説明

接触冷感繊維及び繊維処理剤

【課題】糸や織物を後加工することによって製造が可能であり、接触冷感性に優れ、耐水性に優れ、黄変しにくく、柔らかくて風合いの良い接触冷感繊維及びそのような接触冷感繊維を製造するための繊維処理剤を提供することを解決すべき課題としている。
【解決手段】ムコ多糖類及びシルク由来のタンパク質の少なくとも1種からなる機能成分がバインダーによって繊維表面に固定されている。バインダーには、バインダー基剤としてのシリコーンエマルジョンと、架橋剤としてのポリエチレングリコールジグリシジルエーテルが含まれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は触れたときに冷たい感触を与える接触冷感繊維、及びその製造に用いるための繊維処理剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種繊維の肌触り、風合い、保湿性、光沢等の機能をより自然のものとするため、天然のシルクに含まれるシルクフィブロイン、セリシン等のたんぱく質や、動物の皮膚に含まれるヒアルロン酸等のムコ多糖類を機能成分として繊維に付着させる技術が知られている。天然のシルクの成分を繊維に付着させれば、手触り、光沢、絹擦れの音等を、天然の絹とよく似たものとすることができる。また、ムコ多糖類を繊維に付着させることにより、保湿性、吸湿性を繊維に付与することができる。
【0003】
例えば、特許文献1には、セリシンなどのシルク由来のタンパク質をポリエーテル変性シリコンポリマー、ポリエーテル、ポリグリセリンエステル、アルキノールアミド等の親水性のポリマーと混合し、物理的に繊維表面に付着させる技術が記載されている。この繊維処理剤によって繊維を処理すれば、透液性、耐久親水性、濡れ戻り性という相反する特性をバランスよく保持し、かつ柔軟で肌に優しい布帛とすることができる旨が記載されている。
【0004】
また、特許文献2の段落番号0017には、魚鱗由来のコラーゲンオリゴペプチドとオリゴキトサンとの反応組成物を、複数のイソシアネート基を有するウレタン系バインダーと混合した繊維処理剤によって繊維に付着させることにより、保湿性と抗菌性を有する繊維とすることができる旨記載されている。
さらに、同文献の段落番号0021〜0025には、アクリル系モノマーと有機シリコン化合物モノマーとの共重合体(共栄社化学株式会社製 商品名「ライトスポックS−60NF」)をバインダーとしても、同様の効果を奏する繊維とすることができる旨記載されている。
【0005】
また、特許文献3には、シルクフィブロインや加水分解コラーゲンを複数のイソシアネート基を有する架橋剤や、複数のアルデヒド基を有する架橋剤や、エチレンイミン系の架橋剤を用い、繊維に付着させる繊維処理剤が提案されている。この繊維処理剤によって繊維を処理すれば、天然物由来のたんぱく質やムコ多糖類を繊維に付着させることができ、抗菌、消臭、抗炎症、抗アレルギー、保湿、美白、等の機能を付与させることができると記載されている。
【0006】
一方、繊維に触れたときに冷たい感触を与える接触冷感性を有する接触冷感繊維としては、次のようなものが知られている。(1)エチレンビニルアルコール繊維をポリエステル繊維と混紡した冷感加工織布。(2)体温で相変化を起こし潜熱を奪うポリマーのマイクロカプセルを練りこんだレーヨン繊維を用いた冷感加工織布(3)ナイロンポリマー中に熱伝導性の高い特殊無機粒子を練りこんだ冷感加工織布。
【0007】
【特許文献1】特開2004−25828号公報 請求項4
【特許文献2】特開2004−308063号公報 段落番号0017、0021〜0025
【特許文献3】特開2000−212874号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記従来のムコ多糖類やシルク由来のタンパク質等の機能成分を利用した機能性繊維では、保湿性、吸水性、抗菌性、風合い、肌触り等の機能が付与された機能性繊維については知られているが、繊維に触れたときに冷たい感触を与える接触冷感繊維は知られていない。
【0009】
また、上記繊維処理剤によって処理した機能性繊維は、次のような欠点がある。
すなわち、上記特許文献1の繊維処理剤では、セリシンなどのシルク由来の親水性のタンパク質を単にポリエーテル変性シリコンポリマーやポリエーテル等の親水性のポリマーと物理的に混合しただけであり、これらのポリマーと化学的に結合しているわけではないので、耐水性に劣り、洗濯によってシルク由来のタンパク質が繊維から流出してしまうおそれがある。
【0010】
また、上記特許文献2に記載の、魚鱗由来のコラーゲンオリゴペプチドとオリゴキトサンとの反応組成物をアクリル系モノマーと有機シリコン化合物モノマーとの共重合体をバインダーとして繊維に付着させる繊維処理剤であっても、物理的混合にすぎず、やはり耐水性に劣り、洗濯によってコラーゲンオリゴペプチドとオリゴキトサンとの反応組成物が繊維から流出してしまうおそれがある。
【0011】
この点、特許文献2に記載されているイソシアネート基を有するウレタン系バインダーを用いれば、コラーゲンの有するアミノ基あるいはカルボン酸基とウレタン系バインダーのイソシアネート基とが化学結合するため、耐水性に優れた機能性繊維とすることができる。
また、上記特許文献3に記載の繊維処理剤において用いられている架橋剤(すなわち、複数のイソシアネート基を有する架橋剤や、複数のアルデヒド基を有する架橋剤や、エチレンイミン系の架橋剤)を用いても、同様に耐水性に優れた機能性繊維とすることができる。なぜならば、これらの架橋剤は、シルクフィブロインや加水分解コラーゲンのアミノ基やカルボン酸基と化学結合するからである。
しかしながら、これらの繊維処理剤ではシルクフィブロインや加水分解コラーゲンなどの機能成分をバインダー基剤に結合させるために、バインダー基剤に機能成分と化学結合する官能基を修飾させる必要がある。このため、バインダー基剤選択の自由度が小さく、バインダー基剤として耐水性に優れ、黄変しにくく、柔らかくて風合いの良いものを自由に選ぶことが困難であった。
【0012】
一方、上記エチレンビニルアルコール繊維をポリエステル繊維と混紡した冷感加工織布や、体温で相変化を起こし潜熱を奪うポリマーのマイクロカプセルを練りこんだレーヨン繊維を用いた冷感加工織布や、ナイロンポリマー中に熱伝導性の高い特殊無機粒子を練りこんだ接触冷感繊維では、あらかじめ冷感効果を有する特殊な繊維を製造してから織物としなければならない。このため、汎用性のある既存の糸や織物に対して後加工によって冷感効果を付与する接触冷感繊維に比べて、製造工程が複雑となり、製造コストが高くなる。また冷感効果もそれほど良好ではなく、洗濯耐久性に劣るという欠点も有している。
【0013】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、糸や織物を後加工することによって製造が可能であり、接触冷感性に優れ、耐水性に優れ、黄変しにくく、柔らかくて風合いの良い接触冷感繊維及びそのような接触冷感繊維を製造するための繊維処理剤を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、ムコ多糖類やシルク由来のタンパク質等の機能成分を繊維に固定化する方法として、繊維に絡みつきやすい高分子に機能成分を直接化学結合させて固定化するのではなく、繊維に絡みつきやすい高分子に架橋剤を用いて間接的に機能成分を結合させれば、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明の接触冷感繊維は、ムコ多糖類及びシルク由来のタンパク質の少なくとも1種からなる機能成分がバインダーによって繊維表面に固定されており、
前記バインダーには、高分子からなるバインダー基剤と、該バインダー基剤の有する官能基及び前記機能成分と化学結合して架橋構造を形成することが可能な複数個の官能基を有する架橋剤とが含まれていることを特徴とする。
【0016】
本発明の接触冷感繊維では、ムコ多糖類及びシルク由来のタンパク質の少なくとも1種からなる機能成分がバインダー基剤と架橋剤とからなるバインダーによって繊維表面に固定されている。架橋剤は、高分子からなるバインダー基剤及び機能成分のどちらにも化学結合することが可能な複数個の官能基を有しているため、機能成分及びバインダー基剤の双方に化学結合することができる。このため、機能成分を単なる高分子からなるバインダー基剤に物理的に混合した場合と異なり、機能成分がバインダー基剤から脱落し難く、耐水性に優れたものとなる。
【0017】
また、機能成分は架橋剤を介して間接的にバインダー基剤に結合するため、バインダー基剤に機能成分と化学結合する官能基を修飾させる必要がない。このため、バインダー基剤選択の自由度が大きくなり、バインダー基剤として耐水性に優れ、黄変しにくく、柔らかくて風合いの良いものを選ぶことが可能となる。
【0018】
さらに、発明者らの試験結果によれば、本発明の接触冷感繊維は、従来ムコ多糖類及びシルク由来のタンパク質を付着させた機能性繊維について知られていた保湿性、吸湿性といった特性のみならず、触れたときに冷たい感触を与える機能に優れている。
【0019】
また、本発明の接触冷感繊維は、糸や織物を後加工することによって製造が可能であり、特殊な糸や織物を用いる必要がなく、どのような種類の糸や織物であっても適用することができる。このため、製造コストも低廉なものとなる。
【0020】
したがって、本発明の接触冷感繊維は、糸や織物を後加工することによって製造が可能であり、耐水性に優れ、黄変しにくく、柔らかくて風合いが良い接触冷感繊維となる。
【0021】
本発明の接触冷感繊維において、繊維の種類についてはとくに限定はなく、ポリエステル、レーヨン、ナイロン等の合成繊維、綿、麻等の天然繊維のいずれについても適用可能である。また、ムコ多糖類としては特に限定はないが、例えばヒアルロン酸、コンドロイチン、これらの混合物などが挙げられる。さらに、シルク由来のタンパク質としては、シルクフィブロイン、セリシン、これらの混合物などが挙げられる。
【0022】
架橋剤は官能基としてエポキシ基及びアルコキシシリル基の少なくとも一方を有することが好適である。架橋剤が官能基としてエポキシ基を有しておれば、ムコ多糖類やシルク由来のタンパク質に存在するアミノ基やカルボン酸基と容易に化学結合することができる。また、エポキシ基と結合する官能基は数多くあるので、バインダー基剤としての選択の自由度も高くなる。このため、数多くあるバインダー基剤の中から耐水性に優れ、黄変しにくく、柔らかくて風合いの良いものを選択することができる。
官能基としてエポキシ基を有する架橋剤としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ソルビトール、ポリグリセロール、ジグリセロール、グリセロール、1,6−ヘキサンジオール等の多価アルコールにエポキシ基を修飾させたもの等が挙げられる。また、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、トリグリシジル−トリス(2−ヒドロキシヘキシル)イソシアヌレート、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、オルト−フタル酸ジグリシジルエーテル、ヒドロキノンジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、テレフタル酸ジグリシジルエーテル、ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エポキシクレゾールノボラック樹脂エマルジョン、変性ビスフェノールA型エポキシエマルションなどを用いることもできる。
【0023】
また、官能基としてアルコキシシリル基を有する架橋剤を用いることも好ましい。アルコキシシリル基は加水分解により反応性に冨むシラノール基となるため、ムコ多糖類やシルク由来のタンパク質に存在するアミノ基やカルボン酸基と容易に化学結合することができる。また、エポキシ基と結合する官能基は数多くあるので、バインダー基剤としての選択の自由度も高くなる。このため、数多くあるバインダー基剤の中から耐水性に優れ、黄変しにくく、柔らかくて風合いの良いものを選択することができる。アルコキシシリル基を有する架橋剤としては、モノアルコキシシリル化合物の他、ジアルコキシシリル化合物、トリアルコキシシリル化合物を用いることもできる。
このような架橋剤として具体的にはビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、γ-メタグリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メタグリロキシプロピルトリメトキシシラン、
γ-メタグリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-メタグリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-アクリロキシトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチルブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0024】
また、架橋剤は親水基を有することも好ましい。機能成分であるムコ多糖類及びシルク由来のタンパク質は水溶性物質であるため、架橋剤が親水基を有すれば、架橋剤と機能成分との反応を容易に行わせることができる。こうした親水基を有する架橋剤としては、バインダー基剤の有する官能基及び機能成分と化学結合して架橋構造を形成する物質であれば用いることができる。この中でも、ポリエーテル鎖にエポキシ基が結合した架橋剤は特に好適である。このような架橋剤であれば、ポリエーテル鎖によって親水性が増すため、ムコ多糖類やシルク由来のタンパク質等の水溶性の機能成分と容易に反応させることができるからである。このようなポリエーテル鎖としては、ポリエチレングリコール鎖やポリプロピレングリコール鎖等が挙げられるが、中でもポリエチレングリコール鎖は親水性が大きく特に好適である。この場合において、ポリエチレングリコール鎖の繰り返し単位の数nは10以下であることが好ましい。ポリエチレングリコール鎖10以下であれば、架橋剤の反応活性が高くなる。さらに好ましいのは2〜4の範囲である。この範囲のポリエチレングリコール鎖であれば、合成容易で安価であり、反応性も高く、親水性も有するため、容易に架橋反応を行うこともできる。
【0025】
バインダー基剤としては、架橋剤の官能基と化学結合する官能基を有する高分子であれば用いることができる。バインダー基剤がシリコーンや、アクリル系ポリマーエマルションとシリコーンエマルションとの混合物であれば、シリコーンに存在する末端の水酸基によって架橋剤の官能基と化学結合させることができ、風合いもしなやかとなり好適である。
【0026】
本発明の接触冷感繊維は、本発明の繊維処理剤によって繊維を処理することによって製造することができる。すなわち、本発明の繊維処理剤は、ムコ多糖類及びシルク由来のタンパク質の少なくとも1種からなる機能成分と、該機能成分を繊維に付着させるためのバインダーとが含まれており、該バインダーには、高分子からなるバインダー基剤のエマルションと、該バインダー基剤の有する官能基及び機能成分と化学結合して架橋構造を形成することが可能な複数個の官能基を有する架橋剤とが含まれていることを特徴とする。
【0027】
本発明の繊維処理剤を用いて本発明の接触冷感繊維を製造するには、まず繊維や布帛を本発明の繊維処理剤の水溶液中に浸漬する。その後、乾燥させることによって本発明の接触冷感繊維となる。乾燥工程において、高分子からなるバインダー基剤のエマルションは繊維表面にバインダー基剤のコーティング層を形成する。そして、このバインダー基剤の有する官能基と架橋剤の官能基とが結合するとともに、機能成分のアミノ基やカルボン酸基が架橋剤の官能基と化学結合し、バインダー基剤のコーティング層に架橋剤を介して機能成分が化学結合により修飾された構造となる。こうして、きわめて簡単に接触冷感繊維を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下本発明をさらに具体化した実施例について比較例と比較しつつ説明する。
【0029】
(実施例1)
実施例1では次の組成の繊維処理剤を調製した。
・シルクフィブロイン5%水溶液・・・・・・・・・・・・・・ 8質量%
(商品名:ナチュラスSP−5 高松油脂(株)製)
・ムコ多糖類ディスパージョン・・・・・・・・・・・・・・ 10質量%
(商品名:フィニッシュエジェント SK 高松油脂(株)製)
・シリコーンエマルジョン(バインダー基剤、下記化学式参照)
【化1】

(商品名:KT−7014 高松油脂株式会社製)・・・・・・3質量%
・ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(架橋剤) 0.5質量%
(商品名:CAT−SP−5 高松油脂(株)製)
ポリエチレングリコール鎖の重合度n=2、下記構造式参照)
【化2】

・柔軟剤(ポリアミン樹脂・アミノシリコーン分散物の混合体)・1質量%
(商品名:ラノテックスYO 高松油脂(株)製)
・コンプレックス防止剤
(商品名:スカルナーDN 高松油脂(株)製)・・・・0.5質量%
・水・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 残部
【0030】
(実施例2)
実施例2では次の組成の繊維処理剤を調製した。
・シルクフィブロイン5%水溶液・・・・・・・・・・・・・・ 5質量%
(商品名:ナチュラスSP−5 高松油脂(株)製)
・ムコ多糖類ディスパージョン・・・・・・・・・・・・・・ 10質量%
(商品名:フィニッシュエジェントSK 高松油脂(株)製)
・ ポリアルキルアクリレートコポリマーエマルションと
シリコーンエマルションとの混合物(バインダー基剤)
(商品名:TKバインダー−SF 高松油脂(株)製)・・・・5質量%
・ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(架橋剤)
0.5質量%
(実施例1と同じもの)
・水・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 残部
【0031】
(実施例3)
実施例3では次の組成の繊維処理剤を調製した。
・シルクフィブロイン5%水溶液・・・・・・・・・・・・・・・5質量%
(商品名:ナチュラスSP−5 高松油脂(株)製)
・シリコーンエマルジョン(実施例1と同じバインダー基剤)
(商品名:KT−7014 高松油脂株式会社製)・・・・・・ 3質量%
・ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(架橋剤)・ 0.5質量%
(実施例1と同じもの)
・コンプレックス防止剤
(商品名:スカルナーDN 高松油脂(株)製)・・・・0.5質量%
・水・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・残部
【0032】
(実施例4)
実施例4では次の組成の繊維処理剤を調製した。
・ムコ多糖類ディスパージョン・・・・・・・・・・・・・・・10質量%
(商品名:フィニッシュエジェント SK 高松油脂(株)製)
・シリコーンエマルジョン(実施例1と同じバインダー基剤)
(商品名:KT−7014 高松油脂株式会社製)・・・・・・ 3質量%
・ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(架橋剤)・ 0.5質量%
(実施例1と同じもの)
・水・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・残部
【0033】
(実施例5)
実施例5では次の組成の繊維処理剤を調製した。
・シルクフィブロイン5%水溶液・・・・・・・・・・・・・・・5質量%
(商品名:ナチュラスSP−5 高松油脂(株)製)
・ムコ多糖類ディスパージョン・・・・・・・・・・・・・・・10質量%
(商品名:フィニッシュエジェント SK 高松油脂(株)製)
・シリコーンエマルジョン(実施例1と同じバインダー基剤)
(商品名:KT−7014 高松油脂株式会社製)・・・・・・ 3質量%
・ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(架橋剤)・ 0.5質量%
(実施例1と同じもの)
・コンプレックス防止剤
(商品名:スカルナーDN 高松油脂(株)製)・・・・0.5質量%
・水・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・残部
【0034】
(実施例6)
実施例6では次の組成の繊維処理剤を調製した。
・シルクフィブロイン5%水溶液・・・・・・・・・・・・・・・8質量%
(商品名:ナチュラスSP−5 高松油脂(株)製)
・ムコ多糖類ディスパージョン・・・・・・・・・・・・・・・10質量%
(商品名:フィニッシュエジェント SK 高松油脂(株)製)
・シリコーンエマルジョン(実施例1と同じバインダー基剤)
(商品名:KT−7014 高松油脂株式会社製)・・・・・・ 3質量%
・γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(架橋剤)・ 0.5質量%
(下記化学式参照)
【化3】

・コンプレックス防止剤
(商品名:スカルナーDN 高松油脂(株)製)・・・・0.5質量%
・水・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・残部
【0035】
上記実施例1〜実施例6の繊維処理剤をパッドに入れ、ポリエステル織布(素材:ポリエチレンテレフタレート)をパッド内に通過させることによってポリエステル織布を繊維処理剤に浸漬し、それに続いて絞り処理(pick up率80%)を行った。そして、110℃で3分間の乾燥を行い、さらに、160℃で1分間の熱処理を行うことにより、実施例1〜実施例6の接触冷感繊維布帛を得た。
【0036】
(比較例1)
比較例1の接触冷感繊維は、エチレンビニルアルコール繊維をポリエステル繊維と混紡した市販の接触冷感繊維布帛である。
【0037】
(比較例2)
比較例2の接触冷感繊維は、体温で相変化を起こし潜熱を奪うポリマーのマイクロカプセルを練りこんだレーヨン繊維を用いた市販の接触冷感繊維布帛である。
【0038】
(比較例3)
比較例3の接触冷感繊維は、ナイロンポリマー中に熱伝導性の高い特殊無機粒子を練りこんだ市販の接触冷感繊維布帛である。
【0039】
上記実施例1〜6及び比較例1〜3の接触冷感繊維布帛について、以下に示す方法によりq−max(人が布帛を触ったときに感じる冷たさや暖かさを表す数値)の測定、接触冷感試験、風合い試験、変色性試験及び摩擦堅ろう度試験を行った。
【0040】
q−maxの測定方法
q−maxは、精密迅速熱物性測定装置(商品名:サーモラボII型 カトーテック株式会社製)を用いて測定した。この装置は、図1に示すように、試料となる布帛1を貼り付ける試料台2と、検出器3とを備えている。検出器3の一面には銅薄板3aが貼られれており、銅薄板3の裏面には温度センサー3bが取り付けられている。試料台2及び検出器3には、図示しないヒータが取り付けられており、図示しない制御装置によって、それぞれ独立して温度を設定することが可能とされている。
【0041】
まず、試料台2と検出器3を図1Aに示すように、離れた状態とし、試料台2に測定する布帛1を貼り付ける。そして、制御装置によって試料台2を20°Cに設定し、検出器3の銅薄板3aの温度を30°Cに設定した。その後、図1Bに示すように、試料台2と検出器3の銅薄板3aとを接触させると同時に、温度センサー3bからのセンサー出力を記録する。このとき、銅薄板3aは布帛1を介して試料台2に熱を奪われ、温度が低下する。こうして得られる温度変化の曲線を時間で微分すると、銅薄板3aを試料台2に接触させた直後に最大値が現れる。このときの最大熱吸着速度をq−maxとした。このq−maxの値と熟練者による接触冷感性能の官能検査結果とは良い相関を示すことがわかっている。また、q−maxの値が大きいほど、人が触ったときの冷感が大きく感じられる。具体的には、q−maxが0.1以上であれば、人は接触冷感性を感じることができる。
なお、各試料は、洗濯をしていないもの、10回洗濯を繰り返したもの、及び20回洗濯を繰り返したもの、について測定した。
【0042】
接触冷感官能試験
接触冷感試験は、試験片を20℃で60%RHの雰囲気の中に5時間放置した後、被験者の手の甲及び腕に1分間接触させ、そのときの被験者が感じた接触冷感を1〜6の6段階(「1」は感じられない、「2」はごくわずかに感じる、「3」はわずかに感じる、「4」は感じる、「5」はかなり感じる、「6」は強く感じる)で評価した。
【0043】
風合い試験
風合い試験は、被験者が試験片を触ったときの感触を1〜6の6段階(「1」はゴワゴワする、「2」は少しゴワゴワする、「3」は普通、「4」は少し柔らかく感ずる、「5」は柔らかく感ずる、「6」は極めて柔らかく感じる)で評価した。
【0044】
変色性試験
変色性試験は、接触冷感繊維布帛を調製におけるセット工程前後における色の変化を視覚により判断した。
【0045】
摩擦堅ろう度試験
摩擦堅ろう度試験は、JIS L0849−IIの方法に準じて行った。
【0046】
(結 果)
上記各試験の結果を表1〜表5に示す。
【0047】
【表1】

【0048】
表1から、実施例1〜実施例6の接触冷感繊維は、比較例1及び比較例2の接触冷感繊維よりも接触冷感性能に優れていることが分かる。また、洗濯に対する堅ろう度も優れている。これは、接触冷感を発揮するための機能成分であるシルクフィブロイン及びムコ多糖類と、バインダー基剤であるシリコーンエマルジョンやポリアルキルアクリレートコポリマーエマルションとシリコーンエマルションとの混合物が、架橋剤であるポリエチレングリコールジグリシジルエーテルのエポキシ基と化学結合して架橋構造を形成するためである。特にシルクフィブロイン及びムコ多糖類を両方含んだ実施例1及び実施例2では、機能成分の相乗効果により特に接触冷感性能に優れていた。また、表2に示すように、接触冷感官能試験においても、実施例1及び実施例6は優れた接触冷感性能を有していた。
【0049】
また、比較例1〜3の接触冷感繊維は、あらかじめ冷感効果を有する特殊な繊維を製造してから織物としなければならない。これに対して、実施例1〜実施例6の接触冷感繊維では、後加工で冷感効果を付与することが可能である。このため、製造が容易で製造コストも低廉であった。
【0050】
【表2】

【0051】
【表3】

【0052】
また、表3に示すように、実施例1〜実施例6は柔らかくて風合いが良く、その中でも柔軟剤を添加した実施例1及び実施例6は、特に風合いがよかった。
【0053】
【表4】

【0054】
さらに、表4に示すように、変色性試験において実施例1〜実施例6はセット前後において、視認できるような変色は示さなかった。これは、変色し難いシラン系やエポキシ系の架橋剤を用いているためである。以上の結果から、本発明の繊維処理剤に用いる架橋剤としては、シラン系やエポキシ系のものが好ましいことが分かった。
【表5】

【0055】
また、表5に示すように、実施例1〜6の摩擦堅ろう度は3.5〜4.0であり、高い摩擦堅ろう度を有することが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】精密迅速熱物性測定装置の模式図である。
【符号の説明】
【0057】
1…布帛(接触冷感繊維)
2…試料台
3…検出器
3a…銅薄板
3b…温度センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ムコ多糖類及びシルク由来のタンパク質の少なくとも1種からなる機能成分がバインダーによって繊維表面に固定されており、
前記バインダーには、高分子からなるバインダー基剤と、該バインダー基剤の有する官能基及び前記機能成分と化学結合して架橋構造を形成することが可能な複数個の官能基を有する架橋剤とが含まれていることを特徴とする接触冷感繊維。
【請求項2】
前記架橋剤は官能基としてエポキシ基及びアルコキシシリル基の少なくとも一方を有することを特徴とする請求項1記載の接触冷感繊維。
【請求項3】
前記架橋剤は親水基を有することを特徴とする請求項1又は2記載の接触冷感繊維。
【請求項4】
前記架橋剤は親水基としてのポリエーテル鎖にエポキシ基が修飾された化合物であることを特徴とする請求項3記載の接触冷感繊維。
【請求項5】
前記ポリエーテル鎖はポリエチレングリコール鎖であることを特徴とする請求項4記載の接触冷感繊維。
【請求項6】
前記ポリエチレングリコール鎖の繰り返し単位の数nは1〜10であることを特徴とする請求項5記載の接触冷感繊維。
【請求項7】
バインダー基剤はシリコーンであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の接触冷感繊維。
【請求項8】
バインダー基剤はアクリル系ポリマーエマルションとシリコーンエマルションとの混合物であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載の接触冷感繊維。
【請求項9】
機能成分にはシルクフィブロイン及びセリシンの少なくとも1種が含まれていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項記載の接触冷感繊維。
【請求項10】
ムコ多糖類及びシルク由来のタンパク質の少なくとも1種からなる機能成分と、該機能成分を繊維に付着させるためのバインダーとが含まれており、該バインダーには、高分子からなるバインダー基剤のエマルションと、該バインダー基剤の有する官能基及び機能成分と化学結合して架橋構造を形成することが可能な複数個の官能基を有する架橋剤とが含まれていることを特徴とする繊維処理剤。
【請求項11】
前記架橋剤はポリエーテル鎖にエポキシ基が修飾された化合物であることを特徴とする請求項10記載の繊維処理剤。
【請求項12】
前記ポリエーテル鎖はポリエチレングリコール鎖であることを特徴とする請求項11記載の繊維処理剤。
【請求項13】
前記ポリエチレングリコール鎖の繰り返し単位の数nは1〜10であることを特徴とする請求項12記載の繊維処理剤。
【請求項14】
バインダー基剤はシリコーンであることを特徴とする請求項10乃至13のいずれか1項記載の繊維処理剤。
【請求項15】
バインダー基剤はアクリル系ポリマーエマルションとシリコーンエマルションとの混合物であることを特徴とする請求項10乃至13のいずれか1項記載の繊維処理剤。

【図1】
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【公開番号】特開2007−224429(P2007−224429A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−43400(P2006−43400)
【出願日】平成18年2月21日(2006.2.21)
【出願人】(397022391)株式会社サカイナゴヤ (7)
【出願人】(000169651)高松油脂株式会社 (8)
【Fターム(参考)】