説明

換気装置

【課題】ビル、学校のように夜間に施設全体が無人となる施設において、夜間に蓄積された揮発性有害物質を効率的に排除することができるようにした換気装置を得る。
【解決手段】外気aと室内空気bをそれぞれ室内側及び室外側に給排気し、リモコン7操作によってこれらの給排気の運転及び停止を行う換気扇と、この換気扇の運転時に室外側給気口8から吸い込まれた外気aの温度を検出する外気温度検出器102と、この外気温度検出器102によって検出された温度データを時系列に蓄積する記憶手段104と、先のリモコン7操作による換気扇の停止時において、この停止時から所定時間経過すると外気温度検出器102に室外の温度を検知させるための最小時間の運転を行わせ、検知後の外気温度を順次記憶手段104に記憶し、前回の外気温度>最新の外気温度の状態から前回の外気温度<最新の外気温度の状態に変化したとき、換気扇の運転を所定時間継続する制御部3とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビル、学校等の施設の給気及び排気を同時に行って施設内の空質環境を維持する換気装置に係り、より詳しくは、夜間、換気扇の停止時に室内で発生する揮発性有害物質の排除を、早朝の施設使用前に排出することができる換気装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の有害物質排除用の住宅用換気装置では、換気装置は常時換気状態にあり、湿度センサ、温度センサーおよび人感センサーにより検知される値に基づいて、排気モードにおける換気装置の風量を変化させるものであった(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2000−88298号公報(第2頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の住宅用換気装置は、居住者が常時在室しているという前提で、有害性物質排除のために常時換気をすることが前提となっている。しかしながら、ビル、学校のような施設では、夜間は施設全体が無人となり、無人状態で昼夜の常時換気を行うことは、エネルギーを損失することになる。
【0005】
本発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、ビル、学校のように夜間に施設全体が無人となる施設において、夜間に換気装置を停止させても早朝の施設使用状態前に室内空気を排出し、夜間に蓄積された揮発性有害物質を効率的に排除することができるようにした換気装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る換気装置は、外気と室内空気をそれぞれ室内側及び室外側に給排気し、リモコン操作によってこれらの給排気の運転及び停止を行う換気扇と、この換気扇の運転時に室外側給気口から吸い込まれた外気の温度を検出する外気温度検出器と、この外気温度検出器によって検出された温度データを時系列に蓄積する記憶手段と、先のリモコン操作による換気扇の停止時において、この停止時から所定時間経過すると外気温度検出器に室外の温度を検知させるための最小時間の運転を行わせ、検知後の外気温度を順次記憶手段に記憶し、前回の外気温度>最新の外気温度の状態から前回の外気温度<最新の外気温度の状態に変化したとき、換気扇の運転を所定時間継続する制御部とを備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
ビル、学校のような施設において、夜間換気装置を停止させても、早朝の施設使用状態になる前に夜間に発生した室内の揮発性有害物質の空気を施設可動前に排出するので、夜間に蓄積された揮発性有害物質を効率よく排除することができ、エネルギーを効率的に使用することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1は本発明の一実施の形態に係る換気装置の説明図、図2は図1の換気装置に搭載された制御装置の説明図である。図1に示すように、換気装置は、本体ケーシング1に、室外側給気風路8及び室内側給気風路9と、室内側排気風路10及び室外側排気風路11とを形成して、本体ケーシング1の内部で、室内側給気風路9の近くに可変速の給気ファン4が、室外側排気風路11の近くには給気ファン4と共に換気扇を構成する可変速の排気ファン5がそれぞれ配設されている。ここでは、給気・排気各ファン4、5の風量の変化は、強/弱2ノッチ仕様とする。
【0009】
本体ケーシング1の中央内部には熱交換器2を配設しており、この熱交換器2により、各給気風路8、9を通過する外気aと、各排気風路10、11を通過する室内空気bとの間で互いに熱交換を行うようにする一方、本体ケーシング1の内部で熱交換器2の側部に、熱交換器2を側路するバイパス通路14を設けて、このバイパス通路14と熱交換器2の通路とを切換える切換えダンパ13を設けている。切換えダンパ13は、ダンパモータ12によって駆動される。
【0010】
切換えダンパ13は、点線13aで示すように切換え操作してバイパス風路14を閉じると、室内側排気風路10を通る室内空気bが、上部点線矢印イで示すように、熱交換器2を通過して、排気ファン5から室外側へと排気して、熱交換器2を通過するときに、室内側に取り入れられる外気aと、室外側に排出される室内空気bとが熱交換し、所謂熱交換換気が行われる。一方、切換えダンパ13の点線13bで示すように、切換えダンパ13を切換え操作してバイパス風路14を開けると、室内側排気風路10を通る室内空気bが、下部点線矢印ロで示すように、熱交換器2を通過することなく、外気aと室内空気bが直接給排気して、所謂バイパス換気が行われる。こうして、これらバイパス換気と熱交換換気を選択的に行うことにより、省エネルギー対策と快適性を得る。このように、換気装置には、バイパス換気と熱交換換気とを自動的に切換える運転制御を含んだ制御装置3を設けている。
【0011】
図2は制御装置3の入出力を示したもので、制御装置3にはこれを操作するリモコン7が通信線6を介して接続されている。このリモコン7からの操作によって、前述のバイパス切換えや、給気ファン4、排気ファン5の運転・停止や、風量の調整を行う。制御装置3内には制御回路100が設けられ、また室内空気を感知する温度センサ101、室外空気を感知する温度センサ102(以下、外気温センサという)及び外部入力信号103の受け口が設けられ、外部入力信号103を制御装置3が読み込むことにより、所定の動作を行う。また、制御装置3には、前述の給気ファン4、排気ファン5及びダンパモータ12が接続されている。制御装置3内には、後述する外気温度の履歴を時系列に蓄積する外気温度履歴保存用のメモリ104を備えている。
【0012】
図3は、制御装置3がリモコン7による停止命令を受信したときの動作シーケンスのフローチャートである。図に示すように、リモコン7から停止指示があると、4時間停止が継続する(ステップS−1)。この4時間は、ビル、学校において、連続して換気装置停止となる時間、すなわち夜間であることを認識する時間である。
4時間経過後、換気ファンの弱運転(低風量にする、以下同様)を5分のみ行う(ステップS−2)。5分間は、外気温センサ102が外気の温度を検知するのに十分な時間である。5分経過後、外気温センサ102によって検出した外気温度を、制御装置3の外気温度履歴保存用のメモリ104に保存する(ステップS−3)。
【0013】
更に1時間停止を継続し(ステップS−4)、弱運転を5分のみ行った(ステップS−5)後、そのときの外気温センサ102の値を外気温度履歴保存用のメモリ104に記憶する(ステップS−6)。
【0014】
ステップS−3で保存した外気温の値(前回の外気温)と、ステップS−6で保存した外気温の値(今回の外気温)を比較し(ステップS−7)、前回の外気温>今回の外気温であるか否かを確認する。
前回の外気温>今回の外気温でないならば、すなわち外気温度の下降がなければ、ステップS−4に戻り、さらに一時間の停止を継続した後、弱運転を5分間行い(ステップS−5)、最新の外気温度を保存し(ステップS−6)、その後、もう一度、一時間前の外気温の値と最新の外気温の値を比較する(ステップS−7)。以下、前回の外気温>今回の外気温の条件が成立するまで、ステップS−7、ステップS−4、ステップS−5、ステップS−6を繰り返す。
【0015】
前回の外気温>今回の外気温であれば、すなわち外気温度の下降があれば、ステップS−8に進み、一時間の停止を継続する。その後、弱運転を5分のみ行った(ステップS−9)後、そのときの外気温センサ102の値を外気温度履歴保存用のメモリ104に記憶する(ステップS−10)。
【0016】
ステップS−8で保存した外気温の値(前回の外気温)と、ステップS−10で保存した外気温の値(今回の外気温)を比較し(ステップS−11)、前回の外気温<今回の外気温であるか否かを確認する。
前回の外気温<今回の外気温であれば、すなわち外気温度の上昇があれば、2時間運転後停止し(ステップS−12)、ステップS−1に戻る。2時間は、施設の空気を換気するのに十分な時間である。
前回の外気温<今回の外気温でないならば、すなわち外気温度の上昇がなければ、ステップS−8に戻り、更に1時間の停止を継続した後、弱運転を5分行い(ステップS−9)、最新の外気温度を保存した(ステップS−10)後、もう一度一時間前の外気温の値と最新の外気温の値を比較する(ステップS−11)。以下、前回の外気温<今回の外気温の条件が成立するまで、ステップS−11、ステップS−8、ステップS−9、ステップS−10を繰り返す。
【0017】
上記アルゴリズムは早朝の気温の一番低い時間を捕らえ、そこを起点にして、1時間後程に換気をスタートさせるものである。例えば2月における一日の温度の平均的な気温の推移は図5に示す通りであり、7月における一日の温度の平均的な気温の推移は図6に示す通りであり、いずれの場合も一日の最低気温は早朝6時から7時頃であり、施設稼動前としては適度な時間である。
【0018】
なお、図3はリモコン7によって停止指示されているときのフローチャートであり、リモコン7から運転指示が発生した場合は、本フロー処理の途中であっても、換気装置はリモコン7の指示に従って運転を開始する。
【0019】
図4は開始条件として、リモコン指示停止時かつ外部入力があるとしたときのフローチャートである。外部入力があるとした場合以外におけるフローチャートの内容は、図3に示した場合と実質的に同様なので説明を省略する。なお、図4は、リモコン操作によって、リモコン指示停止時かつ外部入力があるとされているときのフローチャートであり、リモコン7からの運転指示が発生した場合は、本フロー処理の途中であっても、換気装置はリモコン7の指示に従って運転を開始する。外部入力があるという条件は、後述する光センサを使用した場合、早朝の太陽光による影響もあるため、本フロー処理を中断する要因とはならない。
【0020】
図3、図4の説明の中で、外気温センサの温度を検知するのに弱運転としたが、これは夜間に強運転で運転した場合に騒音によってクレームが発生しないようにしたためであり、同じくステップS−9における運転時も、弱運転による運転により騒音を低減することが可能である。
【0021】
図4の説明の中で、外部入力がある場合の説明をしたが、外部入力は光検知センサによって周囲が暗くなったときに発生する信号を用いると、より一層夜間と昼間との区別がつく。
また、外部入力は近傍の照明設備が消灯したときに発生する信号を用いると、より一層夜間と昼間の区別がつく。
【0022】
図3、4の説明の中で、ステップS−12で2時間の換気運転をおこなったが、夏季の場合は換気運転方法をバイパス換気にすることにより、外気による室内冷房が可能である。冬季の場合は、熱交換換気とすることにより、外気による室温低下を防ぐことが可能である。この場合の換気モードの決定は最新の外気温度により決定し、たとえば外気が15℃以下で熱交換換気、15℃より大きい場合にバイパス換気とする。
【0023】
図3、4では温度データの比較に1回/1時間だけのサンプルを用いたが、実際の気象データでは、1時間内に小刻みに上昇下降を繰り返しながら、大きく温度が上昇または下降していく場合もあり、間欠運転時間を短くして温度の平均化を計ることで、精度良く早朝時を検出することができる。
【0024】
本発明によれば、早朝気温の一番低い時点を捕らえ、そこを起点として所定時間後に換気を開始するので、夜間に発生する揮発性有害物質の排除を効率よく施設稼動前に排除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施の形態を示す換気装置の説明図である。
【図2】図1の換気装置に搭載される制御装置の説明図である。
【図3】本発明の一実施の形態の制御状態を示すフローチャートである。
【図4】本発明の一実施の形態の他の制御状態を示すフローチャートである。
【図5】平均気温変化の一例を示す線図である。
【図6】平均気温変化の他の一例を示す線図である。
【符号の説明】
【0026】
1 本体ケーシング、2 熱交換器、3 制御装置(制御部)、4 給気ファン、5 排気ファン、7 リモコン、8 室外側給気風路、10 室内側排気風路、13 切換えダンパ、14 バイパス風路、102 室外空気を感知する温度センサ(外気温度検出器)、103 外部入力信号、104 外気温度履歴保存用のメモリ(記憶手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外気と室内空気をそれぞれ室内側及び室外側に給排気し、リモコン操作によってこれらの給排気の運転及び停止を行う換気扇と、
該換気扇の運転時に室外側給気口から吸い込まれた外気の温度を検出する外気温度検出器と、
該外気温度検出器によって検出された温度データを時系列に蓄積する記憶手段と、
前記リモコン操作による換気扇の停止時において、該停止時から所定時間経過すると前記外気温度検出器に室外の温度を検知させるための最小時間の運転を行わせ、検知後の前記外気温度を順次前記記憶手段に記憶し、前回の外気温度>最新の外気温度の状態から前回の外気温度<最新の外気温度の状態に変化したとき、前記換気扇の運転を所定時間継続する制御部とを備えたことを特徴とする換気装置。
【請求項2】
外気と室内空気をそれぞれ室内側及び室外側に給排気し、リモコン操作によってこれらの給排気の運転及び停止を行う換気扇と、
該換気扇の運転時に室外側給気口から吸い込まれた外気の温度を検出する外気温度検出器と、
該外気温度検出器によって検出された温度データを時系列に蓄積する記憶手段と、
外部信号を入力する外部入力部と、
前記リモコン操作による換気扇の停止時において、外部信号の入力がある場合であって、前記停止時から所定時間経過すると前記外気温度検出器に室外の温度を検知させるための最小時間の運転を行わせ、検知後の前記外気温度を順次前記記憶手段に記憶し、前回の外気温度>最新の外気温度の状態から前回の外気温度<最新の外気温度の状態に変化したとき、前記換気扇の運転を所定時間継続する制御部とを備えたことを特徴とする換気装置。
【請求項3】
室内側に取り入れる外気と室外側に排気する室内空気とを熱交換させて換気する熱交換換気と、熱交換させないで換気するバイパス換気の両機能をもち、リモコン操作によってこれらの給排気の運転及び停止を行う換気扇と、
該換気扇の運転時に室外側給気口から吸い込まれた外気の温度を検出する外気温度検出器と、
該外気温度検出器によって検出された温度データを時系列に蓄積する記憶手段と、
前記リモコン操作による換気扇の停止時において、該停止時から所定時間経過すると前記外気温度検出器に室外の温度を検知させるための最小時間の運転を行わせ、検知後の外気温度を順次前記記憶手段に記憶し、前回の外気温度>最新の外気温度の状態から前回の外気温度<最新の外気温度の状態に変化したとき、所定の温度>最新の外気温度の状態のときに熱交換換気を選択し、所定の温度≦最新の外気温度の状態のときにバイパス換気を選択して前記換気扇の運転を所定時間継続する制御部とを備えたことを特徴とする換気装置。
【請求項4】
室内側に取り入れる外気と室外側に排気する室内空気とを熱交換させて換気する熱交換換気と、熱交換させないで換気するバイパス換気の両機能をもち、リモコン操作によってこれらの給排気の運転及び停止を行う換気扇と、
該換気扇の運転時に室外側給気口から吸い込まれた外気の温度を検出する外気温度検出器と、
該外気温度検出器によって検出された温度データを時系列に蓄積する記憶手段と、
外部信号を入力する外部入力部と、
前記リモコン操作による換気扇の停止時において、外部信号の入力がある場合であって、該停止時から所定時間経過すると前記外気温度検出器に室外の温度を検知させるための最小時間の運転を行わせ、検知後の外気温度を順次前記記憶手段に記憶し、前回の外気温度>最新の外気温度の状態から前回の外気温度<最新の外気温度の状態に変化したとき、所定の温度>最新の外気温度の状態のときに熱交換換気を選択し、所定の温度≦最新の外気温度の状態のときにバイパス換気を選択して前記換気扇の運転を所定時間継続する制御部とを備えたことを特徴とする換気装置。
【請求項5】
給排気風量が可変であり、前記外気温度検出器が室外の温度を検知するための最小時間の運転時は、換気扇の風量を低風量にすることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の換気装置。
【請求項6】
給排気風量が可変であり、前回の外気温度<最新の外気温度の状態に変化したとき、所定時間換気扇の運転を継続する場合の風量を低風量にすることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の換気装置。
【請求項7】
外部入力信号は、光検知センサの周囲が暗くなったときに発生する信号を用いることを特徴とする請求項2もしくは請求項4に記載の換気装置。
【請求項8】
外部入力信号は、近傍の照明が消灯しているときに発生する信号を用いることを特徴とする請求項2もしくは請求項4に記載の換気装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−84070(P2006−84070A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−267540(P2004−267540)
【出願日】平成16年9月14日(2004.9.14)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】