説明

揚送研磨機扉のロック機構

【課題】揚送研磨機の扉を開閉操作する際における多数のロック手段を容易かつ確実にロック及びアンロック可能にする。
【解決手段】本発明にける揚送研磨機の扉のロック機構は、扉に設けられたロックピンにそれぞれ係合可能な複数のフックレバー(55)と、各フックレバーを揺動自在に支持する昇降可能の連結バー(53)とを備える。各フックレバーは、揚送塔本体に、所定の範囲で揺動可能に取り付けられたフックレバー支持部材(65)に設けられた支点ピン(56)を介して設けてある。連結バーを昇降させるだけで多数のフックレバーを一度に操作することができるので、高所など手や目の届かないところのロック・アンロックを容易に行うことができ、またロック忘れや不完全ロックを回避することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揚送研磨機扉のロック機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パチンコ島に設けられる揚送研磨機は、いずれの型式においても、一般的に揚送塔本体と、これに開閉自在に取り付けられる扉とを備えている。扉の一端は、通常は、ヒンジを介して揚送塔本体に取り付けられており、他端はロック手段によりロックされている。したがって定期点検やメンテナンスのために扉を開閉する際には、ロック手段の操作が必須となっている。従来の揚送研磨機の扉に採用されているロック手段は、揚送塔に適当な間隔に設置して個別にロック及びアンロック操作するものが採用されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記したように、個別操作のロック手段を採用したものでは、扉開閉操作の際に、ロック手段ごとにロック又はアンロック操作をしなければならないため、扉の開閉作業が面倒なものとなっている。特に、通常の揚送塔の高さは、床面から天井に達するものとなっていることから、高所に設置されているロック手段の操作は、脚立などを用いなければ操作できないため、さらに作業が面倒なものとなっている。また、パチンコ遊技場には多数の島ごとに揚送研磨機が設置されているが、これらの揚送研磨機ごとに扉の開閉作業をする間には、不完全ロックやロック忘れをするようなこともあり得る。このような場合には、揚送中のパチンコ玉が揚送マットの溝部から外れてしまうため、揚送マット等を変形又は損傷する原因ともなっている。
【特許文献1】特開2000−93635号公報
【特許文献2】特開平10−102874号公報
【0004】
そこで本発明の目的は、揚送研磨機の扉を開閉する際に1回の操作でロック又はアンロックを、同時に可能かつ確実なロック状態が得られるようにした揚送研磨機扉のロック機構を安価に提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、本発明は、以下の手段を採用することにより以下の作用効果を生じるようにしたところに特徴がある。
【0006】
(請求項1に記載した発明の構成)
請求項1に記載した発明は、揚送塔本体の一側部に開閉自在に設けてある扉をロック状態及びアンロック状態に維持する揚送研磨機扉のロック機構として、以下のように構成したものである。このロック機構の構成は、揚送塔本体の一側部に揺動自在かつ一端部側で扉に設けてあるロックピンに、それぞれ係合可能に設けてある複数のフックレバーと、これらのフックレバーの近傍に昇降可能に設けてある連結バーとを備えている。フックレバーは、一端部側でこの連結バーに設けてある連結ピンを介して連結バーに揺動自在に連結されており、他端部側は扉に設けられたロックピンに対し係合及び離反可能に構成してある。また、フックレバーは、上記揚送塔本体に所定の範囲で揺動可能に取り付けられたフックレバー支持部材に設けられた支点ピンを介して設けてある。連結バーは、これらのフックレバーの一端部側を揺動自在に支持し、昇降動作により複数のフックレバーを同時に揺動可能とするように構成してある。
【0007】
(請求項1に記載した発明の作用効果)
上記のように構成された扉のロック機構にあっては、連結レバーを昇降動作させることにより複数のフックレバーを同時に揺動させ、これらを扉のロックピンに係合させ又は離反させることができる。単一の連結バーの昇降操作により複数のロック手段のロック及びアンロック操作が可能となるため、多数の島の管理をしなければならないパチンコ遊技場の従業員にとって非常に便利になる。また、高所に設置されたロック手段の操作には、脚立を用いなければ届かないなど、ロック操作が面倒かつロック状態の点検が困難であるため、ロック忘れや不完全ロックなどが起こり易いが、本発明の採用によりこのような不都合が未然に防止可能となる。
また、上記したフックレバーを、揚送塔本体に所定の範囲で揺動可能に取り付けられたフックレバー支持部材に支点ピンを介して設けることにより、ロックピンと係合凹部との係合位置を調整可能としてある。すなわち、フックレバー支持部材を揚送塔本体に揺動可能に取り付け、フックレバー支持部材でフックレバーを支持するとともに、フックレバー支持部材に横長の長穴を設け、この長穴に挿通した規制ピンでフックレバー支持部材の揺動量を制限することにより、フックレバーが横方向へ進退可能としてある。本発明にあっては、ロックピンとフックレバーの係合凹部との係合がさらにスムーズに行なわれるようにしてある。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、1回の操作で多数のロック手段のロック及びアンロック操作が可能となるので、揚送研磨機の扉の開閉作業が容易になる。特に高所にあるロック手段も床上に立ったままの位置で、他のロック手段とともに操作可能となるため、ロック忘れなどもなくなる。また、確実なロック状態が保障されるため、揚送研磨機の故障の原因となる扉の不完全閉鎖によるパチンコ玉の脱落もなくなる。さらにまた、フックレバーの支点を摺動可能として扉の位置ずれに対応可能とすれば、閉扉時におけるロック操作をさらにスムーズに行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(揚送研磨機の構成)
次に本発明の実施の一形態例について、図面を参照しながら説明する。初めに図2を参照して本発明の扉のロック機構を適用した揚送研磨機についての概要を説明する。この揚送研磨機は、パチンコ玉を揚送マット等の押圧部材と揚送ベルトとの間に保持して研磨しながら揚送するいわゆるベルト式揚送研磨機である。図示してあるように、この揚送研磨機は、ベースプレート1上に立設された揚送塔本体3に開閉自在に取り付けられた扉5と、この揚送塔の上下間に掛け回してある揚送ベルト7とを主な構成要素としている。揚送研磨機内へ導入されたパチンコ玉Bは、モータ11により回転移動する揚送ベルト7と、扉5の内側に設けられた押圧部材としての揚送マット(図示略)との間を通り、揚送研磨機の上部に設けてある排出ヘッド13から排出するようになっている。なお、揚送ベルト7の下降側は、揚送塔本体3の裏側で露出しており、下半部は安全カバー15で覆われている。
【0010】
上記の扉5は、全体を単一体で構成してあるものと、上下に分けてあるものとがあるが、ここでは単一体すなわち揚送塔本体3の下から上まで一体になっている扉を採用してあるものとして説明する。この扉5は、揚送研磨機の運転中は確実に閉じられかつロックされていることが要求されているが、この形態例では数か所でロック手段L,…を同時に操作可能にしたロック機構19によりロックしてある。これらの各ロック手段L,…は、操作容易な位置に設けてある開閉レバー21を操作することにより、同時にロック及びアンロックが行なわれるようになっている。
【0011】
(ロック機構の構成)
図1は、上記のロック機構19を拡大して示したものである。図示してあるように、開閉レバー21は、「へ」の字状に形成した厚板体からなり、短片側が連結バー23との連結部21aに、長片側が開閉操作用のハンドル部21bになっている。また、連結部21aの先端部近傍には、長手方向に沿った長穴からなる連結ピン孔21cが設けてある。開閉レバー21は、連結部21aとハンドル部21bとの境界となる屈曲部近傍で支軸22により揺動自在に支持されている。連結バー23は、この連結バーの背面に突設してある第1連結ピン23aを介して上記の連結ピン孔21cと係合しており、開閉レバー21を揺動させることにより昇降可能としてある。この第1連結ピン孔21cは、長穴とすることにより開閉レバー21の回転運動と連結バー23の直線運動とにより生じる位置ずれを調整可能としてある。
【0012】
開閉レバー21は、ロック機構19がロック状態になっている時には、ハンドル部21bが下向きの垂直状態となっているとともに、連結部21aが傾斜した状態となるようにすることにより、狭い島内のスペースの節減を図ってある。これに対し、アンロック状態になっている時には、想像線で示してあるように、ハンドル部21bは起立状態となっている。この起立状態は後述するように、ハンドル部の自重などにより倒れないようにすることにより起立状態を維持可能としてある。この結果、開閉レバー21の起立状態の下では、研磨機扉をロックした後でなければ、パチンコ島のドア(図示略)を閉めることができないようになっている。このため、研磨機の扉がアンロックになっていることを看過してパチンコ島のドアを閉めてしまうような事態を回避可能となる。
【0013】
連結バー23は、揚送塔本体3のほぼ全長に相当する長さの厚鋼板をL形断面に屈成したものからなり、揚送塔本体の一側部に扉5の開閉操作に必要な範囲で昇降可能に装着してある。連結バー23の揚送塔本体3との対向部の要所には、長溝23b,…が設けてあり、これらの長溝に揚送塔本体に立設された支持ピン24が緩みを有する状態に挿通されている。支持ピン24としては、頭部を大きくした特種ボルトが用いられ、これを揚送塔本体3の一側部に設けられたねじ孔にねじ込むことにより連結バー23を昇降可能に支持している。また、連結バー23の背面におけるこれらの長溝23b,23b間には、後述のフックレバー25の連結穴部25bと係合可能とする第2連結ピン23c,…が突設してある。これにより各フックレバー25,…は、連結バー23の昇降運動に連動して揺動可能となる。
【0014】
(ロック手段の構成)
ロック手段Lは、フックレバー25とロックピン27及び付勢手段である引張りバネ29とを主な構成要素とする。図1,3に示すように、フックレバー25は、上記の開閉レバー21のほぼ半分の長さの部材を「へ」の字状に形成された板体からなり、屈曲部で支点ピン26を介して揚送塔本体3の一側部に揺動自在に支持されている。フックレバー25の屈曲部の中央部には支点穴部25a、短片側には上記の連結穴部25b、長片側には係合凹部25c及びバネ掛止部25dがそれぞれ設けてある。これらのフックレバー25,…は、支点穴部25aが揚送塔本体の一側部に立設された支点ピン26に嵌合することにより揺動自在に支持されている。
【0015】
上記の支点穴部25aは、長片側に平行な長穴を形成することにより支点ピン26に対して摺動自在となっており、フックレバー25をわずかにずらすことができるようにしてある。これにより、扉5に多少のゆがみなどがあっても、これを吸収することによりロック可能となる。連結穴部25bは、上記の第2連結ピン23cが係合可能な幅を有するとともに、連結バー23の直線運動に対し、フックレバー25が揺動運動をすることから生じる位置ずれを吸収するために長穴としてある。各フックレバーの長片側における端部近傍の下側には、ロックピン27との係合凹部25cが形成してある。この係合凹部25cは、長片側の端部近傍の下辺にロックピン27が係合可能な幅に切欠したものからなる。
【0016】
上記のフックレバー25には、付勢手段である引張りバネ29が取り付けてある。引張りバネ29は、フックレバー25の長片側の上辺中程に形成されている掛止部25dと、揚送塔本体3に植設された掛具(ここでは支持ピン24が兼ねている)との間に引掛けられている。図3(a)に示すようなロック状態の下では、このバネ29は、フックレバー25を反時計回り方向へ付勢するようになっている。したがって、フックレバー25は、付勢された状態で係合凹部25cがロックピン27に係合しているため、運転中の振動等によりロックが解除されるようなことが起きにくい。また、図3(b)に示すように、アンロック状態になると、このバネ29は、支点ピン26の右側に位置するようになるため、フックレバー25を時計回り方向へ付勢可能となる。フックレバー25は、アンロック時にロック位置に復帰(倒置)していると、扉を閉じる際に先端部がロックピンに邪魔されてスムーズにロックされないことが起こり得る。しかし、このフックレバー25は、アンロック時には長片側が持ち上がった状態を維持するように構成してあるため、扉を閉じる際にロックピン27に邪魔されずに係合(ロック)可能となる。
【0017】
(本形態例の作用)
上記の通り、開閉レバー21の揺動により連結バー23が上昇し、これにより各フックレバー25が揺動して係合凹部25cがロックピン27と係合することによりロック可能となっているが、さらにこれを詳説すると以下のようになる。まず、開扉する際には、開閉レバー21のハンドル部21bを、図1に想像線で示してあるような状態に持ち上げると、これに対応して連結部21aが下がるため、第1連結ピン23aを介して連結バー23が下降する。この下降量は、長溝23bにより規制されているため、開閉レバー21の回動もこれに対応して規制されたものとなる。連結バー23が下降すると、フックレバー25が第2連結ピン23cを介して時計回り方向へ回動し、係合凹部25cとロックピン27との係合が外れてアンロック状態となる。さらに開閉レバー21を持ち上げると、フックレバー25は、図3(b)に示すように、立ち上がった状態となる。この時、引張りバネ29は、フックレバーの支点ピン26よりも連結バー寄りに変位するため、フックレバーは時計回り方向へ付勢された状態となる。その結果、開閉レバー21のハンドル部21bを倒す方向へ操作しない限り、フックレバー25は閉じる方向へは回らないためアンロック状態を維持可能となる。
【0018】
また、上記の開閉レバー21は、連結バー23を介して各フックレバー25と連動可能としてあるため、フックレバー25がアンロック状態になっている時には、開閉レバー21は起立状態となる。そして、上記したように、フックレバーがアンロック状態を維持可能となっている時には、開閉レバー21のハンドル部21bも同様に起立状態を維持していることになる。次に、扉5をロックする際には、この扉を完全に閉じた後に、開閉レバー21のハンドル部21bを反時計回り方向へ回して倒すと、開扉の時とは反対に連結バー23が上昇し、これによりすべてのフックレバー25,…が反時計回り方向へ回動し、各係合凹部25cがそれぞれロックピン27と係合することによりロックが完成する。また、このロック状態は引張りバネ29により、フックレバーの長片部が反時計回り方向へ付勢されているため、振動などにより持ち上がってロック状態が解除されるようなことが起きにくくなっている。
【0019】
(ロック手段の他の構成)
他の形態例として、図3に示してあるロック手段Lを変形してさらに研磨機扉をロック容易としたロック手段L2に付いて説明する。このロック手段L2は、上記のロック手段Lと基本的構成は同じであるが、図4に示すように、フックレバー55をフックレバー支持部材(以下「支持部材」という)65の上部に設けてあるところに特徴がある。この支持部材65は、フックレバーとほぼ同じ幅の板材からなり、この板材の中央部を支軸66で揺動自在に支持し、下端部近傍に設けられた長穴65aに、規制ピン67を嵌合させることにより揺動量を規制可能としてある。このような構成であるので、上部に取り付けられたフックレバー55は、この支点ピン56の揺動範囲でロックピン57に対して進退可能となるため、扉の位置ずれなどによる不整合を吸収可能となる。
【0020】
なお、上記の説明では、各フックレバーに引張りバネが取り付けてあるものとして説明してあるが、各フックレバーは連結バーを介して連動可能とし、フックレバーの自重によりロック状態を維持可能としてあれば、揚送研磨機の振動などによりロック解除を困難とすることもできるので、引張りバネの設置は必須ではない。ただし、アンロック状態の維持及び上記の開閉レバーの起立状態を維持するための手段ともなることから、少なくとも1個は取り付けてあることが望ましい。また、この発明をベルト式揚送研磨機の扉のロック機構に関するものとして説明してあるが、本発明はこれに限定される趣旨ではなく、その他の形式の揚送研磨機一般にも適用可能である。また、扉も1つだけのものとして説明してあるが、これも上下2つのものあるいはそれ以上であってもよく、この場合には扉ごとにロック機構を設けるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施の一形態例を示す正面図である。
【図2】ロック機構を採用した揚送研磨機を示す側面図である。
【図3】実施の一形態例のロック手段を拡大して示したものであり、(a)はロック状態、(b)はアンロック状態を示す正面図である。
【図4】他の形態例のロック手段を拡大して示したものであり、(a)はロック状態、(b)はアンロック状態を示す正面図である。
【符号の説明】
【0022】
3 揚送塔本体
5 扉
19 ロック機構
L,L2 ロック手段
21 開閉レバー
22 支軸
23,53 連結バー
23a,23c 連結ピン
25,55 フックレバー
25a 支点穴部
25b,55b 連結穴部
25c,55c 係合凹部
26,56 支点ピン
27,57 ロックピン
29,59 付勢手段(引張りバネ)
65 フックレバー支持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
揚送塔本体と、この揚送塔本体の一側部に開閉自在に設けてある扉とをロック状態及びアンロック状態に維持する揚送研磨機扉のロック機構であり、
上記揚送塔本体の一側部に揺動自在に設けてあり、一端部側で扉に設けてあるロックピンにそれぞれ係合可能な係合凹部を備えた複数のフックレバーと、
上記各フックレバーの近傍に昇降可能に設けてあり、各当該フックレバーの他端部側を揺動自在に支持している連結バーとを備え、
上記フックレバーは、上記揚送塔本体に所定の範囲で揺動可能に取り付けられたフックレバー支持部材に設けられた支点ピンを介して設けてある
ことを特徴とする揚送研磨機扉のロック機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−114082(P2008−114082A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−319404(P2007−319404)
【出願日】平成19年12月11日(2007.12.11)
【分割の表示】特願2001−395837(P2001−395837)の分割
【原出願日】平成13年12月27日(2001.12.27)
【出願人】(000154679)株式会社平和 (1,976)
【Fターム(参考)】