説明

揚げ饅頭の製造方法及び揚げ饅頭

【課題】この発明は、蒸かし饅頭をそのまま冷凍し、これを揚げ解凍することによって、カリカリ表皮付き蒸かし饅頭を得ることを目的としたものである。
【解決手段】
この課題については、饅頭の材料を撹拌混合して饅頭生地を作り、これを一定時間ねかした後、包餡機にかけて餡を包み込み、餡入り饅頭生地を作り、これを蒸かして饅頭とし、ついで、前記蒸かし饅頭を放冷した後−20℃〜−30℃に急速冷凍状態で保存し、前記冷凍饅頭を取り出して、揚げ解凍することを特徴とした揚げ饅頭の製造方法により解決した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、饅頭生地に包餡し、これを冷凍した後油揚げしてなる揚げ饅頭を目的とした揚げ饅頭の製造方法及び揚げ饅頭に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、饅頭生地に包餡し、これを茹でる、揚げる、焼く、蒸すなどの加工を施して饅頭を製造している。前記における「揚げる」、「蒸す」加工は、生地を発泡させる手段として採用されている。
【0003】
また、前記餡を包んだ饅頭生地を冷凍保存し、食用に供する際又は販売に先立って蒸し、又は揚げている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−267621号公報
【特許文献2】特開2001−169728号公報
【特許文献3】特開平11−289988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、饅頭は、饅頭生地に包餡し、これを蒸し又は揚げて製品としている。この場合に新鮮な間(例えば製造後1日〜2日)は味も食感も良好であるが、製造後3日〜5日になると、味と食感が急速に低下することが知られており、賞味期限(例えば3日)内においても、蒸した直後のものと、3日経過後のものとは格段の相違があるが、やむを得ない自然の変化とされている。
【0006】
また、生地に包餡し、これを冷凍保存すれば(特許文献1)、販売直前に蒸すことで、味覚の低下を防止することができるが、毎日の販売量は不定であり、製品の過不足を皆無にすることは至難であって、どうしても見込みで蒸すこととなり、不足か多すぎかは、何時でも生じる問題点として当事者の悩み続けるところである。また販売直前に蒸すことも実用上困難であり(例えば蒸すのに最低でも10分かかり、数も数十個となる)、必要数を必要の都度蒸すことは実用上困難であり、どうしても見込み生産とならざるを得なかった。
【0007】
さらに、蒸し上げた日が異なれば、外観、味覚共に異なるのみならず、時間の経過に伴って味の低下と差異は免れなかった。
【0008】
次に揚げ饅頭の製造方法も知られているが(特許文献2)、従来の饅頭に衣を付けこれを揚げたもので、通常の揚げ食品の要領である。
【0009】
また、通常の饅頭の外側に変化を与えるために、他の食品で包む提案もあるが(引用文献3)、この発明のように通常の饅頭を揚げることにより、別の外皮を生成する場合とは技術的思想を異にするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、饅頭生地で包餡し、これを蒸し上げて饅頭とする。ついで、自然放冷した後、急速冷凍する。前記冷凍饅頭を必要数量宛揚げて、揚げ饅頭とすることにより、前記従来の問題点を悉く改善することに成功したのである。
【0011】
前記における饅頭の製造は、従来公知の技術であるが、これを放冷後、急速冷凍することにより、蒸し上げた饅頭のうま味をそのまま保有させることができる。急速冷凍は従来公知の技術を使用し、例えば液体窒素を用いて−20℃〜−30℃に急速に冷凍する。前記において急速冷凍の前に、蒸し上げた饅頭の芯温を50℃以下に自然放冷してから、急速冷凍すれば、饅頭の内外温度差が小さくなり、全体を急速に−20℃〜−30℃にすることができる(例えば20分以内)。従って、饅頭の生地も餡も変化の余地がなく、蒸し上げたままの品質で保存されるので、販売時に揚げることにより解凍すれば、蒸し上げた時そのままの品質となるのである。
【0012】
前記解凍手段は、180℃で約1分間揚げるので、油による変質が饅頭の皮の表皮に止まる。このような変質によって、油質が内部へ入るのを防止するので、外皮表面の水分のみ飛ばされ、カリカリの表皮の中に、ふわふわの饅頭が包まれた状態となる(図2(b))。
【0013】
前記において、饅頭に蒸し上げるまでは従来の蒸し饅頭と同一の手数を要するが、大量生産方式で、従来と同一コストで製品とすることができる。
【0014】
ついで、冷凍については、従来の生鮮食品と同一技術であり、温度管理のみであるから、製品を得るための製造方法を間違えるおそれは皆無である。さらに、冷凍饅頭は従来の冷凍食品と共に配送され、小売店において必要数(1個から可能)だけ揚げることができるので、客の注文に応じてその場で揚げればよく、過不足が生じるおそれはない。
【0015】
また、揚げ時間に1分、包装に1分で十分販売できるので、客に出来立て(暖かい)の揚げ饅頭を提供することができる。
【0016】
この発明は、小麦粉(強力粉と薄力粉又は何れか一方)に砂糖(黒糖、白砂糖の一方又は両方)、重曹及び水を混合し、撹拌して生地とする。
【0017】
また、他の方法としては、薄力粉、砂糖、膨剤、乳化剤、増粘剤、植物性油脂、卵、水を適宜配合する。
【0018】
さらに、他の例としては、薄力粉、黒糖蜜(黒糖と水飴の混合液)、重曹、イスバタ(新鮮なバター)と水を混合して生地とする。
【0019】
前記は一例であって、適宜の材料を使用することができる。
【0020】
また、餡も適宜であって、豆餡の場合には、小豆のこし餡に適量の砂糖を混入し、適量の水を加えて練り上げる。前記において、甘味料として黒糖を使用した場合には、カリウム(100g中1100mg)、カルシウム(100g中240mg)が特に多く、マグネシウム(100g中31mg)、亜鉛(100g中400mg)など、白糖にない成分も含まれている。
【0021】
前記のようにして製造した饅頭生地を100℃で20分程蒸し上げて膨化させた後、自然放冷(芯温40℃〜50℃)し、ついで、冷凍庫に入れて−20℃〜−30℃に急速冷凍する。
【0022】
次に、必要数宛冷凍饅頭を取り出し、油揚げにより解凍すれば、この発明の饅頭ができる。前記において、油揚げは例えば、180℃の油温で1分〜1.5分で解凍し、蒸し上げ直後の内容(外皮はカリカリ)となっているので、そのまま販売すれば、出来たての揚げ饅頭の販売となる。
【0023】
前記において、冷凍温度を−20℃以下にすると長期保存に際し、味覚に変化を生じさせるおそれがあるので、−20℃〜−30℃の保存が好ましい。もっとも、短期間(例えば10日〜15日)の保存の場合には−10℃〜−20℃であっても、味覚の著しい低下はない。
【0024】
前記における糖類は必ずしも黒糖である必要はなく、他の糖質についても適宜採用することができる。従って、従来の饅頭製造における材質及び製造方法をそのまま採用し、饅頭ができた後に、この発明による冷凍処理を行えば、この発明の作用効果を得ることができる。
【0025】
即ち、方法の発明は、饅頭の材料を撹拌混合して饅頭生地を作り、これを一定時間ねかした後、包餡機にかけて餡を包み込み、餡入り饅頭生地を作り、これを蒸かして饅頭とし、ついで、前記蒸かし饅頭を放冷した後−20℃〜−30℃に急速冷凍状態で保存し、前記冷凍饅頭を取り出して、揚げ解凍することを特徴とした揚げ饅頭の製造方法であり、薄力粉、強力粉又は薄力粉と強力粉の混合物と、黒糖蜜と、重曹と、バターと、水とを撹拌混合して饅頭生地を作り、これを一定時間ねかした後、包餡機にかけて餡を包み込み、餡入り饅頭生地を作り、これを蒸かして饅頭とする。ついで、前記蒸かし饅頭を放冷した後−20℃〜−30℃に急速冷凍し、そのままの状態で保存し、販売時に前記冷凍饅頭を取り出して、揚げ解凍することを特徴とした揚げ饅頭の製造方法である。
【0026】
また、薄力粉、強力粉又は薄力粉と強力粉の混合物と、黒糖蜜と、重曹と、バターと、水とを撹拌混合して饅頭生地を作り、これを30分〜60分ねかした後、包餡機にかけて餡を包み込み、餡入り饅頭生地を作り、これを蒸かして饅頭とし、ついで、前記饅頭を芯温50℃〜60℃になるまで冷却した後、冷凍庫に入れて−20℃〜−30℃に急速冷凍したまま保存し、前記冷凍饅頭を冷凍庫から取り出し、180℃の油中へ投入して1分間揚げて解凍することを特徴とした揚げ饅頭の製造方法である。
【発明の効果】
【0027】
この発明によれば、揚げ饅頭の製品に常時過不足なく、出来立ての揚げ饅頭を提供できる効果がある。従って、売れ残りがないことは勿論、賞味期限を心配することなく、自信を持って快適に販売し得る効果がある。
【0028】
また、生地及び餡の材質を変えた場合においても、それぞれ過不足なく販売し得ると共に、味覚も、外皮が揚げ饅頭であり、内部は普通の蒸かし饅頭であるので、二つの味覚を併用することができる効果がある。
【0029】
さらに、食感が2つあり、1製品で異なる食感を味わうことができる効果がある。
【0030】
次に、冷凍保存によって、蒸した直後の饅頭と味覚上の変化がなく、同一味覚を常時表現できる効果がる。
【0031】
また、α化澱粉を冷凍したことによるうま味の増強を期待することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】この発明の饅頭生地に包餡した包餡饅頭生地の一部を省略した断面図。
【図2】(a)この発明により製造した蒸し饅頭の一部を省略した断面図、(b)同じく揚げ饅頭の一部を省略した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
この発明は、揚げ饅頭の製造方法と、この製造方法により製造した揚げ饅頭である。次にその製造方法について説明する。
【0034】
この発明は、黒糖に水飴を混入して得た黒糖蜜に、水に溶いた重曹を入れて十分撹拌混合した溶液に、適量の薄力粉及び新鮮なバターを入れて更に撹拌混合して生地を作る。この生地を適度の厚さにして常温(例えば15℃〜20℃)で30分〜60分ねかせる。
【0035】
ついで、前記生地を包餡機に入れ、予め収容してある餡3(例えば小豆餡)を包み込み、饅頭を形成する。前記饅頭を蒸し容器に入れて適度に蒸し上げると、発泡生地4で包まれた饅頭製品1ができる。
【0036】
前記のようにして蒸し上がった饅頭を30分〜60分自然放冷して、芯温50℃〜60℃以下にした後、冷凍庫に入れて−20℃〜−30℃に急速冷凍する。前記冷凍饅頭を取り出し、オイルフライヤー(例えば180℃)で1分間揚げると表皮部が「カリカリ」となった揚げ饅頭5が出来上がる(図2(b))。
【0037】
前記揚げ饅頭5は、表皮部以外は通常の蒸したて饅頭であるから、蒸し饅頭と、揚げ饅頭(皮が全部カリカリになる)の両方の味覚を保有した新製品である。
【0038】
前記において、饅頭の製造までは従来技術であり、各製造者の特色を生かした個性的饅頭であるが、冷凍及び揚げ加工により新しい製品となる。例えば賞味期限の近い饅頭を揚げた物とは格段の相違がある。
【0039】
前記のように、饅頭を蒸し上げるまでは材料、品質もそれぞれ相違があり、個性的な製品であるが、これを冷凍し、ついで揚げ解凍した段階で、内部が蒸かし饅頭で、外皮部が「カリカリ」の揚げ饅頭という新製品となり、これに伴って新しい味覚を提供することになる。
【実施例1】
【0040】
この発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【0041】
この発明の饅頭の材料は、表1のとおりである。
【表1】

【0042】
前記における薄力粉に代えて強力粉を全部又は一部使用することがある。また、黒糖蜜に代えて白砂糖を使用することがある。更に、重曹に代えてイーストを使用することがある。しかしながら、揚げ饅頭には、黒糖の味覚が合っているように認められた。
【0043】
この発明の饅頭生地を作るには、ミキサーボールに前記黒糖蜜を入れ、ついで水に溶いた重曹を入れ、ビータで十分撹拌混合して均一溶液とする。ついで、前記溶液に篩いを通して所定量の薄力粉を入れるとともに、新鮮なバターを加えてさらに撹拌混合し、生地を得る。
【0044】
前記生地を常温で30分から60分ねかせた後、包餡機に入れ、予め収容してある餡を包み込んで餡入り饅頭生地を得る。
【0045】
前記饅頭生地を蒸し上げて饅頭1aとする。前記饅頭1aを常温で自然放冷し、芯温が50℃〜60℃になった時に、冷凍庫に入れて−20℃〜−30℃に急速冷凍して保存する。
【0046】
前記冷凍饅頭を蒸かし饅頭とするには、前記冷凍饅頭を180℃の油中へ1分間入れて揚げ解凍すれば表皮2のみ「カリカリ」の揚げ饅頭5ができる。図中3は餡である。
【0047】
前記揚げ饅頭5は、表皮2が「カリカリ」で、その内部が「フカフカ」であり、揚げ表皮とその内部の蒸かし部分とが混然一体となり、新規な味覚を呈する新商品である。特に揚げたて、蒸したての味覚を保つ特徴がある。
【符号の説明】
【0048】
1 饅頭製品
2 表皮
3 餡
4 発泡生地
5 揚げ饅頭

【特許請求の範囲】
【請求項1】
饅頭の材料を撹拌混合して饅頭生地を作り、これを一定時間ねかした後、包餡機にかけて餡を包み込み、餡入り饅頭生地を作り、これを蒸かして饅頭とし、ついで、前記蒸かし饅頭を放冷した後−20℃〜−30℃に急速冷凍してそのままの状態で保存し、前記冷凍保存した饅頭を取り出して、揚げて解凍することを特徴とした揚げ饅頭の製造方法。
【請求項2】
薄力粉、強力粉又は薄力粉と強力粉の混合物と、黒糖蜜と、重曹と、バターと、水とを撹拌混合して饅頭生地を作り、これを一定時間ねかした後、包餡機にかけて餡を包み込み、餡入り饅頭生地を作り、これを蒸かして饅頭とし、ついで、前記蒸かし饅頭を放冷した後−20℃〜−30℃に急速冷凍して、そのままの状態で保存し、前記保存した冷凍饅頭を取り出して、揚げて解凍することを特徴とした揚げ饅頭の製造方法。
【請求項3】
薄力粉、強力粉又は薄力粉と強力粉の混合物と、黒糖蜜と、重曹と、バターと、水とを撹拌混合して饅頭生地を作り、これを30分〜60分ねかした後、包餡機にかけて餡を包み込み、餡入り饅頭生地を作り、これを蒸かして饅頭とし、ついで、前記饅頭を芯温50℃〜60℃になるまで放冷した後、冷凍庫に入れて−20℃〜−30℃に急速冷凍してそのまま保存し、前記保存した冷凍饅頭を冷凍庫から取り出し、180℃の油中へ投入して1分間揚げて解凍することを特徴とした揚げ饅頭の製造方法。
【請求項4】
請求項1、2、3の何れか一項記載の方法により製造したことを特徴とする揚げ饅頭。

【図1】
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【図2】
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