説明

接着分子のグラフト鎖を共有結合させて変性したコラーゲンスキャフォールドと、その収縮細胞の組織工学および胸部及び心臓血管治療への応用

バイオコンパチブルな試薬と、細胞の接着性、アポトーシス、生存率および/または分化を制御する接着分子とを含む、細胞移植で使用される三次元スキャフォールドの生物学的特性および電気機械的特性を改良するための材料および方法。コラーゲンマトリックスに接着性分子をグラフトさせることによって胸部および心臓血管医学/外科および心臓細胞治療および人口心臓筋肉工学で使用できる。コラーゲンおよび/またはアクセス可能なチオール、アミンまたはカルボキシル基を含むスキャフォールドを製造する際の接着分子または生物学的試薬の簡単なグラフト方法および提示方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞の移植、生存および分化を容易にする接着分子を共有結合でグラフトして化学的に修飾したコラーゲン スキャフォールド(支持体)に関するものである。
【0002】
本発明のコラーゲン スキャフォールド(以下、単に「支持体」または「スキャフォールド」ともいう)は収縮性潜在細胞(cellules a potentiel contractile)で有利には使用できるが、他のタイプの細胞、例えば血管潜在細胞(cellules a potentiel angiogenique)でも使用でき、それと組合せることができる。
【0003】
本発明はさらに、上記支持体の共有結合グラフト法と、その組織工学または細胞治療での使用または胸部および心臓血管医学、外科分野で使用されるデバイスのコラーゲン部品の変性(modification)での使用とに関するものである。
本発明は特に、被覆コラーゲン支持体、特に組織回復および再生医学用の被覆したコラーゲン支持体に関するものである。
【0004】
本発明のコラーゲンは、細胞治療で使用される多くのデバイスや胸部、心臓血管医学および外科の分野の組織工学で重要である。細胞と支持との間の相互作用がより良くなることによってこれらデバイスの移植、細胞化および機能化が最適化できる。
【0005】
本発明のコラーゲンは接着分子の共有結合グラフトによって改良され、この接着分子は対象細胞(cellules d'interet)(結合細胞または支持体をコロニー化(coloniser)する細胞)の膜受容体と最適状態で相互作用する。この作用はレセプターの活性化によってカスケード的に起こり、細胞の接着、細胞発育、細胞生存が促進され、細胞のアポプトーシスと分化とが制御される。
【0006】
本発明はさらに、下記の一般的方法を提供する:
(1) 接着分子または生物学的薬剤分子(例えばプロテオグリカン、成育因子またはサイトカイン)の支持体(コラーゲンの場合、アクセス可能基チオール、アミンまたはカルボキシルを有する)に対する接着、定着を改善する、
(2) 系中(インサイチュウ、in situ)での細胞発育に悪影響を及ぼす毒性物質を生じない、化学反応による架橋によってコラーゲン スキャフォールドの生体親和性を改善する。
【背景技術】
【0007】
現在の組織再生法では(a) 損傷環境中への遊離細胞を直接移植や(b) 三次元スキャフォールド中に細胞を取り付けた置換組織を発育させる組織工学のような種々のテクニックが使用されているが、細胞治療用スキャフォールドを生産するのは容易ではない。すなわち、支持体は栄養源および酸素の自由拡散を可能にし、生存および分化を促進するために対象細胞と相互作用可能な特殊な生物学的リガンドを有し、しかも、機械特性を有していなければならない。さらに、支持体は天然タイプの組織とは違って血管新生能がないため、血管形成に有利なものでなければならない。この支持体はバイオコンパチブル(biocompatible、生体相溶性)でなければならず、移植後のインビボでの炎症反応が少なくなければならない。さらに、この支持体は臨床で使用でき、衛生上の安全性、従って腫瘍抽出の危険がないことが必要である。しかし、心血管および胸部の組織工学法用のそうした支持体は今日まで存在しなかった。
【0008】
従来の孤立細胞の移植方法は細胞死亡率が極めて高く、移植した細胞で分化が起きないという問題があった。非特許文献1のT. Yasuada,et al.1で公知のように胎仔の心臓ミオサイト、骨格筋芽細胞および髄硬骨幹細胞を使用した場合の損傷組織の修復および心機能改善能の改善はほとんど成功していない。臨床的に転位するポジティブ効果に充分な数の新しい心筋線維が産生しないため、グラフト後に相当数(約90%)の細胞が死に、グラフト鎖が分化できず、心筋に一体化できない(参照文献1、2)。細胞を単独で注入する細胞治療法では成功しないことの説明として移植した細胞の生残率が低いことが複数の研究で強調されている。この生残率の問題は多くのグループが示しており、生存細胞による細胞の変質によって移植後の生残率および機能性が大きく改善することを示している(参照文献3)。
【0009】
最近では別のグループが、コラーゲンのような合成支持体または生物学的支持体での細胞移植によって生きた組織環境を再構成することができる三次元の支持体と細胞とを組合せることの重要性を示している(参考文献4〜8)。基本的にタイプIまたはタイプIllのコラーゲンから成る心筋中の生きた細胞間マトリックス(ECM)を破壊し、組成を変えてその機械的性質を変え(伸びを低くし)、血管化を少なくした別の組織に変えると、最適な相互作用がなくなり、フリーな細胞の移植が悪くなる。コラーゲンマトリックスが存在することで筋肉組織の再生が大きくを改善する(参考文献9)。また、心筋再生に関する血管内投与による細胞注射の効果はその評価の最中であり、一定の重要性が認められている(参考文献10)。さらに、肝細胞タイプの細胞を門脈管または一定領域の血管中に注入するか、生存率を良くするために排水した後に門脈管経由でコラーゲンのマイクロ球体を注射する試みも行なわれている(参考文献11)。さらに、カーボンナノチューブのような合成粒子やキトサンのような天然高分子とコラーゲンのマイクロ球体とを組合せて注射可能なコラーゲンのヒドロゲルにすることもできる(参考文献12)。
【0010】
細胞表現型およびコラーゲンマトリックス中での機能に影響を及ぼす微小環境を同定することによって医学用途用の人工心筋組織工学技術のための適切な条件が得られる(参考文献13、14)。組織中ではこの3D-生育環境がタンパク質からできた細胞間マトリックスによって形成される。この生育環境の主たる構造タンパクの一つがコラーゲンである(参考文献15)。細胞は基本シーケンスを認識する「インテグリン(integrines)」とよばれる表面レセプターを介して生育環境と相互作用する。この表面レセプターは多くの場合ペプチドシーケンスであり、ECMタンパク上に存在する(参考文献13、16)。これはα鎖とβ鎖とを組合せで形成されるヘテロダイマー(heteRODimeric)性でランスメンブレン性のレセプターである。このレセプターの活性化はECM上にこのリガンドが存在するか否かに依存するが、このレセプターの提示と他のレセプターとの再グループ化の可能性にも依存する。接着性ペプチドの分子または配列のレセプター(インテグリン・レセプター)が活性化されると細胞内の種々の事象(evemements)のカスケードが起こり、細胞骨格が再配列され、生存を制御する各種の信号経路が活性化され(参考文献17、18)、細胞の形成(参考文献19)、増殖、アポトーシス(参考文献17)、分化(参考文献20、21)が起こる。この活性化を最適に起こさせるためには上記リガンドのみがECM上に存在するだけでなく、インテグリン・レセプターと相互作用するために正しく提示されなければならない(参考文献22〜24)。一方、受容体の活性化時には細胞細胞骨格とインテグリン・レセプターの細胞質部分との間に物理的なカップリングが存在する(参考文献25)。このカップリングによってECM、リガンド、インテグリン・レセプターおよび細胞骨格との間に実際の橋が形成される。この接続によってECMに細胞から力が加わる。この力はレセプターの最適活性化には必須なものである(参考文献14、26、27)。従って、ECMが一定の抵抗を示し且つ上記の力が発揮できるように上記の力が生じるように一定の可塑性を保証するためには、アーリガンドは強固に固定されていなければならない(参考文献14)。心臓ミオサイトのような収縮性細胞の場合には適度に硬い支持体を用いたときにだけ分化が得られる(参考文献28)。内皮細胞は分化し、可撓性支持体上には毛細管状または管状構造を形成するが、より硬い支持体上では拡大し、増殖する傾向がある(参考文献29)。
【0011】
収縮性組織を得るために収縮性細胞と合成または生物学的支持体(アルギネート、コラーゲンI、フィブリン)とを組合せた種々のタイプの組織が開発されている(参考文献4〜8、30)。しかし、今日に至るまで、合成マトリックスまたはオリゴペプチド重合を用いたナノテクノロジーから得られたマトリックス(例えばプラマトリックス、Puramatrix、登録商標)で収縮性細胞をインビトロで成功させた報告はない(参考文献31、32)。インビトロでの最高の結果はコラーゲンマトリックスで得られている。大抵の場合、それはDHT(「脱水熱(dehydrothermal)処理」)でコラーゲン繊維を物理的に架橋させて得たコラーゲンマトリックスである(参考文献33、34)。しかし、このコラーゲンの架橋方法は他の化学的架橋方法と比較してより穏やかなものと考えられる。このコラーゲンマトリックスの利点はそれが多孔質で、細胞の固定と栄養源および酸素の拡散が容易なことにある(参考文献35)。しかし、この種の支持体上での細胞の生存率は低く、分化は部分的で、心筋ミオサイトおよび内皮細胞での末端分化がない(参考文献36〜39)。このタイプのマトリックスでの自発的収縮はほとんどなく(参考文献40、41)、それが有ったとしてもそれは無秩序であり(参考文献42、43)、不整脈が頻繁に起こる。これらのパラメータを改善するために、マトリゲル(Matrigel、登録商標)タイプの基礎メンブレンのタンパクエキスを利用し、それと機械的応力のような物理的な刺激(参考文献44)または慢性的電気刺激(参考文献40、41)と培地の異種漿液含有量を非常に高くしておくことも提案されている。Matrigel(登録商標)は腎臓腫瘍(エンゲル・ブレヒトSwarm腫瘍)の基礎メンブレンに由来する細胞外蛋白エキスである。このMatrigelは耐圧潰性が不充分なため単独では使用できず、合成または生物学的なより硬い支持体と組合せなければならない。現在の知識では、Matrigel化合物の起源から考えてそれを用いて得られる収縮性組織を人間の臨床医学で使用することはできない。さらに、Matrigelが存在で多くの副作用が発生する。このゲルは栄養源の自由拡散を阻止し、バイオリアクタ型の連続注入システムを使用する必要がある(参考文献41)。拡散トラブルが起こると組織の厚さが制限され、心筋交換が正しく行なわれない。
【0012】
有望な結果は細胞化したコラーゲン スキャフォールドを用いて常にMatrigelの存在で収縮性細胞で動物(参考文献4、5、7)でインビボで得られている(参考文献45)。このインビボ調整物は種々の部位で2週間脈動を続け(参考文献46、47)、心筋取付け後に心収縮機能を改善することもある(参考文献45)。場合によっては、支持体とレシピエント動物の心筋との間に自発的同調も見られる。
【0013】
しかし、これらの結果にもかかわらず、コラーゲンマトリックスをインビボで移植後に激しい炎症反応が起こり、コラーゲンマトリックスは急速に劣化する。この強い炎症反応に続く急速なマトリックスの劣化の原因は多量の酵素、フリーラジカルおよび種々の分解産物が局所的に生じ、それが支持体と組合された細胞の生残に関与すると思われる。コラーゲン自体の分解産物は中毒性であり、特に収縮性細胞に対して中毒性であることが報告されている(参考文献48)。さらに、支持体と組合された細胞がその本来のマトリックスを形成する前に支持体の機械的性質が劣化、変質する(参考文献49)。従って、3D-支持体の細胞の生存率は一般に低い(参考文献50)。コラーゲン スキャフォールドでの生存率はさらに低く、コラーゲンスキャフォールドの収縮性細胞のインビボな分化は不完全である。さらに、移植での脈管形成が悪く、その機能化は制限される。この状況を改善するためにはMatrigel(登録商標)の使用は不可欠である。人工心筋を作るために合成マトリックスと組合せてMatrigelを使用することが提案された(LevenbeRGEt alの米国特許第2,005/0,031598号明細書参照)。しかし、インビボで不安定であり、このタイプのゲル中での最初の分化後に細胞は急速にMatrigel(登録商標)の物性が急速に変化することをLevenbeRGEt alは示している。さらに、Matrigel(登録商標)は腫瘍を抽出するため、Matrigel(登録商標)をこの種の用途に使用するには限界があり、人間の医学で使用はできない。また、Matrigel(登録商標)はインビボで非常に強い炎症反応を誘発するため動物に免疫抑制処理する必要がある(参考文献45、47)。それに加えて、Matrigel(登録商標)は血管形成がほとんどない二次的瘢痕性線維症の発生を誘発するため、細胞の長期生存率とのバチンスが問題になる。
【0014】
一般に、コラーゲン繊維の架橋プロセスを減らすことによってコラーゲンマトリックスの劣化は減らすことができる。従来の典型的な物理架橋法はDHTを用いた架橋である(参考文献33、51)。臨床的に使用されるウルトラフルム(Ultra foam、登録商標、Bard)のような止血薬はDHT法を用いて得られる。初期コラーゲンは、0.05M酢酸(pH 3.5)の0.5% w/wコラーゲン溶液中に溶ける。調節物を制御された方法で冷凍関そうしてスポンジにする。細孔寸法および分布は主として凝固速度(0.25-1℃/分)と凝固温度(-90℃〜5℃)に依存する(参考文献52)。次に、上記スポンジをDHTで架橋(100mTorr以下の圧力で105℃で16時間)して、ゼラチン特性を変質させずにコラーゲン鎖間に共有結合を作らせる(参考文献53、54)。このマトリックスは(そのアーキテクチャと、抵抗性、機械特性、栄養拡散に適した細孔径によって)心筋組織の発達にインビトロで参加する(参考文献40、55)が、DHT法で得たこのコラーゲンマトリックスは筋(例えば脊骨骨格筋)へ移植した後に激しい炎症反応を誘発し、2週間で劣化する。
【0015】
従って、他のコラーゲン架橋法を使用し、または、組合せなければならない。コラーゲンの劣化を防止するために、合成ポリマー(参考文献56)または有機、無機の化合物、例えば絹との組合せが考えられる。最近、トランスグルタミナーゼを介した酵素架橋法が提案されている(参考文献57)。コラーゲンの架橋は細胞およびその天然産物とによって得られる。この架橋エンドジエンはアスコルビン酸またはリボースの使用で増加できる。架橋はリシルオキシダーゼ(lysyloxidase)タイプの酵素を生じる筋細胞から得られ、それがコラーゲンのリジン残基の遊離アミン基とヒドロキシリシン残基との間の架橋を行なわせる。別のアプローチはグルタールアルデヒド(参考文献58)、ジフェニルホスホリルアジド(DPPA)、カルボジイミド等を用いた化学処理を用いたコラーゲン繊維の架橋である(参考文献59)。
【0016】
コラーゲンの架橋に最も効率的な方法はグルタールアルデヒドを用いた化学的架橋である(参考文献51、56)が、グルタールアルデヒドは自己重合し、その後にバイオ製剤中でゆっくりと解重合して遊離グルタールアルデヒドを放出する。これは細胞に有毒であり、細胞治療では問題である。
【0017】
そのため合成支持体を用いて心臓組織を作ることが提案された(特許文献1および特許文献2)。しかし、人間で用いることができ、収縮性細胞の存在で収縮を示した合成または生物学的な三次元支持体は実際には存在しない(参考文献60)。これから本発明の目的がきた。
【0018】
一方、コラーゲンベースの支持体の方でも、他のフィブリンまたはフィブリノーゲンベースの生物学的支持体の開発がなされており、心筋中に細胞を注入したフィブリン支持体が提案されている(参考文献61〜64)。フィブリノーゲンは可溶性で、トロンビンおよびカルシウムの作用下でフィブリンに変わり、沈澱する。このゲルの特性はトロンビンおよびフィブリノーゲンの濃度に依存し、モニターできる(参考文献65)。フィブリンの線維の物性は伸長性および応力適応性の面で優れたものである(参考文献66)。
【0019】
フィブリンは細胞治療および組織工学技術で使われる生体材料である。合成支持体中での細胞の移送、心臓弁の製造(参考文献67)、心筋中への細胞の注入(特許文献3)(参考文献68)、心臓組織(参考文献67)、心臓ステント(参考文献70)、脈管形成(参考文献71)、気管支組織(参考文献71)の製造にフィブリンを用いることが提案されている。
【0020】
ゲル化中に各種の成育因子またはRGDペプチドのような接着ペプチドをインビトロで支持体へ加えることも提案されている(参考文献72)。フィブリンはROD単位を既に含んでいるが、種々の因子の中でRODペプチドが存在すると支持体での脈管形成が改善される。この実験でRGDは支持体に共有結合で固定されるのではないということ(参考文献73)、フィブリンのゲルは時間の経過とともにコンパクトになり、その機械的性質を失い、支持体で脈管形成はできなくなるということに注意する必要がある(参考文献74)。このタイプのゲルを幹細胞で用いた時には、フィブリノーゲン濃度が低くなり過ぎた場合、ゲルが液化し、2週以内で幹細胞が消えてしまい、逆に、コラーゲン濃度を過度に高くした場合には支持体上で幹細胞が分化することはできない(参考文献75)という問題もある。さらに、フィブリノーゲンを他の成分と組合せることも提案され(参考文献76)、コラーゲンとフィブリンとのヒドロゲルも開発されている(参考文献77)。本発明で、共有結合性の接着性分子を使用して支持体と組合せるコラーゲン成分またはフィブリノーゲンまたはフィブリンを変性する理由は上記の従来法の欠点を解決するためである。
【0021】
接着性分子の中でROD単位(Arg-Gly-Asp)は、収縮性細胞またはその前駆細胞中および血管内皮細胞上に存在する多くのインテグリンレセプターによって認識されるリガンドである。接着性ペプチドリガンドは他にも多数あるが、このリガンドはコラーゲンが変性しない(暗号形質発現)と細胞にアクセスできない形でコラーゲン上に存在する。硬骨再生のような皮膚組織を作るための各種用途ではRGD分子を用いてコラーゲンスキャフォールドを変性することが提案されている(参考文献22)。しかし、胸部および心臓血管分野でRGDペプチドのような接着性単位とコラーゲンとを共有結合させることは組織工学技術および細胞治療でこれまで提案されたことはなかった。RGD単位に言及した過去の研究は収縮性、心筋機能、リズム性および発生した力に関するRGDの効果に関するものである。Sann et alはROD単位の結合がないことで筋収縮上のRGDの有害効果が説明できるとしており(参考文献78)、この単位のインターナリゼーションとその結果はSY Boatengが報告している(参考文献80)。本発明が示すように、過去の研究でこのようなネガティブな結果となったのはおそらくRODペプチドの使用法が不適当で、使用したペプチドと支持体との間に共有結合ができなかったためと考えられる。このことがS. Balasubramanian et alの研究で上記単位のインターナリゼーションを説明する(参考文献79)。心臓細胞の治療でRGD単位を使用することは提案されている(特許文献3)が、それはRGDとフィブリンゲルとの組合せで、コラーゲンとの組合せではなく、RGDは共有結合で結合されず、他の接着性分子についても記載もない。胸部および心臓血管分野の医学用および外科用デバイスではRGD単位を冠状ステントの金属成分と組合せて循環血管内皮細胞の接着を促進し、ステントの血栓形成性を少なくすることが提案されている。最近、環式RGDを金属(銀)ステントのマトリックス成分(合成ポリマー)と組合せて早期の再狭窄を減らし、内皮細胞性細胞に対する循環前駆体の接着性を促進することが提案された(参考文献81)。心臓組織工学技術のためにコラーゲンではない合成された支持体へ接着性ペプチドが固定されたが、このタイプの合成支持体でインビトロまたはインビボで収縮性を示すものは今日までない。
【0022】
すなわち、合成タイプの支持体では現在まで収縮活動をしたものはインビトロでもインビボでもなく、収縮性の発達はコラーゲンスキャフォールドのみで可能であった。インビトロの心筋ミオサイトの末端分化はMatrigelタイプの腫瘍エキストラクトの存在下での得られている。この点からも本発明に従って改質されたコラーゲンスキャフォールドは重要である。
【0023】
コラーゲンに接着性ペプチドをグラフトさせる方法は種々提案されている。一般に、ペプチド反応基がポリペプチド鎖の末端またはリジン側鎖を介してコラーゲン上のアミン基と化学反応する。例えばC末端がアシルアジ化に転換される。コラーゲンへのペプチドの結合はアミド結合で起こる。この方法では多くの副生成物が生じ、選択性がなく、インテグリンレセプターに結合できるグラフトしたペプチド配列をコラーゲンタンパクから適当な距離に維持するスペーサが使用できない。別のアプローチ方法ではイソチオシアネート基でペプチドを改質し、この基を第一アミンと反応させてチオアミド型結合を得る。後者の方法はMyles et al が提案しており(特許文献82)、水溶性のヘテロ二官能性カップリング剤Pierce(登録商標)(スルホ-LCSPDP)を用いて線維素形成前にRGDのような接着性ペプチドをコラーゲンに固定する。このカップリング剤はコラーゲンの第一アミン基にチオール基を含むペプチドを結合することができる。このカップリング剤の線形寸法は約16オングストロームである。
【0024】
上記のJL Myles et al. の方法はチオールを含む残基に結合した接着性ペプチド配列の使用に制限され、一般にシスチン分子へカップリングしてペプチドを変性する必要がある。このペプチドの改質によってペプチドとそのレセプターとの相互作用が変わる。この著者は線維素形成前に液相のコラーゲンとペプチドとをカップリングすることを提案している。自発的線維素形成を防ぐために反応は酸性pH条件下で実施しされなければならない。しかし、コラーゲンとペプチドとのカップリングは塩基または中性媒体が容易である。さらに、均一相で実行される反応生成物の精製が難しく、副生成物の分離にはクロマトグラフィを使用した複数の精製ステップを必要とする。反応を不均質相、例えば架橋の前処理で不溶性にしたコラーゲン上で行なう場合にはさらに困難になる。上記JL Myles et al. の方法(特許文献82)ではカップリング反応の完了をモニターできず、ペプチド配列の複製反応で利用可能なアミノ基が得られない。さらに、この方法で得られる接着性ペプチドの大きさは16オングストロームを越えない。この寸法は最適状態(30〜40オングストローム)で接着性ペプチドを提示するには大幅に短い(特許文献23、24)。本発明はこの問題に対する解決策を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【特許文献1】米国特許第2,005/0,031,598号明細書
【特許文献2】米国特許第2,004/0,242,469号明細書
【特許文献3】米国特許第2,005/02,761,631号明細書
【非特許文献】
【0026】
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【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0034】
本発明の目的は、細胞治療または組織工学技術のために最適化された三次元の生物学的な天然環境を提供し、また、胸部および/または心臓血管の分野の医学用または外科用のデバイスを改良することにある。
本発明は、支持体またはスキャフォールド(フランス語ではechafaudage)または三次元スキャフォールド(これらの用語は互いに同様な意味で使用する)を製造することにある。
【課題を解決するための手段】
【0035】
本発明の支持体は、接着性分子を付加または共有結合することで変性されコラーゲンまたはフィブリンまたはフィブリノーゲンまたこれらの組合せを含み、これらの成分は元のスキャフォールドでは必ずしも利用できないか、アクセスできない生物活性剤と組合されていてもよい。
【0036】
本発明の変性された三次元支持体には生理的な潜在能(potentialites physiologiques)を展開可能な細胞が種付け(ensemences)および/またはコロニー付け(colonises)されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】カップリング化学反応の原理を示す図。
【図2】種々の収縮パラメータを示す図。
【図3】種々の緩和パラメータを示す図。
【図4】実施例3の結果を示す図。
【図5】実施例4,5の結果を示す図。
【図6】実施例6の結果を示す図。
【図7】実施例10の結果を示す図。
【図8】実施例10の結果を示す図。
【図9】実施例10の結果を示す図。
【図10】実施例10の結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明の三次元スキャフォールドは架橋した成分または未架橋の成分を含む。本発明の三次元スキャフォールドは移植前または移植後に二次的にその成分の重合を続けることができる。本発明の三次元スキャフォールドは一定の場合、注射可能である。この注射は例えば血管、気管支内腔、組織中、体腔、他の支持体中、心血管および胸部の治療/医学で使用されるデバイス中またはこれらの組合せ中に行なうことができる。注射はインビボおよび/またはインビトロで行なうことができる。本発明の三次元スキャフォールドはその成分の一部が移植前または移植後に自発的または光活性化照射後に重合することができる。光活性化照射には紫外線照射、ガンマー線照射、電流、磁気相互作用、イオン相互作用、化学相互作用、温度、超音波、塩、疎水性/親水性環境、ファンデルワールス力、芳香族π−金属−リガンド結合、pH、濃度、レドックス、リン酸化、重合せ、機械力、電磁力または重力等がある。重合または架橋は公知の架橋剤およびその誘導体および/または類縁体、ゲニピン(genipin)、ノルジヒドログアイアレチン酸アグリコン、ゲニポソジック(geniposidic)酸、エポキシド化合物、ジアルデヒドデンプン、グルタールアルデヒド、ホルムアルデヒド、ジメチルスベリミデート(suberimidate)、カルボジイミド、スクシンイミジル、ジイソシアネート、アシルアジ化物、グリセリンアルデヒド、シアナミド、ジイミド誘導体、ジメチルジジピミデート(adipimidate)、ルテリン(ruterine)、ノルジヒドログアイアレチン酸、変換酵素、トロンビンを用いた化学反応、脱水熱(dehydrothermal)処理、細胞とその生化学的製品(例えば細胞の出すリシンオキシダーゼ)との内存性架橋またはこれらのプロセスの組合せで行なうことができる。
【0039】
本発明の三次元スキャフォールドは完全にまたは部分的に生物分解可能であるか、生物分解可能でない。
本発明の三次元スキャフォールドは液相で形成でき、この液相は頒布後に、賦活後または賦活なしで、固相(例えば溶液、ペースト、ゲル、懸濁コロイド、プラズマ)に変換できる。
本発明の三次元スキャフォールドは顕微鏡構造的に自発的に集合可能な疎水性および親水性のアミノ酸から成るヒドロゲルから成ることができる。
本発明の三次元スキャフォールドはゲルまたは界面活性剤にすることができる。
スキャフォールドが界面活性剤または「インテリジェントエージェント」である三次元スキャフォールドは、分子レベルで局所的相互作用による大規模な自発的集合構造から成る生物学的材料である。
【0040】
本発明の三次元スキャフォールドで3Dの構築は互いに別の2Dスキャフォールド上に倍養液を積み重ねて得ることができる。この2D支持体への細胞の接着は調整可能である。2D支持体は接着性分子を固定して変性されたコラーゲン/フィブリン/フィブリノーゲンを含むことができる。
種類の異なる複数の3Dスキャフォールドをシーケンシャル、その他の方法で積み重ねることができる。
【0041】
本発明の三次元スキャフォールドは細胞のマトリックスを形成でき、このマトリックスは人工組織の構造物が構造的に容易に再グループ化できるようにする選択された形の生体材料を含むミクロまたはナノ-構造(例えばミクロまたはナノチューブ、ナノパーティクル、ミクロまたはナノポアー)。マクロパーティクスルまたはナノパーティクルはシリコン、ポリ-(乳酸)、乳酸混合物、グリコ乳酸コポリマー、シクロデキストリン、ナノパーティクルに結合した、または結合していないリポソーム、マグネタイト、フィラメント、外部とのインコーフェースを形成するアナログ構造、ペプチドアナログ、フィラメントまたはスポンジ、粉末、ダクト、球、ミクロスフィア、フィルム、マイクロ球、リピドメンブレン、フィラメント、チューブ、メッシュ、マトリックス、パッチ、組織フィルムまたはこれらの組合せを形成するβ−またはα−構造から作ることができる。
【0042】
複数の異なるタイプのスキャフォールドを組合せることができる。
本発明の三次元スキャフォールドはコラーゲン(I、II、Ill、IV、V、VI、VII、Xlおよびその他のコラーゲン)から成り、また、種々の種類を組合せることができる。「コラーゲン」という用語には不溶性コラーゲン、可溶性コラーゲン、コラーゲン分子の末端をコラゲナーゼ以外のプロテアーゼを用いてテロペプタイト除去して得られるアテロ(atelo)コラーゲンが含まれる。三次元コラーゲンスキャフォールドは自己、同種または異種由来の正常組織でもよい。この組織は脱細胞化(de細胞化)されていてもよく、また、物理的および/または酵素処理(例えばコラゲナーゼ)および/または化学的に、セこれらを組合せて変性されていてもよい。コラーゲンは尿管、心膜、例えばブタ腸粘膜下の「SIS」(参照文献83、84)、血筋、腱、筋膜、脱細胞化腱膜、アミノ型メンブレン、硬膜、心臓弁、その他のような自己、同種または異種由来のコラーゲン含有組織から精製できる。また、コラーゲンの合成コピー、例えばポリマー繊維またはフィブリル形成ペプチドでもよい。
【0043】
コラーゲンは化学的に変性でき、上記コラーゲンまたはコラーゲンと合成ポリマー、ポリ乳酸(PGA)および/またはポリ(DL-ラクチド-Co-グリコリド)(PLGA)および/またはポリ(DL-ラクチド -Co-カプロラクトン)(POL)との混合物、コラーゲン誘導体、例えばゼラチン、コラーゲンの加水分解で得られるポリペチド、加熱処理したコラーゲンのスクシニル化またはエステル化またはカルボキシアミド化または脱アミノ化によって得られる。コラーゲンと結合する合成ポリマーはポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ(L-乳酸)(PLLA)、PLGA、ポリ(無水物)(PA)、ポリカーボネート(PC)、オキシ酸、ポリオルトエステル(POE)、プロピルフマレート(PPF)、多糖、ポリラクトン(PL)ポリカプロラクトン、ポリアミド、ポリアミノ酸、アセタール樹脂、ポリホスファゼン(PPZ)、生物分解可能なポリシアノアクリル酸、生物分解可能なポリウレタン(中心単位)、多糖、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリスチレン、ポリエステル(PE)、非生物分解性ポリウレタン、ポリ尿素、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリ(エチレン酢酸ビニール)、ポリプロピレン、ポリメタクリレート、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリオキシエチレン、ポリビニールアルコール(PVA)、(ポリテトラフルオロエチレン)テックス、ダクロン(dacron)(ポリエチレンテレフタレート)、テトラフルオロエチレン樹脂((PTFE)、ポリエチレングリコール(PEG)、上記と他の化合物とのコポリマーおよび上記ポリマーまたはコポリマーの混合物、各種合成誘導体と生物学的製剤との組合せの中から選択できる。
【0044】
コラーゲンは3D-スキャフォールド成分のみでもよい。この3D-スキャフォールド成分は合成物、無機物(例えばガラス、Si/Si02、チタン/酸化チタン、または、クロム、コバルト、ダイヤモンド、白金、ヒドロキシアパタイト、ニチノール、鋼、シリカ、ストレプトアビジン-ビオチン、ラテックスのような合成蛋白、ナイロン、カトグス(catguth)、ワタ、羊毛、布、ポリエステル、絹、プラスチック、セラミック、アロイ、織物、アビジン、ストレプトアビジン、ポリ-L-ラクチドで強化されたカプロラクトン-Co-ラクチドコポリマースポンジ、ヒアルロン酸(PCLA)メリヤス組織、デンプンおよびその他任意の組合せ)、有機物(プロテオグリカン、グリコプロテイン、グリコアミノグリカン、アルギナート、アガロース、ヒアルロン酸、寒天、キトサン、フィブリノーゲン/フィブリン組合せ、カルボキシメチルキトサンおよびこれらの混合物、ゼラチン、蔗糖オクタスルフェート、デキストラン、セルロース、メチルセルロース、セファロース、Sephadex(ラテックス)状タンパクまたはこれらの組合せ)を含むことができる。三次元コラーゲンスキャフォールドは医学および外科で心臓血管および胸部用医学デバイス、例えば心臓弁(例えば縄、小突起状筋、その他を含む自己由来細胞からの弁)、人工心臓、弁環、弁管、冠状ステントのコラーゲン含有物(「医薬ステント」「セルロース化ステント」生物分解可能なステント」タイプ)、血液相溶膜、膠、(全体または部分的に)セルロース化および/または(セルロース化された)他の支持体と物理的に組合せた生物分解可能な心筋デバイス、パッチ、、心筋置換、心筋または異常心筋の治療システムのような収縮性、再生を助ける生物学的心臓補助具に含まれる「コラーゲン」でもよい。
【0045】
自発性または電気刺激で収縮する脈管の例はバイオペースメーカー、細胞注射用支持体、置換マトリックスまたは支持体、細胞治療補助支持体、人工血管、脈管(冠状グラフトを含む)、内部人口器官、再生材料または組織回復または置換用材料、気管裂開防止または気管支の置換用人工器官/組織、気管支内部人口器官、気管支または気管、「気管支のコイル」、「気管支バイパス」、肺臓組織、医薬移送具、医学または外科用デバイスと組合せたコラーゲン3D-支持体、その他である。
【0046】
スキャフォールドは分子量が大きいまたは小さいフィブリンをベースにしたものでもよい。フィブリンに種々のコラーゲン変性処理を適用することができる。フィブリンおよびフィブリノーゲンを取り換えて使用することができる。種々の形の「コラーゲン」「フィブリノーゲン」/「フィブリン」を組合せることができる。
【0047】
本発明の目的は、例えば接着ペプチドを用いてコラーゲンを変性した、心筋での細胞移植に最適化された三次元の天然の生物学的生育環境を提供することにある。コラーゲンは細胞に対するある種のリガンドを既に持っている天然の分子である。しかし、細胞はその細胞タイプ、その分化のレベルおよびその賦活状態に従ってこれの接着レセプター、例えばインテグリンレセプターを表現する。このレセプターは形質発現が多様なため、細胞はその生育環境かつ所定生育環境に極めて特異的に作用する。
接着性分子は化学的にフィブリノーゲンまたはフィブリンに結合できおよび/または、例えばコラーゲンゲルとフィブリンの場合、調整物中に組み込まれるコラーゲン成分中に含まれる。
【0048】
接着性分子はポリヌクレオチド、接着ペプチド、ポリペチド、タンパクまたはインテグリンレセプターのように高い親和性で細胞接着を促進する細胞レセプターに結合可能な分子を含む。接着性ペプチドは天然または非天然のアミノ酸および/またはその類縁体で形成できる。一つまたは複数のアミノ酸接着ペプチドは置換さていてもよい。接着性ペプチドはペプチド、ポリペチドまたはタンパクまたは最初の接着配列有する分子(天然起源)を含む。ポリペチド、ペプチドおよびタンパクという用語は互いに交換して使用できる。これらはさらに他の化学単位、例えば炭水化物基、リン酸基、ファルネシル基、イソファルネシル基、脂肪酸基、共役結合、官能基化、その他の変性またはポリエチレングリコール(PEG)、その他の合成分子を含む有機または無機分子との結合のプロモータを含む。この変性には接着配列を含むペプチドの環化も含まれる。複数の接着ペプチドを組合せて使用でき、各ペプチドは単一ペプチドでもペプチドの集合でもよい。
【0049】
接着分子またはペプチドは変性でき、支持体に結合するための中間体の役目をする分子をその同じ分子に有していてもよい。
【0050】
また、ペプチドには接着レセプター自体、共レセプター(co-receptors、必ずしも接着性である必要はない)と作用する接着ペプチドが含まれる。この共レセプターへの結合はレセプターの接着および/または活性化および/またはトランスダクションを変性する。
【0051】
本発明では、接着ペプチドはPierschbacher MD et. al 1984(参照文献85)に記載のフィブロネクチン上(「直鎖RGD」)またPlaff M. et. al 1994(参照文献86)に記載のビトロネクチン上の(「環状RGD」)のインテグリンを認識する単位のアルギニン(R)−グリシン(G)、アスパラギン酸(D)に対応するRGDペプチドが有利である。この「ROD単位」にはインテグリン・レセプターαVβ1、αVβ3、αVβ5、αVβ6、αVβ8、αIIbβ3、α4β1、α4β7、α5β1、α8β1の一つと作用する全てのペプチド・リガンドも含まれる。他の接着性ペプチドはPHSRNペプチドまたはB−B−X−BのモデルのX−B−B−X−B−XまたはX−B−B−B−X−X−B−Xをベースにした細胞間マトリックスのプロテオグリカン必須領域(ヘパリン必須領域)(Bは塩基性アミノ酸、Xはヒドロキシアミノ酸である)、YIGSR(lwamoto et. al. 1987)(参照文献87)およびIKVAV(Ile-Lys-Val-Ala-Val-)(Tashiro et al. 1989)(参照文献88)、ラミニンからのRYVVLPRまたはRNIAEIIKDI(Liesi P. et. al. 1989)(参照文献89)、REDV(Massia SP、et. al.1992) (参照文献90)、PHSRN(Pro-His-Ser-Arg-Asn)(Aota S. et. al. 1994)またはKNEED(Altroff H. et. al. 2001、Wong JY、et. al. 2002) (参照文献91、92)またはフィブロネクチンからのEILDV、KRSRのような接着性たんぱくのプロテオグリカン必須領域(Dee KC et. al. 1998、Rezania A. et. al. 1999) (参照文献93、94)またはFHRRIKA(Rezania A. et. al.1999) (参照文献95)、エラスチンのVAPGおよびKQAGDV配列(Mann et West et. al.2002) (参照文献96)、コラーゲンのタイプIのGFOGER(EMS1ey J. et. al. 2O00) (参照文献97)、DEGAである。
【0052】
本発明の特殊実施例ではリガンドがフィブロネクチンまたはビトロネクチンのようなECMタンパクに存在するRGD単位を含むが、コラーゲンに既に存在する非常に多くの他のリガンドを含めて同様な方法で組合せることができる(例えばラミニン等のペプチド配列)。
【0053】
本発明はさらに、チオールまたはアミンまたはカルボキシル基のような官能基を含む、全部または一部がコラーゲンから成るスキャフォールドから出発して、接着分子または相手分子に結合するまたは制御された方法でインサイチュー(in situ)でそれらを放出する簡単な方法を提供する。本発明方法は変性されたコラーゲンマトリックスに滞在可能な細胞の膜レセプターに対するこれらの分子または生物学的薬剤(例えばプロテオグリカン、成長因子またはサイトカイン)の提示を改善する傾向がある。
【0054】
本発明の特殊用途では、上記のヘテロ二官能性カップリング剤はスルホ-LCSPDPである。
【0055】
本発明の特徴は、ペプチドまたは成育因子を空間的提示が改良され、副反応、分子内カップリングおよび/または望ましくない分子間反応の数が減少し、それによって総合的なカップリング効率が改善される点にある。各階段はモニター可能である。
【0056】
本発明では接着ペプチドとコラーゲン支持体に結合される一つの同じヘテロ二官能性反応物を使用する方法を採用する。さらに、コラーゲン支持体を官能基化することで36オングストロームの距離で支持体に接着ペプチドを提示できる。この距離は接着ペプチドを提示するのに最適である距離(30〜40オングストローム)として公知である(参考文献23、24)。この反応でペプチドの複製はなしに支持体の活性サイトへペプチドを一方向性にカップリングできる。反応の中間階段は全て媒体を分光測光解析することで簡単に制御できる。固体支持体上に分子がカップリングした場合、中間生成物を除去するのにクロマトグラフィを実行する必要はなく、単純な洗浄で除去できる。さらに、反応は共役により有利な条件である中性またはアルカリ性pHで実行できる。分子は支持体およびリガンドに対する反応を順次行なうためのマスキング基を有することができる。結合方法は支持体(例えば3D-スキャフォールドおよび選択したRGD-ペプチド)のアミノ酸の側鎖(例えばアミンまたはチオールまたはアルコールまたはアルデヒドまたはアミドまたは酸基またはこれらの組合せ)と化学反応する分子に依存する。この方法は結合がコラーゲンのフィブリノーゲン化の前または後に起った場合に適用される。さらに、この方法はコラーゲンおよびペプチドを別々に活性化できるマスクされたチオール基を有するヘテロ二官能性カップリング剤を使用することでコラーゲンのアミン基をカップリングする全ての方法にも適用できる。また、イオン照射、遊離ラジカルによる開始、その他の分子内転位反応のような他の手段を用いることでこの化学結合を不可逆的に形成することもできる。ピリジルジスルフィド基の代わりにマレイミド基を使用することもできる。本発明はさらに、カップリングのために官能化RGDペプチドの硫黄原子に対する強い親和性を有する薄い金属層で被覆した場合、金属化したスキャフォールドに硫黄誘導体としてROD単位を結合する方法を提供する。支持体または支持体へ固定される薬剤への接着分子の共有結合は化学反応、酵素反応、熱機械反応またはこれらの組合せで後で切断することができる。
【0057】
本発明はさらに、接着ペプチドまたは上記因子のような接着分子の存在下で促進される支持体の架橋性、対象分子の固定および細胞のインサイチュウ成長を可能にする、毒性のない化学反応物を使用してコラーゲンスキャフォールドの生体親和性を増加させる方法を提供する。
【0058】
現在まで、コラーゲンを最も効率的に化学架橋する方法はグルタールアルデヒドを用いた方法である。グルタールアルデヒドは重合した後に、加水分解して細胞障害性のある遊離のグルタールアルデヒドを放出する。そのためこの方法で得られたスキャフォールドは組織工学技術用途では使用できない。
【0059】
従って、一つの固着方法ではグリコサミノグリカンを例えばヘパリンまたはヘパリンサルフェートとして付加逆的に架橋性し、残ったアルデヒド基を中和してグルタールアルデヒドを付加逆的に固定する。最初のアプローチでは、グルタールアルデヒドで組織を固定し、遊離したグルタルデヒド基はグリコサミノグリカン(GAG)を使用してヘパリン/ヘパリンサルフェート、コンドロイチン硫酸、硫酸デルマタンとして不可逆的に中和する。GAGがマトリックスの水和度を制御することは知られているが、多くの成育因子に対してリガンドとしても作用する。Lee et. al.はアミノポリエチレンオキシスルホネート(NH2−PEO−SO3)(Lee et. al. 2001)(参考文献98)またはヘパリンでブロックすることによってグルタールアルデヒドで固定後の反応性アルデヒド基を制限する方法を報告している。Dove JS(米国特許第2,006/0,217,805号明細書)は組織をグルタールアルデヒドで固定した後、組織をグルタールアルデヒド、おそらくイミンおよび固定組織上のカルボキシル基を減らすことができる還元剤で処理する方法を提案している。しかし、この方法はコラーゲンスキャフォールド上への移送が困難で、特に壊れ易い組織を固定する方法として使用することはできない。グルタールアルデヒドとアミン基との反応時に形成されるイミン基を減らすためにはより穏やかな還元剤を使用するのが適切なようである。
【0060】
相溶性を改善する目的で、グルタールアルデヒドではない別の架橋剤を使用したアプローチが提案されている。Y. Chang et al (2002); HC Liang (2004); CC Tsai et al(2001)(参照文献99、100)(米国特許第2,005/0,013,802号明細書)では天然または脱細胞化組織の架橋をゲニピン(genipin)を用いることを提案している。しかし、細胞化されるコラーゲン繊維から再形成されたコラーゲンスキャフォールドの固定薬剤としてゲニピンの使用は提案されていない。心血管分野でのゲニピンの使用に関する唯一の刊行物は例えば医学デバイス「医薬溶出ステント」のコラーゲン成分の劣化制御に関するものである(米国特許第2,005/0,123,582号明細書)。細胞化ステントの場合には毒性による細胞増殖を制御する目的の「医薬」成分は不溶である。本発明ではRGDのような接着ペプチドと組合せる前または後の組織工学技術でのラーゲンの人工マトリックス(コラーゲン、ゼラチンまたはキトサン)を安定させるために、ゲニピンをUV、イオン照射、脱水処理、熱処理等の他の物理処理と組合せて使用することを提案する(dehydrothermal crosslinking(DHT)KS Weadock et al 1996)(参照文献33)。
【0061】
本発明はMooney et al の米国特許6,642,363号(2003)とは違っている。この特許は生物分解可能なコラーゲンマトリックスに種付けした基本的にミオサイトから成る心血管用人工組織を生産するためのもので、著者はポリアルギネート鎖から組織を作る方法を記載している。
【0062】
本発明はBarerra et alの米国特許5,399,665号(1995)ともは違っている。この特許では官能化されたポリマーを使用し、コラーゲンは使用しない。
【0063】
本発明はHai-Quan, Mao et alの米国特許2,005/0,058,692号ともは違っている。この特許は合成高分子マトリックスのためのリガンド生体分子としてコラーゲンを使用する。
【0064】
RGDペプチドのような接着ペプチドをマトリックス上に単に固定するだけでコラーゲンマトリックスにおいて収縮性細胞の終末分化が得られるということを証明したのは本発明において我々が初めてである。天然または刺激による収縮活動が電気的閾値とともに増加する。移植の後、収縮が絶えず起こるようにするためには移植した心筋は天然の心筋によって刺激されなければならないのでこの特性は極めて重要である。本発明者はさらに、無毒な架橋方法を用いることで炎症反応およびグラフト鎖に対する免疫応答を遅らせる方法をを提供する。また、コラーゲンマトリックスに固定されたRGDペプチドはインビトロおよびインビボで脈管形成を有利に進める。Levenberg S.et al(2005)(参照文献101)で公知のように、インプラント官能化および生存率を向上させるためには局所的なプレ血管系または脈管形成が重要なファクタである。
【0065】
上記薬剤(agent)は化学物質、物理的なもの、生物学的なものまたはこれらを組合せたものにすることができ、例えば成育因子、機械力(例えば外部相互作用、剪断応力および機械応力等)、電気的刺激(電圧、磁界)、生体分子および小分子またはこそれらの組合せにすることができる。
【0066】
細胞の接着とその後の生残、増殖、アポプトーシスおよび分化を制御する薬剤が特に重要であり、それは脈管形成、乏血、劣化、再生、細胞間マトリックスの免疫制御、炎症および免疫反応、環境中への細胞設置(細胞ホーミング)、腫瘍増殖、心筋、脈管、気管、気管支および呼吸器の作用、免疫原性を制御する薬剤(agent)にすることができる。生物学的薬剤としては薬剤またはそのレセプターを使用できる。
【0067】
「薬剤」という用語は下記のものを含む:コラーゲン、フィブリン、フィブリノーゲン、サイトカイン、ケモキ(chemokine)、エイコサノイド(eicosanoides)、グリコプロテイン、グリコサミノグリカン(例えばヘパリン/硫酸ヘパリン、例えば上記のシンデカン(syndecane 1;2;3;4を含む)、コンドロイチン(コンドロイチン4および6のみものは含まない)/硫酸デルタン(dermatane)または硫酸カラタン(keratane))、カラタン(keratane)およびキミオタクチック(chemotactic)剤、生長因子レセプタ、酵素、ホルモンまたはそのレセプター、血管因子、血管形成促進または抑制因子、ワクチン、抗体、凝固因子、規格化タンパク、転写因子、分化因子、レセプター、ADN、cDNA、ADN-アプタマ、トキシン、構造タンパク、接着分子、医薬、治療薬、化学療法剤、抗生物質、抗菌類、抗微生物剤、感染防止剤、抗菌剤、抗ウィルス因子、これらの分解断片、変異株またはこれの組合せ。
【0068】
本発明の具体的実施例では、虚血または心臓機能不全の治療に対して生物学的に活性な物質を塗布(deposer)し、上記薬剤が局所的に塗布した空間をつくる。生物学的に活性な物質としては下記のものが挙げられる:
【0069】
アドレナリンのα-またはβ-遮断剤またはアゴニスト、AMPキナーゼ−活性剤、アンギオテンシン変換酵素(ACE)抑制剤、アンギオテンシンIIレセプターレセプター、抗アリテミック剤(antiarrythmic)、血液凝固阻止剤、抗血小板凝集薬剤、抗糖尿病剤薬剤、抗酸化剤、消炎剤、ビラリ(billiary)酸封止剤、カルシウム拮抗薬、カルシウム拮抗物質、CETPインヒビター、コレステロールおよびリピド調節剤、アラキドン酸、利尿剤、エストロゲン置換剤、イノトロピック(ionotropic)剤、脂肪酸類縁体、脂肪酸合成抑制剤、フィブレート(fibrates)、ヒスチジン、ニコチン酸誘導体、硝酸塩、レセプターのアゴニストまたはアンタゴニストペルオキシソームの増殖活性剤、ラノルジン(ranolzine)、スタチン(statin)、サリドマイド、チアゾリジンジオン、血栓溶解剤、血管拡張剤、血管収縮ホルモン、その他のSDF−1因子リスト、αMCP−3のような間葉細胞ホルモン、0EB、超ファミリーαまたはβ−TGFリガンド、LIF ケモキン、BMPケモキン、BMPレセプター、smadまたはldb3、BMP2、BMP4のような信号分子、さらには医薬も含まれる。
【0070】
成育因子は下記から選択できる:アクチビン(activin)-A(ACTE)、、レチノイン酸(RA)、上皮細胞成長因子、硬骨形態形成タンパク、腫瘍増殖因子TGF、例えば「TGF−β」、HOF(肝細胞成長因子)、PGDF(血小板由来増殖因子)、アルブミン、ヘムオキシゲナーゼ、LDL(低密度タンパク)、腫瘍壊死因子、α−インスリン様増殖因子(IGF-lおよび/またはIl)、繊維芽細胞増殖因子、神経成長因子(NGF)、筋形態形成因子(MMF)、α−ケモキン間質細胞派生因子(SDF)−1、VEGF(血管内皮細胞成長因子)、繊維芽細胞増殖因子(FGF)またはレセプター、造血成長因子、ヘパリン、ヘパリン硫酸、コンドロイチン硫酸、グリコサミノグリカン、血液凝固阻止剤、血栓溶解剤、抗線維素溶解薬、抗血小板剤、凝固因子、TPA(t-PA)、トロンボモジュリン、高分子量キノゲン、AT−Ill、C−エステラーゼ抑制剤、Hファクタ、EPO、SCF(幹細胞成長因子)、G−CSF(顆粒球成育因子)、GM−CSF(顆粒球−マクロファージ刺激的なファクタ)コンプレメント因子、血小板由来増殖因子(PDGF)、単核細胞ケモアタッチタンパク−1(MCP−1)、上皮細胞成長因子(EGF)、パラトルモン(PTH)、セロトニン輸送体またはセロトニンリセプタ輸送体またはセロトニンリセプタアンタゴニストおよびアゴニスト、血球内グロビリン、内皮細胞成長因子、刺激因子、血管内皮細胞ケモキン血管由来CXC、HIF−1α、アンギオゲニン、ヘパリン成育必須因子、ペプチド成育因子、インシュリン、lOF(インスリン様増殖因子)、エストロゲン、ヒト成長ホルモン(hGH)、フォリスタチン(follistatin)、プロリフェリン、プロスタグランジン、インターロイキンまたはリセプタ、グロビン、免疫グロブリン、HLA型組織適合性抗原、触媒性抗体、腫瘍壊死因子、ケモキン、免疫抑制剤、消炎剤、抗新生物薬、抗生物質、抗真菌性および抗細菌性薬剤、抗ウイルスおよび抗微生物剤、抗感染因子、ヘプチン(leptins)、インターフェロン、コロニー刺激因子、V−MAP、血管形成剤(angiopoietin)、成育因子またはサイトカイン用刺激潜伏ペプチドリセプタ(例えばLAPβ1、LAPβ3)、VEGF−1、VEGF−2(KDR)、CTGF、Tie−1、Tie−2、SCA、CD133、CD34、CD43、エフェドリン、メタロプロティンナーゼ(MMP)型タンパクのようなマトリックス劣化制御タンパク、MMP2、Del1、αHIF−1、単核細胞ケモトラクタントタンパク(MCP−i)、オリゴマー再生剤(RGTA)、
【0071】
ニコチン、ヘパリン/ヘパリン硫酸またはコンドロイチン硫酸/デルマタン/ケラタンのようなグリコサミノグリカン、ラミニンまたはラミニンのYIGSRリガンド単位(IKVAV配列)を含むペプチド、エラスチンVAPG配列、X−B−B−X−B−XまたはX−B−B−B−X−X−BX配列、B−B−X−B配列をベースにしたヘパリン結合領域(ここで、Bはアミノ酸、Xはヒドロキシアミノ酸、プロテオグリカンまたはプロテオグリカンと結合する分子(例えばフィブロネクチンのヘパリンのHepIIの結合領域)、REDV、PHSRN、RGD、FHRRIKA、アデノシン、イノシン単独または組合せ、接着分子または接着分子用リセプタ(インテグリンリセプタによって識別されるリガンドやさらには接着細胞に慣用する他のリセプタまたはコリセプターも含む)。
【0072】
組合せる薬剤は化学的に結合していても、吸着されていても、吸収されていても、遊離していてもよい。
【0073】
上記薬剤は組織内または外部スキャフォールドまたは医学/外科デバイスの接触する第1のスキャフォールドまたは組織を処理するための第2のスキャフォールドを規定する3Dスキャフォールドの容積内に収容されているか、その外部にあることができる。
【0074】
上記薬剤は3Dスキャフォールドの移植前、移植中または移植後にシンビトロまたはインビボで3Dスキャフォールドの内部に存在することができる。
【0075】
上記薬剤は外部コンテンションシステム、血管内または気管支内のデバイス、組織または血管内デバイスを用いて伝達することができる。
【0076】
スキャフォールドは組織内のニッチな局所にそこに生物学的活性材料を配置(塗布)するのに適した場所をつくる。上記組織は局所的または全体に導入された医薬等の生物学的活性材料の結合を濃縮する役目をする。また、スキャフォールドはそのスキャフォールドと組合わされた生物学的活性薬剤の放出デバイスの役目もする。
【0077】
細胞コンティンジェント(contingent)は変性コラーゲン三次元支持体と組合せることができる。所定条件下では細胞コンティンジェントはホスト細胞による支持体上のコロニー化からくる。細胞は胎児、胎仔、新生児または成人の細胞にすることができる。細胞は幹細胞、予備分化幹細胞、始原細胞または分化済み細胞またはこれらの組合せにすることができる。細胞は自己由来でも、類縁細胞でも、哺乳動物細胞のようなヘテロ細胞からのものにすることができる。
【0078】
細胞は遺伝学的に設計できる。細胞成分は細胞が生物学的活性剤を出すように設計できる。イクスビボ、インサイチュウまたはその組合せで細胞を操作した細胞成分にすることができる。
【0079】
細胞成分は哺乳動物または非哺乳動物の細胞の異なるタイプを融合して得ることが可能できる。細胞は分化度、活性化度、年齢、処理操作方法がの異なるものにすることができ、これらを組合せたものから得ることができる。
【0080】
異なるタイプの細胞を組合せることができる。
【0081】
一つまたは複数のタイプの細胞が3Dスキャフォールド内に存在していなくてもよい。異なるタイプの細胞を組合せる必要は必ずしもなく、スキャフォールド内に同時に存在する必要もない。最初に細胞をスキャフォールドインビトロとインビトロまたはインビボで組合せることができる。また、移植前に細胞をスキャフォールドインビトロで培養することもできる。細胞を第2のスキャフォールドと組合せることもできる。支持体をコロニー化するために細胞をスキャフォールド中、その近くまたは間隔をあけて直接注入することができる。従って、支持体には血管外ルートで注入でき、細胞を同時または二次的に注入することができる。
【0082】
場合によっては、スキャフォールドを配置する前に細胞がインビボで存在していてもよい。場合によっては細胞コンティンジェント(contingent)は宿主細胞による支持体のコロニー化で生じさせることもできる。種々の組合せが可能である。
【0083】
本発明の方法は潜在的に血管由来すなわちリズミカルに収縮する細胞に適用できるが、それに限定されるものではない。収縮性細胞の例としては下記が挙げられる:ヒトの胎生幹細胞、ヒト胎生期幹細胞SCNTからの胚細胞(核トランスファー)、下記の分化組織から誘導される精製した大人の幹細胞:肝臓、膵臓、心臓、肺臓、髄硬骨、筋組織(平滑筋、心臓、骨格筋等)、胎児、新生児または成体組織から単離した内皮または収縮性細胞、心臓、肝臓、胎仔、その他の組織から単離したScalセル+/-、インビトロまたはインビボの予備分化細胞、骨格筋芽細胞または心筋細胞、心筋(胎仔、新生児、成人)、心筋細胞または髄間葉系細胞、間質細胞、造血細胞、さい帯血、血液、白血球、心筋または血管内皮細胞(例えばCD34+、AC133+細胞)のための血液から単離される始原細胞、羊膜細胞、胎盤細胞、栄養芽層細胞、アディポー細胞またはその誘導細胞、腹膜からの細胞、例えば腹膜中皮細胞、骨膜細胞、軟骨細胞、繊維芽細胞、ノイロン細胞、海馬細胞、表皮細胞、真皮細胞、ケラチン合成細胞、顆粒細胞、免疫細胞、予備分化細胞(電気処理、酸素圧低下、低温処理、凝固処理、化学的処理、化学物質、生物学的処理、その他の物理化学的処理による刺激的)。
【0084】
以下の特定実施例では、変性コラーゲンマトリックスの各種の階段と、得られた調整ものの特徴とを性爪引例する。
【実施例】
【0085】
実施例1
RGD/RGEペプチドのような接着分子のコラーゲンスキャフォールドへの共有結合カップリング、または、スキャフォールドがコラーゲンから作られている、および/または、チオール、アミンまたはカルボキシルのアクセス可能な基を含む場合にはプロテオグリカン、成育因子またはサイトカインのような生物学的薬剤への共有結合カップリング
【0086】
カップリング反応の原理は[図1]に示してある。[図1]に記載のカップリングを用いることでRGD単位を支持体(ここではコラーゲンマトリックス)から平均距離(ここではインテグリン・レセプター部位とペプチド配列とが最大相互作用できる長さの30〜40オングストローム)で提示できる(Beer, J.H et. al. 1992、Craig, W.S. et. al. 参照)(参照文献23、24)。
【0087】
コラーゲン スキャフォールドは臨床医学で止血剤として既に使われている材料であるUltrafoam(登録商標):DHTで架橋した牛のタイプIおよびタイプIIIのコラーゲン繊維由来の5mm厚さのUltrafoam(登録商標)のシート(PBSで再水和後に2.5mm)(Davol社、Cranston、RI)のようなDHTで架橋した多孔質支持体を使用するのが有利である。このマトリックスを再水和後に皮膚生検パンチを使用して8mm直径、2.5mm厚さの円板に切断する。再水和後の支持体のコラーゲン濃度は約20mg/cm3である。支持体の細孔径は30〜200μmである(H. Park 2005)(参照文献56)。コラーゲンマトリックスを形成後に水溶性のヘテロ二官能性架橋剤(6-[3'-2-(ピリジルジチオ)-プロピオンアミド] ヘキサノエート((スルホ-LC−SPDP)、(Biochemical、Rockford、IL、USA))を使用して線形ペプチドRGD(例えばGRGDS)またはRGES(シグマAldrich)をコラーゲンマトリックスに共有結合で固定した。
【0088】
上記のヘテロ二官能性架橋剤(以下、架橋剤という)はそのN-ヒドロキシスクシンイミド基を介してコラーゲン中に存在するアミン基と反応する。2-ピリジルジスルフィド基を含むこの架橋剤の他方の末端はジチオトレイトールによりチオール基へ変換後に活性化された接着ペプチドと反応する。このペプチドはGRGDSであるのが有利であり、それはRGESを使用した場合、グリシン残基のN末端部またはアルギニン残基で架橋剤スルホ-LCSPDPと直ちに結合する。例えば、GRGDSまたはRGES(滅菌水溶液)(0,1-10mg/m1)を24〜72時間スルホ-LCSPDPと反応させて、それぞれスルホ-LC−GRGDSおよびスルホ−LC−RGESにする。これとは別に、過剰のスルホ-LC−SPDP(10mgのコラーゲンマトリックスに対して20mMの原液を25μ1、50μ1および100μ1)を室温で24〜72時間、PBS pH 7の再水和後のコラーゲンマトリックスと一定撹拌下に反応させた。マトリックスをPBSで洗浄して過剰の架橋剤を除去した。こうして変性されたマトリックスをジチオトレイトール(DTT)(PBSの12mg/ml)て処理し、DTTは洗浄して除去した。最後の反応では、上記のように処理されたコラーゲンマトリックス(10mg)をPBS中で48時間、スルホ-LC−GRGDS(0;0.5;1および2mg)またはスルホ-LC−RGES(1mg)と反応させる。置換度はコラーゲンに対する各反応物の相対量を代えて制御し、特に、架橋剤の開裂で生じるピリジン-2-チオン(343ナノメートルで比モル吸収= 8.08×1O3 M-1 cm-1)([図1])を分光測光法で測定して制御した。調整物は滅菌状態で4℃で保存した。
【0089】
実施例2
接着分子で官能化したコラーゲンスキャフォールドの収縮性組織の製造での使用
収縮性細胞
各タイプの細胞は平滑筋細胞、骨格筋細胞または心筋細胞として完全分化前後に収縮活動を有する。予備分化したまたは未分化の胎生期幹細胞(分化試薬は例えば成育因子または成育因子の組合せにすることができる。FGF、TGFβ、BMP-2、SDF 1タイプ、その他の成育因子の培地からのいくらかのファクタの除去または阻害、酸素圧低下、電気刺激、凝固、機械応力のような物理条件)も収縮性細胞への分化を促進する能力を示す。髄骨細胞(造血性細胞または間葉系細胞)、循環血液から分離した細胞(さい帯血から分離した細胞を含む)。また、収縮潜在細胞は、分化した組織(胎児または成体組織)、筋組織(筋芽細胞または心筋生成細胞)、胎仔または大人の分化組織(肝臓、膵臓、心筋、肺臓、その他)、羊水、遺伝子改質細胞等から単離する。
【0090】
コラーゲン支持体への細胞の注入
この実施例では従来から使われている分化した収縮性細胞の新生ラット心筋ミオサイト(生後二日目のラット心室の消化で得た)を接着ペプチドで官能化した(またはしていない)コラーゲンマトリックスに配置した。コラーゲンマトリックスはDHTで得た。以下の実施例はUltrafoam(登録商標)(Bard)タイプの商用マトリックスであるが、他のタイプのコラーゲン成分から成るマトリックスを使用することもできる。すなわち、1×107細胞/cm3の多数の細胞をコラーゲンマトリックスのマトリックス中に置いた。比較として、心筋組織中の心臓のミオサイトは組織容積が0.5〜l×108心筋ミオサイト/cm3である(M. Radisic et al 2003参照)(参照文献102)。接着ペプチドで改質したコラーゲンスキャフォールド(寸法:直径8mm×厚さ×5mm)に1.5×107細胞/cm3濃度で2×106の心臓ミオサイトを種付けした。細胞を付けた直後にマトリックスを1000回転/分で6分間、遠心分離して、交換効率と細胞の分布を均一化にした。固定しないでペレット中に残った細胞は再びマトリックス上に堆積させた。
【0091】
細胞化したスキャフォールドの培養
次に、細胞化したマトリックスを12-ウエルプレートに移し、10%馬漿液を使用しないウシ胎仔血清リッチな従来の培地DMEM 2m1(Eagle培地をダルベッコで修正)を用い、バイオリアクタなしに静的に培養した。24時間後、5%のウシ胎仔血清のみを含み、トランスフェリン(10mg/mI)、インシュリン(1mg/mI)およびセレニウムを含むDMEM培地に変えた。培地は1日に2回変え、8日間培養した。Matrigel(登録商標)タイプの細胞間マトリックスは全く必要無かったことを強調しておなければならない。また、電気的刺激または機械応力のような物理的刺激や、バイオリアクタや、高濃度の馬漿液等の異種漿液を使用せずに、下記の結果が得られた。
【0092】
組織学
細胞化されたマトリックスを10%ホルマリン中で8日間固定し、パラフィンに埋め込み、従来の組織学的分析を実行した。構造解析のために5μmの横断面をHES(haematoxylin-eosin-saffron)で染色し、細胞数および分布を求めた。細胞化したマトリックスの一部を液体窒素で凍結し、免疫ラベル化を行なった。解凍後、3%ウシ血清アルブミンを含むPBSで飽和したトリトンX-100で断片を透析した(permeabilized)。次に、蛍光標識剤(Alexa)に共有結合した主抗体および第2抗体と一緒に上記断片を培養した。すなわち、RGD修正されたマトリックスをalex-546(分子プローブ)と共役結合したハツカネズミ抗α‐アクチニン抗体(希釈度1:500を使用(シグマ))とハツカネズミ第二抗体(1:300希釈)と一緒に培養した。細胞核はDAPI特異的ラベル化された。
【0093】
接着ペプチドで改質したコラーゲンマトリックスに新生児ラットの心臓ミオサイトを注射しする。インビトロで約2〜3日間培養した後に自発的に収縮活動するインプラントができる。8日目にRGD単位なしでコラーゲン含有インプラントの50%に収縮活が観測され、RGD単位存在下では80%に収縮活が観測された(p=ns)。面白いことに、自発的脈動はRGD単位141±17の存在下の方補が61±26より急であった(有意差p<O.05)。この存在下では改質コラーゲンマトリックスでの脈動がより規則的であった。
【0094】
種々の収縮パラメータは[図2]に収縮パラメータとして、また、[図3]に緩和パラメータとして示してある。電気刺激なし(刺激-)または電気刺激あり(刺激+)での自発的活動をY Lecarpentier et al の方法で記録した(文献番号103〜105)。中実のヒストグラムはベースのコラーゲンマトリックスに対応し、中空のヒストグラムはROD単位で官能化したコラーゲンマトリックスに対応する。記録は8日目に実行した。
【0095】
[図2a]および[図2b]はマトリックスの電気刺激の効果を示す。測定したパラメータは発生した力の強度(マイクロニュートン)(「アクティブテンション」)または短縮化の結果(ΔL)である。図から分かるように、電気刺激の振動数が増加すると発生する力が減少し、負のステルケア(stercaire)効果が表れる。しかし、テストした刺激振動数の全てでRGD単位が存在した場合に発生する力がRGD単位が存在しない場合に生じる力より大きい([図3a]。最大の力は0.17Hzの振動数で生じた。もちろん各マトリックスに電気刺激の閾値があり、それは振動数に依存する。さらに、電気刺激強度が同じ場合、RODを有するマトリックスの方が電気刺激振動数の閾値が低いのことが分かった。さらに、機械的応答性もROD単位が存在する場合の方がより良い(各pp<0.05であることを意味する)([図2b])。RGDマトリックスの場合、刺激の閾値は非常に低い(3V /cm以下)。
【0096】
移植した収縮性細胞の患者生来の心筋との同期能力は全ての場合で組織の刺激閾値が低い場合(ROD+が存在する場合)ほど効率的である。この限界は心筋レベルで計った時の自発的脱ポーラリゼーションの程度とほぼ同じである。測定した収縮性組織の能力は両方のパラメータ:短縮化パラメータ(ΔL)([図2c])および発生力の強さ(「アクティブテンション」)([図2e])でRGD+マトリックスの方が良かった(p<0.01)。面白いことに、本発明で変性したマトリックスでの測定値は文献に報告されている全ての値より高かった。最適刺激周波数でのROD単位の存在によるΔLはファクタが3増加した(31.1±3.1対9.4±3.9 Δm)(ROD−対RGD+;p<0.05)。この差はマトリックスを刺激した場合でも残る([図2c]、[図2e ](刺激)+対(刺激−))。
【0097】
[図2d]と[図2f]はこれらの力またはこれらの短化効果の発生速度を時間を関数として示すいくらかのデータの例である。両方で最高短化速度(maxVc:最大収縮速度)([図2d])および一定時間内での最大発生力[図2f])が見られるのはRGDマトリックスの場合である。最高収縮速度maxVc(633.0±180.8対56.8±23.1 Δm/s、ROD−対ROD+、p<0.05)と時間を関数とする最大発生力もRODマトリックス+では他のタイプのマトリックスと比べてファクタが2増加する([図2f]、p<0.01)。
【0098】
収縮パラメータに関しては緩和パラメータが筋肉張力時の伸びおよび減少の両方においてRGD+マトリックスで改善される([図3])。さらに、収縮パラメータの場合、この緩和最大速度Vr:最高弛緩レートおよび−Df/dt速度「アクティブテンションの減少」([図3D])は変性したマトリックスの方が高い。この差は電気刺激下でも残る。
【0099】
[図3a]および[図3b]は最大収縮速度Vcおよび最大弛緩速度Vr比を基礎的コラーゲンマトリックス[図3a]またはRODて変性したペプチドマトリックス[図3b]で比較したものである。両方のタイプのマトリックスで収縮と弛緩速度との間の強線形の相関がある。これらの速度は同じタイプのマトリックスでは実質的に同じである。収縮は細胞収縮によって生じる活性現象である。これに対して緩和はマトリックス支持体または細胞に起因する活性現象の弾性コンプライアンスから生じる受動現象である。細胞化されていない基礎的なRGDマトリックスの機械特性はほぼ同じである。RGD+とRGD−マトリックスの間の緩和の差は2つのタイプのマトリックスの弾性の差によるものよりは、むしろこの差を生じるマトリックスと組合せた細胞群の差による。また、収縮速度と弛緩速度とが非常に類似していることから両方のマトリックスで、特に、収縮時および緩和時の可能な弾性に対してマトリックス効果は実質的にゼロであることが推定できるということは重要である。収縮パラメータおよび緩和パラメータは心房拡張時の心筋充填に重要である。
【0100】
異なるマトリックスの組織学解析からもRGDマトリックスの収縮性細胞での分化がよいことが確認される。RODを含まないコラーゲン組織は8日以後、実質的に殆ど分化しない球状細胞を含むだけであり、マトリックスと実質的に接触していない。これとは逆に、RGD+マトリックスに心筋ミオサイトをと組合せたものはより整合し、延長し、極めて規則的な中心細胞核を有している。さらに、コラーゲン・マトリックス(RGD+)中の心筋ミオサイトは無秩序な状態が全くない配列をし、コラーゲン繊維の周りに組織化され、強く付着している。FACSマトリックスの細胞数アセスメントから、細胞数は培養によって減少することを示す。しかし、この減少はコラーゲン・マトリックスで8日後にファクタ6であるのに対して、RGD+マトリックスではファクタ2だけである(RGD−対RGD+、p<0.05)。従って、RGD+マトリックスは8日後にROD−-マトリックスと比較して細胞数がより大きくなる(0.67×106 対0.20×106細胞、RGD+対ROD2−、p<0.O5)。同様に、細胞核をDAPI−染色手ラベル化した後のコンフォーカルの観点での組織学断面では、細胞化されたRGD+マトリックスは組織学断面当たりの核数が多い。さらに重要なことには心臓ミオサイト収縮装置の末端組織を反映する心臓ミオサイトの横断条痕がROD+構造では検出されたが、RGD−構造では検出されなかった。細胞の形態変化は細胞の最初の細胞数や、所定製法での細胞密度に依存せず、その観測された差の大部分は細胞−支持体の相互作用に起因し、細胞間の相互の違いには依存しない傾向があることを示している。
【0101】
上記の結果は明らかにコラーゲンにRODペプチドのような接着分子を固定することで収縮細胞への接着、その生残および分化を容易でき、その結果、この支持体から製造した心筋組織の自発的および電気刺激下の両方での収縮特性を改善できるということを明らかに示している。さらに、機械的性能および電気的性能も改善され、組織は電気的に安定であり、より低い刺激閾値を有する。
【0102】
実施例3
接着分子で官能化したマトリックスに血管内皮細胞を組合せたインビトロ脈管形成誘導
他のタイプの製造方法では、対象細胞、例えば血管内皮細胞(成熟細胞または原体細胞)を接着分子(好ましくはROD単位)で官能化した3D-コラーゲンマトリックスに収縮性細胞や繊維芽細胞、ケラチン合成細胞、収縮性細胞、遺伝子改質細胞等の他タイプの細胞(これらは独立して使用できる)の存在下または非存在下で移植する。この支持体は血管内皮細胞と同様に組合せた細胞群の生残および分化を促進する。上記細胞群は収縮性細胞と組合せてまたは独立して使用できる。この支持体は初めに細胞群と組合せずに使用し、後で細胞が支持体にコロニーを作るようにすることもできる。血管内皮細胞は3D-支持体に移植した収縮性細胞の生残と分化を促進し(DA Narmoneva、et. al 2004)(参照文献32)、筋−骨格(musculo-skeletal)組織のインビトロ予備血管化(pre-vascularization)によって移植後の生残率が改良されることが証明されている(S. Levenberg andaL 2005)(参照文献101)。
【0103】
一般にインビトロで製造と三次元組織は天然タイプの組織中に存在する脈管ネットワークを有していない。従って、臨床的リアリティーにするためには、インビトロで製造した収縮性組織はレシピエントの既存の血管系から始まる血管系発達を助けるか、初めに3D支持体と組合せた、または移植後に支持体実質的に補充した血管内皮細胞群の分化を助けることによって血管新生を促進することが可能でなければならない。従って、インビトロで製造した組織の最も重要な特性の一つは栄養化および導管内部でのその発達を促進させて、細胞死亡および機能減失に大きく影響する移植後の虚血期間を少なくする能力である(RY Kannan et al 2005)(参考文献35)。心臓ミオサイト型の収縮性細胞の場合や、これらの細胞を血管系が始めから既に変化していた領域(虚血性または壊死した心筋)へ移植した時のように、特に酸素圧低下に敏感である細胞の場合はより重大である。移植予備血管形成およびこのタイプの支持体のゲル化の必要がないという事実によって無栄養な自由拡散の促進が可能になった、従って、より厚い組織を作ることができる。細胞のマイクロ環境をこの空間内に制御でき本体の応答と同じく変更できる。さらに、この支持体と薬剤とを組合せることができ、また、この薬剤、ここでは脈管形成の調節に関係する成育因子をコードする遺伝子で形質転換したこのタイプの3D-支持体細胞中へ移植することができる。もちろん他の遺伝子、特に三次元支持体の内部、近くまたは遠くでの接着、生残、成長、「ホーミング(homing)」、増殖、アポプトーシス、細胞分化を行なう遺伝子をさらに自由に組合せることができる。さらに、リズミカルな活性を与える細胞間マトリックスを制御する遺伝子または細胞減極化を制御する遺伝子、免疫や炎症腫瘍反応を制御する因子をコードする遺伝子も含まれる。
【0104】
支持体と「血管内皮細胞」との組合せ
非常に多数の収縮性細胞すなわち約0.5〜10×107細胞/cm3の収縮性組織を必要とする収縮性組織に対して、血管内皮細胞に必要な数は約106細胞/cm3とはるかに少ない。成熟したハツカネズミの分化した血管内皮細胞(Arbiser et al 1997に記載)をMile Svenl(MS1)コラーゲンマトリックス(ATCC #CRL-2279)に移植した。接着分子、好ましくはROD単位で官能化したコラーゲンマトリックスタイプのスキャフォールドとしないもの(RGD+(TR)またはRGD-(T))に、異なる濃度のMS1細胞を付け、さらに4mM L−グルタミン、1.5のg/I重炭酸ナトリウム、4.5g/lのグルコース、1mMのソジウムピルベート、ペニシリン、ストレプトマイシンおよび5%ウシ胎仔血清(FCS)を含むDMEM(Hyclone、Logan, Utah)中で12-ウエルプレート中で37℃で3〜6週間の期間、5%のCO2気圧下で培養したRGEのようなアゴニスト/アンタゴニストペプチドも加えた。電子顕微鏡でインビトロでの脈管形成の成長を観察した。普通の顕微鏡の低倍率では脈管発生は見られず、脈管構造の存在は高倍率の電子顕微鏡(EM)でしか見られない。
【0105】
電子顕微鏡用に検体を4℃でパラホルムアルデヒド、1.5%グルタールアルデヒド、0.1Mカコジル酸ナトリウム緩衝液(pH 7.2)中の1mMカルシウム中に固定し、その後、4℃で1%0s04緩衝液中に固定し、50%エタノールの1%酢酸ウラニル中にブロックでて固定した後にエポン-アラルダイト樹脂(Electron Microscopy Sciences, Fort Washington PA)中に組み込む。薄いセクション(60ナノメートル)を作り、酢酸ウラニルとシトラートで染色した。全てのサンプルを電子顕微鏡CM-100を使用して調べた。脈管発生の制御を倍率(4k)の顕微鏡で行い、脈管構造は高倍率のアッセイでタイトな結合および必要に応じてRx線投影を変えて基礎膜の存在を確認した。、脈管内腔は「タイトな結合」タイプの細胞室質結合を介して互いに作用する血管内皮細胞によって区画される閉空間と定義される。単位mm2当の脈管構造の数を定量化し、導管の複雑度は関係細胞の核細胞相互作用(nucleocytoplasmic)の割合と、内腔発生に関与した細胞数の平均値と、隣接内腔数および分岐脈管構造の数の平均値とを測定して査定した。一致列試験で使用した統計解析はWilcoxon Matched-Pairs Signed-RanksTestタイプである。
【0106】
RGDペプチドで官能化したコラーゲンマトリックスでは細胞は3〜6週間で非常に多くのスプレッドになり、その形態外観を変えた。この形態上の変化は接着分子を介してマトリックスと相互作用する細胞によるものである。すなわち、細胞のこの外観の変化は最初の細胞の数に依存せず、基礎のコラーゲンマトリックス中やROEで官能化したマトリックス中にあったものでもない。さらに、可溶性のRGD単位を培地と組合せた場合、上記の変化は消える。RGDマトリックスでは血管内皮細胞が極性化(polarized)される。さらに、細胞とマトリックスとの間の一定面積の所に基礎メンブレンがある。細胞を官能化していないコラーゲンマトリックス手培養した場合、この種の基礎メンブレンは存在しない。従来のコラーゲンマトリックスの通常の顕微鏡で得られるインビトロ脈管構造(「毛細管状ネットワーク」)にはPMA (Ilan、1998)(参照文献36)または繊維芽細胞の存在(Black, 1998)(参照文献106)または繊維芽細胞分泌因子の濃縮媒体(Montesano、1993; Baatout、1997)(参照文献107、108)のような分化剤の存在が必要であるが、RGDマトリックスでは本物の脈管構造が自発的に発達し、電子顕微鏡で+/-1.3から6週間で単位mm2当たり平均8.5個の「脈管構造」が観測される(n=5、別々の実験)([図4a])。他のマトリックスタイプ([図4a])にもこれらの構造は存在しない。「脈管管腔(lumina)」の大部分は細胞質延長部に形成され、細胞核を含む細胞本体には形成されない。40以上のRGD+マトリックスでの脈管構造の研究から、脈管内腔の発生に関係する細胞数の平均値は5.5+−1.1であったす([4b])。10以上の相互接続血管内皮細胞に脈管管腔が形成される場合もあった。23.6%の導管は分岐していると考えられ([図4a]の斜線部分)、分岐の場合の脈管内腔数は3+/0.5であった。
【0107】
実施例4
官能化コラーゲンスキャフォールド中で薬剤を分泌可能な遺伝子で改質した移植細胞の可能性
以下の実施例では、マトリックスに移植した細胞を遺伝子的に改質して生物学的製剤、例えば脈管の形成、移動、生残、増殖、アポプトーシス、分化、劣化および細胞間マトリックス発生制御、免疫、炎症腫瘍反応制御、その他に関係する製剤を放出できるようにした。収縮性細胞、例えば筋芽細胞を血管新生に関与する遺伝子、例えばVEGF、アンギオテンシン等で遺伝子操作して移植後の組織の品質をより良くすることは可能である(D.E. Coppi and al. 2005)(参照文献109)。本実施例では、内皮タイプの細胞(MS1)を活性遺伝子Ras+を含むウイルスのトランスフェクショで改質した。Ras/Map Kinase経路は血管新生を制御する制御するための重要な賦活経路でることは報告されている(Ilan et al 1998)(参照文献36)。MS1 Ras+細胞はSEVN1 ras (SVR)(ATCC #CRL-2280)として公知である(Arbiser,1997)(参照文献110)。SVR細胞([図5])を移植し、上記の種々のマトリックスで6週間培養した。本実施例が示すように、細胞の生物学的活性度は遺伝子操作で修正でき、しかも、その挙動および分化度はマトリックスを接着分子で官能化することによって影響される。血管内皮細胞をRasで修飾することで血管由来ポテンシャルが増加する。すなわち、脈管構造および基礎メンブレンの存在が観測され、基礎的コラーゲン・マトリックス(T)中でも単位mm2当たり約7つの脈管構造が見られる([図5a])。このタイプの細胞でも、これらの細胞を接着分子(TR)で官能化されたマトリックス中に置いた場合、脈管形成がより進む([図5b])。接着分子の存在によって量的(mm2当たりの脈管構造の数(40対7)、RGD+対RGD−)(p有意)([図5a])および質的(分岐導管の%、(75対10)、RGD+対RGD−)(p有意)([図5a])の両方でより発達した脈管形成が得られ、脈管の複雑さでは、特に核と細胞質の相互作用が少なく、各脈管内腔に関係する細胞の数が多い(4.5対3)RGD+対RGD−)(ns)([図5b])。
【0108】
実施例5
コラーゲン支持体に接着分子を共有結合で結合する効果の評価
支持体への固定の重要性を観測された効果から研究するために、収縮性細胞または血管内皮細胞の存在下でのコラーゲンスキャフォールドの可溶性RGD単位または単なるRGD単位吸着性を試験した。1〜1000μg/mlの高濃度のRGDを培地と組合せるか、各
の細胞を移植する前に24時間以上マトリックス上に吸着させた。全てのケースで分化でのROD単位の有利な効果と、血管内皮細胞または心臓ミオサイトの生残が見られた。さらに、細胞を接着ペプチドで変性したコラーゲンスキャフォールドで培養した場合でも、媒体に可溶な形のRGD単位が存在するとこの効果は抑制される([図5a])。
【0109】
実施例6
生物学的薬剤の存在下での接着分子で官能化したマトリックスの使用
成育因子のような上記薬剤のいくつかをコラーゲン支持体に吸着された培地とインビトロで単に組合せるか、我々が提案する手段を使用して(または使用しないで)共有結合で結合した(EJ Suuronen wt al 2003)(参照文献54)。マトリックスは成育因子を保持可能なプロテオグリカン等で官能化できる。上記薬剤の例は成育因子、成育因子安定化剤(「オリゴマー状再生剤」(RGTAs))、ケモキン、収縮促進剤、脈管形成促進剤、炎症反応制御剤、劣化制御剤または重合促進剤である。この薬剤は支持体上に置かれるか、その末端または心室リモデリングの制御または異常心筋を処理する付随デバイスに投与される。また、支持体は所定面積にこれらの薬剤を送達、濃縮または維持するために用いることができる。また、薬剤は天然または改質後の支持体と組合せた細胞によって作ることもできる。一般に、成育因子は1fg/ml〜1mg/ml(1-10nM)の濃度で使用される(EJ Suuronen and al. (2003))(文献番号54)が、他の濃度を使用することもできる。
【0110】
本実施例で組合せる薬剤は脈管形成を促進するための通常のVEGFのような成育因子である。この成育因子は培地と組合されるが、単に数時間コラーゲンに吸着させてから細胞を挿入するか、そのNH2サイトを介して固定できる。
VEGF(VEOF 164(RocD、Minneapolis, MN)が4ng/mlの濃度で存在すると、接着分子による官能化がなくても、MS1細胞の分化が誘発され、基礎的コラーゲンマトリックス(T)で脈管構造が形成される([図6a])。しかし、この構造の絶対数およびその複雑度レベルは低い(単位mm2当り平均3つ)ままである:単位管腔当り単に2.5+/−0.5([図6b])、厚壁導管(実質的に細胞質の延長なし)、構造の10%のみが分岐し([図6a])、分岐では単に2つの隣接細胞(n12)だけ。VEGFで得られる導管は完全には形成されず、脈管の血管外遊出を発達させる傾向があることは知られている。これに対してRGD単位(TR)が存在すると脈管構造密度が増加8.7+-0.7/mm2([図6a])し、その複雑度も同様に増加する:脈管内腔当りの細胞数 4+/-1.1、25%分枝、3.5の隣接内腔、常に分岐([図6a]-[図6b])。
【0111】
実施例7
RGDペプチドのような接着分子で官能化したコラーゲンスキャフォールドはそれと組合せた細胞に対して反アポプトーシス(apoptotic)効果を有する
インテグリンレセプタは生育環境への細胞接着に貢献する他に、アポプトーシスによる細胞死を制限して、生残する遺伝子の数を増加させるという重要な役割を有している(Meredith and al. 1997)(文献番号18)。すなわち、心臓ミオサイトのような付着性細胞の多くは周囲マトリックスとの接触が無くなると、細胞死する(D. Kuppuswamy et al 2002) (文献番号17)。この細胞死の一部は上記の相互作用の阻害にあると思われ、それが組織中に細胞を単独で注入してもほとんど効果がなく、約95%の高死亡率を誘発する理由であり、注入時に3D-マトリックスを使用することで生育環境が再形成されることの理由であろう。しかし、3D-支持体適切な機械特性も有していなければならなず、3D-系内で相互作用するためには特異的なリガンドが必要である。
【0112】
ツァイス・タイプ・コンフォーカル顕微鏡とデータ組込みソフトウェア(MRC 1024、Biorad)とを使用してアポプトーシスをインサイチューで研究した。マトリックスの細胞膜をレッドステインでインサイチューでラベル化した。アポプトーシス状細胞は抗アネキシンVグリーン蛍光剤標識(FITC)を用いてラベル化した。アポプトーシスの数量化はアポプトーシス状細胞に対応するグリーン蛍光に対する全細胞に対応する赤い蛍光面とを比較して行なった。
【0113】
3週間以後にRGD単位で官能化したマトリックスのMS1アポプトーシス状細胞の百分比はROD単位なしの80%以上に対して100%であった。細胞分化で既に述べたように、可溶性の形をしたROD単位媒体の存在でこの効果はキャンセルされ、ROD単位で官能化したマトリックスとしないマトリックスの両方のタイプでアポプトーシスは80%へ戻る。従って、この単位を固定する必要がある。各種のコラーゲン3D支持体(Ilan and al. 1998, Satake et al. 1998, Goto an al 1993)(文献番号36、37、39)およびMatrigelタイプの支持体(Ranta and al 1998)(文献番号38)での血管内皮細胞の生残率が低いことは既に報告されている。このタイプの支持体に結合したRGD単位の存在が上記の細胞死が減り、注射後のこれら細胞の移植交換効率を改善する。
【0114】
実施例8
グルタールアルデヒドでの固定とヘパリンのようなプロテオグリカンの使用またはゲニピンの使用とを組合せた非細胞毒処理−細胞療法によっるコラーゲンスキャフォールドの制御
コラーゲンを固定するための最も効率的な方法はグルタールアルデヒドによる化学的架橋である。しかし、グルタールアルデヒドは重合し、ゆっくり解重合し、細胞に毒性のあるグルタールアルデヒドを放出する。
【0115】
グルタールアルデヒド、次いでキトサンで組織を固定後にヘパリンベースの処理で変性(コラーゲン-glut/GAGマトリックス)
本発明ではコラーゲンに対する炎症反応を2つの方法で減少できる。最初のアプローチでは組織をグルタールアルデヒドで固定し、遊離アルデヒド基をグリコサミノグリカンル(glycosaminonoglycan)(GAG)例えばヘパリン/ヘパランスルフェート、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸を使用して不可逆的に中和する。GAGはマトリックスの水和度を制御することは知られているが、多くの成育因子のリガンドとしても働く。
グルタールアルデヒドを用いた固定はUltrafoam(登録商標)コラーゲンスキャフォールドを0.625%のグルタールアルデヒドを含むNaCl(50mM)緩衝液中で37℃で1月間培養して行なう。洗浄後、コラーゲンスキャフォールドを0.2%キトサン溶液(Sigma Aldrich)中に入れた後、1%グリシン(Sigma Aldrich)と0.02%ゲンタミシン硫酸(Sigma Aldrich)中に20℃で2週間置く。塩酸(1M、pH 2.0)の存在下で4℃で3時間、亜硝酸ナトリウムをヘパリン硫酸とを反応させて部分的に劣化したヘパリン溶液を作った。この溶液をNソーダでpH 7.4にし、この溶液とコラーゲン支持体とを12時間接触させる。得られたコラーゲン調整物をNaCl緩衝液(50mM)で洗浄した後、20℃で前日製造したNaCl緩衝液(50mM)中の1%ナトリウムシアノボロハイドライド溶液(Sigma Aldrich)と6時間接触させる。その後、コラーゲン調整物を再び洗浄し、1%グリシンと0.02%ゲンタミシン硫酸とを含む溶液中で最終使用時まで保存する。
【0116】
ゲニピンでの固定(コラーゲン/ゲニピンマトリックス)
新鮮または細胞化した組織をゲニピン(genipin)を使用して固着することは既に提案されている(Hsing-Wen、et. al.2003は米国特許で細胞質生物物質をゲニピンで化学処理している)。我々はこの著者が提案した手順に従った。PBS中0.625%のゲニピン(Biopproducts CO.、台湾)を使用した(pH 7.4、37℃、3日間)。
【0117】
上記方法で処理したコラーゲンマトリックスのインビボアセスメント
各種タイプのマトリックスを麻酔したラットの脊骨筋に注入した。10日後の組織学解析では基礎コラーゲンマトリックスが炎症細胞で大きく浸潤され、コラーゲン格子が健著且つ未熟に劣化し、マトリックスが貧弱な血管線維に置換しているのが示された。コラーゲン/ゲニピンマトリックスおよびコラーゲン-glut/GAGマトリックスでは浸潤はマトリックス末梢に限られていた。面白いことに、マトリックス内部への導管の挿入は制限されるが、これらのマトリックスはマトリックス近傍での脈管形成を発達を強く促進する。成育因子の吸着と提示を促進することが知られているプロテオグリカンがマトリックス中に存在することで脈管形成の局所的な強い誘起の理由の一部が説明できる。1ヵ月後、初期の直径が最も大きい(8mm)であった全ての16/16コラーゲンマトリックスが消えた。反対に、全てのコラーゲン-glut/GAGマトリックス、n=16またはコラーゲン/ゲニピンマトリックス、n=16は寸法が不変(p有意)で、細胞浸潤は末梢に限られる。それに加えて、この浸潤中では炎症細胞は多くはない。
【0118】
実施例9
コラーゲン-グルタールアルデヒド/GAG支持体またはコラーゲン/ゲニピン支持体へ接着分子を固定して官能化
この組合せで炎症および組織への免疫応答を制御し、対象細胞のコロニー化を選択することができる。
【0119】
コラーゲン架橋剤の添加前後に接着分子を組合せた時の接着ペプチドによるマトリックスの変性の可能性を確認した。上記実施例に記載の手順を使用してRODのような接着ペプチドをUltrafoam(登録商標)コラーゲンマトリックスに固定した後、マトリックスを実施例8に記載の方法で固定した。PBSで濯いだ後、マトリックスを麻酔したラットの脊骨筋に注入した。同じ動物に最大8つのマトリックスが注入できる。
【0120】
10日後および1ヶ月の移植後、全てのglut/GAOマトリックスはわずかな再吸収性を示したが、グルタールアルデヒドで処理しないとRGD単位で官能化したものまたはしないもの全てのコラーゲンマトリックスが消えた。
10日後の組織学解析で基礎コラーゲン・マトリックスが炎症細胞で大きく浸潤し、コラーゲン格子が大きく且つ未熟に劣化し、貧弱に血管化した線維でマトリックスが置換されていた。glut/GAG処理でマトリックスの初期細胞炎症が制限され、マトリックスの細胞浸潤および劣化が遅れ、脈管形成は末梢に限られる。極めて面白いことに、RGD単位のような接着単位(glut/PGAコラーゲンマトリックス)の存在下では、導管および周囲組織の細胞はマトリックス内部に、極めて迅速に、深く入り込み、移植から10日後には、マトリックス外部の2/3は既にコロニー化され、血管化している。螢光標識ISL-B4(分子プローブ)を血管内に注射する脈管形成動力学解析法を用いてマトリックスでの脈管形成を数量化した。その結果、マトリックスは血管化しており、この脈管形成は第2週から開始し、3週間後には約6%のプラトーができたことが確認された。より長い時間での他の実験では、この脈管形成はゆっくり進むことを確認したが、Matrigel(登録商標)マトリックスのような他のタイプの支持体で起ることとは逆に、この脈管形成は数ヶ月後に減少する傾向がない。マトリックスの脈管形成レベルは脊骨筋のような筋を囲んで観測し、比較しなければならない点に留意する必要がある。この脈管形成は約3%+/-1%を占める。
炎症細胞からではないマトリックス内の細胞コロニー化がある。このアプローチは3D-支持体細胞のコロニー化を阻止し、血管内皮細胞のような重要細胞を選ばれた選択した接着分子によって選択するための最初の処理を提案するので非常に重要である。接着ペプチドで変性したコラーゲン-glut/GAGマトリックス内での強いネオ-脈管形成の存在はこのタイプのインプラントの非常に優れた生体親和性を示し、低い毒性を示し、細胞治療での使用に適している。
【0121】
実施例10
RGDペプチドのような接着分子で官能化した(またはしない)架橋したコラーゲンスキャフォールドの細胞治療での使用
このタイプの支持体の生残と分化に対する移植細胞の能力を分析した。分化度合いの異なるヒトおよびヒト以外の細胞(幹細胞、始原細胞、成熟細胞、遺伝子操作した(またはしない)細胞)を異なるタイプのRGDペプチドで官能化した(またはしない)支持体に注入した。この支持体の細胞の脈管形成への貢献度を筋組織(骨格筋タイプ)用移植モデルでアセスし、この支持体に対する脈管形成の定量化分析法を開発した。
【0122】
細胞:
(1)ハツカネズミの成熟した血管内皮細胞MS1
(2)遺伝子操作で変性したマウスの成熟血管内皮細胞SVR
(3)分化した組織から単離したハツカネズミ幹細胞
我々は各種組織でハツカネズミの発達中の血管内皮細胞原体を単離し、特徴付け方法を最近報告した(S. Cherqui、SM.Kurian O. Schussler et al 2006)(文献番号111)。これらの前駆細胞(原体)はコラゲナーゼで酵素処理して消化した新生児ハツカネズミの肝臓エキスからの接着能力の低い細胞分画からを単離した。細胞はインビトロ培養の8日目に集めた。
(1)「HUVEC」として知られる臍帯静脈壁から単離したヒトの成熟血管内皮細胞
(2)さい帯血から単離したヒト起源の血管内皮細胞原体
これらの細胞は上記(Crisa et al 1999)およびHildbrand et al (2004)に記載の方法で製造した(参照文献112、113)。
【0123】
インビボ脈管形成モデル
異なるタイプの血管内皮細胞をグルタールアルデヒド/GAGで処理し且つRODペプチドのような接着ペプチドで改質した(またはしていない)マトリックス中に置いた。免疫欠陥ハツカネズミをペントバルビタールで麻酔し、上記マトリックスを脊骨筋に6週間までの期間で注入して8つのマトリックスを各ハツカネズミに植え付けた。同じ動物で異なる組合せでテストした。種々の時間でマトリックスを取出し、マトリックス中の脈管形成の定量化を行なった。
【0124】
インビボ脈管形成の数量化
我々はインビボで脈管形成を定量化できる信頼のある再現性に優れた方法を開発した。導管をインビボで抗マウス血管内皮細胞蛍光ラベルル化剤MECA32(University of Iowa, USA)またはISL-B4(Vector Laboratories, Burlingame, CA)で標識化した。振動ブレート「Automatic Oscillating Tissue Slicer」(OTS-4000)(Electron Microscopy Sciences)を用いて厚い切片(200μm)を切断後、マトリックスの厚さ全体の所定組織容積の脈管形成をアセスするために透過光を使用し、通常の蛍光顕微鏡を使用して蛍光を調べ、蛍光強度をデジタル化した。蛍光強度に従って導管を識別できた。所定検査材料でイントラー−およびインター・オブザーババリアブリティーは10%以下であった。統計的な比較はANOVAタイプのテストまたはStudentテストを使用して行なった。
【0125】
細胞群の集合がなく、コラーゲンマトリックスの脈管形成は約8%でプアーであった([図7]TまたはTR)。MS1血管内皮細胞が存在するとコラーゲンマトリックスの脈管形成は約14%に改善する([図7])(T+MS1)。マトリックスをRGDペプチドで官能化した場合にはこの増加度が大きくなり、35%になる(p有意)([図7](TR+MS1))。MS1で形質変換した形(SVR)が存在すると両方のタイプのマトリックスで脈管形成は既に約40%と非常に大きい。髄からの造血性または間葉系細胞、臍静脈血液または末梢血液から単離した白血球、幹細胞、羊膜細胞、腹膜細胞、脂肪組織派生細胞等のこれら全ての細胞は特定状況下で脈管形成に寄付し、従って、他の細胞群と組合せることに重要性がある。Crisa L. et al.の実験ではHUVECタイプのヒト血管内皮細胞はコラーゲン・マトリックス中でわずかしか導管形成していない(Crisa et al 1999)(文献番号113)。この観測結果を確認するための我々の実験では、ヒト血管内皮細胞(HUVEC)の有無にかかわらず、RODペプチドで変性したマトリックス(TまたはTR)での脈管形成レベルは本質的に類似している(6.7%+/-2.5対7.9%+/-3 ns)([図8])。非常に面白いことに、コラーゲンマトリックス中の脈管形成は循環血液から単離した血管内皮細胞に対する原体(前駆物質CD34+)の存在のみで改善されるが(22.3%+/-5.5)、それはマトリックスがRGDペプチドで変性されている場合のみである([図8])。従って、これは明らかにヒト細胞でコラーゲンマトリックス中に接着単位を使用する効果を示している。
【0126】
三次元環境での脈管形成を増加させるための異なるアプローチも開発されている。胎児組織をベースにした調整物は既にこれらの細胞を含み、RGD単位の存在はこれらの細胞の生残率と分化を促進する。我々が最近、分化した胎仔組織に存在する幹細胞がローカルな脈管形成を促進するためにそれ自体をホスト脈管のアーキテクチャ中に組み込むことができるということを報告した(S. Cherqui et al 2006)(文献番号111)。これらの細胞は「フィーダ細胞」、基本的に繊維芽細胞(F)が分泌する因子にその生残を依存している。このフィーダ細胞「F」の血管形成ポテンシャルは第3週目でも血管内皮細胞「P」原体のそれと比較して低いままであり、得られた脈管形成度はマトリックスまたは周囲脊骨筋で細胞なしで得られたものと同じ程度である([図9])。しかし、[図10]に示すように、細胞群の存在で初期脈管形成は7日で6%加速される。一方、細胞会合がないときにはそれは知覚できない。その後、RODペプチドで変性したマトリックスで脈管形成の程度が増加するが、それは血管内皮細胞原体がある場合だけで、定常状態の約14%に達する。一方、RGDが存在しない場合またはフィーダ細胞が存在する場合には、脈管形成は低いまま安定する([図10])。
【0127】
用途
本発明のアプローチ方法は二重の効果を有している。第1の効果はプロ脈管形成(proangiogenic)特性を有する細胞を用いた初期脈管形成を促進、加速することであり、第2の効果は組織自体を分化可能な血管内皮細胞の細胞群へ集合して最適に変性された3D環境の導管を形成することである。これは全て初期ポスト移植虚血現象を制限し、虚血または壊死面積での脈管形成を改善するパラメータである。
【0128】
これらは心筋組織と同じ筋組織であるのでマトリックスは脊骨筋に移植した。また、心筋と接触移植する前に細胞化した組織を血管形成がよくされた異所サイトに移植することもできる。被移植患者はそれ自身の組織を発達させるバイオリアクタの役目をする。そしたサイトの例は腹膜キャビティ、特に網、筋、例えば最幅広背筋組織、胸膜腔、皮下組織、その他である。これらのサイト中に異なるスキャフォールドを互い積み重ねて良く血管形成がされた厚い組織を得ることができる(文献番号114)。これらの異なるサイトに種々の刺激を加える(化学物質、生物学的製剤、物理的刺激、その他)。これらの刺激の中で電気刺激は収縮性組織の質または機械的応力を改善するのに有利な能力を有する。各種の刺激は患者の心拍数と同期させてもさせなくてもよい。「剪断応力」を加えるためにはスキャフォールドを容積が可変な支持体、例えば、心室キャビティまたはバルーンやブイのような膨張可能なシステムに固定する。この支持体はマトリックスのこの支持体ふの接着を制限するために例えばシリコーンで作る。組織への局所的な接着を制限し、反復操作を容易にするために、スキャフォールドの一部をデバイスで覆うこともできる。数週間後、管脈形成されたスキャフォールドを心筋機能不全治療での遊離移植または有茎移植として心臓に適用する心膜壁へ移して心筋の一部または全部と交換する(文献番号30)。場合によっては、腹膜弁または骨格筋皮弁を用いて収縮性パッチを覆うか、このパッチを心膜に移すこともできる。収縮性パッチを他の心筋再生法、例えば細胞治療と組合せて使用することもできる。本発明は従来フィブリンを使用していた種々の医学および外科用途で「変性フィブリン」を使用することを示唆している。その用途の一つはフィブリンまたはフィブリノーゲン含有支持体を使用する組織工学、細胞治療または医学または外科用デバイスの開発分野である。
【0129】
注入用支持体、例えばコラーゲンベースの支持体(コラーゲンのミクロ−またはナノ−粒子と他の成分、例えば重合または細胞群の合体を促進し、コラーゲンの重合のための酵素活性のような特定の活性や因子を分泌する成分との組合せ)、接着分子と組合せた(または組合せない)注入用フィブリン(接着単位で変性されたフィブリノーゲンまたはフィブリンを有するフィブリン−またはコラーゲン−ベースのゲル)を細胞と組合せて(または組合せずに)用いて収縮性組織への心筋の定着を促進することができ、また、例えば予備血管形成によって収縮性パッチの移植を行なうサイトを製造することができ、また、この製造に寄与することができる。細胞治療は収縮性パッチの単純な使用で得られる結果を改善することができる。注入用支持体は組織中、支持体中、心臓治療および脈管用途で使用するデバイス中、導管中またはこれの組合せ中に注入できる。この支持体と細胞を予め、または同時または二次的に組合せることができる。異なるタイプの細胞の全てが同時に支持体中に存在する必要は必ずしもない。注入用支持体はパッチと独立して使用できる。
【0130】
他の実施例では、スキャフォールドを心室の変形または拡張を防止するためのデバイス、例えば心筋機能不全の治療用の例えば網やデバイスと組合せることができる。これらのデバイスが心臓の一部または全部を取り囲んでいてもよい。このデバイスが基本的に収縮性マトリックスから成っていてもよい。外部にスキャフォールドを適用し、それと心筋への細胞の注入とを組合せることもできる。この細胞をROD単位のような接着分子で変性した3Dスキャフォールド中に注入してもよい。
【0131】
この支持体の再血管形成を助けるために、幹細胞の加入を促進するSDFI、SCF、TOF-alpha、FGF等のケモキンを使用することもできる。患者の幹細胞を移動可能にする試薬を用いてインプラントの再血管形成を助けることもできる。
【0132】
我々は細胞の梗塞面積中に造血性骨髄細胞を同じ注入法で単純な心筋内(intra-myocardial)注入して複数の機関で国際的なヒトでの実験で比較をしている。この実験では髄細胞で細胞化したコラーゲンマトリックス用途と組合せており、このマトリックスはこの時点では接着ペプチドで変性していない(Etude MAGNUM)。我々は最近、細胞の単純な注入に比べて、心筋に細胞化されたコラーゲンマトリックスを使用することの重要性を示した(JC Chachques, JG Trainini、J. Mouras, O. Schussler, Myocardial assistance by grafting a new bioartificial upgraded myocardium (MA GNUM trial):Preliminary Results AA TS(2006);JC Chachques, JC, Traini, O. Schussler, Assistance by Grafting a new bioartificial upgraded myocardium (MAGNUM trial); Clinical feasibility AHA (2006))。我々の提案に従って修正したコラーゲンマトリックスでの展開によって近い将来、著しくより良い改善結果が得られるであろう。
【0133】
本発明の主たる目的は、接着分子で修飾したコラーゲンスキャフォールド、主たる用途では収縮性心臓組織の調整物を有するコラーゲンスキャフォールドを使用して医学および胸部および心臓血管の外科の分野での細胞治療法を改善することにある。心臓血管および胸部の用途に加えて、より一般的には、上記支持体を自己発生的に収縮性があるか、電気刺激で収縮性を示す組織の製造で使用できる。この組織は平滑筋組織または骨格組織、例えば括約筋、膀胱筋、その他を作るためのに重要である。
【0134】
主たる用途しては置換組織の製造、再構成組織の製造、パッチの製造、組織再生、治癒加速、裂開保全、デスニオン(desunion)、空気および/または液体強化、特に心筋組織および/または弁組織(弁、血管株装置および放出室)の製造、気管、気管支および肺組織、維管束組織、体壁、嚢、その他の再構成組織の製造等の組織工学技術が挙げられる。さらに、組織中、血管または気管支の内腔中、他の支持体中または胸部または臓血管外科で使用される医学または外科デバイス中に上記支持体を注入するこのタイプの細胞治療用支持体としての使用も含まれる。本発明の支持体は胎芽、胎仔または成人オリジンの心房心臓ミオサイト(空洞細胞を含む中心細胞)のような固有のリズミカルな活動をする細胞または生物分解可能なプロ脈管形成性マトリックス中へ移植されたリズミカルな活動をする、または、心臓に移植される変形細胞と組合せた生物学的「ペースメーカー」の製造で使用することもできる。接着ペプチドと組合せることで細胞を同じ場所に保持でき、生残を促進し、細胞間の相互作用の同調性を良くし、周囲組織の組み込みをより良くする。
【0135】
分化中に収縮性の潜在能力を開発することが可能な細胞群を使用することによって本発明は心臓組織工学技術に大きな貢献をすることができる。マトリックススキャフォールド内に細胞を種付けすることもできる。細胞分化を促進するために選択した一種または複数の薬剤に細胞を曝すこともできる。これは移植階段前または後またはその両方でマトリックスに実施することができる。内皮株に属する細胞等の他のタイプの細胞と組合せることもできる。収縮性細胞の場合のように、支持体はその生残と分化を可能にする。本発明は腫瘍から抽出された栄養拡散が減り、薄い組織となるMatrigel(登録商標)(Becton-Dickinson)のようなゲルなしに心臓を構築する手段を提供する。さらに、収縮性細胞の末端分化に必ずしも電気刺激、バイオリアクタの使用は必要なく、強い免疫原異種漿液を高投与量で使用する必要もない。本発明の細胞培養はフィブリンまたはフィブリノーゲンまたはコラーゲンまたはこれらの任意組合せ(これら成分の少なくとも一つは接着分子の固定で改質する)を含む2D支持体として得ることもできる。支持体への細胞の接着は制御できる。フィブリンベースの支持体上での培養は開発中である(文献番号115)。より厚い組織を得るために複数を積み重ねることもできる(文献番号114)。脈管形成を促進するためにの内皮細胞を組合せることもできる。心臓への適用を容易にするためにコラーゲンメンブレンのようなシステムを使用して本発明の支持体を加えることもできる。
【0136】
構築はインビトロで数週間で形成でき、収縮性挿入物として心筋中または、心筋組織の全部または一部を交換するために例えば心筋内部へ直接注入できる。あるいは、構築は細胞の分化およびその血管新生を促進するためにインビボで異所サイトへ移植することもできる。この位置は例えば腹膜および胸膜腔、網、電気刺激される骨格筋、胸膜腔、心膜、壁等の良く脈管化された異所サイトにすることができる。好ましくは非粘着性で非吸収性の構造、例えばシリコーン人工器官または他の任意の合成ポリマーでインサイチューに組織を取り囲むことで心筋内部幾何形状を与えることもできる。この構造は可変幾何形状でも、心室性キャビティの一部の形状でもよい。デバイスは膨張可能でもよい。このデバイスの体積変動で開発中の心筋組織上の機械応力を加える手段を与えてもよい。電気刺激のような他の刺激を加えてもよい。複数の組織層を積み重ねて、最初の干渉中または一連の干渉中により厚い組織を作り、その上に自由移植または有茎移植として心臓上へ脈管形成された構築物を加えらることもでき、また、心筋の厚さの全部または一部を交換することもできる。細胞化されたスキャフォールドを例えばコラーゲンまたはフィブリンゲルを使用して心臓に固定することもできる。このアプローチは接着ペプチドで変性した(または変性していない)3D-スキャフォールドと組合せて細胞治療で使用できる。心室パッチを心臓拡張も避け、改造を促進し、心筋収縮性を改善し、心筋条件を再生または処理するための心臓用デバイスと組合せたり、その一部にすることができる。本発明の支持体を心臓用デバイスと組合せることで生物学的な心臓補助具が提供される。また、心臓を取り囲むまたは細胞化されたネットにすることもできる。収縮性パッチを大動脈に適用して、心拍数と同期した(またはしない)大動脈の人工器官として使用する生物学的心臓補助具の代替品も提供される。
【0137】
本発明のコラーゲンマトリックスは細胞治療でも使用できる。細胞を接着分子で官能化し架橋した支持体とインビトロまたはインビボで組合せることができる。他の状況下では細胞を注入できる。次に、種々の形の支持体を使用し、ゲル、例えばコラーゲンのナノパーティクルから成るヒドロゲル、、ミクロスフィアと有機または無機のナノパーティクルと組合せたコラーゲン、有機または無機のナノパーティクルと組合せたコラーゲン、その他のゲルとして使用できる。本発明はフィブリンを単独で含むか、上記のようにコラーゲンと組合せて含む、例えばフィブリノーゲン、フィブリンおよび/またはコラーゲンを接着分子で固定して改質することでスキャフォールドの二官能性を改善する方法を提供する。心臓に細胞を注入するためにフィブリン膠の重合中にROD単位と組合せることはすでに提案されているが、この場合の接着分子は官能性が改善した非固定の接着分子である(米国特許第2005/2,761,631号明細書)。この接着分子はフィブリノーゲンまたはコラーゲンにインビトロで組合される。注入時に組合せる酵素、一般にはカルシウム存在下のトロンビンがフィブリノーゲンのフィブリンへの変換を誘発し、三次元支持体を形成する。このフィブリン/フィブリノーゲン/コラーゲンスキャフォールドを他の成分と組合せたものは組織工学技術、細胞治療または心血管分野だけでない種々の医学および/または外科用デバイスの製造で使用できる。
【0138】
本発明で改良された胸部および心臓血管分野の外科および医学デバイスには下記が含まれる:自己由来または非自己細胞で細胞化したコラーゲン-またはフィブリン/フィブリノーゲン-含有支持体から製造し、変性した成長可能弁(ステント付きまたはステントなし)、(米国特許第2,006/0,253,192号明細書、米国特許第2,006/0,246,584号明細書で既に提案されている合成のマトリックスとは異なる支持体、改造可能性を有する吸収可能な弁または弁環、コラーゲンを含むまたはコラーゲン含有支持体または収縮および/または再生を改善するための外部生物学的製剤補助と組合せた心筋含有網および/または心筋内容物および/または心筋処置時および/または異常心筋の収縮および/または再生および/またはリモデリングの改良および/または細胞化支持体、生物学的製剤膠、血液親和性メンブレン、血栓の少ない心臓弁生物補補てつ、管弁、人工器官製造時、内部人口器官および脈管ステント、変性コラーゲンスキャフォールドを有する脈管代替品をトロンボゲン形成が少ない移植品(冠状グラフトを含む脈管グラフト)の維持、自発的収縮または電気刺激で収縮する脈管移植片の製造、心臓補助、冠状動脈および内部腔ステント(医薬品溶出ステント、吸収性ステント、細胞化ステント)にするための種移植片(米国特許第2,005/0,123,582号明細書で提案されている金属成分を環状RODと会合させる医薬品溶出ステント)、気管支内コイルまたはバイパス内のコラーゲン量の変更、対象細胞との会合可能性、気管気、管支の人工器官、気管内または気管支内ステント、生物学的活性剤の放出支持体。
【0139】
一般にコラーゲン繊維から再構成されたコラーゲンスキャフォールドの生体親和性はゲニピンで架橋した後にゲニピンで固定する従来から既に使用されている方法でプロテオグリカンで部分的に覆うことで大きく改善される。従来法でプロテオグリカンでコラーゲンスキャフォールド(組織、再構成支持体またはコラーゲン含有デバイス)を固定した時には、例えば可溶性カルボジイミドのよな蛋白カップリング剤でプロテオグリカン固定し、必要に応じてさらに水素化ホウ素ナトリウムまたはシアノボロハイドライドナトリウムで還元する。これらの支持体のコラーゲン成分は接着分子で官能化できる。
【0140】
さらに、本発明に従って修正したコラーゲンスキャフォールドの重要な用途は、筋の細胞治療、自発的的または刺激で作用する組織(平滑筋、骨格筋、心臓)の工学技術、生物学的活性剤を放出するため必要に応じて遺伝子操作で改質した収縮性潜在的細胞を使用した一般的細胞治療である。
【0141】
また、コラーゲンを含む(または含まない)変性された(または変性されない)フィブリン/フィブリノーゲン支持体は細胞治療、組織工学技術、一般に医学および/または外科デバイスの製造で使用することができる。
【0142】
(参照文献)









【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞治療、組織工学および胸部及び心臓血管の医学および外科分野の医学/外科デバイスで使用さる三次元スキャフォールドにおいて、
(a) 上記スキャフォールドの内容物(continu)の全部または一部がコラーゲンで形成され、
(b) 上記スキャフォールドのコラーゲンの内容物が接着分子の共有結合によって部分的または完全に変性(modifie)されている、
ことを特徴とする三次元スキャフォールド。
【請求項2】
一種または複数の生物学的活性分子または薬剤を含むか、それと組合された請求項1に記載の三次元スキャフォールド。
【請求項3】
細胞コンティンジェント(contingent cellulaire)を含む請求項1または2に記載のスキャフォールド。
【請求項4】
スキャフォールド特性を機械的応力、電磁場または電気刺激のような物理的処理で変性する請求項1〜3のいずれか一項に記載のスキャフォールド。
【請求項5】
共有結合で結合される接着分子が化学処理、酵素処理、機械処理、熱処理またはこれらの組合せによって切断できる請求項1〜4のいずれか一項に記載のスキャフォールド。
【請求項6】
接着分子/または生物学的活性剤を結合するスペーサ基の親水性、柔軟性および長さが、利用可能な空間を最適化し、提示(presentation)および対象細胞との相互作用を容易にするように選択される請求項1〜5のいずれか一項に記載のスキャフォールド。
【請求項7】
生物学的活性な分子の第一アミン基を三次元スキャフォールド中に存在する第一アミン基に共有結合で一方向に結合するスルホ-LCSPDPのようなヘテロ二官能性カップリング反応剤を用いて接着分子の共有結合が実施された請求項1〜6のいずれか一項に記載のスキャフォールド。
【請求項8】
グルタールアルデヒドによる架橋、プロテオグリカンベースの処理およびシッフ塩基の還元反応処理のような種々の架橋方法で架橋できる請求項1〜7のいずれか一項に記載のスキャフォールド。
【請求項9】
プロテオグリカンと組合せて、または組合せずに、架橋がジェニピン(genipin)作用か、それと他の架橋方法とを組合せて得られる請求項1〜8のいずれか一項に記載のコラーゲン スキャフォールド。
【請求項10】
スルホ-LCSPDPのようなヘテロ二官能性のカップリング反応剤を用いて、接着分子を含む生物学的活性分子の第一アミン基を三次元スキャフォールド中またはそれと組合せた生物学的活性剤中に存在する第一アミンに共有結合で一方向に結合させるスキャフォールドの製造方法。
【請求項11】
(a)スキャフォールドの内容物(continu)の全部または一部をコラーゲンで形成し、
(b)スキャフォールドの内容物を部分的または完全に接着分子の共有結合によっ変性し、
(c)スキャフォールドをグルタールアルデヒドとシッフ塩基の還元剤とで架橋し、
(d)スキャフォールドをプロテオグリカンで処理するか、処理しない、
ことを特徴とするスキャフォールドの製造方法。
【請求項12】
(a)スキャフォールドの内容物(continu)の全部または一部をコラーゲンで形成し、
(b)スキャフォールドの内容物を部分的または完全に接着分子の共有結合によって変性し、
(c)得られたスキャフォールドをゲニピン(genipin)で架橋し、
(d)スキャフォールドをプロテオグリカンで処理するか、処理しない、
ことを特徴とするスキャフォールドの製造方法。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の三次元スキャフォールドの、胸部および心臓血管外科および/または医学分野の各種デバイス、例えばバイオペースメーカー、局所的に脈管形成を改善し、生物学的バイパスを作るための細胞化冠状ステント、順応性および収縮性のバイオ弁、小寸法の冠状のグラフト、生育可能な弁、組織パッチ、弁部品、外科用固定具、液体または空気を密封装置、梗塞後支柱ネクローシス処理用小突起筋、人工血管、生物学的内部補助具を作るための電気刺激可能な収縮性人工血管、a) リモデリングを制御するか心室の拡張を制限する装置およびb) 心筋収縮を改善する装置と組合せた心筋条件処理装置、活性薬剤放出具、バイオ糊、三次元スキャフォールドと細胞とを組合せた異常肺の実質を再コロニー化し、再構成するための肺気腫処理装置、コラーゲン気管支のコイルおよびバイパスの透過性を改善するための装置、活性剤、特に腫瘍病理学的活性剤を気管支に放出し、他の呼吸器機能不全を治療する装置、胸部および心臓血管の分野での細胞治療および組織工学技術用スキャフォールドでの使用。
【請求項14】
(a)接着分子の共有結合によって部分的または完全に変性され、(b)一種または複数の生物学的活性分子を含むか、それと組合され、(c)筋の細胞治療で細胞と組合せが可能なことを特徴とするコラーゲンスキャフォールドの、平滑筋または骨格または収縮性組織の製造での使用。
【請求項15】
請求項10または11または12に記載の方法で製造されたスキャフォールドの、細胞治療および組織工学での使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2010−529177(P2010−529177A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−511678(P2010−511678)
【出願日】平成20年6月10日(2008.6.10)
【国際出願番号】PCT/FR2008/000785
【国際公開番号】WO2009/007531
【国際公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(509341226)
【出願人】(509341237)
【Fターム(参考)】