説明

揮散器及び揮散剤収容器

【課題】揮散剤の揮散効果が低下することを防止することができる揮散器及び揮散剤収容器を提供する。
【解決手段】表面に開口を有する孔部51が形成されるゲル状の揮散剤5を有する揮散器1であって、内周面6aが、孔部51を取り囲むように、揮散剤5の内部に配置される筒状部材6を備える揮散器1.

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揮散器及び揮散剤収容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、居間や自動車の車内などの居住空間に香りを付与したり、居住空間の臭気成分をマスキングするために芳香性を有する揮散性物質を居住空間に放出する揮散器が知られている。このような揮散器としては、例えば特許文献1に開示されているように、芳香性物質等の揮散性物質を含むゲル状の揮散剤を容器内に収容して、容器の上端に形成されている開口部を介して揮散剤の揮散面から揮発性物質を徐々に空気中に揮散させるように構成されている。このようなタイプの揮散器においては、空気と接触する揮散剤の表面積を増大させて、揮散剤の揮散効果を向上させるために、揮散剤の揮散面からその内部にかけて孔部が形成されることがある。
【特許文献1】実開昭61−26541号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、揮散剤の揮散面からその内部にかけて孔部が形成された揮散剤を有する揮散器は、その使用時間が経過するに従って揮散剤が収縮し、揮散剤に形成された孔部が潰れてしまうという問題があった。このように揮散剤に形成された孔部が潰れて揮散剤と空気とが接触する表面積が減少すると、揮散剤の揮散効果が低下し、その結果、揮散器の芳香効果等が低減することになる。
【0004】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであって、揮散剤の揮散効果が低下することを防止することができる揮散器及び揮散剤収容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の上記目的は、表面に開口を有する孔部が形成されるゲル状の揮散剤を有する揮散器であって、内周面が、前記孔部を取り囲むように、前記揮散剤の内部に配置される筒状部材を備える揮散器により達成される。
【0006】
また、この揮散器において、前記筒状部材は、前記孔部に対して同軸状に配置されていることが好ましい。
【0007】
また、前記筒状部材の内周面から突出する突出部を備えることが好ましい。
【0008】
また、両端のうち少なくとも一方に開口を有する筒状のケースを更に備え、前記揮散剤は、前記孔部が前記ケースの開口側に露出するように前記ケース内部に充填されることが好ましい。
【0009】
また、両端のうち少なくとも一方に開口を有する筒状のケースを更に備え、前記揮散剤は、前記孔部が前記ケースの開口側に露出するように前記ケース内部に配置されており、前記筒状部材は、前記ケースの内表面に支持されていることが好ましい。
【0010】
また、本発明の上記目的は、両端のうち少なくとも一方に開口を有する筒状のケースと、筒状部材とを備える揮散剤収容器であって、表面に開口を有する孔部が形成された揮散剤を、前記孔部が前記ケースの開口側に露出するように前記ケース内に収容したときに、前記筒状部材は、その内周面が前記孔部を取り囲むように前記揮散剤の内部に配置される揮散剤収容器により達成される。
【0011】
この揮散剤収容器において、前記筒状部材の内周面から突出する突出部を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、揮散剤の揮散効果が低下することを防止することができる揮散器及び揮散剤収容器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る揮散器について添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る揮散器1の概略分解斜視図である。図2は、揮散器1の要部を示す概略斜視図であり、図3は、図2に示す揮散器1の要部の概略正面図である。図4は、ケース4の内部に揮散剤5を充填した状態における図3のIV−IV断面図である。なお、本実施形態に係る揮散器1は、本棚や机などの載置台に載置して使用する据え置き型の揮散器1であり、各図における矢印87は、載置台の載置面の延びる方向を示し、矢印88は、載置台の載置面に略垂直な方向を示している。
【0014】
図1〜図4に示すように、揮散器1は、カバー2,3と、揮散剤収容器10と、揮散剤5とを備えている。揮散剤収容器10は、ケース4と、筒状部材6とを備えており、揮散剤5は、ケース4の内部に充填されて収容されている。
【0015】
カバー2,3は、ケース4の少なくとも一部を覆うように形成されている。このカバー2,3は、ケース4を軸方向の両側から挟むように形成されている。カバー2,3は、矢印81に示すように、ケース4に嵌め込まれるように形成されている。カバー2,3は、開口部2a,3aを有し、当該開口部2a,3aは、揮散剤5の揮散面5a,5bが露出して外気に接触するように形成されている。
【0016】
ケース4は、筒状に形成されており、軸方向の両側の端部が開口している。ケース4は、軸方向が載置面と略平行になるように配置されている。ケース4は、軸方向に略垂直な断面の形状がほぼ四角形になるように形成されており、ケース4の内部には空洞が形成されている。
【0017】
揮散剤5は、水と揮散性物質を含むゲル状体であり、ケース4の内部に配置されている。本実施形態においては、ケース4の内部全体に揮散剤5が充填されている。ケース4の端部の開口により、揮散剤5の表面が露出して揮散剤5の揮散面5a,5bが形成されている。このゲル状の揮散剤5は、例えば、水に、ゲル化剤、界面活性剤、揮散性物質、消臭成分などを溶解または分散した水溶液をゲル状としたものである。本実施形態においては、ケース4の軸方向における揮散剤5の両端面が揮散面5a,5bを構成しており、揮散剤5に含まれる揮散性物質が、カバー2,3の開口部2a,3aを介して、各揮散面5a,5bから外部に放出される。
【0018】
揮散性物質としては、従来より用いられている芳香性物質、殺虫性物質、防菌防カビ性物質等に用いられる各種物質を用いることができる。芳香性物質の具体例としては、植物性の天然香料、或いは炭化水素、アルコール、アルデヒド、ケトン、ラクトン、オキシド、エステル類等の人工香料等を例示することができる。また、防虫性物質の具体例としては、ピレスロイド系殺虫性物質、有機リン系殺虫性物質、オキサジアゾール系殺虫性物質、クロロニコチン系殺虫性物質等を例示することができる。防菌防カビ剤性物質の具体例としては、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、フェノール、ブロムシンナムアルデヒド、チモール、o−フェニルフェノール、ヒノキチオール、ワサオーロ、ナフタレン等を例示することができる。なお、上述の各種揮散性物質に代えて、あるいは揮散性物質に加えて、消臭性物質を添加して揮散剤5を構成してもよい。消臭性物質の具体例としては、ヒバ、ユウカリ、クスノキ等の植物抽出エキスを有効成分とする天然消臭性物質や、テルペン化合物、フラボノイド等の各種有機化合物を有効成分とする合成消臭性物質を例示することができる。
【0019】
また、揮散剤には、表面(揮散面5a)に開口を有する孔部51が形成されている。この孔部51は、揮散器1を平坦な載置面に載置したときに、載置面と略平行な方向において、ケース4の一方の開口側から他方の開口側に向けて揮散剤5を貫通するように形成されており、ケース4の両方の開口に露出している。また、孔部51は、揮散器1を正面から見たときに、ほぼ中央部に形成されている。
【0020】
筒状部材6は、軸方向に略垂直な断面の形状が略四角形になるように形成されており、その内周面6aが、孔部51を取り囲むように、揮散剤5の内部に配置されている。また、この筒状部材6は、孔部51の一部分である孔部51の長手方向中央部をその内周面6aが取り囲むようにして、孔部51に対して同軸状となるように配置されている。
【0021】
また、筒状部材6は、その外周面6bから突出するように形成されている支持部材61を備えている。この支持部材61は、ケース4と筒状部材6とを互いに固定してケース4の内表面に筒状部材6を支持するように形成されている。支持部材61は、揮散器1を平坦な載置面に載置したときに、その主面61aが載置面に対してほぼ垂直になるように形成されると共に、その主面61aがケース4の軸方向とほぼ垂直になるように形成されている。また、支持部材61は、筒状部材6の断面形状における四角形の各角部にそれぞれ設けられている。
【0022】
このように構成された揮散器1の効果について図4から図6の断面図を用いて以下に説明する。図4の断面図は、揮散器1の使用開始初期の状態を示している。初期状態においては、ケース4の一方の開口側から他方の開口側に亘って揮散剤5が充填されている。図5の断面図は、揮散器1の使用を継続したときの状態を示しており、揮散面5a,5bから水や揮散性物質が放出することにより、揮散剤5が減量している。なお、揮散剤5は、矢印82に示すように、載置面に略平行な方向に向かって減量する。図6の断面図は、揮散器1の使用を更に継続し、揮散剤5が残り僅かになった状態を示している。
【0023】
本実施形態に係る揮散器1は、内周面6aが、揮散剤5の孔部51を取り囲むように、揮散剤5の内部に配置されている筒状部材6を備えているため、図6に示すように、揮散器1の使用時間の経過に伴って、筒状部材6の周囲に揮散剤5の一部を残存させながら揮散剤5を減量させていくことができる。この結果、筒状部材6が、孔部51の周囲に存在する揮散剤5を保持することができるので、揮散剤5の収縮によって、孔部51が潰れてしまうことを抑制でき、揮散剤5の揮散効果が低減することを防止することができる。なお、筒状部材6の周囲を取り巻くように揮散剤5の一部が残存するため、筒状部材6の内周面6aから揮散剤5が剥離することが抑制される。
【0024】
また、筒状部材6が、孔部51に対して同軸状となるように配置されているため、筒状部材6が、孔部51の周囲に存在する揮散剤5をバランスよく保持することができ、孔部51の形状を一定に保つことができる。
【0025】
また、本実施形態においては、筒状部材6の内周面6aが貫通孔である孔部51の長手方向中央部を取り囲むように筒状部材6を配置しているため、揮散剤5が2つの揮散面側から徐々に減量し、揮散剤5の残りが僅かになったときにおいても、孔部51の周囲の揮散剤5が下方に崩れ落ちて孔部51が潰れてしまうことを効果的に抑制することができる。つまり、揮散器1の使用開始から使用終了までの長期間に亘って、孔部51が潰れてしまうことを防止することができる。
【0026】
また、本実施形態に係る揮散器1は、筒状ケース4の両端の開口側に揮散面5a,5bを有する揮散剤5を備えているため、揮散剤5と空気とが接触する効率を高めることができるので、揮散性物質を含む揮散剤5の揮散効果をより高めることができる。特に、図1に示すように、揮散剤5が、載置台の載置面に対して略垂直となる揮散面5a,5bを有しているため、空気が流れてくる方向に揮散面5a,5bが向くので、揮散面5a,5bと空気とが接触する効率をより一層高めることができ、揮散剤5の揮散効果を更に高めることが可能になる。
【0027】
また、本実施形態に係る揮散器1は、筒状部材6が、ケース4の内表面に支持される支持部材61を備えているため、ケース4内における筒状部材6の位置を固定することができる。この結果、筒状部材6を介して揮散剤5のケース4内における位置を固定することができる。更に、揮散剤5は、図中の矢印82に示すように支持部材61に向かって減量していくので、支持部材61は、揮散剤5の終息点を形成することとなる。
【0028】
以上、本発明に係る揮散器1の一実施形態について説明したが、本発明の具体的な構成は、上記実施形態に限定されない。上記実施形態においては、筒状部材6の外周面6bからケース4に向けて延びる支持部材61が設けられているが、この支持部材61を省略する構成を採用することもできる。このような構成であっても、筒状部材6が、孔部51の周囲の揮散剤5を保持することができるので、使用時間の経過により孔部51が潰れることを防止することができる。この結果、揮散剤5の揮散効率が低下することを防止して、揮散器1の芳香効果等を維持することができる。
【0029】
また、上記実施形態において、図7に示すように、筒状部材6の内周面6aから筒状部材6の内部に向けて突出する突出部7を備えるように構成することもできる。この突出部7は、筒状部材6の内周面6aに接続する枠体状部材により形成されている。このような構成の場合、突出部7と当該突出部7に接触する揮散剤5との間には、摩擦抵抗力が発生する。したがって、上述の筒状部材6の作用に加えて、突出部7において発生する摩擦抵抗力の作用によって、孔部51回りの揮散剤5が筒状部材6及び突出部7に確実に保持され、孔部51が潰れてしまうことをより一層効果的に防止することが可能になる。また、突出部7の形状は、図7に示す枠体状に限定されず、例えばピン状や板状等であっても構わない。なお、図7に示す揮散器1においては、支持部材61が筒状部材の軸方向に沿って延びるように形成されている。
【0030】
また、上記実施形態においては、両端が開口するケース4を用い、揮散剤5の揮散面5a,5bがケース4の両端側にそれぞれ形成されるように揮散器1を構成しているが、例えば、一方の端部に開口を有し、他方の端部開口を閉塞部材により閉塞したケース4を用い、揮散剤5の揮散面5aがケース4の開口側に形成されるように揮散器1を構成してもよい。このような構成であっても、筒状部材6の作用により、使用時間の経過により孔部51が潰れることを防止することができ、揮散器1の芳香効果等を維持することができる。なお、他方の端部開口を閉塞部材により閉塞したケース4を用いて揮散器1を構成する場合、閉塞部材により閉塞されたケース4の端部側が下方となるように揮散器1を載置台に載置して揮散器1を使用してもよい。
【0031】
また、上記実施形態においては、揮散剤5に形成される孔部51は、ケース4の一方の開口側から他方の開口側に向けて貫通するように形成されているが、ケース4の他方の開口側に向けて貫通しない、有底の孔部51となるように形成してもよい。
【0032】
また、ケース4は、断面視略四角形となるように形成されているが、このような形状に特に限定されず、例えば、断面視略円形や断面視略五角形等種々の形状に形成してもよい。また、孔部51の断面視形状についても、断面視略四角形、断面視略円形等の種々の断面視形状を採用することができる。また、筒状部材6は、断面視略四角形となるように形成されているが、このような形状に特に限定されず、例えば、断面視略円形や断面視略五角形等種々の形状に形成してもよい。特に、揮散剤5に形成される孔部51の断面形状と略相似形となるように筒状部材6の断面形状を形成することが、孔部51が潰れてしまうことを防止するという観点からはより好ましい。
【0033】
また、本実施形態においては、揮散剤5がケース4の内部に充填して配置されているが、例えば、揮散剤5とケース4の内表面との間に空隙が形成されるような構成を採用してもよい。このような構成を採用した場合、揮散剤5の揮散性物質が放出される揮散剤5の表面積が増加するため、揮散剤5の揮散効率が向上する。なお、このような構成を採用した場合であっても、揮散剤は、筒状部材6及び支持部材61を介してケース4に支持されるため、ケースに対する揮散剤5の位置は固定される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態に係る揮散器を示す概略分解斜視図である。
【図2】図1に示す揮散器の要部を示す概略斜視図である。
【図3】図2に示す揮散器の要部の概略正面図である。
【図4】図3のIV−IV断面図である。
【図5】揮散剤が減量した様子を示す説明図である。
【図6】揮散剤が更に減量した様子を示す説明図である。
【図7】図1に示す揮散器の変形例の要部を示す概略分解斜視図である。
【符号の説明】
【0035】
1 揮散器
2、3 カバー
4 ケース
5 揮散剤
5a、5b 揮散面
51 孔部
6 筒状部材
61 支持部材
7 突出部
10 揮散剤収容器


【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に開口を有する孔部が形成されるゲル状の揮散剤を有する揮散器であって、
内周面が、前記孔部を取り囲むように、前記揮散剤の内部に配置される筒状部材を備える揮散器。
【請求項2】
前記筒状部材は、前記孔部に対して同軸状に配置されている請求項1に記載の揮散器。
【請求項3】
前記筒状部材の内周面から突出する突出部を備える請求項1又は2に記載の揮散器。
【請求項4】
両端のうち少なくとも一方に開口を有する筒状のケースを更に備え、
前記揮散剤は、前記孔部が前記ケースの開口側に露出するように前記ケース内部に充填される請求項1から3のいずれかに記載の揮散器。
【請求項5】
両端のうち少なくとも一方に開口を有する筒状のケースを更に備え、
前記揮散剤は、前記孔部が前記ケースの開口側に露出するように前記ケース内部に配置されており、
前記筒状部材は、前記ケースの内表面に支持されている請求項1から3のいずれかに記載の揮散器。
【請求項6】
両端のうち少なくとも一方に開口を有する筒状のケースと、筒状部材とを備える揮散剤収容器であって、
表面に開口を有する孔部が形成された揮散剤を、前記孔部が前記ケースの開口側に露出するように前記ケース内に収容したときに、前記筒状部材は、その内周面が前記孔部を取り囲むように前記揮散剤の内部に配置される揮散剤収容器。
【請求項7】
前記筒状部材の内周面から突出する突出部を備える請求項6に記載の揮散剤収容器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−82387(P2009−82387A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−255437(P2007−255437)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000186588)小林製薬株式会社 (518)
【Fターム(参考)】