説明

接触式変位計の取付具および取付構造

【課題】接触式変位計を狭い場所でも確実に固定することが可能な接触式変位計の取付具および取付構造を提供することである。
【解決手段】板状部材810の一面側の貫通孔810aの縁部には、貫通孔810aの内周面に対して所定の角度をなすように面取り部810bが形成される。締結部材820のフランジ部823は、たわみ部822の外周面から斜め上方に漸次広がる傾斜面823aを有する。締結部材820が板状部材810の一面側から貫通孔810aに挿入されるとともに、締結部材820内にヘッド部100Aの外筒220が挿入される。さらに、板状部材810の他面側から突出する締結部材820のねじ切り部821にナット830が螺合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接触式変位計の取付具および取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
接触式変位計は、対象物の表面に当接されるとともに軸方向に変位可能な接触子(可動部)およびトランスを有する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記トランスは、接触子に連動するコアを備える。このコアが接触子の変位に応じて変位することにより、接触子の変位量に対応してトランスから出力される信号のレベルが変化する。このような構成において、対象物の物理的変位量が電気量に変換されることにより、当該対象物の高さ等の物理的変位量が測定される。
【0004】
接触式変位計は、一般的に、トランスを含むヘッド部と当該ヘッド部を制御する本体部とからなる(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2000−9412号公報
【特許文献2】特開2002−131037号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の接触式変位計を用いて対象物の物理的変位量を測定するためには、接触式変位計のヘッド部を測定場所に確実に固定する必要がある。例えば、ヘッド部が測定場所に設けられた支持部材に金具を用いて固定される。
【0006】
しかしながら、ヘッド部を取り付けるためのスペースが狭い場合には、長い金具を用いることができない、それにより、ヘッド部を確実に固定することが困難な場合がある。ヘッド部が確実に固定されていない場合、接触子が対象物に接触することによりヘッド部が動き、測定精度が低下する。
【0007】
本発明の目的は、接触式変位計を狭い場所でも容易かつ確実に固定することが可能な接触式変位計の取付具および取付構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) 第1の発明に係る接触式変位計の取付具は、接触子を移動可能に収容する筒状部材を有し、対象物の物理的変位量を測定する接触式変位計を、孔部を有する支持部材に固定するための取付具であって、支持部材の孔部に挿入される筒状の保持部材と、保持部材を支持部材に固定する固定部材とを備え、保持部材は、支持部材の孔部内に挿入される挿入部と、挿入部が孔部内に挿入された状態で支持部材の一面側に突出するとともに挿入部よりも大きな外径を有するフランジ部と、挿入部が孔部内に挿入された状態で支持部材の他面側に突出するとともにねじが形成されたねじ部とを有し、フランジ部は、挿入部の外周面から斜め外方に傾斜する傾斜面を有し、固定部材は、支持部材の他面側に突出した保持部材のねじ部に螺合されるねじ孔を有し、保持部材内に接触式変位計の筒状部材が挿入されるものである。
【0009】
第1の発明に係る接触式変位計の取付具においては、支持部材の孔部に筒状の保持部材が挿入されるとともに、保持部材内に接触式変位計の筒状部材が挿入される。この場合、保持部材の挿入部が支持部材の孔部内に挿入され、挿入部よりも大きな外径を有するフランジ部が支持部材の一面に係止される。また、ねじが形成されたねじ部が支持部材の他面側に突出する。この状態で、保持部材が支持部材の孔部内に押し込まれるとともに、支持部材のねじ部には固定部材が螺合される。
【0010】
フランジ部は挿入部の外周面から斜め外方に傾斜する傾斜面を有する。それにより、フランジ部の傾斜面が支持部材の孔部の縁部に当接するとともに、支持部材の孔部の縁部からフランジ部の傾斜面に内方への力が加わる。そのため、保持部材の挿入部が内方にたわみ、接触式変位計の筒状部材を適度な力で締め付けるように保持する。その結果、筒状部材の変形が防止されつつ接触式変位計が支持部材に確実に固定される。
【0011】
このように、フランジ部の傾斜面の作用により挿入部を内方へたわませることにより接触式変位計の筒状部材を締め付けることができるので、支持部材から突出する保持部材の長さを小さくすることができる。それにより、取付具による接触式変位計の取付場所の自由度が大きくなる。したがって、接触式変位計の取付位置の変更が容易になるとともに、接触式変位計を狭い場所でも容易かつ確実に固定することが可能になる。
【0012】
(2) 保持部材は、フランジ部の端面から挿入部に延びる切欠きを有してもよい。
【0013】
この場合、保持部材の可撓性が向上される。そのため、保持部材が支持部材の孔部に押し込まれることにより、保持部材の挿入部が容易にたわむことができる。それにより、保持部材が接触式変位計の筒状部材をより確実に締め付けることができる。したがって、接触式変位計を支持部材に確実に固定することができる。
【0014】
(3) 切欠きは、保持部材の軸心を中心として等角度間隔で複数設けられてもよい。
【0015】
この場合、保持部材が支持部材の孔部に押し込まれることにより、保持部材が軸心を中心として均一にたわむので、接触式変位計の筒状部材に均一に力が加わる。そのため、筒状部材の変形が防止されるとともに、接触式変位計を支持部材に確実に固定することができる。
【0016】
(4) 保持部材の挿入部およびねじ部は等しい内径を有し、フランジ部は挿入部およびねじ部と等しい内径から外方に向かって漸次拡大する内径を有してもよい。
【0017】
この場合、接触式変位計の筒状部材の外周面が保持部材の挿入部およびねじ部の内周面で確実に締め付けられる。それにより、接触式変位計の筒状部材が支持部材により確実に固定される。
【0018】
また、保持部材のフランジ部の内径が挿入部およびねじ部の内径から外方に向かって漸次拡大するため、接触式変位計の筒状部材を保持部材内に容易に挿入することができる。
【0019】
(5) 第2の発明に係る接触式変位計の取付構造は、接触子を移動可能に収容する筒状部材を有し、対象物の物理的変位量を測定する接触式変位計を固定するための取付構造であって、測定場所に配置され、孔部を有する支持部材と、支持部材の孔部に挿入される筒状の保持部材と、保持部材を支持部材に固定する固定部材とを備え、支持部材は、一面側における孔部の縁部に外方に向かって径大となる傾斜面を有し、保持部材は、支持部材の孔部内に挿入される挿入部と、挿入部が孔部内に挿入された状態で支持部材の一面側に突出するとともに挿入部よりも大きな外径を有するフランジ部と、挿入部が孔部内に挿入された状態で支持部材の他面側に突出するとともにねじが形成されたねじ部とを有し、フランジ部は、支持部材の傾斜面に対応して挿入部の外周面から斜め外方に傾斜する傾斜面を有し、固定部材は、支持部材の他面側に突出した保持部材のねじ部に螺合されるねじ孔を有し、保持部材内に接触式変位計の筒状部材が挿入されるものである。
【0020】
第2の発明に係る接触式変位計の取付構造においては、支持部材の孔部に筒状の保持部材が挿入されるとともに、保持部材内に接触式変位計の筒状部材が挿入される。この場合、保持部材の挿入部が支持部材の孔部内に挿入され、挿入部よりも大きな外径を有するフランジ部が支持部材の一面に係止される。また、ねじが形成されたねじ部が支持部材の他面側に突出する。この状態で、保持部材が支持部材の孔部内に押し込まれるとともに、支持部材のねじ部には固定部材が螺合される。
【0021】
フランジ部は挿入部の外周面から斜め外方に傾斜する傾斜面を有する。それにより、フランジ部の傾斜面が支持部材の孔部の縁部に当接するとともに、支持部材の孔部の縁部からフランジ部の傾斜面に内方への力が加わる。そのため、保持部材の挿入部が内方にたわみ、接触式変位計の筒状部材を適度な力で締め付けるように保持する。その結果、筒状部材の変形が防止されつつ接触式変位計が支持部材に確実に固定される。
【0022】
このように、フランジ部の傾斜面の作用により挿入部を内方へたわませることにより接触式変位計の筒状部材を締め付けることができるので、支持部材から突出する保持部材の長さを小さくすることができる。それにより、取付具による接触式変位計の取付場所の自由度が大きくなる。したがって、接触式変位計の取付位置の変更が容易になるとともに、接触式変位計を狭い場所でも容易かつ確実に固定することが可能になる。
【0023】
(6) 支持部材は、一面側における孔部の縁部に、保持部材のフランジ部の傾斜面に対応して斜め外方に向かって傾斜する傾斜面を有してもよい。
【0024】
この場合、保持部材が支持部材の孔部内に押し込まれる際に、フランジ部の傾斜面が支持部材の孔部の傾斜面に当接する。それにより、支持部材の傾斜面からフランジ部の傾斜面に広い面積で力が加わる。そのため、保持部材の挿入部が円滑に内方にたわむことができ、保持部材の挿入部で接触式変位計の筒状部材を確実に締め付けることができる。その結果、接触式変位計を支持部材に確実に固定することができる。
【0025】
また、支持部材からフランジ部に局所的な力が加わることが防止されるので、フランジ部の損傷が防止される。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、支持部材から突出する保持部材の長さを小さくすることができる。それにより、取付具による接触式変位計の取付場所の自由度が大きくなる。したがって、接触式変位計の取付位置の変更が容易になるとともに、接触式変位計を狭い場所でも容易かつ確実に固定することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の一実施の形態に係る接触式変位計について図面を参照して説明する。
【0028】
(1)接触式変位計の構成
図1は、本実施の形態に係る接触式変位計の構成を示すブロック図である。
【0029】
図1に示すように、本実施の形態に係る接触式変位計100は、ヘッド部100Aおよび本体部100Bを備える。
【0030】
ヘッド部100Aおよび本体部100Bは互いにケーブル512により接続されている。また、本体部100Bはケーブル81を介して図示しない外部装置に接続される。
【0031】
ヘッド部100Aは、主に、ヘッドケース110、シャフトカバー部200、シャフト部300およびフレーム部400から構成される。ヘッドケース110は略直方体で一面に開口部を有する。シャフトカバー部200はヘッドケース110の一端面に取り付けられている。シャフトカバー部200は、円筒状の外筒220を含む。シャフト部300はヘッドケース110内およびシャフトカバー部200内において変位可能に設けられている。また、フレーム部400はヘッドケース110内に収納されている。
【0032】
接触式変位計100では、ヘッド部100Aにおけるシャフト部300の移動距離(変位量)に基づいて、対象物の高さ等の物理的変位量が測定される。
【0033】
なお、図1のヘッド部100Aは、内部の構成を明確に示すために、後述の開口部カバーを取り外した状態で示されている。
【0034】
(2)接触式変位計の取付
接触式変位計100により対象物を測定する際には、ヘッド部100Aが工作機械または産業用ロボット等の各種装置または支持部材に固定される。その場合、ヘッド部100Aのシャフト部300の先端部が対象物に接触するので、正確な測定値を得るためには、ヘッド部100Aを確実に固定する必要がある。その一方、ヘッド部100Aのヘッドケース110を強い力で固定した場合、ヘッドケース110が変形または破損する可能性がある。
【0035】
そこで、本実施の形態では、以下に説明する取付具を用いてヘッド部100Aのシャフトカバー部200が確実に固定される。
【0036】
図2は、図1のヘッド部100Aが板状部材に取り付けられた状態を示す図である。
【0037】
図2に示すように、ヘッド部100Aのシャフトカバー部200が取付具800により板状部材810に固定されている。ヘッド部100Aは、板状部材810の貫通孔810aに挿入された状態である。板状部材810は、対象物の測定場所に固定されてもよく、各種装置またはヘッド部100Aを支持するための支持部材に固定されてもよい。あるいは、板状部材810は、各種装置の一部またはヘッド部100Aを支持するための支持部材の一部であってもよい。
【0038】
取付具800は締結部材820およびナット830を含む。ヘッド部100Aのシャフトカバー部200は締結部材820により締め付けるように保持され、板状部材810の下面側から突出する締結部材820の部分にナット830が螺合される。これにより、ヘッド部100Aが、板状部材810に確実に固定される。以下、その詳細を説明する。
【0039】
(3)取付具の詳細
図3は、図2の取付具800および板状部材810を示す斜視図である。図4(a)は図2の板状部材810の平面図であり、図4(b)は、板状部材810の側面図である。図5(a)は、図2の締結部材820の平面図であり、図5(b)は、締結部材820の側面図である。
【0040】
図3に示すように、取付具800は、締結部材820およびナット830を含む。締結部材820には、例えばSUS等の金属、または合成樹脂等の材料が用いられる。
【0041】
図4(a)および図4(b)に示すように、板状部材810の中央部には、円形の貫通孔810aが形成される。また、板状部材810の一面側の貫通孔810aの縁部には、貫通孔810aの内周面に対して角度θ1をなすように面取り部810bが形成される。
【0042】
図5(a)および図5(b)に示すように、締結部材820は、円筒状のねじ切り部821、円筒状のたわみ部822および環状のフランジ部823からなる。ねじ切り部821は、たわみ部822と等しい内径および外形を有し、たわみ部822の下端に一体的に形成されている。ねじ切り部821の外周面にはねじ切り加工が施されている。フランジ部823は、たわみ部822の上端に一体的に形成され、たわみ部822の外周面から斜め上方に漸次広がる傾斜面823aおよびたわみ部822よりも径大の外周面823bを有する。フランジ部823の外周面823bには曲面状の複数の凹部823cが形成されている。なお、締結部材820の軸心に対する傾斜面823aの角度θ2は、板状部材810の貫通孔810aの内周面に対する面取り部810bの角度θ1にほぼ等しい。
【0043】
また、締結部材820の軸心を中心として等角度間隔で複数の割溝820aが形成されている。割溝820aは、フランジ部823側の上端からねじ切り部821の近傍部分まで締結部材820の軸心に平行な方向に延びている。
【0044】
次に、取付具800によるヘッド部100Aの固定方法について説明する。
【0045】
図6は、取付具800によりヘッド部100Aが板状部材810に固定された状態を示す図である。図7は、取付具800によるヘッド部100Aの固定方法を説明するための図である。なお、図7においては、ヘッド部100Aの外筒220のみを示す。
【0046】
図6に示すように、締結部材820が板状部材810の一面側から貫通孔810aに挿入されるとともに、締結部材820内にヘッド部100Aの外筒220が挿入される。さらに、板状部材810の他面側から突出する締結部材820のねじ切り部821にナット830が螺合される。
【0047】
これにより、図7に示すように、締結部材820が矢印M1で示すように板状部材810に対して押し込まれる。それにより、板状部材810の面取り部810bから締結部材820の傾斜面823aに矢印M2で示すように内方への力が加わる。この場合、締結部材820のたわみ部822が内方にたわみ、たわみ部822が外筒220の外周面を適度な力で締め付けるように保持する。その結果、ヘッド部100Aの外筒220の変形が防止されつつヘッド部100Aが板状部材810に確実に固定される。
【0048】
このように、板状部材810の貫通孔810aの縁部に面取り部810bが設けられるとともに、締結部材820のフランジ部823に傾斜面823aが設けられることにより、締結部材820によりヘッド部100Aが締結されるとともに、ヘッド部100Aが板状部材810に確実に固定される。
【0049】
また、本実施の形態では、板状部材810から突出する締結部材820の部分の長さD1(図2)を小さくすることができる。ここで、図8を参照して、本実施の形態の取付具800と従来の取付具とを比較する。
【0050】
図8(a)は板状部材810に取り付けられた従来の取付具の一例を示す斜視図であり、図8(b)は、図8(a)の側面図である。
【0051】
図8に示すように、従来の取付具では、締結部材920の一端に設けられた保持部922により、ヘッド部100Aのシャフトカバー部200が保持される。この場合、保持部922が板状部材810の一面から突出する状態で締結部材920の他端にナット830が螺合される。それにより、板状部材810の上面から突出する締結部材920の部分の長さD2が大きくなる。
【0052】
これに対して、本実施の形態では、軸方向の長さが小さいフランジ部823の作用によりたわみ部822を内方へたわませることができるので、板状部材810から突出する締結部材820の部分の長さD1(図2)を図8において板状部材810から突出する締結部材920の部分の長さD2よりも大幅に小さくすることができる。
【0053】
それにより、取付具800によるヘッド部100Aの取付場所の自由度が大きくなる。したがって、ヘッド部100Aの取付位置の変更が容易になるとともに、小型のヘッド部100Aを所望の位置に容易かつ確実に固定することが可能になる。
【0054】
(4)ヘッド部の構成
次に、図9〜図12を参照して、図1に示した接触式変位計100のヘッド部100Aの詳細について説明する。
【0055】
図9は、ヘッド部100Aの全体の分解斜視図である。図10および図11は、ヘッド部100Aのヘッドケース110の詳細を示す図である。図12は、ヘッド部100Aの基板フレームの詳細を示す図である。なお、図9〜図12においては、矢印X,Y,Zで示すように、互いに直交する3方向をX方向、Y方向およびZ方向と定義する。
【0056】
上記のように、ヘッド部100Aは、主に、ヘッドケース110、シャフトカバー部200、シャフト部300およびフレーム部400を含む。なお、フレーム部400は、図12に示す基板フレーム410を含む。
【0057】
ヘッドケース110は、XY平面に平行な上面部CAおよび下面部CB、YZ平面に平行な背面部CCおよび開口部CD、ならびにZX平面に平行な側面部CEおよび側面部CFを有する。ヘッドケース110の上面部CA、背面部CC、側面部CEおよび側面部CFの厚みはほぼ同一であり、下面部CBの厚みは、上面部CA、背面部CC、側面部CEおよび側面部CFの厚みに比べて大きい。ヘッドケース110の材料としては、例えば亜鉛等の非磁性体を用いることが好ましい。
【0058】
ここで、ヘッドケース110の詳細について説明する。図10(a)は、ヘッドケース110を開口部CDの斜め上方から見た斜視図である。図10(b)は、ヘッドケース110を背面部CCの斜め上方から見た斜視図である。図11は、ヘッドケース110を開口部CD側から見た正面図である。
【0059】
図10(a)に示すように、上面部CAの側面部CE側の部分には、Z方向に貫通する円形の貫通孔110aが形成されている。また、下面部CBの側面部CE側の部分には、Z方向に貫通する円形の貫通孔110bが形成されている。貫通孔110aの中心部および貫通孔110bの中心部は、Z方向に平行な1つの直線上に位置している。
【0060】
ヘッドケース110の上面部CAと側面部CFとが交差する部分には、X方向に沿って延びる楕円形の貫通孔110cが形成されている。
【0061】
図10(b)に示すように、ヘッドケース110の上面部CAから背面部CCに至る部分にケーブル収容部120が形成されている。
【0062】
ケーブル収容部120は、ヘッドケース110の上面部CAからZ方向に延びるケーブル収容溝121、およびケーブル収容溝121の下端部に連通するコネクタ嵌合部122からなる。
【0063】
ケーブル収容部120のケーブル収容溝121は、傾斜面121aおよび内側面部121b、121cを有する。傾斜面121aは、上面部CAに連続的かつ凹凸状に形成される。内側面部121b、121cは、側面部CE,CFに平行に形成される。内側面部121bには、Z方向に延びる溝部121Bが形成されている。なお、図示しないが、内側面部121cにも同様の溝部が形成されている。
【0064】
ケーブル収容部120のコネクタ嵌合部122は略直方体形状を有する。ケーブル収容部120の背面部CCに平行な面には、X方向に貫通する長方形状の端子部挿入孔122aが形成されている。
【0065】
図11に示すように、ヘッドケース110の内側の背面部CCには、しきい部130が設けられている。しきい部130は、ヘッドケース110の下面部CB側からZ方向に延びるとともに開口部CD側に凸状に形成されている。
【0066】
また、しきい部130と側面部CEとの間における背面部CCの部分には、回転止溝111およびピン導入溝112がL字状に形成されている。回転止溝111は、下面部CBから上面部CAに向かって延びる。この回転止溝111は、上面部CAの貫通孔110aの中心および下面部CBの貫通孔110bの中心を結ぶ直線Hと同一のZX平面上に位置する。ピン導入溝112は、回転止溝111の一端部から、側面部CFに向かって延びる。
【0067】
回転止溝111の両側に2本の係止部111aが平行に形成されている。また、回転止溝111の延長線上における背面部CCの位置に、凸部113が形成されている。
【0068】
また、図10および図11に示すように、ヘッドケース110の側面部CEおよび側面部CFの外面上には、それぞれ3つの突起部114が形成されている。
【0069】
図9に示すように、シャフトカバー部200は、ゴムパッキン210、円筒状の外筒220、円筒状のボールケージ230、ゴムパッキン240、略円筒状の係止部材250、リング260、伸縮可能なベローズカバー270およびリング280からなる。
【0070】
外筒220の上端部は、ゴムパッキン210を介してヘッドケース110の下面部CBの貫通孔110b内に取り付けられる。なお、後述するように、ヘッドケース110と外筒220との液密性が十分に確保されている場合は、ゴムパッキン210を取り付けなくてもよい。
【0071】
外筒220内には、ボールケージ230が挿入される。ボールケージ230の詳細については後述する。外筒220の下端部には、ゴムパッキン240を介して、係止部材250が嵌合される。
【0072】
係止部材250には、ベローズカバー270の上端部がリング260により締結される。ベローズカバー270の下端部は、後述するシャフト310の下端部にリング280により締結される。
【0073】
上記の構成を有するシャフトカバー部200は、ヘッドケース110の下面部CBからZ方向に延びるように設けられる。
【0074】
シャフト部300は、棒状のシャフト310、略円筒状のシャフトキャップ320、接続ピン330、回転止ピン340、絶縁キャップ350、円筒状のコア360、ゴムパッキン370、ボール受け390および球状の先端部材395からなる。
【0075】
シャフト310の上端部にシャフトキャップ320が取り付けられる。シャフトキャップ320は、円筒状のシャフト接続部321、回転止ピン挿入部322、および円筒状のコア接続部323からなる。シャフトキャップ320をシャフト310に取り付ける際には、シャフト接続部321がシャフト310の上端部に嵌合される。
【0076】
シャフト310の上端部にはXY平面上の一方向に貫通する貫通孔311が形成されている。シャフトキャップ320のシャフト接続部321にはXY平面上の一方向に貫通する貫通孔321aが形成されている。シャフトキャップ320のシャフト接続部321がシャフト310の上端部に嵌合された状態で、シャフト310の貫通孔311およびシャフトキャップ320の貫通孔321aに接続ピン330が挿入される。それにより、シャフトキャップ320がシャフト310に固定される。
【0077】
また、シャフトキャップ320の回転止ピン挿入部322にはピン孔322aが設けられている。ピン孔322aには、回転止ピン340が挿入される。回転止ピン340の一端は、シャフトキャップ320の外周面から突出する。シャフトキャップ320のコア接続部323には、絶縁キャップ350を介して円筒状のコア360が挿入される。なお、後述するように、実際の組み立ての際には、コア360はフレーム部400と同時にヘッドケース110内に取り付けられる。
【0078】
また、シャフト310の下端部にはねじ孔が形成されており、そのねじ孔にボール受け390が挿入される。ボール受け390には、先端部材395が取り付けられる。
【0079】
上記の構成を有するシャフト部300は、ヘッドケース110の上面部CAの貫通孔110aからヘッドケース110内およびシャフトカバー部200内にZ方向に摺動可能に挿入される。
【0080】
なお、実際の組み立ての際には、シャフト部300をヘッドケース110内に挿入した後に、回転止ピン340をシャフトキャップ320に取り付ける。そして、シャフト部300を軸心を中心として回転させる。このとき、シャフトキャップ320の外周面から突出する回転止ピン340の一端が、ヘッドケース110の背面部CCのピン導入溝112(図11)に嵌合される。さらに、回転止ピン340がヘッドケース110の背面部CCに対して垂直になった状態で、シャフト部300をZ方向に沿って移動させる。それにより、回転止ピン340の一端が回転止溝111(図11)に嵌合される。
【0081】
また、シャフト310をヘッドケース110およびシャフトカバー部200内に挿入した後にボール受け390および先端部材395を取り付ける。
【0082】
シャフト部300がヘッドケース110およびシャフトカバー部200内に挿入された状態で、ヘッドケース110の貫通孔110aにゴムパッキン370を介して封止部材380を取り付ける。
【0083】
フレーム部400は、基板フレーム410、回路基板420、円筒状のボビン430、円筒状の磁気シールド440、スプリング450および棒状のサーミスタ460からなる。フレーム部400はヘッドケース110の開口部CDからヘッドケース110内に取り付けられる。
【0084】
ここで、基板フレーム410の詳細について説明する。
【0085】
図12(a)は、図9に示す基板フレーム410の拡大斜視図であり、図12(b)は、図12(a)の基板フレーム410の裏面を示す斜視図である。
【0086】
図12(a)および図12(b)に示すように、基板フレーム410は、Z方向に延びる略直方体状のシャフトフレーム411およびYZ平面にほぼ平行な基板取付板412からなる。
【0087】
基板フレーム410がヘッドケース110内に取り付けられる際には、シャフトフレーム411がヘッドケース110のしきい部130(図11)よりも側面部CE側の領域に配置され、基板取付板412がしきい部130よりも側面部CF側の領域に配置される。
【0088】
図12に示す基板フレーム410のシャフトフレーム411は中空構造を有している。シャフトフレーム411の上端面411Aには、内部に連通する貫通孔411aが形成されている。また、シャフトフレーム411の下部は開口している。
【0089】
シャフトフレーム411のYZ平面に平行な側面411Bおよび側面411Cには、下端部からZ方向に沿って延びる切り込み411bおよび411cが形成されている。切り込み411b,411cの下部は、Y方向に拡大されている。
【0090】
図12(a)に示すように、上端面411A近傍の側面411Bの部分には、切り欠き411eが形成されている。また、図12(b)に示すように、上端面411A近傍の側面411Cの部分には、貫通孔411dが形成されている。
【0091】
基板フレーム410の基板取付板412は、図10のヘッドケース110のケーブル収容部120の形状に沿うように凹凸状に湾曲している。また、基板取付板412の所定の部分には長方形状の貫通孔412aが形成されている。
【0092】
基板取付板412の側辺には、X方向に突出するように突起部412b,412c,412dが並列に形成されている。なお、突起部412cの先端部は内側に屈曲している。
【0093】
図9に示すように、基板フレーム410のシャフトフレーム411内には、ボビン430、磁気シールド440およびスプリング450が挿入される。磁気シールド440は、例えばパーマロイからなる。シャフトフレーム411内においては、磁気シールド440内にボビン430が配置される。Z方向における磁気シールド440の長さとボビン430の長さとは等しい。また、磁気シールド440の外周面を囲むようにスプリング450が配置される。
【0094】
ボビン430の外周面には一次巻線および二次巻線が巻回されている。ボビン430、一次巻線および二次巻線がトランスを構成する。
【0095】
なお、実際には、フレーム部400がヘッドケース110内に取り付けられる際に、ボビン430内にシャフト部300のコア360が挿入される。この時点では、コア360はシャフトキャップ320に取り付けられていない。そして、フレーム部400がヘッドケース110内に取り付けられた後に、コア360が絶縁キャップ350を介してシャフトキャップ320に挿入される。
【0096】
基板フレーム410の基板取付板412には複数の配線および孔部を有する回路基板420が取り付けられる。その際に、回路基板420の一方の側辺に設けられた突起片421が図12(a)のシャフトフレーム411の切り欠き411eに嵌合され、図9の回路基板420の他方の側辺に設けられた3つの凹部422に図12(a)の基板取付板412の突起部412b,412c,412dが嵌合される。それにより、回路基板420が基板取付板412上で位置決めされる。
【0097】
図9の回路基板420上の配線は、ボビン430の一次巻線および二次巻線ならびに後述するコネクタ部511の端子511aに接続される。また、回路基板420には、Y方向に延びるサーミスタ460が取り付けられる。
【0098】
ヘッドケース110のケーブル収容部120には、ケーブル部510が取り付けられる。ケーブル部510は略直方体上のコネクタ部511およびコネクタ部511に接続されたケーブル512からなる。コネクタ部511の一面からは複数の端子511aが突出する。
【0099】
ケーブル収容部120にケーブル部510が取り付けられる際には、ケーブル部510のコネクタ部511がゴムパッキン512を介して図10(b)のケーブル収容部120のコネクタ嵌合部122に嵌合される。このとき、図9のコネクタ部511の端子511aは、図10(b)のコネクタ嵌合部122の端子部挿入孔122aから挿入される。ここで、端子部挿入孔122aは基板フレーム410の貫通孔412aと同一の形状を有しており、基板フレーム410がヘッドケース110内に取り付けられた状態では、ヘッドケース110の端子部挿入孔122aの位置と基板フレーム410の貫通孔412aの位置とが一致する。そのため、コネクタ部511の端子511aは、ヘッドケース110の端子部挿入孔122aおよび基板フレーム410の貫通孔412aを通して、基板フレーム410の一面側に突出し、基板フレーム410上の回路基板420の配線に接続される。
【0100】
また、コネクタ部511からZ方向に延びるケーブル512の一部がケーブル収容溝121(図10(b))に収容される。
【0101】
ケーブル収容部120にケーブル部510のコネクタ部511およびケーブル512の一部が収容された後に、図10(b)のケーブル収容部120の内側面部121b,121cに形成された溝部121Bに図9のケーブルカバー520が取り付けられる。ケーブルカバー520の一面は、図10(b)のケーブル収容溝121の傾斜面121aにほぼ相補な形状を有する。コネクタ部511およびケーブル512の一部は、後述するように、ケーブル収容部120において確実に固定される。
【0102】
ヘッドケース110の上面部CAと側面部CFとの間の角部には、貫通孔110c(図10(b))を塞ぐように、くの字状に屈曲した表示灯カバー522がゴムパッキン521を介して取り付けられる。
【0103】
このようにして、ヘッドケース110にシャフトカバー部200、シャフト部300、フレーム部400およびケーブル部510が取り付けられる。
【0104】
次に、ヘッドケース110の背面部CCには、背面カバー610が取り付けられる。背面カバー610は、ヘッドケース110の背面部CCと側面部CEとの間の角部、および背面部CCと側面部CFとの間の角部を覆うように湾曲している。また、背面カバー610の上辺にはX方向に突出するように把持片611が形成され、背面カバー610の下辺にはX方向に突出するように把持片612が形成されている。把持片611の先端部および把持片612の先端部は、それぞれ内方に屈曲している。
【0105】
背面カバー610がヘッドケース110に取り付けられる際には、背面カバー610の把持片611の先端部がヘッドケース110の上面部CAの縁部に掛止されるとともに、背面カバー610の把持片612の先端部がヘッドケース110の下面部CBの縁部に掛止される。このとき、背面カバー610の把持片611は、上面部CAの貫通孔110aに取り付けられた封止部材380を覆う状態になる。それにより、封止部材380がヘッドケース110の貫通孔110aから落脱することが防止される。
【0106】
ヘッドケース110の開口部CD側には、ゴムパッキン650および略長方形状の内板630を介してヘッドケースカバー620が取り付けられる。ヘッドケースカバー620は、ヘッドケース110の側面部CE、側面部CFおよび開口部CDを覆うようにコの字状に湾曲している。
【0107】
ヘッドケースカバー620がヘッドケース110に取り付けられる際には、ヘッドケース110の側面部CEおよび側面部CFの突起部114(図10)がヘッドケースカバー620に形成された複数の孔部621に嵌合される。それにより、ヘッドケースカバー620がヘッドケース110に固定される。
【0108】
背面カバー610およびヘッドケースカバー620は、例えばSUS(Steinless Used Steel;ステンレス鋼)からなる。
【0109】
なお、ここではヘッド部100Aの組み立て方法の一例について説明したが、組み立ての順序については、これらに限らない。
【0110】
(5)ヘッド部の各部材の詳細な配置
次に、ヘッド部100Aの組み立て完了時における各部材の詳細な配置について説明する。
【0111】
図13は、図1のヘッド部100AのA―A線断面図である。なお、図13においては、図1に示す点線Bを基準としてヘッド部100Aを2つの部分に分割し、それぞれの部分を図13(a)および図13(b)に示す。図14は、図9および図10に示したケーブル収容部120のZX平面における断面図である。図13および図14においては、矢印X,Y,Zで示すように、互いに直交する3方向をX方向、Y方向およびZ方向と定義し、矢印が向かう方向を+方向、その反対の方向を−方向とする。
【0112】
まず、図13を参照して、ヘッドケース110内およびシャフトカバー部200内の各部材の配置を説明する。
【0113】
図13(a)および図13(b)に示すように、ヘッドケース110内には基板フレーム410のシャフトフレーム411が配置されている。また、ヘッドケース110の下面部CBの貫通孔110bから−Z方向に延びるようにシャフトカバー部200が取り付けられている。ヘッドケース110の上面部CAの貫通孔110aには封止部材380が嵌合され、背面カバー610(図9)の把持片611により押止されている。封止部材380とヘッドケース110との間の液密性は、ゴムパッキン370により確保されている。
【0114】
シャフトフレーム411の貫通孔411d(図12(b))には、ヘッドケース110の背面部CCの凸部113(図11)が嵌合されている。それにより、ヘッドケース110内において、シャフトフレーム411がZ方向に関して正確に位置決めされる。
【0115】
シャフトフレーム411の上部には磁気シールド440が配置されている。磁気シールド440は圧入等によりシャフトフレーム411に固定される。
【0116】
ボビン430は磁気シールド440内に固定されている。封止部材380の下面には、半球状の突起部380aが設けられている。ボビン430の上端部には、封止部材380の突起部380aが嵌合されている。
【0117】
ボビン430内にはシャフト部300のコア360が摺動可能に挿入されている。コア360は絶縁キャップ350を介してシャフトキャップ320のコア接続部323に挿入され、固定されている。
【0118】
シャフトフレーム411の上端部411eは磁気シールド440に接触している。シャフトフレーム411の上端部411eを除いて、シャフトフレーム411と磁気シールド440との間に隙間が形成されており、その隙間にスプリング450が配置されている。スプリング450の両端は、シャフトフレーム411の上端部411eおよびシャフト部300の絶縁キャップ350の上端部に当接している。それにより、シャフト部300は、下方向に付勢される。
【0119】
本実施の形態においては、スプリング450内にボビン430が挿入されることにより、スプリング450およびボビン430をZ方向に並列に配置する場合に比べて、ヘッドケース110内の長手方向における省スペース化が実現されている。また、ボビン430とスプリング450との間に磁気シールド440が配置されることにより、スプリング450からボビン430への磁気的影響が磁気シールド440により防止される。
【0120】
シャフトキャップ320の回転止ピン挿入部322に挿入された回転止ピン340は、シャフトフレーム411の切り込み411cを通して、背面部CCにZ方向に延びる回転止溝111に嵌合されている。そのため、シャフト部300は、Z方向への摺動は可能であるが、回転止ピン340が回転止溝111の両側の係止部111aにより係止されるので、軸心Jを中心とする円周方向に関しては回転が阻止されている。
【0121】
また、ヘッドケース110の下面部CBの一面側の貫通孔110bの縁部B1の内径は、シャフトキャップ320のシャフト接続部321の径よりも大きく設定されるとともに、回転止ピン挿入部322の径よりも小さく設定されている。そのため、シャフトキャップ320の接続ピン挿入部322が貫通孔110bの縁部B1に係止されることにより、シャフト部300の下方向への移動が制限される。
【0122】
ヘッドケース110の下方から下面部CBの貫通孔110bにゴムパッキン210および外筒220が挿入されている。外筒220は圧入または接着剤等により下面部CBに固定される。また、ヘッドケース110と外筒220との間の液密性はゴムパッキン210により確保されている。なお、外筒220の上端部を下面部CBの貫通孔110b内に圧入し、外筒220の圧入された部分の周縁を接着剤によって接着およびシールすることによりヘッドケース110と外筒220との間の液密性が十分に確保される場合は、ゴムパッキン210を不要とする構造も可能である。
【0123】
図13(b)に示すように、外筒220内には、シャフト310が挿入されている。外筒220とシャフト310との間には、ボールケージ230が配置されている。ボールケージ230は、筒状部材に複数のボール231が規則的な間隔で設けられたものである。ボール231は、外筒220の内周面およびシャフト310の外周面に当接するとともに、Z方向に回転移動可能である。それにより、シャフト310が外筒220内でZ方向に摺動する際には、シャフト310がボールケージ230により保持され、外筒220とシャフト310との間の摩擦が、ボールケージ230のボール231により転がり摩擦となる。これにより、外筒220とシャフト310との間の摩擦が低減され、外筒220の摩耗が抑制される。
【0124】
外筒220は、小型であるとともに形状には高い精度が要求されるため製造コストが高い。上記のように、外筒220の摩耗が抑制されることにより、高価な外筒220の長寿命化が実現される。
【0125】
外筒220の下端部には係止部材250が嵌合されている。係止部材250の外周面にはゴムパッキン240が装着されている。ゴムパッキン240により外筒220と係止部材250との間の液密性が確保されている。
【0126】
外筒220の下方にはシャフト310の周囲を覆うようにベローズカバー270が設けられている。ベローズカバー270の上端は係止部材250にリング260により固定されており、下端はシャフト310の下端部にリング280により固定されている。ベローズカバー270は、シャフト部300のZ方向の移動に伴って伸縮する。
【0127】
次に、図14を参照して、ケーブル収容部120(図10(b))内のケーブル部510(図9)の配置を説明する。
【0128】
図14に示すように、ケーブル収容部120のコネクタ嵌合部122にケーブル部510のコネクタ部511が嵌合されている。コネクタ部511の端子511aは回路基板420(図9)上の配線に接続されている。コネクタ部511にはゴムパッキン513が装着されている。ゴムパッキン513によりコネクタ部511とヘッドケース110との間の液密性が確保されている。また、ケーブル収容溝121(図10(b))の傾斜面121aとケーブルカバー520との間に形成される隙間に沿ってケーブル512が延びる。
【0129】
ここで、ケーブルカバー520の一面は、ヘッドケース110の傾斜面121aに沿うように形成されている。それにより、ケーブル収容部120の傾斜面121aとケーブルカバー520との隙間には、屈曲した領域H1が形成される。なお、ケーブル収容部120の傾斜面121aとケーブルカバー520との隙間の幅はケーブル512の外径にほぼ等しい。
【0130】
この場合、ケーブル512に上方へ引っ張る力が加わったとしても、ケーブル512は、屈曲した領域H1で、ケーブルカバー520とヘッドケース110の傾斜面121aとで挟持される。それにより、ケーブル512を介してコネクタ部511に直接加わる力が低減される。したがって、コネクタ部511がコネクタ嵌合部122から外れることが防止される。
【0131】
また、ケーブル収容部120に対向するケーブルカバー520の一面は、緩やかな曲面を形成しつつ上面520Aに連続している。ケーブル収容部120の傾斜面121aは、上述のように、緩やかな曲面を形成しつつヘッドケース110の上面部CAに連続的している。すなわち、ケーブル収容部120の傾斜面121aとケーブルカバー520との隙間は、上方に向かって漸次拡大している。それにより、ケーブル512に様々な方向から張力が加わったとしても、ケーブル512がヘッドケース110の上面部CAの縁部またはケーブルカバー520の上面520Aの縁部により損傷を受けることが防止される。
【0132】
また、ケーブルカバー520の下端部の内側には、傾斜面520aが形成されている。ケーブルカバー520を上方からケーブル収容部120に嵌め込む際には、ケーブルカバー520の傾斜面520aがコネクタ部511の上面の縁部に当接し、ケーブルカバー520の下方への移動に伴って、ケーブルカバー520の傾斜面520aがコネクタ部511を+Y方向に押圧する。それにより、コネクタ部511がコネクタ嵌合部122に確実に押し込まれる。
【0133】
(6)ヘッド部の動作
上記の構成のヘッド部100Aにおいては、図13に示すように、シャフト部300の先端に取り付けられた先端部材395に上方への力が加わることにより、シャフト部300がスプリング450の付勢力に抗して上方へ移動する。
【0134】
図15および図16は、シャフト部300の移動を説明するための図である。
【0135】
図15は、先端部材395に力が加わっていない状態のヘッド部100Aの断面図であり、図16は、シャフト部300が最大限に移動した状態のヘッド部100Aの断面図である。
【0136】
図15に示すように、先端部材395に力が加わっていない状態では、スプリング450の下方への付勢力により、シャフトキャップ320の接続ピン挿入部322がヘッドケース110の貫通孔110bの縁部B1に当接し、シャフト部300が静止する。
【0137】
このとき、シャフト部300のコア360は、ボビン430内にほとんど挿入されていない状態となる。
【0138】
また、この状態においては、シャフトキャップ320のシャフト接続部321の下端部と係止部材250の上端部との間の距離は、ボールケージ230の長さにほぼ等しくなる。それにより、ボールケージ230は係止部材250にほぼ当接する状態になる。
【0139】
以下、図15に示す上記の状態をシャフト部300の初期状態と呼ぶ。
【0140】
次に、図16に示すように、先端部材395に上方への力が加わり、シャフト部300が上方に最大限に移動した状態では、シャフト部300の絶縁キャップ350がボビン430および磁気シールド440の下端部に当接するとともに、シャフトキャップ320の接続ピン挿入部322に挿入された回転止ピン340が基板フレーム410の切り込み411cの端面に当接する。
【0141】
このとき、シャフト部300のコア360は、ボビン430の下端部から上端部まで挿入された状態となり、封止部材380の突起部380aにほぼ当接する。
【0142】
外筒220内のボールケージ230は、シャフト310の移動に伴って上方に移動し、ヘッドケース110の貫通孔110bの縁部B1に当接する。
【0143】
なお、ヘッド部100Aに振動等が加わることにより、ボールケージ230が縁部B1に当接する位置からずれる場合がある。その場合、ボールケージ230の動作が不安定となり、シャフト310が移動する際に、ボールケージ230からシャフト310に抵抗が加わる。
【0144】
そこで、本実施の形態では、シャフト部300が図15に示した初期状態に戻される際に、ボールケージ230がシャフトキャップ320のシャフト接続部321により下方に押動され、係止部材250にほぼ当接する位置に移動する。すなわち、シャフト部300が初期状態に戻されることにより、ボールケージ230の位置が修正される。それにより、ボールケージ230の動作が安定し、シャフト310に抵抗が加わることが防止される。
【0145】
このようなヘッド部100Aにおけるシャフト部300の移動量(変位量)に基づいて、対象物の高さ等の物理的変位量が測定される。
【0146】
具体的には、シャフト部300の移動量に応じてのボビン430内に挿入されたコア360の部分の長さが変化することによりボビン430および巻線により構成されるトランスのインダクタンスが変化する。そのインダクタンスの変化が誘導電流の変化として出力される。トランスから出力される電流は、フレーム部400(図9)の回路基板420(図9)に与えられ、電圧(電気信号)に変換される。このようにして、対象物の物理的変位量が電気信号に変換される。この電気信号は、本体部100B(図1)のCPU(図示せず)に与えられる。
【0147】
本体部100BのCPUは、その電気信号に基づいて、シャフト部300の移動量を対象物の物理的変位量の測定値として算出する。また、CPUは、測定値が予め設定した許容範囲内にあるか否かを判定する。
【0148】
(7)本実施の形態の効果
本実施の形態では、ヘッド部100Aが取付具800により板状部材810に固定される。この場合、フランジ部823の傾斜面823aが板状部材810の面取り部810bに当接するとともに、板状部材810の面取り部810bからフランジ部823の傾斜面823aに内方への力が加わる。そのため、締結部材820のたわみ部822が内方にたわみ、ヘッド部100Aの外筒220を適度な力で締め付けるように保持する。その結果、外筒220の変形が防止されつつヘッド部100Aが板状部材810に確実に固定される。
【0149】
このように、フランジ部823の傾斜面823aの作用によりたわみ部822を内方へたわませることによりヘッド部100Aの外筒220を締め付けることができるので、板状部材810から突出する締結部材820の長さを小さくすることができる。それにより、取付具800によるヘッド部100Aの取付場所の自由度が大きくなる。したがって、ヘッド部100Aの取付位置の変更が容易になるとともに、ヘッド部100Aを狭い場所でも容易かつ確実に固定することが可能になる。
【0150】
また、本実施の形態では、ボビン430とスプリング450との間に磁気シールド440が配置されるため、スプリング450からボビン430への磁気的影響が防止される。それにより、接触式変位計100の測定精度を低下させずに、スプリング450内にボビン430を配置することができる。そのため、スプリング450およびボビン430を軸方向に並列に配置する場合等に比べて、スプリング450の占有スペースが削減され、ヘッド部100Aの小型化が実現される。
【0151】
また、本実施の形態では、シャフト310が外筒220内のボールケージ230により保持される。それにより、ヘッドケース110とシャフト部300との接触面積が低減される。したがって、シャフト部300の摺動動作によるヘッドケース110の摩耗が抑制される。
【0152】
また、シャフト310が外筒220内で摺動する際に、外筒220とシャフト310との間の摩擦がボールケージ230により低減される。それにより、外筒220の摩耗が抑制される。そのため、高価な外筒220の長寿命化が実現される。
【0153】
これらにより、長期間の使用においてもシャフト部300の円滑な摺動動作が確保される。その結果、ヘッド部100Aの耐久性が向上され、長期間にわたって接触式変位計100の測定精度を維持することができる。
【0154】
また、シャフトキャップ320の回転止ピン挿入部322に挿入された回転止ピン340がヘッドケース110に形成された回転止溝111に嵌合されることにより、シャフト部300の軸方向の摺動が許容されるとともに、軸心Jを中心とする円周方向の回転が阻止される。
【0155】
それにより、シャフト部300の軸心Jを中心とする円周方向の回転による摩擦が生じないため、シャフト310および外筒220の摩耗がさらに抑制される。それにより、ヘッド部100Aの耐久性がさらに向上される。
【0156】
また、ヘッドケース110の回転止溝111およびシャフト部300の回転止ピン340によりシャフト部300の回転を制限することができるので、高い精度が要求される外筒220の加工が簡略化される。そのため、外筒220の製造コストを低減することができる。
【0157】
さらに、本実施の形態では、ヘッドケース110が一面に開口部CDを有するとともに、回路基板420、ボビン430および磁気シールド440が基板フレーム410に保持された状態で開口部CDからヘッドケース110内に取り付けられる。それにより、種々の部材を個別にヘッドケース110に取り付ける場合に比べて、ヘッド部100Aの組立が容易となる。
【0158】
また、ヘッドケース110が、上面部CA、下面部CB、背面部CC、側面部CEおよび側面部CFから一体形成され、かつ一面に開口部CDが設けられているので、ヘッド部100Aの防水性がゴムパッキン等により容易に確保される。
【0159】
(8)請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。
【0160】
上記の実施の形態では、シャフト部300が接触子に相当し、シャフトカバー部200が筒状部材に相当し、板状部材810が支持部材に相当し、貫通孔810aが孔部に相当し、締結部材820が保持部材に相当し、ナット830が固定部材に相当し、たわみ部822が挿入部に相当し、ねじ切り部821がねじ部に相当し、傾斜面823aがフランジ部の傾斜面に相当し、面取り部810bが支持部材の傾斜面に相当し、割溝820aが切り欠きに相当する。
【産業上の利用可能性】
【0161】
本発明に係る接触式変位計の取付具は、接触式変位計を測定場所に固定するために利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0162】
【図1】本実施の形態に係る接触式変位計の構成を示すブロック図である。
【図2】図1のヘッド部が板状部材に取り付けられた状態を示す図である。
【図3】図2の取付具および板状部材を示す斜視図である。
【図4】図2の板状部材を示す図である。
【図5】図2の締結部材を示す図である。
【図6】取付具によりヘッド部が板状部材に固定された状態を示す図である。
【図7】取付具によるヘッド部の固定方法を説明するための図である。
【図8】従来の取付具の一例を示す図である。
【図9】ヘッド部の全体の分解斜視図である。
【図10】ヘッド部のヘッドケースの詳細を示す図である。
【図11】ヘッド部のヘッドケースの詳細を示す図である。
【図12】ヘッド部の基板フレームの詳細を示す図である。
【図13】図1のヘッド部のA―A線断面図である。
【図14】図9および図10に示したケーブル収容部のZX平面における断面図である。
【図15】シャフト部の移動を説明するための図である。
【図16】シャフト部の移動を説明するための図である。
【符号の説明】
【0163】
100 接触式変位計
100A ヘッド部
100B 本体部
110 ヘッドケース
110a,110b 貫通孔
220 外筒
230 ボールケージ
231 ボール
300 シャフト部300
340 回転止ピン
360 コア
410 基板フレーム410
430 ボビン
450 スプリング
512 ケーブル512
610 背面カバー
620 ヘッドケースカバー
200 筒状部材
800 取付具
810 板状部材
820 締結部材
830 ナット
821 ねじ切り部
822 たわみ部
823 フランジ部
823a 傾斜面
810b 面取り部
810a 貫通孔
820a 割溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接触子を移動可能に収容する筒状部材を有し、対象物の物理的変位量を測定する接触式変位計を、孔部を有する支持部材に固定するための取付具であって、
前記支持部材の前記孔部に挿入される筒状の保持部材と、
前記保持部材を前記支持部材に固定する固定部材とを備え、
前記保持部材は、前記支持部材の前記孔部内に挿入される挿入部と、前記挿入部が前記孔部内に挿入された状態で前記支持部材の前記一面側に突出するとともに前記挿入部よりも大きな外径を有するフランジ部と、前記挿入部が前記孔部内に挿入された状態で前記支持部材の他面側に突出するとともにねじが形成されたねじ部とを有し、
前記フランジ部は、前記挿入部の外周面から斜め外方に傾斜する傾斜面を有し、
前記固定部材は、前記支持部材の前記他面側に突出した前記保持部材の前記ねじ部に螺合されるねじ孔を有し、
前記保持部材内に前記接触式変位計の前記筒状部材が挿入されることを特徴とする接触式変位計の取付具。
【請求項2】
前記保持部材は、前記フランジ部の端面から前記挿入部に延びる切欠きを有することを特徴とする請求項1記載の接触式変位計の取付具。
【請求項3】
前記切欠きは、前記保持部材の軸心を中心として等角度間隔で複数設けられたことを特徴とする請求項2記載の接触式変位計の取付具。
【請求項4】
前記保持部材の前記挿入部および前記ねじ部は等しい内径を有し、前記フランジ部は前記挿入部および前記ねじ部と等しい内径から外方に向かって漸次拡大する内径を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の接触式変位計の取付具。
【請求項5】
接触子を移動可能に収容する筒状部材を有し、対象物の物理的変位量を測定する接触式変位計を固定するための取付構造であって、
測定場所に配置され、孔部を有する支持部材と、
前記支持部材の前記孔部に挿入される筒状の保持部材と、
前記保持部材を前記支持部材に固定する固定部材とを備え、
前記保持部材は、前記支持部材の前記孔部内に挿入される挿入部と、前記挿入部が前記孔部内に挿入された状態で前記支持部材の前記一面側に突出するとともに前記挿入部よりも大きな外径を有するフランジ部と、前記挿入部が前記孔部内に挿入された状態で前記支持部材の他面側に突出するとともにねじが形成されたねじ部とを有し、
前記フランジ部は、前記支持部材の前記傾斜面に対応して前記挿入部の外周面から斜め外方に傾斜する傾斜面を有し、
前記固定部材は、前記支持部材の前記他面側に突出した前記保持部材の前記ねじ部に螺合されるねじ孔を有し、
前記保持部材内に前記接触式変位計の前記筒状部材が挿入されることを特徴とする接触式変位計の取付構造。
【請求項6】
前記支持部材は、一面側における前記孔部の縁部に、前記保持部材の前記フランジ部の前記傾斜面に対応して斜め外方に傾斜する傾斜面を有することを特徴とする請求項5記載の接触式変位計の取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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