説明

接着剤の可逆的な共有結合性架橋のための方法

【課題】架橋が共有結合性で、かつ(化学的または物理的な刺激により開始されて)可逆的な、接着剤の熱架橋方法を提供する。
【解決手段】有機および/または無機でOH基を含む酸性単位により官能化された少なくとも1種のポリマーと、少なくとも1種の環状ホスホン酸無水物とを含む架橋可能な接着剤調合物。環状ホスホン酸無水物が、環状2,4,6−置換1,3,5,2,4,6−トリオキサトリホスフィナン−2,4,6−トリオキシドであることを特徴とする接着剤調合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤の熱架橋方法ならびにこの接着剤によって製造される製品に関する。
【背景技術】
【0002】
接着剤、特にアクリレート接着剤の場合、秀でた接着特性を生じさせるには架橋が必要なことが以前から知られている。ゴムの場合も、架橋により接着特性が改善される。
【0003】
高い温度、溶剤、およびその他の影響に対する接着剤の十分な安定性を保証するには、多くの場合、共有結合性架橋を形成させる方法、例えば化学的/熱的な架橋方法ならびにUV放射もしくは電子放射による方法が好ましい。
【0004】
前述の方法により製造された接着剤は、通常は不可逆的に架橋されており、これは、そのように製造された接着テープの使用を、例えば(内在する特性として、および外部からの刺激により開始させて)接着剤を再剥離可能というような特殊な用途に対して制限している。まさに前述の観点の重要性が、電子製品および電気製品でのリサイクル・ループの増加に関連して明らかに増大している。原料不足が原因で原料価格が大幅に上昇し、他方ではこれにより電子部品および電気部品の分解および再利用が経済的になっている。これに関し、エレクトロニクス産業における小型化傾向が原因で貼り付けられることがますます多くなっている部品は、部品を損傷させることなく、または接着材料の残留物を多く残しすぎることなく、分解され得る。
【0005】
このような用途に対しては最初に、通常は物理的な相互作用に基づくか、または配位性架橋剤の使用により生成され得る、可逆的ネットワークが考えられる。WO2004081132A1(特許文献1)は、例えば油溶性金属塩による可逆的架橋を記載しているが、挙げられた例により、この架橋メカニズムが熱安定性の接着剤の製造には適していないことがよく分かる。物理的メカニズムに基づく再剥離可能な接着テープのさらなる例は、US20080292848A1(特許文献2)に挙げられている。ここでは、いわゆる形状記憶材料、つまり機械的変形の後で元の形状になる材料が使用されているが、それにより製品構造の複雑さが増している。なぜならそのような効果を利用するために、製品が複数の層を有さなければならないからである。
【0006】
ディールス・アルダー反応のような反応は、熱可逆的な共有結合性ネットワークの生成に非常によく適している。US6,933,361B2(特許文献3)は、多官能性のフランおよびマレイミドによる、2成分系として構造部の貼り付けに使用され得るポリマーの製造を記載している。感圧接着性ポリマーを製造するためのモノマーの選択はかなり限定されており、実現可能性は、高い反応性または副反応が原因で、従来の重合方法では実現困難である(S. D. Bergman、F. Wudl、J. Mater. Chem. 2008、18、41〜62(非特許文献1))。
【0007】
放射線化学的な架橋メカニズムは、一般的に可逆的ネットワークの製造には適していない。なぜならUV線架橋の場合も電子線架橋の場合も、再び分断させられないC−C結合が結ばれるからである。
【0008】
EP0658610A1(特許文献4)は、残留物なく取り外し可能な感圧接着テープを記載している。この出願明細書では、感圧接着剤の剥離性は、接着剤の土台への密着性が一般的に弱いことを伴った付着性の低下により達成されている。したがってこのような接着テープの使用は、低い接着力しか必要とされない用途に限定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】WO2004081132A1
【特許文献2】US20080292848A1
【特許文献3】US6,933,361B2
【特許文献4】EP0658610A1
【特許文献5】WO96/24620A1
【特許文献6】WO98/44008A1
【特許文献7】DE19949352A1
【特許文献8】US5,945,491A
【特許文献9】US5,854,364A
【特許文献10】US5,789,487A
【特許文献11】WO98/01478A1
【特許文献12】WO99/31144A1
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】S. D. Bergman、F. Wudl、J. Mater. Chem. 2008、18、41〜62
【非特許文献2】Donatas Satasの「Handbook of Pressure Sensitive Adhesive Technology」(van Nostrand、New York 1989)
【非特許文献3】T.G. Fox、Bull. Am. Phys. Soc. 1956、1、123
【非特許文献4】Houben-Weyl、Methoden der Organischen Chemie、Vol. E 19a、60〜147頁
【非特許文献5】Macromolecules 2000、33、243〜245
【非特許文献6】Polymer 8/1967、381頁以降
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、架橋が共有結合性で、かつ(化学的または物理的な刺激により開始されて)可逆的な、接着剤の熱架橋方法を提供することである。架橋方法は必要に応じて、共有結合性で不可逆的なネットワークが生じるように形成することもできる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以下で、「可逆的」という概念は、共有結合性ネットワークを、共有結合を分断することにより再び壊すこともできるという意味であり、ただし共有結合の分断後に再びネットワークを形成できなくてもよく、つまり「可逆的」という概念は、多くの場合「1度だけ可逆的」と同意である。
【0013】
意外にも、有機および/または無機で、OH基を有し、ポリマーに結合した酸性単位により、ポリマー成分の少なくとも一部が官能化されている、特に熱により架橋可能な接着剤調合物において環状ホスホン酸無水物を使用することが、優れた架橋型接着剤をもたらすことが分かった。その際、環状ホスホン酸無水物の使用により架橋反応が活性化される。このやり方で、秀でて可逆的に架橋された接着剤を製造することができる。環状ホスホン酸無水物は架橋性成分として作用するのではなく、酸性基間の架橋を活性化し、これが、接着剤の可逆的な架橋をもたらす。この架橋方法で使用される活性剤は、完成した製品の接着特性に不利な影響を及ぼさないか、またはほとんど及ぼさないことが分かった。
【0014】
有機および/または無機でOH基を含む酸性単位としては、例えばカルボン酸基、マレイン酸基、スルホン酸基、および/またはホスホン酸基が適しており、本発明によれば、特に好ましくはカルボン酸基が選択される。
【0015】
本明細書中で架橋とは、ポリマーの高分子間で3次元ネットワークが形成される反応のことである。熱架橋とは、熱エネルギーにより開始される架橋のことである。必要な活性化の種類によっては、室温で存在する熱エネルギーで既に熱架橋のために十分であり得るが、一般的には、架橋を開始させるための加熱は積極的な加熱によって行われ、または熱エネルギーが別のやり方で、例えば機械的な作用(例えば超音波)により、もしくは反応系内で発熱性の反応が進行することにより供給される。例えば紫外線、電子線、または放射性放射線のような化学線の(エネルギーの豊富な)放射による作用は必要ない。しかしながら化学線放射により開始される架橋反応は、熱架橋の効率を上げるために利用され得る。
【0016】
可逆的架橋では、形成されたネットワークを適切な措置により再び(少なくとも部分的に)ほどくことができ、これにより高分子は再び架橋されていない形で存在する。不可逆的架橋では、ネットワークを破壊なく再びほどくことはできない。
【0017】
本発明によれば、接着剤調合物とは、少なくとも架橋可能な(未架橋のおよび/または部分架橋された、さらに架橋可能な)ポリマーと、場合によってはさらなるポリマーと、場合によっては添加物質とを含む混合物および組成物のことであり、この調合物の架橋後には、接着剤として適した架橋されたポリマー系が存在する。
【0018】
接着剤は感圧接着剤であることが非常に有利である。本明細書で感圧接着剤とは、一般的な用語の場合のように、通常は、特に室温で永続的に接着性である、ならびに接着可能である物質を意味している(本明細書中では「感圧接着性」または「自己接着性」とも言う)。感圧接着剤に特徴的なのは、圧力により土台に施されてもよく、そこで付着し続けることである。感圧接着材料、温度および湿度、ならびに土台の正確な種類に応じて、短時間の軽い接触を超えない短期的で最小限の圧力作用が付着効果の達成に十分であることができ、別の場合には、高圧の長期的な作用時間も必要となり得る。
【0019】
感圧接着材料は、特別で特徴的な粘弾特性を有しており、この特性により、永続的に接着性に、および接着可能になる。感圧接着材料に特徴的なのは、機械的に変形されると、粘性の流動プロセスも、弾性復元力の発生も引き起こされることである。両方のプロセスのその時々の割合は、考察すべき感圧接着材料の正確な組成、構造、および架橋度、ならびに変形の速度および期間、ならびに温度に応じて決まる相互比率になっている。
【0020】
接着剤調合物には、ポリマーに結合している酸性官能基に加えて、可逆的架橋の効率を上げるためにさらに1種または複数の架橋剤が添加され得る。このような架橋剤としては、少なくとも2つの酸性官能基、特にカルボン酸基、マレイン酸基、スルホン酸基、および/またはホスホン酸基により官能化された化合物が適している。少なくとも二官能性の架橋剤は、モノマー、オリゴマー、またはポリマーの種類であってよく、これに関し、追加的な架橋剤としては、特に比較的短鎖の、つまりモノマーまたはオリゴマーの種類が好ましい。
【0021】
さらに、環状ホスホン酸無水物は不可逆的架橋のためのカップリング剤としても同様に適していることが分かった。
【0022】
これに関し、有利な手順では、上述のように酸官能化された接着剤調合物が、追加的にさらに、それぞれの接着剤調合物中に存在する酸性基と共有結合性の架橋反応をするのに適した少なくとも1種の官能基を含んでいる。これに適した官能基には、例えば第一級および第二級のアミン、第一級、第二級、および第三級のアルコール、フェノール、1,3−ジケトン、およびヘテロ芳香族化合物、例えばピラゾールが含まれる。この追加的な官能基は、カルボン酸含有の、マレイン酸含有の、スルホン酸含有の、および/またはホスホン酸含有のポリマーに、および/または接着剤組成物中に含まれている別のポリマーに結合され得る。
【0023】
さらに、本発明による接着剤調合物に、カップリング剤として機能する環状ホスホン酸無水物に加えて、不可逆的な架橋反応をもたらす架橋剤を混合させることができる。この架橋剤は、ポリマーの酸性基と反応し得る官能基を好ましくは少なくとも2つ有しており、有利には上述の種類(つまり特に第一級および第二級のアミン、第一級、第二級、および第三級のアルコール、フェノール、1,3−ジケトン、およびヘテロ芳香族化合物、例えばピラゾール)の官能基を有している。
【0024】
不可逆的架橋のためのこれに代わる手順では、接着剤調合物のポリマーは、酸性基によって官能化されるのではなく、全体的または部分的に、酸性基と反応し得る上述の官能基(つまり特に第一級および第二級のアミン、第一級、第二級、および第三級のアルコール、フェノール、1,3−ジケトン、およびヘテロ芳香族化合物、例えばピラゾール)によって官能化される。この接着剤調合物には、その後さらに、上で可逆的架橋の効率上昇に関して記載された架橋剤、つまり少なくとも2つの酸性官能基、特にカルボン酸基、マレイン酸基、スルホン酸基、および/またはホスホン酸基により官能化された、モノマー性の、オリゴマー性の、および/またはポリマー性の化合物が添加される。活性剤としては、ここでもまた少なくとも1種の環状ホスホン酸無水物が用いられる。この場合、接着剤調合物のポリマーの官能基と、少なくとも二官能性の架橋剤の酸性基との反応により、不可逆的架橋がもたらされる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
発明の詳細な説明
本発明による好ましい一実施形態では、環状ホスホン酸無水物は、環状アルキルホスホン酸無水物である。
【0026】
本発明によるさらに好ましい一実施形態では、環状アルキルホスホン酸無水物は、式(I)の2,4,6−置換1,3,5,2,4,6−トリオキサトリホスフィナン−2,4,6−トリオキシドである。
【0027】
【化1】

式中、Rはそれぞれ独立に、アリル、アリール、または開鎖もしくは分枝のC1〜C12アルキル残基、特にC1〜C8アルキル残基を表している。
【0028】
特に好ましいのは、式(I)中のRが、メチル残基、エチル残基、n−プロピル残基(2,4,6−トリプロピル−1,3,5,2,4,6−トリオキサトリホスホリナン−2,4,6−トリオキシド(CAS番号68957−94−8、Archimicaの商品名Coupling Agent(登録商標)T3P))、イソプロピル残基、n−ブチル残基、2−ブチル残基、イソブチル残基、ペンチル残基、ヘキシル残基、特にエチル残基、プロピル残基、および/またはブチル残基であるホスホン酸無水物である。
【0029】
環状ホスホン酸無水物は、融体として、または溶剤中に溶けた液状混合物として、反応媒体に添加され得る。これに関し適切な溶剤は、ホスホン酸無水物との副反応が起こらない溶剤であり、これはすべての非プロトン性有機溶剤、例えばリグロイン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、メチルアセテート、エチルアセテート、プロピルアセテート、ブチルアセテート、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジエチルアセトアミド、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、THF、ジオキサン、アセトニトリル、アセトン、ブタノン、またはそれらから成る混合物であり、特に好ましくはジクロロメタン、クロロホルム、エチルアセテート、プロピルアセテート、ブチルアセテート、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジエチルアセトアミド、ジイソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、THF、ジオキサン、アセトニトリル、アセトン、またはそれらから成る混合物であり、とりわけ好ましくはTHF、エチルアセテート、ブチルアセテート、アセトン、ブタノンである。
【0030】
接着剤調合物の成分の少なくとも1つは、架橋した接着剤調合物が有する特性、つまり完成した接着剤の、接着性、特に感圧接着性を担う。この成分は、酸性基を有する成分、および/または場合によってはさらなる官能基を有する成分であることができる。それぞれの基を、この代わりにまたはこれに加えて、接着剤調合物のさらなる1つおよび/または複数の成分に設けられ得る。
【0031】
本発明に基づく方法により製造された接着剤、特に感圧接着剤のベースならびに前記(感圧)接着剤から成る(感圧)接着テープは、当業者に既知の、接着剤もしくは感圧接着剤の製造に適したすべてのポリマーおよび/またはポリマーから成る混合物を、ただしこのポリマーまたはポリマー混合物のポリマーの少なくとも1種が、上述のように環状ホスホン酸無水物により活性化され得る官能性を有する場合に限り、含んでいる。
【0032】
好ましい一形態では、ポリ(メタ)アクリレートベースの熱架橋可能で可逆的な感圧接着剤が用いられる。この接着剤は、有利には下記の(a1)、(a2)、および(a3)から成るポリマーを含んでいる。
【0033】
(a1)式(II)のアクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルおよび/またはその遊離酸70〜100重量%
【0034】
【化2】

式中、RはHおよび/またはCHであり、RはHおよび/または1〜30個のC原子を有するアルキル鎖である。
【0035】
(a2)官能基を有するオレフィン性不飽和モノマー0〜30重量%
【0036】
(a3)任意選択で、成分(a)と共重合可能であり、カップリング剤により共有結合性の不可逆的架橋が引き起こされる官能基を有するさらなるアクリレートおよび/またはメタクリレートおよび/またはオレフィン性不飽和モノマー(0〜5重量%)
【0037】
重量表示はポリマーに対する重量%である。
【0038】
モノマー(a1)に関しては、1〜14個のC原子から成るアルキル基を有するアクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルを含むアクリルモノマーが使用されることが好ましい。特異的な例としては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、n−ペンチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、n−ヘプチルアクリレート、n−オクチルアクリレート、n−ノニルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレート、ベヘニルアクリレート、およびそれらの分枝異性体、例えば2−エチルヘキシルアクリレートであるが、このリストは網羅的ではない。同様に、少量で(a1)に付け加えられ得るさらなる使用すべき化合物クラスは、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、およびイソボルニルメタクリレートである。
【0039】
(a2)に関しては、例えば無水マレイン酸、無水イタコン酸、グリシジルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニルアクリレート、フェニルメタクリレート、tert−ブチルフェニルアクリレート、tert−ブチルフェニルメタクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、2−ブトキシエチルメタクリレート、2−ブトキシエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、およびテトラヒドロフルフリルアクリレートのようなモノマーを使用することが好ましいが、このリストは網羅的ではない。
【0040】
成分(a2)に関しては、芳香族ビニル化合物を用いることも同様に好ましく、その際、芳香族核は、好ましくはC4〜C18の構成体から成ることができ、ヘテロ原子を含むこともできる。特に好ましい例は、スチレン、4−ビニルピリジン、N−ビニルフタルイミド、メチルスチレン、および3,4−ジメトキシスチレンであるが、このリストは網羅的ではない。
【0041】
成分(a3)に関する特に好ましい例は、ヒドロキシエチルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、アリルアルコール、イタコン酸、アクリルアミド、およびシアノエチルメタクリレート、シアノエチルアクリレート、6−ヒドロキシヘキシルメタクリレート、N−tert−ブチルアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−(ブトキシメチル)メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−(エトキシメチル)アクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、ビニル酢酸、β−アクリロイルオキシプロピオン酸、トリクロロアクリル酸、フマル酸、クロトン酸、アコニット酸、ジメチルアクリル酸、4−ビニル安息香酸であるが、このリストは網羅的ではない。
【0042】
重合のために、モノマーは、結果として生じるポリマーが熱架橋可能な感圧接着剤として使用され得るように、特に結果として生じるポリマーがDonatas Satasの「Handbook of Pressure Sensitive Adhesive Technology」(van Nostrand、New York 1989)(非特許文献2)に対応する感圧接着特性を有するように選択される。
【0043】
コモノマーの種類は、ポリマーのガラス転移温度TG,Aが適用温度未満、好ましくはTG,A≦15℃であるように選択される。これを達成するにはさらに、Fox式(G1)(T.G. Fox、Bull. Am. Phys. Soc. 1956、1、123(非特許文献3)を参照)に基づいて、ポリマーの所望のTG,A値が生じるよう、モノマー混合物の量的組成が選択されることが有利である。
【0044】
【数1】

式中、nは使用したモノマーの通し番号を表しており、Wはそれぞれのモノマーnの質量分率(重量%)を表しており、TG,nはそれぞれのモノマーnから成るホモポリマーの単位Kでのそれぞれのガラス転移温度を表している。
【0045】
ポリアクリレート感圧接着剤を製造するには、従来のラジカル重合または制御ラジカル重合を実施されることが有利である。ラジカルによって進行する重合には、重合のために追加的にさらなるラジカル開始剤、特に熱により分解してラジカルを生成するアゾ開始剤またはペルオキソ開始剤を含む開始剤系を用いられることが好ましい。ただし原理的には、アクリレートおよび/またはメタクリレートのための、当業者に周知のすべての通常の開始剤が適している。炭素中心ラジカルの生成は、Houben-Weyl、Methoden der Organischen Chemie、Vol. E 19a、60〜147頁(非特許文献4)に記載されている。この方法は、類推適用されることが好ましい。
【0046】
ラジカル源の例は、ペルオキシド、ヒドロペルオキシド、およびアゾ化合物である。典型的なラジカル開始剤の幾つかの非排他的な例としては、ここではペルオキソ二硫酸カリウム、ジベンゾイルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、アゾビスイソブチロニトリル、シクロヘキシルスルホニルアセチルペルオキシド、ジイソプロピルペルカーボネート、tert−ブチルペルオクトエート、ベンズピナコールを挙げておく。ラジカル開始剤として1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボン酸ニトリル)(DuPont社のVazo88(商標))を使用することが特に好ましい。
【0047】
ラジカル重合で生じる感圧接着剤の平均分子量Mnが20,000〜2,000,000g/molの範囲内にあるよう選択されることが非常に好ましく、平均分子量Mwが200,000〜1,200,000g/molの感圧接着剤を製造することが好ましい。平均分子量の決定は、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)を用いて行われる。
【0048】
重合は、塊状で、1種もしくは複数の有機溶剤の存在下で、水の存在下で、または有機溶剤と水から成る混合物中で実施され得る。その際、使用する溶剤量をできるだけ少なく保つことが目指される。適切な有機溶剤は、純粋なアルカン(例えばヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン)、芳香族炭化水素(例えばベンゼン、トルエン、キシレン)、エステル(例えば酢酸エチルエステル、酢酸プロピルエステル、酢酸ブチルエステル、または酢酸ヘキシルエステル)、ハロゲン化炭化水素(例えばクロロベンゼン)、アルカノール(例えばメタノール、エタノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル)、ケトン(例えばアセトン、ブタノン)、およびエーテル(例えばジエチルエーテル、ジブチルエーテル)、またはそれらの混合物である。水性重合反応は、モノマーの転化中に反応混合物が均質相の形で存在することを保証するため、水と混合可能なまたは親水性の共溶剤と混合され得る。本発明のために有利に使用可能な共溶剤は、以下の群、すなわち脂肪族アルコール、グリコール、エーテル、グリコールエーテル、ピロリジン、N−アルキルピロリジノン、N−アルキルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、アミド、カルボン酸とその塩、エステル、有機スルフィド、スルホキシド、スルホン、アルコール誘導体、ヒドロキシエーテル誘導体、アミノアルコール、ケトン、およびそれらの類似物、ならびにそれらの誘導体および混合物から成る群から選択される。
【0049】
重合時間は、転化率および温度に応じて4〜72時間の間である。反応温度がより高く選択され得ればそれだけ、つまり反応混合物の熱安定性がより高ければそれだけ、より短い反応時間が選択され得る。
【0050】
熱により分解する開始剤に関しては、重合を開始させるために熱を加えることが不可欠である。重合は、熱により分解する開始剤のために、開始剤タイプに応じて50〜160℃に加熱することで開始され得る。
【0051】
ラジカル安定化のために、有利な手順では窒素酸化物が用いられ、例えば2,2,5,5−テトラメチル−1−ピロリジニルオキシル(PROXYL)、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシル(TEMPO)、PROXYLもしくはTEMPOの誘導体、および当業者に周知のさらなる窒素酸化物が用いられる。
【0052】
これに代わる手順で接着剤を製造し得るさらなる一連の重合方法は、従来技術から選択することができ、WO96/24620A1(特許文献5)は、非常に特殊なラジカル化合物、例えばリン含有でイミダゾリジンベースの窒素酸化物を使用する重合方法を記載している。WO98/44008A1(特許文献6)は、モルホリン、ピペラジノン、およびピペラジンジオンをベースとする特殊なニトロキシルを開示している。DE19949352A1(特許文献7)は、制御ラジカル重合における調節剤としての複素環式アルコキシアミンを記載している。
【0053】
さらなる制御重合方法として、有利には、ブロックコポリマーを合成するために原子移動ラジカル重合(ATRP)を用いることができ、その際、開始剤として好ましくは単官能性または二官能性の第二級または第三級のハロゲン化物が用いられ、1種(複数)のハロゲン化物の引き抜きのために、Cu錯体、Ni錯体、Fe錯体、Pd錯体、Pt錯体、Ru錯体、Os錯体、Rh錯体、Co錯体、Ir錯体、Ag錯体、またはAu錯体が用いられる。ATRPの様々な可能性は、さらにUS5,945,491A(特許文献8)、US5,854,364A(特許文献9)、およびUS5,789,487A(特許文献10)の明細書に記載されている。
【0054】
非常に好ましい製造プロセスとして、RAFT重合(可逆的付加開裂連鎖移動重合)の形態が実施される。この重合プロセスは、例えばWO98/01478A1(特許文献11)およびWO99/31144A1(特許文献12)の明細書に詳細に記載されている。特に有利には、一般構造式R”’−S−C(S)−S−R”’のトリチオカーボネートが製造に適している(Macromolecules 2000、33、243〜245(非特許文献5))。
【0055】
非常に有利な一形態では、重合のために例えばトリチオカーボネート(TTC1)および(TTC2)またはチオ化合物(THI1)および(THI2)が用いられ、その際、Φは、非官能性であるか、または直接的に、もしくはエステル結合もしくはエーテル結合を介して結びついているアルキル置換基もしくはアリール置換基により官能化され得るフェニル環、あるいはシアノ基、あるいは飽和または不飽和の脂肪族残基であることができる。フェニル環Φは、任意選択で、1つまたは複数のポリマーブロックを担持することができ、幾つかだけ挙げるとすれば例えばP(A)またはP(B)のための定義に対応して構成され得るポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、またはポリ(メタ)アクリレート、またはポリスチレンを担持することができる。官能化するのは、例えばハロゲン、ヒドロキシ基、エポキシド基、窒素含有基、または硫黄含有基であることができ、このリストはすべてを網羅しているわけではない。
【0056】
【化3】

【0057】
制御されてラジカルによって進行する上述の重合に関しては、重合のために追加的にさらなるラジカル開始剤、特に、既に上で列挙した熱により分解してラジカルを生成するアゾ開始剤またはペルオキソ開始剤を含む開始剤系が好ましい。ただしこれに関し原理的には、アクリレートおよび/またはメタクリレートのために知られているすべての通常の開始剤が適している。さらに、UV照射されて初めてラジカルを遊離させるラジカル源も使用可能である。
【0058】
本発明のさらなる有利な実施形態では、別の、感圧接着剤を製造するために当業者に既知で適切であり、環状ホスホン酸無水物を用いた活性化により可逆的架橋および/または不可逆的架橋を形成させる官能性を有するポリマーが使用される。これに限定されないが例示的に挙げるとすれば、酸または無水マレイン酸で修飾された飽和および/または不飽和の合成ゴムおよびスチレンブロックコポリマー、部分水素化ポリビニルアセテート、部分水素化EVA系、ポリウレタン、ポリエステル、シリコーンである。
【0059】
有利なさらなる発展のため、接着剤、特に感圧接着剤に樹脂が混合され得る。接着性付与樹脂としては、原理的に予め知られており、文献に記載されている接着樹脂を使用することができる。代表として挙げるとすれば、ピネン樹脂、インデン樹脂、およびロジン樹脂、それらの不均化され、水素化され、重合され、エステル化された誘導体および塩、脂肪族および芳香族の炭化水素樹脂、テルペン樹脂およびテルペンフェノール樹脂、ならびにC5、C9、ならびにその他の炭化水素樹脂である。これらの樹脂およびさらなる樹脂の任意の組合せを、結果として生じる接着剤の特性を所望通りに調整するために用いられ得る。包括的には、対応する接着剤と適合する(可溶性の)すべての樹脂を用いることができ、特に指摘するとすれば、すべての脂肪族、芳香族、アルキル芳香族の炭化水素樹脂、純粋なモノマーをベースとする炭化水素樹脂、水素化された炭化水素樹脂、官能化された炭化水素樹脂、ならびに天然樹脂である。Donatas Satasの「Handbook of Pressure Sensitive Adhesive Technology」(van Nostrand、1989)(非特許文献2)における知識水準の記述を参照するよう明示的に指摘しておく。
【0060】
さらに任意選択で、軟化剤(可塑剤)、充填剤(例えば繊維、カーボンブラック、酸化亜鉛、二酸化チタン、チョーク、中実ガラス球もしくは中空ガラス球、その他の材料から成るマイクロ球、ケイ酸、ケイ酸塩)、核形成剤、発泡剤、コンパウンド化剤、および/または例えば一次および二次酸化防止剤の形または光保護剤の形での老化防止剤を添加され得る。
【0061】
上述の樹脂および/または添加剤、後で述べる(特に不可逆的な)架橋剤、ならびに場合によってはあり得るさらなる添加物質は、架橋方法にとって不利にならない限り、通常は、ホスホン酸無水物で活性化される可逆的架橋の前および/または最中に、接着剤調合物に添加される。
【0062】
土台に、例えば接着テープ製造のための支持体に接着剤を定着させるには、コーティング前にポリマーをコロナまたはプラズマにより処理する場合が有利であり得る。大気圧プラズマ処理には、例えばPlasmatreat社の機器が適している。
【0063】
そのうえ、さらなるあり得る層、ポリエステル、ポリアミド、ポリメタクリレート、PVCなどをベースとするフィルム、またはポリアクリレートもしくはポリウレタンをベースとする粘弾性で発泡性もしくは非発泡性の支持体を用いた、プロセスならびに層の定着には、例えばプライマーを介して化学的な定着が行われる場合が有利であり得る。
【0064】
接着剤の内部強度(凝集性)が架橋により上昇されることが好ましい。特に好ましいのは、可逆的に架橋可能な感圧接着剤、特にポリアクリレートベースの感圧接着剤である。接着剤の特性プロファイルが一定であることを保証するため、可逆的な共有結合性架橋は、外部からの刺激によって初めてネットワークが壊されるように選択されることが好ましい。
【0065】
意外にも、カップリング剤として環状ホスホン酸無水物を用いて架橋された接着剤(特に感圧接着剤)は、酸性または塩基性の水溶液ならびにアルカノールベースの溶剤で処理することにより再び剥離可能になり、しかしながらその他のすべての影響に対し、ならびに水、湿度上昇、およびその他の有機溶剤に対しては架橋が安定していることが分かった。
【0066】
可逆的架橋の効率を上げるため、および/または不可逆的架橋を生成するため、接着剤(特に感圧接着剤)に、環状ホスホン酸無水物に加えて任意選択で、適合する架橋剤物質が添加され得る。対応する架橋剤物質の例は、既に上に記載されている。
【0067】
さらなる有利な一実施形態では、不可逆的ネットワークを形成するため、前述の架橋剤の代わりにまたはそれに加えて、環状ホスホン酸無水物では活性化されない架橋剤、例えば金属キレート、多官能性イソシアネート、多官能性エポキシド、多官能性アジリジン、多官能性オキサゾリン、または多官能性カルボジイミドが選択され得る。多官能性アクリレートも、有利には化学線照射に対する架橋剤として使用することができる。
【0068】
特に熱架橋および化学線架橋のような2つの異なる架橋反応が実施される架橋方法は、「二重硬化法」とも呼ばれる。本明細書中では、このような二重硬化法も同様に、本発明によると見なされる。特に有利なのは、環状ホスホン酸無水物により活性化される熱架橋が実施され、さらに、特に本明細書中で記載されているような、有利には紫外線放射(UV線)および/または電子線(EBC)により開始される放射線開始架橋が実施されることである。
【0069】
前述の本発明による接着剤、特に感圧接着剤は、片面または両面接着テープの製造に秀でて適しており、その際、当業者に周知のすべての支持材料が使用され得る。支持材料としては、これに限定されないが例示的にはPETフィルム、PVCフィルム、PPフィルム、紙、不織布、織布、および発泡体を用いることができる。
【0070】
接着テープは、輸送、貯蔵、または型抜きのために、少なくとも片面に、ライナー、つまり例えばシリコーンコーティングされたフィルムまたはシリコーン紙を備えることが好ましい。
【0071】
本発明のさらなる有利な一実施形態は、自己接着性接着テープのための、支持体のない接着剤の使用である。支持体のない接着剤とは、ポリマーフィルムまたは不織布のような永続的な支持体を有さない接着剤のことである。さらに言えば、好ましい形態での自己接着性接着剤は、ライナー上に、つまり一時的にだけ自己接着剤を支持し、かつ塗布をより容易にする材料上に施されているだけである。この場合ライナーは、自己接着剤を土台表面に施した後で取り外され、つまりライナーは生産的な部材ではない。
【0072】
本発明のさらなる有利な一実施形態では、接着剤の製造方法を、粘弾性で発泡性または非発泡性の層の製造にも利用することができ、この層は、それ自体が支持体として用いられ、加えて少なくとも片面でさらに感圧接着剤をラミネートされる。
【0073】
本発明による感圧接着剤の製造は、溶液の状態で、ならびに融体の状態で行うことができる。後者の場合に関し、適切な製造プロセスにはバッチ法も連続的な方法も含まれる。特に好ましいのは、押出成形機とそれに続く、接着剤層を備えたまたは備えていないライナー上への直接的なコーティングによる連続的な製造である。
【0074】
加えて、本発明の対象は、電子部品を貼り付けるための、本発明による可逆的で共有結合性に架橋された(感圧)接着剤、特に好ましくはポリアクリレートベースの感圧接着剤を備えた、特に自己接着性の接着テープの使用であり、これに関し、ますます高く上昇する原料価格により、電子部品を再利用することが有意義である。特に前述の要求に基づき、特に自己接着性のこの接着剤は、外部からの刺激により、好ましくは酸性もしくは塩基性の水溶液またはアルカノールベースの溶剤で処理することにより、残留物なく取り外せるよう選択されており、これにより電子部品を破壊せずに取り外して再利用することができる。それだけでなく、電子部品におけるできるだけ多種多様な使用分野で使えるように、接着剤はできるだけ高い温度耐性を示すことが望ましい。特に、接着剤は−5℃まで、好ましくは−15℃まで、さらに好ましくは−30℃までの温度耐性を示す。加えて接着剤は70℃まで、好ましくは80℃まで、さらに好ましくは100℃までの温度耐性も示すことが望ましい。
【0075】
以下に、例に基づいて本発明をより詳しく説明するが、これにより本発明が制限されることはない。
【実施例】
【0076】
実験の部
個々に別の提示がないか、または明らかでない場合、試料準備および測定は標準条件下(25℃、101325Pa)で行われる。
【0077】
I.静的ガラス転移温度Tg
静的ガラス転移温度の決定は、DIN53765に基づき、示差走査熱量測定により行われる。ガラス転移温度Tgについてのデータは、個々に別の提示がなければDIN53765:1994−03に基づくガラス転移温度値Tgに関してである。
【0078】
II.分子量
平均分子量(重量平均Mwおよび数平均Mn)および多分散度Dの決定は、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)を用いて行った。溶離液としては、0.1Vol%のトリフルオロ酢酸を含むTHFが用いられた。測定は25℃で行われた。プレカラムとしては、PSS−SDV、5μm、103Å(10〜7m)、ID8.0mm×50mmを使用した。分離には、カラムとしてPSS−SDV、5μm、103Å(10〜7m)、105Å(10〜5m)、および106Å(10〜4m)を、それぞれID8.0mm×300mmで使用した。試料濃度は4g/lであり、貫流量は1分間あたり1.0mlであった。PMMAを標準として測定した。
【0079】
III.固体含有率
固体含有率は、ポリマー溶液中の蒸発不可能な成分の分率に関する尺度である。固体含有率は、重量測定法に基づき、溶液を量り入れ、その後、乾燥庫内で120℃で2時間かけて蒸発可能な部分を蒸発させ、残留物の重さを再び量ることで決定する。
【0080】
IV.K値(フィケンチャー法に基づく)
K値は、高重合物質の平均分子サイズに関する尺度である。測定のため、トルエンに溶かした1%(1g/100ml)のポリマー溶液を製造し、この溶液の動粘性をVOGEL−OSSAG粘度計により決定した。トルエンの粘度を基準として相対的な粘度を取得し、この相対的な粘度から、フィケンチャー法に基づいてK値を算出することができる(Polymer 8/1967、381頁以降(非特許文献6))。
【0081】
V.せん断強度の量的な確定:静的せん断試験SSZ
大きさが13mm×20mmの検査すべき両面接着テープの長方形の検査サンプルが、2枚のスチールプレート(50mm×25mm×2mm;DIN EN 10088−2、タイプ1、4301、表面品質2R、冷間圧延および光輝焼なまし、Ra=25〜75mm)の間で、検査サンプルと両方のスチールプレートの貼付面がそれぞれ260mmで、スチールプレートが長手方向に平行にずれて位置合わせされるように貼り付けられ、したがって検査サンプルは、真ん中でスチールプレートの間に貼り付けられており、スチールプレートはそれぞれ異なる側が検査サンプルからはみ出している。続いて100N/cmの押圧力で1分間加圧する。所定の養生時間の後(別の提示がなければ室温で72時間)、こうして準備した被検体を、せん断試験測定所で、検査サンプルからはみ出ているスチールプレートの一方の領域により、スチールプレートの長手方向が下に向かって位置合わせされるように吊り下げ、もう一方のスチールプレートの検査サンプルからはみ出ている領域に、所定の温度で、選択された重量で負荷をかける(室温で20Nの負荷ならびに70℃で10Nの負荷で測定;それぞれの表中のデータを参照)。検査雰囲気は、標準条件で相対湿度50%であった。こうして自動カウント時計により、検査サンプルが役に立たなくなる(負荷をかけられたスチールプレートが剥がれ落ちる)までの時間を分単位で確定する。
【0082】
VI.剥離強度(接着力)KK
検査すべき(感圧)接着テープの細長片を、規定の幅(標準:20mm)で、研磨したスチールプレート(ASTM A666に基づくステンレススチール302、50mm×125mm×1.1mm、光輝焼なましを施した表面、ベースラインからの算術平均偏差による表面粗さRa=50±25nm)上に、5kgのスチールローラを上で10回転がすことにより貼り付ける。両面接着性の接着テープは、36μm厚の硬質PVCフィルムで背面を補強する。それぞれ同一の試料を作製し、迅速測定用に準備して3日間貯蔵してから測定するか、もしくは14日間貯蔵してから測定する。
【0083】
準備したプレートを検査機器内に架け渡し(固定し)、それから接着細長片を、引張検査機のところにある自由端を介し、90°の剥離角度で、300mm/minの速度で、プレートから接着テープの長手方向に剥ぎ取る。このために必要な力を確定する。測定結果はN/cmで示され(それぞれ剥がれた貼付距離を基準とした力)、3回の測定から平均値を求める。すべての測定は、23℃および相対湿度50%に空調した空間内で実施される。
【0084】
VII.マイクロせん断試験
この試験は、温度負荷下での接着テープのせん断強度の迅速検査に用いられる。
【0085】
マイクロせん断試験のための測定試料の準備
それぞれの試料サンプルから切断された接着テープ(長さ約50mm、幅10mm)を、アセトンで洗浄したスチールの検査プレートに貼り付け、これによりスチールプレートは接着テープの右左にはみ出しており、接着テープは検査プレートを上縁で2mmはみ出している。試料の貼付面は、高さ×幅=13mm×10mmである。続いて貼付部位の上で、2kgのスチールローラを10m/minの速度で6回転がす。接着テープは、距離測定センサのための支持台として用いられる安定した接着細長片で的確に補強される。検査プレートを使って試料を垂直に吊り下げる。
【0086】
マイクロせん断試験
測定すべき試料サンプルの下端で、100gの重量の負荷をかける。検査温度は40℃であり、検査時間は30分(15分間の負荷および15分間の緩和)である。一定温度での所定の試験時間後のせん断距離は、μm単位の結果として示され、それも最大値として[「max」;15分間の負荷による最大せん断距離]、最小値として[「min」;緩和から15分後のせん断距離(「残留変位」);緩和の際、弛緩による戻り運動が起こる]示される。弾性割合もパーセントで[「elast」;弾性割合=(max−min)×100/max]示される。
【0087】
【表1】

以下では、カップリング剤もしくは架橋剤である2,4,6-トリプロピル-1,3,5,2,4,6-トリオキサトリホスホリナン-2,4,6-トリオキシドおよびアルミニウム-(III)-アセチルアセトナートの代わりに、記号T3PおよびAl(acac)3を使用する。
【0088】
ベースポリマーAc1の製造
ラジカル重合に従来から用いられている反応器に、2−エチルヘキシルアクリレート30.0kg、ブチルアクリレート67.0kg、アクリル酸3.0kg、およびアセトン/イソプロパノール(96:4)66.7kgを満たした。撹拌しながら窒素ガスを45分間通した後、反応器を58℃に加熱し、アセトン500g中で溶解させたVazo67 50gを添加した。続いて外側の加熱槽を70℃に加熱し、この外側温度で一定させて反応を実施した。1時間後に新たにアセトン500g中で溶解させたVazo67 50gを添加し、2時間後にアセトン/イソプロパノール混合物(96:4)10kgで希釈した。5時間半後に、アセトン500g中で溶解させたビス−(4−tert−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート150gを添加し、6時間半後に新たにアセトン/イソプロパノール混合物(96:4)10kgで希釈した。7時間後に、アセトン500g中で溶解させたさらなるビス−(4−tert−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート150gを添加し、加熱槽を60℃の温度に調節した。
【0089】
22時間の反応時間の後に重合を中断し、室温に冷却した。生成物は50.2%の固体含有率を有しており、これを乾燥させた。結果として生じたポリアクリレートは、K値が75.2、重量平均分子量Mw=1,370,000g/mol、多分散度D(Mw/Mn)=17.13、および静的ガラス転移温度Tg=−38.0℃であった。
【0090】
ベースポリマーAc2の製造
ラジカル重合に従来から用いられている反応器に、2−エチルヘキシルアクリレート30.0kg、ブチルアクリレート66.0kg、2−ヒドロキシエチルメタクリレート1.0kg、アクリル酸3.0kg、およびアセトン/イソプロパノール(95:5)64.3kgを満たした。撹拌しながら窒素ガスを45分間通した後、反応器を58℃に加熱し、アセトン500g中で溶解させたVazo67 50gを添加した。続いて外側の加熱槽を75℃に加熱し、この外側温度で一定させて反応を実施した。1時間後に新たにアセトン500g中で溶解させたVazo67 50gを添加し、4時間後にアセトン/イソプロパノール混合物(95:5)12.1kgで希釈した。
【0091】
5時間後ならびに7時間後にそれぞれ、それぞれアセトン500g中で溶解させたビス−(4−tert−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート150gで再び開始させた。22時間の反応時間の後に重合を中断し、室温に冷却した。生成物は50.2%の固体含有率を有しており、これを乾燥させた。結果として生じたポリアクリレートは、K値が72.9、重量平均分子量Mw=1,040,000g/mol、多分散度D(Mw/Mn)=8.7、および静的ガラス転移温度Tg=−59.0℃であった。
【0092】

感圧接着剤PSA1〜PSA6の製造
【0093】
【表2】

T3P0.47重量%は、ポリマーのアクリル酸部分に対して3.5mol%に相当する。
【0094】
溶液中のベースポリマーを、それぞれイソプロパノール中に3%のカップリング剤もしくは架橋剤を溶かした溶液と混合し、イソプロパノールにより固体含有率30%に希釈し、その後、溶液状態で、シリコーン処理された剥離フィルム(50μmポリエステル)上にコーティングした。(コーティング速度2.5m/min、乾燥路15m、温度はゾーン1:40℃、ゾーン2:70℃、ゾーン3:95℃、ゾーン4:105℃)接着剤塗布量はそれぞれ50g/mであった。
【0095】
【表3】

【0096】
架橋の可逆性を判定するため、貼付した接着剤を、第一に交互雰囲気試験にかけ(湿度および温度の変化)、第二に酢酸溶液で短時間(約1分)処理した。架橋を決定するための尺度として、マイクロせん断試験により弾性割合を測定し、その後、サンプルを下地(スチール)から手で剥がし取った。
【0097】
【表4】

【0098】
環状ホスホン酸無水物により活性化された接着剤の架橋は、多官能性イソシアネートベースのイオン性または共有結合性の架橋剤を用いて製造された参照用接着剤と同等に安定していることが分かった。これに対し、Al(acac)で架橋された接着剤では弾性割合の僅かな低下を測定することができるが、この低下は、サンプルを残留物なく少しの力消費で下地から剥がすには十分でない。
【0099】
【表5】

【0100】
最後の一連の試験から、カップリング剤と組み合わせた接着剤AC1だけが、酢酸溶液での処理後に容易かつ残留物なしで剥がし取ることができ、弾性割合も明らかに低下していることが分かる。カルボン酸基にさらに追加して、環状ホスホン酸無水物による活性化によりカルボン酸と反応するさらなる官能性がポリマー中に内包されているとすぐに、架橋は不可逆的であり、接着剤を下地から再び剥離するのは困難であり、たいていは残留物ありでしか可能でない。イオン性架橋剤およびイソシアネート架橋剤を含む参照用接着剤はすべて、剥離が困難である。
【0101】
さらに、架橋活性剤として少なくとも1種の環状ホスホン酸無水物を使用して製造された本発明による接着剤が、最適化された難燃挙動を示し、かつ少なくとも部分的にはカルシウムイオンを結合可能であることが観察できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機および/または無機でOH基を含む酸性単位により官能化された少なくとも1種のポリマーと、
少なくとも1種の環状ホスホン酸無水物とを含む架橋可能な接着剤調合物。
【請求項2】
環状ホスホン酸無水物が、環状アルキルホスホン酸無水物であることを特徴とする請求項1に記載の接着剤調合物。
【請求項3】
環状ホスホン酸無水物が、環状2,4,6−置換1,3,5,2,4,6−トリオキサトリホスフィナン−2,4,6−トリオキシドであることを特徴とする請求項1または2に記載の接着剤調合物。
【請求項4】
有機および/または無機でOH基を含む酸性単位が、カルボン酸基、マレイン酸基、スルホン酸基、および/またはホスホン酸基であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の接着剤調合物。
【請求項5】
有機および/または無機でOH基を含む酸性単位で官能化されたポリマーがさらに、少なくとも部分的にアミノ基、一置換アミノ基、二置換アミノ基、ヒドロキシ基、未置換フェニル残基、置換フェニル残基、1,3−ジケトン残基、および/またはヘテロ芳香族化合物で官能化されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の接着剤調合物。
【請求項6】
追加的に、アミノ基、一置換アミノ基、二置換アミノ基、ヒドロキシ基、未置換フェニル残基、置換フェニル残基、1,3−ジケトン残基、および/またはヘテロ芳香族化合物で官能化された少なくとも1種のポリマーが含まれていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の接着剤調合物。
【請求項7】
架橋剤がさらに含まれていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の接着剤調合物。
【請求項8】
接着剤調合物の主成分であるポリマーが、主にポリ(メタ)アクリレートベースのポリマーであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の接着剤調合物。
【請求項9】
感圧接着特性を特徴とする請求項1〜8のいずれか一つに記載の接着剤調合物。
【請求項10】
有機および/または無機でOH基を含む酸性単位で官能化された少なくとも1種のポリマーを含む接着剤調合物を基礎とする、架橋可能な接着剤、特に感圧接着剤の架橋方法であって、
架橋活性剤として、少なくとも1種の環状ホスホン酸無水物が用いられることを特徴とする方法。
【請求項11】
環状ホスホン酸無水物が、請求項2または3に記載の環状ホスホン酸無水物であることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
接着剤調合物が、請求項1〜9のいずれか一つに記載の接着剤調合物であることを特徴とする請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
請求項10〜12のいずれか一つに記載の方法により入手可能な接着剤、特に感圧接着剤。

【公開番号】特開2013−1909(P2013−1909A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−136539(P2012−136539)
【出願日】平成24年6月18日(2012.6.18)
【出願人】(509120403)テーザ・ソシエタス・ヨーロピア (118)
【Fターム(参考)】