説明

接着剤組成物

【課題】初期接着性、耐候性、耐アルカリ性に優れ、安全性にも優れる、一液型の接着剤組成物を提供する。
【解決手段】ヒドロキシ基及び(メタ)アクリロイル基を少なくとも一つずつ有する化合物と、熱ラジカル重合開始剤と、さらに、(1)アミノ基含有シランカップリング剤で処理した無機充填剤、及び/又は(2)リン酸若しくはその塩の残基から選択される基及び(メタ)アクリロイル基を少なくとも一つずつ有する化合物を含有する接着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は接着剤組成物に関する。詳細には、本発明は、硬化後の耐候性、耐アルカリ性に優れる接着剤組成物に関する。
本発明の接着剤組成物は上述の性能に優れることにより、例えば車両構造接着用、土木建築用など、耐候性、耐アルカリ性が特に要求される分野において有用である。
【背景技術】
【0002】
エポキシ系の構造接着剤は、初期接着性が非常に高く、一般に耐水性・耐湿性・耐薬品性・電気絶縁性などに優れ、さらに被着材の種類を選ぶことなく接着強度や耐熱性にも優れ、宇宙・航空機をはじめとし、土木建築、電機電子部品、自動車など、高い信頼性が求められる分野で幅広く用いられている。
【0003】
エポキシ系接着剤は、その形態として一液型、二液型に分類される。
湿気硬化型の一液型は、完全に硬化するまでに一般に24時間以上を必要とし、一方、二液型は硬化時間は短いものの、硬化剤の臭気や毒性、刺激性など安全性に問題がある場合が多く、さらに、使用時に混合する手間や特別な塗布機が必要になるだけでなく、混合割合や分散度合いの変化によって性能にバラつきが生ずる点、一旦混合したものは使い切る必要性があることから無駄が多い点などの欠点もある。
さらに、そもそもエポキシ系接着剤は一般に耐候性に劣り、黄変しやすく、屋外使用に不向きとされており、また、アルカリ性の水分に侵され易いことから、コンクリート等のアルカリ性素材の接着にも不向きとされている。
【0004】
一方、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂並びに熱可塑性樹脂(ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂等)の強化材料(充填剤や接着性向上剤など)としては、従来よりシランカップリング剤と無機材料との組み合わせ、例えばシランカップリング剤により表面処理を施されたシリカやゼオライト等の無機材料が用いられている。
例えば、アミノ基含有シランカップリング剤による処理を行った、マテリアルリサイクル時に樹脂の粘度上昇を防止することができる、シートモールディングコンパウンド用無機充填材(特許文献1)、アミノ系シランカップリング剤とエポキシ系シランカップリング剤を組合せて無機充填剤を処理することにより、有機材料と無機材料との界面の接着強度と耐水性を大幅に向上させ、該充填剤で強化された合成樹脂成形物の機械的強度、耐水性、耐熱性、耐水性の向上を目指した無機充填剤(特許文献2)、エポキシ樹脂組成物への添加剤として優れた接着性向上剤として機能し、密着性、機械的特性が要求されるエポキシ樹脂組成物への応用が可能な、メラミン化合物とアミノ基含有シランカップリング剤を反応させて得られる新規な有機ケイ素化合物(特許文献3)、アミノ基等を含有するシランカップリング剤で表面処理したゼオライトよりなる、ゴムや合成樹脂等の補強充填剤(特許文献4)、ケイ酸塩化合物の表面をアミノシランカップリング剤で処理した補強充填剤を添加した白色ゴム(特許文献5)、などの各種の材料が提案されている。
【0005】
さらに無機材料とシランカップリング剤の組み合わせは、接着剤又は接着性樹脂組成物の一成分としての提案もなされており、例えば、タイルと接着剤との界面の接着性の向上を目的としたエポキシ基を有するアクリル樹脂と可塑剤とからなるアクリル樹脂プラスチゾルとアミノ基含有シランカップリング剤を配合してなるユニットタイル用接着剤(特許文献6)、慣用の接着性樹脂組成物成分(エポキシ樹脂等)、並びに、アミノ基等を含有するシランカップリング剤で表面処理を施したシリカ微粒子を含む、高い粘度と接着強度の実現と粘度の経時変化を抑えることを目的とした接着性樹脂組成物(特許文献7)等の提案が知られている。
【特許文献1】特開2006−231641号公報
【特許文献2】特開2005−248169号公報
【特許文献3】特開2004− 10487号公報
【特許文献4】特開平11−217463号公報
【特許文献5】特開平 9− 232号公報
【特許文献6】特開2003− 73642号公報
【特許文献7】特開平10−287854号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の通り、これまで提案されたエポキシ系の構造接着剤において、接着性強度、硬化時間の短縮、耐候性・耐アルカリ性等、様々な性能を一様に満足させるものはなく、特に従来品の良好な初期接着性を維持しつつ、耐候性・耐アルカリ性における更なる改善が求められていた。
【0007】
本発明は上記問題点を鑑みてなされたものであって、初期接着性、耐候性、耐アルカリ性に優れ、安全性にも優れる、一液型の接着剤組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、熱硬化性接着剤組成物の成分として、アミノ基含有シランカップリング剤で表面処理した無機充填剤及び/又はリン酸基を有する化合物を採用することにより、二液型エポキシ系接着剤以上の耐アルカリ性を有する接着剤組成物が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち本発明は、ヒドロキシ基及び(メタ)アクリロイル基を少なくとも一つずつ有する化合物と、熱ラジカル重合開始剤と、さらに、(1)アミノ基含有シランカップリング剤で処理した無機充填剤、及び/又は(2)リン酸若しくはその塩の残基から選択される基及び(メタ)アクリロイル基を少なくとも一つずつ有する化合物を含有する接着剤組成物に関する。
【0010】
さらに本発明は、上述の化合物に加え、更に、アクリル系高分子化合物、それらの架橋微粒子、ポリビニルアセタール及びポリ酢酸ビニルからなる群から選択される少なくとも一種以上を含有する接着剤組成物に関する。
【0011】
本発明の接着剤組成物において、前記ヒドロキシ基及び(メタ)アクリロイル基を少なくとも一つずつ有する化合物が、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート及び4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも一種以上であることが望ましい。
【0012】
また、本発明の接着剤組成物において、前記成分(1)の無機充填剤に処理するアミノ基含有シランカップリング剤が、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、及び、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩からなる群から選択される少なくとも一種以上であることが望ましい。
【0013】
さらに本発明の接着剤組成物において、前記成分(2)のリン酸若しくはその塩の残基から選択される基及び(メタ)アクリロイル基を少なくとも一つずつ有する化合物が、アシッドホスホオキシエチル(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシプロピル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−アシッドホスホオキシプロピル(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、並びにこれら化合物とモノエタノールアミン、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート又はジメチルアミノエチル(メタ)アクリエートとからなる塩からなる群から選択される少なくとも一種類以上であることが望ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の接着剤組成物は、ヒドロキシ基及び(メタ)アクリロイル基を少なくとも一つずつ有する化合物を粘着基剤とし、さらに熱ラジカル重合開始剤に加え、(1)アミノ基含有シランカップリング剤で処理した無機充填剤、(2)リン酸若しくはその塩の残基から選択される基及び(メタ)アクリロイル基を少なくとも一つずつ有する化合物のうち少なくとも一方を含有させることにより、初期接着性に優れ、且つ、アルカリ温水による劣化やUV照射による変色の低減を可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の接着剤組成物は、(A)ヒドロキシ基及び(メタ)アクリロイル基を少なくとも一つずつ有する化合物、(B)熱ラジカル開始剤、さらに(C)−(1)アミノ基含有シランカップリング剤で処理した無機充填剤、及び/又は(C)−(2)リン酸若しくはその塩の残基から選択される基及び(メタ)アクリロイル基を少なくとも一つずつ有する化合物を含み、さらに所望により(D)アクリル系高分子化合物、それらの架橋微粒子、ポリビニルアセタール及びポリ酢酸ビニルからなる群から選択される少なくとも一種以上の化合物、さらに(E)その他添加剤を含み得る組成物である。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0016】
(A)ヒドロキシ基及び(メタ)アクリロイル基を少なくとも一つずつ有する化合物
本発明の接着剤組成物に用いる上記化合物の具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタアクリレートなどが挙げられる。
これらの化合物の中でも、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが特に好ましく、二種以上の化合物を組み合わせ用いてもよい。
【0017】
(B)熱ラジカル重合開始剤
本発明の接着剤組成物に用いる熱ラジカル重合開始剤としては、例えばアゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル、アゾビスイソブチルアミジン塩酸塩、アゾビスシアノ吉草酸などのアゾ系開始剤、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウムなどの過硫酸塩系開始剤、過酸化ベンゾイル、クメンヒドロパーオキシド、ラウリルパーオキシドなどの過酸化物系開始剤、過硫酸アンモニウム−亜硫酸アナトリウムなどのレドックス系開始剤などが挙げられる。
なお、使用する開始剤の種類に応じて本発明の接着剤組成物の硬化温度は種々に変化し
得、例えば過酸化ベンゾイルを重合開始剤として用いた場合、120℃で30分程度の加熱により硬化が完了する。
【0018】
これら重合開始剤の使用量は、(A)ヒドロキシ基及び(メタ)アクリロイル基を少なくとも一つずつ有する化合物100質量部当たり、0.01乃至10質量部、好ましくは0.05乃至3質量部の範囲で選択される。
【0019】
(C)−(1)アミノ基含有シランカップリング剤で処理した無機充填剤
本発明の接着剤組成物に用いるアミノ基含有シランカップリング剤は下記に示すカップリング剤を用いて無機充填剤を処理したものを用いることができる。
【0020】
[無機充填剤]、
本発明の接着剤組成物に用いる、アミノ基含有シランカップリング剤で処理される無機充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、シリカ、カオリン、焼成カオリン、クレー、焼成クレー、タルク、焼成タルク、ヒドロタルサイト、ワラストナイト、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物、酸化チタン、亜鉛華などの金属酸化物、ガラス粉末、シリカバルーン又はシラスバルーン、マイカ、クレー、硫酸バリウム、天然ケイ酸、カーボンブラックなどを挙げることができる。
【0021】
[アミノ基含有シランカップリング剤]
上記無機充填剤を処理するシランカップリング剤としては、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、又は、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩などを挙げることができ、これらの化合物のうち少なくとも一種以上を選択して使用される。
【0022】
[無機充填剤のアミノ基含有シランカップリング剤による処理法]
これらアミノ基含有シランカップリング剤は、一般に実施されている表面処理法によって前記無機充填剤の表面を処理可能であり、無機充填剤に対して好ましくは0.5乃至5質量%の割合にて加熱処理することにより、前記アミノ基含有シランカップリング剤で処理した無機充填剤を得ることができる。
【0023】
本発明の接着剤組成物において、上記アミノ基含有シランカップリング剤で処理した無機充填剤は二種以上を使用することもできる。
本発明の接着剤組成物における上記アミノ基含有シランカップリング剤で処理した無機充填剤の配合量は特に限定されないが、好ましくは、(A)ヒドロキシ基及び(メタ)アクリロイル基を少なくとも一つずつ有する化合物100質量部あたり、200質量部以下で配合される。200質量部を超えると硬化物が脆くなる傾向がある。
なお後述するリン酸若しくはその塩の残基から選択される基及び(メタ)アクリロイル基を少なくとも一つずつ有する化合物を用いない場合、アミノ基含有シランカップリング剤で処理した無機充填剤は、前記(A)の化合物100質量部あたり、最低10質量部使用することが望ましい。
【0024】
(C)−(2)リン酸若しくはその塩の残基から選択される基及び(メタ)アクリロイル基を少なくとも一つずつ有する化合物
本発明の接着剤組成物において、前記成分(2)のリン酸及びその塩の残基から選択される基及び(メタ)アクリロイル基を少なくとも一つずつ有する化合物としては、アシッ
ドホスホオキシエチル(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシエチルジ(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシプロピル(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシプロピルジ(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−アシッドホスホオキシプロピル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−アシッドホスホオキシプロピルジ(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート並びにこれら化合物とモノエタノールアミン、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート又はジメチルアミノエチル(メタ)アクリエートとからなる塩を挙げることができる。
【0025】
上記化合物のうち、特に好ましい化合物として、アシッドホスホオキシエチル(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシプロピル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−アシッドホスホオキシプロピル(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、並びにこれら化合物とモノエタノールアミン、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート又はジメチルアミノエチル(メタ)アクリエートとからなる塩が挙げられ、これらを二種以上併用してもよい。
【0026】
本発明の接着剤組成物において、上記化合物の配合量は特に限定されないが、効果面及びコスト面を勘案して、(A)ヒドロキシ基及び(メタ)アクリロイル基を少なくとも一つずつ有する化合物100質量部当たり、20質量部以下で配合することが好ましい。
なお前述のアミノ基含有シランカップリング剤で処理した無機充填剤を用いない場合、リン酸若しくはその塩の残基から選択される基及び(メタ)アクリロイル基を少なくとも一つずつ有する化合物は、前記(A)の化合物100質量部あたり、最低0.5質量部使用することが望ましい。
【0027】
(D)アクリル系高分子化合物及び/又はそれらの架橋微粒子、ポリビニルアセタール、ポリ酢酸ビニル
本発明の接着剤組成物は、アクリル系高分子化合物及び/又はそれらの架橋微粒子、ポリビニルアセタール、ポリ酢酸ビニルなどを溶解、分散させることにより、強靭性の賦与や粘度調整を行うことが可能となる。
【0028】
アクリル系高分子化合物としては、特に限定されないが、例えばメチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレートなどの(共)重合体が挙げられ、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、アクリル酸などとの共重合体や、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートなどの多官能(メタ)アクリレートなどで架橋を行い微粉末化させたものも使用可能である。
ポリビニルアセタールとしては、特に限定されないが、例えばポリビニルホルマール、ポリビニルブチラールを挙げることができる。
【0029】
本発明の接着剤組成物において、上記化合物の配合量は特に限定されないが、(A)ヒドロキシ基及び(メタ)アクリロイル基を少なくとも一つずつ有する化合物100質量部当たり、10質量部乃至30質量部で配合することが好ましい。
【0030】
(E)その他添加剤
本発明の接着剤組成物は、所望により、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、着色顔料等を含んでいてもよい。
【0031】
<接着剤組成物の製造方法>
本発明の接着剤組成物は、既知の方法により容易に製造することができる。
例えば、熱ラジカル重合開始剤以外成分を、ディソルバー、ヘンシェルミキサー等の高速撹拌機によって溶解分散を行った後、硬化温度より十分に低い温度にて熱ラジカル十号開始剤を添加し、均一に溶解分散させることで製造され得る。
【0032】
<接着剤組成物の使用方法>
本発明の接着剤組成物は、熱により硬化し、該組成物が塗布された、或いは該組成物を挟み込んだ対象物同士を接着し得る。
この際、加熱装置として一般に使用されるものを挙げることができ、例えば電気炉、赤外線ヒーター、電磁誘導加熱装置、面状ヒーター等を挙げることができる。
加熱温度は熱ラジカル重合開始剤の種類によって異なるが、80乃至180℃で10乃至30分間加熱することにより、接着剤組成物を硬化させる。
【実施例】
【0033】
以下、実施例を挙げて、本発明を更に詳しく説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものでない。
【0034】
下記表2及び表3に示す実施例1乃至17及び比較例1乃至9の処方に基づき、各成分を高速撹拌機で溶解分散させ、実施例及び比較例の接着剤組成物を得た。
なお成分a乃至mは以下の通りである。
【0035】
【表1】

【0036】
<せん断接着力(初期及びアルカリ温水劣化後)>
上記接着剤組成物を、二枚の磁器質タイルの間にそれぞれ挟み、赤外線ヒーターを用いて材料を120℃で30分間加熱し、硬化させた。
硬化させた組成物のせん断接着力を、初期、並びに、アルカリ温水浸漬後において、2
3℃雰囲気条件下にて、5mm/分の速度で測定した。なおアルカリ温水浸漬後の評価は、60℃飽和塩化カルシウム水溶液に上記接着タイルを48時間浸漬した後に実施した。
せん断接着力を下記の評価基準にて評価した。得られた結果を表2及び表3に示す。
[評価基準:せん断接着力]
◎・・・せん断接着力が20MPaより大きく、母材が100%破壊された。
○・・・せん断接着力が20MPaより大きかったが、一部接着破壊された。
×・・・せん断接着力が20MPaを下回った。
【0037】
<耐候性試験>
磁器質タイル上に上記接着剤組成物を塗布し、上記同様に加熱硬化させた後、岩崎電気(株)製SUV−W151を用いて、295〜450nm、90mW/cm2の紫外線を
200J/cm2で照射し、コニカミノルタセンシング(株)製SPECTROPHOT
O METER CM−2600dにてUV照射前後の色差(ΔE)を測定した。得られた結果を表2及び表3に示す。
【0038】
【表2】

【0039】
【表3】

【0040】
表2に示すとおり、実施例1乃至17の接着剤組成物は、初期接着力及びアルカリ温水浸漬後の接着力の何れも20MPaを超え、エポキシ樹脂系接着剤の場合(約20MPaの母材破壊)と同程度の接着力を有し、構造接着剤として十分な強度とアルカリ耐性を有することを示した。
またUV照射による耐候性試験においても、エポキシ樹脂系接着剤の場合(およそΔE=10)と異なり、良好な耐候性を示した。
【0041】
一方、表3に示すとおり、アミノ基含有シランカップリング剤で処理した無機充填剤、又は、リン酸若しくはその塩の残基から選択される基及び(メタ)アクリロイル基を少なくとも一つずつ有する化合物のいずれをも含まない比較例1乃至3は、初期接着性及びアルカリ温水浸漬後の接着力のいずれをも満足する結果は得られなかった。
また、アミノ基含有シランカップリング剤で処理した無機充填剤に代え、該カップリング剤による処理を行わない無機充填剤(シリカまたはタルク)を用いた比較例4乃至9においても、初期接着性及びアルカリ温水浸漬後の接着力のいずれをも満足する結果は得られなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロキシ基及び(メタ)アクリロイル基を少なくとも一つずつ有する化合物と、熱ラジカル重合開始剤と、さらに、
(1)アミノ基含有シランカップリング剤で処理した無機充填剤、及び/又は
(2)リン酸若しくはその塩の残基から選択される基及び(メタ)アクリロイル基を少なくとも一つずつ有する化合物
を含有する接着剤組成物。
【請求項2】
更に、アクリル系高分子化合物、それらの架橋微粒子、ポリビニルアセタール及びポリ酢酸ビニルからなる群から選択される少なくとも一種以上を含有する、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記ヒドロキシ基及び(メタ)アクリロイル基を少なくとも一つずつ有する化合物が、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート及び4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも一種以上である、請求項1又は2記載の組成物。
【請求項4】
前記成分(1)の無機充填剤に処理するアミノ基含有シランカップリング剤が、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、及び、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩からなる群から選択される少なくとも一種以上である、請求項1乃至3のうちいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記成分(2)のリン酸若しくはその塩の残基から選択される基及び(メタ)アクリロイル基を少なくとも一つずつ有する化合物が、アシッドホスホオキシエチル(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシプロピル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−アシッドホスホオキシプロピル(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、並びにこれら化合物とモノエタノールアミン、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート又はジメチルアミノエチル(メタ)アクリエートとからなる塩からなる群から選択される少なくとも一種類以上である、請求項1乃至4に記載の組成物。


【公開番号】特開2008−222954(P2008−222954A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−66556(P2007−66556)
【出願日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(000004020)ニチバン株式会社 (80)
【Fターム(参考)】