説明

接地電極構造

【課題】施工が容易であり、施工後の接地抵抗を低く保つことができ、耐久性にも優れた接地電極構造を提供する。
【解決手段】接地電極構造20は、土質材、セメント系固化剤、団粒化剤及び水の混練物を地盤16中に打設して形成された含水層21と、建築物22の屋上に立設された避雷針23と接地線24を介して電気的に接続した状態で含水層21に一体化された接地電極25と、を備えている。接地電極25は含水層21と一体化した状態でその内部に配置され、含水層21の表面21aは、地面16aと同一面をなすように露出している。接地電極25は銅板であり、その上縁寄りの部分に接地線24の下端部が導線可能に接合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雷の被害を防止する避雷針から地中へ雷サージを導くための接地電極構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物、鉄塔あるいは煙突などの先端部分に立設される避雷針には、落雷したときに大電流が流れるので、その大電流を地中に導くため、地中に埋設した接地電極と避雷針とが接地配線を介して電気的に接続されている。接地電極の接地抵抗はできるだけ低いことが望ましいので、従来、導電性の良好な銅板が多用されている。
【0003】
一方、接地電極の接地抵抗を低くする手段として、接地電極の接地面積を増大させる技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1記載の空中電荷中和装置は、避雷針と電気的に接続された接地電極と、前記接地電極に接続された導電性ポリマーシート製の補助電極と、前記接地電極に接続された状態で前記補助電極の縁部に沿って内蔵された電極線と、を備えている。
【0004】
特許文献1記載の空中電荷中和装置においては、その構成部材である導電性ポリマーシート製の補助電極の接地面積を増大させれば、それに応じて合成抵抗値が下がり、接地電極の接地抵抗を低くさせることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−111328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1記載の空中電荷中和装置は、その構成部材の種類が多く、構造も複雑であるため、施工現場への資材搬入に手間がかかるだけでなく、完成までには多大な労力と時間を要する。また、地中に埋設された導電性ポリマーシート製の補助電極が、施工後の経年変化や落雷によって変質し、その接地抵抗が増加する可能性がある。さらに、周囲の土圧や地面からの加圧によって補助電極が損傷するおそれもあり、耐久性が不十分である。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、施工が容易であり、施工後の接地抵抗を低く保つことができ、耐久性にも優れた接地電極構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の接地電極構造は、土質材、セメント系固化剤、団粒化剤及び水の混練物を地中に打設して形成された含水層と、避雷針と電気的に接続した状態で前記含水層に一体化された接地電極と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
このような構成とすれば、地中に打設された後の固化前の前記混練物中において、団粒化剤に含まれるイオンの作用により土質材とセメント系固化剤の粒子とが立体的な団粒構造を形成し、この団粒構造中に連続した空隙が発生するため、前記混練物が固化して形成された含水層は吸水性及び保水性に優れ、施工後も所定の水分を含んだ状態を保つことができる。これにより、含水層に一体化された接地電極と周囲の地盤との電気抵抗値は低い状態に保たれるため、施工後の接地抵抗を低く保つことができる。
【0010】
また、本発明の接地電極構造は、土質材、セメント系固化剤、団粒化剤及び水を混ぜ合わせた混練物を地中に打設して形成した含水層に接地電極を一体化させるだけで構築することができるので、施工は容易である。また、固化後の含水層から有害物質が溶出したり、変質したりすることがなく、合成樹脂製のシートなども使用しないので、周囲の土壌や地中微生物への悪影響がなく、自然環境との調和性及び耐久性に優れている。
【0011】
さらに、セメント系固化剤及び団粒化剤によって固化された含水層は、アスファルト舗装層程度に硬いので、地面からの加圧や周囲の土圧などで損傷され難く、耐久性に優れている。
【0012】
また、前記団粒化剤は、アクリル酸・メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合物のマグネシウム塩とポリエチレンイミンとの複合体からなる高分子化合物を含むものであることが望ましい。
【0013】
このような団粒化剤を使用すれば、含水層中に強固な団粒構造が形成されるので、吸水性及び保水性を備え、強度と耐久性に優れた含水層を形成することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、施工が容易であり、施工後の接地抵抗を低く保つことができ、耐久性にも優れた接地電極構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態である接地電極構造を示す断面図である。
【図2】図1に示す接地電極構造を構成する含水層の素材である混練物の製造工程を示す図である。
【図3】図1に示す接地電極構造の施工手順を示す工程図である。
【図4】その他の実施形態である接地電極構造を示す断面図である。
【図5】その他の実施形態である接地電極構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に示す接地電極構造20は、後述する図2に示す土質材10、セメント系固化剤11、団粒化剤14及び水の混練物15を地盤16中に打設して形成された含水層21と、建築物22の屋上に立設された避雷針23と接地線24を介して電気的に接続した状態で含水層21に一体化された接地電極25と、を備えている。
【0017】
接地電極25は含水層21と一体化した状態でその内部に配置され、含水層21の表面21aは、地面16aと同一面をなすように露出している。接地電極25は銅板であり、その上縁寄りの部分に接地線24の下端部が導線可能に接合されている。接地電極25は銅板に限定するものではないので、導電性の高い金属板、金属棒あるいは金属網などを用いることができる。
【0018】
ここで、図2,図3に基づいて、接地電極構造20の施工手順について説明する。図2に示すように、土質材10及びセメント系固化剤11をミキサ12に投入して、十分に撹拌、混合する。ミキサ12はモータ13などを動力源とする撹拌混合機能を有するものを用いることができる。土質材10としては、真砂土、シラス、焼却灰あるいは当該接地電極構造20の施工予定現場から採取した土砂などを使用することができる。なお、土質材10の代わりに、若しくは土質材10と併せて、瓦の廃材、ガラスの廃材あるいは溶融スラグの粉砕物を使用することもできる。
【0019】
土質材10とセメント系固化剤11とが均一に混合されたら、アクリル酸・メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合物のマグネシウム塩とポリエチレンイミンとの複合体からなる高分子化合物を含む団粒化剤14及び水を添加し、さらに撹拌、混練することによって混練物15を形成する。なお、撹拌混合手段は限定しないので、前述したミキサ12の代わりにバックホウを用いて混合することもできる。
【0020】
本実施形態において、混練物15を構成する各成分の混合比率は次の通りであるが、これに限定するものではない。
土質材10:1000kg〜1500kg
セメント系固化剤11:100kg〜200kg
団粒化剤14:1リットル〜10リットル
水:適量(混練物15の流動性や固さなどを確認しながら添加量を調整する。)
【0021】
一方、図3(a)に示すように、接地電極構造20の施工予定現場である地盤16に縦穴17を開設し、図3(b)に示すように、接地線24と接続された接地電極25を縦穴17内に装入し、図2に示す混練工程で得られた混練物15を縦穴17内に打設する。縦穴17の開口端17aまで混練物15で満たされ、接地電極25が混練物15中に埋設した状態となった後、15時間程度養生すると混練物15が固化し、図3(c)に示すように、接地電極25が含水層21と一体化した状態となり、接地電極構造20が完成する。
【0022】
図3(b),(c)に示すように、混練物15を打設した直後で固化前の含水層21中においては、団粒化剤14(図2参照)に含まれるイオンの作用により土質材10とセメント系固化剤11の粒子とが立体的な団粒構造を形成し、この団粒構造中に連続した空隙が発生するため、固化後の含水層21は吸水性及び保水性に優れている。従って、含水層21の表面21aから浸透した雨水や地盤16中の水分は含水層21に吸収され、その中に保持される結果、施工後の含水層21は所定の水分を含んだ状態を長期間に亘って保つことができる。これにより、含水層21に一体化された接地電極25と周囲の地盤16との電気抵抗値は低い状態に保たれるため、施工後の接地抵抗を低く保つことができる。
【0023】
また、接地電極構造20は、土質材10、セメント系固化剤11、団粒化剤14及び水を混ぜ合わせた混練物15を地盤16に開設した縦穴17中に打設して形成した含水層21に接地電極25を一体化させるだけで構築することができるので、施工は容易である。また、固化後の含水層21から有害物質が溶出したり、変質したりすることがなく、合成樹脂製のシートなども使用しないので、周囲の土壌や地中微生物への悪影響がなく、自然環境との調和性及び耐久性に優れている。
【0024】
さらに、セメント系固化剤11及び団粒化剤14によって固化された含水層21は、アスファルト舗装層程度に硬いので、地面16aからの加圧や周囲の地盤16からの土圧などで損傷され難く、耐久性に優れている。
【0025】
次に、図4,図5に基づいて、本発明のその他の実施形態について説明する。なお、図4,図5において図1中の符号と同符号を付している部分は接地電極構造20の構成部分と同じ構成を有する部分であり、説明を省略する。
【0026】
図4に示す接地電極構造30においては、図2に示す混練物15を地盤16中の広範囲に打設することによって形成された含水層31中に接地電極25が一体化されている。含水層31の水平長さ31aはその深さ31bより大である。含水層31は、図1に示す含水層21より体積が大であり、地盤16中の広範囲に亘って存在するので、比較的多量の水分を保持することができ、施工後も長期間に亘って接地抵抗を低く保つことができる。
【0027】
図5に示す接地電極構造40は、図2に示す混練物15を地盤16中の深い領域に打設することによって形成された含水層41を備えている。接地電極構造40を構成する含水層41はその全体が地盤16中に埋設された状態にあり、直射日光を受けないので、含水層41中の水分が蒸発によって失われ難い。このため、降水量の少ない地域に施工した場合も長期間に亘って接地抵抗を低く保つことができる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の接地電極構造は、建築物、鉄塔あるいは煙突などの先端部分に立設される避雷針において広く利用することができる。
【符号の説明】
【0029】
10 土質材
11 セメント系固化剤
12 ミキサ
13 モータ
14 団粒化剤
15 混練物
16 地盤
16a 表面
17 縦穴
17a 開口端
20,30,40 接地電極構造
21,31,41 含水層
22 建築物
23 避雷針
24 接地線
25 接地電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
土質材、セメント系固化剤、団粒化剤及び水の混練物を地中に打設して形成された含水層と、避雷針と電気的に接続した状態で前記含水層に一体化された接地電極と、を備えたことを特徴とする接地電極構造。
【請求項2】
前記団粒化剤が、アクリル酸・メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合物のマグネシウム塩とポリエチレンイミンとの複合体からなる高分子化合物を含むものであることを特徴とする請求項1記載の接地電極構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−258459(P2011−258459A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−133110(P2010−133110)
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(500305380)株式会社シーマコンサルタント (30)