを通じて電流を可動接触子7aに通電する。
【0020】
接地開閉部7b側の固定接触子10bは主回路導体3を接地するためのもので、可動接触子7bと対向するように三相配置されている。接地側導体3bは中空状であり可動接触子7bを摺動可能に保持する。また、接地側導体3bは集電子8bを通じて電流を可動接触子7bに通電する。断路器側導体3aと接地側導体3bの中心線が成す角度はほぼ90度に形成される。
【0021】
次に、本発明の特徴である2穴レバーの構成について説明する。図7乃至図9に示す通り、2穴レバー5は、駆動軸4により一端を固定されている。2穴レバーは各相に一つずつ設けられており、一つの駆動軸4にそれぞれが機械的に一体になるように固定されている。駆動軸4が回転すると各相の2穴レバーも駆動軸4と連動して円弧運動する。この駆動軸4は断路器側導体3aと接地側導体3bそれぞれの軸線がなす角度の2等分線上に位置している。
【0022】
2穴レバー5は、回転ピン11d、11eにより湾曲リンク6a、6bの一端とそれぞれ連結している。湾曲リンク6a、6bの他端はそれぞれ可動接触子7a、7bと回転ピン11a、11bで連結されている。これらの湾曲リンクに用いられる材質は、可動接触子が中空導体の内周面を摺動するときに生じる摩擦力に十分耐え得る強度を有するものであれば特に限定されない。
【0023】
図8(A)は、断路器側導体3aと接地側導体3bそれぞれの中心線が成す角度の2等分線に関して、接地開閉部9b側の回転ピン11b、11eと断路開閉部9a側の回転ピン11a、11dが対称となる状態を示している。
【0024】
この状態において、接地開閉部9b側の湾曲リンク6bは、回転ピン11e側端部が可動子7bの軸線上から駆動軸4と離れるように、回転ピン11e側端部からリンク全長の約3分の1のところで紙面左側に湾曲する。同様に、断路開閉部9a側の湾曲リンク6aは、回転ピン11d側端部が可動子7aの軸線上から駆動軸4と離れるように、回転ピン11d側端部からリンク全長の約3分の1のところで紙面下側に湾曲する。
【0025】
なお、図8(A)では、湾曲リンク6a、6bと可動接触子7a、7bを連結する回転ピン11a及び11bの位置は、それぞれ断路器側導体3a及び接地側導体3bの駆動軸4側端部の近傍になっているが、回転ピン11a及び11bの断路器側導体3a及び接地側導体3bに対する位置は、湾曲リンク6a、6bの湾曲部が可動接触子7a、7bの断路器側導体3aと接地側導体3bの内面における摺動を妨げるものでなければ特に限定されない。
【0026】
本実施例の湾曲リンク6bは、図7(A)に示す接地状態において、その一端に位置する回転ピン11eが、可動接触子7bの軸線に対し、駆動軸4と反対側に位置するような湾曲部を有する。一方、湾曲リンク6aは、図9(A)に示す閉路状態において、その一端に位置する回転ピン11dが、可動接触子7aの軸線に対し、駆動軸4と反対側に位置するような湾曲部を有する。
【0027】
ところで、2穴レバー5の回転に伴い、可動接触子7a、7bと2穴レバー5を結ぶリンクはその可動接触子との連結点を中心に円弧運動をする。このため該リンクとして直線リンクを用いた場合には、直線リンクと中空導体の間に円弧運動を可能とするスペースを設けなければならない。直線リンクを用いた従来例に於いて、図1(A)に示す接地状態では、接地側導体103bの内周面紙面左側に溝を掘る必要があり、図1(C)の閉路状態では、断路器側導体103aの内周面紙面下側に溝を掘る必要がある。本実施例に於いても、仮に直線リンクを用いた場合には、同様の溝を中空導体の内周面(直線リンクと中空導体の摺動面)に設けなければならない。
【0028】
しかし、本実施例では湾曲リンク6a、6bを用いることで、リンクの円弧運動の中空導体に対する影響を抑えることが可能となり、断路器側導体3a及び接地側導体3b端部の摺動面に溝を掘ることなく可動接触子7a、7bを導体内で直線移動させることが可能となる。このように、中空導体の摺動面に溝を掘らずにすむことで、以下に説明する摺動摩擦低減部材12を中空導体の内周面に取付け易くなり、摺動摩擦を更に低減することが可能となる。
【0029】
本実施例では、摺動摩擦低減材12が所定の間隔で断路器側導体3aの円筒内周面および接地側導体3bの円筒内周面のそれぞれ2箇所に周方向に取付けられている。可動接触子7a、7bが摺動摩擦低減材12と摺動することで摺動摩擦の負荷トルクを大幅に低減することが可能となる。この摺動摩擦低減材12は、リング状に途切れなく配置されてもよく、所定の間隔をおいて点状に配置されてもよい。なお、配置する摺動摩擦抵減材12の個数および配置の間隔は、本実施例に示すものに限られず適宜調整すればよい。後に詳述するが、摺動摩擦低減材を2箇所に配置する場合には、この2箇所の間隔を出来る限り大きく確保することによって摺動面の摩擦を低減することができる。なお、摺動摩擦低減材12としては、耐摩耗性に優れた、充填材入り4フッ化エチレン樹脂等が挙げられる。
【0030】
以下、本実施例の動作とそれに伴う電気的な流れについて図6(A)(B)(C)に基づいて説明する。図6(A)に示す接地状態では、固定接触子10bは常時接地され大地と同電位になっている。可動接触子7bが固定接触子10bに接触すると、集電子8bを介して主回路導体3から可動接触子7bを経て固定接触子10bに通電する。一方、可動接触子7aは断路器側導体3aの円筒内に位置しており、断路器の開閉部9aは電気的に切り離された状態になっている。
【0031】
図6(B)は図6(A)の状態から駆動軸4を可動回転角度の二分の一だけ反時計廻りに回転させたときの断路状態を示す。この状態では、それぞれの開閉部はガス絶縁され所定の絶縁強度を有する。この状態は、次の開閉動作を行う前に両開閉部を電気的に中立にして安全を確保するためのものである。
【0032】
図6(B)の状態から駆動軸4を可動回転角度の残りの二分の一を反時計廻りに回転させたときの閉路状態を図6(C)に示す。接地開閉部9bは図6(B)の位置から電気的に完全に開路状態のままで、断路器の開閉部9aが完全に閉路状態となっている。
【0033】
以下、本実施例の2穴レバーを用いた場合に生じる負荷トルクが、図2に示す1穴レバーを用いた場合に生じる負荷トルクと比べていかに低減されるかについて、図面を参照して説明する。
【0034】
まず、図2に示す3ポジション開閉器の駆動に伴い生じる負荷力を、図3乃至図5にベクトルを用いて示す。図3(B)は図3(A)の接地状態から初動トルクを駆動軸204に反時計廻りに与えたときのベクトル図である。
【0035】
ここで、断路開閉部209a側に於ける分力および反力について検討する。図3(B)において、初期駆動トルクを与えると1穴レバー205の回転ピン211cの位置に駆動力F0が発生する。次に駆動力F0の分力F11が発生し、さらに、F11Cosθ2で示される分力F12とF11Sinθ2で示される分力F13が発生する。
【0036】
分力F12は可動接触子207aの可動子軸方向の有効な推進力となるため大きい方が好ましい。しかし問題となるのは可動接触子207aの軸直角方向に生じる分力F13である。分力F13によって可動接触子207aは反力F14と反力F15を摺動面から受けることになる。
【0037】
一方、接地開閉部209b側においては、可動接触子207bは、断路開閉部209aと正反対の挙動をするので、駆動力F0から分力F21が発生し、次に、F21Cosθで示される分力F22とF21Sinθで示される分力F23とが発生する。分力F22は可動接触子207bの可動軸方向の有効な推進力となるため大きい方が好ましい。しかし問題となるは、前述同様、可動接触子207bの軸直角方向の分力F23である。分力F23によって可動接触子207bは反力F24、反力F25を摺動面から受けることになる。
【0038】
次に、図4(A)(B)で示す断路状態について説明する。この状態でのθ1とθ2を図3(B)に示すθ1とθ2と比較すると図4(B)に示す角度のほうが小さくなっている。この角度θ1とθ2が小さくなることは摺動摩擦力が小さくなることを意味する。摺動摩擦力はθ1とθ2の関数になっているためである。
【0039】
次に、図5(A)(B)で示す閉路状態について説明する。この状態での図5(B)に示すθ1とθ2を図3(B)に示すθ1とθ2と比較すると図5(B)のθ1が図3(B)のθ2と、図5(B)のθ2が図3(B)のθ1と同じ角度になっている。これは、本リンク機構が断路器側導体203a及び接地側導体203bの成す角度の二等分線に関して線対称の構成であることによるものである。よって、可動接触子が摺動面から受ける反力は図3(B)に示すものと同等になる。
【0040】
摺動摩擦力は可動接触子207a、207bが受ける反力F14、F15、F24、F25と断路器側導体203aおよび接地側導体203bの円筒内面の接触摩擦係数との積になる。図3乃至図5に示すθ1、θ2は1穴レバー205の回転位置によって変化するので、反力F14、F15、F24、F25も1穴レバー205の回転位置に対応して変化する。上記の検討からθの値は可動接触子の初動時および動作完了時が最も大きいので摺動摩擦力も可動接触子の初動時と動作完了時が最も大きくなる。
【0041】
以下、図10(A)(B)(C)に基づいて、可動接触子の動作と負荷トルクの関係について説明する。図10は、操作器から一定の駆動Taを与えたときに摺動摩擦力によって負荷トルクTbがどのように変化するのかを示した図である。可動接触子207a、207bと断路器側導体203aの円筒摺動面および接地側導体203bの円筒摺動面との摩擦係数はそれぞれ1.2とする。
【0042】
この負荷トルクTb曲線は、3ポジション開閉器が接地状態から動作を開始したときの負荷トルクの変化を示す曲線である。図10(A)の負荷トルクTbは断路開閉部209a側のみの負荷トルクを示す。操作器の駆動トルクTaを100%としたときに初動時の負荷トルクTbは93.5%となる。可動接触子207aが閉路方向、すなわち、固定接触子210a方向に向かうにつれて負荷トルクTbは急激に減少し、図3乃至図5に示すθ2がゼロ点のときに分力F13がゼロとなる。θ2がゼロ点を過ぎると負荷トルクTbが増加傾向になるが、初動時の負荷トルクに比較して遥かに小さいことが分かる。
【0043】
図10(B)は、図10(A)と同じ動作における接地開閉部209b側のみの負荷トルクを示す。図10(B)は、図10(A)とは正反対の負荷トルク曲線になる。図10(B)から操作器の駆動トルクTaを100%としたときに接地開閉部209b側のみの動作完了直前の負荷トルクは93.5%となる。
【0044】
駆動軸204が回転すると断路開閉部209aと接地開閉部209bの両負荷トルクが同時に駆動軸204にかかる。図10(C)の負荷トルクTbは、図10(A)と図10(B)の負荷トルクを算術的に加算してプロットしたものである。3ポジション開閉器の初動時、すなわち、可動接触子207a、207bの行程が0%の時(接地状態からの動作開始直後)には、駆動トルクTa100%に対して負荷トルクTbが99.7%となる。可動接触子207aの行程が増加するにつれて負荷トルクは減少するが、同行程の40%から60%にかけて負荷トルクの減少が増加に転じ、同行程が100%の時(閉路状態直前)には負荷トルクTbが99.7%に達する。
【0045】
以上の検討から分かるように、図2に示す3ポジション開閉器は、その初動時と動作完了時に非常に大きな負荷トルクが生じる。このため図2に示す1穴レバーを用いた3ポジション開閉器では操作力の大きな操作器を使わなければならず操作器の大型化につながるという問題があった。これに対して、本実施例の3ポジション開閉器では、上記の構成とすることで、その初動時と動作完了時に大きな負荷トルクが生じることを防ぐことが可能となる。
【0046】
以下、図7乃至図9を参照して、本実施例の3ポジション開閉器がいかに負荷トルクを低減できるか説明する。図7(B)は図7(A)の状態から初動トルクを駆動軸4に反時計廻りに与えたときのベクトル図である。図7(B)において、駆動軸4に駆動トルクが加わると回転ピン11dに駆動力F0が発生し、駆動力F0の分力F11も発生する。その後、分力F11から可動接触子7aの推進力となる分力F12と可動接触子の軸に対し直角方向の分力F13が生じる。
【0047】
分力F13が可動接触子7aと断路器側導体3aの円筒内面との間に摺動摩擦力を発生させる要因となる。つまり、分力F13の発生により摺動摩擦低減材12が装着された支持点に分力F14と分力F15で示す反力が発生する。摩擦力はそれぞれの分力F14と分力F15に摩擦係数を掛けた値となる。
【0048】
分力F13はF11Sinθ2で表される。したがって、摺動摩擦力はθ2に大きく左右される。このため、本実施例ではθ2を小さくすることができる構造を採用した。すなわち、2穴レバ−5に2つの回転ピン11dおよび11eを設け、湾曲リンク6a、6bを介して可動接触子7a、7bを連結した。図3(B)と図7(B)を比較すれば明らかなように、2穴レバーを用いることで、1穴レバーを用いる場合に比べθ2を小さくすることが可能となった。
【0049】
なお、摺動摩擦力は、分力F13の作用点と反力分担の分力F14またはF15の支持点との間隔距離にも左右される。この間隔距離は図7に示す初動時において最大値となり、その後時々刻々変化する。すなわち、摺動摩擦力は時々刻々変化するθ2と間隔距離の変数をもつ関数となる。
【0050】
図8(B)は図7(B)の状態から駆動軸4の可動回転角度の二分の一だけ反時計廻りに回転させたときの状態を示す。図8(B)に示すθ2は図7(B)に示すθ2と比較すると絶対値で大きくなっている。しかし分力F13の作用点と反力分担の分力F14との間隔距離が図7(B)に示すものより小さくなっている。これにより反力分担の分力F14と分力F15を相対的に小さくすることができる。このように、θ2が大きくなることを、分力F13の作用点と反力分担の分力F14との間隔距離を小さくすることで、断路状態で生じる摺動摩擦力を図7(B)の初動時に生じる摺動摩擦力より小さくすることが可能となる。
【0051】
図9(B)は図8(B)の状態から駆動軸4を可動回転角度の残りの二分の一を反時計廻りに回転させたときの状態を示す。これによれば、θ2は図7(B)に示すものと同程度の値であり、分力F13の作用点と反力分担の分力F15との間隔距離が図8(B)に示す分力F13の作用点と分力F14との間隔距離より小さくなる。これにより、摺動摩擦力を図8(B)の開路状態の場合より小さくすることが可能となる。
【0052】
以上、摺動摩擦力に関して図7乃至図9に示す3つの状態に分けて説明した。次に、これらの状態を負荷トルクの観点から説明する。図10乃至図12は、初動時から動作完了時までの摺動摩擦力を連続的に計算して駆動軸4に換算した負荷トルクTcを示したものである。図10(A)(B)(C)に示す負荷トルクTc曲線は摺動摩擦係数を1.2としたときのものである。図中、本実施例の負荷トルク曲線を実線で示す。
【0053】
図10(A)は断路器のみの負荷トルク曲線を示したものである。一定の駆動トルクTa(100%)を与えたとき、本発明の断路器の初動時における負荷トルクTcは、駆動トルクTaに対して24.7%になる。一方、図3(A)に示す1穴レバ−205を用いた場合の初動時における負荷トルクTbは、駆動トルクTaに対して93.5%である。従って、本実施例の構成を採ることで、前述の1穴レバ−の構成と比較して負荷トルクTcが7割程度低減できることが分かる。これにより操作器の駆動出力を低減するができ、操作器の小型化が可能となる。
【0054】
図10(B)は接地開閉器のみの負荷トルク曲線を示したものである。一定の駆動トルクTa(100%)を与えたとき、本実施例の接地開閉器の初動時における負荷トルクTcは、駆動トルクTaに対して8.6%になる。なお、接地開閉器と断路器の構成は対称的であるため、接地開閉器の負荷トルクTc曲線は断路器の負荷トルクTc曲線と正反対の特性を示す。
【0055】
図10(C)に、断路器と接地開閉器のそれぞれの負荷トルクTcを算術的に加算した負荷トルクTc曲線を示す。初動時には断路器と接地開閉器のそれぞれの負荷トルクTcが同時に発生するので、そのときの初動時の負荷トルクTcは一定の駆動トルクTa(100%)に対して33.3%になる。つまり、1穴レバ−の操作器の初動時における負荷トルクTbと比較しておおよそ66.4%(=99.7-33.3)まで低減できたことが分かる。
【0056】
また、図11(A)(B)(C)に示す負荷トルク曲線は摺動摩擦係数を1.0としたときのものである。本実施例の負荷トルクTc曲線を実線で示す。図10(A)(B)(C)の場合と初動時の負荷トルクについて比較すると、摺動摩擦係数の低下に応じて負荷トルクの値も小さくなっている。
【0057】
さらに、図12(A)(B)(C)に示す負荷トルク曲線は摺動摩擦係数を0.5としたものである。本実施例の負荷トルクTc曲線を実線で示す。図10(A)(B)(C)および図11(A)(B)(C)の場合と初動時の負荷トルクについて比較すると、摺動摩擦係数の低下に応じて負荷トルクの値はさらに小さくなっている。
【0058】
図10乃至12から分かるように、摺動摩擦低減材12の摩擦係数によって負荷トルクが変化するので材料の選択が重要である。また、経年により摺動摩擦低減部材に磨耗が生じた際に部品の交換を容易にするため、摺動摩擦低減材12を取り外しができる構造とするのが好ましい。
【0059】
以上より、本実施例では、断路部と接地開閉部の可動接触子を連動させるために簡易な機構を採用しつつ、可動接触子の初動時の負荷トルクを低減することが可能となる。これにより、操作力の小さな操作器を用いることが可能となり、GIS全体を小型化することが可能となる。また、断路用の可動接触子と接地開閉器用の可動接触子を互いに略90度に配置することが可能となるため、GISのタンク長を短くすることが可能となり、GIS全体の小型化が可能となる。
【符号の説明】
【0060】
1 密閉容器
3a 断路器側導体
3b 接地側導体
4 駆動軸
5 2穴レバー
6a、b 湾曲リンク
7a、b 可動接触子
11a、b、d、e 回転ピン
12 摺動摩擦低減材
【技術分野】
【0001】
本発明は3位置開閉部を有する断路器・接地開閉器(以下、3ポジション開閉器という。)に関し、特に、簡易な構成で装置全体の小型化が可能な3ポジション開閉器に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス絶縁開閉装置(以下、GISという。)は、遮断器や断路器や接地開閉器等の機器を有して構成される。GISには、密閉容器内に接地開閉器と断路器を一体に構成した3ポジション開閉器が多く使用される。
【0003】
従来一般的に用いられている3ポジション開閉器の概要を図1(A)乃至(C)に示す。この3ポジション開閉器は、容器101と、三相の主回路導体102a、102b、102cと、断路器側固定接触子110aと、断路器側可動接触子107aと、直線リンク106a、106bと、駆動軸104と、一穴レバー105と、接地開閉器側可動接触子107bと、接地開閉器側固定接触子110bと、主回路導体103とで概略構成されている。この3ポジション開閉器は、断路器側導体103aと接地側導体103bの中心線が成す角度(以下、開き角度という。)が鈍角となっており、GIS全体が大型化するという問題があった。
【0004】
そこで、図2(A)乃至(C)に示すように、断路器側導体203aと接地側導体203bの開き角度が略直角を成すように構成することでタンク長を短くすることが考えられる。しかし、この構成では、断路器側可動接触子207aおよび接地開閉器側可動接触子207bの初動時に、断路器側可動接触子207aと断路器側導体203aの円筒摺動面、および接地開閉器側可動接触子207bと接地側導体203bの円筒摺動面の摩擦力が非常に大きくなる。このため、駆動出力の大きな操作器が必要となり、GIS全体が大きくなるという問題があった。また、可動接触子と円筒摺動面の摩擦により異物が生じやすくなるという問題があった。
【0005】
断路器側導体と接地側導体の開き角度が略直角を成す構成として、例えば、特許文献1に示すような3ポジション開閉器が挙げられる。特許文献1には、中心導体の間に設けられた略V字形のカム溝を有するカムと、このカム溝をローラーによって移動する断路器側の可動接触子と接地開閉器側の可動接触子を有する3ポジション開閉器が開示されている。
【0006】
この構成では、断路器側導体と接地側導体の開き角度が略直角を成す構成とすることでタンク長を短くすることが可能である。しかし、ローラーがカム溝を摺動することで摺動粉が発生するという問題があった。また、構成が複雑で製作に手間がかかるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公昭54−29701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、断路部と接地開閉部の可動接触子を連動して直線移動させるために簡易な機構を採用しつつ、可動接触子と中空導体間の摺動摩擦力を極力抑えることで異物の発生を防ぎ、操作器も含めてGIS全体を小型化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によるガス絶縁開閉装置は、密閉容器内に、略直交するように設けられた断路器側及び接地開閉器側の2つの中空導体と、これらの中空導体内をそれぞれ摺動する2つの可動接触子と、これらの可動接触子に対向する2つの固定接触子と、これらの可動接触子がそれぞれ連結する2つの湾曲リンクと、これらの湾曲リンクが連結され駆動軸を中心に回動する2穴レバーとで構成する。2つの可動接触子は2穴レバーの回動に応じて互いに略直角方向に直線移動するように配置し、2穴レバーの駆動軸は2つの中空導体の軸線がなす角度の2等分線上に位置するように配置する。断路器側の可動接触子と2穴レバーそれぞれが断路器側湾曲リンクと連結する2つの連結点と、接地開閉器側の可動接触子と2穴レバーそれぞれが接地開閉器側湾曲リンクと連結する2つの連結点とが、上記2等分線に関して線対称となるときに、断路器及び接地開閉器がともに開状態であって、2穴レバーがこの開状態から断路器側に所定の角度振れたときに断路器が閉路状態となり、2穴レバーが上記開状態から接地開閉器側に所定の角度振れたときに接地開閉器が閉路状態となるように構成する。
【0010】
好ましくは、前記2つの中空導体の前記2つの可動接触子が摺動する面に、摺動摩擦力を低減するための部材を配置したことを特徴とする。
【0011】
ここで、本発明における可動接触子と2穴レバーを連結する「湾曲リンク」とは、弓なりに曲がった形状のリンクのみならず、直角リンク等、所定の角度を有する形状のリンクも広く含むものである。また、本発明における「2穴レバー」とは、駆動軸を中心に円弧運動し、駆動軸と反対側の端部2箇所に可動接触子を直線移動させるための湾曲リンクを2つ連結できるものであればよく、その外形状については特に限定されない。
【発明の効果】
【0012】
本発明の3ポジション開閉器は、略直交する中空導体内で可動接触子を摺動させるときに、2穴レバーにより湾曲リンクを介して可動接触子を直線移動させる構成をとる。この構成により、1穴レバーを用いた場合の、特に初動時に顕著に生じる摩擦力を低減することが可能となる。また、摩擦力の低減により操作器の小型化が可能となり、ひいては装置全体を小型化することが可能となる。
【0013】
また、2穴レバーに直接湾曲リンクを連結することでリンク機構部を構成するため、特許文献1に示すような複雑な構成を採ることなく、簡易な構成とすることが可能となる。このように簡易な構成をとることで、製作時の負担を軽減することが可能となる。また、リンク機構部からの摺動粉等の異物の発生を低減することが可能となり、装置の信頼性を向上させることができる。
【0014】
さらに、中空導体の内周面に摺動摩擦を低減するための部材を取付けることで、可動接触子が移動するときに生じる摺動摩擦を更に低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1(A)(B)(C)は従来の3ポジション開閉器の構成および動作を示す断面図である。
【図2】図2(A)(B)(C)は従来の3ポジション開閉器の断路器側導体と接地側導体間の開き角度を略直角とした構成を示す断面図である。
【図3】図3(A)は図2(A)の開閉部の拡大図であり、図3(B)は接地開閉器が閉状態から動作を開始した直後の駆動力と負荷力を示すベクトル図である。
【図4】図4(A)は図2(B)の開閉部の拡大図であり、図4(B)は接地開閉器が開状態および断路器が開状態であるときの駆動力と負荷力を示すベクトル図である。
【図5】図5(A)は図2(C)の開閉部の拡大図であり、図5(B)は接地開閉器が開状態であって断路器が閉状態となる直前における駆動力と負荷力を示すベクトル図である。
【図6】図6(A)(B)(C)は、本発明に係る3ポジション開閉器の構成および動作を示す断面図である。
【図7】図7(A)は図6(A)の開閉部の拡大図であり、図7(B)は接地開閉器が閉状態から動作を開始した直後の駆動力と負荷力を示すベクトル図である。
【図8】図8(A)は図6(B)の開閉部の拡大図であり、図8(B)は接地開閉器が開状態および断路器が開状態であるときの駆動力と負荷力を示すベクトル図である。
【図9】図9(A)は図6(C)の開閉部の拡大図であり、図9(B)は接地開閉器が開状態であって断路器が閉状態となる直前における駆動力と負荷力を示すベクトル図である。
【図10】図10(A)は、摺動摩擦係数を1.2とした場合の、可動接触子行程と駆動トルクと負荷トルクとの関係を示した断路器側の負荷トルク曲線である。図10(B)は、摺動摩擦係数を1.2とした場合の、可動接触子行程と駆動トルクと負荷トルクとの関係を示した接地開閉器側の負荷トルク曲線である。図10(C)は、図10(A)および図10(B)に示す負荷トルク曲線を加算したものである。
【図11】図11(A)は、摺動摩擦係数を1.0とした場合の、可動接触子行程と駆動トルクと負荷トルクとの関係を示した断路器側の負荷トルク曲線である。図11(B)は、摺動摩擦係数を1.0とした場合の、可動接触子行程と駆動トルクと負荷トルクとの関係を示した接地開閉器側の負荷トルク曲線である。図11(C)は、図11(A)および図11(B)に示す負荷トルク曲線を加算したものである。
【図12】図12(A)は、摺動摩擦係数を0.5とした場合の、可動接触子行程と駆動トルクと負荷トルクとの関係を示した断路器側の負荷トルク曲線である。図12(B)は、摺動摩擦係数を0.5とした場合の、可動接触子行程と駆動トルクと負荷トルクとの関係を示した接地開閉器側の負荷トルク曲線である。図12(C)は、図12(A)および図12(B)に示す負荷トルク曲線を加算したものである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の態様を図面に基づいて説明する。なお、下記実施例は、本発明に係る3ポジション開閉器の一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各部の形状並びに構成を適宜変更して実施することが可能である。
【実施例1】
【0017】
図6(A)(B)(C)は、本発明の1実施例を示す図である。図6(A)は断路部が開路状態で接地部が閉路状態である。この状態を、以下、接地状態という。図6(B)は断路部および接地部がともに開路状態である。この状態を以下、断路状態という。図6(C)は断路部が閉路状態で接地部が開路状態である。この状態を以下、閉路状態という。
【0018】
密閉容器1内に三相の主回路導体2a、2b、2cがガス絶縁されて配置されている。主回路導体2aは固定接触子10aに電気的に接続されている。主回路導体2b、2cも図示しない固定接触子にそれぞれ電気的に接続されている。密閉容器1の主回路導体2aと反対側の端部には主回路導体3が絶縁スペーサー13により支持されている。密閉容器1の紙面上側には、接地開閉器の固定接触子10bがフランジ蓋14にねじ止め等で固定される。
【0019】
図7(A)に図6(A)の開閉部の拡大図を示す。断路開閉部9a側の固定接触子10aは、可動接触子7aと対向するように配置されている。可動接触子7aは中空状の断路器側導体3aにより摺動可能に保持されている。断路器側導体3aは集電子8aを通じて電流を可動接触子7aに通電する。
【0020】
接地開閉部7b側の固定接触子10bは主回路導体3を接地するためのもので、可動接触子7bと対向するように三相配置されている。接地側導体3bは中空状であり可動接触子7bを摺動可能に保持する。また、接地側導体3bは集電子8bを通じて電流を可動接触子7bに通電する。断路器側導体3aと接地側導体3bの中心線が成す角度はほぼ90度に形成される。
【0021】
次に、本発明の特徴である2穴レバーの構成について説明する。図7乃至図9に示す通り、2穴レバー5は、駆動軸4により一端を固定されている。2穴レバーは各相に一つずつ設けられており、一つの駆動軸4にそれぞれが機械的に一体になるように固定されている。駆動軸4が回転すると各相の2穴レバーも駆動軸4と連動して円弧運動する。この駆動軸4は断路器側導体3aと接地側導体3bそれぞれの軸線がなす角度の2等分線上に位置している。
【0022】
2穴レバー5は、回転ピン11d、11eにより湾曲リンク6a、6bの一端とそれぞれ連結している。湾曲リンク6a、6bの他端はそれぞれ可動接触子7a、7bと回転ピン11a、11bで連結されている。これらの湾曲リンクに用いられる材質は、可動接触子が中空導体の内周面を摺動するときに生じる摩擦力に十分耐え得る強度を有するものであれば特に限定されない。
【0023】
図8(A)は、断路器側導体3aと接地側導体3bそれぞれの中心線が成す角度の2等分線に関して、接地開閉部9b側の回転ピン11b、11eと断路開閉部9a側の回転ピン11a、11dが対称となる状態を示している。
【0024】
この状態において、接地開閉部9b側の湾曲リンク6bは、回転ピン11e側端部が可動子7bの軸線上から駆動軸4と離れるように、回転ピン11e側端部からリンク全長の約3分の1のところで紙面左側に湾曲する。同様に、断路開閉部9a側の湾曲リンク6aは、回転ピン11d側端部が可動子7aの軸線上から駆動軸4と離れるように、回転ピン11d側端部からリンク全長の約3分の1のところで紙面下側に湾曲する。
【0025】
なお、図8(A)では、湾曲リンク6a、6bと可動接触子7a、7bを連結する回転ピン11a及び11bの位置は、それぞれ断路器側導体3a及び接地側導体3bの駆動軸4側端部の近傍になっているが、回転ピン11a及び11bの断路器側導体3a及び接地側導体3bに対する位置は、湾曲リンク6a、6bの湾曲部が可動接触子7a、7bの断路器側導体3aと接地側導体3bの内面における摺動を妨げるものでなければ特に限定されない。
【0026】
本実施例の湾曲リンク6bは、図7(A)に示す接地状態において、その一端に位置する回転ピン11eが、可動接触子7bの軸線に対し、駆動軸4と反対側に位置するような湾曲部を有する。一方、湾曲リンク6aは、図9(A)に示す閉路状態において、その一端に位置する回転ピン11dが、可動接触子7aの軸線に対し、駆動軸4と反対側に位置するような湾曲部を有する。
【0027】
ところで、2穴レバー5の回転に伴い、可動接触子7a、7bと2穴レバー5を結ぶリンクはその可動接触子との連結点を中心に円弧運動をする。このため該リンクとして直線リンクを用いた場合には、直線リンクと中空導体の間に円弧運動を可能とするスペースを設けなければならない。直線リンクを用いた従来例に於いて、図1(A)に示す接地状態では、接地側導体103bの内周面紙面左側に溝を掘る必要があり、図1(C)の閉路状態では、断路器側導体103aの内周面紙面下側に溝を掘る必要がある。本実施例に於いても、仮に直線リンクを用いた場合には、同様の溝を中空導体の内周面(直線リンクと中空導体の摺動面)に設けなければならない。
【0028】
しかし、本実施例では湾曲リンク6a、6bを用いることで、リンクの円弧運動の中空導体に対する影響を抑えることが可能となり、断路器側導体3a及び接地側導体3b端部の摺動面に溝を掘ることなく可動接触子7a、7bを導体内で直線移動させることが可能となる。このように、中空導体の摺動面に溝を掘らずにすむことで、以下に説明する摺動摩擦低減部材12を中空導体の内周面に取付け易くなり、摺動摩擦を更に低減することが可能となる。
【0029】
本実施例では、摺動摩擦低減材12が所定の間隔で断路器側導体3aの円筒内周面および接地側導体3bの円筒内周面のそれぞれ2箇所に周方向に取付けられている。可動接触子7a、7bが摺動摩擦低減材12と摺動することで摺動摩擦の負荷トルクを大幅に低減することが可能となる。この摺動摩擦低減材12は、リング状に途切れなく配置されてもよく、所定の間隔をおいて点状に配置されてもよい。なお、配置する摺動摩擦抵減材12の個数および配置の間隔は、本実施例に示すものに限られず適宜調整すればよい。後に詳述するが、摺動摩擦低減材を2箇所に配置する場合には、この2箇所の間隔を出来る限り大きく確保することによって摺動面の摩擦を低減することができる。なお、摺動摩擦低減材12としては、耐摩耗性に優れた、充填材入り4フッ化エチレン樹脂等が挙げられる。
【0030】
以下、本実施例の動作とそれに伴う電気的な流れについて図6(A)(B)(C)に基づいて説明する。図6(A)に示す接地状態では、固定接触子10bは常時接地され大地と同電位になっている。可動接触子7bが固定接触子10bに接触すると、集電子8bを介して主回路導体3から可動接触子7bを経て固定接触子10bに通電する。一方、可動接触子7aは断路器側導体3aの円筒内に位置しており、断路器の開閉部9aは電気的に切り離された状態になっている。
【0031】
図6(B)は図6(A)の状態から駆動軸4を可動回転角度の二分の一だけ反時計廻りに回転させたときの断路状態を示す。この状態では、それぞれの開閉部はガス絶縁され所定の絶縁強度を有する。この状態は、次の開閉動作を行う前に両開閉部を電気的に中立にして安全を確保するためのものである。
【0032】
図6(B)の状態から駆動軸4を可動回転角度の残りの二分の一を反時計廻りに回転させたときの閉路状態を図6(C)に示す。接地開閉部9bは図6(B)の位置から電気的に完全に開路状態のままで、断路器の開閉部9aが完全に閉路状態となっている。
【0033】
以下、本実施例の2穴レバーを用いた場合に生じる負荷トルクが、図2に示す1穴レバーを用いた場合に生じる負荷トルクと比べていかに低減されるかについて、図面を参照して説明する。
【0034】
まず、図2に示す3ポジション開閉器の駆動に伴い生じる負荷力を、図3乃至図5にベクトルを用いて示す。図3(B)は図3(A)の接地状態から初動トルクを駆動軸204に反時計廻りに与えたときのベクトル図である。
【0035】
ここで、断路開閉部209a側に於ける分力および反力について検討する。図3(B)において、初期駆動トルクを与えると1穴レバー205の回転ピン211cの位置に駆動力F0が発生する。次に駆動力F0の分力F11が発生し、さらに、F11Cosθ2で示される分力F12とF11Sinθ2で示される分力F13が発生する。
【0036】
分力F12は可動接触子207aの可動子軸方向の有効な推進力となるため大きい方が好ましい。しかし問題となるのは可動接触子207aの軸直角方向に生じる分力F13である。分力F13によって可動接触子207aは反力F14と反力F15を摺動面から受けることになる。
【0037】
一方、接地開閉部209b側においては、可動接触子207bは、断路開閉部209aと正反対の挙動をするので、駆動力F0から分力F21が発生し、次に、F21Cosθで示される分力F22とF21Sinθで示される分力F23とが発生する。分力F22は可動接触子207bの可動軸方向の有効な推進力となるため大きい方が好ましい。しかし問題となるは、前述同様、可動接触子207bの軸直角方向の分力F23である。分力F23によって可動接触子207bは反力F24、反力F25を摺動面から受けることになる。
【0038】
次に、図4(A)(B)で示す断路状態について説明する。この状態でのθ1とθ2を図3(B)に示すθ1とθ2と比較すると図4(B)に示す角度のほうが小さくなっている。この角度θ1とθ2が小さくなることは摺動摩擦力が小さくなることを意味する。摺動摩擦力はθ1とθ2の関数になっているためである。
【0039】
次に、図5(A)(B)で示す閉路状態について説明する。この状態での図5(B)に示すθ1とθ2を図3(B)に示すθ1とθ2と比較すると図5(B)のθ1が図3(B)のθ2と、図5(B)のθ2が図3(B)のθ1と同じ角度になっている。これは、本リンク機構が断路器側導体203a及び接地側導体203bの成す角度の二等分線に関して線対称の構成であることによるものである。よって、可動接触子が摺動面から受ける反力は図3(B)に示すものと同等になる。
【0040】
摺動摩擦力は可動接触子207a、207bが受ける反力F14、F15、F24、F25と断路器側導体203aおよび接地側導体203bの円筒内面の接触摩擦係数との積になる。図3乃至図5に示すθ1、θ2は1穴レバー205の回転位置によって変化するので、反力F14、F15、F24、F25も1穴レバー205の回転位置に対応して変化する。上記の検討からθの値は可動接触子の初動時および動作完了時が最も大きいので摺動摩擦力も可動接触子の初動時と動作完了時が最も大きくなる。
【0041】
以下、図10(A)(B)(C)に基づいて、可動接触子の動作と負荷トルクの関係について説明する。図10は、操作器から一定の駆動Taを与えたときに摺動摩擦力によって負荷トルクTbがどのように変化するのかを示した図である。可動接触子207a、207bと断路器側導体203aの円筒摺動面および接地側導体203bの円筒摺動面との摩擦係数はそれぞれ1.2とする。
【0042】
この負荷トルクTb曲線は、3ポジション開閉器が接地状態から動作を開始したときの負荷トルクの変化を示す曲線である。図10(A)の負荷トルクTbは断路開閉部209a側のみの負荷トルクを示す。操作器の駆動トルクTaを100%としたときに初動時の負荷トルクTbは93.5%となる。可動接触子207aが閉路方向、すなわち、固定接触子210a方向に向かうにつれて負荷トルクTbは急激に減少し、図3乃至図5に示すθ2がゼロ点のときに分力F13がゼロとなる。θ2がゼロ点を過ぎると負荷トルクTbが増加傾向になるが、初動時の負荷トルクに比較して遥かに小さいことが分かる。
【0043】
図10(B)は、図10(A)と同じ動作における接地開閉部209b側のみの負荷トルクを示す。図10(B)は、図10(A)とは正反対の負荷トルク曲線になる。図10(B)から操作器の駆動トルクTaを100%としたときに接地開閉部209b側のみの動作完了直前の負荷トルクは93.5%となる。
【0044】
駆動軸204が回転すると断路開閉部209aと接地開閉部209bの両負荷トルクが同時に駆動軸204にかかる。図10(C)の負荷トルクTbは、図10(A)と図10(B)の負荷トルクを算術的に加算してプロットしたものである。3ポジション開閉器の初動時、すなわち、可動接触子207a、207bの行程が0%の時(接地状態からの動作開始直後)には、駆動トルクTa100%に対して負荷トルクTbが99.7%となる。可動接触子207aの行程が増加するにつれて負荷トルクは減少するが、同行程の40%から60%にかけて負荷トルクの減少が増加に転じ、同行程が100%の時(閉路状態直前)には負荷トルクTbが99.7%に達する。
【0045】
以上の検討から分かるように、図2に示す3ポジション開閉器は、その初動時と動作完了時に非常に大きな負荷トルクが生じる。このため図2に示す1穴レバーを用いた3ポジション開閉器では操作力の大きな操作器を使わなければならず操作器の大型化につながるという問題があった。これに対して、本実施例の3ポジション開閉器では、上記の構成とすることで、その初動時と動作完了時に大きな負荷トルクが生じることを防ぐことが可能となる。
【0046】
以下、図7乃至図9を参照して、本実施例の3ポジション開閉器がいかに負荷トルクを低減できるか説明する。図7(B)は図7(A)の状態から初動トルクを駆動軸4に反時計廻りに与えたときのベクトル図である。図7(B)において、駆動軸4に駆動トルクが加わると回転ピン11dに駆動力F0が発生し、駆動力F0の分力F11も発生する。その後、分力F11から可動接触子7aの推進力となる分力F12と可動接触子の軸に対し直角方向の分力F13が生じる。
【0047】
分力F13が可動接触子7aと断路器側導体3aの円筒内面との間に摺動摩擦力を発生させる要因となる。つまり、分力F13の発生により摺動摩擦低減材12が装着された支持点に分力F14と分力F15で示す反力が発生する。摩擦力はそれぞれの分力F14と分力F15に摩擦係数を掛けた値となる。
【0048】
分力F13はF11Sinθ2で表される。したがって、摺動摩擦力はθ2に大きく左右される。このため、本実施例ではθ2を小さくすることができる構造を採用した。すなわち、2穴レバ−5に2つの回転ピン11dおよび11eを設け、湾曲リンク6a、6bを介して可動接触子7a、7bを連結した。図3(B)と図7(B)を比較すれば明らかなように、2穴レバーを用いることで、1穴レバーを用いる場合に比べθ2を小さくすることが可能となった。
【0049】
なお、摺動摩擦力は、分力F13の作用点と反力分担の分力F14またはF15の支持点との間隔距離にも左右される。この間隔距離は図7に示す初動時において最大値となり、その後時々刻々変化する。すなわち、摺動摩擦力は時々刻々変化するθ2と間隔距離の変数をもつ関数となる。
【0050】
図8(B)は図7(B)の状態から駆動軸4の可動回転角度の二分の一だけ反時計廻りに回転させたときの状態を示す。図8(B)に示すθ2は図7(B)に示すθ2と比較すると絶対値で大きくなっている。しかし分力F13の作用点と反力分担の分力F14との間隔距離が図7(B)に示すものより小さくなっている。これにより反力分担の分力F14と分力F15を相対的に小さくすることができる。このように、θ2が大きくなることを、分力F13の作用点と反力分担の分力F14との間隔距離を小さくすることで、断路状態で生じる摺動摩擦力を図7(B)の初動時に生じる摺動摩擦力より小さくすることが可能となる。
【0051】
図9(B)は図8(B)の状態から駆動軸4を可動回転角度の残りの二分の一を反時計廻りに回転させたときの状態を示す。これによれば、θ2は図7(B)に示すものと同程度の値であり、分力F13の作用点と反力分担の分力F15との間隔距離が図8(B)に示す分力F13の作用点と分力F14との間隔距離より小さくなる。これにより、摺動摩擦力を図8(B)の開路状態の場合より小さくすることが可能となる。
【0052】
以上、摺動摩擦力に関して図7乃至図9に示す3つの状態に分けて説明した。次に、これらの状態を負荷トルクの観点から説明する。図10乃至図12は、初動時から動作完了時までの摺動摩擦力を連続的に計算して駆動軸4に換算した負荷トルクTcを示したものである。図10(A)(B)(C)に示す負荷トルクTc曲線は摺動摩擦係数を1.2としたときのものである。図中、本実施例の負荷トルク曲線を実線で示す。
【0053】
図10(A)は断路器のみの負荷トルク曲線を示したものである。一定の駆動トルクTa(100%)を与えたとき、本発明の断路器の初動時における負荷トルクTcは、駆動トルクTaに対して24.7%になる。一方、図3(A)に示す1穴レバ−205を用いた場合の初動時における負荷トルクTbは、駆動トルクTaに対して93.5%である。従って、本実施例の構成を採ることで、前述の1穴レバ−の構成と比較して負荷トルクTcが7割程度低減できることが分かる。これにより操作器の駆動出力を低減するができ、操作器の小型化が可能となる。
【0054】
図10(B)は接地開閉器のみの負荷トルク曲線を示したものである。一定の駆動トルクTa(100%)を与えたとき、本実施例の接地開閉器の初動時における負荷トルクTcは、駆動トルクTaに対して8.6%になる。なお、接地開閉器と断路器の構成は対称的であるため、接地開閉器の負荷トルクTc曲線は断路器の負荷トルクTc曲線と正反対の特性を示す。
【0055】
図10(C)に、断路器と接地開閉器のそれぞれの負荷トルクTcを算術的に加算した負荷トルクTc曲線を示す。初動時には断路器と接地開閉器のそれぞれの負荷トルクTcが同時に発生するので、そのときの初動時の負荷トルクTcは一定の駆動トルクTa(100%)に対して33.3%になる。つまり、1穴レバ−の操作器の初動時における負荷トルクTbと比較しておおよそ66.4%(=99.7-33.3)まで低減できたことが分かる。
【0056】
また、図11(A)(B)(C)に示す負荷トルク曲線は摺動摩擦係数を1.0としたときのものである。本実施例の負荷トルクTc曲線を実線で示す。図10(A)(B)(C)の場合と初動時の負荷トルクについて比較すると、摺動摩擦係数の低下に応じて負荷トルクの値も小さくなっている。
【0057】
さらに、図12(A)(B)(C)に示す負荷トルク曲線は摺動摩擦係数を0.5としたものである。本実施例の負荷トルクTc曲線を実線で示す。図10(A)(B)(C)および図11(A)(B)(C)の場合と初動時の負荷トルクについて比較すると、摺動摩擦係数の低下に応じて負荷トルクの値はさらに小さくなっている。
【0058】
図10乃至12から分かるように、摺動摩擦低減材12の摩擦係数によって負荷トルクが変化するので材料の選択が重要である。また、経年により摺動摩擦低減部材に磨耗が生じた際に部品の交換を容易にするため、摺動摩擦低減材12を取り外しができる構造とするのが好ましい。
【0059】
以上より、本実施例では、断路部と接地開閉部の可動接触子を連動させるために簡易な機構を採用しつつ、可動接触子の初動時の負荷トルクを低減することが可能となる。これにより、操作力の小さな操作器を用いることが可能となり、GIS全体を小型化することが可能となる。また、断路用の可動接触子と接地開閉器用の可動接触子を互いに略90度に配置することが可能となるため、GISのタンク長を短くすることが可能となり、GIS全体の小型化が可能となる。
【符号の説明】
【0060】
1 密閉容器
3a 断路器側導体
3b 接地側導体
4 駆動軸
5 2穴レバー
6a、b 湾曲リンク
7a、b 可動接触子
11a、b、d、e 回転ピン
12 摺動摩擦低減材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉容器内に、略直交するように設けられた断路器側及び接地開閉器側の2つの中空導体と、
前記2つの中空導体内をそれぞれ摺動する2つの可動接触子と、
前記2つの可動接触子に対向する2つの固定接触子と、
前記2つの可動接触子がそれぞれ連結する2つの湾曲リンクと、
前記2つの湾曲リンクが連結され駆動軸を中心に回動する2穴レバーとで構成され、
前記2つの可動接触子が前記2穴レバーの回動に応じて互いに略直角方向に直線移動し、
前記駆動軸は前記2つの中空導体の軸線がなす角度の2等分線上に位置し、
前記断路器側の可動接触子と前記2穴レバーそれぞれが前記断路器側湾曲リンクと連結する2つの連結点と、前記接地開閉器側の可動接触子と前記2穴レバーそれぞれが前記接地開閉器側湾曲リンクと連結する2つの連結点とが、前記2等分線に関して線対称となるときに、前記断路器及び前記接地開閉器がともに開状態であって、
前記2穴レバーが前記開状態から前記断路器側に所定の角度振れたときに前記断路器が閉路状態となり、
前記2穴レバーが前記開状態から前記接地開閉器側に所定の角度振れたときに前記接地開閉器が閉路状態となることを特徴とするガス絶縁開閉装置。
【請求項2】
前記2つの中空導体の前記2つの可動接触子が摺動する面に、摺動摩擦力を低減するための部材を配置したことを特徴とする、請求項1記載のガス絶縁開閉装置。
【請求項1】
密閉容器内に、略直交するように設けられた断路器側及び接地開閉器側の2つの中空導体と、
前記2つの中空導体内をそれぞれ摺動する2つの可動接触子と、
前記2つの可動接触子に対向する2つの固定接触子と、
前記2つの可動接触子がそれぞれ連結する2つの湾曲リンクと、
前記2つの湾曲リンクが連結され駆動軸を中心に回動する2穴レバーとで構成され、
前記2つの可動接触子が前記2穴レバーの回動に応じて互いに略直角方向に直線移動し、
前記駆動軸は前記2つの中空導体の軸線がなす角度の2等分線上に位置し、
前記断路器側の可動接触子と前記2穴レバーそれぞれが前記断路器側湾曲リンクと連結する2つの連結点と、前記接地開閉器側の可動接触子と前記2穴レバーそれぞれが前記接地開閉器側湾曲リンクと連結する2つの連結点とが、前記2等分線に関して線対称となるときに、前記断路器及び前記接地開閉器がともに開状態であって、
前記2穴レバーが前記開状態から前記断路器側に所定の角度振れたときに前記断路器が閉路状態となり、
前記2穴レバーが前記開状態から前記接地開閉器側に所定の角度振れたときに前記接地開閉器が閉路状態となることを特徴とするガス絶縁開閉装置。
【請求項2】
前記2つの中空導体の前記2つの可動接触子が摺動する面に、摺動摩擦力を低減するための部材を配置したことを特徴とする、請求項1記載のガス絶縁開閉装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−22942(P2012−22942A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−161140(P2010−161140)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【出願人】(501383635)株式会社日本AEパワーシステムズ (168)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【出願人】(501383635)株式会社日本AEパワーシステムズ (168)
【Fターム(参考)】
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