説明

接着シートの製造方法および打抜金型

【課題】 簡易な構成により、接着剤層でのバリの発生の防止を十分に図ることのできる、接着シートの製造方法、および、その接着シートの製造方法に用いられる打抜金型を提供すること。
【解決手段】 互いに対向する上刃4および下刃2を備え、下刃2の切れ味が上刃4の切れ味よりも鈍く形成された打抜金型1を用い、固定刃である下刃4に、樹脂層21、接着剤層22および離型層23が順次積層されてなる接着シート5を載置して、可動刃である下刃4を進出させることにより、接着シート5に貫通孔25を形成する。この方法によれば、接着剤層22のバリの発生を確実に防止しつつ、接着シート5に貫通孔25を形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着シートの製造方法および打抜金型、詳しくは、打ち抜きにより接着シートを製造するための接着シートの製造方法、および、その接着シートの製造方法に用いられる打抜金型に関する。
【背景技術】
【0002】
配線回路基板のカバー絶縁層は、通常、樹脂フィルムからなる絶縁層と、その絶縁層に積層される接着剤からなる接着剤層と、その接着剤層に積層される離型フィルムからなる離型層とを備える接着シートを、打ち抜きにより孔加工した後、離型層を接着剤層から剥離して、その接着剤層を、導体パターンに貼着するようにして、形成されている。
このような接着シートの打ち抜きには、可動刃からなる上刃と、固定刃からなる下刃とを備える打抜金型が、用いられている。
【0003】
しかるに、上刃を、接着シートを貫通するように、下刃に対して移動させたときには、接着剤層が剪断応力を受けて、その粘性により、移動する上刃とともに移動方向に引き延ばされて、切断面においてバリとなる。このようなバリは、配線回路基板を汚染し、配線回路基板に実装される電子部品に弊害を生じさせる。
そのため、このようなバリの発生を防止する方法として、例えば、切込パンチの先端縁部に切込刃を突設して、打ち抜き時において、その切込刃で粘着剤を分離して、バリの発生を防止することが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平5−200448号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記の提案では、切込パンチに切込刃を突設するなど、格別の構成が必要となり、コストの上昇を生じる。また、切込刃であっても、やはり、接着剤層は、移動する切込刃の移動方向に多少引き延ばされるので、バリの発生を効果的に防止するには、不十分である。
本発明の目的は、簡易な構成により、接着剤層でのバリの発生の防止を十分に図ることのできる、接着シートの製造方法、および、その接着シートの製造方法に用いられる打抜金型を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、本発明の接着シートの製造方法は、樹脂層、接着剤層および離型層が順次積層されてなる接着シートを、互いに対向する第1刃および第2刃を備える打抜金型により、打ち抜く工程を備える、接着シートの製造方法であって、前記打抜金型において、前記第2刃の切れ味が、前記第1刃の切れ味よりも鈍く形成されていることを特徴としている。
【0006】
この方法では、第1刃と第2刃との間に接着シートを介在させて、第1刃および第2刃のいずれか一方の刃を、他方の刃に対して移動させて接着シートを打ち抜けば、その打ち抜きにおいて、第1刃よりも切れ味の鈍い第2刃において、接着シートが固定されながら、第1刃と第2刃とによって、接着シートが打ち抜かれる。このように、接着シートを、第2刃によって固定しつつ打ち抜けば、接着剤層が引き延ばされることを低減することができる。そのため、接着剤層のバリの発生を効果的に防止することができる。
【0007】
また、この方法では、切込刃を突設するなどの格別の構成を不要とすることができる。そのため、簡易な構成により、コストの低減化を図ることができる。
また、この方法では、前記第1刃が可動刃で、前記第2刃が固定刃であり、前記接着シートを前記第2刃の上に載置して、前記第1刃を、前記接着シートを貫通するように、前記第2刃に向けて移動させて、前記接着シートに孔を形成することが好適である。
【0008】
このようにすれば、固定刃である第2刃に、接着シートを載置して、可動刃である第1刃を移動させることにより、接着シートに貫通孔が形成される。そのため、接着剤層のバリの発生を確実に防止しつつ、接着シートに貫通孔を形成することができる。
また、この方法では、前記打抜金型は、前記第2刃との間で前記接着シートを挟持し、前記第1刃を可動自在に挿通する挿通部が形成されている挟持部材を備え、前記第1刃の外周面と前記挿通部の内周面との間隔が、0.5〜7μmであることが好適である。
【0009】
このようにすれば、第2刃と挟持部材とにより、接着シートを安定に固定することができながら、挿通部に挿通される第1刃が可動するときの第1刃の外周面と挿通部の内周面との接触を防止でき、良好に接着シートを打ち抜くことができる。
また、本発明の接着シートの製造方法は、樹脂層、接着剤層および離型層が順次積層されてなる接着シートを、互いに対向する第1刃および第2刃を備える打抜金型により、打ち抜く工程を備える、接着シートの製造方法であって、前記第1刃が可動刃で、前記第2刃が固定刃であり、前記接着シートを前記第2刃の上に載置して、前記第1刃を、前記接着シートを貫通するように、前記第2刃に向けて移動させ、前記第1刃が前記接着シートに接触して、前記接着シートが前記第2刃に向かって押圧されることにより、前記第2刃によって前記樹脂層および前記離型層のいずれか一方の層が、厚さ方向すべてにわたって打ち抜かれる以前に、前記第1刃が、他方の層および前記接着剤層を、厚さ方向すべてにわたって打ち抜くことを特徴としている。
【0010】
このように打ち抜けば、第2刃によって一方の層が支持されている状態で、第1刃によって他方の層および接着剤層を打ち抜くことができる。そのため、接着剤層のバリの発生を確実に防止することができる。
また、この方法は、前記樹脂層が、配線回路基板の絶縁層である場合に、好適に用いられる。
【0011】
また、本発明の打抜金型は、互いに対向する第1刃および第2刃を備える打抜金型であって、前記第2刃の切れ味が、前記第1刃の切れ味よりも鈍く形成されていることを特徴としている。
このような打抜金型では、接着シートを打ち抜く場合に、第2刃において接着シートを固定しつつ、第1刃と第2刃とによって、接着シートを打ち抜くことができる。そのため、第2刃の切れ味を第1刃の切れ味よりも鈍くするのみの簡易な構成により、打ち抜きにおいて、接着剤層が引き延ばされることを低減することができ、接着剤層のバリの発生を効果的に防止することができる。
【0012】
また、本発明の打抜金型は、前記第1刃が可動刃で、前記第2刃が固定刃であり、前記第2刃との間で接着シートを挟持し、前記第1刃を可動自在に挿通する挿通部が形成されている挟持部材を備え、前記第1刃の外周面と前記挿通部の内周面との間隔が、0.5〜7μmであることが好適である。
このような打抜金型では、第2刃と挟持部材とにより、接着シートを安定に固定することができながら、挿通部に挿通される第1刃が可動するときの第1刃の外周面と挿通部の内周面との接触を防止でき、良好に接着シートを打ち抜くことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の接着シートの製造方法および打抜金型によれば、簡易な構成により、打ち抜きにおける接着剤層のバリの発生を効果的に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は、本発明の打抜金型の一実施形態を示す要部構成図である。
図1において、この打抜金型1は、接着シート5に、貫通孔を形成するために用いられる。この打抜金型1は、第2刃としての下刃(金型)2、挟持部材としてのストリッパプレート(押さえ板)3および第1刃としての上刃(パンチ)4を備えている。
下刃2は、固定刃であって、接着シート5が載置される上面6が平板状の載置台7を備えている。載置台7は、位置固定されており、上刃4が可動自在に挿通される断面矩形状の下スリットが形成される、下スリット形成部8が形成されている。この下スリット形成部8に形成された下スリットの幅Wが、0.1〜100mm、好ましくは、0.5〜50mmに設定されている。
【0015】
また、この下刃2では、上面6における下スリット形成部8との端縁部が、刃部9として形成されており、この刃部9の切れ味は、後述する上刃4の刃部16の切れ味よりも、鈍く形成されている。なお、「切れ味」とは、切れる度合い(切れぐあい)であって、ここでは、下刃2の刃部9が、上刃4の刃部16よりも、切れにくく形成されていることを、意味している。
【0016】
刃部9の切れ味は、上刃4の刃部16の切れ味に対して、相対的に鈍ければよく、そのように鈍く形成するには、特に制限されないが、例えば、刃部9に丸みを形成したり、傾斜面を形成したり、刃部9に被覆層10を形成するなど、適宜の方法が用いられる。
例えば、刃部9に丸みを形成するには、例えば、上面6における下スリット形成部8との端縁部を、サンドブラスト、ダイヤモンドブラストなどでブラスト処理する。
【0017】
丸み形状は、特に制限されないが、例えば、上刃4の刃部16の曲率半径(R1:図2(a)参照)が0である場合には、下刃2の刃部9の曲率半径(R2:図2(a)参照)が、0.01〜0.1mmであることが好適である。下刃2の刃部9の曲率半径が0.1mmを超えると、接着シート5の切断面24(図3(c)参照)が変形する場合がある。また、上刃4の刃部16の曲率半径が0でない場合には、下刃2の刃部9の曲率半径は、上刃4の刃部16の曲率半径に対して、その比率が、1.1〜5.0であることが好適である。下刃2の刃部9の曲率半径が5.0mmを超えると、接着シート5の切断面24が変形する場合がある。また、上刃4の刃部16の曲率半径が0でない場合にも、下刃2の刃部9の曲率半径が、0.01〜0.1mmであることが好適である。
【0018】
例えば、刃部9に傾斜面を形成するには、例えば、上面6における下スリット形成部8との端縁部を、テーパ状に研磨して面取りする。
傾斜面の形状は、特に制限されないが、例えば、下刃2の刃部16の傾斜面の角度(θ
:図2(b)参照)が、0.5〜20°であることが好適である。また、例えば、上刃4の刃部16の傾斜面の長さ(C1:図2(a)参照)が0である場合には、下刃2の刃部9の傾斜面の長さ(C2:図2(a)参照)が、0.01〜0.1mmであることが好適である。下刃2の刃部9の傾斜面の長さが0.1mmを超えると、接着シート5の切断面24が変形する場合がある。また、上刃4の刃部16の傾斜面の長さが0でない場合には、下刃2の刃部9の傾斜面の長さは、上刃4の刃部16の傾斜面の長さに対して、その比率が、1.1〜5.0であることが好適である。下刃2の刃部9の傾斜面の長さが5.0mmを超えると、接着シート5の切断面24が変形する場合がある。また、上刃4の刃部16の傾斜面の長さが0でない場合にも、下刃2の刃部9の傾斜面の長さが、0.01〜0.1mmであることが好適である。
【0019】
例えば、刃部9に被覆層10を形成するには、樹脂シートや金属フィルムなどからなる被覆層10を、必要により接着剤層11を介して、載置台7の上面6に、下スリット形成部8を覆うように貼着した後、上刃4で打ち抜くようにする。そうすると、下刃2の刃部9には、丸みが形成された被覆層10が積層される(図2(c)参照)。
樹脂シートとしては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ナイロン系樹脂、フッ素系樹脂、アクリル系樹脂、合成ゴム、ポリエチレンテレフタレート樹脂などからなる樹脂フィルムが用いられる。また、金属フィルムとしては、例えば、ステンレス、アルミニウム、銅などからなる金属箔が用いられる。
【0020】
被覆層10の厚みは、接着剤層11を含む合計の厚みとして、例えば、5〜200μmであることが好適である。200μmを超えると、接着シート5の切断面24が変形する場合がある。
ストリッパプレート3は、図1に示すように、下刃2の上方において、下刃2と所定間隔を隔てて対向配置されている。このストリッパプレート3は、接着シート5の上面を押える下面12が平板状の押えブロック13を備えている。押えブロック13には、上刃4が可動自在に挿通される断面矩形状の上スリットが形成される、挿通部としての上スリット形成部14が形成されている。この上スリット形成部14は、下スリット形成部8と上下方向において対向配置され、上スリット形成部14の上スリットの幅が、下スリット形成部8の下スリットの幅と同幅で形成されている。
【0021】
また、このストリッパプレート3は、接着シート5を下刃2との間で挟持できるように、固定されている下刃2に対して上下方向にスライド移動可能に設けられている。
上刃4は、可動刃であって、上下方向に延びる断面矩形状をなし、その幅が、下スリット形成部8に形成された下スリットおよび上スリット形成部14に形成された上スリットの幅Wよりも、やや狭く、より具体的には、上刃4の外周面と下スリット形成部8および上スリット形成部14の内周面との間隔(クリアランス)が0.5〜7μmとなるように形成されている。上刃4の外周面と下スリット形成部8および上スリット形成部14の内周面との間隔が、0.5μm未満では、上刃4と下スリット形成部8および上スリット形成部14とが接触する場合がある。また、上刃4の外周面と下スリット形成部8および上スリット形成部14の内周面との間隔が、7μmを超えると、接着シート5を打ち抜くときに、接着シート5に弛みが生じる場合がある。
【0022】
そして、この上刃4における下面15の端縁部が、刃部16として形成されており、この刃部16の切れ味は、上記した下刃2の刃部9の切れ味よりも、鋭く形成されている。上刃4の刃部16の切れ味を、下刃2の刃部9の切れ味よりも鋭くするには、上記したように、下刃2の刃部9の切れ味を、上刃4の刃部16に対して相対的に鈍くする。すなわち、上刃4の刃部16の切れ味は、打抜金型1としての、通常の鋭さに研がれている。
【0023】
また、この上刃4は、上スリット形成部14内の上スリットに配置され、上スリット形成部14内の上スリットから下スリット形成部8内の下スリットに向かって進退するように、設けられている。
次に、本発明の接着シートの製造方法の一実施形態を、上記に説明した打抜金型1を用いて実施する方法につき、説明する。
【0024】
この方法で用いられる接着シート5は、特に制限されないが、例えば、配線回路基板の絶縁層を形成するために用いられ、樹脂層21、接着剤層22および離型層23が順次積層されている。
樹脂層21は、特に制限されず、電気絶縁性および可撓性を有し、配線回路基板の絶縁層として通常使用される公知のものが用いられ、例えば、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテルニトリル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂などの樹脂フィルムなどからなる。また、樹脂層21の厚みは、例えば、15〜30μmである。
【0025】
また、接着剤層22は、配線回路基板の接着剤層として通常使用される公知のものが用いられる。例えば、エポキシ系接着剤、ポリイミド系接着剤、アクリル系接着剤などの接着剤が、塗布されたものからなる。また、接着剤層22の厚みは、例えば、10〜20μmである。
離型層23は、セパレータとして通常使用される公知のものが用いられる。例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、紙などのフィルムの表面を、シリコーン処理などの剥離処理をしたものからなる。また、離型層23の厚みは、例えば、10〜100μmである。
【0026】
このような接着シート5は、樹脂層21の表面に、上記した接着剤を塗布することにより接着剤層22を形成し、その接着剤層22の表面に、離型層23が貼着されることにより、形成されている。
そして、この方法では、まず、図1(a)に示すように、上刃4が上スリット形成部14内に退避している状態で、上記した接着シート5を、下刃2の載置台7の上面6に、下スリット形成部8を跨るように載置して、ストリッパプレート3の押えブロック13の下面12と、下刃2の載置台7の上面6との間で、載置された接着シート5を挟持する。なお、図1(a)では、離型層23が載置台7の上面6と接触するように載置しているが、この逆、すなわち、樹脂層21が載置台7の上面6と接触するように載置してもよい。ただし、離型層23が載置台7の上面6と接触するように載置すれば、上刃4が、樹脂層21、接着剤層22および離型層23を順次貫通するので、樹脂層21の切断面24に対する接着剤層22の付着を、低減することができる。
【0027】
次いで、上スリット形成部14内の上刃4を、接着シート5を貫通するように、下刃2の下スリット形成部8内に向けて進出させる。
そして、上刃4の刃部16が、接着シート5の樹脂層21に接触すると、図4(a)に示すように、接着シート5の離型層23が下刃2の刃部9に向かって押圧される。
ここで、例えば、上刃4の刃部16が下刃2の刃部9と同じように切れ味が鋭いと、図4(a)に示すように、接着シート5の離型層23が下刃2の刃部9によって切り込まれる。すると、接着シート5が、切り込まれる分、下刃2に対して下方へずれる(逃げる)ので、接着剤層22が、上刃4の刃部16から受ける剪断応力によって、図4(b)に示すように、その粘性により、上刃4とともに進出方向(下方)に引き延ばされる。その結果、図4(c)に示すように、上刃4によって打ち抜かれた後は、接着シート5の切断面24において、接着剤層22がバリ26となる。
【0028】
しかし、この打抜金型1では、下刃2の刃部9の切れ味が、上刃4の刃部16の切れ味よりも鈍く形成されている。そのため、図3(a)に示すように、上刃4の刃部16が、接着シート5の樹脂層21に接触して、接着シート5の離型層23が下刃2の刃部9に向かって押圧されても、接着シート5の離型層23が、上記のように下刃2の刃部9によって切り込まれることが低減されるので、下刃2の載置台7の上面6で、より水平方向に近い状態で固定されながら、上刃4の刃部16と下刃2の刃部9とによって、図3(b)に示すように、スムーズに接着シート5が打ち抜かれ、これによって、接着シート5に貫通孔25が形成される。
【0029】
すなわち、このように打ち抜くと、上刃4の刃部16が接着シート5に接触して、接着シート5が下刃2の載置台7の上面6に向かって押圧されるが、この打抜金型1では、下刃2の刃部9によって離型層23が、厚さ方向すべてにわたって打ち抜かれる以前に、上刃4の刃部16が樹脂層21および接着剤層22を、厚さ方向すべてにわたって打ち抜くので(図3(a)参照)、下刃2の載置台7の上面6によって離型層23が支持されている状態で、上刃4の刃部16によって樹脂層21および接着剤層22を打ち抜くことができる。そのため、接着剤層22のバリ26の発生を確実に防止することができる。
【0030】
そして、このような方法によると、下刃2の刃部9の切れ味を上刃4の刃部16の切れ味よりも鈍くするのみの簡易な構成により、接着剤層22のバリ26の発生を効果的に防止することができ、切込刃を突設するなどの格別の構成を不要として、コストの低減化を図ることができる。
なお、この方法においては、少なくとも、下刃2の刃部9によって離型層23を、厚さ方向において50%にわたって打ち抜く以前に、上刃4の刃部16が樹脂層21および接着剤層22を、厚さ方向すべてにわたって打ち抜くようにすることが好適である。
【0031】
そして、この方法は、配線回路基板の絶縁層を加工するために、好適に用いられる。特に、接着剤層22が塗布された樹脂層21からなるカバー絶縁層を、予め孔加工した後に、その接着剤層22を介して、導体パターンを被覆するようにベース絶縁層に貼着する工程を含む配線回路基板の製造方法に、好適に用いられる。
なお、上記においては、上刃4を可動刃とし、下刃2を固定刃として説明したが、本発明の接着シートの製造方法では、上刃4を固定刃とし、下刃2を可動刃としてもよい。
【0032】
また、上記においては、上刃4を第1刃とし、下刃2を第2刃として説明したが、本発明の接着シートの製造方法では、上刃4を第2刃とし、下刃2を第1刃としてもよい。
【実施例】
【0033】
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、何ら実施例および比較例に限定されることはない。
接着シートの作製
厚み40μmの離型フィルム(表面がシリコーン処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム)、厚み15μmの接着剤層(エポキシ系接着剤層)、厚み25μmのポリイミドフィルムを、順次積層して、配線回路基板のカバー絶縁層として用いられる接着シートを作製した。
【0034】
実施例1
上記により得られた接着シートを、下記の条件で構成した打抜金型を用いて、その下刃の載置台の上面に、下スリット形成部を跨るように載置した。その後、ストリッパプレートの押えブロックの下面と、下刃の載置台の上面との間で、載置された接着シートを挟持した。次いで、上スリット形成部内の上刃を、接着シートを貫通するように、下刃の下スリット形成部内に向けて進出させ、接着シートを打ち抜き、接着シートに貫通孔を形成した。
【0035】
貫通孔の切断面を電子顕微鏡にて観察したところ、接着剤層のバリのないことが確認された。
(打抜金型の構成:下刃の刃部に丸みを形成する態様)
上刃の刃部:処理なし(曲率半径R=0mm)
下刃の刃部:ダイヤモンドブラスト処理(曲率半径R=0.015mm)
上スリットおよび下スリットの形状(平面視):5mm×30mmの長方形状
上刃の外周面と上スリット形成部および下スリット形成部の内周面との間隔:3μm
実施例2
下記の条件で構成した打抜金型を用いた以外は、実施例1と同様の方法によって、接着シートを打ち抜き、接着シートに貫通孔を形成した。
【0036】
貫通孔の切断面を電子顕微鏡にて観察したところ、接着剤層のバリのないことが確認された。
(打抜金型の構成:下刃の刃部に傾斜面を形成する態様)
上刃の刃部:処理なし(傾斜面の長さC=0mm)
下刃の刃部:研磨によるテーパ処理(傾斜面の角度2°、長さC=0.5mm)
上スリットおよび下スリットの形状(平面視):5mm×30mmの長方形状
上刃の外周面と上スリット形成部および下スリット形成部の内周面との間隔:3μm
実施例3
下記の条件で構成した打抜金型を用いた以外は、実施例1と同様の方法によって、接着シートを打ち抜き、接着シートに貫通孔を形成した。
【0037】
貫通孔の切断面を電子顕微鏡にて観察したところ、接着剤層のバリのないことが確認された。
(打抜金型の構成:下刃の刃部に被覆層を形成する態様)
上刃の刃部:処理なし(被覆層なし)
下刃の刃部:塩化ビニル樹脂シートを、接着剤層を介して下刃の刃部に貼着し(シートおよび接着剤層の合計厚み100μm)、その後、上刃で打ち抜き処理
上スリットおよび下スリットの形状(平面視):5mm×30mmの長方形状
上刃の外周面と上スリット形成部および下スリット形成部の内周面との間隔:3μm
比較例1
下記の条件で構成した打抜金型を用いた以外は、実施例1と同様の方法によって、接着シートを打ち抜き、接着シートに貫通孔を形成した。
【0038】
貫通孔の切断面を電子顕微鏡にて観察したところ、接着剤層のバリを生じていることが確認された。
(打抜金型の構成:上刃の刃部および下刃の刃部が同じ切れ味である態様)
上刃の刃部:処理なし(曲率半径R=0mm、傾斜面の長さC=0mm)
下刃の刃部:処理なし(曲率半径R=0mm、傾斜面の長さC=0mm)
上スリットおよび下スリットの形状(平面視):5mm×30mmの長方形状
上刃の外周面と上スリット形成部および下スリット形成部の内周面との間隔:12μm
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の打抜金型の一実施形態を示す要部構成図であって、(a)は、接着シートの打ち抜き前の状態、(b)は、接着シートの打ち抜き後の状態を示す。
【図2】図1に示す打抜金型の下刃を示す要部構成図であって、(a)は、刃部に丸みを形成する態様、(b)は、刃部に傾斜面を形成する態様、(c)は、刃部に被覆層を形成する態様を示す。
【図3】図1に示す打抜金型で、接着シートを打ち抜く状態を示す説明図であって、(a)は、打ち抜き途中の状態、(b)は、打ち抜き後の切断面(側断面)の状態、(c)は、打ち抜き後の切断面(正断面)の状態を示す。
【図4】上刃の刃部および下刃の刃部が同じ切れ味である打抜金型で、接着シートを打ち抜く状態を示す説明図であって、(a)は、打ち抜き途中の状態、(b)は、打ち抜き後の切断面(側断面)の状態、(c)は、打ち抜き後の切断面(正断面)の状態を示す。
【符号の説明】
【0040】
1 打抜金型
2 下刃
4 上刃
5 接着シート
21 樹脂層
22 接着剤層
23 離型層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂層、接着剤層および離型層が順次積層されてなる接着シートを、互いに対向する第1刃および第2刃を備える打抜金型により、打ち抜く工程を備える、接着シートの製造方法であって、
前記打抜金型において、前記第2刃の切れ味が、前記第1刃の切れ味よりも鈍く形成されていることを特徴とする、接着シートの製造方法。
【請求項2】
前記第1刃が可動刃で、前記第2刃が固定刃であり、
前記接着シートを前記第2刃の上に載置して、前記第1刃を、前記接着シートを貫通するように、前記第2刃に向けて移動させて、前記接着シートに孔を形成することを特徴とする、請求項1に記載の接着シートの製造方法。
【請求項3】
前記打抜金型は、前記第2刃との間で前記接着シートを挟持し、前記第1刃を可動自在に挿通する挿通部が形成されている挟持部材を備え、前記第1刃の外周面と前記挿通部の内周面との間隔が、0.5〜7μmであることを特徴とする、請求項2に記載の接着シートの製造方法。
【請求項4】
樹脂層、接着剤層および離型層が順次積層されてなる接着シートを、互いに対向する第1刃および第2刃を備える打抜金型により、打ち抜く工程を備える、接着シートの製造方法であって、
前記第1刃が可動刃で、前記第2刃が固定刃であり、
前記接着シートを前記第2刃の上に載置して、前記第1刃を、前記接着シートを貫通するように、前記第2刃に向けて移動させ、
前記第1刃が前記接着シートに接触して、前記接着シートが前記第2刃に向かって押圧されることにより、前記第2刃によって前記樹脂層および前記離型層のいずれか一方の層が、厚さ方向すべてにわたって打ち抜かれる以前に、
前記第1刃が、他方の層および前記接着剤層を、厚さ方向すべてにわたって打ち抜くことを特徴とする、接着シートの製造方法。
【請求項5】
前記樹脂層が、配線回路基板の絶縁層であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の接着シートの製造方法。
【請求項6】
互いに対向する第1刃および第2刃を備える打抜金型であって、
前記第2刃の切れ味が、前記第1刃の切れ味よりも鈍く形成されていることを特徴とする、打抜金型。
【請求項7】
前記第1刃が可動刃で、前記第2刃が固定刃であり、
前記第2刃との間で接着シートを挟持し、前記第1刃を可動自在に挿通する挿通部が形成されている挟持部材を備え、
前記第1刃の外周面と前記挿通部の内周面との間隔が、0.5〜7μmであることを特徴とする、請求項6に記載の打抜金型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−26884(P2006−26884A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−51703(P2005−51703)
【出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】