説明

接着剤組成物

分枝状C14〜22アルキル基含有(メタ)アクリラート及び極性モノマーを含むアクリルモノマー混合物の懸濁重合により得られる、10〜100マイクロメートルの平均直径を有するアクリル接着剤粒子を含む、接着剤組成物が開示された。接着剤組成物は、接着包帯又は貼付剤に適用され得る。接着剤は、優れた透湿性、適用時の低皮膚刺激性の優れた皮膚接着性、剥離後のより少ない接着剤の残留性、及びより低いケラチン損傷性である。接着剤は、着用中、湿潤を引き起こさず、又汗による剥離を引き起こさない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アクリル接着剤粒子を含有する接着剤組成物に関する。更に、本開示は支持層、及び接着剤組成物を含む接着層を含む、接着貼付剤に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な接着貼付剤が、皮膚創傷被覆剤及び医療器具の皮膚への固定に使用される。通常、これらの接着貼付剤は、着用中の接着剤組成物若しくは湿潤による皮膚刺激性、又は貼付剤剥離時の皮膚残存接着剤若しくはケラチンの剥離による皮膚刺激性の低減が要求される。
【0003】
例えば、米国特許第5,543,151号は、主成分として2〜15の炭素原子を有する(メタ)アクリル酸エステルとカルボキシル基又はヒドロキシル基を含有する極性構成成分を含有する溶液重合ポリマーの100質量%中に、30〜100部の有機液体構成成分を可塑剤として含有する、架橋されたアクリルゲル系医療用接着剤を、皮膚に対して少ししか物理的刺激を引き起こさない医療用接着剤として開示している。
【0004】
日本特開平9−324164A号公報は、主成分として14〜20の炭素原子を有する分枝状アルキルアルコールの(メタ)アクリル酸エステルを含有するビニル系モノマーを、紫外線を前記ビニル系モノマー及び光重合開始剤を含む光重合液体組成物に照射して、重合して得た、アクリル系接着剤を開示している。
【0005】
国際公開第96014094号は、平均直径が1〜250マイクロメートルの相互に隣接した溶媒分散可能なアクリラートゴム弾性接着剤粒子を含有する接着剤が、良好な水分透過性基材に塗布された創傷用包帯を開示している。この接着剤は、主として4〜12の炭素原子を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル及びカルボキシル基又はラクタムを含有する極性構成成分を含有する水分散ポリマー中に、懸濁分散安定剤として、少量の非架橋水溶性ポリマーも含有する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示された接着剤は、優れた透湿性、適用時低皮膚刺激性で優れた皮膚接着性、剥離後のより少ない接着剤の残留性、及びより低いケラチン損傷性である。使用中は、接着剤は湿潤を引き起こさず又汗による剥離を引き起こさない。
【0007】
1つの実施形態においては、接着剤組成物は、分枝状C14〜22アルキル基含有(メタ)アクリラート及び極性モノマーを含むアクリルモノマー混合物の懸濁重合により得られる、10〜100マイクロメートルの平均直径を有するアクリル接着剤粒子を含み、ここで分枝状C14〜22アルキル基含有(メタ)アクリラートの量は、アクリル接着剤粒子を含むアクリルモノマー混合物の総量に対して20質量%〜99質量%である。
【0008】
本開示は、更に支持層及び接着剤組成物を含む接着層を有する、接着貼付剤を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書においては、(メタ)アクリラート及び(メタ)アクリルはアクリラート又はメタクリラート及びアクリル又はメタアクリルのいずれかを意味し、アクリル系はアクリル系及びメタアクリル系の両方を包含する概念である。
【0010】
本開示は、架橋した吸水性ポリマー、及びアクリルモノマー混合物の懸濁重合により得られる10〜100マイクロメートルの平均直径を有するアクリル接着剤粒子を含有する、接着剤組成物に関する。
【0011】
本開示のアクリル接着剤粒子はアクリルモノマー混合物の懸濁重合により得られ、光散乱法により測定される10〜100マイクロメートルの平均直径を有する。平均直径は、粒度分布アナライザーLS13 320(Beckman Coulterが製造している)を使用して、体積平均直径として測定できる。アクリル接着剤粒子は、固体又は中空であってもよい。
【0012】
接着剤粒子の平均粒子直径には制限はないが、例えば、約10マイクロメートル〜約100マイクロメートルであり得る。平均粒子直径が約100マイクロメートルを超える場合には、接着剤の表面が荒れ、接着に十分な接触面積が得られにくい。したがって、長期間の接着後には容易に剥離する傾向がある。平均粒子直径が約10マイクロメートル未満では、接着剤の表面が平板となり皮膚との接触面積が増加し、剥離による皮膚刺激性が強くなる傾向がある。
【0013】
架橋剤を含有するモノマー混合物の懸濁重合により得られる接着剤粒子は、粒子内又は粒子間(粒子間)において架橋される。本開示の効果は、架橋条件のいずれのタイプにおいても実証され得る。接着剤残留に対する効果は、粒子が互いに架橋されており、接着剤残留がほとんどない場合に、特に実証されるであろう。
【0014】
これらのアクリル接着剤粒子は、前述のアクリルモノマー混合物の懸濁重合により得られる。例えば、イオン交換水と界面活性剤を反応器に加え混合し、次にアクリルモノマー、重合開始剤、及び架橋剤(望ましい場合には)を加え、次いで加熱し、混合し、そして窒素などの不活性ガス下で冷却する。
【0015】
懸濁重合を行う場合には、アクリル接着剤粒子の平均直径は重合条件を調節することにより調節可能である。「重合条件」は、一般的に、混合速度、反応器容積、邪魔板、及び混合羽根の形状と数を指し、望ましい平均直径の微粒子はこれらを適切に選択することにより得ることができる(IPC Co.Ltd.により1993年6月20日に出版された「Polymer Particle Diameter Control in Suspension Polymerization」、Masahito Tanaka)。
【0016】
アクリルモノマー混合物は、アクリルモノマー混合物の総量に対して、約20質量%〜約99質量%の分枝状C14〜22アルキル基を有する(メタ)アクリラートを含有する。あるいは、分枝状C14〜22アルキル基を有する(メタ)アクリラートの量は、好ましくは、約20質量%〜約60質量%であってもよい。分枝状C14〜22アルキル基を含有する(メタ)アクリラートを有することにより、接着剤組成物は柔らで、皮膚に対する湿潤性を有し、接着保持の適切な水準を有し、剥離中に皮膚表面にかかるストレスが軽減され、そのため剥離中におけるケラチンの損傷を減らすことができる。
【0017】
分枝状C14〜22アルキル基を有する(メタ)アクリラートの例としては、イソミリスチル(メタ)アクリラート、イソペンタデシル(メタ)アクリラート、イソヘプタデシル(メタ)アクリラート、イソセチル(メタ)アクリラート、イソステアリル(メタ)アクリラート、イソノナデシル(メタ)アクリラート、2−デシルデシル(メタ)アクリラート、及び2−デシルドデシル(メタ)アクリラートが挙げられる。これらは、単独で又はこれらの2つ以上を組み合わせて使用してもよい。
【0018】
アクリルモノマー混合物はまた極性モノマーも含む。少量の極性モノマーを含めることにより、接着剤組成物の凝集力が増加し、したがって皮膚からの剥離に際して接着剤の残留を減らすことができる。
【0019】
極性モノマーは制限されないが、通常知られている極性モノマーであり得、例えば、アクリルアミド及びN−ビニルピロリドン(NVP)などのアミド基を含有する極性モノマー;ヒドロキシエチルメタクリラート(HEMA)、ヒドロキシエチルアクリラート(HEA)、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリラート及びヒドロキシブチル(メタ)アクリラートなどのヒドロキシル基を含有する極性モノマー;並びにアクリル酸(AA)、メタアクリル酸(MAA)などのカルボキシル基を含有する極性モノマーである。これらの中で、ヒドロキシル基を含有する極性モノマー及びカルボキシル基を含有する極性モノマーが好ましく使用され得る。
【0020】
アクリルモノマー混合物中の極性モノマーの量は制限されないが、例えば、約1質量%以上であってもよい。ヒドロキシル基を含有する極性モノマーを使用する場合、量は約1質量%以上で10質量%未満、約1質量%〜約8質量%、又は約1質量%〜約6質量%であり得る。量が10質量%を超える場合には、皮膚への接着が悪化する傾向がある場合がある。更に、カルボキシル基を含有する極性モノマーが使用される場合には、接着剤組成物の接着が容易に増加するので、量は約0.1質量%以上で約4質量%未満が好ましい。
【0021】
本開示の接着剤は、更に吸水性ポリマーを含んでもよい。この明細書においては、用語「吸水性ポリマー」は、JISに規定されているように、「高吸水性樹脂」、すなわち高吸水性であり、親水性の架橋された構造を有し、水と接触すると水を吸収し、容易には水を放出せず加圧下においても吸収したままである樹脂を指す。あるいは、用語、吸水性ポリマーは、水中でそれ自身の重量の10倍以上を吸収する能力のあるポリマーと同じである。ポリマーの吸水能力は、JIS K7223による吸水性樹脂の吸水試験方法又はJIS K7224による吸水性樹脂の吸水速度試験方法を使用して、測定できる。
【0022】
架橋吸水性ポリマー又は未架橋吸水性ポリマーのいずれをも、吸水性ポリマーとして使用してもよい。架橋吸水性ポリマーは、事前架橋粒状吸水性ポリマー、又は後架橋未架橋吸水性ポリマーであってもよい。
【0023】
未架橋吸水性ポリマーを使用する場合には、アクリルモノマー混合物の懸濁重合により得られる製品に未架橋吸水性ポリマーを加え、次いで架橋する。
【0024】
未架橋吸水性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレングリコール及びそのアルキルエステル、ポリプロピレングリコール、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール、CMC及びその塩、ポリアクリル酸及びその塩、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)及びセルロースの他の低レベルアルキルエステルの他に、ポリグリセリン及びそのアルキルエステルも、挙げられる。未架橋の吸水性ポリマーが架橋される場合には、吸水性ポリマー中のヒドロキシル基及びカルボキシル基と反応する架橋剤を利用して3次元の架橋が形成され得る。これらの架橋剤の例としては、アルデヒド化合物、アセタール化合物、エポキシ化合物、ポリカルボン酸、及びアルカリ土類金属塩等が挙げられる。
【0025】
未架橋の吸水性ポリマーが使用されると、接着剤組成物を基材に塗布し乾燥した後には、水吸収性ポリマーは接着剤粒子の表面に均一に接着する。したがって、未架橋の吸水性ポリマーの量は、アクリル接着剤粒子に対して、好ましくは約0.1質量%〜約3質量%であってもよい。アクリル接着剤粒子の量が約3質量%を超える場合には、より多くの吸水性ポリマーが接着剤粒子の表面に接着し、ひいては接着が低下し長期利用後により剥離され易いであろう。
【0026】
架橋された吸水性ポリマーは局在しており、それ故接着剤粒子の表面に接着しそうではなく、接着剤粒子の表面は露出され続け得る。したがって、接着剤粒子の接着を弱めることなく、架橋された吸水性ポリマーは未架橋の吸水性ポリマーより多く加えられ得る。架橋された吸水性ポリマーは、アクリル接着剤粒子に対して約0.1質量%以上、約10質量%未満を加えることができる。架橋された吸水性ポリマーの量が約10質量%を超えると、接着は弱まりそうであり、長期の利用後には剥離し易い。
【0027】
架橋された吸水性ポリマーの量には制限はないが、例えば、アクリル接着剤粒子の質量に対して約0.1質量%以上、しかし約10質量%未満であってもよい。
【0028】
アクリルモノマー混合物は、更にC1〜12アルキル基含有(メタ)アクリラートを含有してもよい。C1〜12アルキル基は、直鎖状、分枝状、又は環状であり得る。これらの(メタ)アクリラートの例としては、メチルメタクリラート、エチル(メタ)アクリラート、n−ブチル(メタ)アクリラート、イソアミル(メタ)アクリラート、n−ヘキシル(メタ)アクリラート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリラート、イソオクチル(メタ)アクリラート、イソノニル(メタ)アクリラート、デシル(メタ)アクリラート、ラウリル(メタ)アクリラート、及びシクロヘキシル(メタ)アクリラートなどが挙げられる。これらの中で、2−エチルヘキシルアクリラート、イソオクチルアクリラート、n−ブチルアクリラート、及びラウリルアクリラートなどの直鎖状又は分枝状C1〜12アルキル基を有する(メタ)アクリラートが好ましい。
【0029】
アクリルモノマー混合物中の直鎖状又は分枝状C1〜12アルキル基含有(メタ)アクリラートの量は制限されないが、例えば、0〜約79質量%であってもよい。
【0030】
アクリルモノマー混合物は、更に架橋剤を含有してよい。架橋剤は、2以上の(メタ)アクリラートを含有する多官能性(メタ)アクリラートを含む。具体的な例として、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリラート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリラート、トリオール(グリセロール及び類似物など)の(メタ)アクリラートエステル、テトロール(ペンタエリスリトール及び類似物など)の(メタ)アクリラートエステルが挙げられる。
【0031】
アクリルモノマー混合物中の架橋剤の量は制限されないが、例えば、アクリルモノマー混合物の質量に対して約0.01〜約0.5質量%であってもよい。架橋剤の量が少なすぎる場合には、接着剤組成物は十分な凝集性を持たず接着剤残留物が皮膚に残ることがあるが、しかし逆に架橋剤の量が多すぎる場合には凝集性が強すぎ、望ましい皮膚接着は達成されないであろう。
【0032】
本開示の接着剤組成物は、上述したように、アクリルモノマー混合物を懸濁重合しアクリル接着剤粒子を形成し、次いで架橋又は未架橋の吸水性ポリマーを加え、混合し、粘度を調整し、必要があれば添加剤を加え、基材に塗布し、乾燥することにより、製造することができる。更に、通常公知のエポキシ、イソシアナート、又はアジリジン架橋剤を加え、基材に塗布し、乾燥し、次いで架橋することができる。更に、ベンゾフェノン又は類似物などの光架橋剤の使用により、塗布及び乾燥後に紫外線などを使用して架橋を達成することができる。ここで、接着剤粒子中にアクリロイルベンゾフェノン又は類似物などの光架橋剤を事前に共重合することにより、より効果的な光架橋が可能となる。あるいは、アクリル接着剤粒子間の架橋は、電子ビーム照射又はガンマー線照射などの物理的手段の使用により達成可能である。もし未架橋の吸水性ポリマーを使用する場合には、アクリル接着剤粒子と混合後に、架橋を実行しなければならないことに注意する。
【0033】
本開示の接着剤組成物は、界面活性剤、分散安定剤、並びに重合開始剤及び類似物などの通常使用される添加剤を、必要に応じて更に含有してよい。
【0034】
界面活性剤の例としては、アルキルサルファートエステル、アルキルベンゼンスルホナート塩、及びポリオキシエチレンアルキルホスファートエステルなどのアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ソルビタート及び脂肪酸エステル、並びにポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどの非イオン性界面活性剤;アルキルアミン塩、及び四級アンモニウム塩などのカチオン性界面活性剤;並びにポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及び類似物などの親水性ポリマーが、含まれる。
【0035】
分散安定剤の例としては、ポリアクリル酸アンモニウム、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸リチウム、ポリアクリル酸カリウム、及び分子量が約5000を超えるポリアクリル酸塩を含有する他の中性ポリカルボン酸;アクリルアミド、特にカルボキシ変性ポリアクリルアミド;アクリル酸とジメチルアミノエチルメタクリラートとの共重合体;四級アミン置換セルロース誘導体などの四級アミン;架橋ポリビニルアルコール;ナトリウムカルボキシメチルセルロースなどのカルボキシ変性セルロース誘導体の他に;親水性エーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル及び他のエステルが、含まれる。
【0036】
重合開始剤としては、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、若しくはビス(4−第三級ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカルボナートなどの有機ペルオキシド;又は2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、4,4’−アゾビス−4−シアノ吉草酸塩(エステル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオナート)若しくはアゾビス2,4−ジメチルバレロニトリル(AVN)などのアゾ系重合開始剤;又は類似物が、含まれる。重合開始剤の量は、モノマー混合物100質量部中、0.05〜5質量部であってもよい。
【0037】
本開示の接着剤組成物は、通常使用される様々な添加物を、皮膚刺激性が起きない限り、更に含有することがある。添加剤の例としては、増粘剤(レオロジー変性剤)、可塑剤、抗酸化剤、保湿剤、及び有効成分を含有する薬剤を挙げることができる。加えられる薬剤は、局所投与又は全身投与用などの創傷治療用薬剤であり得る。
【0038】
本開示の接着貼付剤は、支持層及び本開示の接着剤組成物からなる接着層を含む。接着貼付剤は、接着剤組成物を通常使用される基材の支持層上に塗布し乾燥して、又は接着剤組成物を異なる基材に先ず塗布し乾燥して形成した接着層を支持層にラミネートすることにより、得ることができる。
【0039】
支持層は限定されないが、例えば、医療接着貼付剤などの接着貼付剤に通常使用される既知の可撓性材料が挙げられる。具体的な例としては、ポリエステル、ポリオレフィン、又はセルロースエステル及び類似物などのポリマーフィルム;ポリエステル、ポリオレフィン、セルロースエステル、ポリウレタン、又はポリアミドから作製される織布、ニット、又は不織布;紙、和紙(日本の紙)、和紙とポリマーフィルムのラミネート、ポリマー溶液を含浸又はコーティングし乾燥して得る和紙などが、含まれる。
【0040】
これらの中で、高い透湿度を有する基材が好ましく使用され得る。ASTM E 96−80に従い、80%の湿度差及び40℃において測定される好ましい24時間透湿度(MVTR T24)は、約500g/m以上、好ましくは約1000g/m以上である。あるいは、米国特許第3,645,835号、及び第4,595,001号に開示された材料から作られる基材、又はPCT出願第2003−503538号の国内公表に開示された材料から作られる不織布基材。それに加え、良好な引張強さ(例えば、1N/5mm以上)と良好な伸び(例えば、破断伸びが1%以上)を有する基材が望ましく使用され得る。1%以上の破断伸びを有する基材は皮膚に対する柔軟性を提供することができる。したがって、長期利用中における皮膚からの貼付剤の剥離は容易ではない。
【0041】
支持層及び接着層に加えて、接着貼付剤はライナー及び表面保護層などの既知の機能性層とラミネートすることができる。
【0042】
支持層の布地の重量は、透湿度及び下の皮膚に悪影響を与えない範囲から、選択することができる。例えば、それは、約20g/m〜約500g/m、又は約20g/m〜約60g/mであってもよい。
【0043】
適用される接着層の量もまた、透湿度及び下の皮膚に悪影響を与えない範囲から、選択することができる。例えば、それは、約10g/m〜約150g/m、又は約10g/m〜約50g/mであってもよい。
【0044】
本開示の接着剤組成物は、低減した皮膚刺激性で接着剤残留が最少であり、したがって治療位置に皮膚に適用して使用することができる。本開示の接着剤組成物を含む接着層が支持層にラミネートされ貼付剤を形成する場合には、貼付剤は創傷を被覆するテープ又は包帯として、医療器具を皮膚に固定するテープとして若しくはサポーター、又は同等なものとして使用することができる。更に、もし接着層が薬剤を含有する場合には、接着剤は創傷保護用の貼付剤、薬剤のタイプにより局所投与用貼付剤又は全身投与用貼付剤、として使用できる。
【実施例】
【0045】
本明細書の実施例及び比較例に使用した接着剤組成物の成分及び平均粒子直径を表1に示す。
【0046】
表1で使用した原材料の詳細を以下に示す。
【0047】
LA:ラウリルアクリラート(Osaka Organic Chemical Industry Ltd.が製造)。
【0048】
HEDA 16:2−ヘキサデシルアクリラート(TOHO Chemical Industry Co.Ltd.が製造)。
【0049】
HEMA:ヒドロキシエチルメタクリラート(Mitsubishi Rayon Co.Ltd.が製造したアクリル酸エステルHISS)。
【0050】
2EHA:2−エチルヘキシルアクリラート(Nippon Shokubai Co.Ltd.が製造)。
【0051】
AA:アクリル酸(Toa Gosei Co.Ltd.が製造)。
【0052】
HDDA:1,6−ヘキサンジオールジアクリラート(二官能性架橋剤、Light Acrylate(商標)1.6HX−A、Kyoeisha Chemical Co.Ltd.が製造)。
【0053】
AcDiSol:架橋されたナトリウムカルボキシメチルセルロース粒子(架橋吸水性ポリマー粒子、AcDiSol(商標)SD−711、NCF Corp.が製造)。
【0054】
SAP:ポリアクリル酸ナトリウム(架橋吸水性ポリマー粒子、Aqua−keep(商標)10SH−N、F、Sumitomo Seika Chemicals Co.Ltd.が製造)。
【0055】
EMANON(商標)3299RV:ポリエチレングリコールジステアラート(分散安定剤、EMANON(商標)3299RV、Kao Corp.が製造)。
【0056】
TT615:ポリアクリラート塩(分散安定剤、Primal(商標)TT−615、Rohm and Hausが製造)。
【0057】
Neopelex(商標)G−15:ナトリウムドデシルベンゼンスルホナート(界面活性剤、Neopelex(商標)G−15、Kao Corp.が製造)。
【0058】
V−601:ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオナート)(重合開始剤、Wako Pure Chemical Industries,Ltd.が製造)。
【0059】
接着剤組成物の調製
実施例1〜15及び比較例1、3〜5
115質量部のイオン交換水及び10質量部の界面活性剤(Neopelex G−15、Kao Corp.が製造)を、還流冷却管、温度計、及び窒素ガス供給装置を備えた分離可能なフラスコに加え、均一になるまで混合した。表1に示したアクリルモノマー及び架橋剤を0.2質量部の重合開始剤(V−601、Wako Pure Chemical Industries,Ltd.が製造)とともに加え、窒素ガスを供給しながら70℃で3時間、次いで、85℃で更に2時間混合し、平均直径が10〜100マイクロメートルで固体分率が45%である、本開示の接着剤の懸濁液を製造した。懸濁液を室温に冷却した後、表1に示した吸水剤と安定剤を加え、粘度を塗布に適した水準に調節した。実施例1〜10、比較例1、3〜5では、溶液をポリエステルレーヨン混合不織布材料(布地重量が50〜60g/m)に直接塗布し、次いで乾燥、又はシリコーン処理フィルムに塗布し、乾燥し、次いで不織布材料上にラミネートし、試料を調製した。実施例11〜15では、アクリル樹脂又はゴム樹脂を浸み込ませた和紙(布地重量が40〜50g/m、透湿度が500〜1000秒/100cc)に直接塗布し、次いで乾燥して試料を調製した。塗布した接着剤の量は、実施例1〜4、6〜10、比較例1、3〜6では50g/m、実施例5では40g/m、実施例11〜15では30g/mであった。
【0060】
支持体の引張強さ及び伸びの測定方法
引張強さ及び伸びの測定は、JIS K6251に従って行った。支持体試料をダンベルカッターを使用して縦方向に打ち抜いた。形状はJIS K6251−3(幅:5mm、厚さ:10〜100マイクロメートル)に基づいた。引張強さは、破壊又は破断点における引張値を得るために、試験試料に加えられる最高の力である。伸びは、破壊又は破断点までに試験試料が到達する伸長の最高のパーセントである。引張速度は300mm/分、ゲージ長は50mmであった。
【0061】
比較例2
モノマーエマルションは、イオン交換水、アクリルモノマー、架橋剤、及び界面活性剤(Neopelex G−15、Kao Corp.が製造)を、均一化ミキサー中で乳化して得た。モノマーエマルション及び重合開始剤(V−601、Wako Pure Chemical Industries,Ltd.が製造)を反応容器に入れ、窒素ガス置換を行い、続いて65℃で24時間加熱混合し、平均粒子直径が2マイクロメートルの接着剤懸濁液を得た。懸濁液を室温まで冷却した後、表1に示す吸水剤及び増粘剤を加え、粘度を塗布に適切な水準に調節し、溶液をシリコーン処理フィルムに塗布、乾燥し、次いで接着剤塗布速度を30g/mとして、不織布材料の上にラミネートし、試料を形成した。
【0062】
【表1】

【0063】
接着剤粒子直径分布の測定
上記の方法による懸濁重合に関して、粒度分布アナライザーLS13 320(Beckman Coulterが製造)を使用して、接着剤組成物の体積平均粒子直径を測定した。表2に結果を示す。
【0064】
透湿度試験
実施例及び比較例のために製造した試料を、JIS L1099(繊維製品の透湿度試験方法)のA−2水方法に従い、透湿度について評価した。試験試料をイオン交換水で満たしたコップの上に置き、37℃で50%相対湿度の環境に置いた後、試験試料の透湿度を、コップ全体の重量変化により算出した。500g/m/24hr以上の透湿度が好ましいと考えられる。結果を表3、4、及び6に示す。
【0065】
皮膚接着試験
本開示の実施例及び比較例による接着剤テープを、6人の健康な志願者の背中に貼り付け、下記に示す1)から5)の接着剤特性について評価した。結果を表3〜6に示す。
【0066】
1)皮膚接着
各実施例の3つの試料を幅25mmに切り、2kg重のローラーを前及び後に1回転させて使用して、6人の健康な志願者の背中に接触接着した。10分後(以後T0と称する)、4時間後(T4と称する)、24時間後(T24と称する)に、1つの試料を180度の角度で15cm/分の測度で剥離し、この時の接着を記録し、平均値を算出した。
【0067】
2)保持力(一定の時間間隔後のテープの弛み)
前述の皮膚接着試験の試料を使用して、T0、T4、及びT24における試料の弛みの量を記録した。試料の皮膚に貼りついていない部分の面積を目視により算出し、0から5のスケール(0は弛みのないことを示し、5は皮膚からの分離を示す)で評価し、平均値を算出した。
【0068】
3)接着剤の残留
上の皮膚接着試験の試料を剥離し、次いでティッシュペーパーをテープが貼られていた場所に接触させ、皮膚に残っている接着剤の残留を面積として算出した。接着剤の残留は、0から5のスケール(0は全く接着剤の残留がないことを示し、5は適用した面積全体において接着剤の残留を示す)で評価し、次いで平均値を算出した。
【0069】
4)皮膚刺激性(剥離後の皮膚の発赤)
皮膚発赤は、上の皮膚接着試験試料の剥離直後、及び10分後に評価した。発赤が観察された部位を、程度及び発赤面積について、肉眼で比較し、0〜5(0は発赤がないことを示し、5は貼り付けた全面積において色鮮やかな発赤を示す)のスケールで評価し、平均値を算出した。
【0070】
5)剥離時のケラチンの損傷(ケラチン除去)
上の皮膚接着試験において、4時間後に剥離した試料(T4)を貼り付けた表面の任意の場所を、赤外透過率分析器(ATR法)を使用して分析した。ケラチンが吸収することが知られている波長(タンパク質)(1539cm−1、1630cm−1)において、実際の皮膚を測定したときの吸光度を100%と考え、皮膚に適用しない接着剤のみの吸光度を0%と考え、光の吸収を測定して、接着剤の表面に付着したケラチンの吸光度をパーセントとして記録し、次いで平均値を算出した。
【0071】
【表2】

【0072】
【表3】

【0073】
【表4】

【0074】
【表5】

【0075】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
分枝状C14〜22アルキル基含有(メタ)アクリラート及び極性モノマーを含むアクリルモノマー混合物の懸濁重合により得られる、10〜100マイクロメートルの平均直径を有するアクリル接着剤粒子を含む接着剤組成物であって、
前記分枝状C14〜22アルキル基含有(メタ)アクリラートの量が、前記アクリル接着剤粒子を含む前記アクリルモノマー混合物の総量に対して20質量%〜99質量%である、接着剤組成物。
【請求項2】
吸水性ポリマーを更に含む、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
吸水性ポリマーが架橋吸水性ポリマーである、請求項2に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
吸水性ポリマーが微粒子状である、請求項2又は3に記載の接着剤組成物。
【請求項5】
C1〜12アルキル基を含有する(メタ)アクリラートを更に含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項6】
前記極性モノマーがヒドロキシル基含有モノマーである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項7】
前記ヒドロキシル基含有モノマーの量が、前記アクリル接着剤粒子を含む前記アクリルモノマー混合物の総量に対して1質量%〜10質量%である、請求項6に記載の接着剤組成物。
【請求項8】
前記極性モノマーがカルボキシル基含有モノマーである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項9】
前記カルボキシル基含有モノマーの量が、前記アクリル接着剤粒子を含む前記アクリルモノマー混合物の総量に対して0.1質量%以上、4質量%未満である、請求項8に記載の接着剤組成物。
【請求項10】
前記架橋吸水性ポリマーの量が、前記アクリル接着剤粒子に対して0.1質量%〜10質量%である、請求項2〜8のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項11】
支持層、及び請求項1〜10のいずれか一項に記載の接着剤組成物を含む接着層を含む、接着貼付剤。
【請求項12】
前記支持層が不織布ウェブ又は和紙を含む、請求項11に記載の接着貼付剤。
【請求項13】
前記支持層が和紙を含む、請求項12記載の接着貼付剤。
【請求項14】
前記不織布ウェブ又は前記和紙が20g/m〜500g/mの坪量を有する、請求項12又は13に記載の接着貼付剤。
【請求項15】
前記不織布ウェブ又は前記和紙が500g/m以上の透湿度(MVTR T24)を有する、請求項12又は13に記載の接着貼付剤。

【公表番号】特表2013−521383(P2013−521383A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−556251(P2012−556251)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【国際出願番号】PCT/US2011/027114
【国際公開番号】WO2011/109672
【国際公開日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】