説明

接着剤を剥離するための剥離用組成物

【課題】接着剤を迅速に剥離することが可能な、接着剤の剥離用組成物を提供する。
【解決手段】本発明の接着剤を剥離するための剥離用組成物は、ケトン系溶剤及び非イオン系界面活性剤のうちの少なくとも一方を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤を剥離するための剥離用組成物に関するものであり、より詳しくは、例えば、加熱後の接着剤を迅速に剥離するための剥離用組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、デジタルAV機器及びICカード等の高機能化にともない、半導体シリコンチップの小型化、薄型化及び高集積化への要求が高まっている。例えば、一つの半導体パッケージの中に複数の半導体チップを搭載するシステム・イン・パッケージ(SiP)は、搭載されるチップを小型化、薄型化及び高集積化し、電子機器を高性能化、小型化かつ軽量化を実現する上で非常に重要な技術となっている。このような薄型化や高集積化への要求に応えるためには、従来のワイヤ・ボンディング技術のみではなく、貫通電極を形成したチップを積層し、チップの裏面にバンプを形成する貫通電極技術も必要となる。
【0003】
ところで、半導体チップの製造では、半導体ウェハー自体が肉薄で脆く、また回路パターンには凹凸があるので、研削工程やダイシング工程への搬送時に外力が加わると破損しやすい。また、研削工程においては、生じた研磨屑を除去したり、研磨時に発生した熱を除去するために精製水を用いて半導体ウェハー裏面を洗浄したりしながら研削処理している。このとき、洗浄に用いる上記精製水によって回路パターン面が汚染されることを防ぐ必要がある。
【0004】
そこで、半導体ウェハーの回路パターン面を保護するとともに、半導体ウェハーの破損を防止するために、回路パターン面に加工用粘着フィルムを貼着した上で、研削作業が行われている。
【0005】
また、ダイシング時には、半導体ウェハー裏面側に保護シートを貼り付けて、半導体ウェハーを接着固定した状態でダイシングし、得られたチップをフィルム基材側からニードルで突き上げてピックアップし、ダイパッド上に固定させている。
【0006】
このような加工用粘着フィルムや保護シートとして、例えば、ポリエチレンテレフタレート等の基材フィルムに、アクリル系接着剤等の接着剤から形成した接着剤層が設けられたものが知られている(例えば特許文献1、特許文献2、特許文献3)。
【0007】
この接着剤層については、上述の研削やダイシングの後、剥離することが必要となる。接着剤層を剥離するための剥離用組成物として、従来、プロピレングリコール・モノメチルエーテル・アセテート(以下、「PGMEA」と表記する)が用いられている(特許文献4)。
【特許文献1】特開2003−173993号公報(平成15年6月20日公開)
【特許文献2】特開2001−279208号公報(平成13年10月10日公開)
【特許文献3】特開2003−292931号公報(平成15年10月15日公開)
【特許文献4】特開2007−119646号公報(平成19年5月17日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、PGMEA等の従来の剥離用組成物では、接着剤層の剥離が迅速ではないという問題を有する。
【0009】
また、例えば、上述の貫通電極の形成では、半導体チップにバンプを形成した後、半導体チップ間を接続するとき、200℃程度まで加熱する工程が必要となる。加熱工程後の接着剤組成物は変質して硬化するので溶解し難くなる。そして、従来の剥離用組成物では、この加熱工程後の接着剤を迅速に溶解することは困難であった。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、接着剤を迅速に剥離することが可能な、接着剤を剥離するための剥離用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様は、接着剤を剥離するための剥離用組成物であって、ケトン系溶剤及び非イオン系界面活性剤のうちの少なくとも一方を含むことを特徴とする剥離用組成物である。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る接着剤を剥離するための剥離用組成物は、以上のように、ケトン系溶剤及び非イオン系界面活性剤のうちの少なくとも一方を含むので、接着剤を迅速に剥離できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に係る剥離用組成物は、接着剤を剥離するための剥離用組成物であって、ケトン系溶剤及び非イオン系界面活性剤のうちの少なくとも一方を含めばよい。
【0014】
本発明に係る剥離用組成物を用いれば接着剤を迅速に溶解することができる。また、加熱工程後の接着剤であっても迅速に溶解することができる。そのため、半導体ウェハー又はチップの加工に好適に利用できる。
【0015】
本発明に係る剥離用組成物において、剥離する対象の接着剤としては特に限定されるものではないが、アクリル系接着剤の剥離に好適に使用することができる。また、本発明に係る剥離用組成物は、加熱工程後の接着剤の剥離に好適に使用することができ、例えば、200℃以上に加熱された後の接着剤の剥離により好適に使用することができる。特に、200℃以上に加熱された後のアクリル系接着剤の剥離に好適に使用することができる。
【0016】
〔ケトン系溶剤〕
本発明に係る剥離用組成物がケトン系溶剤を含む場合、ケトン系溶剤としてはケトン基を有する有機溶剤であれば限定されないが、2−ヘプタノン(以下、「2−HP」と表記する)、2−ブタノン、2−ペンタノン、3−メチル−2−ブタノン、2−ヘキサノン、4−メチル−2−ペンタノン、3−メチル−2−ペンタノン、3,3−ジメチル−2−ブタノン、2−オクタノン等の直鎖状又は分岐状のケトン類;シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロペンタノン、2−メチルシクロヘキサノン、2,6−ジメチルシクロヘキサノン、イソホロン等の環状のケトン類等を好ましく例示できる。中でも2−HPが好ましい。2−HPを含んでいれば、さらに迅速に接着剤を溶解できる。
【0017】
なお、本発明に係る剥離用組成物は、ここに例示したケトン系溶剤を単独で含んでいてもよく、2種以上を併せて含んでいてもよい。
【0018】
本発明に係る剥離用組成物がケトン系溶剤を含む場合、その含有量としては特に限定されるものではないが、剥離用組成物の全量を100質量部としたとき、10質量部以上100質量部以下が好ましく、50質量部以上100質量部以下がより好ましい。残部は本発明の効果を損なわない範囲でその他の成分としてもよく、例えば後述の非イオン系界面活性剤、酢酸エステル、従来公知の接着剤を剥離するための溶剤等が挙げられる。中でも非イオン系界面活性剤及び/又は酢酸エステルが好ましい。なお、本明細書において「A及び/又はB」と記載したとき、「A」、「B」、又は「A及びB」を意味する。
【0019】
〔非イオン系界面活性剤〕
本発明に係る剥離用組成物が非イオン系界面活性剤を含む場合、非イオン系界面活性剤の具体例としては特に限定されるものではないが、エーテル型、エステル型、エーテルエステル型、ポリエーテルポリオール型の非イオン系界面活性剤が挙げられる。
【0020】
エーテル型の非イオン系界面活性剤の具体例としてはアルキルエーテル、アルキルアミノエーテル、アルキルアミドエーテル、アルケニルフェニルエーテル等が挙げられる。
【0021】
アルキルエーテルは下記一般式(1)
【0022】
【化1】

【0023】
(上記一般式(1)中、Rは炭素数1〜20のアルキル基であり、Rはアルキレン基であり、n1は1〜100の整数である。)
で表される。
【0024】
上記一般式(1)において、Rは炭素数1〜10のアルキレン基が好ましい。上記一般式(1)で示されるアルキルエーテルの具体例としては、ポリオキシエチレンオクチルエーテル(パイオニンD−1002)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(パイオニンD−1105)、ポリオキシエチレンアルキル(C12〜C13)エーテル(パイオニンD−1103−D)、ポリオキシエチレン2級アルキル(C12〜C14)エーテル(パイオニンD−1105−S)、ポリオキシエチレンアルキル(C13)エーテル(パイオニンD−1203)、ポリオキシエチレンセチルエーテル(パイオニンD−1305)、ポリオキシエチレンステアリルエーテル(パイオニンD−1405)、ポリオキシエチレンオレイルエーテル(パイオニンD−1504)、ポリオキシエチレンデシルエーテル(パイオニンD−1715−N)、ポリオキシアルキレンアルキル(C11〜C15)エーテル(パイオニンD−1106DIR)、ポリオキシアルキレン2級アルキル(C12〜C14)エーテル(パイオニンD−1107SP3)、ポリオキシアルキレンセチルエーテル(パイオニンD−1301−P)等が挙げられる。なお括弧内の「パイオニン・・・」は市販されている商品の名称の例示であり、当該商品に限定されるものではない。
【0025】
アルキルアミノエーテルは、下記一般式(2)
【0026】
【化2】

【0027】
(上記一般式(2)中、Rは炭素数1〜20のアルキル基であり、Rはそれぞれ独立してアルキレン基であり、n2及びn3はそれぞれ独立して1〜100の整数である。)
で表される。
【0028】
上記一般式(2)において、Rは上記一般式(1)におけるRと同様である。上記一般式(2)にて示されるアルキルアミノエーテルの具体例としては、ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル(パイオニンD−3104)、ポリオキシエチレンステアリルアミノエーテル(パイオニンD−3212)、ポリオキシエチレンオレイルアミノエーテル(パイオニンD−3605−T)、ポリオキシエチレンオクチルアミノエーテル等が挙げられる。
【0029】
アルキルアミドエーテルとしては、下記一般式(3)
【0030】
【化3】

【0031】
(上記一般式(3)中、Rは炭素数1〜20のアルキル基であり、Rはそれぞれ独立してアルキレン基であり、n4及びn5はそれぞれ独立して1〜100の整数である。)
で表される。
【0032】
上記一般式(3)において、Rは上記一般式(1)におけるRと同様である。上記一般式(3)にて示されるアルキルアミドエーテルの具体例としては、ポリオキシエチレンラウリン酸アミドエーテル(パイオニンD−4106)、ポリオキシエチレンステアリン酸アミドエーテル(パイオニンD−4407)、ポリオキシエチレンオレイン酸アミドエーテル(パイオニンD−4515)等が挙げられる。
【0033】
アルケニルフェニルエーテルとしては、下記一般式(4)
【0034】
【化4】

【0035】
(上記一般式(4)中、Rは炭素数1〜20のアルキル基であり、Xは置換基を有していてもよいアルケニル基又はアルケニル基が有する重合性基が開列して生じた重合単位であり、Rはそれぞれ独立してアルキレン基であり、n6は1〜100の整数であり、n7は1〜3の整数である。)
で表される。
【0036】
上記一般式(4)において、Xは炭素数2〜5のアルケニル基が好ましく、上記アルケニル基が有していてもよい置換基としては、ベンゼン、ナフタレン等が挙げられ、Rは上記一般式(1)におけるRと同様である。上記一般式(4)にて示されるアルケニルフェニルエーテルの具体例としては、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル(パイオニンD−6112)、ポリオキシアルキレンポリスチリルフェニルエーテル(パイオニンD−6112−W)、ポリオキシエチレンモノスチリルフェニルエーテル(パイオニンD−6512)等が挙げられる。
【0037】
エステル型の非イオン系界面活性剤の具体例としては特に限定されるものではないが、グリセリンモノラウレート(パイオニンD−901)、グリセリンモノステアレート(パイオニンD−904)、グリセリンモノオレート(パイオニンD−905)、グリセリントリオレート(パイオニンD−905−T)等のグリセリン脂肪酸エステル;ソルビタンモノラウレート(パイオニンD−931)、ソルビタンモノパルミテート(パイオニンD−933)、ソルビタンモノステアレート(パイオニンD−934)、ソルビタントリステアレート(パイオニンD−934−T)、ソルビタンモノオレート(パイオニンD−935)、ソルビタントリオレート(パイオニンD−935−T)等のソルビタン脂肪酸エステルが挙げられる。
【0038】
エーテルエステル型の非イオン系界面活性剤の具体例としては特に限定されるものではないが、ポリオキシエチレンジラウレート(パイオニンD−2104−D)、ポリオキシエチレンラウレート(パイオニンD−2112−A)、ポリオキシエチレンステアレート(パイオニンD−2405−A)、ポリオキシエチレンジステアレート(パイオニンD−2410−D)、ポリオキシエチレンジオレート(パイオニンD−2506−D)、ポリオキシエチレンオレート(パイオニンD−2507−A)等の脂肪酸エーテルエステル;ポリオキシエチレンヒマシ油エーテル(パイオニンD−206)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油エーテル(パイオニンD−208−K)等の植物油エーテルエステル;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(パイオニンD−941)、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート(パイオニンD−944)、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート(パイオニンD−945)、ポリオキシエチレンソルビタントリオレート(パイオニンD−945−T)等のソルビタンエーテルエステルが挙げられる。
【0039】
ポリエーテルポリオール型の非イオン系界面活性剤の具体例としては特に限定されるものではないが、ポリオキシアルキレンブチルエーテル(パイオニンP−0550−B)、ポリオキシアルキレンオクチルエーテル(パイオニンP−1340−O)、ポリオキシアルキレンアルキル(C14〜C15)エーテル(パイオニンP−1130−L)などのモノオール型ポリエーテル;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン縮合物(パイオニンP−1525)などのジオール型ポリエーテル;トリメチロールプロパントリス(ポリオキシアルキレン)エーテル(パイオニンP−2025−T)等のポリオール型ポリエーテルが挙げられる。
【0040】
上述した非イオン系界面活性剤は、竹本油脂株式会社のパイオニンDシリーズ、パイオニンPシリーズとして市販されている。なお、「ポリオキシアルキレン」とは、「−(C2nO)−」で表される繰り返し単位を有する化合物である。当該繰り返し単位中に示されるn、mはそれぞれ独立して1〜100の整数である。例えば「ポリオキシエチレン」とは、上記繰り返し単位において、nが2であるものをいう。
【0041】
上述した非イオン界面活性剤の中でも、アルキルエーテル、アルキルアミノエーテル、アルキルアミドエーテル、アルケニルフェニルエーテル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸エーテルエステル、植物油エーテルエステル、ソルビタンエーテルエステル、モノオール型ポリエーテル、ジオール型ポリエーテル、ポリオール型ポリエーテルから選択される少なくとも1種の非イオン系界面活性剤であることが好ましく、アルキルエーテル、アルキルアミノエーテル、アルキルアミドエーテル、モノオール型ポリエーテルから選択される少なくとも1種であることがさらに好ましい。
【0042】
これらの中でも、非イオン性界面活性剤として、アルキルエーテルがさらに好ましく、ポリオキシエチレンオクチルアミノエーテル、ポリオキシエチレンステアリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテルが特に好ましい。これらの非イオン系界面活性剤を含んでいれば、さらに迅速に接着剤を溶解できる。
【0043】
なお、本発明に係る剥離用組成物は、ここに例示した非イオン系界面活性剤を単独で含んでいてもよく、2種以上を併せて含んでいてもよい。
【0044】
本発明に係る剥離用組成物が非イオン系界面活性剤を含む場合、その含有量としては特に限定されるものではないが、剥離用組成物全量に対して100ppm以上10,000ppm以下であることが好ましく1,000ppm以上10,000ppm以下であることがより好ましく、4,000ppm以上、8,000ppm以下であることが最も好ましい。この範囲であれば接着剤の溶解速度がより向上する。残部は上述のケトン系溶剤、後述の酢酸エステル、従来公知の接着剤を剥離するための溶剤等としてもよい。中でもケトン系溶剤及び/又は酢酸エステルが好ましい。なお、「ppm」は特に断らない限り質量換算で求められる値を意味し、例えば、10,000ppmは1質量%を意味する。すなわち、非イオン系界面活性剤の含有量は剥離用組成物中の有機溶剤100質量部に対して、0.01〜1質量部が好ましく、0.1〜1質量部がさらに好ましく、0.4〜0.8質量部が最も好ましい。
【0045】
〔その他の成分〕
本発明に係る剥離用組成物は、本発明の効果を損なわない範囲でその他の成分を含んでいてもよい。上記その他の成分としては特に限定されるものではないが、本発明に係る剥離用組成物は酢酸エステルをさらに含むことがより好ましい。
【0046】
本発明に係る剥離用組成物に包含され得る酢酸エステルとしては、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸n−プロピル、酢酸n−ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチルを好ましく例示でき、中でも酢酸エチルがより好ましいが、これらに限定されるものではなく、その他の従来公知の酢酸エステルであってもよい。また、本発明に係る剥離用組成物はこれらを単独で含んでいてもよく、2種以上を併せて含んでいてもよい。
【0047】
本発明に係る剥離用組成物が酢酸エステルを含む場合、その含有量としては特に限定されるものではないが、本発明に係る剥離用組成物がケトン系溶剤を含む場合は、ケトン系溶剤と酢酸エステルとの質量比を9:1〜1:9とすることが好ましく、8:2〜2:9とすることがさらに好ましく、4:6〜6:4とすることが最も好ましい。また、本発明に係る剥離用組成物がケトン系溶剤を含まない場合は、剥離用組成物の全量を100質量部としたとき、10質量部以上100質量部以下が好ましく、50質量部以上100質量部以下がより好ましい。
【0048】
また、上記その他の成分としては酢酸エステルに限定されるものではない。例えば、PGMEA等の従来公知の剥離剤を含んでいてもよい。
【0049】
〔使用方法〕
本発明に係る剥離用組成物の使用方法としては特に限定されず、接着剤に本発明に係る剥離用組成物を接触させればよい。例えば、従来公知の接着剤の剥離液と同様に使用してもよい。また、例えば、接着剤を塗布した基材を本発明に係る剥離用組成物中に浸漬してもよく、当該接着剤上に本発明に係る剥離用組成物を塗布してもよい。
【実施例】
【0050】
本発明の実施例について以下に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0051】
〔剥離用組成物:実施例1〜11,比較例1〕
剥離試験では、実施例1〜11及び比較例1の剥離用組成物を用いた。各剥離用組成物の組成を表1に示す。各剥離用組成物は表1に示した成分を混合したものである。なお、表1において化合物名の下段の[ ]中の数値は配合量(質量部)を示す。また、表1において括弧中のnの値は、ポリオキシアルキレンの繰り返し単位の数を示す。
【0052】
【表1】

【0053】
〔接着剤A及びB〕
接着剤A及びBにおける単量体組成物の組成を表2に示す。
【0054】
【表2】

【0055】
接着剤Aについては、次の方法で得た。まず、還流冷却器、撹拌機、温度計、窒素導入管を備えた容量300mlの4つ口フラスコに、溶剤としてPGMEA90g、及び、表1に示すように、モノマー単量体としてメタクリル酸メチル15g、メタクリル酸n−ブチル13g、スチレン52g、イソボルニルメタアクリレート10g、ジメチロール−トリシクロデカンジアクリレート(表1において「DCPMA」と表記している)10gを仕込み、Nの吹き込みを開始した。攪拌を始めることで重合を開始させ、攪拌しながら120℃まで昇温した後、PGMEA13.33g及びアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.6gからなる混合液とを滴下ノズルより、2時間かけて連続的に滴下した。滴下速度は一定とした。
【0056】
得られた重合反応液を、そのまま1時間、120℃で熟成した後、PGMEA83.34g及びAIBN0.3gからなる混合液を1時間かけて滴下した。その後、重合反応液を、さらにそのまま1時間、120℃で熟成した後、AIBN1.0gを一括投入した。
【0057】
次に、重合反応液を、そのまま3時間、120℃で熟成した後、溶剤の還流が認められるまで重合反応液を昇温した後、1時間熟成し、重合を終了させた。
【0058】
接着剤Bについては、次の方法で得た。まず、還流冷却器、撹拌機、温度計、窒素導入管を備えた容量300mlの4つ口フラスコに、溶剤としてPGMEA90g、及び、表1に示すように、モノマー単量体としてメタクリル酸メチル27g、イソボルニルメタアクリレート18g、フェノキシエチルアクリレート3g、アクリル酸5gを仕込み、Nの吹き込みを開始した。攪拌を始めることで重合を開始させ、攪拌しながら120℃まで昇温した後、PGMEA13.33g、スチレン52g、及びAIBN0.2gからなる混合液を滴下ノズルより、1.5時間かけて連続的に滴下した。滴下速度は一定とした。
【0059】
得られた重合反応液を、そのまま1時間、120℃で熟成した後、PGMEA83.34g及びAIBN0.3gからなる混合液を1時間かけて滴下した。その後、重合反応液を、さらにそのまま1時間、120℃で熟成した後、AIBN1.0gを一括投入した。
【0060】
次に、重合反応液を、そのまま3時間、120℃で熟成した後、溶剤の還流が認められるまで重合反応液を昇温した後、1時間熟成し、重合を終了させた。
【0061】
〔剥離試験:実施例1〜12及び比較例1〕
まず、シリコンウェハー上に接着剤A又はBを塗布して、110℃、150℃、200℃の順でそれぞれ3分間ずつ加熱処理を行ない、厚さ15μmの膜を形成した。
【0062】
次に、上記膜が形成されたシリコンウェハーを2センチ角(縦2cm×横2cm)に加工したものを23℃の各剥離用組成物中に浸漬して、接着剤A又はBが溶解してシリコンウェハー上から無くなるまでの時間を計測した。なお、シリコンウェハー上の接着剤A又はBの有無は目視で確認した。
【0063】
計測された時間を、当初形成した接着剤A又はBの膜の厚さである15μmで除して、溶解速度(nm/s)を算出した。結果を図1及び2に示す。図1及び2は、剥離用組成物による接着剤の溶解時間を示す図であり、縦軸が溶解速度(nm/s)を示し、横軸が剥離用組成物の種類を示す。
【0064】
図1及び2に示すように、全ての実施例において、比較例1より良好な溶解速度が示された。
【0065】
〔剥離試験:実施例12〜22〕
上記実施例と同様の方法で剥離試験を行った結果を以下の表3に示す。
【0066】
【表3】

【0067】
実施例12〜22において接着剤Aに対して110〜125nm/sの範囲であり、接着剤Bに対して60〜65nm/sの範囲であった。従って、比較例1(接着剤Aに対して103nm/s、接着剤Bに対して55nm/s)より良好な溶解速度が示された。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明に係る剥離用組成物によれば、加熱工程後の接着剤であっても好適に剥離できるので、半導体ウェハー又はチップの加工に好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の実施例及び比較例の剥離用組成物による接着剤の溶解時間を示す図である。
【図2】本発明の実施例及び比較例の剥離用組成物による接着剤の溶解時間を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着剤を剥離するための剥離用組成物であって、
ケトン系溶剤及び非イオン系界面活性剤のうちの少なくとも一方を含むことを特徴とする剥離用組成物。
【請求項2】
上記ケトン系溶剤が2−ヘプタノンであることを特徴とする請求項1に記載の剥離用組成物。
【請求項3】
酢酸エステルをさらに含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の剥離用組成物。
【請求項4】
上記酢酸エステルが、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸n−プロピル、酢酸n−ブチル、アセト酢酸メチル及びアセト酢酸エチルのうちの少なくとも一つであることを特徴とする請求項3に記載の剥離用組成物。
【請求項5】
上記非イオン系界面活性剤が、エーテル型非イオン系界面活性剤、エステル型非イオン系界面活性剤、エーテルエステル型非イオン系界面活性剤、及びポリエーテルポリオール型非イオン系界面活性剤からなる群より選択される少なくとも1種の界面活性剤であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の剥離用組成物。
【請求項6】
上記エーテル型非イオン系界面活性剤が、アルキルエーテル、アルキルアミノエーテル、アルキルアミドエーテル及びアルケニルフェニルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種の界面活性剤であることを特徴とする請求項5に記載の剥離用組成物。
【請求項7】
上記エステル型非イオン系界面活性剤が、グリセリン脂肪酸エステル及びソルビタン脂肪酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種の界面活性剤であることを特徴とする請求項5に記載の剥離用組成物。
【請求項8】
上記エーテルエステル型非イオン系界面活性剤が、脂肪酸エーテルエステル、植物油エーテルエステル及びソルビタンエーテルエステルからなる群より選択される少なくとも1種の界面活性剤であることを特徴とする請求項5に記載の剥離用組成物。
【請求項9】
上記非イオン系界面活性剤の濃度が100ppm以上10,000ppm以下であることを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の剥離用組成物。
【請求項10】
剥離対象である接着剤が、アクリル系接着剤であることを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載の剥離用組成物。
【請求項11】
剥離対象である接着剤が、200℃以上に加熱された後の接着剤であることを特徴とする請求項1〜10の何れか1項に記載の剥離用組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−149743(P2009−149743A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−327752(P2007−327752)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】