説明

接着剤組成物

【課題】比較的低温(室温〜60℃)で酸素による重合阻害を受けがたく優れた硬化性を有するアクリル接着剤の提供。
【解決手段】分子中に下記構造式で示される化学構造


(ここで、R1は水素原子またはメチル基、R2は水素原子、炭素原子数4〜12個のアルキル基、アルキル基の炭素原子数2〜6個のヒドロキシアルキル基、または、アルキル基の炭素原子数2〜6個のメトキシアルキル基、xはモル分率を表し、0.40〜0.998である。)およびジアクリル系モノマーからなるアクリル樹脂を含む接着剤組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラジカル重合反応により硬化し、強靱な接着力を発揮する接着剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
“にかわ”等で知られているとおり、接着剤は、太古の昔から身近な存在である。接着剤は、ポリ酢酸ビニル接着剤やゴム糊などのように、溶媒が蒸発することで接着機能を発揮するものから、エポキシ樹脂接着剤のように主剤と硬化剤を混合し、加熱等により三次元架橋を起こさせてより強靱な接着力や耐熱性、耐薬品性を発揮するものもある。
【0003】
近年、接着をより低温短時間で行おうとする試みがなされている。この接着剤は、レドックス系の重合開始剤を用いるラジカル硬化型接着剤であり、第二世代接着剤(SGA)として広く知られる。
【0004】
SGAは、通常、塩素化ポリエチレンなどのゴム高分子をメタクリル酸メチルなどのアクリル単量体に分散または溶解し、さらにエチレングリコールジメタクリレートなどの架橋性モノマーを加え、レドックス重合開始剤で硬化される。レドックス重合開始剤は、例えば、過酸化ベンゾイル/N,N−ジメチル−p−トルイジンなどの有機過酸化物(酸化剤)とアミン化合物(還元剤)との組み合わせ、クメンヒドロペルオキシド/オクチル酸コバルトなどのヒドロペルオキシド化合物(酸化剤)と金属石鹸(還元剤)との組み合わせなどがよく知られており、一般に室温〜100℃でラジカル硬化反応を開始する硬化系として知られている。
【0005】
SGAは、低温短時間硬化で、比較的良好な接着強度を示すことから航空機などに使用する構造接着剤として広く認知されている。欠点としては、アクリル単量体特有の悪臭が強いこと、硬化時の収縮が大きいこと、発熱量が大きくプラスチックなどに適用した場合ひけ等の影響で表面に欠陥が出やすいこと、酸素による硬化阻害の影響を受けやすく時として硬化が不十分となり接着不良を起こす場合があることなどが挙げられる。
【0006】
分子中に、−OC(O)C(R)=CHを有するアクリルポリマーとレドックス系重合開始剤とからなる接着剤組成物が示されている(特許文献1参照)。特許文献1で提案されている技術は、アクリル単量体の原子移動ラジカル重合に関するものであり、その応用として接着剤組成物が示されている。
【0007】
特許文献1で提案されている技術に示されているような柔軟なアクリルポリマーは、ポリエチレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン等のゴム弾性を有する高分子に比しポリマーの凝集力が小さい。したがって、柔軟なアクリルポリマーを主成分とする接着剤は、例えば、引張り試験でだらだらと伸張するだけで、応力は小さい。すなわち、接着剤の機械的強度が不足する。
【0008】
特許文献1で提案されている技術の実施例には、接着剤の接着力評価としてよく実施されるアルミニウム合金−アルミニウム合金のシングルラップ接着性試験結果が示されている。実施例に見られるとおり剪断接着力が10MPa(剪断接着力の最大値は6.65MPa)を超えるものはなく、構造接着剤としては、剪断接着力が小さい。
【0009】
過酸化ベンゾイル/アミン系に代わるレドックス硬化系の紹介がなされている(非特許文献1参照)。紹介されている技術は、酸化剤として塩化第一銅(Cu(I)Cl)を用い、還元剤として1,3,5−トリメチルバルビツール酸を用いるものである。この組み合わせでは、酸素による重合阻害を大きく受け、硬化不良を起こしやすい。また、本開始系は硬化性が悪い。
【特許文献1】特開2006−299257号公報
【非特許文献1】平林茂、奈須郁代、原嶋郁郎、平澤忠、「歯科用メタクリルレジンに関する研究;(第9報)加熱重合レジン、ヒートショックレジン、流し込みレジンおよび常温重合レジンの組成について」、歯科材料・器械(Journal of the Japanese Society for Dental Materials and Devices)、Vol13.No.3(19840525),pp338-349.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の接着剤組成物は、低臭気、低刺激性で、酸素による重合阻害を受けがたく、比較的低温(室温〜80℃)での硬化性に優れた接着剤であることを目的とする。
【0011】
本発明の接着剤組成物は、さらに、機械的強度に優れ、アルミニウム合金、鉄等の金属、ABS樹脂、ポリプロピレンアロイ、ポリエステル樹脂等の熱可塑性プラスチック、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル等の熱硬化性樹脂等、被着体を問わず優れた接着力を発揮することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、分子中に下記構造式で示される化学構造
【0013】
【化1】

【0014】
(ここで、R1は、水素原子またはメチル基、R2は、水素原子、炭素原子数2〜12個のアルキル基、アルキル基の炭素原子数2〜6個のヒドロキシアルキル基、または、アルキル基の炭素原子数2〜6個のメトキシアルキル基、xは、モル分率を表し、0.40〜0.998である。)
および、下記構造式で示される化学構造
【0015】
【化2】

【0016】
(ここで、R3、R6は、水素原子またはメチル基、R4は、炭素原子数2〜6個のアルキル基、R5は、炭素原子数2〜4個のアルキル基、yは、モル分率を表し、0.002〜0.60である。)
を有するアクリル樹脂を含む接着剤組成物である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の接着剤組成物は、酸素による重合阻害を受けがたく比較的低温(室温〜60℃)で優れた硬化反応性を示す接着剤組成物である。本発明の接着剤組成物は、低臭気、低刺激性である。
【0018】
本発明の接着剤組成物は、プラスチック、熱硬化性樹脂、金属等、被着体の種類を選ばず良好な接着性を有する。本発明の接着剤組成物は、特に、アルミニウム合金、鉄等の金属、ABS樹脂、ポリプロピレンアロイ、ポリエステル樹脂等の熱可塑性プラスチック、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル等の熱硬化性樹脂等に優れた接着力を発揮する
本発明の接着剤組成物は、硬軟問わず設計が可能であり、構造用接着剤として使用されるエポキシ樹脂接着剤同等以上の性能から、汎用接着剤やシーリング材として使用されるポリウレタン接着剤に匹敵する柔軟性を有するものまで幅広く設計が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は、分子中に下記構造式で示される化学構造
【0020】
【化3】

【0021】
(ここで、R1は、水素原子またはメチル基、R2は、水素原子、炭素原子数2〜12個のアルキル基、アルキル基の炭素原子数2〜6個のヒドロキシアルキル基、または、アルキル基の炭素原子数2〜6個のメトキシアルキル基、xはモル分率を表し、0.40〜0.998である。)
および、下記構造式で示される化学構造
【0022】
【化4】

【0023】
(ここで、R3、R6は、水素原子またはメチル基、R4は、炭素原子数2〜6個のアルキル基、R5は、炭素原子数2〜4個のアルキル基、yは、モル分率を表し、0.002〜0.60である。)
を有するアクリル樹脂を含む接着剤組成物である。
【0024】
本発明は、好ましくは、分子主鎖に下記構造式で示される化学構造
【0025】
【化5】

【0026】
(ここで、R1は、水素原子またはメチル基、R2は、水素原子、炭素原子数2〜12個のアルキル基、アルキル基の炭素原子数2〜6個のヒドロキシアルキル基、または、アルキル基の炭素原子数2〜6個のメトキシアルキル基、xは、モル分率を表し、0.40〜0.998である。)
および、下記構造式で示される化学構造
【0027】
【化6】

【0028】
(ここで、R3、R6は、水素原子またはメチル基、R4は、炭素原子数2〜6個のアルキル基、R5は、炭素原子数2〜4個のアルキル基、yは、モル分率を表し、0.002〜0.60である。)
を有するアクリル樹脂を含む接着剤組成物である。
【0029】
本発明の接着剤組成物では、分子中に含まれる下記構造式で示される化学構造は、
【0030】
【化7】

【0031】
(ここで、R1は、水素原子またはメチル基、R2は、水素原子、炭素原子数2〜12個のアルキル基、アルキル基の炭素原子数2〜6個のヒドロキシアルキル基、または、アルキル基の炭素原子数2〜6個のメトキシアルキル基、xはモル分率を表し、0.40〜0.998である。)
は、R2は、好ましくは、カルボキシル基、エチル基、n−ブチル基、イソブチル基、ターシャリーブチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−ヒドロキシエチル基、4−ヒドロキシブチル基、2−メトキシエチル基、4−メトキシブチル基であり、より好ましくは、カルボキシル基、エチル基、n−ブチル基、2−ヒドロキシエチル基、4−ヒドロキシブチル基、2−メトキシエチル基である。
【0032】
本発明の接着剤組成物では、分子中に含まれる下記構造式で示される化学構造ユニットは、
【0033】
【化8】

【0034】
(ここで、R1は、水素原子またはメチル基、R2は水素原子、炭素原子数2〜12個のアルキル基、アルキル基の炭素原子数2〜6個のヒドロキシアルキル基、または、アルキル基の炭素原子数2〜6個のメトキシアルキル基、xは、モル分率を表し、0.40〜0.998である。)
アクリル樹脂製造時に、例えば、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ターシャリーブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ターシャリーブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル等の(メタ)アクリル酸アルキル単量体、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボキシル基含有アクリル単量体、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル等の水酸基含有アクリル単量体、アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸3−メトキシプロピル、アクリル酸4−メトキシブチル、メタクリル酸2−メトキシエチル、メタクリル酸3−メトキシプロピル、メタクリル酸4−メトキシブチル等のアルコキシアルキル基含有アクリル単量体等を使用することにより導入できる。本発明の接着剤組成物では、これらのアクリル単量体は単独で使用しても、2種類以上の混合物で使用してもよい。
【0035】
本発明の接着剤組成物では、下記構造式で示される化学構造
【0036】
【化9】

【0037】
(ここで、R1は水素原子またはメチル基、R2は水素原子、炭素原子数2〜12個のアルキル基、アルキル基の炭素原子数2〜6個のヒドロキシアルキル基、または、アルキル基の炭素原子数2〜6個のメトキシアルキル基、xはモル分率を表し、0.40〜0.998である。)
のモル分率xは、0.40〜0.998であり、好ましくは、0.50〜0.995、より好ましくは、0.60〜0,995であることが望ましい。本発明の接着剤組成物では、モル分率xが0.40未満の場合には、接着剤が脆くなり、接着強度が発現されない。モル分率が0.998を超える場合には、接着剤の硬化性が悪くなり接着剤の機械的強度、接着力が発揮されない。
【0038】
本発明の接着剤組成物では、分子中に含まれる下記構造式で示される化学構造は、好ましくは、
【0039】
【化10】

【0040】
(ここで、R3、R6は、水素原子またはメチル基、R4は、炭素原子数2〜6個のアルキル基、R5は炭素原子数2〜4個のアルキル基、yはモル分率を表し、0.002〜0.60である。)
分子中に、下記構造式で示される化学構造
【0041】
【化11】

【0042】
(ここで、R1は、水素原子またはメチル基、R2は水素原子、炭素原子数2〜12個のアルキル基、アルキル基の炭素原子数2〜6個のヒドロキシアルキル基、または、アルキル基の炭素原子数2〜6個のメトキシアルキル基を表す。)
を有する分子側鎖に水酸基を有するアクリル共重合体を製造した後、下記構造式で示される、好ましくは、イソシアネート基含有アクリル単量体
【0043】
【化12】

【0044】
(ここで、R6は、水素原子またはメチル基、R5は、炭素原子数2〜4個のアルキル基を表す。)
を分子側鎖の水酸基と付加反応することにより導入できる。
【0045】
本発明の接着剤組成物では、分子側鎖に水酸基を有するアクリル共重合体に使用される水酸基含有アクリル単量体は、アクリル共重合体の製造に使用されるアクリル単量体総量を1.0モルとして、好ましくは0.0005〜0.85モル、より好ましくは0.001〜0.80モル、さらに好ましくは0.002〜0.80モル使用されるのが望ましい。
【0046】
本発明の接着剤組成物では、下記構造式で示される化学構造
【0047】
【化13】

【0048】
(ここで、R3、R6は水素原子またはメチル基、R4は炭素原子数4〜6個のアルキル基、R5は炭素原子数2〜4個のアルキル基、yはモル分率を表し、0.002〜0.60である。)
のyの値が0.002〜0.60であり、好ましくは、0.05〜0.50、より好ましくは、0.05〜0.45である。
【0049】
本発明の接着剤組成物では、yの値が0.002未満の場合には、接着剤の硬化性が悪く、十分な接着力が発揮されない。yの値が0.60を超える場合には、接着剤の保存安定性が悪く、また接着剤が硬く、脆くなって接着力が悪化する。
【0050】
本発明の接着剤組成物では、アクリル樹脂が、好ましくは、分子中に下記構造式で示される化学構造
【0051】
【化14】

【0052】
(ここで、R7は水素原子、炭素原子数2〜12個のアルキル基、炭素原子数2〜6個のヒドロキシアルキル基、または、アルキル基の炭素原子数2〜6個のメトキシアルキル基を表す。)
を有するものであることが望ましく、R7は、好ましくは、エチル基、n−ブチル基、イソブチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−ヒドロキシエチル基、4−ヒドロキシブチル基、2−メトキシエチル基、3−メトキシプロピル基、4−メトキシブチル基であり、より好ましくは、エチル基、n−ブチル基、2−エチルヘキシル基、2−ヒドロキシエチル基、4−ヒドロキシブチル基、2−メトキシエチル基である。
【0053】
本発明の接着剤組成物では、アクリル樹脂が、下記構造式で示される化学構造
【0054】
【化15】

【0055】
(ここで、R7は水素原子、炭素原子数2〜12個のアルキル基、炭素原子数2〜6個のヒドロキシアルキル基、または、アルキル基の炭素原子数2〜6個のメトキシアルキル基を表す。)
を有すると、接着剤のエントロピー弾性が大きくなり、強靱で接着力の強い接着剤となる傾向が見られる。
【0056】
本発明の接着剤組成物では、分子中に下記構造式で示される化学構造は、
【0057】
【化16】

【0058】
(ここで、R7は、水素原子、炭素原子数2〜12個のアルキル基、炭素原子数2〜6個のヒドロキシアルキル基、または、アルキル基の炭素原子数2〜6個のメトキシアルキル基を表す。)
好ましくは、例えば、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ターシャリーブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル等のアクリル酸アルキルエステル、アクリル酸等のカルボキシル基含有アクリル単量体、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル等の水酸基含有アクリル単量体、アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸3−メトキシプロピル、アクリル酸4−メトキシブチル等のアルコキシアルキル基含有アクリル単量体を、アクリル樹脂製造時に使用することで導入できる。
【0059】
本発明の接着剤組成物では、好ましくは、下記構造式のジシクロペンタジエニル基含有アクリル単量体
【0060】
【化17】

【0061】
(ここで、R8は、水素原子またはメチル基、aは0または1〜4の整数を表す。)
を含むことができる。
【0062】
本発明の接着剤組成物では、好ましく使用されるジシクロペンタジエニル基含有アクリル単量体としては、ジシクロペンタニルオキシアクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチルアクリレート、ジシクロペンタニルオキシメタクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチルメタクリレートなどが例示される。本発明の接着剤組成物では、これらのジシクロペンタジエニル基含有アクリル単量体は単独で使用しても、2種類以上の混合物で使用してもよい。上市されているジシクロペンタジエニル基含有アクリル単量体としては、「FANCRYL FA−511AS」、「FANCRYL FA−512M」(以上、日立化成工業の製品)等が例示される。
【0063】
本発明の接着剤組成物では、本発明で好ましく使用されるジシクロペンタジエニル基含有アクリル単量体は、接着剤の硬化性を改善し、ことさら酸素による硬化阻害を抑制して鉄、アルミニウム合金、銅等の金属、および、ポリプロピレンアロイ、ナイロン、ABS樹脂等のプラスチック類、への接着力を向上する傾向が見られる。
【0064】
本発明の接着剤組成物では、本発明で好ましく使用されるジシクロペンタジエニル基含有アクリル単量体は、接着剤組成物の100重量%中に、好ましくは、0.2〜95重量%、より好ましくは、1〜95重量%、さらに好ましくは、3〜85重量%使用されるのが望ましい。本発明の接着剤組成物では、本発明で好ましく使用されるジシクロペンタジエニル基含有アクリル単量体の使用量が0.2〜95重量%のとき、接着剤の硬化性、酸素による重合阻害の抑制、接着力にバランスがとれ、望ましい。
【0065】
本発明の接着剤組成物では、好ましくは、下記構造式のエチレンオキサイド変性エポキシアクリレート
【0066】
【化18】

【0067】
(ここで、R9、R10は水素原子またはメチル基、bは1〜10の整数、cは1〜10の整数を表す。)
を含むことができる。
【0068】
本発明の接着剤組成物では、本発明で好ましく使用されるエチレンオキサイド変性エポキシアクリレートとしては、上市されているものとして、例えば、「NKエステルBPE−100」、「NKエステルBPE−200」、「NKエステルBPE−300」、「NKエステルBPE−500」、「NKエステルBPE−1300N」、「NKエステルABE−300」、「NKエステルA−BPE−4」、「NKエステルA−BPE−10」(以上、新中村化学の製品)、「アロニックスM−210」(以上、東亞合成の製品)、「FANCRYL FA−321A」、「FANCRYL FA−324A」、「FANCRYL FA−320M」、「FANCRYL FA−321M」、「FANCRYL FA−3218M」(以上、日立化成工業の製品)等が例示される。本発明の接着剤組成物では、これらのエチレンオキサイド変性エポキシアクリレートは単独で使用しても、2種類以上の混合物で使用してもよい
本発明の接着剤組成物では、本発明で好ましく使用されるエチレンオキサイド変性エポキシアクリレートは、本発明で好ましく使用されるジシクロペンタジエニル基含有アクリル単量体と同様に、接着剤の硬化性を改善し、鉄、アルミニウム合金、銅等の金属、および、ポリプロピレンアロイ、ナイロン、ABS樹脂等のプラスチック類、への接着力を向上する傾向が見られる。
【0069】
本発明の接着剤組成物では、本発明で好ましく使用されるエチレンオキサイド変性エポキシアクリレートは、接着剤組成物100重量%中に、好ましくは、2〜50重量%、より好ましくは、3〜45重量%、さらに好ましくは、5〜40重量%使用されるのが望ましい。本発明の接着剤組成物では、本発明で好ましく使用されるエチレンオキサイド変性エポキシアクリレートの使用量が2〜50重量%のとき、接着剤の硬化性、酸素による重合阻害の抑制、接着力にバランスがとれ、望ましい。
【0070】
本発明の接着剤組成物では、アクリル酸メチル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸イソボルニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸イソボルニル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート等のシクロペンタジエニル系(メタ)アクリル酸エステル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の水酸基含有アクリル単量体、アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、アクリル酸N,N−ジエチルアミノエチル、メタクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、メタクリル酸N,N−ジエチルアミノエチル等のアミノ基含有アクリル単量体、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド等のアミド基含有アクリル単量体、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン基含有アクリル単量体等のアクリル単量体が使用されてもよい。これらのアクリル単量体は単独で使用しても、2種類以上の混合物で使用してもよい。
【0071】
本発明の接着剤組成物では、本発明で使用されるアクリル樹脂は、好ましくは以下のように製造されるのが望ましい。
【0072】
すなわち、本発明の接着剤組成物では、好ましくは、下記構造式のα−メチルスチレンダイマー
【0073】
【化19】

【0074】
の1モルに対し、重合開始剤を0.1〜1.0モル使用し、下記構造式のアクリル単量体
【0075】
【化20】

【0076】
(ここで、R1は水素原子またはメチル基、R2は水素原子、炭素原子数2〜12個のアルキル基、アルキル基の炭素原子数2〜6個のヒドロキシアルキル基、または、アルキル基の炭素原子数2〜6個のメトキシアルキル基を表す。)
を、好ましくは、塊状ラジカル共重合し、分子側鎖に水酸基を有するアクリル共重合体を製造した後、下記構造式のイソシアネート基含有アクリル単量体
【0077】
【化21】

【0078】
(ここで、R6は、水素原子またはメチル基、R5は、炭素原子数2〜4個のアルキル基を表す。)
を付加反応することにより製造するのが望ましい。
【0079】
ここで、塊状ラジカル重合に関しては、成書(例えば、「ラジカル重合ハンドブック」(エヌ・ティー・エス発行)、1999、p6,491,499,505,566)によるものとし、本発明の接着剤組成物でも、本定義、方法にしたがうものである。すなわち、本発明の接着剤組成物では、塊状ラジカル共重合とは、アクリル単量体やスチレンモノマー等のビニル基を有するモノマーのラジカル共重合を行う際に用いられる方法の一つである。溶媒を使用しないで、アクリル単量体やスチレンモノマー等のビニル基を有するモノマーだけをそのまま、あるいはアゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル等の重合開始剤を加えて、加熱して重合を行う方法である。
【0080】
本発明の接着剤組成物では、より好ましくは、イソシアネート基含有アクリル単量体は、分子側鎖に水酸基を有するアクリル共重合体の水酸基と付加反応し、下記構造式で示される化学構造
【0081】
【化22】

【0082】
(ここで、R3、R6は水素原子またはメチル基、R4は炭素原子数4〜6個のアルキル基、R5は炭素原子数2〜4個のアルキル基、yはモル分率を表し、0.002〜0.60である。)
を形成する。この場合、yの値が、0.002〜0.60となるよう、使用量が選択されるのが好ましい。yの値は、より好ましくは、0.05〜0.50、さらにより好ましくは、0.05〜0.45である。
【0083】
本発明の接着剤組成物では、上記の方法で製造される場合は、分子側鎖に水酸基を有するアクリル共重合体に使用される水酸基含有アクリル単量体のモル分率(A)を算出し、水酸基の何%(B)をイソシアネート基含有アクリル単量体と付加反応するかでyを求める。すなわち、本発明の接着剤組成物では、y=A×B/100の式にしたがい算出する。
【0084】
本発明の接着剤組成物では、イソシアネート基含有アクリル単量体としては、好ましくは、アクリル酸2−イソシアネートエチル、アクリル酸3−イソシアネートプロピル、アクリル酸4−イソシアネートブチル、メタクリル酸2−イソシアネートエチル、メタクリル酸3−イソシアネートプロピル、メタクリル酸4−イソシアネートブチル等が例示される。本発明の接着剤組成物では、これらのイソシアネート基含有アクリル単量体は単独で使用しても、2種類以上の混合物で使用してもよい。
【0085】
本発明の接着剤組成物では、イソシアネート基含有アクリル単量体としては、例えば、「カレンズMOI(メタクリル酸2−イソシアネートエチル)」(昭和電工の製品)等の上市されているものを任意に使用することができる。
【0086】
本発明の接着剤組成物では、本発明で使用されるアクリル樹脂の重量平均分子量は、好ましくは3000〜20万、より好ましくは、3000〜15万、さらに好ましくは、3000〜12万であることが推奨される。ここで、本発明の接着剤組成物では、アクリル樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)「HLC−8220 GPCシステム」(東ソーの測定装置)を使用して測定した。アクリル樹脂の重量平均分子量が3000〜20万であれば、強靱で強い接着力を発揮する構造接着剤から、強い接着力はそのままで柔軟で高い伸度特性を有し、耐衝撃性に優れる接着剤まで設計が可能となり望ましい。
【0087】
本発明の接着剤組成物では、接着剤を、好ましくは、3次元架橋し、接着剤の機械的強度を高め、接着力を向上するために、硬化剤として、好ましくは、有機過酸化物が使用される。本発明の接着剤組成物では、好ましく使用される有機過酸化物としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、クメンハイドロパーオキサイド、過酸化ベンゾイル等が例示される。本発明の接着剤組成物では、これらの有機過酸化物は単独で使用しても、2種類以上の混合物で使用してもよい(有機過酸化物に関する参考文献:15308の化学商品、化学工業日報社(2008)、p628−650)。
【0088】
本発明の接着剤組成物では、硬化剤として好ましく使用される有機過酸化物は、接着剤組成物100重量部に対し、好ましくは、0.02〜20重量部、より好ましくは0.2〜10重量部、さらに好ましくは0.1〜10重量部使用されるのが望ましい。本発明の接着剤組成物では、硬化剤として好ましく使用される有機過酸化物の使用量が0.02〜20重量部のとき、接着剤の硬化性がよく、比較的低温(室温〜40℃)、短時間(数分〜30分)で十分な接着強度を発揮する傾向が見られる。
【0089】
本発明の接着剤組成物では、接着剤を比較的低温(室温〜40℃)、短時間(数分〜30分)で十分な接着強度を発揮するように硬化させるために、好ましくは接着剤の硬化促進剤として、好ましくは、有機金属石鹸または金属錯体を使用することが推奨される。本発明の接着剤組成物では、本発明で好ましく使用される有機金属石鹸としては、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸マンガン、ナフテン酸鉄、ナフテン酸カルシウム、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸鉛、ナフテン酸銅、ナフテン酸マンガン、ナフテン酸バナジウム、オクチル酸コバルト、オクチル酸マンガン、オクチル酸鉄、オクチル酸カルシウム、オクチル酸亜鉛、オクチル酸鉛、オクチル酸銅、オクチル酸マンガン、オクチル酸バナジウム等が例示される。本発明の接着剤組成物では、これらの有機金属石鹸は単独で使用しても、2種類以上の混合物で使用してもよい。また、本発明の接着剤組成物では、本発明で好ましく使用される金属錯体としては、塩化第一鉄、塩化第二鉄、塩化第一銅、塩化第二銅などが例示される。これらの金属錯体は単独で使用しても、2種類以上の混合物で使用してもよい。
【0090】
本発明の接着剤組成物では、本発明で好ましく使用される有機金属石鹸または金属錯体は、本発明の接着剤組成物では、硬化促進剤として好ましく使用される有機金属石鹸または金属錯体は、接着剤組成物100重量部に対し、好ましくは、0.02〜20重量部、より好ましくは0.2〜10重量部、さらに好ましくは0.1〜10重量部使用されるのが望ましい。本発明の接着剤組成物では、硬化促進剤として好ましく使用される有機金属石鹸または金属錯体の使用量が0.02〜20重量部のとき、接着剤の硬化性がよく、比較的低温(室温〜40℃)、短時間(数分〜30分)で十分な接着強度を発揮する傾向が見られる。また、空気による硬化阻害を軽減できる傾向が見られる。
【0091】
本発明の接着剤組成物では、その他にも、増粘剤、チキソトロピー性付与剤、消泡剤、ヌレ剤等の各種添加剤、ガラス繊維、炭素繊維、モンモリロナイト等の各種補強フィラー類、炭酸カルシウム、チタン白、ガラス粉、シリカ粒子、アルミナ等の顔料、増量剤類、γ―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤等の種々、接着剤や塗料に一般的に配合されるものを配合することもできる。
【0092】
本発明の接着剤組成物の製造方法、接着方法は、以下のように例示できる。
【0093】
アクリル樹脂の所定量、および、必要に応じジシクロペンタジエニル基含有アクリル単量体、エチレンオキサイド変性エポキシアクリレート等の反応性希釈剤、架橋剤の所定量を混合容器に仕込み、均一になるまで混合する。泡立っている場合には、「マゼルスターKK−100」(クラボウ製の攪拌、混合、脱泡装置)等の脱泡装置により脱泡し、接着剤樹脂を製造する。
【0094】
(1) 被着体に接着剤を塗布する前に接着剤樹脂と硬化剤の有機過酸化物を混合し、必要に応じ有機金属石鹸を所定量混合し、接着剤を被着体に所定膜厚で塗布、所定温度で所定時間硬化反応を行い、接着を行う。
【0095】
(2) 本発明の接着剤組成物では、また、つぎのように接着剤を製造し使用することもできる。上記のように接着剤樹脂を製造する。これを2つに分け、一方には所定量の有機過酸化物を混合する(接着剤主剤A)。もう一方の接着剤樹脂には有機金属石鹸を混合しておく(接着剤主剤B)。
【0096】
2−1.接着を行う前に接着剤主剤Aと接着剤主剤Bを混合し、被着体に塗布、所定条件で接着剤の硬化反応を行うことにより接着を終了する。
【0097】
2−2.あるいは、接着剤主剤Aを被着体の一方に所定膜厚で塗布し(接着部材A)、接着剤主剤Bを他方の被着体に所定膜厚で塗布し(接着部材B)、接着を行うときに接着剤主剤A、接着剤主剤Bが塗布された面を圧着し、所定温度で所定時間硬化反応を行い、接着を行うこともできる。
【0098】
本接着方法では、接着部材A、接着部材Bを各々独立して生産することが可能であり、また接着のタイミングを任意に設定することが可能であり、生産効率化の上でアドバンテージがある。
【実施例】
【0099】
以下に本発明の一例を実施例で説明する。
【0100】
なお、実施例中、試験、評価方法等は以下にしたがい実施した。
【0101】
1)酸素濃度(vol%)
デジタル酸素濃度計XO−326ALB(新コスモス電機(株)の測定装置)を使用して測定した。
【0102】
2)重量平均分子量(Mwとも言う)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)HLC−8220GPC(東ソー(株)の試験装置)を使用して測定した。
【0103】
3)加熱残分(%)
JIS K 5407:1997にしたがって測定した。ただし、測定温度は140℃、測定時間は30分とした。
【0104】
4)引張剪断強度(MPa)
JIS K 6850:1999にしたがい、接着剤の厚みを500μmとして23℃(23℃)、80℃で10日放置後23℃(80℃−23℃)、80℃(80℃−80℃)で行った。また接着剤の硬化条件は、硬化温度40℃、硬化時間30分とした。被着体としてアルミニウム合金(JIS A−2017P:1999)を使用した。
【0105】
実施例中、特にことわりがない限り組成比は重量比とした。
【0106】
アクリル樹脂の製造例
1.アクリル樹脂(1)の製造例
窒素ガス導入管、還流冷却器、撹拌装置、アクリル単量体仕込み口を有する2L四つ口フラスコに、窒素ガスをフラスコ内の酸素濃度が5vol%以下になるまで吹き込み、重合中は酸素濃度3〜5vol%に調節した窒素ガス/酸素ガス混合気の吹き込みを継続した。
【0107】
アクリル酸n−ブチル700g、アクリル酸2−メトキシエチル100g、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル200g(=70/10/20)(モル分率=0.703/0.099/0.198)(アクリル単量体の合計量1000g)のうち40重量%(400g)とα−メチルスチレンダイマー70g(アクリル単量体総量を100重量部としたとき7重量部)の混合溶液の470gをフラスコに仕込み、95℃に昇温した。
【0108】
アクリル単量体の混合溶液の残り60重量%(600g)gに2,2´−アゾビスイソブチロニトリル30g(重合開始剤)(α−メチルスチレンダイマーを1モルとしたとき、0.615モル)を溶解したモノマー溶液を3時間でフラスコ内に滴下した。この後、3時間、95℃で重合を行い、105℃に昇温してさらに2時間重合を行って、分子側鎖に水酸基を有するアクリル共重合体(1)を製造した。
【0109】
80℃に冷却した。酸素/空気の混合ガス(酸素濃度8vol%)をフラスコ内の酸素濃度が12vol%以下になるまで吹き込み、以後の付加反応中は継続して酸素/空気の混合ガス(酸素濃度8vol%)を吹き込んだ。
【0110】
フラスコに、p−メトキシフェノール1.3g、ジブチルチンジラウレート2.6gを仕込んだ。メタクリル酸2−イソシアネートエチル191g(メタクリル酸2−ヒドロキシエチルの80モル%)を30分間で滴下し、この後、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)で反応をトレースしながらで2300cm−1近辺の吸収がなくなるまで付加反応を行った。室温まで冷却し、分子側鎖にイソシアネート基含有アクリル単量体由来のメタクリロイル基を有するアクリル樹脂(1)を製造した。アクリル樹脂(1)は重量平均分子量6.2万、加熱残分99.8%であった。
【0111】
2.アクリル樹脂(2)〜アクリル樹脂(4)の製造例
アクリル樹脂(1)の製造例と同様にしてアクリル樹脂(2)〜アクリル樹脂(4)を製造した。表1にアクリル単量体等の仕込み重量組成、製造されたアクリル樹脂の重量平均分子量、加熱残分を、表2に、アクリル単量体等の仕込モル組成、アクリル共重合体のモル組成を示した。
【0112】
【表1】

【0113】
【表2】

【0114】
なお、表1、表2中、*1は下記構造式で示される化学構造
【0115】
【化23】

【0116】
(ここで、R1は水素原子またはメチル基、R2は水素原子、炭素原子数4〜12個のアルキル基、アルキル基の炭素原子数2〜6個のヒドロキシアルキル基、または、アルキル基の炭素原子数2〜6個のメトキシアルキル基、xは、モル分率を表し、0.40〜0.998である。)
に相当するアクリル単量体であり、xは、該アクリル単量体からなる化学構造のモル分率である。
【0117】
*2は、下記構造式で示される化学構造
【0118】
【化24】

【0119】
(ここで、R3、R6は水素原子またはメチル基、R4は炭素原子数4〜12個のアルキル基、R5は炭素原子数2〜4個のアルキル基、yはモル分率を表し、0.002〜0.60である。)
に相当する化学構造であり、yは該化学構造が占めるモル分率を示した。
【0120】
実施例1〜6
実施例1〜実施例6の接着剤1〜6の組成を表3に示した。
【0121】
各接着剤は、主剤、硬化剤を均一に混合した後、「マゼルスターKK−100」(クラボウ製の攪拌、混合、脱泡装置)で脱泡し製造した。また、接着は、接着剤を被着体であるアルミニウム試験片の双方に塗布した後、接着剤塗布面を圧着、被着体をクリップで挟み、所定の硬化条件で硬化した。
【0122】
【表3】

【0123】
比較例1〜3
比較例1〜比較例3の接着剤7〜9の組成を表4に示した。各接着剤は主剤と硬化剤を混合後、「マゼルスターKK−100」(クラボウ製の攪拌、混合、脱泡装置)で脱泡し製造した。接着剤を被着体であるアルミニウム試験片の双方に塗布した後、接着剤塗布面を圧着、被着体をクリップで挟み、所定の硬化条件で硬化した。
【0124】
【表4】

【0125】
試験結果
接着剤1〜9を使用して引張剪断試験を行った。試験結果を表5に示した。
【0126】
【表5】

【0127】
表5で明らかなとおり、接着剤1〜6は、2液主剤型接着剤として優れた硬化性と、接着性を示すものであった。接着剤1〜6は、接着力、耐熱性に優れている。また、構造接着剤として使用可能な高い引張剪断強度(≧20MPa)を有するものから、シール材として適度な引張剪断強度(≧10MPa)を有するものまで、任意に設計が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子中に下記構造式で示される化学構造
【化1】

(ここで、R1は、水素原子またはメチル基、R2は、水素原子、炭素原子数2〜12個のアルキル基、アルキル基の炭素原子数2〜6個のヒドロキシアルキル基、または、アルキル基の炭素原子数2〜6個のメトキシアルキル基、xは、モル分率を表し、0.40〜0.998である。)
および、下記構造式で示される化学構造
【化2】

(ここで、R3、R6は、水素原子またはメチル基、R4は、炭素原子数2〜6個のアルキル基、R5は、炭素原子数2〜4個のアルキル基、yは、モル分率を表し、0.002〜0.60である。)
を有するアクリル樹脂を含む接着剤組成物。
【請求項2】
アクリル樹脂が、分子中に下記構造式で示される化学構造
【化3】

(ここで、R7は、水素原子、炭素原子数2〜12個のアルキル基、炭素原子数2〜6個のヒドロキシアルキル基、または、アルキル基の炭素原子数2〜6個のメトキシアルキル基を表す。)
を有する請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
接着剤組成物が、さらに下記構造式のジシクロペンタジエニル基含有アクリル単量体
【化4】

(ここで、R8は、水素原子またはメチル基、aは、0または1〜4の整数を表す。)
を含む請求項1または2に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
接着剤組成物が、さらに下記構造式のエチレンオキサイド変性エポキシアクリレート
【化5】

(ここで、R9、R10は、水素原子またはメチル基、bは、1〜10の整数、cは、1〜10の整数を表す。)
を含む請求項1〜3のいずれかに記載の接着剤組成物。

【公開番号】特開2009−221297(P2009−221297A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−65741(P2008−65741)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【出願人】(000187046)東レ・ファインケミカル株式会社 (153)
【Fターム(参考)】