説明

揮発性有機化合物の回収装置及びこれに用いる分離膜

【課題】膜分離法により、揮発性有機化合物が混入した被処理液から揮発性有機化合物を効率的に分離・回収することができる回収装置及びこれに用いる分離膜を提供する。
【解決手段】揮発性有機化合物と固体粒子とを含む被処理液から、前記揮発性有機化合物を分離して回収する揮発性有機化合物の回収装置であって、前記被処理液から前記揮発性有機化合物を分離する分離膜を備える膜モジュール30を内蔵する回収タンク22を備え、前記膜モジュール30は、前記被処理液を収容する領域と、前記膜モジュールにより分離される前記揮発性有機化合物が浸出する領域とを仕切る配置に設けられ、前記分離膜として、ポリジメチルシロキサン(PDMS)液からなる主剤に孔形成剤と硬化剤とを加えた溶液を用いて、孔形成剤を含む膜を成形し、該膜から前記孔形成剤を溶出させて多孔質状に形成された膜を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揮発性有機化合物(VOC)の回収装置、及び揮発性有機化合物の分離・回収に用いる分離膜、及び分離膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機溶媒(揮発性有機化合物)は、さまざまな工業分野で広く使用されており、有機溶媒が工場外に散逸することによって環境に悪影響を及ぼすことが環境保全上、問題となっている。たとえば、印刷業界においては、印刷用インクに有機溶媒が使用されているために、印刷時に有機溶媒が外部に散逸するといった問題や、産業廃棄物として印刷用インクが排出されるといった問題がある。
作業時に発生する有機溶媒を外部に排出させないようにする方法としては、吸着剤によって有機溶媒を捉えて、有機溶媒がそのまま外部に排出されないようにする方法や、有機溶媒を酸化処理して無害化して排出させるといった方法が行われている。
【0003】
しかしながら、有機溶媒は工場等から空中に飛散して散逸する場合に限らず、有機溶媒が混入した廃液として廃棄されるものも大量にあるから、これらの廃物から有機溶媒を回収して再利用することができれば、有機溶媒の有効利用と環境に対する負担を軽減できるという大きな利点がある。
印刷インクや塗料などの有機溶媒が混入した廃液から有機化合物を回収する方法としては、従来、吸着法や、燃焼法、蒸留法など種々の方法が従来行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−66530号公報
【特許文献2】特開2008−55326号公報
【特許文献3】特開2003−225543号公報
【特許文献4】特開2001−259356号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
蒸留法によって有機溶媒を回収する方法は、有機溶媒を確実に回収できるという利点はあるものの、分離・回収装置の建設には多大な経費がかかり、処理のために経費がかかるから、処理すべき対象物(被処理物)が大量に発生する工場等においては活用できても、処理対象物が少ない工場等においては有効活用することが難しい。また、蒸留法による分離は、防爆設計や、加熱、凝縮といった操作を行うために装置が複雑になるという難点もある。また、吸着剤を用いる場合は吸着後の有機化合物の処理が煩雑であるという問題がある。膜分離による方法は、有機化合物を分離する方法として比較的容易な方法であるが、分離特性に優れた分離膜については、種々、検討されているところであり、効率的にかつ手軽に揮発性有機化合物を分離することができる分離膜が求められている。
【0006】
本発明はこれらの課題を解決すべくなされたものであり、膜分離法によって、有機溶媒(揮発性有機化合物)が混入した被処理液から有機溶媒を効率的に分離・回収することができる有機化合物の回収装置及びこれに用いる分離膜及び分離膜の好適な製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は次の構成を備える。
すなわち、本発明に係る揮発性有機化合物の分離に用いられる分離膜は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)液からなる主剤に孔形成剤と硬化剤とを加えた溶液を用いて、孔形成剤を含む膜を成形し、該膜から前記孔形成剤を溶出させて多孔質状に形成されたことを特徴とする。
また、本発明に係る揮発性有機化合物の分離に用いられる分離膜は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)液からなる主剤に硬化剤を加えた溶液を膜化して得られたことを特徴とする。
【0008】
また、揮発性有機化合物の分離に用いる分離膜の製造方法として、ポリジメチルシロキサン(PDMS)液からなる主剤に孔形成剤を加える工程と、前記孔形成剤を加えた溶液に硬化剤を加える工程と、前記硬化剤を加えた溶液を用いて前記孔形成剤を含む膜を成形する工程と、前記成形された膜から前記孔形成剤を溶出させる工程と、孔形成剤を溶出した膜を乾燥させる工程と、を備えることを特徴とする。
前記孔形成剤は膜を成形した後に、膜から孔形成剤を溶出させ膜を多孔質状にする目的で用いられる。したがって、孔形成剤は成形後の膜から孔形成剤を溶出させる溶媒(水に限らない)によって溶解できるものであれば適宜物質を使用することができる。
前記孔形成剤として水溶性の物質を使用し、前記孔形成剤を溶出する工程において、水により前記孔形成剤を膜から溶出する方法によれば、容易に多孔質状の分離膜を得ることができる。
【0009】
また、前記膜を成形する工程において、前記硬化剤を加えた溶液を膜形成用の支持部材の表面に付着させ、乾燥工程により膜化させた後、前記支持部材から膜を剥離することによって容易に膜を成形することができる。支持部材は、ガラス板等の成形膜を容易に剥離できる材質を選択するのがよい。支持部材は平板状の部材の他、円柱状、角注状等の立体形状のものを使用することができる。立体形状の支持部材の外面に溶液を付着させて膜を硬化させることによって、平膜の他に、筒状あるいは外面が湾曲形状の立体的な膜を成形することができる。
前記孔形成剤としては、ポリエチレングリコールが好適に用いられる。孔形成剤としてはこの他にNaCl等の無機物を使用することもできる。
【0010】
また、揮発性有機化合物の分離に用いる分離膜の製造方法として、ポリジメチルシロキサン(PDMS)液からなる主剤に硬化剤を加える工程と、前記硬化剤を加えた溶液を用いて膜を成形する工程と、を備えることを特徴とする。この製造方法によって得られる分離膜は緻密化された膜として得られる。この分離膜の場合は、多孔質状の分離膜とくらべて揮発性有機化合物の透過率は劣るが、一定の揮発性有機化合物を分離する作用を有する。
また、前記膜を成形する工程においては、前記硬化剤を加えた溶液を膜形成用の支持部材の表面に付着させ、乾燥工程により膜化させた後、前記支持部材から膜を剥離することにより、平板状あるいは立体形状の分離膜を形成することができる。
【0011】
また、揮発性有機化合物が混入する被処理液から、前記揮発性有機化合物を分離して回収する揮発性有機化合物の回収装置であって、前記被処理液から前記揮発性有機化合物を分離する分離膜を備える膜モジュールを内蔵する回収タンクを備え、前記膜モジュールは、前記被処理液を収容する領域と、前記膜モジュールにより分離される前記揮発性有機化合物が浸出する領域とを仕切る配置に設けられ、前記分離膜として、前記揮発性有機化合物の分離膜が用いられていることを特徴とする。
また、前記膜モジュールとして、仕切り板に設けられた開口部に、平膜状に形成された分離膜が前記開口部を閉止するように水密にシールして装着されて形成されたものが有効に使用できる。
また、前記膜モジュールとして、仕切り板に設けられた開口部に、一端が閉止され他端が開放する筒状に形成された分離膜が、前記開口部に前記分離膜の開放端を水密にシールして装着されて形成されたものが有効に使用できる。
【0012】
また、前記回収タンクに、該回収タンクに投入された被処理液に振動を作用させる揺動機構が設けられていること、前記回収タンクに、該回収タンクに投入された被処理液に超音波振動を作用させる超音波振動装置が設けられていることにより、前記分離膜による揮発性有機化合物の分離特性を劣化させずに使用することができる。
また、前記回収タンクに、前記被処理液を収容する領域と、前記膜モジュールにより分離される前記揮発性有機化合物が浸出する領域との間に相対的な圧力差を生じさせるための加圧装置あるいは減圧装置が設けられていることによりさらに効率的に揮発性有機化合物の分離・回収を行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る揮発性有機化合物の回収装置によれば、揮発性有機化合物が混入した被処理液から揮発性有機化合物を効率的に分離して回収することができる。また、本発明に係る分離膜は、揮発性有機化合物が混入した被処理液から揮発性有機化合物を効率的に分離することができる。また、本発明に係る分離膜の製造方法により、容易に分離膜を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】分離膜の特性を測定した測定装置の構成を示す断面図である。
【図2】PDMS分離膜による有機溶媒の分離特性の測定結果を示すグラフである。
【図3】多孔質PDMS分離膜による有機溶媒の分離特性の測定結果を示すグラフである(圧力0.2MPa)。
【図4】多孔質PDMS分離膜による有機溶媒の分離特性の測定結果を示すグラフである(0.3MPa)。
【図5】孔形成剤として使用するPEGの添加割合を変えた場合の有機溶媒の透過率の測定結果を示すグラフである。
【図6】揮発性有機化合物の回収装置の第1の実施の形態を示す正面図である。
【図7】第1の実施の形態の回収装置の側面図である。
【図8】揮発性有機化合物の回収装置の第2の実施の形態を示す正面図である。
【図9】第2の実施の形態の回収装置の側面断面図である。
【図10】排気ガスから揮発性有機化合物を分離する装置として回収装置を取り付けた例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(有機化合物の分離膜)
本発明に係る有機化合物の分離・回収装置においては、有機化合物の分離膜としてポリジメチルシロキサン(PDMS)を主要成分とする膜を使用する。ポリジメチルシロキサンは、有機溶媒(揮発性有機化合物)との親和性が高い化合物であり、有機溶媒の分離に利用できるものとして選択した。
本発明に係る有機化合物の回収装置は、無機顔料、有機顔料、樹脂等の微細な固体粒子と有機溶媒とからなる被処理液(印刷用インク、塗料等)から、有機溶媒を分離して回収することを可能にする。なお、本発明に係る回収装置は、揮発性有機化合物を含む気体から有機化合物を分離・回収する用途にも利用することが可能である。
【0016】
(分離膜の調製方法)
末端がビニル基のポリジメチルシロキサン(PDMS)オリゴマーを主剤とし、主剤に溶媒としてn−ヘプタンを50重量%混合し、4時間攪拌した。
攪拌後の溶液に硬化剤を加え、50℃、1時間攪拌した後、平板体のガラス板上にキャストした。硬化剤にはPt触媒と活性水素をもつPDMSの混合物を用いた。硬化剤の分量は、適宜調節可能である。
ガラス板上に硬化剤を加えた溶液をキャストした後、120℃、1時間乾燥させ、ガラス板から膜を剥離してPDMS分離膜を得た。ガラス板上に溶液をキャストし、乾燥後、ガラス板から膜を剥離する工程が膜の成形工程に相当する。
【0017】
実験では、主剤に対する硬化剤の重量比を10:1としたサンプル(A-1)、主剤に対する硬化剤の重量比を10:3としたサンプル(A-2)を作成し、これらのサンプル(A-1)、(A-2)を用いて、有機溶媒の透過率を測定した。
【0018】
上述したPDMS分離膜の調製方法は、主剤のPDMSに孔形成剤を加えず、いわば緻密なPDMS膜を有機溶媒の分離膜として調製した例である。上記例とは別に、主剤のPDMSに孔形成剤を加えて、多孔質性の別のサンプルを調製した。以下にその形成方法を示す。
主剤に溶媒としてn−ヘプタンを50重量%混合し、4時間攪拌した溶液に、孔形成剤としてポリエチレングリコール(PEG)を、溶液に対し50〜200重量%添加した(孔形成剤を加える工程)。PEGを溶液中で均一に分散させるため、30分の超音波処理を2回行った。孔形成剤として添加したPEGは分子量200の水溶性のものである。
【0019】
次に、超音波処理を施した溶液に、前述した硬化剤を10重量%加え、50℃で1時間攪拌した後、ガラス板上にキャストした。キャスト後、120℃で1時間乾燥させ、ガラス板上から膜を剥離した(膜を成形する工程)。
ガラス板から剥離した膜を蒸留水中に48時間浸漬させ、膜に含まれているPEGを膜から溶出させた(孔形成剤を溶出させる工程)。PEGを溶出することによって膜が多孔質状になる。
孔形成剤を溶出させた膜を、120℃で4時間乾燥させ(乾燥工程)、多孔質PDMS膜(サンプル(B))を得た。
【0020】
本実施形態においては孔形成剤として分子量200のPEGを使用した。これは、分子量が800、1000といった大きな分子量のPEGを使用すると、膜からPEGを溶出させるときに時間がかかるという問題と、膜に形成される孔径が大きくなるという問題があるためである。市販されているPEG製品においては分子量200のものが最小である。もちろん、分離膜の用途によっては分子量が200よりも大きなPEGを使用することは可能である。
【0021】
本発明の多孔質PDMS膜を調製する工程においては、膜を形成する溶液にあらかじめ孔形成剤を加えておき、硬化させて膜を成形した後に、膜から孔形成剤を溶出させて多孔質膜とする。この方法によれば、PEGに限らず適宜材料を孔形成剤として用いることができる。孔形成剤として使用可能な水溶性の材料としては、ショ糖、グラニュー糖、尿素、エチレングリコール、プロピレングリコールなどがある。無機材料としてNaCl等を使用することもできる。実際にNaClを細かく粉砕して孔形成剤とし、膜形成後に、蒸留水中に膜を浸漬させ、NaClを溶出させて多孔質PDMS膜を形成した。
なお、孔形成剤は水溶性のものでなければならないわけではない。膜から孔形成剤を溶出する際に用いる溶媒との関係において孔形成剤を溶出できるものであれば、適宜組合せの孔形成剤が使用できる。たとえば、ビフェニルのような有機固体をシリコーン中に混ぜ込み、ベンゼン中に溶出させて孔を形成するといったことが可能である。
【0022】
上記分離膜の調製方法においては、ガラス板に硬化剤を含む溶液をキャストし、乾燥させた後、ガラス板から膜を剥離する工程が膜の成形工程に相当する。膜の支持部材として平板体のガラス板を使用したのは、分離膜を平膜として形成するためである。膜の支持部材として、たとえば円柱状、角柱状、半球状等の立体形状のものを使用して支持部材の外面にスプレー等によって溶液を付着させて硬化させれば、立体形状の膜を得ることができる。膜を形成する方法としては、溶液を注入するキャビティを備える金型を使用するといったことも可能である。
【0023】
(透過実験装置)
図1は、上述した調製方法によって得られた分離膜について、有機溶媒の透過率の測定に用いた装置構成を示す。
図1に示す透過実験装置は、被処理液を収容し被処理液に圧力を作用させるための加圧室2と、加圧室2の下方に、分離膜10によって室間を仕切る配置に設けられた有機溶媒の回収室3とを備える。加圧室2と回収室3は円筒形状である。分離膜10は加圧室2の下面(開放している)の全面を閉止するように装着し、分離膜10と加圧室2の下面との間にOリング4を介装し、分離膜10によって加圧室2の下面を水密かつ気密にシールする。
実験では径寸法が5.5cmの平面形状が円形の分離膜を使用した。分離膜の厚さは0.3〜0.4mmである。有機溶媒を分離している際には、分離膜10は厚さが1.5倍程度に膨潤する。
【0024】
被処理液に圧力を加えた際に分離膜10がたわんで損傷しないように、分離膜10を支持する支持板5を、回収室3の上面と分離膜10との間に装着する。支持板5には分離膜10を透過する有機溶媒を通過させる貫通孔が設けられている。実際の実験では分離膜10と支持板5との間に紙フィルター6を挿入した。紙フィルター6は分離膜10から浸出した有機溶媒をフィルターに吸収させる方が、有機溶媒が浸出しやすくなるために使用したものである。
加圧室2の上部には被処理液を加圧室2に供給するための開閉コック7aがついた供給管が7が設けられる。加圧室2は加圧用のコンプレッサ9に接続され、加圧室2内の圧力は圧力ゲージ9aによって検知される。
【0025】
分離膜10による有機溶媒の透過率を測定する際には、まず、回収室3の上に支持板5、紙フィルター6、サンプルの分離膜10、Oリング4をのせ、加圧室2を位置合わせしてセットした後、クランパ11により加圧室2と回収室3とを連結させて組み立てる。加圧室2と回収室3とは別体に係止されているから、適宜、分離膜10を交換して測定することができる。
測定装置を組み立てた後、供給管7から加圧室2に被処理液Lを供給し、開閉コック7aを閉めて加圧室2を密封し、コンプレッサ9を作動させ、圧力ゲージ9aにより加圧室2内の圧力を検知しながら加圧室2内を所定の圧力に設定する。分離膜10によって分離された有機溶媒が徐々に回収室3内に浸出してくるから、この有機溶媒を測定する。
【0026】
(測定結果)
有機溶媒の透過率の実験は、被処理液として、微細な固体粒子(固体粒子濃度6〜7重量%)を含む廃液30mlを加圧室2に供給し、時間経過とともに回収室3に浸出する有機溶媒の量と、分離された有機溶媒中の固体粒子の濃度を測定することで行った。使用した被処理液は、実際に排出された廃液として提供されたもので、濃い赤紫色を呈する液体である。廃液に用いられている顔料や有機溶媒の種類については開示されていない。
【0027】
図2は、分離膜として、前述したサンプル(A-1)、(A-2)を分離膜10として、上述した実験装置を用いて測定した結果を示す。
縦軸に透過率(kg/m2)と分離された有機溶媒中の微細粒子の濃度(重量%)、横軸に時間(h)を示す。加圧室内の圧力は、0.3MPaである。
図2に示す測定結果は、サンプル(A-2)よりも硬化剤の分量が少ないサンプル(A-1)は、サンプル(A-2)と比較して透過率が大きくなることがわかる。サンプル(A-2)は透過率は小さいが、分離された有機溶媒中の固体粒子の濃度は低くなった。
【0028】
図3、4は、上述したサンプルB(多孔質PDMS膜)について、透過率(kg/m2)、分離された有機溶媒中の固体粒子の濃度(重量%)を時間経過とともに測定した結果を示す。図3は加圧室内の圧力を0.2MPaとした場合、図4は加圧室内の圧力を0.3MPaとした場合を示す。
図3、図4に示す測定結果は、いずれの場合も、サンプルBは、サンプル(A-1)、(A-2)と比較して透過率が数倍から10倍程度向上することがわかる。また、被処理液に作用させる圧力を0.3MPaとした場合の方が、0.2MPaとした場合よりも、立ち上がりがはやくなった。
また、圧力を0.2MPaとした場合には分離された有機溶媒中の固体粒子の濃度が低く抑えられたのに対して、圧力を0.3MPaとした場合には分離開始して4時間経過後から、分離された有機溶媒中の固体粒子の濃度が徐々に増加した。
【0029】
図5は、多孔質PDMS膜を形成する際に孔形成剤として使用するPEG(分子量200)の添加割合が、有機溶媒の透過率にどのように影響するかを測定した結果を示す。主剤に対する硬化剤の分量比は10:1、孔形成剤を添加した場合の多孔質PDMS膜の製法は前述した方法と同様である。測定に使用した被処理液は前述した被処理液と同一のものである。被処理液に作用させた圧力は0.2MPaである。
グラフの横軸が溶液に加えたPEGの添加割合(重要%)、縦軸が透過流束である。
【0030】
図5に示す実験結果は、添加するPEGの量を増やすことによって、透過流束が効果的に向上することを示す。すなわち、孔形成剤としてPEGが有効に使用できること、孔形成剤として加えるPEGの量を調節することによって、分離膜の透過流束を制御することができることを示す。
被処理液は濃い赤紫色を呈していたが、上記サンプルBの分離膜を使用して分離した後の有機溶媒は、ほぼ無色・透明の液として得られた。
また、被処理液を分離した後のサンプルBについて、被処理液を分離した後の分離膜の断面を光学顕微鏡によって観察したところ、被処理液に作用させる圧力を0.2MPaとした場合は、分離膜の断面内にほとんど微細粒子が進入していなかった。圧力0.3MPaとした場合は、分離膜の断面が若干着色し、微細粒子が分離膜中に進入したことが認められた。
【0031】
上記の分離膜についての被処理液の分離・回収実験から、顔料、樹脂等の固体微粒子と有機溶媒とを含む被処理液から有機溶媒を分離・回収する分離膜として、ポリジメチルシロキサン(PDMS)膜を使用することができ、とくに孔形成剤を用いて多孔質状に形成した多孔質PDMS膜が、有機溶剤の分離膜として有効に利用できることが確かめられた。
孔形成剤を含まないPDMS膜、及び多孔質PDMS膜を使用して有機溶媒を分離する場合は、被処理液に対し圧力を加えて分離するのがよい。
【0032】
(回収装置:第1の実施の形態)
図6及び図7は、揮発性有機化合物を分離膜を介して分離・回収する回収装置についての第1の実施の形態の構成を示す正面図及び側面図である。
本実施形態の回収装置は、処理対象である被処理液を投入する投入タンクとしての第1の投入タンク20及び第2の投入タンク21と、有機溶媒(揮発性有機化合物)を分離する膜モジュール30を内蔵する回収タンク22とを備える。
第1、第2の投入タンク20、21は、支持アングル23により回収タンク22よりも上位置に支持され、それぞれ配管24、25を介して回収タンク22に接続される。図6、7に示すように、投入タンク20、21はまったく同形に形成され、回収タンク22の一方側に並置される。
【0033】
回収タンク22には、膜モジュール30を備える第1の分離部31と第2の分離部32とが内蔵されている。第1の分離部31と第2の分離部32は独立して被処理液を分離する作用をなすものであり、第1の投入タンク20は配管24を介して第1の分離部31に接続し、第2の投入タンク20は配管25を介して第2の分離部32に接続する。配管24、25には、第1、第2の投入タンク20、21から第1、第2の分離部1、32に供給する被処理液の供給量を制御する電磁弁24a、25aが介装されている。
電磁弁24a、25aの開閉制御は、センサ等によって検知した第1、第2の分離部31、32内における被処理液の量(液面位置)に応じて制御部39によってなされる。
【0034】
第1、第2の投入タンク20、21を各別に第1、第2の分離部31、32に接続しているのは、被処理液の処理量に応じて、一方の投入タンクを使用する場合と、両方の投入タンクを使用する場合を選択できるようにするためである。もちろん、第1の分離部31と第2の分離部32を連通させ、第1、第2の投入タンク20、21から第1、第2の分離部31、32に共通に被処理液を供給して有機化合物を分離するように構成することもできる。
【0035】
第1の分離部31と第2の分離部32に内蔵される膜モジュール30は、図6に示すように、第1、第2の分離部31、32の左右の起立壁面を構成する膜モジュール30a、30aと、その中間に傾斜配置した膜モジュール30b、30bとからなる。各々の膜モジュール30a、30bの連結部(折れ曲がっている部分)は水密にシールした状態で連結される。
【0036】
図7に示すように、膜モジュール30は平膜として形成した分離膜300を、平板状に形成された仕切り板302に装着して構成される。仕切り板302には長方形状の開口部が設けられ、各々の開口部の周縁部に沿って分離膜300が水密にシールして取り付けられている。図示例の膜モジュール30は平膜の分離膜300を5枚並列に装着した例である。分離膜300を仕切り板302にシールして取り付ける際に、分離膜300が確実にシールされるように、分離膜300の周縁部を厚肉とし、分離膜300の周縁部をシール板と仕切り板302とで挟圧して取り付けるようにするとよい。
【0037】
膜モジュール30の長手方向の両端には、囲い板34、35が取り付けられ、膜モジュール30の仕切り板302の両端と囲い板34、35の内面とがシールした状態に当接して連結される。
こうして、囲い板34、35と膜モジュール30a、30bとによって被処理液が供給される第1の分離部31と第2の分離部32が構成される。図6の着色部分が、第1の分離部31と第2の分離部32で被処理液が収容される領域である。
第1の分離部31と第2の分離部32は回収タンク22の内壁面及び内底面から若干離間して配置される。これは第1の分離部31と第2の分離部32によって分離された有機溶媒を排出させるための領域を確保するためである。回収タンク22の底部には、有機溶媒を回収するための排出管26が設けられている。
【0038】
回収タンク22の支持脚の一つは伸縮ロッドを備える駆動シリンダ27によって形成されている。駆動シリンダ27の伸縮ロッドの伸縮量は、制御部39により制御され、伸縮ロッドの突出長は、常時は支持脚27aの高さに一致する。駆動シリンダ27は回収タンク22を水平位置と斜め位置との間で揺動させる揺動機構として設けられている。回収タンク22を揺動させる機構は、図示例の形態に限らず適宜形態とすることができる。
回収タンク22には第1の分離部31と第2の分離部32に供給される被処理液に超音波振動を作用させる超音波発生装置28が付設される。超音波発生装置28は制御部39によって制御される。
【0039】
第1の分離部31と第2の分離部32は、図6に示すように膜モジュール30の端面方向から見てV字形の被処理液の収容領域を備える。このV字形をなす被処理液の収容領域の底部近傍の囲い板35の部分に、被処理液から有機溶媒を分離した後に残る残渣を排出する排出穴36が設けられ、排出穴36と回収タンク22の外面に設けた排出部37とが連通する。排出部37には、残渣を排出する排出口38が開口する。
【0040】
本実施形態の回収装置は、第1、第2の投入タンク20、21から第1、第2の分離部31、32内における被処理液の量を監視しながら電磁弁24a、25aを開閉して順次被処理液を供給し、膜モジュール30の作用により有機溶媒を分離・回収する。
駆動シリンダ27を駆動させ回収タンク22を上下に揺動させることにより、回収タンク22に投入されている被処理液に振動を作用させ、分離膜300の表面に被処理液の固体粒子が付着することを抑制し、分離膜300による分離特性が劣化することを抑えて有機溶媒を分離することができる。また、超音波発生装置28を作動させ、分離膜300に付着した固体粒子を剥離させ、分離膜300の分離特性を維持することができる。
【0041】
本実施形態の回収装置によれば、膜モジュール30の分離膜300として前述した多孔質PDMS膜あるいは緻密化されたPDMS膜を使用することにより、効率的に有機溶剤を分離して回収することができる。分離した有機溶剤は回収タンク22内に溜まるから、随時排出穴36から回収する。回収された有機溶媒は、処理前の液とは有機溶媒の組成が若干変動する可能性はあるが、組成調製することによって印刷用インク、塗料等に容易に再利用することができる。
【0042】
本実施形態においては、有機溶媒の分離は、第1の分離部31と第2の分離部32に投入した被処理液の自重によって分離・回収する方法としている。第1の分離部31と第2の分離部32は被処理液が収納される部分が、端面形状でV字状となり、いわば袋状となることにより、単に平膜を水平に配置した場合とくらべて被処理液と分離膜300との接触面積を増やすことができ、効率的に有機溶媒を分離することができる。
【0043】
なお、被処理液に圧力を作用させる場合は、回収タンク22内において第1の分離部31と第2の分離部32の領域を密封状態とし、コンプレッサなどの加圧装置によって被処理液に圧力を加えればよい。被処理液に圧力を作用させる方法としては、被処理液が供給される領域に圧力を加えるかわりに、減圧装置を用いて有機溶媒が回収される領域を減圧する方法、あるいは加圧と減圧の双方を作用させることも可能である。
【0044】
本実施形態の回収装置は、装置の構成が簡易であり、小型化が可能であること、第1、第2の投入タンク20、21に被処理液を投入するのみで有機溶媒を分離・回収することができ、ランニングコストがかからないことから、少量の廃液等の処理に有効に利用することができ、回収された有機溶媒を再利用することによって環境への悪影響を抑えるとともに、有機溶媒を有効活用することができる。
【0045】
なお、本実施形態の回収装置は、2台の投入タンク20、21を設置した構成の例であるが、1台の投入タンクを備える構成とすることも可能であり、3台以上の投入タンクを備える構成とすることもできる。膜モジュール30も端面方向から見てV字形に配置したが、膜モジュール30の配置も上記実施形態の構成に限定されるものではない。たとえば、分離部の底部に単に平坦状に配置する構成とすることもできる。被処理液の自重によって平膜の分離膜300が変形しないように、貫通孔を設けた支持板によって分離膜300を保持するようにしてもよい。
【0046】
(回収装置:第2の実施の形態)
上記実施形態の回収装置は、平膜状に形成した分離膜を使用する例である。有機溶媒を分離する分離膜は平膜に形成する他に、一端が閉止した(有底)筒状に形成することもできる。
図8は、有機溶媒を分離する膜モジュール40として、一端が閉止し、他端が開放端となる円筒状の分離膜400を使用した回収装置の例である。膜モジュール40は、円筒状の分離膜400の開放端を、仕切り板402に形成した開口孔402aに水密及び気密にシールして装着されている。
【0047】
図9に、膜モジュール40を仕切り板402の平面方向から見た状態を示す。仕切り板402にはアレイ状に多数個の開口孔402aが形成され、各々の開口孔402aに円筒状の一端が閉止した形状の分離膜400が、仕切り板402上に起立するように装着される。分離膜400は仕切り板402上に林立した状態になる。
本実施形態においては、分離膜400に圧力が加わった際に分離膜400が変形しないように保形する目的で、開口孔402aの周縁に網状の部材からなる支持筒404を立設し、支持筒404に被せるように分離膜400を装着した。分離膜400が保形性を有する場合には支持筒404を使用しなくてもよい。
【0048】
図8は、一対の膜モジュール40を、中間に有機溶媒が通流する間隔をあけ、仕切り板402を対向させて回収タンク42内に取り付けた状態を示す。
回収タンク42は、被処理液を投入して膜モジュール40によって有機溶媒を分離するためのタンクであり、図9に示すように、膜モジュール40の仕切り板402の両側縁と底縁とは回収タンク42の内側面及び底面と水密及び気密にシールして取り付けられる。なお、膜モジュール40は回収タンク42の上部の開放部から回収タンク42に対して抜き差しして装着可能に形成することにより、膜モジュール40の分離特性が劣化した場合に、新しい膜モジュール40に交換する操作や、膜モジュール40を清浄化して再度装着する操作を容易に行うことが可能となる。
【0049】
回収タンク42の上部開口部には開閉蓋44が設けられ、回収タンク42の上部から被処理液が回収タンク42に投入される。回収タンク42の下部には2枚の仕切り板402間に連通して排出管46が設けられる。また、回収タンク42には有機溶媒を分離した後の残渣を排出するための排出孔が設けられる。
【0050】
本実施形態の回収装置においては、分離膜400を円筒状に形成して、多数個の分離膜400を仕切り板402に装着することによって、平膜に形成した分離膜を使用する場合と比較して、分離膜400と被処理液との接触面積を大きくすることができ、回収装置の小型化を図ることができるとともに、より効率的に有機溶媒を分離・回収することができる。
分離膜400として、前述した多孔質PDMS膜あるいは緻密化されたPDMS膜を使用することは同様である。これらのPDMS膜は容易に筒形に形成することができ、本実施形態の回収装置に好適に用いることができる。
【0051】
本実施形態の回収装置は、回収タンク42に投入した被処理液の自重によって有機溶媒を回収する構成としているが、被処理液に圧力を加えて有機溶媒を分離する場合は、図8に示すように回収タンク42に連通してコンプレッサ48等の加圧装置を付設すればよい。なお、加圧装置にかえて分離膜を介して被処理液に対して吸引圧力を作用させる減圧装置を使用することもできる。また、被処理液に超音波振動を作用させて有機溶媒を分離するようにする場合は、回収タンク42に超音波発生装置を付設すればよい。
また、図8は一対の膜モジュール40を使用した例であるが、被処理液を大量に処理するような場合には、回収タンクを大型化し、多数個の膜モジュールを設置して被処理液を処理する構成とすることができる。
【0052】
(回収装置:第3の実施の形態)
図10は、有機溶媒を含む塗料、印刷用インク等の各種の揮発性の液体を保管するための保管用(備蓄用)タンクに、本発明に係る揮発性有機化合物の回収装置を付設した例を示す。揮発性有機化合物の保管用タンクとして使用されている大型のタンクでは、タンクに揮発性の液体を補充する際に、タンクの排気口から揮発性有機化合物が混入したエアが放出され、環境に悪影響を及ぼすことが問題となる。このため、このような操作を行う際には、揮発性有機化合物がそのまま大気中に放出されないように、吸着剤等を用いて揮発性化合物を除去しながら排気することが行われている。
【0053】
図10の回収装置50は、保管用のタンク60の排気口側に設置した熱交換機62、窒素クーラー64、膜フィルター66から排出される液を回収する装置として設けられている。熱交換機62はエアを利用して排気ガスを冷却するもので、配管51を介して、熱交換機62内で凝縮された液体が回収装置50に供給される。熱交換機62の後段に設置されている窒素クーラー64は、窒素ガスを用いて排気ガスを冷却する装置であり、配管52を介して窒素クーラー64中で凝縮された液体が回収装置50に供給される。窒素クーラー64の後段に設置されている膜フィルター66は、排気ガス中に含まれる有機がスを吸着して、揮発性有機化合物が大気中に放出されないようにするためのものである。膜フィルター66で回収された液体は配管53を介して回収装置50に供給される。
【0054】
回収装置50は、前述した第1の実施の形態あるいは第2の実施の形態において説明した回収装置と同様に構成されている。前述した実施形態においては、塗料や印刷用インクなどの被処理液から有機溶媒を分離して回収する作用について説明したが、図10に示す装置においては、熱交換機62や窒素クーラー64から回収装置50に排出される液体中に空気中の水が入り込んで回収装置50に供給される。
本発明に係る回収装置は、顔料等の固体粒子が含有されている被処理液から有機溶媒のみを選択的に分離して回収する作用を有するが、分離膜として使用しているPDMS膜は疎水性であり、水の透過性は非常に低く、被処理液から水を排除して有機溶媒のみを選択的に分離して回収することができる。したがって、図のように回収装置50を付設することにより、保管用のタンク60から排出される排気ガスから有機溶媒を回収することが可能である。図10に示す回収装置50には、有機溶媒を取り出す排出管54と、水を排出する廃棄管55が取り付けられている。
このように、本発明に係る揮発性有機化合物の回収装置は、揮発性有機化合物が含まれている排気ガスから有機化合物のみを回収するといった目的にも利用することが可能である。
【符号の説明】
【0055】
2 加圧室
3 回収室
10 分離膜
20 第1の投入タンク
21 第2の投入タンク
22 回収タンク
26 排出管
27 駆動シリンダ
28 超音波発生装置
30、30a、30b 膜モジュール
31 第1の分離部
32 第2の分離部
34、35 囲い板
36 排出穴
39 制御部
40 膜モジュール
42 回収タンク
46 排出管
48 コンプレッサ
50 回収装置
62 熱交換機
64 窒素クーラー
66 膜フィルター
300 分離膜
302 仕切り板
400 分離膜
402 仕切り板
402a 開口孔
404 支持筒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリジメチルシロキサン(PDMS)液からなる主剤に孔形成剤と硬化剤とを加えた溶液を用いて、孔形成剤を含む膜を成形し、該膜から前記孔形成剤を溶出させて多孔質状に形成されたことを特徴とする揮発性有機化合物の分離に用いられる分離膜。
【請求項2】
ポリジメチルシロキサン(PDMS)液からなる主剤に硬化剤を加えた溶液を膜化して得られたことを特徴とする揮発性有機化合物の分離に用いられる分離膜。
【請求項3】
ポリジメチルシロキサン(PDMS)液からなる主剤に孔形成剤を加える工程と、
前記孔形成剤を加えた溶液に硬化剤を加える工程と、
前記硬化剤を加えた溶液を用いて前記孔形成剤を含む膜を成形する工程と、
前記成形された膜から前記孔形成剤を溶出させる工程と、
孔形成剤を溶出した膜を乾燥させる工程と、
を備えることを特徴とする揮発性有機化合物の分離に用いる分離膜の製造方法。
【請求項4】
前記孔形成剤として水溶性の物質を使用し、
前記孔形成剤を溶出する工程において、水により前記孔形成剤を膜から溶出することを特徴とする請求項3記載の分離膜の製造方法。
【請求項5】
前記膜を成形する工程において、
前記硬化剤を加えた溶液を膜形成用の支持部材の表面に付着させ、乾燥工程により膜化させた後、前記支持部材から膜を剥離することを特徴とする請求項3または4記載の分離膜の製造方法。
【請求項6】
前記孔形成剤として、ポリエチレングリコールを使用することを特徴とする請求項3〜5のいずれか一項記載の分離膜の製造方法。
【請求項7】
ポリジメチルシロキサン(PDMS)液からなる主剤に硬化剤を加える工程と、
前記硬化剤を加えた溶液を用いて膜を成形する工程と、
を備えることを特徴とする揮発性有機化合物の分離に用いる分離膜の製造方法。
【請求項8】
前記膜を成形する工程においては、
前記硬化剤を加えた溶液を膜形成用の支持部材の表面に付着させ、乾燥工程により膜化させた後、前記支持部材から膜を剥離することを特徴とする請求項7記載の分離膜の製造方法。
【請求項9】
揮発性有機化合物が混入する被処理液から、前記揮発性有機化合物を分離して回収する揮発性有機化合物の回収装置であって、
前記被処理液から前記揮発性有機化合物を分離する分離膜を備える膜モジュールを内蔵する回収タンクを備え、
前記膜モジュールは、前記被処理液を収容する領域と、前記膜モジュールにより分離される前記揮発性有機化合物が浸出する領域とを仕切る配置に設けられ、
前記分離膜として、前記請求項1または2記載の分離膜が用いられていることを特徴とする揮発性有機化合物の回収装置。
【請求項10】
前記膜モジュールは、
仕切り板に設けられた開口部に、平膜状に形成された分離膜が前記開口部を閉止するように水密にシールして装着されて形成されていることを特徴とする請求項9記載の揮発性有機化合物の回収装置。
【請求項11】
前記膜モジュールは、
仕切り板に設けられた開口部に、一端が閉止され他端が開放する筒状に形成された分離膜が、前記開口部に前記分離膜の開放端を水密にシールして装着されて形成されていることを特徴とする請求項9記載の揮発性有機化合物の回収装置。
【請求項12】
前記回収タンクに、該回収タンクに投入された被処理液に振動を作用させる揺動機構が設けられていることを特徴とする請求項9〜11のいずれか一項記載の揮発性有機化合物の回収装置。
【請求項13】
前記回収タンクに、該回収タンクに投入された被処理液に超音波振動を作用させる超音波振動装置が設けられていることを特徴とする請求項9〜12のいずれか一項記載の揮発性有機化合物の回収装置。
【請求項14】
前記回収タンクに、前記被処理液を収容する領域と、前記膜モジュールにより分離される前記揮発性有機化合物が浸出する領域との間に相対的な圧力差を生じさせるための加圧装置あるいは減圧装置が設けられていることを特徴とする請求項9〜13のいずれか一項記載の揮発性有機化合物の回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−98263(P2011−98263A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−253055(P2009−253055)
【出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成21年5月8日 日本膜学会発行の「日本膜学会第31年会 講演要旨集」に発表
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、文部科学省、地域イノベーション創出総合支援事業、重点地域研究開発推進プログラム、シーズ発掘試験、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(504180239)国立大学法人信州大学 (759)
【出願人】(501484138)株式会社山岸工業 (7)
【Fターム(参考)】