説明

接着性樹脂組成物および接着性フィルム

【課題】本発明は、押出しラミネートによるフィルム化においてロールリリース性やブロッキング性の問題がなく、ガラスやアルミなどの極性材料とポリエチレンやポリプロピレンなどの非極性材料の両方に対する接着性を有する安価な樹脂組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】不飽和エステル含量が共重合体全体の3〜11重量%であり、JIS K 7210に準拠して測定されるメルトフローレイトが0.5g〜100g/10分であるエチレン−不飽和エステル共重合体(A)70〜95重量%、および、
酸価が200〜300mgKOH/gの粘着付与樹脂(B)5〜30重量%を
含んでなる接着性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
押出しラミネートによるフィルム化においてロールリリース性やブロッキング性の問題がなく、アルミやガラスなどの極性材料とポリエチレンやポリプロピレンなどの非極性材料の両方に対する接着性に優れる樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでガラスやアルミなどの極性材料とポリエチレンやポリプロピレンなどの非極性材料の両方に接着性を有する樹脂組成物としては、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体やエチレン−不飽和エステル共重合体ケン化物、エチレン−α・オレフィンに不飽和カルボン酸あるいはその誘導体をグラフトした変性物、エチレン−不飽和エステル共重合体に不飽和カルボン酸あるいはその誘導体をグラフトした変性物などの極性基を有するエチレン系重合体と粘着付与樹脂とをブレンドした樹脂組成物が用いられることが多かった。
【0003】
しかし、これら上記エチレン系重合体はポリエチレンやエチレン−α・オレフィン、エチレン−不飽和エステル共重合体などの汎用樹脂に比べてケン化やグラフト化などの工程が必要であり一般に高価である。
【0004】
酸価が高い粘着付与樹脂をエチレン−不飽和エステル共重合体のようなエチレン系重合体に配合すると、ガラスやアルミなどの極性材料に対する接着性が向上することが従来から知られている。しかし、高酸価の粘着付与樹脂の配合量が適切でなかったり、エチレン系重合体の種類が適切でない場合には押出しラミネートによるフィルム化においてロールリリース性やブロッキング性に問題を有する。
【0005】
近年、多様な性能を付与したフィルムがあり、それら様々なフィルムに塗工でき、実用上問題のないラミネート強度を得ることができる接着性樹脂が求められている。特に、アルミなどの金属、アルミナなどの金属酸化物、シリカなど無機酸化物を蒸着した面に直接ラミネートでき、その接着性樹脂が積層してあるフィルムがガラスやアルミなどの極性材料やポリエチレンやポリプロピレンなどの非極性材料に対する接着性を有したものは非常に有用である。
【0006】
特許文献1には酢酸ビニル含量15〜40重量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体80〜99重量%と、酸価70〜300mgKOH/gの変性粘着付与樹脂1〜20重量%からなる接着性樹脂組成物が提案されている。しかし、酢酸ビニル含量が多いため、押出しラミネートにおけるフィルム化においてロールリリース性やブロッキング性に問題を有する。さらに変性粘着付与樹脂の酸価は特に90〜150mgKOH/gがよいとされており、酸価が200mgKOH/g以下の粘着付与樹脂を用いた場合には、ガラスやアルミなどの極性材料に対する接着性が不足する。
【0007】
特許文献2には酢酸ビニル含量19wt%、MFR15g/10分のエチレン−酢酸ビニル共重合体100部に酸変性ロジン系樹脂50部を添加した樹脂組成物の記載があるが、酸変性ロジンの添加量が多く、押出しラミネートによるフィルム化の場合にはロールリリース性やブロッキング性に問題を有している。
【特許文献1】特開昭53−112983号公報
【特許文献2】特開平10−60394号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、押出しラミネートによるフィルム化においてロールリリース性やブロッキング性の問題がなく、ガラスやアルミなどの極性材料とポリエチレンやポリプロピレンなどの非極性材料の両方に対する接着性を有する安価な樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、不飽和エステル含量が共重合体全体の3〜11重量%であり、JIS K 7210に準拠して測定されるメルトフローレイトが0.5g〜100g/10分であるエチレン−不飽和エステル共重合体(A)70〜95重量%、および、
酸価が200〜300mgKOH/gの粘着付与樹脂(B)5〜30重量%を
含んでなる接着性樹脂組成物に関する。
【0010】
更に本発明は、さらに、酸価が0〜10mgKOH/gの粘着付与樹脂(C)を含み、かつ、
粘着付与樹脂(B)と粘着付与樹脂(C)との合計量が組成物全体の5〜30重量%である上記接着性樹脂組成物に関する。
【0011】
更に本発明は、エチレン−不飽和エステル共重合体(A)が、エチレン−酢酸ビニル共重合体である上記接着性樹脂組成物に関する。
【0012】
更に本発明は、JIS K 7210に準拠して測定されるメルトフローレイトが、10g〜100g/10分である上記接着性樹脂組成物に関する。
【0013】
更に本発明は、金属箔が積層してある基材、あるいは金属、金属酸化物、無機酸化物いずれかが蒸着してある基材に上記接着性樹脂組成物を積層してなる接着性フィルムに関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、押出しラミネートにおけるフィルム化においてロールリリース性やブロッキング性の問題がなく、金属やガラスなどの極性材料とポリエチレンやポリプロピレンなどの非極性材料の両方に対する良好な接着性を有する樹脂組成物を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明における樹脂組成物は、エチレン−不飽和エステル共重合体(A)、酸価が200mgKOH/g以上300mgKOH/g以下の粘着付与樹脂(B)、必要に応じて、酸価が10mgKOH/g以下の粘着付与樹脂(C)を含んでなる樹脂組成物である。
【0016】
本発明におけるエチレン−不飽和エステル共重合体(A)の不飽和エステル単量体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソオクチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸イソブチルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル、
マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチルなどの不飽和カルボン酸エステル、
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルのようなビニルエステル等が挙げられる。
【0017】
本発明におけるエチレン−不飽和エステル共重合体(A)は上記いずれの種類の不飽和エステル単量体の重合体でもよいが、エチレン−酢酸ビニル共重合体(以下、EVAと略記する場合がある)が好適に用いられる。通常入手可能なエチレン−酢酸ビニル共重合体のメルトフローレイトは0.5g/10分以上100g/10分以下である。好ましくは0.5g/10分以上50g/10分以下、より好ましくは3g/10分以上10g/10分以下である。メルトフローレイトはJIS K 7210に準拠して測定される、190℃、2160g荷重での10分間の流出量(g/10分)である。酢酸ビニル含量は3重量%以上11重量%以下である。好ましくは3重量%以上10重量%以下、より好ましくは3重量%以上6重量%以下である。酢酸ビニル含量が3重量%未満では接着性が不足する。11重量%より多い場合では押出しラミネートにおいてロールリリース性が不良となり、フィルム化したものはブロッキング性に劣っている。
【0018】
本発明における接着性樹脂組成物のメルトフローレイトは、10g/10分以上100g/10分以下である。好ましくは10g/10分以上50g/10分以下、より好ましくは10g/10分以上30g/10分以下である。メルトフローレイトが10g/10分以下あるいは100g/10分以上であると押出しラミネートによるフィルム化が困難なものになりやすい。
【0019】
本発明における酸価が200mgKOH/g以上300mgKOH/g以下の粘着付与樹脂(B)とは、主にロジン系粘着付与樹脂からなる。更に好ましくは、粘着付与樹脂の酸価が200mgKOH/g以上250mgKOH/g以下である。ロジン系粘着付与樹脂とは、生ロジン、水添ロジン、(メタ)アクリル酸変性ロジン、水添(メタ)アクリル酸変性ロジン、マレイン酸変性ロジン、水添マレイン酸変性ロジン、フマール酸変性ロジン、水添フマール酸変性ロジン等が挙げられる。更に好ましくは、水添ロジン、水添(メタ)アクリル酸変性ロジン、水添マレイン酸変性ロジン、水添フマール酸変性ロジンである。酸価が200mgKOH/g未満であると極性材料に対する接着性が不十分となり、300mgKOH/gより大きいと押出しラミネート時に押出機内での腐食性に問題が生じる。本発明における、酸価が200mgKOH/g以上300mgKOH/g以下の粘着付与樹脂(B)の配合量は5重量%以上30重量%以下である。好ましくは、5重量%以上20重量%以下であり、より好ましくは5重量%以上10重量%以下である。
【0020】
本発明における樹脂組成物において、酸価が200mgKOH/g以下の粘着付与樹脂を単独で用いても極性材料に対する十分な接着性は得られない。しかし、200mgKOH/g以上300mgKOH/g以下の粘着付与樹脂を5重量%以上30重量%以下の範囲で用いると、酸価が10mgKOH/g以下の粘着付与樹脂を0重量%以上25重量%以下の範囲で併用しても極性材料に対する十分な接着強度を得ることができる。
【0021】
本発明における酸価が10mgKOH/g以下の粘着付与樹脂(C)は、酸価が10mgKOH/g以下であれば特に限定されない。一般に粘着付与樹脂(C)は粘着付与樹脂(B)に比べて押出しラミネートにおけるロールリリース性が良好であり、十分な接着力が得られる範囲で粘着付与樹脂(B)の配合量を少なくし、粘着付与樹脂(C)の配合量が多くなるようにすればよい。一般に天然系粘着付与樹脂と合成系粘着付与樹脂といわれるものを挙げることができる。天然系としてはガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジン、水素化ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、ロジン−グリセリンエステル、ロジン−ペンタエリスリトールエステル、テルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、水素化テルペン樹脂等である。
【0022】
合成系粘着付与樹脂とは脂肪族系(C5系)石油樹脂、芳香族系(C9系)石油樹脂、共重合系(C5/C9系)石油樹脂、水素添加石油樹脂(脂環族系石油樹脂)、DCPD系石油樹脂(脂環族系石油樹脂)、ピュアーモノマー系石油樹脂(スチレン系、置換スチレン系石油樹脂)、クマロン・インデン樹脂、アルキルフェノール樹脂、キシレン樹脂等である。この中でも脂環族系石油樹脂が好適に用いられる。
【0023】
本発明における、酸価が10mgKOH/g以下の粘着付与樹脂(C)の配合量は0重量%以上25重量%以下である。好ましくは、5重量%以上20重量%以下であり、より好ましくは10重量%以上15重量%以下である。粘着付与樹脂(C)の配合量が25重量%以上ではガラスやアルミなどの極性材料に対する十分な接着強度が得られない。
【0024】
ただし、粘着付与樹脂(B)と粘着付与樹脂(C)との合計量が組成物全体の5〜30重量%であることが好ましい。
【0025】
本発明において使用される粘着付与樹脂の軟化点は60℃以上150℃以下である。好ましくは90℃以上135℃以下であり、更に好ましくは100℃以上130℃以下である。60℃未満では単層あるいは多層フィルムにした場合にブロッキングが起こりやすく、150℃より高いと接着強度が得難くなってしまう。
【0026】
他の添加剤として、必要により各種のものが使用可能である。例えば着色剤やブロッキング防止剤、酸化防止剤などである。着色剤としては酸化チタンなどが挙げられる。ブロッキング防止剤としてはシリコーン、エルカ酸アミドやオレイン酸アミドなどの不飽和脂肪酸アミド、ステアリン酸アミドやベヘニン酸アミドなどの飽和脂肪酸アミドなどが挙げられる。酸化防止剤としては、高分子量ヒンダード多価フェノール、トリアジン誘導体、高分子量ヒンダード・フェノール、ジアルキル・フェノール・スルフィド、2、2−メチレン−ビス−(4−メチル−6−第三−ブチルフェノール)、4、4−メチレン−ビス−(2、6−ジ−第三−ブチルフェノール)、2、6−ジ−第三−ブチルフェノール−p−クレゾール、2、5−ジ−第三−ブチルヒドロキノン、2、2、4−トリメチル−1、2−ジヒドロキノン、2、2、4−トリメチル−1、2−ジヒドロキノン、ジブチル・ジチオカルバミン酸ニッケル、1−オキシ−3−メチル−4−イソプロピルベンゼン、4、4−ブチリデンビス−(3−メチル−6−第三−ブチルフェノール)、2−メルカプトベンゾイミダゾール。
【0027】
この接着性樹脂を押出しラミネートする場合、金属、金属酸化物、無機酸化物に直接ラミネートすることが望ましいが、さらにラミネート強度を向上させるためにアンカーコート剤を使用してもよい。ただし、近年の環境への配慮からアンカーコート剤は有機溶剤系以外のものを使用したほうがよい。また、オゾン処理やコロナ放電処理、フレーメ処理などによりラミネート強度を向上させることも可能である。
【実施例】
【0028】
以下に本発明を具体的に示す。
<接着性樹脂組成物の作成方法>
表1に示したEVA、粘着付与樹脂および各種添加剤をヘンシェルミキサーで5分間プリブレンドした。ホッパーにプリブレンド物を投入し、スクリューフィーダを用いて押出機に供給し樹脂組成物を作成した。
押出機;アイ・ケー・ジー社製同方向回転二軸押出機PMT32−40.5
バレル温度:140℃(供給口100℃)
スクリュー回転速度:100rpm
供給速度:5kg/hr
【0029】
<積層フィルムの作成方法>
押出しラミネーターを用いて、アルミニウム箔(35μ)に厚さ30μmで樹脂組成物を積層し積層フィルムを作成した。積層フィルム化可:○、積層フィルム化不可:×とした。以下に加工条件を示した。
押出しラミネーター:ムサシノキカイ製400M/MテストEXTラミネーター
ダイ直下樹脂温度:140〜240℃(樹脂組成物のMFR等により適宜調整した)
加工速度:30m/分
Tダイ幅:400mm
冷却ロール表面温度:20℃
【0030】
<エチレン−不飽和エステル共重合体>
EVA−1:ウルトラセン537(東ソー社製、酢酸ビニル含有量6%、MFR8.5g/10分)
EVA−2:エバテートD3010(住友化学工業社製、酢酸ビニル含有量10%、MFR6g/10分)
EVA−3:ウルトラセン545(東ソー社製、酢酸ビニル含有量11%、MFR9g/10分)
EVA−4:ウルトラセン625(東ソー社製、酢酸ビニル含有量15%、MFR14g/10分)
EVA−5:エバテートK2010(住友化学工業社製、酢酸ビニル含有量25%、MFR3g/10分)
【0031】
<粘着付与樹脂>
TF−1:KE−604(荒川化学工業社製、酸価238mgKOH/g、軟化点127℃)
TF−2:リカロジンF(理化ファインテク社製、酸価175mgKOH/g、軟化点72℃)
TF−3:テスポール1155(日立化成ポリマー社製、酸価190mgKOH/g、軟化点135℃)
TF−4:アルコンP−125(荒川化学工業社製、酸価0mgKOH/g、軟化点125℃)
TF−5:FTR6100(三井化学社製、酸価0.1mgKOH/g以下、軟化点100℃)
【0032】
<添加剤>
酸化防止剤:IRGANOX 1010(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)
ブロッキング防止剤:インクロスリップC(クローダ社製)
<剥離強度の測定方法>
積層フィルムを15mm幅に断裁したものとアルミ板、ガラス板、HDPE板、CPP板それぞれとを140℃×0.3MPa×1秒でヒートシールした。24時間放置後、引張強度試験機で180度角剥離、引張速度200mm/分、23℃−65%RH雰囲気下で接着強度を測定した。10N/15mm以上:○、5〜10N/15mm:△、5N/15mm以下:×とした。
引張強度試験機:オリエンテック社製テンシロンRTA−100型
【0033】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
不飽和エステル含量が共重合体全体の3〜11重量%であり、JIS K 7210に準拠して測定されるメルトフローレイトが0.5g〜100g/10分であるエチレン−不飽和エステル共重合体(A)70〜95重量%、および、
酸価が200〜300mgKOH/gの粘着付与樹脂(B)5〜30重量%を
含んでなる接着性樹脂組成物。
【請求項2】
さらに、酸価が0〜10mgKOH/gの粘着付与樹脂(C)を含み、かつ、
粘着付与樹脂(B)と粘着付与樹脂(C)との合計量が組成物全体の5〜30重量%である請求項1記載の接着性樹脂組成物。
【請求項3】
エチレン−不飽和エステル共重合体(A)が、エチレン−酢酸ビニル共重合体である請求項1または2記載の接着性樹脂組成物。
【請求項4】
JIS K 7210に準拠して測定されるメルトフローレイトが、10g〜100g/10分である請求項1〜3いずれか記載の接着性樹脂組成物。
【請求項5】
金属箔が積層してある基材、あるいは金属、金属酸化物、無機酸化物いずれかが蒸着してある基材に請求項1〜4いずれか記載の接着性樹脂組成物を積層してなる接着性フィルム。

【公開番号】特開2008−94869(P2008−94869A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−274822(P2006−274822)
【出願日】平成18年10月6日(2006.10.6)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【出願人】(591004881)東洋ペトロライト株式会社 (51)
【Fターム(参考)】